JP5644825B2 - シリカ多孔質体、光学用途積層体及び組成物、並びに、シリカ多孔質体の製造方法 - Google Patents
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Description
多孔質シリカ膜を製造する方法として、特許文献1には、シリカ膜を液化炭酸ガスの超臨界乾燥することで低屈折率体(シリカエアロゲル)を得る方法が開示されている。この方法は極めて低屈折率を提供することが可能である。
また、特許文献2〜6には、アルコキシシランのゾル−ゲル反応に特定の有機物を共存させることで、シリカ/有機物−ハイブリッドを形成し、その後、有機物を除去することで、均一、かつ規則的な空孔を有するシリカ多孔質体を得る方法が開示されている。
また、特許文献2〜6記載の技術で得られるシリカ多孔質体形成用組成物は、ポットライフが短く、安定してシリカ多孔質体を得ることが困難であった。また、特許文献2〜6に記載されているように、従来の方法は低誘電率材料として開発されたものが多く、半導体プロセスにおける銅デュアルダマシン配線構造の形成のための化学的機械的研磨(CMP)に対する機械的な強度不足を課題としていた。このため、シリカ材料特有の水に対する膜の安定性に欠けていた。したがって、従来技術による低屈折率材料は光学用途として低屈折率の維持が困難であるという重要な課題があった。
一方、特許文献3及び特許文献5に記載のシリカ多孔質体形成用組成物では、用いる有機物の分子量が低く、得られるシリカ多孔質体の多孔度を高く維持することが困難であり、低屈折率なシリカ多孔質体を安定して製造することができないと予想される。
即ち、本発明のシリカ多孔質体の製造方法は、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなるテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と、該テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と、並びに/又は、該テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種及び他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の部分縮合物と、水と、有機溶媒と、触媒と、エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子とを含み、下記(3)〜(6)を満たすことを特徴とする組成物を、相対湿度20%〜85%の環境下で基材上に膜化した後、大気雰囲気下230℃以上700℃以下で加熱する工程を含むことを特徴とする。
(3)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が0.3(mol/mol)〜0.7(mol/mol)である。
(4)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上である。
(5)エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の重量平均分子量が4,300以上である。
(6)該有機溶媒中の80重量%以上が、沸点55℃〜140℃の有機溶媒である。
そして上記の製造方法で得るシリカ多孔質体は、光学用途積層体用のシリカ多孔質体であることが好ましい。
本発明の光学用途積層体によれば、屈折率が低く、水に対して安定な光学用途積層体を提供できる。
本発明の組成物によれば、屈折率が低く水に対して安定なシリカ多孔質体を製造するための、ポットライフが長く安定した組成物を提供できる。
本発明のシリカ多孔質体の製造方法によれば、本発明のシリカ多孔質体を製造することができる。
本発明のシリカ多孔質体は、下記(1)及び(2)を満たすものである。
(1)屈折率が1.3以下である。
(2)水に浸漬する前と、水に24時間浸漬した後との波長550nmでの屈折率差が0.15以下である。
本発明のシリカ多孔質体は、屈折率が1.3以下である(条件(1))。中でも、1.28以下が好ましく、1.27以下がより好ましく、1.25以下が特に好ましい。さらに好ましくは1.23以下である。屈折率が大きすぎると本発明のシリカ多孔質体中の歪みが大きくなり、外力に対して弱くなる可能性がある。一方、屈折率の下限に特に制限は無いが、通常1.05以上、好ましくは1.08以上である。屈折率が小さすぎると本発明のシリカ多孔質体の機械的強度が著しく低下する可能性がある。
また、中心線平均粗さの大きい基材上に備えられたシリカ多孔質体の場合、反射率分光スペクトル測定によっても屈折率を見積もることが可能であり、測定領域を10μm以下にすることが好ましい。
本発明のシリカ多孔質体は、水に浸漬する前と、水に24時間浸漬した後との波長550nmでの屈折率差が、0.15以下である(条件(2))。中でも0.1以下がより好ましく、0.05以下が更に好ましく、0.03以下が特に好ましい。これにより、本発明のシリカ多孔質体は、耐水性に優れ、光学用途でも安定した屈折率性能を得ることができる。また、屈折率差が前記上限値より大きい場合、シリカ多孔質体の多孔質構造内部に水を拘束していると同時に、上記処理によりシリカ多孔質体内部でシラノール基の縮合反応が進んでいる可能性が高い。この場合、処理前の段階で既にシリカ多孔質体が不安定な状態にあった可能性がある。
本発明のシリカ多孔質体は上述した条件(1)及び(2)を満たしていれば他に制限は無いが、中でも、以下に説明する構造又は物性のうち少なくとも1つ、好ましくは全てを有していることが好ましい。
本発明のシリカ多孔質体は、多数の空孔を有したシリカを主成分とする多孔質構造を有する多孔質体である。その空孔は、通常、トンネル状や独立空孔がつながった連結孔であるが、詳細な空孔の構造には特に制限はない。ただし、当該空孔の構造としては連続的な空孔が好ましく、こうした連続的な空孔は電子顕微鏡により確認することができる。
本発明のシリカ多孔質体は、XRDパターン(X線回折パターン)において、回折角(2θ)=0.5°〜10°の領域に、回折ピーク強度(面積)が標準偏差の2倍(即ち、2σ)以上の回折ピークを有さないことが好ましい。ここで、回折ピークとは、以下の定義により算出される周期構造サイズが10Å以上となる回折ピークをいう。また、σは標準偏差を表わし、具体的には定義に従うものとする。
回折ピークとは、以下の手順に従い計算される周期構造サイズが10Å以上となる回折ピークを言う。したがって、周期構造サイズが10Åより小さくなる回折ピークは本発明に係る回折ピークとしない。
周期構造サイズDは、下記式(i)に示すScherrer式に基づき算出できる。なお、式(i)において、Scherrer定数Kは0.9であり、測定に用いたX線波長をλとする。ブラッグ角θおよび実測半価幅βoは、それぞれプロファイルフィティング法により算出する。試料由来の半価幅βは、下記式(ii)を用いて補正計算する。標準Siの回折ピークより計算した実測半価幅の回帰曲線を作成し、該当する角度の半価幅を読み取り装置由来半価幅βiとする。なお、Dの単位はÅ(オングストローム)であり、β、βo及びβiの単位はラジアンとする。
標準偏差σは、以下のように定義される。
本発明のシリカ多孔質体は、本発明のシリカ多孔質体を膜状にして光学用途に使用する場合には、光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を制御することが重要であるため、「1−2.条件(2)」の欄で説明した水浸漬処理による膜厚の変化は少ない方が好ましい。具体的には、水浸漬処理の前後での膜厚の変化率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、10%以下が特に好ましい。変化率が大きすぎると光学用途への適用において性能が低下する可能性がある。
