以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例によって本発明が限定されるものではない。
[実施例1]
<太陽電池モジュールの構成>
図1は実施例1に係る太陽電池モジュールの断面の模式図である。実施例1に係る太陽電池モジュールは、第1基材としての裏面側ガラス5と、太陽電池セル3を含む透明樹脂4の層と、第2基材としての受光面側ガラス2と、反射防止膜1とを、この順番に積層した構造を持つ。透明樹脂4は太陽電池セル3を封止している。しかし、透明樹脂4は必ずしも必要なく、太陽電池セル3が受光面側ガラス2と裏面側ガラス5との間に固定されていればよい。太陽電池セル3は、透過光を得るために間隔をおいて配置されている。
取付のために、太陽電池モジュール及び取付先の建築物の少なくとも一方は非図示の取付部を備えることが望ましい。太陽電池モジュールの備える取付部は、受光面を水平面に対して60°以上の角度で設置することが可能な、例えば建築物に開けた穴に挿入する凸部であればよい。太陽電池モジュールが取付部を備える場合、取付部は太陽電池モジュールのいずれかの構成要素に、好ましくは裏面側ガラス5に設置されていればよい。また、建築物が備える取付部である凸部を固定する穴を、太陽電池モジュールが備えていてもよい。この取付部を介して、本実施例の太陽電池モジュールを建築物の外側面に固定して使用することができる。本実施例の太陽電池モジュールはまた、建築物に設置する建材と一体化していてもよい。具体的な設置方法としては、次の例が挙げられる。例えば、壁に架台を取り付ける。窓の上部に設置してひさしとしての機能を有するようにしてもよい。架台材の例としては、アルミ、アルミ合金、ステンレス、鋼材などの金属が挙げられる。耐久性の観点から鋼材が好ましく、より好ましくは熱間圧延鋼材である。また、ルーバーとして用いてもよい。細長い板状の太陽電池モジュールを平行に組んでブラインド機能をもたせる。太陽電池モジュールは隙間を設けるために間隔があくように組んでもよく、傾斜を持たせて組んでもよい。
もっとも、第2基材としての受光面側ガラス2及び第1基材としての裏面側ガラス5に使用するガラスは、例えば珪酸ガラス、高珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、バリウムガラスなどの珪酸塩ガラス、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸ガラス、燐酸塩ガラスなどのガラス及びこれらの強化ガラスであればよい。第1基材及び第2基材としてガラス以外の基材を用いることも可能である。基材の材料の例を挙げると、;ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ピスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂等の合成樹脂などが挙げられる。少なくとも第2基材は透明である必要がある。しかし、採光の観点から第2基材に加えて第1基材も透明であることが好ましい。また、意匠性の観点から、第1基材と第2基材との少なくとも一方について、上述の材料を金属板やその複合材、不透明な樹脂シート等と組み合わせることもできる。
第1基材及び第2基材は、中でも寸法安定性の観点では、ガラス、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂がが好ましく、耐候性の観点では、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)が好ましく、価格の点から、ソーダ石灰ガラスが好ましい。さらに、耐衝撃性の観点からは、第1基材及び第2基材として強化ガラスを使用することも好ましい。また、第2基材としての受光面側ガラス2については、通常のソーダ石灰ガラスでは含有される2価の鉄イオンにより近赤外領域に吸収を持つため、鉄イオン含有量を低減することで光透過性を高め、さらに耐衝撃強度が優れた白板強化ガラスを用いることがより好ましくなる。第1基材としての裏面側ガラス5については、青板ガラスを用いてもよい。なお、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1基材としての裏面側ガラス及び第2基材としての受光面側ガラスには、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、合わせガラス、網入りガラス、耐熱ガラス、ミラーガラス、カラーガラスなどの機能性ガラスを用いてもよい。また、軽量な太陽電池モジュールが必要とされる観点からは、上記例の中でも2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)が好ましい。
第1基材及び第2基材の寸法は任意である。ただし、基材として板状の基板を用いる場合には、当該基板の厚さは、機械的強度及びガスバリア性の観点から、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。また、当該厚さは、軽量化及び光線透過率の観点から、80mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下が特に好ましい。
また、第1基材及び第2基材の中心線平均粗さも任意である。ただし、積層するシリカ多孔質体の成膜性の観点から、当該中心線平均粗さは10nm以下が好ましく、8nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましく、3nm以下が特に好ましい。一方、防眩性や隠蔽性を付与する場合、基材の中心線平均粗さは上記の限りではなく、基材の表面は凸凹を有することが好ましい。かかる凹凸は基材の片面のみでも、両面に有していてもよいが、反射防止膜が積層される面に有することが好ましい。具体的には、中心線平均粗さは通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上であり、また通常15μm以下、好ましくは10μm以下である。表面粗さの最大高さRmaxは通常0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは0.8μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。上記中心線平均粗さ及び表面粗さの最大高さRmaxの範囲にある基材上に反射防止膜を備えることで低反射特性に優れ、かつ防眩性にも優れた反射防止膜積層体を提供することができる。この範囲を下回る、若しくは超えた場合、低反射効果が損なわれる可能性があり、また外観が不透明になる可能性がある。また基材表面の凹凸の平均間隔Smは、通常0.01mm以上、好ましくは0.03mm以上であり、通常30mm以下、好ましくは15mm以下とすることも可能である。上記中心線平均粗さ、表面粗さの最大高さRmax及び凹凸の平均間隔Smは、JIS−B0601:1994に従った汎用の表面粗さ計(例えば、(株)東京精密社製サーフコム570A)により測定される。
