JP5794806B2 - 表面処理銅箔、および、該表面処理銅箔を用いた銅張積層基板、並びにプリント配線基板 - Google Patents
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Description
また、本発明は前記表面処理銅箔を使用した銅張積層板とその製造方法、並びに該銅張積層板を用いたプリント配線板に関するものである。
これに対応して、これらに使用される高密度実装用の多層プリント配線板やフレキシブルプリント配線板等(以下、単にプリント配線板ということがある)における回路配線パターンにも高密度化が要求され、回路配線の幅と間隔が微細な回路配線パターン、いわゆるファインパターンのプリント配線板が要求されている。
しかしながら、電子機器の情報処理速度アップや無線通信への対応のため、電子部品には電気信号の高速伝送が求められており、高周波対応基板の適用も進行している。高周波対応基板では電気信号の高速伝送のために伝送損失の低減を図る必要があり、樹脂基材の低誘電率化に加えて導体である回路配線の伝送損失を低減することが要求されている。
しかしながら、これらの平滑な銅箔はファインパターンの回路形成性や高周波域における伝送特性には優れるものの、必ずしも、銅箔と樹脂基材との密着性を安定的に、かつ十分に高めることが困難であり、回路配線のエッチング工程あるいは回路配線の端部へのSnめっき工程において、銅箔と樹脂基材との界面で薬品の染み込みが発生することや、プリント配線板の製造工程および製品使用中の熱負荷により密着性が低下する等の課題を有している。特に、ファインパターン対応のプリント配線板では回路配線(銅箔)と樹脂基材との接合面積が極めて小さく構成されるため、薬品の染み込みや熱負荷後の密着性低下が発生すると樹脂基材から回路配線が剥離する危険性があり、樹脂基材との密着性が良好な銅箔が望まれている。
更に、本発明の表面処理銅箔を用いた銅張積層板によれば、ファインパターンや高周波基板に適するだけでなく、樹脂基材と銅箔との密着性が良好で信頼性の高いプリント配線板を提供することができる。
また本発明の母材銅箔としてRaが0.2μm以下、或はRzが1.5μm以下の圧延銅箔を用いてもよい。
本発明において母材銅箔の表面粗さを、算術平均表面粗さRaで0.2μm以下、或は十点平均表面粗さRzで1.5μm以下に規定するのは、高周波伝送特性を要求される使途やCOF(チップ・オン・フィルム)としての使途を満足する視認性を発現させるためである。
さらにソフトエッチングが要求される場合は、Ni−P合金を用いることが効果的である。
V(バナジウム)含有量を10%以下とするのは、表面処理銅箔にファインパターン加工を施す際に用いる過酸化水素−硫酸系エッチング液にVが溶解し、エッチング液に溶解したVが該エッチング液と酸化還元反応して過酸化水素の劣化を早めるため、Vの含有量は10%以下とすることが好ましい。
また、一次処理層のNi付着量が0.2mg/dm2までなら、200℃〜350℃程度のプレス温度や加熱条件下で十分にZn成分と銅箔表面とで真鍮化し、Niが混在する真鍮(Cu/Ni/Zn)化が可能で、二次処理層を加熱して真鍮化することで、二次処理層の防錆効果は更に向上する。
特にクロメート処理層の接触角θを小さくすることにより樹脂基材との密着性はより向上する。
接触角の測定は、一般的にθ/2法が用いられる。
θ/2法は、図1に示すように液滴が球の一部であることを前提として、重力の影響を無視できる液滴量で測定する。
θ/2法は、液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度をθ1とし、その2倍を接触角θとして求める。分度器のような目盛があれば直読で測定でき、また、パソコンによる解析でも簡単な計算により測定処理ができる。
表1は銅箔表面に下地めっきとしてNi層、その上にZn層を設け、その表面に電流密度を種々かえてクロメート層を施し、図1に示す接触角θを求めた結果を示している。
表1に示す実験例1〜9から明らかなように、電流密度が高くなるに従ってCrの付着量も増加するが、接触角θも上昇している。
シランカップリング剤は様々な種類のものが市販されているが、それぞれに特徴があり、接着させる樹脂基材に適したものを選択する必要がある。高周波対応樹脂基板には、アミノシラン系、またはメタクリル系が有効である。また、リジッド配線板やIC用のプリント配線板には主にエポキシ系のフェノール樹脂やエポキシ樹脂を用いることが有効である。