なお、膜厚の測定は、ケーエルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用い、測定条件はスタイラス・フォース(触圧)0.2mg、スキャン速度10μm/秒として行なえばよい。また分光エリプソメーター、反射分光スペクトル法、プリズムカップラによっても評価できる。
本発明のシリカ多孔質体は、算術表面粗さRaが通常20nm以下であることが好ましく、好ましくは15nm以下、より好ましくは7nm以下である。さらに5nm以下が好ましく、3nm以下が中でも好ましく、1nm以下が特に好ましい。算術表面粗さRaが大きすぎるとシリカ多孔質体の均質性が低下する可能性がある。一方、算術表面粗さRaの下限に制限は無いが、通常0.2nm以上、好ましくは0.3nm以上である。算術表面粗さRaが小さすぎるとシリカ多孔質体の歪みが極度に大きくなる可能性がある。
本発明のシリカ多孔質体は、上述した条件(1)及び(2)を満たすことで、低い屈折率を維持できるとともに、耐水性に優れる。この優れた耐水性は、シリカ多孔質体中の歪み(内部応力)が軽減され、かつ表面への水分吸着を少なくできる一方、シリカ多孔質体内部に入り込んだ水分子(クラスター)が容易に出ることができるため、得られるものと推察される。
シリカ多孔質体を低反射層として使用する場合、シリカ多孔質体は一定サイズ以上の基材に備えることが好ましい。即ち0.1m2以上が好ましく、0.25m2以上がより好ましく、1m2以上がさらに好ましい。かかるサイズより小さいと、低反射効果が十分に現れない可能性がある。
また、本発明のシリカ多孔質体は平滑性に優れているため、例えば、エレクトロルミネッセンス素子における光取出し材料としても応用が期待される。
本発明のシリカ多孔質体の形状は特に限定はないが、平滑性に優れている為、膜状である事が好ましい。好ましい膜厚等については、後述の光学用途積層体中のシリカ多孔質の膜厚と同様とすることができる。
本発明の光学用途積層体は、基材と、当該基材上に設けられた本発明のシリカ多孔質体とを備えて構成される。この際、本発明のシリカ多孔質体は、通常、膜状に形成される。また、本発明の光学用途積層体は、必要に応じて、基材及びシリカ多孔質体以外の部材を備えていても良い。
基材は用途に応じて任意のものを用いることができる。中でも、汎用材料からなる透明基板を用いることが好ましい。
基材の材料の例を挙げると、珪酸ガラス、高珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、バリウムガラスなどの珪酸塩ガラス、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸ガラス、燐酸塩ガラスなどのガラス及びこれらの強化ガラス;ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ピスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。
中でも寸法安定性の観点では、ガラス、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂が好ましく、価格の点で、ソーダ石灰ガラスが好ましい。さらに、耐衝撃性の観点から強化ガラスを使用することも好ましい。また、単結晶太陽電池や他結晶太陽電池などの近赤外光でも光電変換可能な太陽電池に使用されるカバーガラスについては、通常のソーダ石灰ガラスでは含有される2価の鉄イオンにより近赤外領域に吸収を持つため、鉄イオン含有量を低減することで光透過性を高め、さらに耐衝撃強度が優れた白板強化ガラスを用いることがより好ましくなる。
なお、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
一方、防眩性や隠蔽性を付与する場合、基材の中心線平均粗さは上記の限りではなく、基材の表面は凸凹を有することが好ましい。かかる凹凸は基材の片面のみでも、両面に有していてもよいが、シリカ多孔質体が積層される面に有することが好ましい。具体的には、中心線平均粗さは通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上であり、また通常15μm以下、好ましくは10μm以下である。表面粗さの最大高さRmaxは通常0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。上記中心線平均粗さ及び表面粗さの最大高さRmaxの範囲にある基材上に本発明のシリカ多孔質体を備えることで低反射特性に優れ、かつ防眩性にも優れた光学用途積層体を提供することができる。この範囲を下回る、若しくは超えた場合、低反射効果が損なわれる可能性があり、また外観が不透明になる可能性がある。また基材表面の凹凸の平均間隔Smは、通常0.01mm以上、好ましくは0.03mm以上であり、通常30mm以下、好ましくは15mm以下とすることも可能である。上記中心線平均粗さ、表面粗さの最大高さRmax及び凹凸の平均間隔Smは、JIS−B0601:1994に従った汎用の表面粗さ計(例えば、(株)東京精密社製サーフコム570A)により測定される。
光学用途積層体において、本発明のシリカ多孔質体としては上述したものを用いる。
また、本発明のシリカ多孔質体は、直接又は他の層を介して基材上に設けられることになるが、通常は、本発明のシリカ多孔質体は膜状に設けられることになる。この場合、本発明のシリカ多孔質体の膜厚に制限は無いが、100nm以上が好ましく、120nm以上がより好ましく、150nm以上が特に好ましい。前記の膜厚が薄すぎると、本発明のシリカ多孔質体と他の部材との界面(例えば、密着した基材とシリカ多孔質体との界面)の影響がシリカ多孔質体中の歪み及び表面性において支配的となり、本発明の光学用途積層体の膜質や耐水性が低下する可能性がある。一方、前記の膜厚の上限は、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、5μm以下が特に好ましい。膜厚が大きすぎると、シリカ多孔質体中の歪みが極度に増大し、成膜性が低下する可能性がある。したがって、本発明のシリカ多孔質体が前記の好適な膜厚となることにより、本発明の光学用途積層体に、光学用途部材を構成する部材として有効な光学性能と性能の安定性とを備えさせることができる。
また、光学用途積層体におけるシリカ多孔質体の表面粗さは、基材の表面粗さの影響を受ける事がある。基材表面が凹凸である場合、光学用途積層体におけるシリカ多孔質体の表面粗さは、前述の基板の表面粗さと同程度になる。
本発明の光学用途積層体には、必要に応じてその他の部材を備えさせても良い。例えば基材のシリカ多孔質体が形成された面とは反対側の面に電極を有するものとしてもよい。
基材のシリカ多孔質体が形成された面とは反対側の面に電極を有する光学積層体とすることで、ディスプレイや太陽電池といった光デバイスの部材として好適である。また、電極は直接又は他の層を介して基板に設けることができる。電極としてアルミニウム、錫、マグネシウム、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、又はこれらを含む合金、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛などが挙げられる。中でも透明性の観点で酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、又はこれを主組成としたものが好ましく、これらは1種単独で、または2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。またその膜厚は通常10nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。また通常500nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。10nmを下回ると膜に欠陥ができ易くなる傾向があり、500nmを越えると透明性を損なう可能性がある。
