本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る定着装置が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1に、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置を示す。図1に示す画像形成装置は、電子写真方式により各色成分(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(B))のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙(記録媒体)Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12と、レーザ等で感光体ドラム11上に静電潜像を書込む露光装置13(図1中、露光ビームを符号Bmで示す)と、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置14と、感光体ドラム11上に形成された各色成分のトナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17等の電子写真用デバイスが順次配置されている。これらの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
中間転写体である中間転写ベルト15は、例えば、ポリイミドまたはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は、例えば、106Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚さは、例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト15は、各種ロールによって、図1に示すB方向に予め定めた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31と、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32と、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33と、二次転写部20に設けられるバックアップロール25と、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34と、を有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16により構成されている。一次転写ロール16は、例えば、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とのブレンドゴム等を含んで形成され、体積抵抗率が例えば107Ωcm以上109Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール16は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11を押圧するように配置され、さらに一次転写ロール16には、トナーの帯電極性(例えばマイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
二次転写部20は、例えば、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、例えば、EPDMゴム等を含んでなる内層部と、カーボンを分散したEPDMおよびNBRのブレンドゴム等を含んでなるチューブ状の表面層とから構成されている。そして、例えば、その表面抵抗率が107Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えばアスカーC型ゴム硬度計による測定硬度で70°に設定されている。このバックアップロール25には、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触して配置されている。
一方、二次転写ロール22は、例えば、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴム等を含んで形成され、体積抵抗率が107Ωcm以上109Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は、中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25を押圧するように配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像が二次転写される。
中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配置されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配置されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられた予め定めたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは画像形成を開始するように構成されている。
また、図1に示す画像形成装置は、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50と、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを予め定めたタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51と、ピックアップロール51により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52と、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送シュート53と、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55と、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56とを備えている。
次に、本実施の形態に係る定着装置を用いた画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
図1に示すような画像形成装置では、画像読取装置(IIT)(図示せず)やパーソナルコンピュータ(PC)(図示せず)等から出力される画像データは、画像処理装置(IPS)(図示せず)により予め定めた画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の予め定めた画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、露光装置13に出力される。
露光装置13では、入力された色材階調データに応じて、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各々の感光体ドラム11に照射する。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各感光体ドラム11では、帯電装置12によって表面が帯電された後、この露光装置13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により、中間転写ベルト15の基材に対し、トナーの帯電極性(例えばマイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて、一次転写が行われる。
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から予め定められたサイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送シュート53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(例えばマイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20において、用紙P上に一括して静電転写される。
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pが定着装置60まで搬送される。定着装置60に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
次に、本実施形態に係る定着装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る定着装置の構成の一例を示す側断面図である。定着装置60は、回転可能な回転部材の一例としての定着ロール61と、定着ロール61に接触しながら移動可能な無端ベルト部材の一例としての無端ベルト62と、無端ベルト62を介して定着ロール61と対向するように配置され、無端ベルト62を介して定着ロール61を加圧して定着ロール61と無端ベルト62との間に記録媒体としての用紙Pが通過するニップ部Nを形成するニップ部形成部材の一例としての圧力パッド64とにより主要部が構成されている。
