JP2007032328A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 筒内噴射用インジェクタ(DI)と吸気通路噴射用インジェクタ(PFI)とを有するエンジンにおいて、インジェクタ噴射量が最小噴射量でガードされた場合であっても、制御性の良好な空燃比フィードバック制御を実現する。
【解決手段】 エンジンECUは、DI燃料噴射量Q(DI)を算出するステップ(S100)と、PFI燃料噴射量Q(PFI)を算出するステップ(S110)と、Q(DI)が最小噴射量Qmin(DI)よりも少ないか、または、Q(PFI)が最小噴射量Qmin(PFI)よりも少ないと(S120にてYES、S130にてYES)、空燃比PIフィードバック制御における積分項の積算による更新を禁止して積分項Qiをホールドするステップ(S150)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、筒内に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射手段(筒内噴射用インジェクタ)と吸気通路または吸気ポート内に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射手段(吸気通路噴射用インジェクタ)とを備えた内燃機関の制御装置に関し、特に、排気系の触媒前の空燃比を理論空燃比にフィードバック制御する制御装置に関する。
機関吸気通路内に燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタと、機関燃焼室内に燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタとを具備し、機関負荷が予め定められた設定負荷よりも低いときには吸気通路噴射用インジェクタからの燃料噴射を停止するとともに機関負荷が設定負荷よりも高いときには吸気通路噴射用インジェクタから燃料を噴射するようにした内燃機関が公知である。
また、一般的に内燃機関の排気系には、排気ガスを浄化するための触媒コンバータが設けられている。この触媒コンバータとして、三元触媒コンバータが広く使用されており、これは排気ガス中の一酸化炭素(CO)および未燃焼の炭化水素(HC)を酸化するとともに酸化窒素(NOx)を還元して、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、および窒素(N2)に変換させるものである。
この三元触媒コンバータによる浄化特性は、燃焼室内に形成される混合気の空燃比に依存し、それが理論空燃比近傍である時に三元触媒コンバータは最も有効に機能する。これは、空燃比がリーンであり排気ガス中の酸素量が多いと、酸化作用が活発となるが還元作用が不活発となり、また空燃比がリッチであり排気ガス中の酸素量が少ないと、逆に還元作用が活発となるが酸化作用が不活発となり、前述の三成分を全て良好に浄化させることができないためである。したがって、三元触媒コンバータを有する内燃機関には、その排気通路に出力リニア型酸素センサが設けられ、それにより測定される酸素濃度を使用して燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比(ストイキオメトリック・エア・フューエル・レシオ:以下、ストイキと記載する場合がある)にするように、フィードバック制御されている。
特開平11−351011号公報(特許文献1)は、燃焼室内に直接燃料を噴射する主燃料噴射弁とは別に、吸気通路内に燃料を噴射可能な補助燃料噴射弁を備え、所定の運転条件にて補助燃料噴射弁を作動させて、内燃機関への燃料噴射を主燃料噴射弁と補助燃料噴射弁とに分担させる場合に、補助燃料噴射弁の作動・非作動の切換時の一時的な空燃比エラーによる誤学習を防止する、内燃機関の燃焼噴射制御装置を開示する。この制御装置は、燃焼室内に直接燃料を噴射する主燃料噴射弁を備える直噴火花点火式内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関の運転条件に基づいて基本燃料噴射量を演算する基本燃料噴射量演算手段と、所定の空燃比フィードバック制御条件にて空燃比センサにより検出される空燃比のリッチ・リーンに応じて空燃比フィードバック補正係数を増減して設定する空燃比フィードバック補正係数設定手段と、学習補正係数を記憶する書換え可能な学習補正係数記憶手段と、基本燃料噴射量と空燃比フィードバック補正係数と学習補正係数とから燃料噴射量を演算する燃料噴射量演算手段と、所定の学習条件にて学習により空燃比フィードバック補正係数に基づいてこれを基準値に近づける方向に学習補正係数を更新する学習手段とを備え、さらに、主燃料噴射弁とは別に、吸気通路内に燃料を噴射可能な補助燃料噴射弁を備えるとともに、所定の運転条件にて補助燃料噴射弁を作動させて、内燃機関への燃料噴射を主燃料噴射弁と補助燃料噴射弁とに分担させる切換制御手段を備えるものにおいて、補助燃料噴射弁の作動・非作動状態の切換時に、所定の期間、学習手段による学習を禁止する学習禁止手段を設ける。
この内燃機関の燃料噴射制御装置によると、補助燃料噴射弁の作動・非作動状態の切換時の一時的な空燃比エラーを誤学習しないので、学習精度が向上するという効果が得られる。
特開平11−351011号公報
フィードバック制御のゲインは大きいほど目標値への収束が早くなる一方、大き過ぎると発振してしまうおそれもある。このゲインは、制御系の無駄時間や応答遅れに依存し、無駄時間や応答遅れが小さいほどゲインを大きく設定でき、目標値への応答性を高めることができる。さらに詳しくは、PI制御における適正にチューニングされた、比例項は応答性を良好にするとともに、積分項は定常偏差を0にする(小さくする)。