太陽電池セル3は通常、一対の電極を備え、電極の間に半導体層が位置するように構成する。第1基材と電極との間、又は第2基材と電極との間には中間層があってもよい。さらには、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、粘着層、ハード層、導電性層、反射層、アンチグレア層、拡散層等(図示せず)と組み合わせてもよい。
ここで、太陽電池とは、光起電力効果を利用して、光エネルギーを電力に変換することのできる素子または装置であり、例として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池などのシリコン系太陽電池、CIS系太陽電池、CIGS系太陽電池、GaAs系太陽電池などの化合物太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、また多接合型太陽電池、HIT太陽電池が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
半導体層は、半導体材料を含有する層である。太陽電池では、通常、光を取り込むことで半導体層で電気エネルギーが生じ、その電気エネルギーを取り出すことで電池として機能するようになっている。この際、半導体層に用いられる半導体の種類に制限は無い。また、半導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、半導体層には、太陽電池としての機能を著しく損なわない限りその他の材料が含有されていてもよい。また、半導体層は、単一の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の膜によって構成されていてもよい。具体的な型式でいえば、太陽電池における半導体層としては、例えば、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型、ハイブリッド型などのいずれであってもよい。なお、半導体層の厚さに特に制限はないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の寸法で形成する。
一方、電極は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。電極は、半導体層で生じた電気エネルギーを取り出すためのものである。ただし、半導体層の種類に応じて一対の電極のうち、少なくとも一方は透明である(即ち、太陽電池が発電するために半導体層が吸収する光を透過させる)ことが好ましい。透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
ただし、反射防止膜から半導体層までの光の全光線透過率を、80%以上とすることが好ましく、83%以上とすることがより好ましく、86%以上とすることがさらに好ましく、90%以上とすることが特に好ましい。光の透過率が高いほど太陽電池が効率よく発電できるからである。また、前記全光線透過率は理想的には100%であるが、反射防止膜の表面での部分反射を考慮すると通常99%以下である。本実施例で用いる反射防止膜は、低屈折率を有するとともに耐水性及び耐酸性に優れるため、このように太陽電池に非常に適した性能を発揮することが可能である。
本実施例の反射防止膜は、シリカ多孔質体からなる膜である。具体的には、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、下記(1)及び(2)を満たすものである。
(1)屈折率が1.30以下である。
(2)1規定の塩酸水溶液に浸漬する前と、1規定の塩酸水溶液に24時間浸漬した後との波長650nmでの屈折率差が0.15以下である。
本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、屈折率が1.30以下である(条件(1))。中でも、1.28以下が好ましく、1.27以下がより好ましく、1.25以下が特に好ましい。さらに好ましくは1.23以下である。屈折率が大きすぎると日射反射率が大きくなるとともに、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体中の歪みが大きくなり、外力に対して弱くなる可能性がある。一方、屈折率の下限に特に制限は無いが、通常1.05以上、好ましくは1.08以上である。屈折率が小さすぎると本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の機械的強度が著しく低下する可能性がある。なお、屈折率は、分光エリプソメーター法、反射率測定、反射分光スペクトル測定或いはプリズムカプラーなどの光学的手法で測定された波長400nm〜700nmにおける値をいい、好ましくは分光エリプソメーターで測定されたものをいう。分光エリプソメーターで測定する場合、測定値をCauthyモデルでフィッティングすることで、屈折率を見積もることができる。また、中心線平均粗さの大きい基材上に備えられたシリカ多孔質体の場合、反射率分光スペクトル測定によっても屈折率を見積もることが可能であり、測定領域を10μm以下にすることが好ましい。
本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、1規定の塩酸水溶液に浸漬する前と、1規定の塩酸水溶液に24時間浸漬した後との波長650nmでの屈折率差が、0.15以下である(条件(2))。中でも0.1以下がより好ましく、0.05以下が更に好ましく、0.03以下が特に好ましい。一般的にシリカ多孔質体は酸により膜内部で加水分解反応や重縮合反応が進み易く、膜の破壊が起きて屈折率が著しく上昇する。本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、酸性雨などの耐環境性に優れ、屋外用途においても安定した屈折率性能を得ることができる。また、屈折率差が前記上限値より大きい場合、シリカ多孔質体の多孔質構造内部に水を拘束していると同時に、上記処理によりシリカ多孔質体内部でシラノール基の縮合反応が進んでいる可能性が高い。この場合、処理前の段階で既にシリカ多孔質体が不安定な状態にあった可能性がある。
また、前記の屈折率差の下限値は、0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましく、0.004以上がさらに好ましい。前記の屈折率差が前記下限値より小さいと、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、水との親和性という観点で疎水的な性質となる。この際、多孔質構造における毛細管現象により、水がシリカ多孔質体の内部に拘束される可能性がある。この場合、拘束された水は極めて抜けにくい状態になり、シリカ多孔質体の屈折率性能を維持できなくなる可能性がある。これは、屋外での使用を前提とした用途に対しては重要である。
