JP6827083B2 - 表面処理銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板 - Google Patents

表面処理銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板 Download PDF

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Description

本発明は表面処理銅箔に関する。さらに、本発明は、前記表面処理銅箔を用いた銅張積層板及びプリント配線板に関する。
各種電子機器類において基板や接続材料としてプリント配線板が用いられており、プリント配線板の導電層には銅箔が一般的に使用されている。プリント配線板に採用される銅箔としては、一般的に圧延銅箔、電解銅箔が使用される。
プリント配線板用銅箔として使用される圧延銅箔は、その製造工程で付与される熱履歴による結晶成長を抑制するために、金属等の添加物を必須成分として含有する。そのため、銅箔本来の導電性が低下し、また、製造コストも電解銅箔よりも劣る場合がある。よって、プリント配線板用銅箔としては、導電性が高く、生産性に優れ、薄層化が容易な電解銅箔が広く用いられる傾向にある。
近年、モバイル通信トラフィックの更なる増大等に伴い、プリント配線板には数GHz〜100GHz程度の高周波信号が伝送されることが増えている。この高周波信号は、周波数が高くなるほど高速、大容量の通信が可能になる一方で、プリント配線板の導電層の表面のみを信号が通過する傾向にあることが知られている(表皮効果)。表面のみを高周波信号が通過すると、銅箔の表面形状や防錆層の影響をより大きく受けることになる。すなわち、銅箔の表面粗度が大きいと信号の伝送長さが大きくなり、伝送損失が大きくなる。また、銅よりも導電率の低い又は磁性を有する異種金属が銅箔の表面に多いと、伝送損失が大きくなる。したがって、伝送損失を低減する観点からは、銅箔の表面は平滑で粗さが小さいほど好ましく、異種金属の付着量が少ないほど好ましい。
一方で、一般的にプリント配線板は、エポキシやポリフェニレンエーテルなどからなる樹脂フィルムと銅箔とを高温プレスで貼り合わせ、エッチングで回路パターンを形成することにより製造される。そのため、樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、銅箔の表面に粗化処理層を設けることが多い。粗化処理とは、銅箔の表面形状(銅又は種々の合金からなる粒状突起形状や、銅箔をエッチングして得る多孔形状を含む)を調整して、粗度を増加させる処理である。
これに加えて、プリント配線板の信頼性として、加熱時(例えば耐熱試験時)や酸浸漬時(例えば酸浸漬試験時)にも銅箔と樹脂との間の密着性が良好に保たれることが求められるので、銅箔は、ニッケル、亜鉛、クロムに代表される異種金属からなる防錆層を備えていることが多い。
しかしながら、これら粗化処理層や防錆層は、伝送損失を低減するという観点からは悪影響を及ぼす要因となる。このような事情から、密着性、信頼性と伝送損失の低減とを両立させるために、これまで多くの検討が行われてきた。
例えば、特許文献1には、微細な凹凸により銅箔の表面積を増やす技術が提案されており、特許文献2には、粗化粒子を特殊な形状とする技術が提案されており、特許文献3には、ニッケル、コバルト等との合金めっきで微細な粗化粒子を形成する技術が提案されており、特許文献4には、微細な粗化粒子を形成し、その上をモリブデンとコバルトを含有する酸化防止処理層で覆う技術が提案されている。
これらを踏まえた上で、近年では、密着性、信頼性と伝送損失の低減との更に高水準での両立が要求されている。これを受けて、銅箔の非粗化面に着目した検討が行われつつある。
なお、本明細書中では、銅箔の粗化処理層を有する面を「粗化面」、粗化処理層を有さない面を「非粗化面」と称する。電解銅箔の非粗化面は、その製造方法から、カソードであるドラム面の研磨痕を転写した形状(シャイニー面。以下、「S面」と記す。)か、電解液と接触していた、種々の有機添加剤に応じためっき析出形状(マット面。以下、「M面」と記す。)のいずれかとなっている。圧延銅箔の非粗化面は、圧延上がりの表面形状となっている。
多層プリント配線板を作製する際には、粗化面と同様に非粗化面にも、樹脂フィルムとの密着性及び信頼性(すなわち、加熱時、酸浸漬時における銅箔と樹脂との間の密着性)が要求される。なお、本明細書中では、非粗化面における銅箔の樹脂フィルムとの密着性及び信頼性(加熱時、酸浸漬時における銅箔と樹脂との間の密着性)を、銅箔の非粗化面の「内層密着性」と記す。
回路パターンを作製した後、銅箔の非粗化面は必要に応じてハーフエッチされ、更に、内層密着性を向上させるために、銅箔の非粗化面及び回路パターンのエッチング端面に黒化処理やマイクロエッチングなどの内層処理が行われる。黒化処理は、銅の酸化物や、銅の酸化物を還元して得られる銅の突起形状を形成する手法であり、マイクロエッチングは、硫酸−過酸化水素や有機酸の処理液を用いて、銅箔を多孔状に溶解させることで表面を粗面化する手法である。しかし、どちらの手法でも銅箔表面の粗度を大きくすることになり、伝送損失を増加させる大きな要因となる。
また、四国化成工業株式会社のGliCAPに代表される、銅箔表面粗度の増加を伴わない化学密着処理を、内層処理として用いる場合もあるが、内層密着性が比較的乏しい上、内層密着性の向上の効果が、貼り付けする樹脂の種類によって大きく異なるという課題がある。