また、筒内噴射用インジェクタおよび吸気通路噴射用インジェクタのいずれにおいても、噴射量と噴射時間との関係(Q-tau特性)において、リニアリティのある最小噴射量以下の領域においては、噴射時間に対して所望の噴射量を噴射できない。すなわち、Q-tau特性のリニアリティのない領域(噴射量の極めて少ない領域)においては、噴射量の精度が確保できない。このため、筒内噴射用インジェクタも吸気通路噴射用インジェクタも、この最小噴射量以下の領域においては最小噴射量のみを噴射するようにガードを設けている。
しかしながら、特許文献1においては、このような最小噴射量以下の領域における、燃料噴射量の精度を確保するための、ガードを考慮したものではない。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、筒内に向けて燃料を噴射する第1の燃料噴射手段と吸気通路に向けて燃料を噴射する第2の燃料噴射手段とを有する内燃機関において、燃料噴射手段の噴射量が最小噴射量でガードされた場合であっても、制御性の良好な空燃比フィードバック制御を実現できる、内燃機関の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る制御装置は、筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを備えた内燃機関を制御する。この制御装置は、内燃機関に要求される条件に基づいて、第1の燃料噴射手段と第2の燃料噴射手段とで分担して燃料を噴射するように、燃料噴射手段を制御するための手段と、内燃機関の排気系に設けられ、排気の空燃比を検知するための手段と、検知された空燃比に基づいて、空燃比が目標空燃比になるように、積分動作を含むフィードバック制御を実行するための制御手段とを含む。この制御手段は、燃料噴射手段と燃料噴射手段の最小噴射量との関係についての条件を満足するか否かに基づいて、フィードバック制御における積分項の更新処理を実行するための手段を含む。
第1の発明によると、各燃料噴射手段は、それぞれ最小噴射量が規定されている。この最小噴射量以下の領域においては、制御装置により制御される噴射時間と、実際に噴射される噴射量との間に、予め定められた特性(たとえばリニアリティ特性)が成立しない。このような領域においては、たとえ、さらに少ない燃料を噴射するように指令されても最小噴射量でガードしてしまう。このような関係についての条件が満足されると(すなわち、噴射時間に対する噴射量の精度が十分であると)、フィードバック制御における積分項の更新を許可する。一方、このような関係についての条件が満足されないと(すなわち、噴射時間に対する噴射量の精度が十分でないので最小噴射量でガードされていると)、フィードバック制御における積分項の更新を許可しない。こうすると、燃料噴射手段による噴射量が最小噴射量でガードされているという状態においては、フィードバック制御の積分項の更新がされないで積分項がホールドされる。このように積分項がホールドされて最小噴射量でガードされていて偏差が大きくなっているにも関わらず積分項が大きくならない。このため、燃料噴射手段が最小噴射量でガードされなくなったときに小さな積分項により制御量(噴射量)が小さく制御されるに過ぎず、大きなオーバーシュート等を発生させない。これにより、空燃比を乱すこともなく、三元触媒コンバータによる良好な排気浄化機能を発現して、エミッションの悪化等の問題を誘引しない。その結果、第1の燃料噴射手段と第2の燃料噴射手段とを有する内燃機関において、燃料噴射手段の噴射量が最小噴射量でガードされた場合であっても、制御性の良好な空燃比フィードバック制御を実現できる、内燃機関の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、第1の燃料噴射手段による燃料噴射量が第1の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合および第2の燃料噴射手段による燃料噴射量が第2の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合の少なくともいずれかの場合であるという条件を満足する場合、フィードバック制御における積分項の更新を禁止するための手段を含む。
第2の発明によると、指令された燃料噴射量が燃料噴射手段の最小噴射量以下であると、噴射時間に対する噴射量の精度が十分でないので最小噴射量でガードされる。この場合、フィードバック制御における積分項の更新が禁止される。このすると、燃料噴射手段による噴射量が最小噴射量でガードされているという状態においては、フィードバック制御の積分項の更新されないで積分項がホールドされる。このように積分項がホールドされて最小噴射量でガードされていて偏差が大きくなっているにも関わらず積分項が大きくならない。このため、燃料噴射手段が最小噴射量でガードされなくなったときに小さな積分項により制御量(噴射量)が小さく制御されるに過ぎず、大きなオーバーシュート等を発生させない。
第3の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、第1の燃料噴射手段による燃料噴射量が第1の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合および第2の燃料噴射手段による燃料噴射量が第2の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合のいずれの場合でもないという条件を満足する場合、フィードバック制御における積分項の更新を許可するための手段を含む。
第3の発明によると、指令された燃料噴射量が燃料噴射手段の最小噴射量以上であると、噴射時間に対する噴射量の精度が十分であるので最小噴射量でガードされない。この場合、フィードバック制御における積分項の更新が許可される。このすると、偏差に応じて、フィードバック制御の積分項の更新されて、偏差がなくなるようにフィードバック制御できる。