なお、前記の屈折率差は、以下の要領で測定できる。即ち、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の波長650nmにおける屈折率n1を事前に測定した後、このシリカ多孔質体を常温・常湿(温度18℃〜28℃、湿度20%〜80%RH)の条件下で1規定の塩酸水溶液に浸し、24時間後に取り出し、水洗し乾燥させる。以下、この処理を適宜「酸浸漬処理」という。なお、乾燥は、100℃以上の加熱では行わず、風乾により行う。その後、このシリカ多孔質体の波長650nmにおける屈折率n2を再度測定する。このときの屈折率差の絶対値Δn=|n2−n1|が前記の屈折率差となる。また、耐環境性の評価は上記酸浸漬処理の他に、以下に説明する「高温高湿処理」によっても可能である。即ち、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の波長650nmにおける反射率R1を事前に測定した後、このシリカ多孔質体を温度85℃、湿度85%RHの条件下に静置し、500時間後に取り出す。その後、このシリカ多孔質体の波長650nmにおける反射率R2を再度測定する。このときの反射率差の絶対値ΔR=|R2−R1|が前記の反射率差となる。反射率差は0.0001以上が好ましく、0.0003以上がより好ましく、0.0005以上がさらに好ましく、0.0008以上が特に好ましい。また0.015以下が好ましく、0.012以下がより好ましく、0.01以下が更に好ましく、0.005以下が特に好ましい。本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、酸に対して安定であり、屋外での使用を前提とした用途にも経時変化することなく、安定した光学機能を発現できることから、特に建材に組み込まれる太陽電池に対して好適である。
また、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、直接又は他の層を介して第2基材上に設けられることになるが、通常は、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は膜状に設けられることになる。この場合、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の膜厚に制限は無いが、80nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、120nm以上が特に好ましい。前記の膜厚が薄すぎると、シリカ多孔質体と他の部材との界面(例えば、密着した基材)の影響がシリカ多孔質体への膜質や膜歪みに支配的となり、本実施例の反射防止膜の構造変化を助長させる可能性がある。一方、前記の膜厚の上限は、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、4μm以下がさらに好ましく、2μm以下が特に好ましい。膜厚が大きすぎると、シリカ多孔質体中の歪みが極度に増大し、上記同様、屋外環境下での反射防止膜が構造変化しやすくなり、安定した光学機能を維持できない恐れがある。したがって、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体が前記の好適な膜厚となることにより、本実施例の反射防止膜に、有効な光学性能と性能の安定性とを備えさせることができる。また、反射防止膜におけるシリカ多孔質体の表面粗さは、第2基材の表面粗さの影響を受ける事がある。基材表面が凹凸である場合、反射防止膜におけるシリカ多孔質体の表面粗さは、前述の基板の表面粗さと同程度になる。
本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体は、以下の組成物を硬化させることにより得ることができる。この組成物は、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を形成するためシリカ多孔質体形成用組成物である。本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群(以下適宜、「テトラアルコキシシラン類群」という)より選ばれる少なくとも一種と、前記テトラアルコキシシラン類以外のアルコキシシラン類(以下適宜、「他のアルコキシシラン類」という)、その加水分解物及び部分縮合物からなる群(以下適宜、「他のアルコキシシラン類群」という)より選ばれる少なくとも一種と、並びに/又は、前記テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種及び前記他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種の部分縮合物(以下適宜、「特定部分縮合物」という)と、水と、有機溶媒と、触媒とを含み、且つ、下記(3)〜(5)を満たす。
(3)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が0.3(mol/mol)〜0.7(mol/mol)である。
(4)全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が10(mol/mol)以上である。
(5)有機溶媒の80重量%以上が、沸点55℃〜140℃の溶媒である。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は、アルコキシシラン類として、少なくとも、以下の第1及び第2化合物(群)のうちいずれか一方又は両方を含有する。
〔第1の化合物(群)〕
テトラアルコキシシラン類群(即ち、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、他のアルコキシシラン類群(即ち、他のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種との組み合わせ。
〔第2の化合物(群)〕
特定部分縮合物(即ち、テトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種との部分縮合物)。
テトラアルコキシシラン類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シランなどが挙げられる。また、テトラアルコキシシラン類群の例としては、前記のテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
中でも、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の安定性及び生産性という観点では、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン並びにそれらのオリゴマーが好ましく、テトラエトキシシランがさらに好ましい。ただし、テトラアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシラン類と共存することが多い。なお、テトラアルコキシシラン類群に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