これら内層処理による非粗化面の粗度の増加と、それに伴う伝送損失の増加は、従来から認識されている現象ではあった。しかし、従来の銅箔では、非粗化面よりも粗化面の方が伝送損失の増加に与える影響の度合いが大きいために、非粗化面の改善にはあまり力を入れられなかった。しかし、近年、粗化面の改良が進み、相対的に非粗化面の方が伝送損失の増加に与える影響の度合いが大きくなる中で、従来よりも更に高水準での密着性、信頼性と伝送損失の低減との両立が要求されていることにより、非粗化面の改良が重要視されつつある。
例えば非特許文献1は、内層処理としてマイクロエッチングをすることによって特に伝送損失が増加することと、信号が高周波になるほどその影響が顕著に見られることを開示している。その一方で、内層密着性を確保するためにはマイクロエッチングは必須の処理である、と報告している。
また、特許文献5には、黒化処理代替の内層処理として、スズ、ニッケル、又はこれらの合金のいずれかを用いる表面処理を行い、更にプライマー樹脂を塗工する方法が開示されている。
特許第6182584号公報 特許第5972486号公報 特開2015−61939号公報 特許第6083619号公報 特許第5129843号公報 特許第6182584号公報
杉本薫ら、「多層プリント配線板における導体表面粗度が高速伝送に与える影響」、表面技術、一般社団法人表面技術協会、2018年、Vol.69、No.1、p.38〜45
上述のように、銅箔の非粗化面の内層密着性と伝送損失の低減とについては、現状ではトレードオフの関係になっており、近年の高い要求水準を満足する銅箔は得られていない。内層処理としてニッケルなどの磁性金属を用いることは伝送損失の大幅な増加を招き、プライマー樹脂を塗工することはプライマー樹脂の特性に伝送損失が影響されるうえ、製造コストが著しく大きく増加する。
実際は、いずれかの特性を犠牲にしつつ、貼り付けする樹脂の種類や顧客のプロセスに応じて、従来の内層処理の最適化や、従来の銅箔の非粗化面の形状や防錆層の最適化が、試行錯誤により行われているのが現状である。
本発明は、非粗化面の密着性、信頼性と伝送損失の低減とを高い水準で両立する表面処理銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板を提供することを課題とする。
本発明の一態様に係る表面処理銅箔は、2つの主面のうち一方が粗化処理による粗化面であり他方が非粗化面である銅箔本体と、銅箔本体の非粗化面上に形成された防錆層と、を備える表面処理銅箔であって、防錆層は、金属亜鉛からなる金属亜鉛層、亜鉛酸化物からなる亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物からなる亜鉛水酸化物層、及び、クロム化合物からなるクロメート層を有し、防錆層が有するこれら各層は、銅箔本体側から金属亜鉛層、亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物層、クロメート層の順で積層されていることを要旨とする。
本発明の別の態様に係る銅張積層板は、上記一態様に係る表面処理銅箔と、該表面処理銅箔の粗化面側に積層された樹脂製基材と、を備えることを要旨とする。
本発明のさらに別の態様に係るプリント配線板は、上記別の態様に係る銅張積層板を備えることを要旨とする。
本発明によれば、非粗化面の密着性、信頼性と伝送損失の低減とが高い水準で両立される。
本発明の一実施形態に係る表面処理銅箔の構造を示す断面図である。 実施例1の銅箔の防錆層のXPS分析及びHAXPES分析の結果を示すチャートである。 伝送特性を評価する配線板の構造を示す断面図である。
本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
上記課題を解決するために、本発明者らは、銅箔の非粗化面の防錆層に注目した。従来、一般的に、銅箔の非粗化面には電気亜鉛めっきが施され、次に、酸性クロメート処理とアルカリクロメート処理の一方又は両方が施される。こうして形成される防錆層には、クロメート成分、金属亜鉛以外に亜鉛水酸化物や亜鉛酸化物が一部含有されることが示唆されてはいたが、ごく微量であり、また金属亜鉛を母相として分散する形で亜鉛水酸化物や亜鉛酸化物が存在することを、発明者らは明らかにした。
これを受けて、本発明者らは、鋭意研究の結果、クロメート層と亜鉛水酸化物層と亜鉛酸化物層と金属亜鉛層を有する防錆層を、銅箔本体側から金属亜鉛層、亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物層、クロメート層の順に設けることにより、内層密着性と伝送損失の低減とを極めて高い水準で両立できることを見出した。
すなわち、本実施形態の表面処理銅箔は、2つの主面のうち一方が粗化処理による粗化面であり他方が非粗化面である銅箔本体と、銅箔本体の非粗化面上に形成された防錆層と、を備える表面処理銅箔である。そして、この防錆層は、金属亜鉛からなる金属亜鉛層、亜鉛酸化物からなる亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物からなる亜鉛水酸化物層、及び、クロム化合物からなるクロメート層を有し、防錆層が有するこれら各層は、銅箔本体側から金属亜鉛層、亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物層、クロメート層の順で積層されている。
なお、防錆層は、これら4層のみから構成されていてもよいし、4層とともに他の層を有していてもよい。
また、金属亜鉛層、亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物層はそれぞれ、金属亜鉛、亜鉛酸化物、亜鉛水酸化物とともに不可避不純物を含有する場合がある。これらの層に含有される不可避不純物としては、例えば鉛、鉄、カドミウム、錫、塩素、又はこれらの化合物が挙げられる。クロメート層についても、クロム化合物とともに不可避不純物を含有する場合がある。