即ち、クロメート層の表面に発生する水酸基の数をコントロールすることにより、シランカップリング剤と水素結合する水酸基の数とをあわせることにより、水素結合できない水酸基を少なくすることができる。これにより、乾燥工程を経て、余分の水酸基が少なくなり、結果として銅箔表面に酸化物の付着が少なくなり、銅箔表面の防錆効果が得られることになる。
表1から明らかなように、耐熱後のピール強度はクロメート処理層の接触角θが15°〜35°でシランカップリング剤の付着量が0.002〜0.02mg/dm2の実験例5が満足できる結果を示している。
なお、評価方法等については後述する。
銅張積層基板を作成するには前述したように比較的低温で硬化する硬化系樹脂を選択する。比較的低温で硬化する硬化系樹脂としては260℃以下で1時間、或は式1で示すLMP(ラーソンミラーパラメータ)値が10660以下の条件で熱硬化する熱硬化性樹脂を選択することが望ましい。
式1:LMP=(T+273)*(20+Logt)
ここで、20は銅の材料定数、Tは温度(℃)、tは時間(hr)、Logは常用対数である。
表面処理銅箔と樹脂基材とを張り合わせる(積層する)方法としては、キャスティング方式、また熱プレス方式、連続ロールラミネート方式、連続ベルトプレス方式などを用いることができ、接着剤等を介して熱圧着することもできる。
また、別の方法としては、溶剤に溶解して流動性を有する状態とした樹脂含有物を前記表面処理銅箔の表面に塗布した後に、熱処理により樹脂を硬化させる方法も適用できる。
本発明銅箔の表面処理工程を製箔工程から順に説明する。
(1)製箔工程
下記のめっき浴及びめっき条件で母材銅箔(未処理銅箔)を作成した。
(めっき浴及びめっき条件)
硫酸銅:銅濃度として50〜80g/L
硫酸濃度:30〜70g/L
塩素濃度:0.01〜30ppm
液温:35〜45℃
電流密度:20〜50A/dm2
作成された銅箔のRaは0.2μm以下、Rzは1.5μm以下であった。
下記のめっき浴及びめっき条件で一次処理層を施した。
(Niめっき)
硫酸ニッケル6水和物:240g/L
過硫酸アンモニウム:40g/L
ホウ酸:30g/L
液温:50℃
電流密度:0.5A/dm2
硫酸ニッケル6水和物:240g/L
過硫酸アンモニウム:40g/L
次亜リン酸ナトリウム:5g/L
ホウ酸:30g/L
液温:50℃
電流密度:0.5A/dm2
表面処理―1で施したNi又はNi−P合金におけるNiの付着量は0.05〜1.0mg/dm2の範囲である。
下記のめっき浴及びめっき条件で二次処理層を施した。
(Znめっき)
硫酸亜鉛7水和物:24g/L
水酸化ナトリウム:85g/L
液温:25℃
電流密度:0.4A/dm2
硫酸亜鉛7水和物:24g/L
水酸化ナトリウム:85g/L
メタバナジウム酸アンモニウム:5g/L
液温:25℃
電流密度:0.4A/dm2
表面処理―2で施したZn又はZn−V合金におけるZnの付着量は0.01〜0.1mg/dm2の範囲である。
金属めっき層処理後に、下記のめっき浴及びめっき条件でCrめっきを施した。
(Crめっき)
無水クロム酸:0.1g/L〜100g/L
液温:20〜50℃
電流密度: 1〜2A/dm2
シラン種:3−アミノプロピルトリメトキシシラン
シラン濃度:0.1g/L〜10g/L
液温:20〜50℃
(Ni−Zn合金めっき)
なお、Niめっきを施した場合にはその上にZnめっきを施し、Ni−Znめっきを施した場合にはZnめっきは施さなかった。
硫酸ニッケル:ニッケル濃度として20g/L〜60g/L、
硫酸亜鉛:亜鉛濃度として0.05g/L〜50g/L、
液温:20〜60℃
pH:2〜7
電流密度:0.3〜10A/dm2
(Ni−Zn−P合金めっき)
硫酸ニッケル:ニッケル濃度として20g/L〜60g/L、
硫酸亜鉛:亜鉛濃度として0.05g/L〜50g/L、
過硫酸アンモニウム:20g/L〜40g/L
次亜リン酸ナトリウム:5g/L
ホウ酸:30g/L
液温:20℃〜60℃
電流密度:0.5A/dm2〜8.5A/dm2
実施例1で作成した表面処理銅箔に、表3に示す各種樹脂基材を張り合わせ銅張積層基板を作成した。
比較例1で作成した表面処理銅箔に、表3に示す樹脂基材を張り合わせ銅張積層基板を作成した。
上記実施例、比較例で作成した銅箔又は積層基板を、各種評価に適するサイズや形態に加工し試験片とした。
試験片につき各種測定、評価を行い、その結果を表1〜3に示した。
(1)金属付着量の測定
蛍光X線分析装置((株)リガク製ZSXPrimus、分析径:35Φ)にて分析した。
接触式表面粗さ測定機((株)小坂研究所製SE1700)にて測定した。
表面処理銅箔と樹脂基材との密着強度を測定した。樹脂基材としては市販の熱硬化型ポリイミド系レジストを使用した。
硬化条件:260℃、1時間 (LMP値=10660)
