JP5735743B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、耐偏摩耗性能に優れかつ転がり抵抗の低い空気入りタイヤに関する。
近年、より環境負荷の小さい製品の開発が活発に行われている。この原因は、地球温暖化をはじめとする環境問題にあり、タイヤについても例外ではない。このタイヤに関し、前記環境問題に対応するためには、自動車の低燃費化に寄与する性能の確保が大切になる。これを達成する一つの手段として、タイヤの転がり抵抗を減らすことが挙げられ、従来、様々な技術開発が行われている。
以下に、従来の改良方法をいくつか紹介する。
まず、タイヤの転がり抵抗は、トレッド部のゴム内にて多く発生することが知られている。直接的な改良方法として、このトレッド部に使用されるゴムを損失正接が小さいものに変更することが有効である。しかしながら、この方法では、タイヤの、例えば耐摩耗性能をはじめとする他の性能が犠牲になることも知られている。一方、転がり抵抗を増す発生源であるゴムを減らすために、トレッド厚さを薄くする方法も容易に考えられるが、この場合はタイヤの摩耗寿命を確保できないことが問題になる。
さらには、特許文献1では、タイヤの断面形状を工夫して転がり抵抗を低減することが提案されている。この提案によって、転がり抵抗の低減が確かに図られるが、他性能、とりわけ優れた耐摩耗性との両立を考えた場合、より詳細なタイヤ設計が求められている。
特開2006−327502号公報
そこで、本発明の目的は、耐摩耗性能に優れかつ転がり抵抗の少ないタイヤを提供するための、タイヤ形状の詳細について提案することにある。
発明者らは、タイヤの形状を詳細に規制することによって、所期した性能の改良が可能であること、特に形状設計という場合、タイヤの外表面の形状のみならず、タイヤの骨格となる補強構造の形状もタイヤ性能への影響が大きいため、個別に規制することが有効であるとの知見を得た。すなわち、タイヤ幅方向断面内のせん断変形を、特に幅方向外側のトレッド内において抑制することが、この変形によるエネルギーロスの結果である転がり抵抗の低減と、この変形の結果生じるせん断力とすべりにて記述されることが多い摩耗を同時に改良できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、タイヤの赤道面に対して傾斜した向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であり、
前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下であり
前記カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、前記カーカスの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSWhの比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
ここで、前記タイヤを適用リムに装着した状態とは、日本自動車タイヤ協会規格(JATMA)に規定の標準リムまたはその他の適用リムに組み込んだ状態にて、内圧を付加せずに若しくは、30kPa程度までの極低内圧を付加した状態を意味する。
(2)一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、タイヤの赤道面に対して傾斜した向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であり、
前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下であり
前記タイヤの断面高さSHに対する、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの比SWh/SHが0.5以上0.756以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
(3)少なくとも2層の傾斜ベルト層を配置してなることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤ。
)前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、前記トレッドの幅方向中心部と幅方向端部との径差TDの比TD/BWが、0.03以上0.0725以下であることを特徴とする請求項(1)ないし()のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
)前記トレッドの、前記カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さが、前記タイヤの断面高さSHの0.91倍以上0.97倍以下の範囲であることを特徴とする上記(1)ないし()のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
)前記傾斜ベルト層の最外側層の幅方向端部におけるベルト振り出し角度が2°以上10°以下であることを特徴とする上記(1)ないし()のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
ここで、ベルト振り出し角度とは、傾斜ベルト最外層の端部接線方向と、傾斜ベルト最内層の傾斜ベルト最外層端部に対応する位置における接線方向との平均(中間線分)を、タイヤ幅方向断面をみて、その幅方向を0°としたときの角度である。