さらに、亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物層はそれぞれ、亜鉛酸化物、亜鉛水酸化物の不定比化合物を含有する場合がある。
以下に、本実施形態の表面処理銅箔の一例について、図1を参照しながら詳細に説明する。銅箔本体1の非粗化面1b側の直上に、まず金属亜鉛層11を設ける。金属亜鉛層11は卑な金属であるため、犠牲防食が働き、接触している他の金属の腐食を抑制する。また、酸浸漬時における密着力低下を防ぐことに効果的である。
次に、金属亜鉛層11の直上に亜鉛酸化物層12を設ける。亜鉛酸化物とは、例えば酸化亜鉛(ZnO)からなる。ZnOはイオン結合性の高いウルツ鉱型構造をとり、緻密な層を形成すると考えられる。亜鉛酸化物層12により下地の金属亜鉛層11が被覆され、耐熱試験や酸浸漬試験における密着力の低下を効果的に防ぐことを見出した。
また、プリント配線板にかかる加熱が高温、長時間になるほど、金属亜鉛は銅箔本体1の銅と相互拡散して銅−亜鉛合金を作り、外観上の色調や密着力を損なうことがある。亜鉛酸化物は銅と相互拡散しないため、亜鉛酸化物層12があることで、銅−亜鉛合金の形成による悪影響を最小限に抑えることができることを見出した。
次に、亜鉛酸化物層12の直上に亜鉛水酸化物層13を設ける。亜鉛水酸化物とは、例えば水酸化亜鉛(Zn(OH)2)である。Zn(OH)2は水分子を含むゲル状物質であり、その後のクロメート処理においてクロメート皮膜(クロメート層14)をより均一で強固に付着させる効果があることを見出した。
次に、亜鉛水酸化物層13の直上にクロメート層14を設ける。クロメート層14とは、酸性又はアルカリ性のクロム(VI)イオンを含む処理液中でカソード電解又は単純浸漬を行うことで形成されるクロムの酸化物と水酸化物からなる防食皮膜である。クロメート層14は、樹脂、特にポリフェニレンエーテル系樹脂の官能基との結合点となり密着性を向上させるとともに、耐熱試験時や酸浸漬試験時の密着力の低下を効果的に防ぐ。下地に亜鉛水酸化物層13が存在することにより、従来よりも更に緻密で均一なクロメート層14が形成できることを見出した。
以上のように、銅箔本体1の上にクロメート層14/亜鉛水酸化物層13/亜鉛酸化物層12/金属亜鉛層11なる構造の防錆層10を設けることで、内層処理で銅箔本体1の非粗化面1bの粗度を増大させることなく、内層密着性を効果的に向上できる。特に、これら防錆層10を構成する各層が混在するのではなく層構造をとっていることが重要であり、これにより、更に少ないクロム及び亜鉛の付着量で内層密着性を良好に保ち、更に伝送損失が効果的に低減されることを見出した。
このような内層密着性と伝送損失の低減とを高水準に両立した表面処理銅箔は、従来より、内層処理を行わないプロセスを用いる場合にも、その効果を発揮する。最近、例えば一括積層プロセスやランドスルーホールプロセスの一部において、プロセスの簡素化とコストダウンを目的として、レジスト形成の前の整面研磨やマイクロエッチングを行わずに回路板を作製することや、内層処理、ハーフエッチの省略、無電解めっきの部分的な実施等が行われることが増えてきている。この場合においても、内層処理が無いため内層密着性に乏しいという問題や、表面処理銅箔の非粗化面のクロムや亜鉛により伝送損失が増大するという問題を解決できる。
更に加えて、回路パターンを作製した後に内層処理を施す従来の方法に比較して、表面処理銅箔の製造時に亜鉛水酸化物層13、亜鉛酸化物層12、金属亜鉛層11を有する防錆層10を設けておく方法にすることで、プリント配線板の作製時のプロセスがより少なくて済み、コスト削減及び生産性向上に優れるという利点もある。
本実施形態の表面処理銅箔は、非粗化面1bの密着性、信頼性と伝送損失の低減とが高い水準で両立されるので、例えば、高周波伝送用の銅張積層板やプリント配線板(特に多層プリント配線板)を製造する際に使用する表面処理銅箔として好適である。すなわち、本実施形態の銅張積層板は、本実施形態の表面処理銅箔と、本実施形態の表面処理銅箔の粗化面1a側に積層された樹脂製基材と、を備える。また、本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の銅張積層板を備える。
本実施形態の表面処理銅箔においては、銅箔本体1として電解銅箔を用いることができる。また、銅箔本体1の粗化面1aが有する粗化粒子の平均高さは、0.2μm以上0.8μm以下の範囲内とすることができる。さらに、銅箔本体1の非粗化面1bの十点平均粗さRzjisは、1.5μm以下とすることができる。
銅箔本体1として使用する銅箔は、粗化処理を行う前の時点では、JIS B0601(2001)に規定された、触針式粗さ計で測定した十点平均粗さRzjisが、両主面ともに1.5μm以下であることが好ましい。十点平均粗さRzjisが大きいと、伝送損失が増大するおそれがある。
本実施形態の表面処理銅箔を製造する際には、まず銅箔の一方の主面に粗化処理を施す。粗化処理の代表例としては銅粗化めっきが挙げられる。銅粗化めっきには、硫酸銅めっき液を用いる。硫酸銅めっき液の硫酸濃度は、50〜250g/Lであることが好ましく、70〜200g/Lであることがより好ましい。硫酸銅めっき液の硫酸濃度が50g/Lより低いと、導電率が低く粗化粒子の電着性が悪くなるおそれがある。硫酸銅めっき液の硫酸濃度が250g/Lより高いと、銅粗化めっきの設備の腐食が促進されるおそれがある。
硫酸銅めっき液の銅濃度は、6〜100g/Lであることが好ましく、10〜50g/Lであることがより好ましい。硫酸銅めっき液の銅濃度が6g/Lより低いと、粗化粒子の電着性が悪くなるおそれがある。硫酸銅めっき液の銅濃度が100g/Lより高いと、粒子状にめっきするためにより大きな電流が必要になり、設備上も現実的でない。