第4の発明に係る制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、最小噴射量は、燃料噴射手段において、噴射時間と噴射量との関係がリニアリティを有する最小の燃料量である。
第4の発明によると、燃料噴射手段において、噴射時間と噴射量との関係がリニアリティな特性を有しないときには、実際に噴射される燃料量を最小噴射量よりも小さくできない可能性がある。このような場合には、フィードバック制御における積分項を更新しないようにして、偏差の積算による制御系の悪化を抑制することができる。
第5の発明に係る制御装置においては、第1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、第1の燃料噴射手段は、筒内噴射用インジェクタであって、第2の燃料噴射手段は、吸気通路噴射用インジェクタである。
第5の発明によると、第1の燃料噴射手段である筒内噴射用インジェクタと第2の燃料噴射手段である吸気通路噴射用インジェクタとを別個に設けて噴射燃料を分担する内燃機関において、応答性の良好な、空燃比フィードバック制御を実現できる、内燃機関の制御装置を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
図1に示すように、エンジン10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU(Electronic Control Unit)300の出力
信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。また、各気筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されており、この燃料分配管130は燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されており、したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
エンジンECU300は、空燃比センサ420から入力された排気ガスの空燃比(以下、A/F(Air-Fuel ratio)と記載する場合がある)と、目標空燃比(ストイキである14.5近傍)との偏差を算出して、その偏差がなくなるようにフィードバック制御を実行する。なお、本実施の形態においては、比例動作および積分動作によるPIフィードバック制御されるものとする。すなわち、三元触媒コンバータ90が常に一定の安定した浄化性能を発揮しうるように、三元触媒コンバータ90における空燃比が理論空燃比になるようにフィードバック制御される。ただし、これに微分動作を加えたPIDフィードバック制御として制御系の安定性を向上させるようにしてもよい。
さらに、空燃比が、一時的にリーン状態やリッチ状態になっても、三元触媒コンバータ90の排気ガスの浄化性能が低下させないように、三元触媒コンバータ90に酸素を貯蔵する能力(酸素ストレージ)を持たせることが一般的に知られている。これにより、空燃比がリーン状態の時に余分な酸素を貯蔵し、またリッチ状態の時に貯蔵された酸素を使用することにより、排気ガスの浄化性能を維持することができる。
すなわち、三元触媒コンバータ90は、空燃比がリーンのときに排気ガス中の過剰酸素を取込んで貯蔵する機能を有し、この機能によってNOxを還元させる。一方、空燃比がリッチになると排気ガス中の未燃焼のHC,COが三元触媒コンバータ内に貯蔵されている酸素を奪い、それによって未燃焼のHC,COを酸化させる。したがって、空燃比が理論空燃比からずれたときにNOxを還元させるためには三元触媒コンバータ90が酸素を貯蔵しえる状態になければならず(すなわち、三元触媒コンバータ90の酸素貯蔵量が最大酸素吸蔵量に対して余裕がなければならず)、一方、このとき未燃焼のHC,COを酸化させるためには三元触媒コンバータ90がある程度の酸素を貯蔵していなければならないことになる。
このように、空燃比が理論空燃比からリーン側にずれたときにNOxを還元でき、空燃比が理論空燃比に対してリッチ側にずれたときに未燃焼のHC,COを酸化できるようにするためには、三元触媒コンバータ90の酸素吸蔵量を最大酸素吸蔵量の半分程度に維持しておくことが好ましいとされている。このような三元触媒コンバータ90の酸素吸蔵量を制御するとともに、三元触媒コンバータ90における空燃比が理論空燃比になるようにPIフィードバック制御される。
このPIフィードバック制御についてさらに説明する。次回の燃料補正量Q(FAF)は、
Q(FAF)=Qp+Qi … (1)
により算出される。ここで、Qpは比例項、Qiは積分項である。
比例項Qpは、
Qp=K(1)・ΔQ … (2)
ここで、K(1)は比例ゲイン用の係数、ΔQは今回の燃料差であって、
燃料差ΔQ=(吸入空気をストイキとする目標の燃料量−実際に燃焼室内で燃焼せしめられた燃料量)
である。また、
実際に燃焼室内で燃焼せしめられた燃料量=吸入空気量の検出値/空燃比の検出値
により算出される。
式(2)から分かるように、今回の燃料差ΔQ(ΔQ>0とする)が大きい値(すなわちリーン)になるほど、比例項Qpは大きい値になり、燃料量を大きく増量するするように制御される。逆に、今回の燃料差ΔQ(ΔQ>0とする)が小さい値(0に近い)になるほど、比例項Qpは小さい値になり、燃料量を小さく増量するように制御される。
さらに、今回の燃料差ΔQ(ΔQ<0とする)が小さい値(すなわちリッチ)になるほど、比例項Qpは小さい値になり、燃料量を大きく減量するするように制御される。逆に、今回の燃料差ΔQ(ΔQ<0とする)が大きい値(0に近い)になるほど、比例項Qpは小さい値になり、燃料量を小さく減量するように制御される。