更に、太陽電池では、通常は一対の電極1及び3を設け、当該電極1及び3の間に半導体層2が位置するように構成する。
この際、半導体層に用いられる半導体の種類に制限は無い。また、半導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、半導体層には、太陽電池としての機能を著しく損なわない限りその他の材料が含有されていても良い。
また、半導体層は、単一の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の膜によって構成されていても良い。具体的な型式でいえば、太陽電池における半導体層としては、例えば、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型、ハイブリッド型などのいずれであってもよい。
なお、半導体層の厚さに特に制限はないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の寸法で形成する。
透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理による特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、本発明の多孔質膜、2つの電極、及び上記電極の間にエレクトロルミネッセンス層を有するものであればよく、通常、(i)電極(陰極)、(ii)エレクトロルミネッセンス層、(iii)電極(陽極)、(iv)本発明の多
孔質膜、及び(v)透光体がこの順に配置される構成をとること等が可能である。(i)〜(v)の順を維持するものであれば、それぞれの層の間に他の層を有していてもよい。例えば(iii)電極(陽極)と(iv)本発明の多孔質膜との間に、光散乱層及び/または高屈折率層を入れること等も可能である。
陽極は、可視光に対して透明性を有する透明電極層とすることも可能であり、透明電極層として形成される場合、可視光波長領域における光線透過率は大きいほど好ましい。この際、下限としては通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。また上限としては通常99%以下である。また陽極の電気抵抗は、面抵抗値として小さいほど好ましく、通常1Ω/□(オームパースクウェア;□=1cm2)以上とされ、通常100Ω/□以下、好ましくは70Ω/□以下、より好ましくは50Ω/□以下とされる。
また陽極を透明電極とする場合の厚さとしては、上述した光線透過率及び面抵抗値を満足するものであれば特に限定されないが、通常、0.01μm以上であり、また導電性の観点から好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。また上限としては通常、10μm以下であるが、光線透過率の観点から1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。
本発明の光学用途積層体は、本発明のシリカ多孔質体を備えるため、屈折率が低く、耐水性に優れる。このため、本発明のシリカ多孔質体を例えば低反射層、反射防止層、エレクトロルミネッセンス素子における光取出し層などとして好適に使用することができる。特に、耐水性に優れる点を利用して屋外での使用を前提とした用途にも利用できるため、太陽電池の低反射層として用いて特に好適である。
本発明の組成物は、本発明のシリカ多孔質体を形成するためシリカ多孔質体形成用組成物であって、本発明の組成物を硬化させることにより本発明のシリカ多孔質体が得られるようになっている。
(3)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が0.3(mol/mol)〜0.7(mol/mol)である。
(4)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上である。
(5)エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の重量平均分子量が4,300以上である。
(6)該有機溶媒中の80重量%以上が、沸点55℃〜140℃の溶媒である。
本発明の組成物は、アルコキシシラン類として、少なくとも、以下の第1及び第2化合物(群)のうちいずれか一方又は両方を含有する。
〔第1の化合物(群)〕
テトラアルコキシシラン類群(即ち、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、他のアルコキシシラン類群(即ち、他のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種との組み合わせ。
〔第2の化合物(群)〕
特定部分縮合物(即ち、テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種との部分縮合物)。
テトラアルコキシシラン類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シランなどが挙げられる。また、テトラアルコキシシラン類群の例としては、前記のテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
ただし、テトラアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシラン類と共存することが多い。
なお、テトラアルコキシシラン類群に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
他のアルコキシシラン類は、上述したテトラアルコキシシラン類に属さないアルコキシシランであれば、任意のものを使用できる。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するもの;などが挙げられる。また、他のアルコキシシラン類群の例としては、前記の他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
ただし、他のアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、他のアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はその他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物が他のアルコキシシラン類と共存することが多い。
なお、他のアルコキシシラン類に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特定部分縮合物としては、上述したテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種とが部分縮合した部分縮合物であれば、任意のものを用いることができる。好適な例を挙げると、テトラアルコキシシラン類の好適な例として例示したものと、他のアルコキシシラン類の好適な例として例示したものとが部分縮合した部分縮合物が挙げられる。