硫酸銅めっき液には、有機添加剤又は無機添加剤を添加してもよい。有機添加剤として高分子多糖類を添加すると、拡散限界電流密度が小さくなり、より低い電流密度条件でも粗化粒子が発生しやすくなる。また、硫酸銅よりも難水溶性の塩や貴金属イオンを無機添加剤として添加すると、銅の粗化粒子の発生個数を増やすことができる。
銅粗化めっきにおける電流密度は、5〜120A/dm2であることが好ましく、30〜100A/dm2であることがより好ましい。電流密度が5A/dm2よりも低いと、処理に時間を要するために生産性が低くなるおそれがある。電流密度が120A/dm2よりも高いと、粗化粒子の電着性が悪くなるおそれがある。
粗化処理を施した後に、粗化粒子を覆い粗化粒子と銅箔の密着性を高める被せめっき処理を行ってもよい。その場合にも、上記の硫酸銅めっき液が用いられる。この2層めっき処理を更に複数回数重ねることによって、粗化粒子の均一電着性を高めてもよい。
また、銅粗化めっき以外の手法により粗化処理を行ってもよい。例としては、異種金属めっき又は合金めっきによる粗化処理、エッチング処理による粗化処理、酸化剤又は雰囲気調整により銅箔の表面を酸化させ表面を粗化させる粗化処理、酸化させた表面を再還元することで表面を粗化させる粗化処理、及びこれらを組み合わせた処理による粗化処理などが挙げられる。
次に、上記銅箔の非粗化面1b上に防錆層10を設ける。まず、銅箔本体1の非粗化面1b上に金属亜鉛層11を設ける。金属亜鉛層11の形成は、電気亜鉛めっきで行われることが好ましい。亜鉛めっき液には、例えばアルカリ亜鉛めっき液を用いる。アルカリ亜鉛めっき液の亜鉛濃度は、2〜10g/Lであることが好ましい。アルカリ亜鉛めっき液の亜鉛濃度が2g/Lより低いと、亜鉛の電流効率が低下して生産性が低下するおそれがある。アルカリ亜鉛めっき液の亜鉛濃度が10g/Lより高いと、アルカリ亜鉛めっき液中に沈殿が生成しやすく、アルカリ亜鉛めっき液の安定性が低下するおそれがある。
アルカリ亜鉛めっき液の水酸化ナトリウム(NaOH)濃度は、25〜45g/Lであることが好ましい。アルカリ亜鉛めっき液の水酸化ナトリウム濃度が25g/Lより低いと、アルカリ亜鉛めっき液の導電率が低下し、生産性が低下するおそれがある。アルカリ亜鉛めっき液の水酸化ナトリウム濃度が40g/Lより高いと、めっきした亜鉛が再溶解しやすく、正常で均一な亜鉛めっき被膜が得られにくい。電気亜鉛めっきの際の電流密度は0.1〜1A/dm2が好ましく、処理時間は2〜5秒が好ましい。
次に、金属亜鉛層11の上に亜鉛酸化物層12を設ける。亜鉛酸化物層12を形成する手法の一例としては、陽極酸化処理が挙げられる。適切な条件下で陽極酸化処理を施すことにより、亜鉛金属層の最表層の亜鉛が酸化され、緻密な亜鉛酸化物層12が形成される。陽極酸化処理液としては、例えば、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウム(NaCO3)の混合溶液を用いることができる。この混合溶液の水酸化ナトリウム濃度は、2〜10g/Lであることが好ましい。混合溶液の水酸化ナトリウム濃度が2g/Lより低いと、亜鉛酸化物が粗雑な形状になりやすい。混合溶液の水酸化ナトリウム濃度が10g/Lより高いと、亜鉛酸化物の収率が低下するおそれがある。混合溶液の炭酸ナトリウム濃度は、30〜70g/Lの範囲であることが好ましい。水酸化ナトリウム濃度との関係もあるが、この濃度範囲から外れると、亜鉛酸化物が粗雑な形状になりやすい。陽極酸化処理液には、シュウ酸やホウ酸アンモニウムを用いる場合もある。
陽極酸化処理における電流密度は、1〜10A/dmであることが好ましく、処理時間は2〜20秒であることが好ましい。電流密度や処理時間が過小であると亜鉛酸化物層12が十分に形成されないおそれがあるが、陽極酸化処理の温度や時間が過大であると金属亜鉛層11がほぼ全て酸化されてしまうおそれがある。
亜鉛酸化物層12を形成するその他の手法の例としては、高温酸化処理が挙げられる。具体的には、金属亜鉛層11を80〜130℃程度の乾燥空気中で2〜5秒程度酸化させる方法である。高温酸化処理の温度や時間が過小であると亜鉛酸化物層12が十分に形成されないおそれがあるが、高温酸化処理の温度や時間が過大であると金属亜鉛層11がほぼ全て酸化されてしまうおそれがある。高温酸化処理の条件は、金属亜鉛の付着量に応じて適宜調整する必要がある。
次に、亜鉛酸化物層12の上に亜鉛水酸化物層13を設ける。亜鉛水酸化物層13を形成する手法の一例としては、高温水蒸気処理が挙げられる。亜鉛酸化物層12を高温水蒸気中に暴露することにより、亜鉛酸化物層12の最表層に亜鉛水酸化物層13が形成される。高温水蒸気処理の温度は70〜100℃、湿度は80%RH以上が好ましい。高温水蒸気処理の処理時間は、1〜4秒が好ましい。
亜鉛水酸化物層13を形成するその他の手法の例としては、亜鉛酸化物層12が形成された銅箔を電極として、中性水溶液中でカソード分極を行う水素発生処理が挙げられる。例えば、硫酸カリウム(K2SO4)や硫酸ナトリウム(Na2SO4)の中性塩水溶液中で、電流密度0.1〜1A/dmの範囲内でカソード分極を行う。亜鉛酸化物層12が形成された銅箔(電極)の表面で水素が発生することにより、最表層に亜鉛水酸化物層13が形成される。中性塩水溶液における中性塩の濃度は0.5〜2モル/L程度の範囲が好ましい。水素発生処理の処理時間は、1〜5秒程度の範囲が好ましい。
次に、亜鉛水酸化物層13の上にクロメート層14を設ける。クロメート層14を形成するクロメート処理は、酸性クロメート処理とアルカリクロメート処理の2種に大別される。これら2種のうち、いずれか一方又は両方の処理を行うことにより、亜鉛水酸化物層13の上にクロム化合物からなるクロメート層14を形成する。