)前記カーカスはビードコアにてタイヤの幅方向内側から外側へ巻き返して延びる折り返し部を有し、該折り返し部の端末とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSEhが、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの0.5倍以下であることを特徴とする上記(1)ないし()のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
)前記比BD/BWは、0.02以上0.035以下であることを特徴とする、上記(1)ないし()のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
本発明によれば、耐摩耗性能に優れかつ転がり抵抗の少ないタイヤを提供することができる。
本発明に従うタイヤの幅方向断面を示す図である。 従来タイヤの荷重負荷前後の挙動を示す図である。 本発明に従うタイヤの荷重負荷前後の挙動を示す図である。 従来タイヤの幅方向断面を示す図である。 比BD/BWが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 比CSWh/CSHが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 比SWh/SHが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 比BW/CSWが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 比TD/BWが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 比CSL/CSPが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 トレッドの、カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 ベルト振り出し角度θが転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 カーカス折り返し部の端末位置が転がり抵抗並びに耐磨耗性に与える影響を示す図である。 ビード背面角を示す図である。
符号の説明
1 ビードコア
2 カーカス
2a 折り返し部
3a 傾斜ベルト層(最外側層)
3b 傾斜ベルト層
4 周方向ベルト層
5 トレッド
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。
図1に、本発明に従うタイヤについて、その幅方向断面を示す。同図において、符号1は一対のビードコアであり、これらビードコア1間にトロイダル状に跨る、コードのラジアル配列プライからなるカーカス2を骨格として、該カーカス2のクラウン部の径方向外側に、タイヤの赤道面Oに対して傾斜した向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層、図示例で2層の傾斜ベルト層3aおよび3bを配置し、さらに傾斜ベルト層3aの径方向外側に、タイヤの赤道面Oに沿って延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層、図示例で1層の周方向ベルト層4を配置し、これらベルトの径方向外側にトレッド5を配置してなる。なお、傾斜ベルト層は1層でも構わないが、その際には、少なくとも1層の周方向ベルト層との組み合わせにてベルトを構成することが好ましい。
かようなタイヤ6は、適用リム7に装着されて使用に供される。ここで、該タイヤ6を適用リム7に装着した状態のタイヤ幅方向断面において、図1に示すように、前記傾斜ベルト層の最外側層3aの幅BWに対する、当該最外側層3aの幅方向中心部(赤道面O)と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であることが肝要である。
なお、ここでいう傾斜ベルト層とは、カーカスの最大幅CSWの0.6倍以上の幅を有するものである。
この規定は、傾斜ベルト層3について、その幅方向における径差が少ないことを意味する。つまり、ベルトがフラットに近い状態であることを示す。すなわち、転がり抵抗は、前述したように、タイヤトレッド部のゴム中で発生するエネルギーロスが支配的であり、その変形の一つである幅方向断面内のせん断変形を抑えることが、転がり抵抗の低減に有効である。このせん断変形が起こる原因は、図2にサイズ195/65 R15のラジアルタイヤ(比BD/BW:0.052)の内圧充填前の無負荷状態を実線にておよび、210kPaの内圧充填後に4.41kNの荷重を負荷した状態を点線にて示すように、荷重負荷の前後における変形(矢印参照)が著しく、この変形は接地部分において湾曲していたベルトが平らに伸ばされる変形である。さらに、図2に示すように、通常のラジアルタイヤでは、タイヤセンター対比ショルダーの半径が小さく径差を持っているため、ショルダー付近のベルトはタイヤ周方向に伸ばされる。すると、コードが交差して配置された傾斜ベルト層はパンタグラフ状に変形して周方向に伸びる結果として幅方向に縮むことになるため、上記せん断変形を助長することになり、結果としてトレッドゴムのヒステリシスロスを増加することになる。
この変形を、タイヤの形状面から最も簡便に抑制するには、ベルトをなるべく平坦にする必要がある。すなわち、ベルトを平坦(比BD/BW:0.026)にした、図2のタイヤと同サイズのタイヤについて、図2の場合と同じ条件における、荷重を負荷する前後における変形を、図3に示すように、比BD/BW:0.04以下にすると、荷重負荷の前後における変形(矢印参照)を極めて小さく抑えることができる。従って、比BD/BW:0.04以下にすることによって、トレッドゴムのヒステリシスロスは減少することになって、低い転がり抵抗のタイヤが得られるのである。