なお、特定部分縮合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、特定部分縮合物は、特定部分縮合物のみで用いてもよいが、上述したテトラアルコキシシラン類及び他のアルコキシシラン類の一方又は両方と併用してもよい。
上述したテトラアルコキシシラン類及び他のテトラアルコキシシラン類の組み合わせの中でも、特に好ましい組み合わせとしては、テトラアルコキシシラン類としてのテトラエトキシシランと、他のアルコキシシラン類としての芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせによれば、均質且つ耐久性を有するシリカ多孔質体が得られる。
本発明の組成物において、上述したアルコキシシラン類は、以下の条件(3)を満たすものとする。即ち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が、通常0.3(mol/mol)以上、好ましくは0.35(mol/mol)以上、より好ましくは0.4(mol/mol)以上であり、また、通常0.7(mol/mol)以下、好ましくは0.65(mol/mol)以下、より好ましくは0.6(mol/mol)以下である(条件(3))。前記の割合が小さすぎる場合、得られるシリカ多孔質体の疎水性は高くなるが、−O−Si−O−の結合が少なくなることで、シリカ多孔質体の機械的強度が極めて弱く、同様に耐水性も低下する可能性がある。一方、前記の割合が大きすぎる場合、シリカ多孔質体中の残存シラノール基が多くなり、やはり耐水性が低下する可能性がある。
なお、前記の全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合は、Si−NMRにより測定することができる。
また、シリカ多孔質体の製造プロセスの観点では、前記ケイ素原子含有化合物や下記に説明する非イオン性高分子などを含む固形分濃度は通常0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。また通常50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。
本発明の組成物は、水を含有する。用いる水の純度は高いほうが好ましい。通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、本発明の光学用途積層体のような微小不純物を特に嫌う用途分野に本発明のシリカ多孔質体を用いる際には、より純度の高いシリカ多孔質体が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。詳しくは、例えば0.01μm〜0.5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いればよい。
なお、水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により算出できる。
本発明の組成物は、有機溶媒を含有する。この有機溶媒の種類は、条件(6)を満たす限り制限は無い。中でも、有機溶媒としては、上述したアルコキシシラン類及び水を混和させる能力を有するものを1種以上用いることが好ましい。好適な有機溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、炭素数1〜4の二価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールなどのアルコール類;ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の、前記アルコール類のエーテルまたはエステル化物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、含有するアルコキシシラン類がより安定な条件下で加水分解を行なうためには、アルコール類が好ましく、1価アルコールがより好ましい。
また、組成物の成膜性の観点で、沸点の高いエーテル化物やエステル化物を少量混合することも可能である。
本発明の組成物は、触媒を含有する。触媒は、上述したアルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。
その例を挙げると、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
即ち、アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、造膜性の観点で組成物のpHが5.5以下であることが好ましい。より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。この範囲にすることで成膜時に基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
本発明の組成物は、エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子(以下適宜、「本発明に係る非イオン性高分子」という)を含有する。ただし、本発明に係る非イオン性高分子は、以下の条件(5)を満たす。即ち、本発明に係る非イオン性高分子の重量平均分子量は、通常4,300以上であり、5,000以上が好ましく、6,000以上がより好ましい(条件(5))。本発明に係る非イオン性高分子の重量平均分子量が小さすぎると、得られるシリカ多孔質体の多孔度を高く維持することが困難となり、低屈折率なシリカ多孔質体を安定して製造することができなくなる可能性がある。なお、前記重量平均分子量の上限は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100,000以下、好ましくは70,000以下、より好ましくは40,000以下である。重量平均分子量が大きすぎると均質なシリカ多孔質体を製造できなくなり、シリカ多孔質体の耐水性が低下する可能性がある。
なお、本発明に係る非イオン性高分子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のシリカ多孔質体を製造することが可能である限り、本発明の組成物には、上述したアルコキシシラン類、水、有機溶媒、触媒及び本発明に係る非イオン性高分子以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の組成物は、屈折率が低く耐水性に優れる本発明のシリカ多孔質体を製造することができる。なお、本発明の組成物から本発明のシリカ多孔質体を製造する具体的な方法については、後述する。
また、本発明の組成物はポットライフが長く安定しているため、従来の技術に比べて安定してシリカ多孔質体を製造できる。
さらに、本発明の組成物においては、耐水性に優れたシリカ多孔質体の屈折率を、所望の範囲に収めることができる。
本発明のシリカ多孔質体の製造方法に制限は無いが、通常は、上述した本発明の組成物を膜状等の所望の形状に成形し、加熱により硬化させて本発明のシリカ多孔質体を製造する。以下、この製造方法(以下適宜、「本発明の製造方法」という)について詳細に説明する。
調合工程では、本発明の組成物を構成する各成分を混合して、本発明の組成物を用意する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。
ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、本発明の組成物をより工業的に調合するためには、以下の要領で混合することが好ましい。即ち、アルコキシシラン類、水、触媒及び溶媒を混合し、その混合物を熟成させることでアルコキシシラン類をある程度加水分解及び脱水縮合させる。そして、その混合物に本発明に係る非イオン性高分子を混合して、本発明の組成物を調合する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、アルコキシシラン類と非イオン性高分子との親和性を維持することができる。なお、熟成は、前記の混合物と本発明に係るイオン性高分子を混合した後で行なってもよい。