酸性クロメート処理とは、酸性の無水クロム酸(VI)水溶液中に銅箔を浸漬する処理、又は、酸性の無水クロム酸(VI)水溶液中で銅箔を電極としてカソード分極を行う処理である。酸性の無水クロム酸(VI)水溶液のクロム(VI)濃度は、1〜8g/Lであることが好ましい。クロム(VI)濃度が1g/Lより低いと十分なクロムの付着量が得られにくく、8g/Lより高いと作業上の危険性や廃液処理のコストが増大するため好ましくない。
酸性の無水クロム酸(VI)水溶液のpHは、2〜5の範囲であることが好ましい。酸性の無水クロム酸(VI)水溶液のpHが2より低いと、下地の材料が過剰に溶出することがあるため好ましくない。酸性の無水クロム酸(VI)水溶液のpHが5より高いと、十分なクロムの付着量が得られにくい。pHの調整には硫酸を用いることができる。
カソード分極を行う場合の電流密度は、2〜10A/dmであることが好ましい。浸漬時間又はカソード分極の処理時間は、電流密度にもよるが、2〜8秒が好ましい。カソード分極の処理時間又は電流密度が過大である場合には、下地の材料が過剰に溶出することがあるため好ましくない。カソード分極の処理時間又は電流密度が過小である場合には、十分なクロムの付着量が得られにくい。酸性の無水クロム酸(VI)水溶液の液温は、25〜40℃であることが好ましい。
アルカリクロメート処理とは、アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液中で銅箔を電極としてカソード分極を行う処理である。アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液のクロム(VI)濃度は、1〜8g/Lであることが好ましい。クロム(VI)濃度が1g/Lより低いと十分なクロムの付着量が得られにくく、8g/Lより高いと作業上の危険性や廃液処理のコストが増大するため好ましくない。
アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液のpHは、9〜14の範囲であることが好ましい。アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液のpHが9より低いと、十分なクロムの付着量が得られにくい。アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液のpHが14より高いと、アルカリクロメート処理の設備の腐食性が高くなるため現実的でない。pHの調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の単純アルカリ塩を用いることができる。
なお、アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液に亜鉛を添加してもよい。亜鉛を添加すると、下地の亜鉛の過剰な溶出を効果的に抑制できる。この亜鉛は、酸化亜鉛の形で添加してもよい。アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液の亜鉛濃度は、2〜10g/Lの範囲であることが好ましい。
こうした一連の防錆層形成処理によって防錆層10が形成された銅箔の非粗化面1bに、更にシランカップリング剤等の有機処理を行ってもよい。また、非粗化面1bに防錆層形成処理を施す前、後、又は同時に、粗化面1aに防錆層を形成してもよい。粗化面1aに形成する防錆層は、ニッケル、亜鉛、クロム等で構成してもよいし、非粗化面1bの防錆層10と同じ構成でもよい。また、粗化面1aに防錆層を形成した後に、更にシランカップリング剤等の有機処理を行ってもよい。
本実施形態の銅張積層板は、上述した本実施形態の表面処理銅箔を用いて形成される。このような本実施形態の銅張積層板は、公知の方法により形成することができる。例えば、銅張積層板は、本実施形態の表面処理銅箔の粗化面1a(貼着面)に樹脂製基材を積層し貼着することにより製造することができる。
ここで、樹脂製基材に使用される樹脂としては、種々の成分の高分子樹脂を用いることができる。リジッド配線板又は半導体パッケージ(PKG)用のプリント配線板には、主にフェノール樹脂、エポキシ樹脂を用いることができる。フレキシブル基板には、ポリイミド、ポリアミドイミドを主に用いることができる。ファインパターン(高密度)配線板又は高周波基板においては、寸法安定性の良い材料、反りねじれの少ない材料、熱収縮の少ない材料等として、ガラス転移点(Tg)の高い耐熱樹脂を用いることができる。
耐熱樹脂としては、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、又はそれらからなるポリマーアロイ、さらには、ポリイミド、耐熱性エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン等のシアネート系樹脂、熱硬化変性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。特に、本実施形態の銅張積層板の樹脂製基材に使用される樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂であることが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂は誘電正接と比誘電率が小さく、熱的安定性及び化学的安定性に優れ、異種材料との密着性に優れる。そのため、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、樹脂製基材としてプリント配線板の用途に好適である。
本実施形態のプリント配線板は、上記銅張積層板を用いて形成されることが好ましい。このような本実施形態のプリント配線板は、公知の方法により形成することができる。
