JP5704244B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
特許文献1に示すように、車両に搭載される内燃機関として、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射インジェクタと、筒内に燃料を噴射する直噴インジェクタとを備えたものが実用化されている。同機関においては、機関運転状態に基づき定められた噴射量指令値に対応した量の燃料を、機関運転状態に応じて求められる噴き分け割合をもって、上記ポート噴射インジェクタからの噴射と上記直噴インジェクタからの噴射とに分けて噴射する噴き分け噴射が行われる。
この噴き分け噴射では、例えば次のようにポート噴射インジェクタからの燃料噴射、及び直噴インジェクタからの燃料噴射が行われる。すなわち、機関運転状態に応じて求められる噴き分け割合に基づいて上記噴射量指令値をポート噴射指令値と直噴指令値とに分け、ポート噴射指令値に対応した量の燃料をポート噴射インジェクタから噴射するとともに、直噴指令値に対応した量の燃料を直噴インジェクタから噴射する。
ポート噴射インジェクタや直噴インジェクタなどのインジェクタから噴射される燃料の量は、インジェクタに供給される燃料の圧力と同インジェクタの開弁時間(燃料噴射時間)とに基づいて決まる。従って、噴き分け噴射におけるポート噴射インジェクタでは、そのときに同インジェクタに供給される燃料の圧力のもとで上記ポート噴射量指令値に対応した量の燃料が噴射されるよう、上記ポート噴射インジェクタでの燃料噴射時間が制御される。また、噴き分け噴射における直噴インジェクタでは、そのときに同インジェクタに供給される燃料の圧力のもとで上記直噴指令値に対応した量の燃料が噴射されるよう、同直噴インジェクタの燃料噴射時間が制御される。
ところで、上記噴き分け噴射を行うことの可能な内燃機関においては、ポート噴射インジェクタのみからの燃料噴射が続いた後、上記噴き分け噴射が開始されて直噴インジェクタからの燃料噴射が行われるという状況が生じる可能性がある。
ここで、ポート噴射インジェクタのみからの燃料噴射が続いているときには、直噴インジェクタからの燃料噴射が行われないため、その直噴インジェクタに繋がる燃料供給系では燃料が停滞する。このように直噴インジェクタに繋がる燃料供給系で燃料が停滞すると、その燃料が内燃機関等からの熱を受けて膨張することから、直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が上昇する。
このため、上記噴き分け噴射が開始されて直噴インジェクタからの燃料噴射が行われるとき、直噴指令値に対応した量の燃料を直噴インジェクタから噴射させようとすると、燃料の圧力が高くなっていることから燃料噴射時間を短くせざるを得ない。ただし、このときの燃料噴射時間が直噴インジェクタの構造に起因する最小値未満になると、同燃料噴射時間が上記最小値とされることから、直噴インジェクタから噴射される燃料の量が過多になり、それが筒内での燃料の燃焼に悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、噴き分け噴射が開始されたときに直噴インジェクタから燃料噴射が過多になるとしても、それを速やかに解消して上記燃料噴射の過多に起因する筒内での燃料燃焼の悪化を抑制することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に従う内燃機関の制御装置では、噴射量指令値に対応した量の燃料を、機関運転状態に応じて求められる噴き分け割合をもって、ポート噴射インジェクタからの噴射と直噴インジェクタからの噴射とに分けて噴射する噴き分け噴射が行われる。この噴き分け噴射を行うに当たり、直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が高くなって、同圧力に基づき求められる直噴インジェクタでの燃料噴射時間がその構造に起因する最小値未満になることがある。なお、直噴インジェクタでの燃料噴射時間が上記最小値未満になるときには、同燃料噴射時間が強制的に上記最小値とされることから、直噴インジェクタから噴射される燃料の量が過多になり、それが筒内での燃料の燃焼に悪影響を及ぼすおそれがある。
しかし、上記制御装置では、噴き分け噴射を行うに当たり、直噴インジェクタに供給される燃料の圧力に基づき求められる同直噴インジェクタでの燃料噴射時間が最小値未満になるときには、上記噴き分け割合で噴き分け噴射を行うときと比較して直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合で噴き分け噴射が行われる。これにより、直噴インジェクタから噴射される燃料を多くすることができ、同インジェクタに繋がる燃料供給系で停滞していた高温の燃料を速やかに噴射して消費することができる。その結果、直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が速やかに低下し、それに伴い同圧力に基づき求められる直噴インジェクタでの燃料噴射時間が速やかに上記最小値まで引き上げられる。従って、噴き分け噴射が開始されたとき、直噴インジェクタに供給される燃料の圧力の過上昇に起因して同インジェクタからの燃料噴射が過多になるとしても、それを速やかに解消して上記燃料噴射の過多に起因する筒内での燃料燃焼の悪化を抑制することができる。
なお、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射としては、次の第1噴き分け噴射もしくは第2噴き分け噴射を行うことが考えられる。第1噴き分け噴射では、直噴インジェクタの燃料噴射時間を前記最小値に設定して同直噴インジェクタからの燃料噴射が行われるとともに、噴射量指令値に対応する量の燃料のうち直噴インジェクタからの燃料噴射では噴射しきれない分の燃料がポート噴射インジェクタから噴射される。また、第2噴き分け噴射では、直噴インジェクタのみから燃料が噴射される噴き分け割合をもって噴き分け噴射が行われる。そして、第1噴き分け噴射は、第2噴き分け噴射よりも優先して実行される。ただし、第1噴き分け噴射を実行すべくポート噴射インジェクタの燃料噴射時間を設定したとき、その燃料噴射時間が同ポート噴射インジェクタの構造に起因する最小値未満であれば、第1噴き分け噴射に代えて第2噴き分け噴射が実行される。
なお、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射としては、次の第1噴き分け噴射もしくは第2噴き分け噴射を行うことが考えられる。第1噴き分け噴射では、直噴インジェクタの燃料噴射時間を前記最小値に設定して同直噴インジェクタからの燃料噴射が行われるとともに、噴射量指令値に対応する量の燃料のうち直噴インジェクタからの燃料噴射では噴射しきれない分の燃料がポート噴射インジェクタから噴射される。また、第2噴き分け噴射では、直噴インジェクタのみから燃料が噴射される噴き分け割合をもって噴き分け噴射が行われる。そして、第1噴き分け噴射は、第2噴き分け噴射よりも優先して実行される。ただし、第1噴き分け噴射を実行すべくポート噴射インジェクタの燃料噴射時間を設定したとき、その燃料噴射時間が同ポート噴射インジェクタの構造に起因する最小値未満であれば、第1噴き分け噴射に代えて第2噴き分け噴射が実行される。