他のアルコキシシラン類は、上述したテトラアルコキシシラン類に属さないアルコキシシランであれば、任意のものを使用できる。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するもの;などが挙げられる。また、他のアルコキシシラン類群の例としては、前記の他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
中でも、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン及びジアルキルアルコキシシランが好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエチルシランなどが挙げられる。
ただし、他のアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、他のアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はその他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物が他のアルコキシシラン類と共存することが多い。なお、他のアルコキシシラン類に属する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特定部分縮合物としては、上述したテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種とが部分縮合した部分縮合物であれば、任意のものを用いることができる。好適な例を挙げると、テトラアルコキシシラン類の好適な例として例示したものと、他のアルコキシシラン類の好適な例として例示したものとが部分縮合した部分縮合物が挙げられる。なお、特定部分縮合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、特定部分縮合物は、特定部分縮合物のみで用いてもよいが、上述したテトラアルコキシシラン類及び他のアルコキシシラン類の一方又は両方と併用してもよい。
上述したテトラアルコキシシラン類及び他のテトラアルコキシシラン類の組み合わせの中でも、特に好ましい組み合わせとしては、テトラアルコキシシラン類としてのテトラエトキシシランと、他のアルコキシシラン類としての芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせによれば、均質且つ耐久性を有するシリカ多孔質体が得られる。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物において、上述したアルコキシシラン類は、以下の条件(3)を満たすものとする。即ち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合が、通常0.3(mol/mol)以上、好ましくは0.35(mol/mol)以上、より好ましくは0.4(mol/mol)以上であり、また、通常0.7(mol/mol)以下、好ましくは0.65(mol/mol)以下、より好ましくは0.6(mol/mol)以下である(条件(3))。前記の割合が小さすぎる場合、得られるシリカ多孔質体中の−O−Si−O−の結合が少なくなることで、シリカ多孔質体の機械的強度が極めて弱く、同様に耐環境性も低下する可能性がある。一方、前記の割合が大きすぎる場合、シリカ多孔質体中の残存シラノール基が多くなり、やはり耐環境性が低下する可能性がある。
ここで、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子とは、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物に含有されるテトラアルコキシシラン類群、他のアルコキシシラン類群及び特定部分縮合物が有するケイ素原子の数の合計をいう。また、テトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子とは、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物に含有されるテトラアルコキシシラン類群が有するケイ素原子の数と、特定部分縮合物が有するケイ素原子のうちテトラアルコキシシラン類群に対応する部分構造に属するケイ素原子の数との合計をいう。したがって、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物が含有していたとしても、当該化合物が有するケイ素原子は前記の割合の算出には関与しない。
なお、前記の全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合は、Si−NMRにより測定することができる。ケイ素原子含有化合物は組成物中に通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上含有されていることが好ましく、また通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下含有されていることが好ましい。0.05重量%を下回ると膜厚むらといった造膜性が低下する可能性があり、70重量%を越えると組成物の安定性が低下する可能性がある。なお、ケイ素原子含有化合物とは、ケイ素原子を含有する化合物であるが、具体的には前述の、テトラアルコキシシラン類、テトラアルコキシシラン類群、他のアルコキシシラン類、他のアルコキシシラン類群、特定部分縮合物が挙げられる。
また、シリカ多孔質体の製造プロセスの観点では、前記ケイ素原子含有化合物や下記に説明する非イオン性高分子などを含む固形分濃度は通常0.05重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。また通常50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は、水を含有する。用いる水の純度は高いほうが好ましい。通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、本実施例の反射防止膜のような微小不純物を特に嫌う用途分野に本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を用いる際には、より純度の高いシリカ多孔質体が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。詳しくは、例えば0.01μm〜5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いればよい。