密着強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製)を使用して、銅箔と樹脂基材とを接着後、試験片を1mm幅の回路配線にエッチング加工し、樹脂側を両面テープによりステンレス板に固定し、回路配線を90度方向に50mm/分の速度で剥離して求めた。初期密着性は0.8kN/m以上を合格(○)とし、それ以下を不合格(×)と判定した。
試験片について、150℃で168時間加熱処理した後の密着強度を測定した。
耐熱性は初期ピール強度の50%以上を合格(○)とし、それ以下を不合格(×)と判定した。
5−1.耐酸性30分(酸処理後の密着強度の測定)
耐薬品性評価は、基材との引き剥がし密着性の測定に用いるJIS−C−6481に規定される測定方法により引き剥がし強度を測定することで良否を判定した。先ず、表1に示したピール強度の測定と同様に1m/m幅にパターン作製された試験回路のピール強度(初期値)KN/mに対して、該試験回路を塩酸:水=1:2の塩酸希釈液に30分浸漬後に測定したピールの劣化値が、全くないものから10%未満を合格「○」、10%以上を不合格(×)と判定した。
5−2.耐酸性60分(薬液染み込み有無)
試験片について、水:塩酸=1:1の塩酸溶液に常温で1時間浸漬した後、銅箔と樹脂基材の界面に1μm以上の染み込みの有無を観察し、染み込みがないものを合格(○)とし、染み込みが見られたものを不合格(×)と判定した。
試験片を、1mm幅の回路配線にエッチング加工し、銅箔と樹脂基材の界面における残銅の幅を測定した。
回路形成性は3.0μm以下を合格(○)と判定した。
伝送特性測定用試験片により高周波帯域における伝送損失を測定した。樹脂基体材としては、表3に示す要件での各種樹脂を用いて銅張積層体を作製し、伝送特性測定用の試験片に加工した。
伝送測定の評価には、1〜25GHz域の測定に適する公知のストリップライン共振器法(マイクロストリップ構造:誘電体厚さ50μm、導体長さ1.0mm、導体厚さ12μm、導体回路幅120μm、特性インピーダンス50Ωでカバーレイフィルムなしの状態でS21パラメーターを測定する方法)を用いて、周波数5GHzにおける伝送損失(dB/100mm)を測定した。
伝送特性は伝送損失25dB/100mm未満を合格(○)とし、それ以上を不合格(×)と判定した。
試験片を、大気中、250℃1時間で加熱し、銅箔の表面処理面を観察した。評価は試験片の25×25cm範囲内に、銅箔の酸化と見られる面積率が20%以下を合格(○)とし、それ以上を不合格(×)と判定した。
協和界面科学(株)製 DM−701を使用して図1に示す接触角θを測定した。
測定値は各試験片の表面で5箇所測定し、その平均値とした。
また、本発明の表面処理銅箔の製造方法によれば、樹脂基材との密着性に優れ、工業的に満足する優れた表面処理銅箔を製造することができる。
更に本発明の銅張積層板、プリント配線板によれば、樹脂基材と銅箔との接着強度が強く、回路形成にあたっては耐薬品性が優れた効果を有するものである。
Claims (5)
- 母材銅箔(未処理銅箔)の少なくとも片面表面に、付着量が0.05〜1.0mg/dm2のNiまたNi−Pの一次処理層が設けられ、該一次処理層の上に付着量が0.01〜0.10mg/dm2のZnまたはZn−Vの二次処理層が設けられ、該二次処理層の上にクロム付着量が0.025〜0.045mg/dm 2 となるクロメート処理層が形成され、かつ、該クロメート処理層の上に付着量が0.002〜0.02mg/dm2のシランカップリング処理層が設けられている、
表面処理銅箔。 - 算術平均表面粗さRaが0.2μm以下、又は十点平均表面粗さRzが1.5μm以下である母材銅箔(未処理銅箔)の少なくとも片面表面に、付着量が0.05〜1.0mg/dm2のNiまたNi−Pの一次処理層が設けられ、該一次処理層の上に付着量が0.01〜0.10mg/dm2のZnまたはZn−Vの二次処理層が設けられ、該二次処理層の上にクロム付着量が0.025〜0.045mg/dm 2 となるクロメート処理層が形成され、かつ、該クロメート処理層の上に付着量0.002〜0.02mg/dm2のシランカップリング処理層が設けられている、
表面処理銅箔。 - 請求項1又は2に記載の二次処理層を形成するZn−V合金中のZn含有率が90%以上である、表面処理銅箔。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理銅箔を用いた銅張積層基板。
- 請求項4に記載の銅張積層板を用いたプリント配線基板。
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