定着ロール61は、例えば、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性弾性体層612、および離型層613を積層して構成された円筒状ロールであり、回転自在に支持されて予め定めた表面速度(例えば、250mm/秒)で回転する。定着ロール61は、例えば、外径が軸方向で略一様ないわゆるストレートロールで形成されている。
定着ロール61の内部には、加熱源として、例えば、定格800Wのハロゲンヒータ66が配置されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンヒータ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が予め定めた設定温度(例えば、175℃)を維持するように調整している。
無端ベルト62は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じないように、原形が円筒形状等に形成された継ぎ目がないベルトである。無端ベルト62は、無端ベルト62の内部に配置された圧力パッド64とベルトガイド部材63と、さらには無端ベルト62の両端部に配置されたエッジガイド部材(図示せず)とによって回転自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61と接して配置され、定着ロール61に従って矢印D方向に回転(例えば、表面速度250mm/秒)する。
ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64は、例えば、無端ベルト62の内側において金属製のホルダ65に支持されている。そして、無端ベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。圧力パッド64のニップ部Nの入口側(上流側)には、幅の広いニップ部Nを確保するためのプレニップ部材64aが配置されている。また、圧力パッド64のニップ部Nの出口側(下流側)には、定着ロール61表面を局所的に押圧することで、トナー像表面を平滑化して画像光沢を付与するとともに、定着ロール61表面に歪み(凹み)を与えて用紙Pにダウンカールを形成するための剥離ニップ部材64bが配置されている。定着装置60では、無端ベルト62は、例えば、圧力パッド64により定着ロール61に約27°の巻き付き角度で覆われ、約7mm幅のニップ部Nを形成している。
無端ベルト62の内周面と圧力パッド64との間には、無端ベルト62の内周面と圧力パッド64との摩擦抵抗を小さくするために、摺動部材の一例としての摺動シート68が設けられている。
摺動シート68は、ニップ部Nの上流側端部が摺動シート固定部材(図示せず)によってホルダ65に固定されている。そして、無端ベルト62の回転方向に沿って、圧力パッド64と無端ベルト62内周面との間に挟持された状態で、ニップ部Nの全域にわたって配置されている。なお、摺動シート68のニップ部Nの下流側は、摺動シート68に歪みが生じないように、固定されず自由端(フリー)の状態に設定されている。そして、摺動シート68は、ニップ部Nにおいて圧力パッド64と定着ロール61との間に圧力が印加されている状態の下で、無端ベルト62内周面と圧力パッド64との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減している。
このような構成において、定着ロール61は、図示しない駆動モータに連結されて矢印C方向に回転し、この回転に従って無端ベルト62も矢印D方向に回転する。図1に示した画像形成装置の二次転写部20においてトナー像が静電転写された用紙Pは、定着入口ガイド56によって導かれて、定着装置60のニップ部Nに搬送される。そして、用紙Pがニップ部Nを通過する際に、用紙P上のトナー像はニップ部Nに作用する圧力と、定着ロール61から供給される熱とによって定着される。図2に示す定着装置60では、プレニップ部材64aの定着ロール61側の面が定着ロール61の外周面に略倣う凹形状であることにより、ニップ部Nの用紙搬送方向の幅が広くなり、安定した定着性能が確保される。
なお、ニップ部Nの下流側には、剥離ニップ部材64bによって定着ロール61から剥離された用紙Pを定着ロール61から分離し、画像形成装置の排出部へ向かう排紙通路に誘導するための剥離補助部材70が配置されている。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている。また、定着ロール61のニップ部Nの下流側には、定着ロール61の表面温度の差をできるだけ低減するための温度差低減部材615が定着ロール61の外表面に接して配置されている。このような温度差低減部材は、本実施形態に係る定着装置において、回転可能な回転部材または無端ベルト部材の表面に接触していることにより、温度差低減部材を備えていない場合と比較して、ニップ部形成部材の長手方向中央部に対する長手方向両端部の温度差が収束され、ニップ部の長手方向中央部に対する長手方向両端部におけるニップ圧力の上昇が更に抑制される。
次に、定着装置60を構成する各部材について説明する。
定着ロール61では、コア611は、例えば、鉄、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、銅等の熱伝導率の高い金属または合金、セラミックス、繊維強化金属(FRM)等で形成された、例えば外径φ30mm、肉厚1.8mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
耐熱性弾性体層612は、耐熱性の高い弾性体で構成され、特に、ゴム硬度がJIS−A硬度で15°以上45°以下程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましい。具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が用いられる。なかでも、表面張力が小さく、弾性に優れる等の点でシリコーンゴムが好ましい。このようなシリコーンゴムとしては、例えば、RTV(room temperature vulcanization:室温加硫)シリコーンゴム、HTV(high temperature vulcanization:高温加硫)シリコーンゴム等が挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)等が挙げられる。定着装置60では、例えば、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムが耐熱性弾性体層612として600μmの厚さでコア611に被覆されている。耐熱性弾性体層612の厚さは、通常、3mm以下であり、好ましくは、0.1mm以上1.5mm以下の範囲内である。耐熱性弾性体層612をコア611の表面に形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、公知のコーティング法、成型等が採用される。
定着ロール61の耐熱性弾性体層612の外周面に離型層613が形成されていることにより、トナー像のオフセットが効果的に防止され、安定した状態で定着装置60が稼動される。離型層613の材質としては、トナー像に対し適度な離型性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの材質の中でもフッ素樹脂が好適に挙げられる。フッ素樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体等のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。さらに、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらの中でも、特に耐熱性、機械特性等の面から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)等のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好適に用いられる。
離型層613の厚さは、通常、10μm以上50μm以下の範囲内であり、好ましくは15μm以上30μm以下の範囲内である。離型層613を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、上述したコーティング法、押出し成型によって形成されたチューブを被覆する方法等が挙げられる。定着装置60では、例えば、離型層613として厚さ30μmのPFAが被覆されている。
定着ロール61の外表面に温度差低減ロール615を接触して配置されていることにより、温度差低減ロール615が定着ロール61の外表面に接触して配置されていない場合と比較して、定着ロール61の外表面の温度分布の差がより小さくなり、トナー像のホットオフセットが効果的に抑制され、定着装置60が安定した状態で稼動される。温度差低減ロール615は、例えば、アルミや銅等の高熱伝導の金属ロールの表面に、トナー等の汚れが付着しないようにフッ素樹脂等の離型層がコートされているものが用いられる。