ただし、水の使用量は、以下の条件(4)を満たすようにする。即ち、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合は、10(mol/mol)以上、好ましくは11(mol/mol)以上、より好ましくは12(mol/mol)以上とする(条件(4))。全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する水の割合が前記の範囲よりも小さいと、ゾル−ゲル反応のコントロールが難しく、ポットライフも短く、極めて疎水的な表面を有するシリカ多孔質体が得られる可能性がある。このため、シリカ多孔質体の耐水性が低下する可能性があり、また、表面も荒れる可能性がある。なお、水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により算出できる。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は、有機溶媒を含有する。この有機溶媒の種類は、条件(5)を満たす限り制限は無い。中でも、有機溶媒としては、上述したアルコキシシラン類及び水を混和させる能力を有するものを1種以上用いることが好ましい。好適な有機溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、炭素数1〜4の二価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールなどのアルコール類;ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の、前記アルコール類のエーテルまたはエステル化物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、含有するアルコキシシラン類がより安定な条件下で加水分解を行うためには、アルコール類が好ましく、1価アルコールがより好ましい。
なお、有機溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体において、屈折率が低く、かつ耐水性の優れた多孔質構造をより確実に得るには、2種類以上の有機溶媒を併用し、その混合物を有機溶媒として使用することが好ましい。また、組成物の成膜性の観点で、沸点の高いエーテル化物やエステル化物を少量混合することも可能である。
ただし、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を膜状等の形状に成形し、加熱処理して均質なシリカ多孔質体を形成するには、加熱処理の際に、ある程度の硬化(アルコキシシラン類の縮合反応)と水の除去とが同時に行なわれることが好ましい。したがって、表面近傍又は内部に存在する水分をある程度除去できる温度領域で、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物内の有機溶媒が揮発するような有機溶媒を用いることが好ましい。
したがって、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物には、有機溶媒として所定範囲の沸点を有する有機溶媒を所定の高い割合で含有させるようにする。具体的には、以下の条件(5)を満たすようにする。即ち、沸点が通常55℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、また、通常140℃以下、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下の有機溶媒(以下適宜、「所定沸点溶媒」という)を少なくとも1種用いるとともに、全有機溶媒中に占める当該所定沸点溶媒の割合を、通常80重量%以上、好ましくは83重量%以上、より好ましくは85重量%以上とする(条件(5))。なお、当該割合の上限は100重量%である。前記の沸点が低すぎるとゾル−ゲル反応が不十分な状態で本実施例の反射防止膜の材料となる組成物が硬化し、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体が極めて耐水性に劣ることになる可能性がある。
一方、前記の沸点が高すぎると、局所的にゾル−ゲル反応が進むことで、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体が不均質となり、表面性の低下や耐水性の低下につながる可能性がある。さらに、前記の所定沸点溶媒の割合が低い場合には、上記の利点が得られない可能性がある。このような観点から前記の所定沸点溶媒の例を挙げると、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチルアセテートなどが挙げられる。したがって、上記の有機溶媒としては、これらの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
また、有機溶媒全体の使用量は、本実施例の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対して、通常0.01mol/mol以上、中でも0.1mol/mol以上、特には1mol/mol以上が好ましく、また、通常100mol/mol以下、中でも70mol/mol以下、特には20mol/mol以下が好ましい。有機溶媒の使用量が少なすぎるとシリカ多孔質体の表面性が低くなる可能性があり、多すぎるとシリカ多孔質体を基板上に膜として形成した場合に膜質が基板の表面エネルギーに影響されやすくなる可能性がある。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は、触媒を含有する。触媒は、上述したアルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。その例を挙げると、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
また、触媒の例としては、金属キレート化合物も挙げられる。この金属キレート化合物の金属種としては、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。即ち、アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
チタン錯体としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等を挙げることができる。