本発明の一態様では、上記噴き分け噴射の実行中、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合をもって噴き分け噴射を行う条件のもとで直噴インジェクタに供給される燃料の圧力に基づき求められる同直噴インジェクタの燃料噴射時間が前記最小値まで引き上げられると、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射に切り換えられる。ここで、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも、直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の実行中には、その噴き分け割合が機関運転状態に対応した値にはならないことから、筒内での燃料の燃焼を最適な状態にすることは困難である。しかし、上記噴き分け噴射の実行中、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合をもって噴き分け噴射を行う条件のもとで直噴インジェクタに供給される燃料の圧力に基づき求められる同直噴インジェクタの燃料噴射時間が前記最小値まで引き上げられると、上述したように機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射に切り換えられる。このため、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも、直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の実行中、そうした噴き分け噴射が無駄に長く行われて筒内での燃料の燃焼が最適な状態とされなくなることを抑制できる。
本発明の一態様では、直噴インジェクタからの燃料噴射を行うに当たり、同直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が機関運転状態に応じて定められる目標値よりも高い値とされた閾値以上であるときには、噴射時期進角部により直噴インジェクタの燃料噴射時期が進角させられる。ここで、直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が上記閾値以上という高い値であるときには、直噴インジェクタから噴射される燃料の貫徹力が強いため、その燃料が筒内で分散しにくくなって燃料の燃焼を良好なものとしにくくなる。しかし、上述したように直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が上記閾値以上であるときに直噴インジェクタの燃料噴射時期を進角させると、同インジェクタから噴射された燃料が内燃機関のピストンの頂面に衝突する。このようにピストンの頂面に燃料が衝突すると、その燃料が筒内で分散することから、同燃料の燃焼を良好なものとすることができる。
本発明の一態様では、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射が行われる際、パージ制限部により内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入が制限される。内燃機関においては、その吸気系へのキャニスタからのガスの流入が行われると、そのガスに含まれる燃料成分に対応する分だけ噴射量指令値が減量されることから、上記噴き分け噴射が行われるときの直噴インジェクタの燃料噴射時間が最小値未満になりやすくなる。こうしたことが上記パージ制限部によるキャニスタから内燃機関の吸気系へのガスの流入の制限によって抑制される。
本発明の一態様では、直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入の制限の開始タイミングが相対的に早められた状態とされる。ここで、内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入を制限開始したとしても、それが内燃機関の運転に反映されるまでには時間を要する。このため、仮に、直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入制限の開始タイミングを一致させたとすると、そのガスの流入制限が内燃機関の運転に反映されるまでの間、直噴インジェクタでの燃料噴射時間が最小値未満になりやすくなる。しかし、直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入の制限の開始タイミングが相対的に早められた状態とされることで、上述した問題が生じることは抑制される。すなわち、ガスの流入制限が内燃機関の運転に反映されてから、直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射が行われるため、直噴インジェクタでの燃料噴射時間が最小値未満になりやすくなるという上記問題が生じることは抑制される。
以下、本発明を自動車用エンジンの制御装置に具体化した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるエンジン1の吸気通路2には、燃焼室3に吸入される空気の量(吸入空気量)を調整すべく開閉動作するスロットルバルブ4が設けられている。このスロットルバルブ4の開度(スロットル開度)は、自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル5の操作量(アクセル操作量)に応じて調節される。また、エンジン1は、吸気通路2から燃焼室3の吸気ポート2aに向けて燃料を噴射するポート噴射インジェクタ6と、燃焼室3内(筒内)に燃料を噴射する直噴インジェクタ7とを備えている。これらインジェクタ6,7には、燃料タンク8内に蓄えられた燃料が供給される。
すなわち、燃料タンク8内の燃料は、フィードポンプ9によって汲み上げられた後に低圧燃料配管31を介してポート噴射インジェクタ6に供給される。この低圧燃料配管31内の燃料の圧力は、フィードポンプ9の駆動制御を通じてフィード圧に調整されるとともに、同配管31に設けられたプレッシャレギュレータ32によって過上昇しないようにされる。また、フィードポンプ9によって汲み上げられた低圧燃料配管31内の燃料の一部は、高圧燃料ポンプ10で上記フィード圧よりも高圧(以下、直噴圧という)の状態に加圧された後に高圧燃料配管33を介して直噴インジェクタ7に供給される。
エンジン1においては、インジェクタ6,7から噴射される燃料と吸気通路2を流れる空気とからなる混合気が燃焼室3に充填され、この混合気に対し点火プラグ12による点火が行われる。そして、点火後の混合気が燃焼すると、そのときの燃焼エネルギによりピストン13が往復移動し、それに伴いクランクシャフト14が回転するようになる。一方、燃焼後の混合気は排気として排気通路15に送り出される。なお、上記燃焼室3と吸気通路2との間は、クランクシャフト14からの回転伝達を受ける吸気カムシャフト25の回転に伴って開閉動作する吸気バルブ26によって連通・遮断される。また、上記燃焼室3と排気通路15との間は、クランクシャフト14からの回転伝達を受ける排気カムシャフト27の回転に伴って開閉動作する排気バルブ28によって連通・遮断される。