無端ベルト62は、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じないように、原形が円筒形状等に形成された継ぎ目がないベルトである。無端ベルト62は、基材層と、この基材層の定着ロール61側の面(外周面)または両面に被覆された離型層(表面層)とを含んで構成されている。基材層は、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等から選ばれた一つまたは複数の混合体が、耐熱性、機械特性等の観点から好適に用いられる。
無端ベルト62の基材層の表面に被覆される離型層(表面層)としては、例えば、フッ素樹脂が用いられる。ここで、フッ素樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体等のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。さらに、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらの中でも、特に耐熱性、機械特性等の面から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)等のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好適に用いられる。離型層(表面層)の厚さは、通常、5μm以上100μm以下程度、好ましくは10μm以上30μm以下程度の範囲に設定される。
ニップ部形成部材の一例としての圧力パッド64は、無端ベルト62の内部(内周面側)に配置され、例えば、プレニップ部材64aと剥離ニップ部材64bとを含んで構成される。圧力パッド64は、バネや弾性体等によって、例えば30kgfの荷重で定着ロール61を押圧するようにホルダ65に支持されている。定着装置60では、ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64を構成する、プレニップ部材64aおよび剥離ニップ部材64bの一方または双方が、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さい部材である。
フリーベルトニップ方式等の定着装置においては、その定着装置において設定されている通紙幅の中で最も広い幅(最大通紙幅)に対して小さい幅の用紙等の記録媒体を通過させる場合、例えばA3サイズの用紙を通紙可能な定着装置でA4サイズの用紙を縦に通紙する場合やB5サイズの用紙を通紙する場合には、ニップ部の長手方向両端部は、用紙が通過しない領域(この領域を「非通紙領域」という)となり、用紙による熱吸収が行われず、非通紙領域では著しい温度上昇が生じることがある。著しい温度上昇が生じると、圧力パッドの熱膨張量の不均一化によりニップ部の圧力分布が通常の使用状態から変化してしまい、負荷トルクの増大や用紙搬送不良による紙しわ、画像のずれ等の問題が引き起こされることがある。さらに、最大通紙幅に対して小さい幅の用紙等について連続通紙を行うと、非通紙領域の温度が上昇し、熱膨張により非通紙領域のニップ圧力もより増大することとなる。
このニップ圧力が増大している状態で、最大通紙幅のA3サイズ等の用紙が通紙されると、非通紙領域にA3サイズ等の用紙が接触し、過大圧力により、トナーのホットオフセットが生じたり、定着後のトナー像が用紙幅方向両端部と中央部でグロス差が生じたり、用紙のカール量が増大してしまったりする。また、両端部のニップ圧力増大により、回転トルクが増大し、定着回転体やその駆動機構、定着装置内の部品などの損傷につながることもある。
例えば、非通紙領域の温度上昇が高くなりすぎた場合に、一時的に通紙定着動作を中断し、定着部材と加圧部材を空回転することで非通紙領域の温度を下げたり、通紙間隔を広げたり、通紙速度を落としたりして温度上昇を防ぐことを行っているが、いずれも生産性を落とす結果となり、使用者に不便を強いていた。また、定着ロール等の表面温度の略均一化をはかる目的で、例えば、金属製等の温度差低減ロールを接触させる策も取られているが、定着ロールや無端ベルトの温度差は比較的すぐに収束されるものの、ニップ部形成部材はある程度の熱容量を有し、また、温度差低減部材の効果も定着ロール等を介して間接的にしか得られないため、非通紙領域の温度差はすぐに収束せず、ニップ部の長手方向中央部と両端部との圧力差の低減は難しかった。特に高画質を要求される軽印刷カラー市場向けとしては、グロス差やカールについては大きな課題となっていた。
本実施形態に係る定着装置60は、ニップ部形成部材の長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいことを特徴とする。本実施形態に係る定着装置60では、ニップ部形成部材の長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいことにより、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材を備えていない定着装置と比較して、ニップ部の長手方向中央部に対する長手方向両端部におけるニップ圧力の上昇が抑制された定着装置が提供される。このように、連続通紙後において、ニップ部の非通紙領域の温度が通紙領域に対して上昇しても、ニップ部における長手方向中央部に対する長手方向両端部の圧力上昇を抑制することにより、非通紙領域のニップ圧力上昇により発生するホットオフセット、紙しわ、用紙カールといった印刷欠陥、および装置故障の不具合を改善し、生産性を落とさず、かつ、装置を大型化しなくても、高画質を要求するユーザに、実用可能で信頼性の高い、小型かつ低コストの定着装置および画像形成装置が提供される。
また、本実施形態に係る定着装置60では、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さく、無端ベルトの移動に対し固定されており、且つ、ニップ部形成部材の温度を調整するための加熱源を有しないニップ部形成部材を備えることにより、ニップ部形成部材が無端ベルトの移動に対し移動可能であるか、または加熱源を有する場合と比較して、これらのニップ部形成部材の温度を調整する装置を備えなくとも、定着装置のニップ部の長手方向中央部に対する長手方向両端部におけるニップ圧力の上昇が抑制されることにより、高画質を要求するユーザに、実用可能で信頼性の高い、小型かつ低コストの定着装置および画像形成装置が提供される。
ニップ部形成部材等の「長手方向中央部」(以下、「中央部」とも言う。)とは、定着装置におけるニップ部形成部材等の長手方向の中央に相当する領域を含む領域であればよく、例えば、ニップ部形成部材等の長手方向の中央の位置から、両端の各々に向かって、長手方向の長さの20%以下の長さを占める領域、すなわち、ニップ部形成部材等の長手方向の中央の位置を含み、ニップ部形成部材等の長手方向の長さの40%以下を占める領域である。ニップ部形成部材等の「長手方向両端部」(以下、「両端部」とも言う。)とは、定着装置におけるニップ部形成部材等の長手方向の両末端を含む領域であればよく、例えば、ニップ部形成部材等の長手方向の両末端から中央に向かって、長手方向の長さの20%以下の長さを占める領域、すなわち、ニップ部形成部材等の長手方向の両末端の位置を含み、ニップ部形成部材等の長手方向の長さの40%以下を占める領域である。
ニップ形成部材における「熱膨張率」とは、ニップ形成部材が無端ベルト部材を介して回転可能な回転部材を押圧する方向に沿った方向の、ニップ形成部材の線膨張率を意味する。また、ニップ形成部材が熱膨張率の異なる複数の部材で構成されている場合は、回転部材を押圧する方向に沿った方向の各部材の線膨張率を、各部材の厚みに応じて平均化した線膨張率であることを意味する。
本実施形態に係る定着装置を構成するニップ形成部材における熱膨張率は、JIS−K7197プラスチックの熱機械分析による線膨脹率試験方法による測定を行うことにより求める。
本実施形態に係る定着装置は、熱膨張率が中央部から両端部に向かって連続的または段階的に小さいニップ部形成部材を備えることが好ましい。熱膨張率が中央部から両端部に向かって連続的または段階的に小さい構成をニップ部形成部材が備えることによって、熱膨張率が中央部から両端部に向かって連続的または段階的に少ないニップ部形成部材を備えていない場合に比較して、中央部から両端部に至る領域におけるニップ部形成部材の熱膨張が抑制され、ニップ部の中央部に対する両端部のニップ圧力の上昇が更に抑制された定着装置が得られる。更には、中央部から両端部に至る領域のいずれかが非通紙領域であった場合、連続通紙後において、ニップ部の非通紙領域の温度が通紙領域に対して上昇しても、ニップ部における通紙領域に対する非通紙領域の圧力上昇を抑制することにより、非通紙領域のニップ圧力上昇により発生するホットオフセット、紙しわ、用紙カールといった印刷欠陥、および装置故障の不具合が改善される。
本実施形態に係る定着装置を構成するニップ部形成部材において、「熱膨張率が長手方向中央部から長手方向両端部に向かって連続的に小さい」とは、両端部に近い位置の熱膨張率が、中央部に近い位置の熱膨張率に対して少なくとも大きくならないことを意味する。