また、熟成時間に制限は無いが、通常10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、また、通常10時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは5時間以下である。熟成時間が短すぎると均一に熟成反応を進めることが難しくなる可能性があり、長すぎると溶媒の揮発が無視できなくなり、組成比が変化して組成物の安定性が低くなったり、得られるシリカ多孔質体の耐水性が低下する可能性がある。
さらに、熟成時の圧力条件に制限は無いが、通常は常圧で熟成を行なう。圧力が変化すると溶媒の沸点も変化し、熟成中の溶媒が揮発(蒸発)することで、組成比が変化して、組成物の安定性が低くなったり、高い耐水性を有するシリカ多孔質体が得られなかったりする可能性がある。
調合工程の後、用意した本発明の組成物を膜化する膜化工程を行なう。膜化工程では、通常、所定の基材の表面に本発明の組成物を成膜して本発明の組成物の膜を形成する。
成膜の方法に制限は無いが、例えば、本発明の組成物をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード等を使用して基材上に延ばす流延法;本発明の組成物に基材を浸漬し引き上げるディップコート法;スピンコート法、キャピラリーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などの周知を挙げることができる。これらの方法のうち、流延法、ダイコート法、スプレーコート法及びスピンコート法が本発明の組成物を均一に塗布することができるので好ましく採用される。中でも、均質な膜を形成する上ではスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法が特に好ましい。
さらに、霧化粒子の搬送に利用する気体流の気流速度は、用いる組成物により適宜調整することが好ましいが、通常5m/秒以下、好ましくは4m/秒以下、より好ましくは3m/秒以下である。気流速度が高過ぎると、膜が不均質になる可能性がある。また用いる気体としては特に限定されないが、窒素などの不活性ガスが好ましい。
スプレーノズルと基材との距離は基材サイズにより適宜調整することが好ましいが、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上である。また通常100cm以下、好ましくは80cm以下、より好ましくは50cm以下である。この範囲を超えると膜厚むらが発生する可能性がある。
膜化工程の後、本発明の組成物の膜を加熱する加熱工程を行なう。加熱工程により、本発明の組成物中の有機溶媒及び水が乾燥、除去されて、膜が硬化することにより、本発明のシリカ多孔質体が形成される。
加熱工程の後、必要に応じて、冷却工程を行なってもよい。冷却工程では、加熱工程で高温となった本発明のシリカ多孔質体を冷却する。この際、冷却速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常100℃/分以下、好ましくは50℃/分以下、より好ましくは30℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると隣接する膜間の線膨張が異なることによる膜質の低下が予想される。
また、冷却工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却する。
加熱工程の後、必要に応じて、後処理工程を行なってもよい。後処理工程で行なう具体的な操作に制限は無いが、例えば、得られたシリカ多孔質体をシリル化剤で処理することで、本発明のシリカ多孔質体の表面をより機能性に優れたものにできる。具体例を挙げると、シリル化剤で処理することにより、本発明のシリカ多孔質体に疎水性が付与され、アルカリ水などの不純物により空孔が汚染されるのを防ぐことができる。
なお、シリル化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の製造方法では、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した各工程の工程前、工程中及び工程後の任意の段階で、任意の工程を行なってもよい。
なお、本発明の製造方法では本発明のシリカ多孔質体を膜状に形成したが、膜状以外の形状に成形するのであれば、膜化工程の代わりに所定の形状に成形する成形工程を行なえばよい。
本発明の製造方法によれば、屈折率が低く、耐水性に優れる本発明のシリカ多孔質体を製造できる。また、本発明の製造方法によれば、本発明の組成物及び光学用途積層体を製造することもできる。即ち、本発明の製造方法によれば、低屈折率という光学的性能を安定して維持できるシリカ多孔質体、光学用途積層体及び組成物、並びに、それを用いた光学用途積層体を提供できる。特に、製造できるシリカ多孔質体は耐水性に優れるため、屋外での使用を前提とした用途にも好適に使用できる。
〔組成物の調合〕
テトラエトキシシラン 19.6g、メチルトリエトキシシラン 19.2g、エタノール(沸点78.3℃) 9g、水 13.9g、及び、0.3重量%の塩酸水溶液 32.9gを混合し、63℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。
この組成物において、全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子、水、及びP123の割合は、それぞれ、0.47、12.9及び0.013(mol/mol)である。
得られた組成物を、0.45μmのフィルターでろ過し、75mm角のガラス基材(中心線平均粗さ=0.01μm、表面粗さの最大高さRmax=0.13μm)に対して、2ml滴下した。そして、ミカサ製スピンコーターにて500回転2分間回転させることで薄膜を作製した。この時の相対湿度は45%であった。
次に440℃に設定したホットプレート上に前記薄膜を置き、大気雰囲気下で2分間加熱することで外観の良好なシリカ多孔質体を得た。
得られたシリカ多孔質体のXRD測定を行なった。結果として、回折角(2θ)0.5°〜10°の領域において回折ピークは観測されなかった。
分光エリプソメーターにより測定し、Cauthyモデルで解析した結果、得られたシリカ多孔質体の波長550nmにおける屈折率は1.14であり、膜厚は0.69μmであった。
接触式表面粗さ計により、1走査距離0.50μmの条件で3回測定した平均値を算出した。結果、得られたシリカ多孔質体の算術表面粗さRaは1.3nmであった。
脱塩水を入れた1Lのビーカーに得られたシリカ多孔質体を浸し、水温23℃条件下で静置した。24時間後、シリカ多孔質体を取り出し圧空で乾燥させた。水浸漬後の屈折率を前記と同様に測定したところ、波長550nmにおける屈折率は1.14であり、浸漬前後での屈折率差は0であった。なお、浸漬後のシリカ多孔質体の外観に変化なく、耐水性に優れていることがわかった。
得られたシリカ多孔質体を、350℃に設定したホットプレート上で1時間加熱し、常温・常湿環境下で1時間除冷したのち、静的接触角を測定した。脱塩水の水滴をシリカ多孔質体表面に滴下した結果、その静的接触角は75°であった。
シリカ多孔質体が積層されたガラス基材の全光線透過率をヘーズメーターにより測定した結果、93.0%であった。