エンジン1が搭載される自動車には、燃料タンク8等で発生する蒸発燃料を処理する蒸発燃料処理装置が設けられている。この装置は、燃料タンク8で発生した蒸発燃料を吸着する活性炭等の吸着材が設けられたキャニスタ29を備えており、そのキャニスタ29に大気を導入して上記吸着材に吸着された蒸発燃料を同大気と共に吸気通路2におけるスロットルバルブ4の下流に送り出す。このように吸気通路2に送り出された蒸発燃料を含む空気(パージガス)は、エンジン1で燃焼されて処理されるようになる。また、蒸発燃料処理装置は、上記パージガスの流量を調整すべく開度制御されるパージ制御弁30も備えており、同パージ制御弁30の開度制御を通じて上記パージガスの吸気通路2への流入を禁止したり許可したりする。
次に、エンジン1の制御装置における電気的構成について説明する。
この制御装置は、エンジン1の各種運転制御を行う電子制御装置16を備えている。同電子制御装置16には、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等が設けられている。
電子制御装置16の入力ポートには、以下に示す各種のセンサ等が接続されている。
・アクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ17。
・スロットル開度を検出するスロットルポジションセンサ18。
・吸気通路2を通過する空気の量(エンジン1の吸入空気量)を検出するエアフローメータ19。
・クランクシャフト14の回転に対応した信号を出力するクランクポジションセンサ20。
・吸気カムシャフト25の回転に基づき同シャフト27の回転位置に対応した信号を出力するカムポジションセンサ21。
・排気通路15を流れる排気中の酸素濃度に対応した信号を出力する空燃比センサ22。
・低圧燃料配管31内の燃料の圧力(フィード圧)を検出する第1圧力センサ23。
・高圧燃料配管33内の燃料の圧力(直噴圧)を検出する第2圧力センサ24。
また、電子制御装置16の出力ポートには、ポート噴射インジェクタ6、直噴インジェクタ7、フィードポンプ9、高圧燃料ポンプ10、点火プラグ12、及びパージ制御弁30といった各種機器の駆動回路等が接続されている。
そして、電子制御装置16は、上記各種センサ等から入力した信号に基づきエンジン回転速度やエンジン負荷といったエンジン運転状態を把握し、その把握したエンジン運転状態に基づいてインジェクタ6,7、フィードポンプ9、点火プラグ12、及びパージ制御弁30といった各種機器の駆動回路に対し指令信号を出力する。こうしてエンジン1の燃料噴射制御、インジェクタ6,7に供給される燃料の圧力(燃圧)制御、エンジン1の点火時期制御、及びパージ制御弁30の開度制御など、エンジン1の各種運転制御が電子制御装置16を通じて実施される。ちなみに、上記エンジン回転速度は、クランクポジションセンサ20からの検出信号に基づき求められる。また、エンジン負荷は、エンジン1の吸入空気量に対応するパラメータと上記エンジン回転速度とから算出される。なお、吸入空気量に対応するパラメータとしては、エアフローメータ19からの検出信号に基づき求められるエンジン1の吸入空気量の実測値、スロットルポジションセンサ18からの検出信号に基づき求められるスロットル開度、及びアクセルポジションセンサ17からの検出信号に基づき求められるアクセル踏込量等があげられる。
エンジン1の燃料噴射制御の一つとして行われる燃料噴射量制御は、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン運転状態に基づき噴射量指令値Qfin を求め、その噴射量指令値Qfin に対応した量の燃料をポート噴射インジェクタ6と直噴インジェクタ7との少なくとも一方から噴射させることで実現される。なお、上記噴射量指令値Qfin は、空燃比センサ22からの検出信号が燃焼室3内の混合気を理論空燃比で燃焼させたときの値となるよう、同空燃比センサ22からの検出信号に基づいて増減補正(空燃比フィードバック補正)される。すなわち、空燃比センサ22からの検出信号が燃焼室3内の混合気を理論空燃比で燃焼させたときの値よりもリッチ側の値であるとき、すなわち上記混合気の燃焼がリッチ燃焼であるときには、噴射量指令値Qfin が減量補正されることにより、燃焼室3に供給される燃料の量が減量されて燃焼室3内の混合気の空燃比が理論空燃比に近づけられる。一方、空燃比センサ22からの検出信号が燃焼室3内の混合気を理論空燃比で燃焼させたときの値よりもリーン側の値であるとき、すなわち上記混合気の燃焼がリーン燃焼であるときには、噴射量指令値Qfin が増量補正されることにより、燃焼室3に供給される燃料の量が増量されて燃焼室3内の混合気の空燃比が理論空燃比に近づけられる。ちなみに、キャニスタ29から吸気通路2にパージガスが流入しているときには、そのパージガス中の燃料成分によって燃焼室3内の混合気の空燃比がリッチ寄りの値になるため、上述した空燃比フィードバック補正を通じて噴射量指令値Qfin の減量補正が行われる。
次に、エンジン1のポート噴射インジェクタ6や直噴インジェクタ7を用いた燃料噴射について説明する。
エンジン1においては、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて区画されたエンジン運転領域毎に、すなわち図2に示されるポート噴射領域A1、直噴領域A2、及び噴き分け領域A3毎に、燃料噴射のために使用されるインジェクタ6,7が選択される。
図2において、エンジン1の低回転低負荷領域は、ポート噴射インジェクタ6のみから噴射量指令値Qfin 分の燃料の噴射を行うポート噴射領域A1となっている。これは、エンジン1の低回転低負荷領域では、ピストン13の移動速度が遅くなる関係から燃焼室3内でのピストン13の移動による空気と燃料との混合が行われにくく、ポート噴射インジェクタ6のみから燃料を噴射して同燃料を吸気ポート2a内で予め空気と混合した後に燃焼室3に吸入することが好ましいためである。また、エンジン1の低回転低負荷領域では、同エンジン1の騒音レベルが小さいことから、仮に直噴インジェクタ7からの燃料噴射を行ったとすると同インジェクタ7の開弁時の騒音が問題となり、こうした問題を回避するためにもエンジン1の低回転低負荷領域がポート噴射領域とされている。
また、エンジン1の高回転高負荷領域は、直噴インジェクタ7のみから噴射量指令値Qfin 分の燃料の噴射を行う直噴領域A2となっている。これは、エンジン1の高回転高負荷領域では、直噴インジェクタ7から噴射された燃料の気化潜熱によりピストン13を冷却したりすることが、エンジン1の吸気充填効率を高めて同エンジン1の出力を向上するうえで好ましいためである。従って、直噴領域A2については、直噴インジェクタ7から燃焼室3内への直接的な燃料噴射によってエンジン1の出力向上が見込める領域に設定される。なお、図2において、エンジン1の高負荷運転領域と低負荷運転領域との間の領域は、それら高負荷領域と低負荷領域との両方の特性を有していることから、そうした特性に対応すべくポート噴射インジェクタ6と直噴インジェクタ7との両方からの燃料噴射を行う噴き分け領域A3となっている。