上述したものの中でも、アルコキシシラン類の加水分解および脱水縮合反応をより容易に制御するためには、酸類若しくは金属キレート化合物が好ましく、酸類がさらに好ましい。なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。触媒の使用量は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、アルコキシシラン類に対して、通常0.001mol倍以上、中でも0.003mol倍以上、特には0.005mol倍以上が好ましく、また、通常0.8mol倍以下、中でも0.5mol倍以下、特には0.1mol倍以下が好ましい。触媒の使用量が少なすぎると加水分解反応が適度に進まず、製造後にシリカ多孔質体中にシラノール基などの活性基が残存しやすくなり、シリカ多孔質体の耐水性が低下する可能性があり、多すぎると反応制御が困難になり、製造中に触媒濃度が更に高くなることで、シリカ多孔質体の表面性が低下する可能性がある。また、造膜性の観点で組成物のpHが5.5以下であることが好ましい。より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。この範囲にすることで成膜時に基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は、必要に応じて高分子を含有させることができる。シリカ多孔質体の多孔度の観点から、高分子の重量平均分子量は通常450以上であり、1,500以上が好ましく、3,600以上がより好ましい。さらに好ましくは4,300以上であり、5,000以上が好ましく、6,000以上が好ましい。前記範囲を下回ると安定して製造することが困難となる可能性がある。なお、前記重量平均分子量の上限は任意であるが、通常100,000以下、好ましくは70,000以下、より好ましくは40,000以下である。重量平均分子量が大きすぎると組成物の粘度が著しく大きくなり、造膜性が悪化する恐れがある。高分子はアニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子が挙げられる。アルコキシシラン類の加水分解物及び重縮合物との親和性の観点から、非イオン性高分子が好ましい。
さらに、組成物中で安定した分散状態とするためには、高分子の骨格としてアルキルオキサイド部位を有することが好ましく、特に2種以上のアルキルオキサイド部位を有することが好ましい。アルキルオキサイド部位としては、中でもエチレンオキサイド部位、プロピレンオキサイド部位、ブチレンオキサイド部位を有する非イオン性高分子を含有することが好ましく、エチレンオキサイド部位が特に好ましい。その割合には特に制限はない。
例えば、エチレンオキサイド部位を有する高分子の場合、高分子中のエチレンオキサイド部位の含有量は、本実施例の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常20重量%以上、好ましくは23重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、また、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。エチレンオキサイド部位の含有量が上記の範囲に収まることで、アルコキシシラン類のゾル−ゲル反応中において形成されるアルコキシシラン類の加水分解物や縮合物に対して、非イオン性高分子がさらに安定に存在することができる。
高分子の主鎖の骨格構造は特に限定されることはない。主鎖骨格構造の具体例を挙げると、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、及びそれらの誘導体などが挙げられる。中でも、ポリエーテルを構成成分とする高分子が好ましい。その具体例としては、ポリエチレングリコール(以下適宜、「PEG」という)、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド トリブロックポリマー、及び/又は、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
なお、組成物に係る高分子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、組成物に係る高分子の使用量は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、全アルコキシシラン類由来のケイ素原子に対する組成物に係る高分子の割合が、通常0.001(mol/mol)以上、好ましくは0.002(mol/mol)以上、より好ましくは0.003(mol/mol)以上、また、通常0.05(mol/mol)以下、好ましくは0.04(mol/mol)以下、より好ましくは0.03(mol/mol)以下となるようにする。前記の割合が小さすぎると本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体が十分な多孔質構造を形成することができず、反射防止膜に有効な低屈折率を実現できない可能性がある。一方、前記の割合が大きすぎる場合には、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を成形した場合に表面に組成物に係る非イオン性高分子が過剰に析出し、表面を荒らす可能性がある。
さらに、光学用途として応用する際の不純物を減らす観点から、組成物に係る高分子中のカチオンの量は、10重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。カチオン成分が残存すると、基材が機能低下する可能性や、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体が着色したりする可能性がある。
本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を製造することが可能である限り、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物には、上述したアルコキシシラン類、水、有機溶媒、触媒及び組成物に係る高分子以外の成分を含有していてもよい。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本実施例の反射防止膜の材料となる組成物からは、屈折率が低く耐水性に優れる本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を製造することができる。なお、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物から本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を製造する具体的な方法については、後述する。また、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物はポットライフが長く安定しているため、従来の技術に比べて安定してシリカ多孔質体を製造できる。さらに、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を用いると、耐水性に優れたシリカ多孔質体の屈折率を、所望の範囲に収めることができる。
本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の製造方法に制限は無いが、通常は、上述した本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を膜状等の所望の形状に成形し、加熱により硬化させて本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を製造する。以下、この製造方法(以下適宜、「本実施形態の製造方法」という)について詳細に説明する。