また、トレッド形状の観点から、上記のせん断変形を抑制する改良を行った場合、接地面内のせん断力やすべり分布も縮小される方向に変化するため、耐摩耗性能を同時に改良することができることも解明するに到った。
なお、実際のタイヤ設計では、サイド部の変形に伴った変形成分や、偏摩耗を起こさないための接地形状並びに接地圧分布を考慮しなければいけないことから、完全に平坦にすることなく適正な範囲に設定することが肝要である。この適正な範囲について鋭意究明したところ、上記した比BD/BWが0.01以上であることが判明した。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した比BD/BWを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、タイヤの基本構造は同じであり、カーカスプライが1枚、傾斜ベルト層はタイヤ赤道面に対して24°の傾斜角度で配置したコードを層間で相互に交差させた2層からなり、その上にナイロンの周方向補強層を備える。
ここで、転がり抵抗試験は、供試タイヤを標準リムに装着し内圧を210kPaに調整したのち、直径1.7mの鉄板表面を持つドラム試験機(速度:80km/h)を用いて、車軸の転がり抵抗力を求める。この測定結果は、例えば図4に幅方向断面を示す従来タイヤ(比BD/BW:0.04超0.07以下)での転がり抵抗力を100として指数化した。この指数が小さいほど、転がり抵抗が小さいことを示している。評価としては、誤差を除きなおかつ市場優位性の観点から5%以上の差異を有意差とみなす。特に、10%以上の転がり抵抗が見られる場合は大きな効果であるといえる。
また、耐摩耗性試験は、転がり抵抗試験と同様のリム組み供試タイヤを、直径1.7mの室内ドラム試験機(表面にセーフティウォーク有)にて速度80km/hにて試験を実施した。入力はフリーローリング10分、そして制動方向に0.1Gを10分、を交互に繰り返す。この条件にて、1200km走行後の摩耗重量(摩耗したゴムの量)を従来例対比で指数化して評価した。この磨耗重量は少ないほど良く、5%未満の違いなら同等とみなし、さらに、10%以上の違いがある場合は顕著な差があるといえる。なお、この試験法では摩耗した重量を比較するため、耐摩耗試験の意味合いが強い。しかし偏摩耗性能が悪いタイヤでは早期に摩耗が進むため、本試験でも検出が可能である。つまり、この見方は耐偏摩耗並びに耐摩耗の両面からの見方を行うことができるものである。
以上の実験結果を、図5に示すように、比BD/BWが0.01以上0.04以下の範囲において、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。さらに望ましくは、0.02以上0.035以下である。
次に、図1に示すように、カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、前記カーカスの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSWhの比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることが好ましい。さらに望ましくは、0.7以上0.8以下である。
この規定によれば、特に、路面に近い位置でタイヤサイド部のカーカスラインが局所的に曲がった領域を持ち、曲げ剛性はこの部分で小さくなる。すると、ベルト幅よりも幅方向外側である、この屈曲部周辺が荷重時に大きく変形するため、トレッド部における変形は少なくなる。つまり、上記断面内のせん断変形をトレッドにおいて減らすことができる。荷重時の変形を効果的に減ずるための寸法を各種試行したところ、比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることが判明したのである。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した比CSWh/CSHを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図6に示すように、比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下の範囲において、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
また、図1に示すように、タイヤの断面高さSHに対する、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥ10にタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの比SWh/SHが0.5以上0.8以下であることが好ましい。さらに望ましくは、0.6以上0.75以下である。
さて、本来サイド部の形状については骨格であるカーカスラインで規定することが重要である。しかし、ゴム内部にてエネルギーロスが発生して転がり抵抗に寄与するという現象においては、サイド部も例外ではない。つまり、サイド部もカーカスラインに追従して従来のタイヤとは異なる形状を取ることが効率よい改良につながるといえる。これは、たとえばサイドゴムを薄くすることなどを意味し、自明ながらサイドゴムをなくすことができたとすれば、この寸法はカーカスラインの最大幅と同じ位置を示す。実際には、縁石への接触時にカーカスを保護する役割などからサイドゴムに所定の厚さを与える必要があるため、このときのサイド部の最大幅位置をタイヤ断面高さ対比でみたところ、上記の比の範囲にあることが分かった。また、タイヤ設計においては、加硫金型の設計も大切なポイントであるため、外表面寸法として定義することはタイヤ設計法としても必要である。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した比SWh/SHを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026および比CSWh/CSHは0.746と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図7に示すように、比SWh/SHが0.5以上0.8以下の範囲において、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