メチルトリエトキシシランの代わりにメチルトリメトキシシランを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表1に示す。
全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.006(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表1に示す。
全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.009(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表1に示す。
全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.022(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表1に示す。
〔組成物の調合〕
テトラエトキシシラン 20.8g、エタノール 11.5g、塩酸 0.36g、水 45g、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC F127(重量平均分子量11,500、エチレンオキサイド部位の割合は70重量%);以下適宜、「F127」という)7.5gを混合・撹拌し組成物を得た。
前記組成物を、実施例1と同様のガラス基材上にスピンコーターにより4000回転1分間回転させ、薄膜を作製した。このときの相対湿度は53%であった。
密封容器内でこの薄膜を150℃のトリメチルエトキシシラン蒸気に4時間処理した。さらに400℃に設定した炉に5時間加熱し、シリカ多孔質体を得た。さらに、このシリカ多孔質体を再度、密封容器内で150℃のトリメチルエトキシシラン蒸気で4時間処理することで、透明なシリカ多孔質体を作製した。
〔組成物の調合〕
テトラエトキシシラン 4.2g、メチルトリメトキシシラン 2.7g、エタノール(沸点78.3℃) 5.54g、水 0.54g、及び、0.036重量%の塩酸水溶液 0.21gを混合し、63℃のウォーターバス中で90分撹拌し、混合物(A)を調製した。
このときの組成物において、全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとそれ以外のアルコキシシラン)由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子、水及びF127の割合は、それぞれ0.5、5及び0.006(mol/mol)である。よって、この比較例において、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合は10より小さい。
得られた組成物を、0.2μmのフィルターでろ過し、実施例1と同様の75mm角のガラス基材に対して、2ml滴下した。ミカサ製スピンコーターにて1000回転1分間回転させることで薄膜を作製した。この時の相対湿度は45%であった。
次に130℃に設定したホットプレート上に薄膜を置き、10分間加熱し、さらに400℃に設定したホットプレート上に前記薄膜を置き、1時間加熱することで透明なシリカ多孔質体を得た。
下記表1に、非イオン性高分子P123の含有量に対するシリカ多孔質体の物性をまとめた。
また、回折ピークの欄の数値は強度が標準偏差の2倍以上の回折ピークが現われた回折角を表わす。
また、耐水性の欄における「良」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕で測定された屈折率差が0.05以下であったことを表わす。さらに、耐水性の欄における「クラック」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕の評価の際にクラックが生じたことを表わす。
表1より、上述した条件(1)及び(2)を満たすことで、耐水性の優れたシリカ多孔質体を実現できることが確認できた。
全アルコキシシラン類(テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン)由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.012(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表2に示す。
下記表2に、シリカ多孔質体の静的接触角に対する耐水性との関係をまとめた。
また、表2において、非イオン性高分子/Siの欄の数値は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合(mol/mol)を表わす。
さらに、耐水性の欄における「良」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕で測定された屈折率差が0.05以下であったことを表わす。
その結果、接触角を25°〜90°にすることで、優れた耐水性が得られることが確認された。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC P85(重量平均分子量4,600、エチレンオキサイド部位の割合は50重量%);以下適宜、「P85」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.016(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC P103(重量平均分子量4,900、エチレンオキサイド部位の割合は30重量%);以下適宜、「P103」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.015(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレングリコール(重量平均分子量6,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.012(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC P105(重量平均分子量6,350、エチレンオキサイド部位の割合は50重量%);以下適宜、「P105」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.012(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC P188(重量平均分子量10,800、エチレンオキサイド部位の割合は20重量%);以下適宜、「P188」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.007(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、F127を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.006(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC F108(重量平均分子量15,500、エチレンオキサイド部位の割合は80重量%);以下適宜、「F108」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.005(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレングリコール(重量平均分子量4,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.018(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC L101(重量平均分子量3,800、エチレンオキサイド部位の割合は10重量%);以下適宜、「L101」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.019(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC P65(重量平均分子量3,500、エチレンオキサイド部位の割合は50重量%);以下適宜、「P65」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.021(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC L61(重量平均分子量2,000、エチレンオキサイド部位の割合は10重量%);以下適宜、「L61」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.037(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレングリコール(重量平均分子量2,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.037(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。なお、ここでの非イオン性高分子の重量平均分子量は4,300を下回る。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー(BASF社製 PLURONIC L34(重量平均分子量1,900、エチレンオキサイド部位の割合は40重量%);以下適宜、「L34」という)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.039(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。ここでの非イオン性高分子の重量平均分子量は4,300を下回る。
非イオン性高分子P123の代わりに、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)を添加し、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合を0.074(mol/mol)としたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表3に示す。ここでの非イオン性高分子の重量平均分子量は4,300を下回る。
下記表3に、エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の種類及び、その含有量に対する低屈折率化の効果を比較した結果をまとめた。
表3において、TEOS/Siの欄は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子の割合(mol/mol)を表わす。
また、H2O/Siの欄は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合(mol/mol)を表わす。
さらに、非イオン性高分子/Siの欄は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合(mol/mol)を表わす。
また、耐水性の欄における「良」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕で測定された屈折率差が0.05以下であったことを表わす。さらに、耐水性の欄における「クラック」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕の評価の際にクラックが生じたことを表わす。
表3の造膜性の欄において、「良」の表示は目視により観察したときに透明かつ鏡面を有することを表わし、「ゲル化」の表示は組成物がゲル化したことを表わし、「不良」は不透明であったことを表わす。
この表3から、非イオン性高分子の重量平均分子量が4,300以上であることで、シリカ多孔質体の屈折率が1.3以下となることがわかる。
希釈溶媒としてエチルアセテート(沸点76.8℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒としてエタノール(沸点78.7℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒として2−プロパノール(沸点83℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒としてt−ブタノール(沸点82.4℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒として1−プロパノール(沸点97.2℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒として1−ペンタノール(沸点138.3℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒としてメシチレン(沸点49℃。これは沸点55℃を下回る。)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒としてエチレングリコール(沸点198℃。これは沸点140℃を超える)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒としてN−メチル2−ピロリドン(沸点202℃。これは沸点140℃を超える)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒として1,4−ブタンジオール(沸点228℃。これは沸点140℃を超える)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
希釈溶媒として2−フェノキシエタノール(沸点245℃。これは沸点140℃を超える)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表4に示す。
下記表4に、2種の有機溶媒に対するシリカ多孔質体の造膜性を比較した結果をまとめた。
表4において、TEOS/Siの欄は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する、テトラエトキシシラン由来のケイ素原子の割合(mol/mol)を表わす。
また、H2O/Siの欄は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合(mol/mol)を表わす。
さらに、非イオン性高分子/Siの欄は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する非イオン性高分子の割合(mol/mol)を表わす。
また、耐水性の欄における「良」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕で測定された屈折率差が0.05以下であったことを表わす。さらに、耐水性の欄における「クラック」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕の評価の際にクラックが生じたことを表わす。