本実施形態の製造方法では、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を調合し、これを膜化した後、加熱して本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を製造する。また、本実施形態の製造方法では、必要に応じて、その他の操作を行なってもよい。例えば、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の調合中又は調合後に熟成を行なってもよく、硬化後の本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の冷却及び後処理などを行なってもよい。
調合工程では、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を構成する各成分を混合して、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を用意する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合してもよく、2回以上に分けて連続又は断続的に混合してもよい。ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物をより工業的に調合するためには、以下の要領で混合することが好ましい。即ち、アルコキシシラン類、水、触媒及び溶媒を混合し、その混合物を熟成させることでアルコキシシラン類をある程度加水分解及び脱水縮合させる。必要に応じて、その混合物に組成物に係る高分子を混合して、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を調合する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、アルコキシシラン類と高分子との親和性を維持することができる。なお、熟成は、前記の混合物と組成物に係る高分子を混合した後で行なってもよい。
前記の熟成の際、アルコキシシラン類の加水分解・脱水縮合反応を進めるためには、加熱することが好ましい。加熱条件として、用いる溶媒の沸点を超えなければ特に制限は無いが、通常40℃以上、中でも50℃以上、特には60℃以上とすることが好ましい。加熱温度が低すぎると反応時間が極度に長くなり、生産性が低下する可能性がある。一方、加熱温度の上限は、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。100℃を超えると本実施例の反射防止膜の材料となる組成物中の水が沸騰し、分解・脱水縮合反応を制御できなくなる可能性がある。
また、熟成時間に制限は無いが、通常10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、また、通常10時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは5時間以下である。熟成時間が短すぎると均一に熟成反応を進めることが難しくなる可能性があり、長すぎると溶媒の揮発が無視できなくなり、組成比が変化して組成物の安定性が低くなったり、得られるシリカ多孔質体の耐水性が低下する可能性がある。
さらに、熟成時の圧力条件に制限は無いが、通常は常圧で熟成を行うことが好ましい。圧力が変化すると溶媒の沸点も変化し、熟成中の溶媒が揮発(蒸発)することで、組成比が変化して、組成物の安定性が低くなったり、高い耐水性を有するシリカ多孔質体が得られなかったりする可能性がある。
また、熟成の後、膜化工程の前に本実施例の反射防止膜の材料となる組成物は有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物内でのゾル−ゲル反応速度を低下させることができ、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物のポットライフを長く維持することが可能となる。
調合工程の後、用意した本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を膜化する膜化工程を行う。膜化工程では、通常、所定の基材の表面に本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を成膜して本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を形成する。成膜の方法に制限は無いが、例えば、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード等を使用して基材上に延ばす流延法;本実施例の反射防止膜の材料となる組成物に基材を浸漬し引き上げるディップコート法;スピンコート法、キャピラリーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などの周知を挙げることができる。これらの方法のうち、流延法、ダイコート法、ディップコート法、スプレーコート法及びスピンコート法が本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を均一に塗布することができるので好ましく採用される。中でも、均質な膜を形成する上ではスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法が特に好ましい。
流延法で本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を膜化する場合、流延速度に制限は無いが、通常0.1m/分以上、好ましくは0.5m/分以上、より好ましくは1m/分以上、また、通常1000m/分以下、好ましくは700m/分以下、より好ましくは500m/分以下である。流延速度が遅すぎると膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると基材との濡れ性の制御が困難になる可能性がある。
また、ディップコート法においては、任意の速度で、基材を塗布液に浸漬し引き上げればよい。この際の引き上げ速度に制限は無いが、通常0.01mm/秒以上、好ましくは0.05mm/秒以上、より好ましくは0.1mm/秒以上、また、通常50mm/秒以下、好ましくは30mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下である。引き上げ速度が遅すぎたり速すぎたりすると、膜厚にムラができる可能性がある。一方、基材を塗布液中に浸漬する速度に制限はないが、通常は、引き上げ速度と同程度の速度で基材を塗布液中に浸漬することが好ましい。さらに、基材を塗布液中に浸漬してから引き上げるまでの間、適当な時間浸漬を継続してもよい。この浸漬を継続する時間に制限は無いが、通常1秒以上、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。この時間が短すぎると基材への密着性が低い可能性があり、長すぎると浸漬中に膜が形成されて平滑性が低い可能性がある。