さらに、図1に示すように、前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記傾斜ベルト層の最外側層3aの幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下である。望ましくは、0.84以上0.93以下である。
すなわち、本発明のタイヤではクラウン部が平坦な形状になる。このとき、当然ながら接地形状も幅方向に広がる傾向となり、それに見合った補強層の構成が必要になる。特に、偏摩耗を防ぐ意味合いから、接地幅は複数の補強層が存在する幅以下であることが望ましい。このため、本発明に従うタイヤ形状を採用した場合のベルト幅は通常よりも広く設定する必要があり、その幅は上記規定に従うとよいことが分かった。一方、前記断面幅内のせん断変形に関して述べたとおり、接地面外に余分なベルトがあればそれは転がり抵抗に対して悪化方向に作用する。このため、偏摩耗のために規制する下限値と、転がり抵抗のために規制する上限値の両方が大切である。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した比BW/CSWを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026、比CSWh/CSHは0.746および比SWh/SHは0.654と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図8に示すように、比BW/CSWが0.8以上0.94以下の範囲において、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
図1に示すように、前記傾斜ベルト層の最外側層3aの幅BWに対する、トレッド5の幅方向中心部(タイヤ赤道面O)と幅方向端部との径差TDの比TD/BWが、0.03以上0.055以下であることが好ましい。さらに望ましくは、0.0325以上0.0475以下である。
これは、傾斜ベルト層直上のトレッド表面位置についての規定である。前述のせん断変形のためにベルトを平坦にしたのは既述のとおりであるが、このとき同時にトレッド外表面も適切な位置に設定することが好ましい。トレッド表面にクラウン形状(図2参照)を残すように、ゴム厚さを分布させると、接地時の径差に起因した偏摩耗が発生するばかりか、ゴムの薄い部分が完全に摩耗することによって摩耗ライフが短くなる。そのため。ベルトと同様にトレッド落ち高である比TD/BWも明確に規定することが好ましく、所定の範囲とするとよい。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した比TD/BWを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026、比CSWh/CSHは0.746、比SWh/SHは0.654および比BW/CSWは0.844と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図9に示すように、比TD/BWが、0.03以上0.055以下の範囲において、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
ちなみに、カーカスの最大幅位置から傾斜ベルト層の最外側層3aの幅方向端部との間の領域におけるカーカスラインは、最小曲率半径が5mm以上25mm以下であることが好ましい。すなわち、さらに直接的に、カーカス最大幅位置とベルト下位置との間を円弧で近似した場合の曲率半径を規定するとよい。前述したように、タイヤ設計ではその金型の設計も重要なポイントであり、設計方法としてこの部分の曲率半径を指定することは有意義である。
図1に示すように、前記カーカス2における、前記傾斜ベルト層の最外側層3aの幅方向中心部に対応する位置(タイヤ赤道面O)からビードコア1直下までの経路長CSPに対する、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅方向端部に対応する位置から前記最大幅位置までの経路長CSLの比CSL/CSPが、0.1以上0.25以下であることが好ましい。さらに望ましくは、0.12以上0.18以下である。なお、ビードコア1直下までの経路長CSPは、カーカスの実質的な経路長であり、挟み込みタイプのビードコアでは図示のようにコアをまわりこむことなく、挟み込まれた経路を長さとする。
これは、先に述べたカーカスが局所的に屈曲する部分のカーカス長さを規定している。
すなわち、カーカスライン最大幅位置とベルト下の点をつなぐ滑らかな曲線のとり方において、その領域のカーカス長さを適正化することによって、所望の局所変形を起こさせることができる。この領域のカーカス長さが短いということは、その短さで半径方向から概略幅方向へ向きを変えることを意味するため、局所的に屈曲しているという形状特性を補強することができる。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した比CSL/CSPを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026、比CSWh/CSHは0.746、比SWh/SHは0.654、比BW/CSWは0.844および比TD/BW0.067と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図10に示すように、比CSL/CSPが、0.1以上0.25以下の範囲において、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