積分項Qiは、
Qi=Qi+K(2)・ΔQ … (3)
ここで、K(2)は積分ゲイン用の係数である。ΔQは、式(2)と同じである。
式(3)から分かるように、ΔQに対応した値が所定周期毎に積分項Qiに加算される。その結果、積分項Qiは、ΔQが正である範囲において徐々に大きい値へと更新されることになる。また、積分項Qiは、ΔQが負である範囲において徐々に小さい値へと更新されることになる。このように積分項は所定周期で(エンジンECU300のサイクルタイム毎に)、積算される。
上記のように、空燃比センサ420を用いたフィードバック制御において、比例項Qpは、空燃比をストイキに維持すべく作用する成分であり、積分項Qiは、定常偏差(オフセット)を消去するように作用する成分である。すなわち、この積分項Qiの作用により、三元触媒コンバータコンバータ90における酸素ストレージ量が一定に維持される結果になる。たとえば、急加速等でリーンガスが発生した場合には、かかる積分項Qiの作用により、リッチガスが発生せしめられ、リーンガス発生の効果が相殺される。なお、このような酸素ストレージ量を一定に維持するため故意に空燃比を変動させる制御は、カウンタ制御といわれる。
本実施の形態においては、筒内噴射用インジェクタ110が筒内噴射用インジェクタ110の最小噴射量または吸気通路噴射用インジェクタ120が吸気通路噴射用インジェクタ120の最小噴射量でガードされると、積分項の積算を中止してホールドすることを特徴とする。
以下、図2に示すフローチャートを参照して、エンジンECU300で実行される空燃比フィードバックのプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する。)100にて、エンジンECU300は、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)を算出する。S110にて、エンジンECU300は、吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)を算出する。このS100およびS110における処理は、たとえば、エンジン10の負荷率、各種の変換係数や補正係数(このなかに空燃比フィードバック係数も含まれる。)等に基づいて算出される総燃料量(Q(DI)+Q(PFI))を、エンジン10の回転数および負荷に基づいて決定される噴き分け率(直噴比率やDI比率rともいう。詳しくは後述する。)を用いて、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)および吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)を算出する。なお、このような算出方法に限定されるものではない。すなわち、インジェクタの無効噴射量、パージ補正量等を考慮して、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)および吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)を算出するようにしてもよい。
S120にて、エンジンECU300は、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)が筒内噴射用インジェクタ110の最小噴射量Qmin(DI)よりも少ないか否かを判断する。この筒内噴射用インジェクタ110の最小噴射量Qmin(DI)は、筒内噴射用インジェクタ110における噴射時間と噴射量との関係にリニアリティが保証される最小の噴射量である。筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)が筒内噴射用インジェクタ110の最小噴射量Qmin(DI)よりも少ないと(S120にてYES)、処理はS150へ移される。もしそうでないと(S120にてNO)、処理はS130へ移される。なお、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)が筒内噴射用インジェクタ110の最小噴射量Qmin(DI)以下であるか否かを判断するようにしてもよい。
S130にて、エンジンECU300は、吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)が吸気通路噴射用インジェクタ120の最小噴射量Qmin(PFI)よりも少ないか否かを判断する。この筒内噴射用インジェクタ120の最小噴射量Qmin(PFI)は、吸気通路噴射用インジェクタ120における噴射時間と噴射量との関係にリニアリティが保証される最小の噴射量である。吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)が吸気通路噴射用インジェクタ120の最小噴射量Qmin(PFI)よりも少ないと(S130にてYES)、処理はS150へ移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS140へ移される。なお、吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)が吸気通路噴射用インジェクタ120の最小噴射量Qmin(PFI)以下であるか否かを判断するようにしてもよい。
S140にて、エンジンECU300は、空燃比PIフィードバック制御の積分項Qiの積算による更新を許可する。すなわち、上記した式(3)に基づいて、積分項Qiが、{Qi+K(2)・ΔQ}で積算されて算出される。