また、上記銅張積層板の表面処理銅箔の一部を、常法により化学的にエッチングすることにより所望の回路パターンを形成し、プリント配線板を作製することができる。また、回路パターン上には、勿論、電子回路部品を実装することができる。電子回路部品としては、一般的に電子プリント配線板に実装されるものを使用可能であり、半導体素子単体以外にも、例えば、チップ抵抗、チップコンデンサー、半導体パッケージ(PKG)などを挙げることができる。
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。銅箔本体としての銅箔には、M面のRzjisが1.0μm、S面のRzjisが0.8μmである両面光沢電解銅箔を用いた。この銅箔のM面に銅粗化めっきを施して粗化処理を行った上、さらに被せめっき処理を行って、粗化粒子の平均高さが0.2μm以上0.8μm以下の範囲内である粗化処理銅箔を製造した。粗化粒子の平均高さは、特許文献6に記載の方法に従って、粗化処理銅箔の断面の走査型電子顕微鏡画像(SEM像)から算出した。
銅粗化めっきの条件は、以下の通りである。
硫酸銅めっき液の銅濃度:35g/L
硫酸銅めっき液の硫酸濃度:140g/L
硫酸銅めっき液の温度:27℃
電流密度:55A/dm2
処理時間:4秒
被せめっき処理の条件は、以下の通りである。
硫酸銅めっき液の銅濃度:120g/L
硫酸銅めっき液の硫酸濃度:90g/L
電流密度:10A/dm2
処理時間:6秒
このようにして製造した粗化処理銅箔を用いて、実施例1〜5及び比較例1〜4の表面処理銅箔を製造した。以下に、各表面処理銅箔の製造方法を記す。
(実施例1)
粗化処理銅箔のS面(非粗化面)に、以下の(1)、(2)、(3)、及び(4)に示す処理をこの順に施し、防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(1)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件で電気亜鉛めっきを施した。
アルカリ亜鉛めっき液の亜鉛濃度:3g/L
アルカリ亜鉛めっき液の水酸化ナトリウム濃度:30g/L
アルカリ亜鉛めっき液の温度:25℃
電流密度:0.6A/dm2
処理時間:5秒
(2)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件で陽極酸化処理を施した。
陽極酸化処理液の水酸化ナトリウム濃度:8g/L
陽極酸化処理液の炭酸ナトリウム濃度:42g/L
陽極酸化処理液の温度:34℃
電流密度:5A/dm2
処理時間:3秒
(3)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件で高温水蒸気処理を施した。
温度:85℃
湿度:90%RH
処理時間:3秒
(4)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件で酸性クロメート処理を施した。
酸性の無水クロム酸(VI)水溶液のクロム(VI)濃度:5g/L
酸性の無水クロム酸(VI)水溶液のpH:3.2
酸性の無水クロム酸(VI)水溶液の温度:40℃
電流密度:5A/dm2
処理時間:4秒
(実施例2)
上記(4)に示す処理に代えて以下の(4a)に示す処理を行った点以外は、実施例1と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(4a)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件でアルカリクロメート処理を施した。
アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液のクロム(VI)濃度:5g/L
アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液のpH:13.5
アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液の亜鉛濃度:3g/L
アルカリ性の無水クロム酸(VI)水溶液の温度:30℃
電流密度:4A/dm2
処理時間:5秒
(実施例3)
上記(4)に示す処理の後に上記(4a)に示す処理をさらに行った点以外は、実施例1と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(実施例4)
上記(2)に示す処理に代えて以下の(2a)に示す処理を行った点以外は、実施例3と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(2a)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件で高温酸化処理を施した。
温度:110℃
処理時間:5秒
(実施例5)
上記(3)に示す処理に代えて以下の(3a)に示す処理を行った点以外は、実施例4と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(3a)粗化処理銅箔のS面に、以下に示す条件で水素発生処理を施した。
中性塩水溶液の硫酸ナトリウム濃度:1mol/L
電流密度:0.4A/dm2
処理時間:5秒
銅箔の非粗化面に形成する一般的な防錆層の代表例として比較例1〜3を示す。
(比較例1)
上記(2)及び(3)に示す処理は行わず、上記(1)及び(4)に示す処理のみを行う点以外は、実施例1と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(比較例2)
上記(2)及び(3)に示す処理は行わず、上記(1)及び(4a)に示す処理のみを行う点以外は、実施例2と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(比較例3)