ここで、上記噴き分け領域A3でのポート噴射インジェクタ6及び直噴インジェクタ7からの燃料噴射(噴き分け噴射)について詳しく述べる。この噴き分け噴射を行う際には、エンジン回転速度やエンジン負荷といったエンジン運転状態に基づいて求められる噴き分け割合Kをもって、噴射量指令値Qfin がポート噴射指令値QPと直噴指令値QDとに分けられる。このように分けられたポート噴射指令値QPと直噴指令値QDとの合計値は、上記噴射量指令値Qfin と等しい値になる。そして、ポート噴射インジェクタ6からポート噴射指令値QPに対応した量の燃料噴射が行われるよう同インジェクタ6が駆動される一方、直噴インジェクタ7から直噴指令値QDに対応した量の燃料噴射が行われるよう同インジェクタ7が駆動される。
上記噴き分け噴射において、ポート噴射インジェクタ6によるポート噴射指令値QP分の燃料噴射は、例えば次のように実現される。すなわち、第1圧力センサ23によって検出されるフィード圧のもとで、ポート噴射指令値QP分の燃料をポート噴射インジェクタ6から噴射するために必要な同インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPが上記フィード圧に基づいて求められる。そして、その燃料噴射時間TAUPだけポート噴射インジェクタ6を開弁させることで、同インジェクタ6によるポート噴射指令値QP分の燃料噴射が行われる。一方、直噴インジェクタ7による直噴指令値QD分の燃料噴射は、例えば次のように実現される。すなわち、第2圧力センサ24によって検出される直噴圧のもとで、直噴指令値QD分の燃料を直噴インジェクタ7から噴射するために必要な同インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDが上記直噴圧に基づいて求められる。そして、その燃料噴射時間TAUDだけ直噴インジェクタ7を開弁させることで、同インジェクタ7による直噴指令値QD分の燃料噴射が行われる。
ポート噴射インジェクタ6や直噴インジェクタ7といった燃料噴射弁(インジェクタ)において、燃料噴射量、燃圧、及び燃料噴射時間の関係は、図3に実線で示すような関係となる。この実線は、燃料噴射量を一定とした条件下での燃圧と燃料噴射時間との組み合わせを示しており、図中右上のものほど燃料噴射量を多くした条件下での上記組み合わせを示している。また、インジェクタには、その構造に起因して燃料噴射時間の最小値が存在している。この最小値は、例えば図3に破線で示すように変化する。そして、同最小値よりも燃料噴射時間が短くなると、インジェクタからの燃料噴射が不安定になって燃料噴射量を的確に調整できなくなる。このため、燃料噴射量制御などにおいてインジェクタの燃料噴射時間を調整する際には、その燃料噴射時間が上記最小値未満とならないよう下限ガードされる。ちなみに、ポート噴射インジェクタ6における燃料噴射時間の最小値TAUPmin はポート噴射圧に応じて変化し、直噴インジェクタ7における燃料噴射時間の最小値TAUDmin は直噴圧に応じて変化する。そして、これらポート噴射インジェクタ6及び直噴インジェクタ7におけるそれぞれの上記最小値TAUPmin ,TAUDmin は、燃圧(ポート噴射圧や直噴圧)の変化に対し、それぞれ異なる態様で推移する。
次に、上記噴き分け噴射に関する問題及びその対策について説明する。
エンジン1において、ポート噴射インジェクタ6のみからの燃料噴射が続いた後、噴き分け噴射が開始されて直噴インジェクタ7からの燃料噴射が行われるとき、次のような問題が生じる。
すなわち、ポート噴射インジェクタ6のみからの燃料噴射が続いているとき、直噴インジェクタ7からの燃料噴射が行われないため、その直噴インジェクタ7に繋がる高圧燃料配管33では燃料が停滞する。そして、その停滞した燃料がエンジン1等からの熱を受けて膨張することから、直噴インジェクタ7に供給される燃料の圧力(直噴圧)が上昇する。こうした条件下で、噴き分け噴射が開始されて直噴インジェクタ7からの燃料噴射が行われるとき、直噴指令値QDに対応した量の燃料を直噴インジェクタ7から噴射させようとすると、上述したように直噴圧が高くなっていることから燃料噴射時間TAUDを短くせざるを得ない。ただし、このときの燃料噴射時間TAUDが直噴インジェクタ7の最小値TAUDmin 未満になると、同燃料噴射時間TAUDが上記最小値TAUDmin となるよう下限ガードされることから、直噴インジェクタ7から噴射される燃料の量が過多になり、それが燃焼室3内での混合気(燃料)の燃焼に悪影響を及ぼすおそれがある。
こうした問題の対策として、上記噴き分け噴射を行うに当たり、直噴圧に基づいて求められる直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin 未満になるときには、次のような噴き分け噴射が行われる。
すなわち、エンジン運転状態に応じて求められる噴き分け割合Kで噴き分け噴射を行うときと比較して直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合で噴き分け噴射が行われる。これにより、直噴インジェクタ7から噴射される燃料を多くすることができ、同インジェクタ7に繋がる高圧燃料配管33で停滞していた高温の燃料を速やかに噴射して消費することができる。その結果、直噴圧が速やかに低下し、それに伴い直噴指令値QDに対応した量の燃料噴射を実現するうえでの直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDを速やかに上記最小値TAUDmin まで引き上げることが可能になる。従って、噴き分け噴射が開始されたとき、直噴圧の過上昇に起因して直噴インジェクタ7からの燃料噴射が過多になるとしても、それを速やかに解消して上記燃料噴射の過多に起因する筒内での燃料燃焼の悪化を抑制することができる。
エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kでの噴き分け噴射よりも直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射として、本実施形態では第1噴き分け噴射及び第2噴き分け噴射が行われる。第1噴き分け噴射は、直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDを最小値TAUDminに設定して同インジェクタ7からの燃料噴射を行うとともに、噴射量指令値Qfinに対応する量の燃料のうち上記直噴インジェクタ7からの燃料噴射では噴射しきれない分の燃料をポート噴射インジェクタ6から噴射するものである。一方、第2噴き分け噴射は、上記第1噴き分け噴射におけるポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPを最小値TAUPmin未満としなければならないほど同ポート噴射インジェクタ6の燃料噴射量(ポート噴射指令値QP)が少ないとき、直噴インジェクタ7のみから燃料が噴射される噴き分け割合をもって噴き分け噴射を行うものである。なお、電子制御装置16は、これら第1噴き分け噴射及び第2噴き分け噴射を行うための噴射制御部として機能する。