本実施形態に係る定着装置を構成するニップ部形成部材において、「熱膨張率が長手方向中央部から長手方向両端部に向かって段階的に小さい」とは、ニップ部形成部材において、長手方向にわたって、その領域内において熱膨張率が略一定である領域が複数存在し、複数の領域のうち両端部に近い側の領域の熱膨張率が、複数の領域のうち中央部に近い側の領域の熱膨張率に対して小さいことを意味する。ここで、長手方向のある領域内における熱膨張率が、その領域内の平均値に対して90%以上110%以内である場合、その領域について「熱膨張率が略一定である」という。
ニップ部形成部材は、ニップ部を通過するように設定された記録媒体の中で通紙幅が最も狭い記録媒体が通過する範囲に対応する最小通紙幅対応領域の熱膨張率が、略一定、即ち、その領域の平均値に対して90%以上110%以下であることが好ましい。ニップ部を通過するように設定された通紙幅の中で最も狭い通紙幅(最小通紙幅)のニップ部は、トナー像を定着する全ての記録媒体が通過するように設定されているため、最小通紙幅対応領域にあるニップ部形成部材の熱膨張率を略一定にすることにより、最小通紙幅の範囲内においてニップ部の圧力差が低減される。これにより、最小通紙幅の範囲内において、トナーのホットオフセット、トナー画像におけるグロス差、用紙のカール量の増大が抑制される。
ニップ部形成部材は、熱膨張率が中央部から両端部に向かって段階的に小さく、長手方向にわたって熱膨張率が略一定である領域の範囲が、ニップ部を通過するように設定された記録媒体の各通紙幅に対応していることが好ましい。このようなニップ部形成部材は、記録媒体の各通紙幅に対応する領域にある熱膨張率が略一定であることにより、ニップ部を通過するように設定された記録媒体の通紙幅に対応する領域にある熱膨張率が略一定でない場合と比較して、各通紙幅の範囲内においてニップ部の圧力差が低減され、各用紙幅を有する記録用紙につき、ホットオフセット、トナー画像におけるグロス差、用紙のカール量の増大が抑制される。
ニップ部形成部材は、例えば、ゴム材料、硬質樹脂等の樹脂;鉄、アルミニウム、SUS等の金属;シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物(セラミック)等で形成される。
ニップ部形成部材は、樹脂を含んで形成されることが好ましい。ニップ部形成部材を形成するゴム材料、硬質樹脂等の樹脂は、耐熱性を有することが好ましく、例えば、荷重たわみ試験法(JIS−K7191)で評価した耐熱性が150℃以上であることが好ましい。
本実施形態において「ゴム材料」とは、ゴム弾性を有する材料であって、例えば、ゴム硬度5°以上60°以下(JIS−A)の弾性体である。「ゴム材料」は、天然ゴムのみならず,熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー等の合成ゴムを含み、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が具体例として挙げられる。ゴム材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態において「硬質樹脂」とは、ゴム弾性を有さない樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリマー等がある。ここで「樹脂」とは高分子化合物を意味する。硬質樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ニップ部形成部材は、ゴム材料、硬質樹脂等の樹脂に充填材が配合されたもので形成されてもよい。下記するように、充填材および樹脂を含み、中央部と両端部とで充填材のニップ部形成部材に対する配合量(含有量)または充填材の配向軸が異なるニップ部形成部材を備える定着装置は、充填材および樹脂を含み、中央部と両端部とで充填材のニップ部形成部材に対する配合量または充填材の配向軸が異なるニップ部形成部材を備えていない場合と比較して、ニップ部の長手方向中央部に対する長手方向両端部におけるニップ圧力の上昇が抑制された定着装置が簡便に製造されるため、好ましい。また、充填材および樹脂を含み、樹脂がゴム材料を含み、中央部と両端部とで充填材のニップ部形成部材に対する配合量または充填材の配向軸が異なるニップ部形成部材を形成することにより、樹脂がゴム材料を含まない場合と比較して、対向する部材に対しストレスが小さい定着装置が製造されるため、好ましい。
充填材は、例えば、シリカ、チタニア、カーボン、アルミナ、ジルコニア、およびこれらの混合物で形成される粉末である。樹脂に配合される充填材の配合量を変えることにより、ニップ部形成部材の熱膨張係数が調整される。
また、充填材として、粉体内部に気体部分を持つ中空充填材を用いてもよい。中空充填材の内部に気体部分があることで、中空充填材の配合量が増加するに従ってニップ部形成部材の熱膨張係数が低下する。中空充填材としては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、アルミノシリケートバルーン、ジルコニアバルーン等がある。中空充填材の平均粒径は、例えば、200μm以下、通常5μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上150μm以下である。中空充填材の粒径が大きすぎると配合時や成型時の圧力により中空充填材が破壊されしまうおそれがあり、小さすぎると熱膨張率を低下する効果が得られないおそれがある。
充填材の配合量は、例えば、樹脂100質量部に対して、2〜60質量部、好ましくは5〜40質量部である。充填材の配合量が少なすぎると熱膨張係数を低下させる効果が不十分となるおそれがあり、充填材の配合量が多すぎると、配合が困難となるおそれがある。充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材を製造する方法の例について説明する。
第一の方法は、ニップ部形成部材が充填材および樹脂を含み、ニップ部形成部材の長手方向中央部と長手方向両端部とでは、前記充填材の前記ニップ部形成部材に対する配合量または前記充填材の配向軸が異なるようにニップ形成部材を製造する方法である。この製造方法により、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材が簡便な方法で製造される。
より具体的には、例えば、図5(a)〜(c)に示すように、充填材の配合量が少ない(又は、充填材が配合されていない)領域と、その領域の外側にある、充填材の配合量が連続的または段階的に多くなる領域とを含む成形体を形成して、当該配合量の分布の異なる方向が長手方向と略平行になるように、予め定められた形状に加工することにより、充填材の配合量が少ない長手方向中央部では熱膨張率が大きく、充填材の配合量が多い長手方向両端部では熱膨張率が小さいニップ部形成部材が形成される。
ニップ形成部材における充填材の分布は、図5(a)に示すように、充填材の配合量が、当該軸方向に沿って、中央部から両端部に向かって連続的に多くなるものであってもよく、また、図5(b)または(c)に示すように、充填材が配合されている領域と配合されていない領域を有し、これらの領域の厚みが当該軸方向に沿って、中央部から両端部に向かって連続的または段階的に変わるものであってもよい。
図5(a)のような充填材の配合量が連続的に異なる成形体は、充填材配合量の異なる材料を成型型に射出する2つのノズルをもち、各々のノズルからの射出量を制御可能な混色射出成型装置を用いた方法などの、既知の方法によって製造される。
また、アスペクト比が高い充填材、例えばアスペクト比が10以上である充填材を、配向軸をできるだけ揃えて樹脂に配合した成形体を形成し、ニップ部形成部材の長手方向においてその充填材の配向軸を異ならしめることによっても、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材が形成される。例えば、ガラスファイバーである充填材が配合されたPPS(樹脂)では、充填材の長軸方向に沿った方向の熱膨張率(線膨張率)に対する、充填材の短軸方向に沿った方向の熱膨張率(線膨張率)は、30%以上90%以下である。このような高アスペクト比である充填材としてはガラス繊維(GF)および炭素繊維が挙げられる。そのような高アスペクト比の充填剤が配合された樹脂で形成された成形体としては、例えば、東レ株式会社製「トレリナ」として入手可能な、GFが配合されたPPSで形成された成形体が挙げられる。このGFが配合されたPPSで形成された成形体は、GFが配合されないPPSに対して熱膨張率が抑制され、GFの配向方向によって熱膨張率が数倍程度変化する。
アスペクト比が高い充填材の樹脂中の配向軸を揃えた成形体は、注入成型の方法によって製造される。
長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材を製造する第二の方法は、少なくとも2つ以上の異なる熱膨張率を有する層を、長手方向中央部と長手方向両端部とでその各層の厚みが異なるように積層してニップ部形成部材を製造する方法である。この製造方法によっても、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材が、簡便な方法で製造される。
少なくとも2つ以上の異なる熱膨張率を有する層を、長手方向中央部と長手方向両端部とでその各層の厚みが異なるように積層するには、例えば、図6(a)および(b)に示すように、熱膨張率の高い材料をニップ部形成部材の長手方向中央部において厚く、熱膨張率の低い材料をニップ部形成部材の長手方向両端部において厚く配することで、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材が形成される。
