JP5712349B2 - フレキシブル積層板の製造方法 - Google Patents

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近年、種々の電子機器の電子回路を構成する部品として柔軟性を有するフレキシブルプリント配線板が用いられている(特許文献1参照)。
フレキシブルプリント配線板の製造の際には、可撓性を有する絶縁性フィルムの片側又は両側に銅箔等の金属箔を重ね、これを熱圧成形することで絶縁性フィルムと金属箔とを熱圧着し、絶縁性フィルムで形成された絶縁層に金属箔が積層した構造を有するフレキシブル積層板を作製する。このフレキシブル積層板の金属箔にパターンエッチングを施すことで導体配線を形成し、フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
しかし、このようなフレキシブル積層板やフレキシブルプリント配線板は耐熱性が低く、高温雰囲気下に曝されると金属箔や導体配線が絶縁層から剥離しやすいという問題がある。このため、フレキシブル積層板からフレキシブルプリント配線板を製造する製造工程や、フレキシブルプリント配線板に各種電子部品を実装する実装工程においては高温加熱を伴う処理を施す段階で不良が発生した。
特開2007−165417号公報
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、フレキシブル積層板の耐熱性を向上し、高温下における絶縁層からの金属箔の剥離を抑制することができるフレキシブル積層板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、高温下におけるフレキシブル積層板1の絶縁層4からの金属箔2の剥離が、絶縁層4において吸湿した水分が高温下で瞬時に揮発することに起因するとの知見を得た上で、絶縁層4と金属箔2との間への水分の浸入を防止することができるようなフレキシブル積層板1の製造条件を見出し、本発明の完成に至った。
本発明に係るフレキシブル積層板1の製造方法は、絶縁性フィルム3の外面に金属箔2を重ねて熱圧着するフレキシブル積層板1の製造方法であって、前記金属箔2が、絶縁性フィルム3の外面と重ねられる面のJIS B0601−1994で規定される凹凸間平均間隔Smが2〜5μmの範囲であると共に、このSmと、JIS B0601−1994で規定される十点平均粗さRzとの比Sm/Rzの値が0.4〜1.6の範囲であることを特徴とする。
このため、絶縁性フィルム3と金属箔2との熱圧着時に両者の間に隙間が生じることが抑制され、絶縁性フィルム3で構成される絶縁層4と金属箔2との間に水分が浸入しにくくなり、絶縁層4から金属箔2が剥離することが抑制される。
上記絶縁性フィルム3は、熱硬化性ポリイミド樹脂で構成される内層5の両側の外面側に熱可塑性ポリイミド樹脂で構成される外層6が積層した構造を有するポリイミドフィルムであることを特徴とする。この場合、吸湿性の高いポリイミドフィルムを用いた場合であっても、水分の浸入を抑制することで絶縁層4から金属箔2が剥離することが抑制される。
本発明によれば、フレキシブル積層板の耐熱性を向上して高温下における絶縁層からの金属箔の剥離を抑制することができ、またこのフレキシブル積層板から製造されるフレキシブルプリント配線板の耐熱性を向上して高温下における絶縁層からの導体配線の剥離を抑制することができる。
本発明の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。 本発明の実施の形態の他例を示す概略の断面図である。 本発明で得られるフレキシブルプリント配線板の構成の一例を示す概略の断面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
絶縁性フィルム3はポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等の種々の可撓性の高い絶縁性材料で形成される。この絶縁性フィルム3の厚みは適宜設定されるが、例えば12〜50μmの範囲であることが好ましい。
絶縁性フィルム3としては、特にポリイミドフィルムを使用することが好ましい。絶縁性フィルム3として用いられるポリイミドフィルムは、例えば熱硬化性ポリイミド樹脂で構成される内層5の両側の外面側に熱可塑性ポリイミド樹脂で構成される外層6が積層した構造を有している。このようなポリイミドフィルムの具体例としては、宇部興産株式会社製の商品名「ユーピレックス」や、株式会社カネカ製の商品名「PIXEO」等が挙げられる。前記外層6の厚みは例えば2〜3μmの範囲に形成される。
金属箔2としては、フレキシブルプリント配線板製造用のフレキシブル積層板1に適用され得る適宜の金属からなる金属箔2が用いられるが、例えば銅箔が用いられる。金属箔2の厚みは適宜設定されるが、6〜35μmの範囲であることが好ましい。
この金属箔2の絶縁性フィルム3に重ねられる面の表面粗さは、JIS B0601−1994で規定される凹凸間平均間隔Smが2〜5μmの範囲であり、且つ、このSmと、JIS B0601−1994で規定される十点平均粗さRzとの比Sm/Rzの値が0.4〜8の範囲となるように形成されている。前記Smの値が2μmに満たないと吸湿時の耐熱性が低下するおそれがあり、またこの値が5μmより大きいと金属箔2の密着不良が生じるおそれがある。また前記Sm/Rzの値が0.4に満たないと吸湿時の耐熱性が低下するおそれがあり、またこの値が8より大きいと金属箔2の密着不良が生じるおそれがある。
この金属箔2の表面粗さの調整は、例えば金属箔2の表面粗化時の処理時間や処理速度を調整することにより制御することが可能である。