次に、本実施形態における噴き分け噴射の詳細な実行手順について、噴射制御ルーチンを示す図4及び図5のフローチャートを参照して説明する。この噴射制御ルーチンは、エンジン運転状態が噴き分け領域A3にあるとき、電子制御装置16を通じて例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、まず、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン運転状態に基づき、噴射量指令値Qfin 及び噴き分け割合Kが求められる(図4のS101)。こうして求められた噴き分け割合Kは、エンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて、例えば「0〜1.0」の範囲で可変とされる値である。そして、噴射量指令値Qfin 及び噴き分け割合Kを用いて、直噴指令値QD及びポート噴射指令値QPが算出される(S102)。詳しくは、噴射量指令値Qfin に対し上記噴き分け割合Kを乗算し、その乗算によって得られた値を直噴指令値QDとする。また、「1」から上記噴き分け割合Kを減算した値(「1−K」)を噴射量指令値Qfin に対して乗算し、その乗算によって得られた値をポート噴射指令値QPとする。
直噴指令値QD及びポート噴射指令値QPが算出されると、直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUP、ポート噴射インジェクタ6での燃料噴射時間TAUDが算出される(S103)。詳しくは、直噴圧及び直噴指令値QDに基づき、その直噴指令値QDに対応した量の燃料を直噴インジェクタ7から噴射するための同インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが算出される。また、ポート噴射圧及びポート噴射指令値QPに基づき、そのポート噴射指令値QPに対応した量の燃料をポート噴射インジェクタ6から噴射するための同インジェクタ6での燃料噴射時間TAUPが算出される。
噴射制御ルーチンにおいて、S104〜S107の処理は、噴き分け噴射の実行中であって直噴圧が高いとき、直噴インジェクタ7から噴射された燃料をピストン13の頂面に衝突させ、それによって上記燃料を筒内で分散させるべく直噴インジェクタ7での燃料噴射時期を進角させるためのものである。これらS104〜S107の処理が行われるときの電子制御装置16は噴射時期進角部として機能する。
この一連の処理では、まず、直噴圧とその目標値との差圧ΔPが所定値C以上であるか否かが判断される(S104)。上記目標値は、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン運転状態に応じて、直噴圧の最適値として可変設定される値である。従って、S104での判断では、直噴圧が上記所定値Cに対し上記目標値を加算して得られる閾値以上の値であるか否かを判断していることになる。S104で肯定判定であれば上記燃料噴射時期の進角量Aが「0」よりも大きい値に設定され(S105)、否定判定であれば上記進角量Aが「0」に設定される(S106)。そして、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン運転状態に基づき求められるベース噴射時期Abaseに対し上記進角量Aを加算することで、直噴インジェクタ7の噴射時期指令値Afin が求められる(S107)。
この噴射時期指令値Afin に基づき直噴インジェクタ7での燃料噴射時期を制御することにより、噴き分け噴射の実行中であって直噴圧が上記閾値以上という高い値であるとき、直噴インジェクタ7での燃料噴射時期が進角される。ここで、上述したように直噴圧が高い値であるときには、直噴インジェクタ7から噴射される燃料の貫徹力が強いため、その燃料が筒内で分散しにくくなって燃料の燃焼を良好なものとしにくくなる。しかし、直噴圧が高い値であるとき、直噴インジェクタ7での燃料噴射時期を上述したように進角させると、同インジェクタ7から噴射された燃料がピストン13の頂面に衝突するため、その燃料が筒内で分散する。このように燃料が筒内で分散することにより、同燃料の燃焼が良好なものとされる。
噴射制御ルーチンにおいて、図5のS108以降の処理は、上記第1噴き分け噴射及び上記第2噴き分け噴射を実行するためのものである。この一連の処理では、直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin 以上であるか否かの判断(S108)、ポート噴射インジェクタ6での燃料噴射時間TAUPが最小値TAUPmin 以上であるか否かの判断(S115)が行われる。なお、上記最小値TAUDmin は直噴圧に基づき求められた値が用いられ、上記最小値TAUPmin はポート噴射圧に基づき求められた値が用いられる。S108とS115とで共に肯定判定であれば、キャニスタ29からの吸気通路2へのパージガスの流入を制限するか否かを決めるためのフラグFが「0(制限なし)」に設定される(S116)。その後、直噴インジェクタ7が燃料噴射時間TAUDだけ開弁されて直噴インジェクタ7から直噴指令値QDに対応する量の燃料が噴射されるとともに、ポート噴射インジェクタ6が燃料噴射時間TAUPだけ開弁されてポート噴射インジェクタ6からポート噴射指令値QPに対応する量の燃料が噴射される。
なお、S116の処理でフラグFが「0」に設定された場合、キャニスタ29から吸気通路2へのパージガスの流入が制限されることはない。一方、S108の処理で直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin 未満である旨判断されると、フラグFが「1(制限あり)」に設定される(S109)。このようにフラグFが「1」に設定された場合、キャニスタ29から吸気通路2へのパージガスの流入が制限される。詳しくは、パージ制御弁30が閉弁されることにより、キャニスタ29からの吸気通路2へのパージガスの流入が禁止される。ちなみに、このようにキャニスタ29からの吸気通路2へのパージガスの流入を禁止する代わりに、パージ制御弁30の開度を小さくしてキャニスタ29から吸気通路2に流入するパージガスを減量することで、キャニスタ29からの吸気通路2へのパージガスの流入を制限することも可能である。上述したようにキャニスタ29からの吸気通路2へのパージガスの流入を制限する際、電子制御装置16はパージ制御部として機能する。
S109の処理でフラグFが「1」に設定された後には、直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin に設定されることで、その最小値TAUDmin により上記燃料噴射時間TAUDが下限ガードされる(S110)。更に、最小値TAUDmin とされた上記燃料噴射時間TAUDで直噴インジェクタ7からの燃料噴射を行った場合のポート噴射指令値QP、及び、ポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPが再計算される(S111)。詳しくは、上記燃料噴射時間TAUD(最小値TAUDmin )、及び、そのときの直噴圧に基づき直噴インジェクタ7から噴射される燃料の量を直噴指令値QDとして算出し、その直噴指令値QDを噴射量指令値Qfin から減算した値がポート噴射指令値QPとされる。更に、同ポート噴射指令値QP、及び、そのときのフィード圧に基づき、上記ポート噴射指令値QPに対応した量の燃料をポート噴射インジェクタ6から噴射するための燃料噴射時間TAUPが算出される。
ポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPの上記再計算が行われた後、その燃料噴射時間TAUPが最小値TAUPmin 以上であるか否かが判断され、ここで肯定判定であればS117の処理が実行される。一方、燃料噴射時間TAUPが最小値TAUPmin 未満である旨判断されると、燃料噴射時間TAUPが「0」に設定される(S113)。更に、直噴指令値QD及び直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDの再計算として、そのときの噴射量指令値Qfin が直噴指令値QDとされるとともに、同直噴指令値QD(噴射量指令値Qfin )に対応した量の燃料を直噴インジェクタ7から噴射するために必要な燃料噴射時間TAUDの算出が行われる(S114)。その後、S117の処理が実行される。なお、上記S113及びS114の処理は、S115で否定判定がなされたときにも実行される。
噴射制御ルーチンにおいて、S110〜S112の処理が実行された後、S112で肯定判定がなされてS117の処理が実行された場合には、上述した第1噴き分け噴射が行われることになる。一方、S110〜S112の処理が実行された後、S112で否定判定がなされてS113、S114、及びS117の処理が実行された場合には、上述した第2噴き分け噴射が行われることになる。
次に、本実施形態における噴き分け噴射の作用について、図6のタイムチャートを参照して説明する。
エンジン1において、ポート噴射インジェクタ6のみからの燃料噴射が続くと、図6(a)に示す直噴圧が高い値となる。こうした状態のもと、エンジン運転状態に応じて求められる噴き分け割合をもって噴き分け噴射が行われたと仮定すると、直噴指令値QDに対応した量の燃料を直噴インジェクタ7から噴射させるためには、直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDを最小値TAUDmin よりも小さくしなければならなくなる可能性がある。
こうした状況のもとで、噴き分け噴射に切り換えられる場合、まず第1噴き分け噴射を行うべく、直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin に設定される。更に、噴射量指令値Qfin に対応した量の燃料のうち、上記燃料噴射時間TAUD(最小値TAUDmin )での直噴インジェクタ7からの燃料噴射では噴射しきれない分の燃料をポート噴射インジェクタ6から噴射すべく、同ポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPが算出される。ただし、このポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPが、最小値TAUPmin 未満となる可能性もある。
このようにポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPが最小値TAUPmin 未満になる場合、第1噴き分け噴射に代えて第2噴き分け噴射が行われる。すなわち、上記燃料噴射時間TAUP(ポート噴射指令値QP)が「0」に設定されてポート噴射インジェクタ6からの燃料噴射が停止されるとともに、直噴指令値QDが噴射量指令値Qfin に設定されて同直噴指令値QD(噴射量指令値Qfin )に対応した量の燃料が直噴インジェクタ7から噴射される。これにより、直噴インジェクタ7のみから燃料が噴射される噴き分け割合(「1.0」)をもって噴き分け噴射を行う上記第2噴き分け噴射が実現される。このように第2噴き分け噴射が開始されると(タイミングT1)、図6(b)に示すようにエンジン1における実際の噴き分け割合が「0」から「1.0」へと変化する。
また、上記第2噴き分け噴射の実行中、第1噴き分け噴射を行ったと仮定したときのポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPが最小値TAUPmin 以上になると、第2噴き分け噴射に代えて上記第1噴き分け噴射が実行される。このように第1噴き分け噴射が行われると(タイミングT2)、図6(b)に示すようにエンジン1における実際の噴き分け割合が「1.0」から「0」寄りの値に変化する。このときの実際の噴き分け割合は、直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDを最小値TAUDmin とした状態での直噴指令値QDと、エンジン運転状態に応じて求められる噴射量指令値Qfin とに基づき可変とされる。このときの実際の噴き分け割合についても、エンジン運転状態に応じて求められる噴き分け割合Kでの噴き分け噴射と比較して直噴インジェクタ7での燃料噴射量を多くする値となる。
上述したように、第2噴き分け噴射や第1噴き分け噴射が行われることで、直噴インジェクタ7に繋がる高圧燃料配管33内に停滞した高温高圧の燃料が速やかに直噴インジェクタ7から噴射されて消費される。その結果、直噴圧が図6(a)に示すように速やかに低下し、それに伴い直噴指令値QDに対応した量の燃料噴射を実現するための直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUD、すなわち直噴圧に基づき求められる燃料噴射時間TAUDを速やかに上記最小値TAUDmin まで引き上げることが可能になる。そして、直噴圧に基づき求められる同直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin まで引き上げられると、エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kでの噴き分け噴射に切り換えられる(タイミングT3)。
なお、噴き分け噴射の実行中、直噴圧が上記閾値(「所定値C+目標値」)以上という高い値であるとき、直噴インジェクタ7での燃料噴射時期を進角させるための進角量Aが図6(c)に示すように「0」よりも大きい値とされる(タイミングT1)。これにより、噴き分け噴射の実行中における直噴インジェクタ7での燃料噴射時期が進角量A分だけ進角されることになる。この進角量Aとしては、例えば、直噴圧と目標値との差圧ΔPに基づき同差圧ΔPの減少に伴い徐々に小さくなるよう可変設定される値が採用される。従って、図6(a)に示されるように直噴圧が低下したときに上記差圧ΔPが減少してゆくと、進角量Aは例えば図6(c)に示すように徐々に小さくされてゆく。