この方法における熱膨張率が異なる各層に用いられる材料としては、例えば、熱膨張率の異なるゴム材料、熱膨張率の異なる硬質樹脂等の樹脂等が用いられる。また、熱膨張率の高いゴム材料または硬質樹脂等の樹脂と、熱膨張率の低いSUS等の金属または金属酸化物とを組み合わせることによっても、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材が形成される。さらには、熱膨張率の高い材料として、充填剤の配合量が少ない(又は、充填剤が配合されていない)樹脂を用い、熱膨張率の低い材料として、充填剤の配合量が多い(又は、充填剤が配合された)樹脂を用いてもよい。第二の方法において、これら熱膨張率の異なる材料は、3種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお図5および図6に示すニップ部形成部材において、無端ベルト部材または摺動部材を介して回転部材と対向する面は、特に限定されるものではなく、図6(a)および(b)に示すニップ部形成部材における上面(印刷面の「天」側)および下面(印刷面の「地」側)のいずれであってもよい。また、ニップ部形成部材を製造する方法は上記の2つに限定されるものではなく、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材が形成されるものであれば、どのような方法により形成されたニップ部形成部材であっても、本実施形態に係る定着装置に搭載される。
定着装置60では、無端ベルト62は、例えば、ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64により定着ロール61に約27°の巻き付き角度で覆われ、約7mm幅のニップ部Nを形成している。定着装置60を構成するニップ部形成部材の一例である圧力パッド64の硬度は、一概に限定されないが、通常、ゴム硬度で10°以上100°以下(JIS−A)の範囲である。
ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64を構成する、プレニップ部材64aについて説明する。プレニップ部材64aは、例えば、幅5mm、厚さ5mm、長さ320mmの材料で構成され、プレニップ部材64aの定着ロール61側の面は、定着ロール61の外周面に略倣う凹状曲面で形成されている。
プレニップ部材64aは、プレニップ部材として要求される硬さの観点から、ニップ部形成部材を構成する材料のうち、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム材料を用いることが好ましい。プレニップ部材64aの硬さは、特に限定されないが、通常、JIS−A硬度で10°以上40°以下の範囲である。
プレニップ部材64aを長手方向中央部よりも長手方向両端部で熱膨張率が小さいプレニップ部材とする場合は、上記の長手方向中央部よりも長手方向両端部で熱膨張率が小さいニップ部形成部材を形成する方法に従って形成される。プレニップ部材64aの熱膨張率を調整する目的で充填材を配合する場合は、プレニップ部材として要求される硬さの観点から、上記の中空充填材が配合されたゴム材料を用いてプレニップ部材64aを形成することが好ましく、ガラスバルーンが配合されたシリコーンゴムを用いることがより好ましい。
上記の中空充填材が配合されたゴム材料を用いてプレニップ部材64aを形成する場合は、中空充填材の真比重が0.1以上0.8以下であることが好ましく、0.2以上0.7以下であることがより好ましい。中空充填材の真比重が小さすぎると中空充填材の耐圧強度が不十分で、配合または成型する際に中空充填材の構造が破壊されてしまい、その性能が引き出せなくなるおそれがある。また、中空充填材の真比重が大きすぎると、比重低下の効果を損なうだけでなく、中空充填材の殻部分が厚くなり、熱伝導率が上昇してしまうおそれがある。
中空充填材の配合量は、ゴム材料100質量部に対して、2質量部以上60質量部以下、好ましくは5質量部以上40質量部以下である。中空充填材の配合量が少なすぎると熱膨張係数を低下させる効果が不十分となるおそれがあり、中空充填材の配合量が多すぎると、配合が困難となるおそれがある。中空充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64を構成する剥離ニップ部材64bについて説明する。剥離ニップ部材64bは、例えば、幅3mm、厚さ5mm、長さ330mmの材料で構成される。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状がある一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。
剥離ニップ部材64bは、剥離ニップ部材として要求される硬さの観点から、ニップ部形成部材を構成する材料のうち、例えば、PPS、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の硬質樹脂;鉄、アルミニウム、SUS等の金属;金属酸化物等を用いることが好ましい。
剥離ニップ部材64bを長手方向中央部よりも長手方向両端部で熱膨張率が小さい剥離ニップ部材とする場合は、上記の長手方向中央部よりも長手方向両端部で熱膨張率が小さいニップ部形成部材を形成する方法に従って形成される。熱膨張率を調整する目的で充填材が配合された剥離ニップ部材64bとしては、例えば、GFが配合されたPPSが挙げられる。
無端ベルト62の内周面と圧力パッド64との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する摺動部材としての摺動シート68の材質は、摩擦係数が小さく、耐摩耗性および耐熱性に優れた材質が適している。具体的には、焼結成型(シンタード成型)されたPTFE樹脂シート、変性ポリテトラフルオロエチレンを含浸させたガラス繊維シート、ガラス繊維にフッ素樹脂で形成されたシートを加熱融着した積層シート等が用いられる。
潤滑剤塗布部材として、定着装置60の長手方向にわたって潤滑剤塗布部材67が配置されている。潤滑剤塗布部材67は、無端ベルト62の内周面に対して接触するように配置され、潤滑剤を適量供給する。これにより、無端ベルト62と摺動シート68とが接する摺動部に潤滑剤を供給し、摺動シート68を介した無端ベルト62と圧力パッド64との摩擦抵抗を低減して、無端ベルト62の円滑な回転を図っている。
潤滑剤としては、定着温度環境下での長期使用に対する耐久性を有し、かつ、無端ベルト62内周面との濡れ性を維持できるものが適している。例えば、シリコーンオイルやフッ素オイル等の液体状のオイルや、固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース等、さらにはこれらを組み合わせたものが用いられる。シリコーンオイルとして、ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等を用いてもよい。また、フッ素オイルとして、パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイルを用いてもよい。定着装置60では、例えば、粘度300cStのアミノ変性シリコーンオイル、(KF8009A:信越化学工業株式会社製)が用いられる。
ここでは、加熱側の定着ロールがコア上に樹脂弾性体層を備えるソフトロールであり、トナー像と接しない加圧側に無端ベルトがある構成を例として説明したが、加熱側の定着ロールが樹脂弾性体層を有さないハードロールであり、加圧側の無端ベルト内のニップ部形成部材として、樹脂弾性体で形成された圧力パッドを用いる構成であってもよい。加熱側の定着ロールが樹脂弾性体層を有さず、加圧側の無端ベルト内に樹脂弾性体で形成された圧力パッドを用いる構成の例として、例えば、図3に示す定着装置が挙げられる。
図3は、本実施形態に係る定着装置の構成の他の例を示す側断面図である。定着装置60は、回転可能な回転部材の一例としての定着ロール61と、定着ロール61に接触しながら移動可能な無端ベルト部材の一例としての無端ベルト62と、無端ベルト62を介して定着ロール61と対向するように配置され、無端ベルト62を介して定着ロール61を加圧して定着ロール61と無端ベルト62との間に用紙Pが通過するニップ部Nを形成するニップ部形成部材の一例としての圧力パッド64とにより主要部が構成されている。図3の定着装置は、定着ロール61および圧力パッド64が、下記の構成のものであることを除き、図2の定着装置において説明したものと同様の構成のものが用いられる。
定着ロール61は、例えば、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に離型層613を積層して構成され、樹脂弾性体層を有さない円筒状ロールであり、回転自在に支持されて予め定めた表面速度(例えば、250mm/秒)で回転する。定着ロール61は、例えば、外径が軸方向で略一様ないわゆるストレートロールで形成されている。定着ロール61の内部には、加熱源として、例えば、定格800Wのハロゲンヒータ66が配置されている。
ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64は、例えば、無端ベルト62の内側において金属製のホルダ65に支持されている。そして、無端ベルト62を介して定着ロール61に押圧される状態で配置され、定着ロール61との間でニップ部Nを形成している。
図3に示す定着装置60では、ニップ部形成部材64の定着ロール61側の面が定着ロール61の外周面に略倣う凹形状であることにより、ニップ部Nの用紙搬送方向の幅が広くなり、安定した定着性能が確保される。なお、ニップ部Nの下流側には、定着ロール61から剥離された用紙Pを定着ロール61から分離し、画像形成装置の排出部へ向かう排紙通路に誘導するための剥離補助部材70が配置されている。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている
図3に示す定着装置60において、ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64は、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さい部材である。このような圧力パッド64としては、図2の定着装置60においてプレニップ部材64aとして説明したものと同様の構成のものが用いられる。
また、ここまでは無端ベルト部材がトナー像と接しない側の加圧ベルトである構成、すなわち加圧側に無端ベルト部材を用い、加熱側に定着ロールを用いた構成を例として説明したが、無端ベルト部材がトナー像と接する加熱側の定着ベルトであり、ニップ部の無端ベルト部材の内面側に加熱源が存在せず、加圧側に加圧ロールを用いた構成であってもよい。加熱側に無端ベルトを用い、無端ベルトの内面側に加熱源が存在せず、加圧側に加圧ロールを用いた構成の例として、例えば、図4に示す定着装置が挙げられる。
図4は、本実施形態に係る定着装置60の構成の他の例を示す側断面図である。定着装置60は、回転可能な回転部材の一例としての加圧ロール92と、加圧ロール92に接触しながら移動可能な無端ベルト部材の一例としての無端ベルト62と、無端ベルト62を介して加圧ロール92と対向するように配置され、無端ベルト62を加圧ロール92に圧接させて加圧ロール92と無端ベルト62との間に用紙Pが通過するニップ部Nを形成するニップ部形成部材の一例としての圧力パッド64と、圧力パッド64と無端ベルト62との間の摩擦抵抗を低減する、シート状の摺動部材(図示せず)と、交流電流により生じる磁界によって無端ベルト62を加熱する加熱源の一例としての磁場発生ユニット90とにより主要部が構成されている。
無端ベルト62は、無端ベルト62の内部に配置された圧力パッド64とベルトガイド部材63と、さらには無端ベルト62の両端部に配置されたエッジガイド部材(図示せず)とによって回転自在に支持されている。無端ベルト62は、ニップ部Nにおいて圧力パッド64により加圧ロール92に押圧されるように配置され、矢印D方向に回転する加圧ロール92に従って矢印C方向に回転する。
圧力パッド64は、例えば、無端ベルト62の内側において金属製等のホルダ65に支持されている。そして、無端ベルト62を介して加圧ロール92に押圧される状態で配置され、加圧ロール92との間でニップ部Nを形成している。
図4に示す定着装置60において、ニップ部形成部材の一例である圧力パッド64は、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さい部材である。このような圧力パッド64としては、図2の定着装置60において剥離ニップ部材64bとして説明したものと同様の構成のものが用いられる。
無端ベルト62の内周面と圧力パッド64との間には、無端ベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を小さくするために、低摩擦のシート状の摺擦部材(図示せず)が設けられている。
加圧ロール92は、例えば、中実の鉄製のコア(円柱状芯金)921と、コア921の外周面を被覆する、シリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層922と、PFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層923とを有する。なお、加圧ロール92の製造方法としては、例えば、PFAチューブ(離型層923になる)の内周面に、接着用プライマーを塗布したフッ素樹脂チューブと中実シャフト(コア921になる)とを成形金型内にセットし、フッ素樹脂チューブと中実シャフトとの間に液状発泡シリコーンゴムを注入後、加熱処理によりシリコーンゴムを加硫、発泡させて耐熱性弾性体層922を形成する方法が挙げられる。
加圧ロール92は、無端ベルト62に対向するように配置され、矢印D方向に回転し、無端ベルト62を移動させる。また、加圧ロール92と圧力パッド64とにより無端ベルト62を挟持した状態で保持してニップ部Nが形成され、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させ、熱および圧力を加えて未定着トナー像が用紙Pに定着される。
磁場発生ユニット90は、断面が無端ベルト62の形状に沿った曲線形状を有し、無端ベルト62の外周表面と例えば0.5mmから2mm程度の間隙で設置される。磁場発生ユニット90は、磁界を発生させる励磁コイル901と、励磁コイル901を保持するコイル支持部材902と、励磁コイル901に電流を供給する励磁回路903とを有する。
励磁コイル901としては、例えば、相互に絶縁された例えば直径φ0.5mmの銅線材を16本から20本程度束ねたリッツ線を、長円形状や楕円形状、長方形状等の閉環状に巻いて形成したものが用いられる。励磁コイル901に励磁回路903によって予め定められた周波数の交流電流を印加することにより、励磁コイル901の周囲に交流磁界Hが発生する。交流磁界Hが、無端ベルト62の金属層を横切る際に、電磁誘導作用によってその交流磁界Hの変化を妨げる磁界を発生するように渦電流Iが生じる。励磁コイル901に印加する交流電流の周波数は、例えば、10kHzから50kHzに設定する。渦電流Iが無端ベルト62の金属層を流れることによって、金属層の抵抗値Rに比例した電力W(W=I2R)によるジュール熱が発生し、無端ベルト62が加熱される。
コイル支持部材902は、例えば、耐熱性を有する非磁性材料で構成される。このような非磁性材料としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等が挙げられる。
なお、本実施形態では、無端ベルト62を加熱する加熱源の一例として磁場発生ユニット90を備える電磁誘導加熱方式の定着装置60について説明したが、加熱源としては、輻射ランプ発熱体、抵抗発熱体を採用してもよい。
輻射ランプ発熱体としては、例えば、ハロゲンランプ等が挙げられる。抵抗発熱体としては、例えば、鉄−クロム−アルミ系、ニッケル−クロム系、白金、モリブデン、タンタル、タングステン、炭化珪素、モリブデン−シリサイド、カーボン等が挙げられる。
定着装置60では、加圧ロール92の矢印D方向への回転に伴い、無端ベルト62が回転し、励磁コイル901により発生した磁界に曝される。この際、無端ベルト62中の金属層には渦電流が発生し、無端ベルト62の外周面が定着可能な温度まで加熱される。このようにして加熱された無端ベルト62は、加圧ロール92とのニップ部Nまで移動する。搬送手段により、未定着トナー像がその表面に設けられた用紙Pが定着入口ガイド56を介して定着装置60に搬入される。用紙Pが無端ベルト62と加圧ロール92とのニップ部Nを通過した際に、未定着トナー像は無端ベルト62により加熱され用紙Pの表面に定着される。その後、画像が表面に形成された用紙Pは、搬送手段により搬送され、定着装置60から排出される。また、ニップ部Nにおいて定着処理を終え、外周面の表面温度が低下した無端ベルト62は、励磁コイル901方向へと回転し、次の定着処理に備えて再度加熱される。
なお、ニップ部Nの下流側には、無端ベルト62から剥離された用紙Pを無端ベルト62から分離し、画像形成装置の排出部へ向かう排紙通路に誘導するための剥離補助部材70が配置されている。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が無端ベルト62の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に無端ベルト62と近接する状態でバッフルホルダ72によって保持されている。
以下、実施例に基づき、本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
各実施例および比較例において、図2に示す定着装置を評価に用いた。定着装置の各構成部品の仕様は以下のとおりである。
定着ロールは、外径26mm、肉厚1.8mm、長さ360mmである円筒状鉄製のコアの外周面に、厚さ600μmのシリコーンHTVゴム(ゴム硬度33度:JIS−A)の耐熱性弾性体層が設けられ、この耐熱性弾性体層の表面に、厚さ30μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のチューブが離型層として被覆され、鏡面状態に近い表面に仕上げられているものを用いた。定着ロールのコアの内部には、加熱源としてハロゲンランプ(800w)が配置されている。定着ロールの表面温度は、加熱された定着ロールの表面に接した状態で配置された感温素子である温度センサーおよび温度コントローラーにより制御した。