S150にて、エンジンECU300は、空燃比PIフィードバック制御の積分項Qiの積算による更新を禁止する。すなわち、上記した式(3)を用いることなく、積分項Qiが、最新のQiにホールドされる。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU300を搭載した車両の動作(特に、エンジン10における空燃比PIフィードバック制御の動作)について説明する。
エンジンECU300により、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)および吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)がそれぞれ算出される(S100およびS110)。
筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)が最小噴射量Qmin(DI)よりも少ないか、または、吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)が最小噴射量Qmin(PFI)よりも少ないと(S120にてYESまたはS130にてYES)、空燃比PIフィードバック制御の積分項Qiの更新が禁止される(S150)。
この状態を図3を用いて説明する。図3(A)に、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)および吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量Q(PFI)の時間的変化を示す。なお、Qmin(DI)>Qmin(PFI)と想定する。多くの場合、筒内噴射用インジェクタ110の方が最小噴射量が高く、図3(A)に示すように(噴き分け率にもよるが)先にQ(DI)<Qmin(DI)となる。
図3(B)に、図3(A)に対応する、空燃比PIフィードバック制御における積分項Qiの時間的変化を示す。図3(C)に、図3(A)および図3(B)に対応する、空燃比の時間的変化を示す。図3(A)〜(C)に示すように、理論空燃比14.5近傍からリッチ側にずれていった場合を想定している。図3(A)〜(C)のいずれも実線が本発明の場合を、点線が従来の場合をそれぞれ示している。
時刻t(1)に近付くにつれて、空燃比がリッチ側にずれているので(図3(C))、図3(A)に示すように燃料量が低下される。時刻t(1)において、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量Q(DI)が最小噴射量Qmin(DI)を下回る(S120にてYES)。このような状態が時刻t(1)〜時刻t(2)の継続すると、その期間は図3(B)に示すように、PIフィードバック制御の積分項の積算による更新が禁止されるので(S150)、結果として、時刻t(1)における最新の積分項Qiがホールドされる。なお、従来では、図3(B)に点線で示すように、空燃比のPIフィードバック制御の積分項の積算による更新が禁止されなかったので、積分項がさらに更新され続けている。この結果、時刻t(2)において本発明よりも(その絶対値が)大きい積分項に更新されている。このため、偏差が大きいと判断されたことに等しく、その偏差をなくするべく、フィードバック制御が実行され、大きく燃料噴射量を変更する(大きく減量する)。その結果、図3(C)に示すように時刻t(2)以降において、一旦大きくリーン側にオーバシュートするとともに、その後、リッチ側にオーバシュートして、実際の空燃比と理論空燃比と偏差がなくなるまでに時間がかかり、良好なフィードバック制御を実現できない。
一方、本発明においては、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射量が最小噴射量を下回っている時刻t(1)〜時刻t(2)において、空燃比のPIフィードバック制御の積分項の積算による更新を禁止して積分項Qiをホールドした。この結果、時刻t(2)において従来よりも(その絶対値が)小さい積分項のままである。このため、偏差が小さいと判断されたことに等しく、その偏差をなくするべく、フィードバック制御が実行されるが、小さくしか燃料噴射量を変更しない(小さく減量する)。その結果、図3(C)に示すように時刻t(2)以降において、大きくリーン側にオーバシュートすることなく、かつ、実際の空燃比と理論空燃比と偏差がなくなるまでに長い時間を必要としないで、良好なフィードバック制御を実現できる。
これは、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量でガードされているという状態においては、実際の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にずれている場合、空燃比PIフィードバック制御において燃料噴射量をさらに減量するように制御される。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量でガードされているので、最小噴射量で噴射されるので空燃比がリッチ側にずれた状態が継続する。このような状態においてPIフィードバック制御の積分項の更新を許可すると、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量で噴射し続けているので偏差(実際の空燃比と理論空燃比の差であって、燃料差ΔPでもある)が小さくならない状態になり、積分項Qiが積算され続ける。このように大きな積分項Qiに更新され続けてから、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量でガードされているという状態から抜け出すと、大きな積分項Qiにより制御量(噴射量)が大きく制御され(大きく減量され)過ぎてしまい、オーバーシュートを大きくしてしまい、さらにその反動で反対側のオーバシュートを大きくしてしまい、良好な制御を実現できず、空燃比を乱すことになる。これにより、三元触媒コンバータ90による良好な排気浄化機能を発現しえず、エミッションの悪化等も問題を誘引する。