上記(2)及び(3)に示す処理は行わず、上記(1)、(4)、及び(4a)に示す処理のみを行う点以外は、実施例3と同様にして粗化処理銅箔のS面に防錆層を形成して、表面処理銅箔を得た。
(比較例4)
比較例3の表面処理銅箔のS面に、内層処理としてマイクロエッチング処理を施した。マイクロエッチング液としては、メック株式会社製のエッチボンドCZ−8000を用いた。
上記のようにして製造した実施例1〜5及び比較例1〜4の表面処理銅箔の評価を行った。評価した項目は、防錆層の構造、内層密着性、及び伝送特性である。内層密着性については、常態密着性、耐熱密着性、及び耐塩酸密着性の3つの内層密着性について評価した。以下に評価方法を説明する。
(防錆層の構造の評価方法)
表面処理銅箔のS面について、X線光電子分光法(XPS)及び硬X線光電子分光法(HAXPES)により分析を行った。XPS測定及びHAXPES測定は、アルバック・ファイ社製のX線光電子分光分析装置PHI Quantsを用いて行った。入射X線については、XPS測定では単色化Al−Kα線(hν=1486.6eV)、HAXPES測定では単色化Cr−Kα線(hν=5414.9eV)を用いた。XPS測定及びHAXPES測定ともに、脱出角は45°で行った。
XPS測定及びHAXPES測定で得られたZn2p3/2スペクトル及びO1sスペクトルに対して、解析ソフトMultipakを用いてバックグラウンドの差し引き及びピーク分離を行った。バックグラウンドの差し引きにはShirley法を、ピーク分離には擬フォークト(pseudo−Voigt)関数を用いた。ピークトップの結合エネルギーは、本明細書に記載の数値に対して±0.2eVを誤差範囲として許容する。例えばZn(0)のピークは1021.8eVであるので、実際にピーク分離をする際には1021.6〜1022.0eVの範囲の値を使用する。
以下に示す手順(A)〜(C)で、金属亜鉛層、亜鉛酸化物層、及び亜鉛水酸化物層の三層の有無と順序を評価した。
(A)XPS測定及びHAXPES測定で得られるそれぞれのZn2p3/2スペクトルに対して、Zn(0)のピーク(1021.8eV)とZn(II)のピーク(1022.5eV)のみでピーク分離を行い、それぞれのピーク面積率を算出する。面積率の単位は%であり、2ピークのみでピーク分離を行うということは、2ピークの面積率を足すと100%になることを意味する。実施例1の銅箔の測定結果を、例として図2の(a)及び(b)に示す。
このとき、「XPS測定に比べてHAXPES測定でZn(0)のピークの面積率が5ポイント以上増加する」なる条件(以下、条件Aと記す)を満たすとき、表層側からZn(II)/金属Znの層構造が存在すると評価できる。
(B)XPS測定及びHAXPES測定で得られるそれぞれのO1sスペクトルに対して、酸化物のピーク(530.9eV)と水酸化物のピーク(532.4eV)のみでピーク分離を行い、それぞれのピーク面積率を算出する。実施例1の測定結果を、例として図2の(c)及び(d)に示す。
このとき、「XPS測定に比べてHAXPES測定で酸化物のピークの面積率が5ポイント以上増加する」なる条件(以下、条件Bと記す)を満たすとき、表層側から水酸化物/酸化物の層構造が存在すると評価できる。
(C)上記条件A及びBの両方を満たすことで、銅箔側から順に金属亜鉛層、亜鉛酸化物層、及び亜鉛水酸化物層の3層構造が存在すると評価できる。
結果を表1に示す。表1において、条件Aと条件Bの項目については、その条件を満たす場合は○印、その条件を満たさない場合は×印で示してある。また、比較例4については、S面をマイクロエッチングしているため、亜鉛などがXPS測定で検出されない。よって、表1にはデータ無しの意味で−印を示してある。
なお、本実施例及び比較例では、銅箔の非粗化面の最表層にクロメート層が存在する。クロメート層においては、クロム酸化物とクロム水酸化物が混在していることが一般的に知られている。それを裏付ける形で、XPS測定に比べてHAXPES測定でクロム酸化物のピークの面積率の増加が5ポイント未満であり、クロムが層構造を持たないこと及び最表層にクロメート層が存在していることが確かめられている。したがって、クロメート層の存在による、本方法を用いた亜鉛水酸化物層、亜鉛酸化物層及び金属亜鉛層の評価への影響はないことが分かる。
Figure 0006827083
(内層密着性の評価方法:常態密着性)
内層密着性の評価の一つとして、JIS C6481:1996に基づき、常態ピール試験を行った。実施例及び比較例の銅箔の非粗化面、すなわちS面に、樹脂製基材である低誘電ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルム(パナソニック株式会社製の多層基板材料MEGTRON7、厚さ60μm)を2枚重ねて貼り合わせて、銅張積層板を作製した。なお、実施例1〜5及び比較例1〜3については、樹脂フィルムの貼り付け前に整面研磨やマイクロエッチング処理を行わずに銅張積層板を作製した。比較例4については、マイクロエッチング処理を行った後に銅張積層板を作製した。
この銅張積層板に対して塩化銅エッチングを行った後にマスキングテープを除去し、幅10mmの回路配線を有する回路配線板を作製した。室温環境にて、株式会社東洋精機製作所製のテンシロンテスターを用いて、この回路配線板の回路配線部分(銅箔部分)を樹脂製基材から90度方向に50mm/分の速度で剥離し、剥離強度を常態ピール強度として測定した。結果を表1に示す。
表1においては、常態ピール強度が0.62N/mm以上である場合は、常態密着性が優れていると判定して○印で示し、常態ピール強度が0.62N/mm未満である場合は、常態密着性が不十分と判定して×印で示した。