無端ベルト部材は、周長94mm、厚さ80μm、幅344mmの熱硬化性ポリイミド樹脂を基材層とし、この基材層の外周面に、カーボンブラックを10wt%配合したテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を厚さが30μmになるようにコーティングして離型層が形成されたものを用いた。
無端ベルト部材を内面側から押圧するニップ部形成部材である圧力パッドは、幅6mm、厚さ5mm、長さ340mmに形成されたプレニップ部材と、幅2.5mm、厚さ5mm、長さ340mmに形成された剥離ニップ部材とで構成されたものを用いた。プレニップ部材および剥離ニップ部材は、下記の各実施例および比較例に記載したものを用いた。
ニップ部形成部材と無端ベルト部材の間には摺動シートが設けられ、摺動シート表面には、予め潤滑剤として粘度300cStのアミノ変性シリコーンオイル、(KF8009A:信越化学工業株式会社製)を、0.5cc塗布した。摺動シートの大きさは、幅340mm、長さ70mmとし、圧力パッドは、無端ベルト部材を介して圧縮コイルスプリングにより定着ロールを30kgの荷重で押圧した。
定着ロールへの無端ベルト部材の巻き付け角度は約27°であり、ニップ部の幅は、約7mmであった。モーターから定着ロールに伝達された駆動力により、定着ロールおよび無端ベルト部材は、速度250mm/秒で回転した。
<実施例1>
剥離ニップ部材として、充填材としてのガラスファイバー(GF)が配合されたポリフェニルスルフィド(PPS)樹脂(東レ株式会社製「トレリナ」として入手可能)を用いて、混色射出成型機により、図5(a)に示すような、中央部の充填材配合量が少なく、両端部の充填材配合量が多い成形体を形成した。この剥離ニップ部材において、中央部のGF配合量は20質量%であり、両端部に向かうにつれてGF配合量が連続的に増加し、両端部のGF配合量は45質量%であった。この剥離ニップ部材における長手方向中央部の熱膨張率は6.0×10−5/Kであり、両端部の熱膨張率は1.5×10−5/Kであった。また、プレニップ部材として、ガラスバルーンが配合されていないシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY35−1321)を用いた。このプレニップ部材の中央部および両端部の熱膨張率はいずれも、10×10−5/Kであった。
定着装置の長手方向にわたって潤滑剤塗布部材を配置し、潤滑剤として、300cStのアミン変性シリコーンオイルを1.5mL塗布した。次に、上記の剥離ニップ部材およびプレニップ部材で構成されるが組み込まれた圧力パッド(無端ベルト部材に対して固定されており、加熱源を有しない)を備える定着装置を画像形成装置(富士ゼロックス株式会社製:カラー複合機 DCIVC4405)に搭載した。
定着ロールの温度を175℃に制御し、坪量90gsmのA4用紙を、A4用紙の短辺が用紙搬送方向と略直角になるように、35枚/分の速度で200枚連続での印字定着を行った。印字定着に用いた印字パターンは50%のハーフトーン画像であった。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後の定着ロールの非通紙領域の温度は、最大で通紙領域と35Kの温度差となった。また、A4用紙を200枚連続で印字定着した直後におけるニップ部のニップ圧力を、用紙幅がニップ部形成部材より広い感圧紙(富士フイルム株式会社製、プレスケール極超低圧type)をニップ部に通過させることにより測定した。この定着装置におけるニップ部の長手方向における圧力分布は、感圧紙により濃度分布として表され、前記「富士フイルム株式会社製、プレスケール極超低圧 type」に付属の標準濃度変換表により換算した結果、図7に示すような相対的な圧力分布を有するものであった。その結果、ニップ部形成部材の中央部のニップ圧力に対するニップ部形成部材の両端部のニップ圧力は約1.3倍であり、剥離ニップ部材の熱膨張に起因する両端部のニップ圧力上昇が抑制されていた。
上記と同様に、定着ロールの温度を175℃に制御し、坪量90gsmのA4用紙を、A4用紙の短辺が用紙搬送方向と略直角になるように、35枚/分の速度で200枚連続での印字定着を行った後、引き続き坪量140gsmのA3用紙を、A3用紙の短辺が用紙搬送方向と略直角になるように、20枚/分の速度で30枚連続で印字定着した。
上記のようにして印字定着されたA3用紙について、A4用紙の縦送り方向(SEF)通紙幅より内側の領域に対する、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域のグロス差(端部グロス上昇)は、60度グロスメータ(グロスメータ(日本電色工業株式会社製、VG 2000)で6以下であり、A3用紙に印字された画像はいずれも略実用上問題ない画像であった。A3用紙の30枚連続での印字定着において、紙しわや定着不良は発生しなかった。印字定着されたA4用紙およびA3用紙はいずれもカール量が15mm以下であった。目視の結果、印字定着されたA3用紙はいずれも、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域であってもホットオフセットが見られなかった。
上記のようにA4用紙200枚の連続印字定着とA3用紙30枚の連続印字定着を繰り返して、A4用紙およびA3用紙の合計で10万枚の印字定着を行ったが、ロールやベルトの各層間の剥がれや、ロールの軸受け部や周辺部材の損傷もなく、潤滑剤が熱劣化してベルト摺動トルクが増大することによる紙しわや画像ズレも発生しなかった。
<実施例2>
プレニップ部材として、図6(b)に示すように低熱膨張率材料と高熱膨張率材料とを積層して形成された部材を用いた。高熱膨張率材料としては、ガラスバルーンが配合されていないシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY35−1321、熱膨張率10×10−5/K)を用いた。また、上記のシリコーンゴムに、充填材としてガラスバルーンを35質量%の割合で配合して、熱膨張率が3.0×10−5/Kである充填材配合シリコーンゴムを調製し、低熱膨張率材料として用いた。より具体的には、前記低熱膨張率材料と前記高熱膨張率材料のそれぞれについて、図6(b)に示すような形状に成形し、次いで、得られた低熱膨張率材料の成形体と高熱膨張率材料の成形体とを積層し、図6(b)に示すようなプレニップ部材を製造した。このプレニップ部材における長手方向中央部の熱膨張率は7.5×10−5/Kであり、両端部の熱膨張率は4.5×10−5/Kであった。このプレニップ部材および実施例1の剥離ニップ部材が組み込まれた定着装置を、実施例1と同じ構成の画像形成装置に搭載し、実施例1と同様の評価を行った。
実施例1と同様にA4用紙を200枚連続で印字定着した後の定着ロールの非通紙領域の温度は、最大で通紙領域と35Kの温度差となった。この定着装置におけるニップ部の長手方向における圧力分布は、感圧紙により濃度分布として表され、前記標準濃度変換表により換算した結果、図7に示すような相対的な圧力分布を有するものであった。また、ニップ部形成部材の中央部のニップ圧力に対するニップ部形成部材の両端部のニップ圧力は約1.3倍であり、剥離ニップ部材の熱膨張に起因する両端部のニップ圧力上昇が抑制されていた。
実施例1と同様に、A4用紙を200枚連続で印字定着した後、A3用紙を30枚連続で印字定着したところ、A3用紙における、A4用紙のSEF通紙幅の内側領域に対する、A4用紙のSEF通紙幅の外側領域におけるグロス差(端部グロス上昇)は、60度グロスメータで3以下であり、A3用紙に印字された画像はいずれも実用上問題ない画像であった。また、A3用紙の30枚連続での印字定着において、紙しわや定着不良は発生しなかった。印字定着されたA4用紙およびA3用紙はいずれもカール量が10mm以下であった。目視の結果、印字定着されたA3用紙はいずれも、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域であってもホットオフセットが見られなかった。
実施例1と同様に、A4用紙200枚の連続印字定着とA3用紙30枚の連続印字定着を繰り返して、A4用紙およびA3用紙の合計で10万枚の印字定着を行ったが、ロールやベルトの各層間の剥がれや、ロールの軸受け部や周辺部材の損傷もなく、潤滑剤が熱劣化してベルト摺動トルクが増大することによる紙しわや画像ズレも発生しなかった。
<実施例3>