また、タイミングT1において、エンジン運転状態に応じた噴き分け割合Kをもって噴き分け噴射が行われるときと比較して直噴インジェクタ7での燃料噴射量が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射(この例では第2噴き分け噴射)が行われるとき、図6(d)に示すようにフラグFが「0(制限なし)」から「1(制限あり)」に切り換えられる。これにより、上記噴き分け噴射の実行中には、キャニスタ29から吸気通路2へのパージガスの流入が制限される。そして、タイミングT3にて上記直噴インジェクタ7での燃料噴射量が多くなる噴き分け噴射が終了し、それに伴いエンジン運転状態に応じて求められる上記噴き分け割合Kでの噴き分け噴射が開始されると、フラグFが「1(制限あり)」から「0(制限なし)」に切り換えられる。これにより、キャニスタ29から吸気通路2へのパージガスの流入の制限が解除される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン1での噴き分け噴射を行うに当たり、直噴圧に基づいて求められる直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin 未満になるときには、エンジン運転状態に応じて求められる噴き分け割合Kで噴き分け噴射を行うときと比較して直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合で噴き分け噴射が行われる。
上記直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射として、具体的には次のような第1噴き分け噴射や第2噴き分け噴射が行われる。この第1噴き分け噴射は、直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDを最小値TAUDminに設定して同インジェクタ7からの燃料噴射を行うとともに、噴射量指令値Qfinに対応する量の燃料のうち上記直噴インジェクタ7からの燃料噴射では噴射しきれない分の燃料をポート噴射インジェクタ6から噴射するものである。一方、第2噴き分け噴射は、上記第1噴き分け噴射におけるポート噴射インジェクタ6の燃料噴射時間TAUPを最小値TAUPmin未満としなければならないほど同ポート噴射インジェクタ6の燃料噴射量(ポート噴射指令値QP)が少ないとき、直噴インジェクタ7のみから燃料が噴射される噴き分け割合をもって噴き分け噴射を行うものである。
上記第1噴き分け噴射や上記第2噴き分け噴射を行うことにより、直噴インジェクタ7から噴射される燃料を多くすることができ、同インジェクタ7に繋がる高圧燃料配管33で停滞していた高温の燃料を速やかに噴射して消費することができる。その結果、直噴インジェクタ7に供給される燃料の圧力が速やかに低下し、それに伴い同インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDを速やかに上記最小値TAUDmin まで引き上げることが可能になる。従って、エンジン1での噴き分け噴射が開始されたとき、直噴圧の過上昇に起因して直噴インジェクタ7からの燃料噴射が過多になるとしても、それを速やかに解消して上記燃料噴射の過多に起因する筒内での燃料燃焼の悪化を抑制することができる。
(2)上記第1噴き分け噴射や上記第2噴き分け噴射の実行中には、それらの噴き分け割合がエンジン運転状態に対応した値(噴き分け割合K)とはならないことから、筒内での燃料の燃焼を最適な状態にすることは困難である。しかし、上記噴き分け噴射の実行中、エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kをもって噴き分け噴射を行う条件のもとで直噴圧に基づき求められる同直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin まで引き上げられると、エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kでの噴き分け噴射に切り換えられる。このため、エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kでの噴き分け噴射よりも、直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の実行中、そうした噴き分け噴射が無駄に長く行われて筒内での燃料の燃焼が最適な状態とされなくなることを抑制できる。
(3)噴き分け噴射の実行中、直噴インジェクタ7からの燃料噴射を行うに当たり、直噴圧がエンジン運転状態に応じて定められる目標値よりも高い値とされた閾値(「所定値C+目標値」)以上であるときには、直噴インジェクタ7の燃料噴射時期が進角させられる。ここで、直噴圧が上記閾値以上という高い値であるときには、直噴インジェクタ7から噴射される燃料の貫徹力が強いため、その燃料が筒内で分散しにくくなって燃料の燃焼を良好なものとしにくくなる。しかし、上直噴圧が上記閾値以上であるときに直噴インジェクタ7の燃料噴射時期を進角させると、その直噴インジェクタ7から噴射された燃料がエンジン1のピストン13の頂面に衝突するため、その燃料が筒内で分散する。このように燃料が筒内で分散することにより、同燃料の燃焼が良好なものとされる。
(4)上記第1噴き分け噴射や上記第2噴き分け噴射が行われる際には、エンジン1の吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入が制限される。エンジン1においては、吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入が行われると、そのガスに含まれる燃料成分に対応する分だけ噴射量指令値Qfin が減量されることから、上記第1噴き分け噴射や上記第2噴き分け噴射が行われるときの直噴インジェクタ7の燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin 未満になりやすくなる。こうしたことが上記キャニスタ29から吸気通路2へのパージガスの流入の制限によって抑制される。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射(第1噴き分け噴射や第2噴き分け噴射)の開始タイミングに対し、エンジン1の吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入の制限の開始タイミングが相対的に早められるようにしてもよい。
具体的には、図7に示すように、タイミングT1でフラグFが「0(制限なし)」から「1(制限あり)」に切り換えられた後、所定のディレー時間(T1〜Ta)が経過してから上記直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射を開始することが考えられる。なお、図7において(a)〜(d)はそれぞれ、図6と同様に、直噴圧、実際の噴き分け割合、進角量A、及びフラグFの時間経過に対する変化態様を示している。また、図8において、上記直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射が開始されるタイミングT1をエンジン運転状態等から予測し、その予測したタイミングT1よりも前(T0)にフラグFを「0(制限なし)」から「1(制限あり)」に切り換えることも考えられる。なお、図8において(a)〜(d)はそれぞれ、図6と同様に、直噴圧、実際の噴き分け割合、進角量A、及びフラグFの時間経過に対する変化態様を示している。