(内層密着性の評価方法:耐熱密着性)
内層密着性の評価の一つとして、JIS C6481:1996に基づき、耐熱ピール試験を行った。常態ピール試験の場合と同様にして回路配線板を作製し、300℃の加熱大気オーブンにて1時間加熱した後、常温まで自然空冷した。その後、常態ピール試験の場合と同様にしてピール試験を行い、剥離強度を耐熱ピール強度として測定した。結果を表1に示す。
表1においては、耐熱ピール強度が0.55N/mm以上である場合は、耐熱密着性が優れていると判定して○印で示し、耐熱ピール強度が0.55N/mm未満である場合は、耐熱密着性が不十分と判定して×印で示した。
(内層密着性の評価方法:耐塩酸密着性)
内層密着性の評価の一つとして、JIS C6481:1996に基づき、耐塩酸ピール試験を行った。常態ピール試験の場合と同様にして回路配線板を作製し、液温25℃、濃度12質量%の塩酸に30分間浸漬した。その後、よく水洗した後に、常態ピール試験の場合と同様にしてピール試験を行い、剥離強度を耐塩酸ピール強度として測定した。結果を表1に示す。
表1においては、耐塩酸ピール強度が0.55N/mm以上である場合は、耐塩酸密着性が優れていると判定して○印で示し、耐塩酸ピール強度が0.55N/mm未満である場合は、耐塩酸密着性が不十分と判定して×印で示した。
(伝送特性の評価方法)
実施例及び比較例の銅箔と、樹脂製基材である低誘電ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルム(パナソニック株式会社製の多層基板材料MEGTRON7、厚さ60μm)とを用いて、図3に示す断面構造の、ストリップ線路を形成した配線板を作製し、伝送特性を評価した。配線板に形成されているストリップ線路の回路幅は140μm、回路長は310mmとした。
詳述すると、銅箔22の両面上に樹脂層30、30を配し、さらに、樹脂層30、30の上に、それぞれ銅箔21、23を積層して、配線板を作製した。樹脂層30、30はいずれも、重ねられた2枚の低誘電ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルムによって構成されている。また、銅箔21、23はいずれも、粗化面を樹脂層30側に向けて配されている。
比較例4については、まず比較例3の銅箔を用いて塩化銅エッチングで回路を形成した後にマイクロエッチング処理を行い、その後に外層銅張積層板を貼り合わせた。
なお、非粗化面側が露出するマイクロストリップ線路も伝送特性の評価に用いられることがあるが、非粗化面側が伝送特性に与える影響を正確に測定できないため、本発明のような多層プリント配線板用の銅箔の評価としては適切ではなく、本例のようなストリップ線路での評価が適している。
この配線板の銅箔22に形成されている回路に、Keysight Technologies社製のネットワークアナライザN5291Aを用いて高周波信号を伝送し、伝送損失を測定した。銅箔21、23はグランドである。特性インピーダンスは50Ωとした。伝送損失の測定値は、絶対値が小さいほど伝送損失が少なく、すなわち高周波信号が良好に伝送できることを意味する。結果を表1に示す。
表1においては、測定された28GHzにおける伝送損失の絶対値が11dB/310mm未満である場合は、伝送損失が小さいと判定して○印で示し、11dB/310mm以上15dB/310mm未満である場合は、伝送損失がやや大きいと判定して×印で示し、15dB/310mm以上である場合は、伝送損失が大きいと判定して××印で示した。
表1から分かるように、実施例1〜5の銅箔は、条件A、Bを満たす銅箔であり、常態密着性、耐熱密着性、耐塩酸密着性、及び伝送特性の全てが優れていた。
これに対して、比較例1〜3の銅箔は、非粗化面に従来の防錆層を備えている銅箔であるが、条件A、Bを満たさないことと、常態密着性には優れるが、耐熱密着性、耐塩酸密着性、及び伝送特性には劣ることが確かめられた。比較例4の銅箔は、マイクロエッチング処理を行っているために常態密着性、耐熱密着性、及び耐塩酸密着性には優れるが、伝送特性が著しく劣ることが確認された。
1 銅箔本体
1a 粗化面
1b 非粗化面
10 防錆層
11 金属亜鉛層
12 亜鉛酸化物層
13 亜鉛水酸化物層
14 クロメート層
21 銅箔
22 銅箔
23 銅箔
30 樹脂層

Claims (6)

  1. 2つの主面のうち一方が粗化処理による粗化面であり他方が非粗化面である銅箔本体と、前記銅箔本体の前記非粗化面上に形成された防錆層と、を備える表面処理銅箔であって、
    前記防錆層は、金属亜鉛からなる金属亜鉛層、亜鉛酸化物からなる亜鉛酸化物層、亜鉛水酸化物からなる亜鉛水酸化物層、及び、クロム化合物からなるクロメート層を有し、前記防錆層が有するこれら各層は、前記銅箔本体側から前記金属亜鉛層、前記亜鉛酸化物層、前記亜鉛水酸化物層、前記クロメート層の順で積層されている表面処理銅箔。
  2. 前記銅箔本体が電解銅箔である請求項1に記載の表面処理銅箔。
  3. 前記非粗化面の十点平均粗さRzjisが1.5μm以下である請求項1又は請求項2に記載の表面処理銅箔。
  4. 前記粗化面が有する粗化粒子の平均高さが0.2μm以上0.8μm以下の範囲内である請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理銅箔。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理銅箔と、該表面処理銅箔の前記粗化面側に積層された樹脂製基材と、を備える銅張積層板。
  6. 請求項5に記載の銅張積層板を備えるプリント配線板。
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