剥離ニップ部材として、充填材が配合されていない液晶LCP(東レ株式会社、「シベラス」)、および充填剤(GF)が45質量%の割合で配合されている液晶LCPを用いて、混色射出成型機により長手方向において異なる厚みで積層し、図5(b)に示すような部材を形成した。この剥離ニップ部材における中央部の熱膨張率は3.0×10−5/Kであり、両端部の熱膨張率は0.8×10−5/Kであった。プレニップ部材としては、実施例1と同じ、ガラスバルーンが配合されていないシリコーンゴムで形成された部材を用いた。上記の剥離ニップ部材および上記のプレニップ部材が組み込まれた定着装置を、実施例1と同じ構成の画像形成装置に搭載し、実施例1と同様の評価を行った。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後の定着ロールの非通紙領域の温度は、最大で通紙領域と30Kの温度差となった。また、ニップ部形成部材の中央部のニップ圧力に対するニップ部形成部材の両端部のニップ圧力は約1.25倍であり、剥離ニップ部材の熱膨張に起因する両端部のニップ圧力上昇が抑制されていた。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後、A3用紙を30枚連続で印字定着したところ、A3用紙における、A4用紙のSEF通紙幅より内側の領域に対する、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域におけるグロス差(端部グロス上昇)は、60度グロスメータで5以下であり、A3用紙に印字された画像はいずれも略実用上問題ない画像であった。また、A3用紙の30枚連続での印字定着において、紙しわや定着不良は発生しなかった。印字定着されたA4用紙およびA3用紙はいずれもカール量が10mm以下であった。目視の結果、印字定着されたA3用紙はいずれも、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域であってもホットオフセットが見られなかった。
実施例1と同様にA4用紙200枚の連続印字定着とA3用紙30枚の連続印字定着を繰り返して、A4用紙およびA3用紙の合計で10万枚の印字定着を行ったが、ロールやベルトの各層間の剥がれや、ロールの軸受け部や周辺部材の損傷もなく、潤滑剤が熱劣化してベルト摺動トルクが増大することによる紙しわや画像ズレも発生しなかった。
<実施例4>
剥離ニップ部材として、充填材が配合されていない液晶LCP(東レ株式会社、「シベラス」)、および充填剤(GF)が40質量%の割合で配合されている液晶LCPを用いて、混色射出成型機により長手方向において異なる厚みで積層し、図5(b)に示すような部材を形成した。この剥離ニップ部材における中央部の熱膨張率は3.0×10−5/Kであり、両端部の熱膨張率は1.0×10−5/Kであった。上記の剥離ニップ部材は、図2に示す定着装置において設定された最小通紙幅であるはがき用紙に相当する、長手方向の中央の位置から両端部に向かって各々50mmの領域内において、熱膨張率の平均値が3×10−5/Kであり、最小値が2.73×10−5/K(平均値に対して91%)であり、最大値が3.24×10−5/K(平均値に対して108%)であった。また、プレニップ部材としては、実施例1と同じ、ガラスバルーンが配合されていないシリコーンゴムで形成された部材を用いた。上記の剥離ニップ部材および上記のプレニップ部材が組み込まれた定着装置を、実施例1と同じ構成の画像形成装置に搭載し、実施例1と同様の評価を行った。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後の定着ロールの非通紙領域の温度は、最大で通紙領域と28Kの温度差となった。また、ニップ部形成部材の中央部のニップ圧力に対するニップ部形成部材の両端部のニップ圧力は約1.27倍であり、剥離ニップ部材の熱膨張に起因する両端部のニップ圧力上昇が抑制されていた。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後、A3用紙を30枚連続で印字定着したところ、A3用紙における、A4用紙のSEF通紙幅より内側の領域に対する、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域におけるグロス差(端部グロス上昇)は、60度グロスメータで5以下であり、A3用紙に印字された画像はいずれも略実用上問題ない画像であった。また、A3用紙の30枚連続での印字定着において、紙しわや定着不良は発生しなかった。印字定着されたA4用紙およびA3用紙はいずれもカール量が15mm以下であった。目視の結果、印字定着されたA3用紙はいずれも、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域であってもホットオフセットが見られなかった。
実施例1と同様にA4用紙200枚の連続印字定着とA3用紙30枚の連続印字定着を繰り返して、A4用紙およびA3用紙の合計で10万枚の印字定着を行ったが、ロールやベルトの各層間の剥がれや、ロールの軸受け部や周辺部材の損傷もなく、潤滑剤が熱劣化してベルト摺動トルクが増大することによる紙しわや画像ズレも発生しなかった。
<実施例5>
剥離ニップ部材およびプレニップ部材として、請求項1と同じ部材を用いた。上記の剥離ニップ部材および上記のプレニップ部材が組み込まれた圧力パッドを備え、加熱ロールの表面温度を均一化する温度差低減部材が、その加熱ロールの表面に接触して配置されている定着装置を、実施例1と同じ構成の画像形成装置に搭載し、実施例1と同様の評価を行った。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後の定着ロールの非通紙領域の温度は、最大で通紙領域と17Kの温度差となった。また、ニップ部形成部材の中央部のニップ圧力に対するニップ部形成部材の両端部のニップ圧力は約1.15倍であり、剥離ニップ部材の熱膨張に起因する両端部のニップ圧力上昇が抑制されていた。
A4用紙を200枚連続で印字定着した後、A3用紙を30枚連続で印字定着したところ、A3用紙における、A4用紙のSEF通紙幅より内側の領域に対する、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域におけるグロス差(端部グロス上昇)は、60度グロスメータで4以下であり、A3用紙に印字された画像はいずれも略実用上問題ない画像であった。また、A3用紙の30枚連続での印字定着において、紙しわや定着不良は発生しなかった。印字定着されたA4用紙およびA3用紙はいずれもカール量が8mm以下であった。目視の結果、印字定着されたA3用紙はいずれも、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域であってもホットオフセットが見られなかった。
実施例1と同様にA4用紙200枚の連続印字定着とA3用紙30枚の連続印字定着を繰り返して、A4用紙およびA3用紙の合計で10万枚の印字定着を行ったが、ロールやベルトの各層間の剥がれや、ロールの軸受け部や周辺部材の損傷もなく、潤滑剤が熱劣化してベルト摺動トルクが増大することによる紙しわや画像ズレも発生しなかった。
<比較例1>
剥離ニップ部材として、充填材としてGFを40質量%配合したPPS樹脂で形成された部材を用いた。この剥離ニップ部材の中央部および両端部の熱膨張率はいずれも、6×10−5/Kであった。またプレニップ部材として、ガラスバルーンが配合されていないシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、DY35−1321)を用いた。このプレニップ部材の中央部および両端部の熱膨張率はいずれも、10×10−5/Kであった。上記の剥離ニップ部材および上記のプレニップ部材を組み込んだ定着装置を、実施例1と同じ構成の画像形成装置に搭載し、実施例1と同様の評価を行った。
実施例1と同様にA4用紙を200枚連続で印字定着した後の定着ロールの非通紙領域の温度は、最大で通紙領域と35Kの温度差となった。この定着装置におけるニップ部の長手方向における圧力分布は、感圧紙により濃度分布として表され、前記標準濃度変換表により換算した結果、図7に示すような相対的な圧力分布を有するものであった。ニップ部形成部材の中央部のニップ圧力に対するニップ部形成部材の両端部のニップ圧力は約1.8倍に増大し、剥離ニップ部材の熱膨張に起因する両端部のニップ圧力上昇が生じていることが確認された。
実施例1と同様に、A4用紙を200枚連続で印字定着した後、A3用紙を30枚連続で印字定着したところ、A3用紙における、A4用紙のSEF通紙幅の内側領域に対する、A4用紙のSEF通紙幅の外側領域のグロス差(端部グロス上昇)は、60度グロスメータで12以上となり、A3用紙の端部の印字画像にグロスムラが発生していた。また、A3用紙の30枚連続での印字定着において、紙しわや定着不良は10枚発生していた。印字定着されたA3用紙のカール量がいずれも20mm以上であり、最大で30mmであった。さらに、目視の結果、印字定着されたA3用紙30枚のうち、A4用紙からA3用紙に換えた直後の5枚において、A4用紙のSEF通紙幅より外側の領域にホットオフセットが発生した。
実施例1と同様に、A4用紙200枚の連続印字定着とA3用紙30枚の連続印字定着を繰り返して、A4用紙およびA3用紙の合計で10万枚の印字定着を行ったところ、ニップ部の長手方向両端部における高圧化により、4万枚通紙したところで定着ロールの金属コアと弾性層の間での剥がれが発生し、各ロールの軸受け部が損傷したことを目視により確認した。また、5万枚通紙したところで、潤滑剤の熱劣化により、ベルト摺動トルクの増大が起き、それによる紙しわや画像ズレが発生したことを目視により確認した。
このように実施例1〜5に係る長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ部形成部材を備えた定着装置を用いることにより、長手方向両端部の熱膨張率が長手方向中央部の熱膨張率より小さいニップ形成部材を備えていない定着装置と比較して、ニップ部の長手方向中央部に対する長手方向両端部におけるニップ圧力の上昇が抑制された。