図1に示すように、トレッドの、カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さが、タイヤの断面高さSHの0.90倍以上0.97倍以下の範囲であることが好ましい。さらに望ましくは、0.92倍以上0.96倍以下である。
ここでは、単純にタイヤ最大幅の80%位置におけるトレッド落ちだかを規定している。この範囲にトレッド落ち高を設定することによって、トレッドとベルト部の幅方向断面における曲げ変形を抑制することができる。なお、完全に平らにすると、ショルダー端の接地圧が極端に上がり偏摩耗を悪化させるため、適切な上限値も存在する。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記したトレッドの、カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026、比CSWh/CSHは0.746、比SWh/SHは0.654、比BW/CSWは0.844、比TD/BW0.067および比CSL/CSPは0.260と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図11に示すように、トレッドの、カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さがSHの0.92倍以上0.96倍以下の範囲にあれば、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
図1に示すように、前記傾斜ベルト層の最外側層3aの幅方向端部におけるベルト振り出し角度θが0°以上10°以下であることが好ましい。さらに望ましくは、3°以上7°以下である。
ここでは、ベルト端部の振り出し角度について規定している。前述のように、ベルト形状が平坦でであることが良いが、さらにはベルトの端部形状を細かく規制することが好ましい。本発明では、ベルトの中央部付近で平坦、ベルト端で急に湾曲、という形状があり得る。しかしながら、断面内のせん断変形の多くはタイヤ幅方向外側にて発生することが知られているため、ベルト端部に、特に細かく形状を規定することは意義がある。特に、ベルト端部が湾曲して振り出し角度が大きくついている場合はベルトの端部が局所的に湾曲しているので上記せん断変形を起こしやすい。この理由から、角度は理想的にはフラットに近いことが望ましい。このことを、接地形状との兼ね合いなどから規定すると、ベルト振り出し角度θが0°以上10°以下であることが好ましい。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記したベルト振り出し角度θを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.026、比CSWh/CSHは0.746、比SWh/SHは0.654、比BW/CSWは0.844、比TD/BW0.067、比CSL/CSPは0.260およびトレッドの、カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さは0.945SHと同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図12に示すように、ベルト振り出し角度θが0°以上10°以下の範囲にあれば、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
ここで、図1に示すように、前記カーカス2は、ビードコア1にてタイヤの幅方向内側から外側へ巻き返して延びる折り返し部2aを有し、該折り返し部2aの端末とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSEhが、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの0.5倍以下であることが好ましい。
すなわち、カーカス2の折り返し部2aが配置される領域は、カーカス2の本体および折り返し部2aの2層の補強材に挟まれた構造になるため、曲げ剛性が大きくなる。従って、折り返し部2aがタイヤ径方向外側に延びて存在するほど、タイヤのサイド部剛性は高くなり、接地部分のベルト変形が大きくなる結果、転がり抵抗は増加傾向になる。この点、距離CSEhを距離SWhの0.5倍以下にすれば、折り返し部2aがサイド部領域から外れるため、サイド剛性が低下しサイド部の屈曲が容易になる。その結果、接地部分のベルト変形は抑制され、転がり抵抗が減少する。
以上の知見を得るに到った実験結果について、以下に詳しく説明する。
すなわち、サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを用いて、上記した距離CSEhを種々に変化させた条件の下、転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、比BD/BWは0.022、比CSWh/CSHは0.746、比SWh/SHは0.654、比BW/CSWは0.844、比TD/BW0.037、比CSL/CSPは0.180、トレッドの、カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さは0.945SHおよびベルト振り出し角度θは2°と同じにした。その他のタイヤ構成条件や評価手法は、比BD/BWの実験と同様である。