本発明に係るエンジンECU300においては、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量でガードされているという状態においては、実際の空燃比が理論空燃比よりもリッチ側にずれていても、PIフィードバック制御の積分項の更新を禁止する。このため、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量で噴射し続けているので偏差(実際の空燃比と理論空燃比の差であって、燃料差ΔPでもある)が小さくならない状態であっても、積分項Qiはホールドされる。このように積分項Qiがホールドされて、筒内噴射用インジェクタ110が最小噴射量でガードされているという状態から抜け出しても、小さな積分項Qiにより制御量(噴射量)が小さく制御される(小さく減量される)に過ぎず、大きくオーバーシュートしないので、空燃比を乱すこともない。これにより、三元触媒コンバータ90による良好な排気浄化機能を発現して、エミッションの悪化等の問題を誘引しない。
特に、適正な酸素ストレージ量とするために行なわれるカウンタ制御においても、上記した理由により空燃比制御が乱れることもない。
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUによると、筒内噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとを有するエンジンにおいて、インジェクタの噴射量が最小噴射量でガードされた場合であっても、制御性の良好な空燃比フィードバック制御を実現できる。
<この制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)>
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その1)について説明する。
図4および図5を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、DI比率(r)とも記載する。)を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図4は、エンジン10の温間用マップであって、図5は、エンジン10の冷間用マップである。
図4および図5に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図4および図5に示すように、エンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rが設定されている。「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれる領域であることを意味する。なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。このような特性の異なる2種類のインジェクタを、エンジン10の回転数と負荷率とで使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態(たとえば、アイドル時の触媒暖気時が、通常運転状態以外の非通常運転状態の一例であるといえる)である場合には、均質燃焼のみが行なわれるようにしている。
さらに、これらの図4および図5に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けて、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120のDI分担率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図4の温間時のマップを選択して、そうではないと図5に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図4および図5に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図4のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図5のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図4のNE(2)や、図5のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図4および図5を比較すると、図4に示す温間用マップのNE(1)よりも図5に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図4および図5を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図4に示す温間用マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。これは、温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられ、このために、筒内噴射用インジェクタ110を用いた領域としている。
図4および図5を比較すると、図5の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖気時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖気運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖気を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