表4の造膜性の欄において、「良」の表示は目視により観察したときに透明かつ鏡面を有することを表わし、「ゲル化」の表示は膜がゲル化したことを表わし、「不良」は不透明であったことを表わす。
表4から、有機溶媒の沸点が55℃〜140℃である2種の有機溶媒を用いることで、良好なシリカ多孔質体を得ることができることが確認された。
スピンコートを相対湿度67%の環境下で行ない、大気雰囲気中、440℃に設定したホットプレート上で2分間加熱したこと以外は実施例1と同様の操作を行なって透明のシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表5に示す。
スピンコートを相対湿度55%の環境下で行ない、大気雰囲気中、130℃に設定したホットプレート上で10分間、続いて440℃に設定したホットプレート上で2分間加熱したこと以外は実施例1と同様の操作を行なって透明のシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表5に示す。
スピンコートを相対湿度55%の環境下で行ない、大気雰囲気中、90℃に設定したホットプレート上で1分30秒、続いて150℃に設定したホットプレート上で1分30秒、最後に440℃に設定したホットプレート上で2分間加熱したこと以外は実施例1と同様の操作を行なって透明のシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表5に示す。
スピンコートを相対湿度55%の環境下で行ない、大気雰囲気中、350℃に設定したホットプレート上で2分間加熱したこと以外は実施例1と同様の操作を行なって透明のシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表5に示す。
スピンコートを相対湿度96%の環境下で行ない、大気雰囲気中、440℃に設定したホットプレート上で2分間加熱したこと以外は実施例1と同様の操作を行なってシリカ多孔質体を製造し、各評価を行なった。結果を表5に示す。なお、本比較例では膜化工程での雰囲気が相対湿度85%を超える。得られたシリカ多孔質体にはマクロな凹凸が表面に存在した。
下記表5に、加熱条件に対する耐水性を比較した結果をまとめた。
表5の耐水性の欄において、「良」の表示は〔水浸漬による屈折率差〕で測定された屈折率差が0.05以下であったことを表わし、「凹凸表面」の表示はマクロな凹凸が表面意に存在していたことを表わす。
表5の造膜性の欄において、「良」の表示は目視により観察したときに透明かつ鏡面を有することを表わし、「ゲル化」の表示は膜がゲル化したことを表わし、「不良」は不透明であったことを表わす。
表5から、相対湿度20%〜85%の環境下で膜化し、加熱にすることで、耐水性に優れたシリカ多孔質体を得られることが確認できた。
実施例1における混合物(C)10mlと1−ブタノール40mlとを混合したこと以外は実施例1と同様の操作を行い得られた組成物を、凸凹表面を有する100mm角のガラス基材(中心線平均粗さ=0.8μm、表面粗さの最大高さ=8.6μm)に対して実施例1と同様の方法によりシリカ多孔質体を得た。評価結果は表6に示す。屈折率および膜厚は、反射分光スペクトル測定から得られた値である。
片面にITOを有する50mm角のガラス基材(中心線平均粗さ=0.01μm、表面粗さの最大高さ=0.13μm)のITO面とは反対側に、実施例24の組成物をスプレーコートすることで薄膜を作製した。
次に200℃に設定したホットプレート上で前記薄膜を2分間加熱し、さらに440℃のオーブンで30分間加熱することで、シリカ多孔質体を得た。評価結果は表6に示す。
表6の造膜性の欄において、「良」の表示は目視により観察したときに透明かつ鏡面を有することを表わし、「ゲル化」の表示は膜がゲル化したことを表わし、「不良」は不透明であったことを表わす。
2 半導体層
4 中間層
5 透明基板
6 多孔質体
Claims (8)
- テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなるテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と、該テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と、並びに/又は、該テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種及び他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の部分縮合物と、
水と、
有機溶媒と、
触媒と、
エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子とを含み、
下記(3)〜(6)を満たすことを特徴とする組成物を、
相対湿度20%〜85%の環境下で基材上に膜化した後、大気雰囲気下230℃以上700℃以下で加熱する工程を含むことを特徴とするシリカ多孔質体の製造方法。
(3)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が0.3(mol/mol)〜0.7(mol/mol)である。
(4)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上である。
(5)エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の重量平均分子量が4,300以上である。
(6)該有機溶媒中の80重量%以上が、沸点55℃〜140℃の有機溶媒である。 - 該組成物は、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子の割合が0.001(mol/mol)〜0.05(mol/mol)である
ことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。 - 該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子中のエチレンオキサイド部位の含有量が20重量%以上である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。 - 該エチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子が、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー、及び/又は、ポリエチレングリコールである
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。 - 該テトラアルコキシシラン類がテトラエトキシシランであって、且つ、
該テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類が、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。 - 該有機溶媒が、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール及びエチルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。 - 該触媒が、酸類である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。 - 該シリカ多孔質体が、光学用途積層体用のシリカ多孔質体である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
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