以上の実験結果を、図13に示すように、距離CSEhが距離SWhの0.5倍以下の範囲にあれば、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来タイヤに対する有意差が認められた。
また、以上の規制に加えて、図1に示すように、タイヤのサイド部において、カーカスからタイヤ表面までのゴム厚は、カーカスラインが最小曲率半径を有する部分20で最小(ゴム厚t)となることが好ましい。なぜなら、該部分20でのゴム厚を小さくすることによって、タイヤのサイド剛性が低下しサイド部の屈曲が容易になる結果、接地部分のベルト変形は抑制され、転がり抵抗が減少するからである。
さらに、図14に示すように、ビードコア1の軸心を通りタイヤの回転軸に平行の線分Lfとタイヤ外表面との交点xから、タイヤ外表面のタイヤ最大幅Sw位置yへ線分Lhを引いたとき、該線分Lhと前記点yにおけるタイヤの回転軸に平行の線分Lfとの挟角である、ビード背面角αを68〜75°程度、特には70°以上にすることが、上述と同様に、タイヤのサイド剛性、とりわけ接地面に近い屈曲部の局所剛性を低下させてサイド部の屈曲を容易にして接地部分のベルト変形を抑制するのに有効である。
サイズ195/65 R15のラジアルタイヤを、表1に示す仕様の下に作製し、上述した転がり抵抗並びに耐磨耗性の各試験を行った。なお、タイヤの基本構造は同じであり、カーカスプライが1枚、傾斜ベルト層はタイヤ赤道面に対して24°の傾斜角度で配置したコードを層間で相互に交差させた2層からなり、その上にナイロンの周方向補強層を備える。
その評価結果を、表1に併記するように、本発明に従う発明例は、転がり抵抗並びに耐磨耗性の両方において、従来例に対する有意差が認められた。
Figure 0005735743
Figure 0005735743

Claims (8)

  1. 一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、タイヤの赤道面に対して傾斜した向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
    該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であり、
    前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下であり
    前記カーカスの径方向最外側とビードトゥとの間のタイヤ径方向の距離CSHに対する、前記カーカスの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSWhの比CSWh/CSHが0.6以上0.9以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを骨格として、該カーカスのクラウン部の径方向外側に、タイヤの赤道面に対して傾斜した向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆した、少なくとも1層の傾斜ベルト層を有するベルトおよびトレッドを順に配置した空気入りタイヤであって、
    該タイヤを適用リムに装着した状態のタイヤ幅方向断面において、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、当該最外側層の幅方向中心部と幅方向端部との径差BDの比BD/BWが0.01以上0.04以下であり、
    前記カーカスの最大幅CSWに対する、前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWの比BW/CSWが0.8以上0.94以下であり
    前記タイヤの断面高さSHに対する、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの比SWh/SHが0.5以上0.756以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
  3. 少なくとも2層の傾斜ベルト層を配置してなることを特徴とする、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記傾斜ベルト層の最外側層の幅BWに対する、前記トレッドの幅方向中心部と幅方向端部との径差TDの比TD/BWが、0.03以上0.0725以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記トレッドの、前記カーカスの最大幅CSWの0.8倍の位置での高さが、前記タイヤの断面高さSHの0.91倍以上0.97倍以下の範囲であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記傾斜ベルト層の最外側層の幅方向端部におけるベルト振り出し角度が2°以上10°以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記カーカスはビードコアにてタイヤの幅方向内側から外側へ巻き返して延びる折り返し部を有し、該折り返し部の端末とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離CSEhが、タイヤの最大幅位置にタイヤの回転軸と平行に引いた線分とビードトゥにタイヤの回転軸と平行に引いた線分との最短距離SWhの0.5倍以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記比BD/BWは、0.02以上0.035以下であることを特徴とする、請求項1ないしのいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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