<この制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)>
以下、本実施の形態に係る制御装置が適用されるに適したエンジン(その2)について説明する。なお、以下のエンジン(その2)の説明において、エンジン(その1)と同じ説明については、ここでは繰り返さない。
図6および図7を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図6は、エンジン10の温間用マップであって、図7は、エンジン10の冷間用マップである。
図6および図7を比較すると、以下の点で図4および図5と異なる。エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいては低回転数領域を除くKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいては低回転数領域を除くKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用される領域が多いことを示す。しかしながら、低回転数領域の高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料により形成される混合気のミキシングが良好ではなく、燃焼室内の混合気が不均質で燃焼が不安定になる傾向を有する。このため、このような問題が発生しない高回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタの噴射比率を増大させるようにしている。また、このような問題が発生する高負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させるようにしている。これらのDI比率rの変化を図6および図7に十字の矢印で示す。このようにすると、燃焼が不安定であることに起因するエンジンの出力トルクの変動を抑制することができる。なお、これらのことは、予め定められた低回転数領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を減少させることや、予め定められた低負荷領域へ移行するに伴い筒内噴射用インジェクタ110の噴射比率を増大させることと、略等価であることを確認的に記載する。また、このような領域(図6および図7で十字の矢印が記載された領域)以外の領域であって筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射している領域(高回転側、低負荷側)においては、筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすい。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
なお、図4〜図7を用いて説明したこのエンジン10においては、均質燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程とすることにより、成層燃焼は筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることにより実現できる。すなわち、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程とすることで、点火プラグ周りにリッチ混合気が偏在させることにより燃焼室全体としてはリーンな混合気に着火する成層燃焼を実現することができる。また、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを吸気行程としても点火プラグ周りにリッチ混合気を偏在させることができれば、吸気行程噴射であっても成層燃焼を実現できる。
また、ここでいう成層燃焼には、成層燃焼と以下に示す弱成層燃焼の双方を含むものである。弱成層燃焼とは、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程で燃料噴射して燃焼室全体にリーンで均質な混合気を生成して、さらに筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程で燃料噴射して点火プラグ周りにリッチな混合気を生成して、燃焼状態の向上を図るものである。このような弱成層燃焼は触媒暖気時に好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、触媒暖気時には高温の燃焼ガスを触媒に到達させるために点火時期を大幅に遅角させ、かつ良好な燃焼状態(アイドル状態)を維持する必要がある。また、ある程度の燃料量を供給する必要がある。これを成層燃焼で行なおうとしても燃料量が少ないという問題があり、これを均質燃焼で行なおうとしても良好な燃焼を維持するために遅角量が成層燃焼に比べて小さいという問題がある。このような観点から、上述した弱成層燃焼を触媒暖気時に用いることが好ましいが、成層燃焼および弱成層燃焼のいずれであっても構わない。
また、図4〜図7を用いて説明したエンジンにおいては、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、以下のような理由により、圧縮行程で行なうことが好ましい。ただし、上述したエンジン10は、基本的な大部分の領域には(触媒暖気時にのみに行なわれる、吸気通路噴射用インジェクタ120を吸気行程噴射させ、筒内噴射用インジェクタ110を圧縮行程噴射させる弱成層燃焼領域以外を基本的な領域という)、筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射のタイミングは、吸気行程である。しかしながら、以下に示す理由があるので、燃焼安定化を目的として一時的に筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射タイミングを圧縮行程噴射とするようにしてもよい。
筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすることで、筒内温度がより高い時期において、燃料噴射により混合気が冷却される。冷却効果が高まるので、対ノック性を改善することができる。さらに、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射時期を圧縮行程中とすると、燃料噴射から点火時期までの時間が短いことから噴霧による気流の強化を実現でき、燃焼速度を上昇させることができる。これらの対ノック性の向上と燃焼速度の上昇とから、燃焼変動を回避して、燃焼安定性を向上させることができる。
さらに、エンジン10の温度によらず(すなわち、温間時および冷間時のいずれの場合であっても)、オフアイドル時(アイドルスイッチがオフの場合、アクセルペダルが踏まれている場合)には、図4または図6に示す温間用マップを用いるようにしてもよい(冷間温間を問わず、低負荷領域において筒内噴射用インジェクタ110を用いる)。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲はした説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る制御装置で制御されるエンジンシステムの概略構成図である。 図1のエンジンECUで実行される空燃比フィードバック制御プログラムのフローチャートである。 各状態量の変化を表わすタイミングチャートである。 本発明の実施の形態に係る制御装置が適用されるに好適なエンジンの温間時のDI比率マップを表わす図(その1)である。 本発明の実施の形態に係る制御装置が適用されるに好適なエンジンの冷間時のDI比率マップを表わす図(その1)である。 本発明の実施の形態に係る制御装置が適用されるに好適なエンジンの温間時のDI比率マップを表わす図(その2)である。 本発明の実施の形態に係る制御装置が適用されるに好適なエンジンの冷間時のDI比率マップを表わす図(その2)である。
符号の説明
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、140 逆止弁、150 高圧燃料ポンプ、152 電磁スピル弁、160 燃料分配管(低圧側)、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、310 双方向性バス、320 ROM、330 RAM、340 CPU、350 入力ポート、360 出力ポート、370,390,410,430,450 A/D変換器、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440
アクセル開度センサ、460 回転数センサ。

Claims (5)

  1. 筒内に燃料を噴射するための第1の燃料噴射手段と吸気通路内に燃料を噴射するための第2の燃料噴射手段とを備えた内燃機関の制御装置であって、
    前記内燃機関に要求される条件に基づいて、前記第1の燃料噴射手段と前記第2の燃料噴射手段とで分担して燃料を噴射するように、燃料噴射手段を制御するための手段と、
    前記内燃機関の排気系に設けられ、排気の空燃比を検知するための手段と、
    前記検知された空燃比に基づいて、空燃比が目標空燃比になるように、積分動作を含むフィードバック制御を実行するための制御手段とを含み、
    前記制御手段は、前記燃料噴射手段と前記燃料噴射手段の最小噴射量との関係についての条件を満足するか否かに基づいて、前記フィードバック制御における積分項の更新処理を実行するための手段を含む、内燃機関の制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記第1の燃料噴射手段による燃料噴射量が前記第1の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合および前記第2の燃料噴射手段による燃料噴射量が前記第2の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合の少なくともいずれかの場合であるという条件を満足する場合、前記フィードバック制御における積分項の更新を禁止するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記第1の燃料噴射手段による燃料噴射量が前記第1の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合および前記第2の燃料噴射手段による燃料噴射量が前記第2の燃料噴射手段の最小噴射量以下の場合のいずれの場合でもないという条件を満足する場合、前記フィードバック制御における積分項の更新を許可するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記最小噴射量は、前記燃料噴射手段において、噴射時間と噴射量との関係がリニアリティを有する最小の燃料量である、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記第1の燃料噴射手段は、筒内噴射用インジェクタであって、
    前記第2の燃料噴射手段は、吸気通路噴射用インジェクタである、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
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