上記のような絶縁性フィルム3の片側又は両側に金属箔2を重ね、適宜の連続プレス工程や間欠プレス工程で熱圧成形することで金属箔2を絶縁性フィルム3に熱圧着することで、図3に示すように絶縁性フィルム3から構成される絶縁層4の片側又は両側に金属箔2が設けられた構造を有するフレキシブル積層板1が得られる。この熱圧成形時の成形条件は、成形時に絶縁性フィルム3が十分に軟化或いは溶融することで絶縁層4と金属箔2とが十分に密着するように適宜調整される。
例えば、絶縁性フィルム3に金属箔2を重ねて構成される積層物を、図1に示すような適宜の熱圧プレス装置7で間欠的に熱圧成形したり、或いはダブルベルトを用いた連続面圧プレスにより連続的に熱圧成形する場合には、絶縁性フィルム3としてポリイミドフィルムを用いる場合、加熱温度を290〜380℃、加圧力を10〜60MPa、加熱時間を1〜6分の範囲とすることが好ましい。
また、絶縁性フィルム3に金属箔2を重ねて構成される積層物を、図2に示すように一対の熱圧ロール8,8間に通過させることで連続的に熱圧成形する場合には、絶縁性フィルム3としてポリイミドフィルムを用いる場合、加熱温度を310〜400℃、加圧力を20〜70MPaの範囲とすることが好ましい。
このようにして上記特定の表面性状を有する金属箔2と絶縁性フィルム3とを熱圧着すると、溶融或いは軟化した絶縁性フィルム3が金属箔2の表面の凹凸内に十分に充填され、絶縁層4と金属箔2との間に隙間が生じにくくなる。このため、絶縁層4と金属箔2との界面への水分の浸入が抑制される。
このようにして得られたフレキシブル積層板1では、上記のように絶縁層4と金属箔2との界面に水分が浸入しにくいため、高温雰囲気下に曝されても絶縁層4から金属箔2が剥離しにくくなり、耐熱性が向上する。このような耐熱性の向上は、絶縁性フィルム3の材質を問わず現れるが、特に絶縁性フィルム3として、本来吸湿性が高く、高温下での絶縁層4と金属箔2との剥離が発生しやすいポリイミドフィルムを使用する場合には、フレキシブル積層板1の耐熱性の向上効果が顕著に現れる。
また、以上のようにして作製されたフレキシブル積層板1の金属箔2に対し公知のパターンエッチング処理を施すなどして、フレキシブル積層板1に導体配線を形成し、絶縁層4の片側又は両側に導体配線が設けられた構造を有するフレキシブルプリント配線板を作製することができる。このフレキシブルプリント配線板においても、絶縁層4と導体配線との間の水分の浸入が抑制されることから、高温雰囲気下に曝されても絶縁層4から導体配線が剥離しにくくなり、耐熱性が向上するものである。
また、このように作製される単層のフレキシブルプリント配線板をコア材や外層材として用いることで、更に多層のプリント配線板を作製することができる。例えばコア材の導体配線が形成されている面全体にカバーレイを圧着し、更にその外面に外層材を接着剤を介在させて接合し、さらに加圧加工によって圧着することによって、外層材により電子部品を搭載するための多層部が形成され、多層フレキシブルプリント配線板を得ることができる。
また、フレキシブルプリント配線板と、リジッドなプリント配線板とを組み合わせてフレックスリジッドプリント配線板を作製することもできる。例えばフレキシブルプリント配線板に、リジッドなプリント配線板を接着剤を介して接合すると共に積層することによって、フレックスリジッドプリント配線板を得ることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳述する。
[実施例1−4、比較例1,2]
絶縁性フィルム3及び金属箔2として表1に示すものを用いた。前記絶縁性フィルム3の両側にそれぞれ前記金属箔2をそのマット面が前記絶縁性フィルム3と重なるように積層し、加熱加圧成形することによりフレキシブル積層板1を作製した。
[銅箔引き剥がし強度]
各実施例及び比較例で得られたフレキシブル積層板1の銅箔引き剥がし強度をIPC−TM−650に従って測定した結果を、下記表1に示す。この測定結果が7N/cm以下であると、金属箔2の密着不良が生じているとみなせる。
下記表1のように、実施例1〜4では銅箔引き剥がし強度が高いのに対し、金属箔2のSmの値が大きすぎると共にSm/Rzの値も大きすぎる比較例2では7N/cm未満となり、金属箔2の密着不良が生じてしまっている。
[吸湿後半田耐熱性]
各実施例及び比較例で得られたフレキシブルプリント配線板1に、40℃、90%RHの恒温恒湿下で96時間吸湿処理を施した後、JIS C6471 9.3に準拠した方法により、金属箔2の剥離が生じる温度を測定し、吸湿後半田耐熱性を評価した結果を、表1に示す。評価にあたっては、250℃以下で剥離が生じると、吸湿後半田耐熱性が充分ではない(不合格)とみなした。
下記表1のように、実施例1〜4では吸湿後半田耐熱性の評価が合格であったのに対して、金属箔2のSm/Rzの値が小さすぎる比較例1では不合格であった。
Figure 0005712349
1 フレキシブル積層板
2 金属箔
3 絶縁性フィルム
4 絶縁層

Claims (1)

  1. 絶縁性フィルムの外面に金属箔を重ねて熱圧着するフレキシブル積層板の製造方法であって、前記金属箔が、前記絶縁性フィルムの外面と重ねられる面のJIS B0601−1994で規定される凹凸間平均間隔Smが2〜5μmの範囲であると共に、このSmと、JIS B0601−1994で規定される十点平均粗さRzとの比Sm/Rzの値が0.4〜1.6の範囲であり、記絶縁性フィルムが、熱硬化性ポリイミド樹脂で構成される内層の両側の外面側に熱可塑性ポリイミド樹脂で構成される外層が積層した構造を有するポリイミドフィルムであることを特徴とするフレキシブル積層板の製造方法。
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