エンジン1の吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入を制限開始したとしても、それがエンジン1の運転に反映されるまでには時間を要する。このため、仮に、直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、エンジン1の吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入制限の開始タイミングが一致したとすると、次のような問題が生じる可能性がある。すなわち、上記パージガスの流入制限がエンジン1の運転に反映されるまでの間、そのパージガス中の燃料成分に起因して直噴インジェクタ7での燃料噴射時間TAUDが最小値TAUDmin 未満になりやすくなる。しかし、直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、エンジン1の吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入の制限の開始タイミングが相対的に早められた状態とされることで、上述した問題が生じることは抑制される。
なお、直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、エンジン1の吸気通路2へのキャニスタ29からのパージガスの流入の制限の開始タイミングを相対的に早める際、電子制御装置16はタイミング制御部として機能する。
・エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kでの噴き分け噴射よりも直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射として、第1噴き分け噴射と第2噴き分け噴射とのいずれか一方のみを行うようにしてもよい。ちなみに、第2噴き分け噴射のみを行うようにした場合には、エンジン運転状態に応じて求められた噴き分け割合Kでの噴き分け噴射よりも直噴インジェクタ7からの燃料噴射が多くなる噴き分け割合として、直噴インジェクタ7のみから燃料が噴射される噴き分け割合(「1.0」)が採用された状態となる。
・噴き分け噴射が行われるときのキャニスタ29から吸気通路2へのパージガス流入の制限については必ずしも行う必要はない。
・噴き分け噴射が行われるときの直噴インジェクタ7での燃料噴射時期の進角については必ずしも行う必要はない。
1…エンジン、2…吸気通路、2a…吸気ポート、3…燃焼室、4…スロットルバルブ、5…アクセルペダル、6…ポート噴射インジェクタ、7…直噴インジェクタ、8…燃料タンク、9…フィードポンプ、10…高圧燃料ポンプ、12…点火プラグ、13…ピストン、14…クランクシャフト、15…排気通路、16…電子制御装置、17…アクセルポジションセンサ、18…スロットルポジションセンサ、19…エアフローメータ、20…クランクポジションセンサ、21…カムポジションセンサ、22…空燃比センサ、23…第1圧力センサ、24…第2圧力センサ、25…吸気カムシャフト、26…吸気バルブ、27…排気カムシャフト、28…排気バルブ、29…キャニスタ、30…パージ制御弁、31…低圧燃料配管、32…プレッシャレギュレータ、33…高圧燃料配管。
Claims (5)
- 吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射インジェクタと筒内に燃料を噴射する直噴インジェクタとを備える内燃機関に適用され、噴射量指令値に対応した量の燃料を、機関運転状態に応じて求められる噴き分け割合をもって、前記ポート噴射インジェクタからの噴射と前記直噴インジェクタからの噴射とに分けて噴射する噴き分け噴射を行う内燃機関の制御装置において、
前記噴き分け噴射を行うに当たり、前記直噴インジェクタに供給される燃料の圧力に基づき求められる同直噴インジェクタでの燃料噴射時間が同直噴インジェクタの構造に起因する最小値未満になるとき、前記機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合で前記噴射量指令値分の燃料を噴射する噴き分け噴射を行うときと比較して、前記直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合で前記噴射量指令値分の燃料を噴射する噴き分け噴射として、第1噴き分け噴射もしくは第2噴き分け噴射を行う噴射制御部を備え、
前記第1噴き分け噴射は、前記直噴インジェクタの燃料噴射時間を前記最小値に設定して同直噴インジェクタからの燃料噴射を行うとともに、前記噴射量指令値に対応する量の燃料のうち前記直噴インジェクタからの燃料噴射では噴射しきれない分の燃料を前記ポート噴射インジェクタから噴射するものであり、
前記第2噴き分け噴射は、前記直噴インジェクタのみから燃料が噴射される噴き分け割合をもって噴き分け噴射を行うものであり、
前記噴射制御部は、前記第2噴き分け噴射よりも優先して前記第1噴き分け噴射を実行するものであって、その第1噴き分け噴射を実行すべく前記ポート噴射インジェクタの燃料噴射時間を設定したとき、その燃料噴射時間が同ポート噴射インジェクタの構造に起因する最小値未満であれば、前記第1噴き分け噴射に代えて前記第2噴き分け噴射を実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記噴射制御部は、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも前記直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の実行中、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合をもって噴き分け噴射を行う条件のもとで前記直噴インジェクタに供給される燃料の圧力に基づき求められる同直噴インジェクタの燃料噴射時間が前記最小値まで引き上げられると、機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射に切り換える
請求項1記載の内燃機関の制御装置。 - 請求項1又は2記載の内燃機関の制御装置において、
前記直噴インジェクタからの燃料噴射を行うに当たり、前記直噴インジェクタに供給される燃料の圧力が機関運転状態に応じて定められる目標値よりも高い値とされた閾値以上であるとき、前記直噴インジェクタの燃料噴射時期を進角させる噴射時期進角部を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
機関運転状態に応じて求められた噴き分け割合での噴き分け噴射よりも前記直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射が行われる際、内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入を制限するパージ制限部を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 請求項4記載の内燃機関の制御装置において、
前記直噴インジェクタからの燃料噴射が多くなる噴き分け割合での噴き分け噴射の開始タイミングに対し、内燃機関の吸気系へのキャニスタからのガスの流入の制限の開始タイミングが相対的に早められた状態となるよう、前記噴射制御部及び前記パージ制限部を制御するタイミング制御部を更に備える
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
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