さらに、スピンコート法で本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を塗布形成する場合、回転速度は、通常10回転/分以上、好ましくは50回転/分以上、より好ましくは100回転/分以上、また、通常100000回転/分以下、好ましくは50000回転/分以下、より好ましくは10000回転/分以下である。回転速度が遅すぎると膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると溶媒の気化が進みやすくなりアルコキシシラン類の加水分解等の反応が十分進まず耐水性が低い可能性がある。
また、スプレーコート法で本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を塗布形成する場合、スプレーノズルの方式には特に限定されないが、各々のスプレーノズルの利点を考慮して選択すればよい。代表的な例として、二流体スプレーノズル(二流体霧化方式)、超音波スプレーノズル(超音波霧化方式)、回転式スプレーノズル(回転霧化方式)などが挙げられる。組成物の霧化と気体流による霧化粒子の基材への搬送を独立に制御できる点では、超音波スプレーノズル、及び回転式スプレーノズルが好ましく、組成物の液性維持の観点では二流体スプレーノズルが好ましい。さらに、霧化粒子の搬送に利用する気体流の気流速度は、用いる組成物により適宜調整することが好ましいが、通常5m/秒以下、好ましくは4m/秒以下、より好ましくは3m/秒以下である。気流速度が高過ぎると、膜が不均質になる可能性がある。また用いる気体としては特に限定されないが、窒素などの不活性ガスが好ましい。スプレーノズルと基材との距離は基材サイズにより適宜調整することが好ましいが、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上である。また通常100cm以下、好ましくは80cm以下、より好ましくは50cm以下である。この範囲を超えると膜厚むらが発生する可能性がある。
ただし、本実施例の製造方法の膜化工程では、相対湿度が通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、また、通常85%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下の環境下において膜化を行うようにする。膜化工程での相対湿度を前記の範囲にすることにより、表面平滑性の高い膜が得られる。膜化工程における雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中で膜化を行なってもよく、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中で膜化を行なってもよい。膜化工程を行う際の温度に制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下、中でも好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下である。膜化の際の温度が低すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面平滑性が低下する可能性があり、高すぎるとアルコキシシラン類の硬化が急速に進み膜歪みが大きくなる可能性がある。膜化工程を行う際の圧力に制限は無いが、通常0.05MPa以上、好ましくは0.08MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、また、通常0.3MPa以下、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.15MPa以下である。圧力が低すぎると溶媒が気化しやすくなり膜化後のレベリング効果が得られず膜の平滑性が低くなる可能性があり、高すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面性が低くなる可能性がある。
ところで、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法では、乾燥速度に違いがあり、膜化直後の膜の安定構造に僅かな違いが生じることがある。これは膜化中の雰囲気を変えることで調整する事ができる。また、前記の膜の安定構造の僅かな違いは、基材の表面処理によっても対処する事ができる。
なお、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物を基材上に成膜するのに先立って、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の濡れ性、形成されるシリカ多孔質体の密着性の観点から、基材に表面処理を施しておいてもよい。そのような表面処理の例を挙げると、シランカップリング処理、アンカーコート処理、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、表面処理は、1種のみを行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。
また、膜化工程は一回で行なってもよいが、二回以上に分けて行なってもよい。例えば、後述する加熱工程を介して膜化工程を二回以上行うようにすれば、積層構造を有するシリカ多孔質体を形成することが可能である。これは、例えば屈折率が異なる層を積層したい場合などに有用である。
膜化工程の後、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を加熱する加熱工程を行う。加熱工程により、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物中の有機溶媒及び水が乾燥、除去されて、膜が硬化することにより、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体が形成される。
加熱処理の方式は特に制限されないが、例としては、加熱炉(ベーク炉)内に基材を配置して本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を加熱する炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基材を搭載しそのプレートを介して本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を加熱するホットプレート方式、前記基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線)を照射して、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を加熱する方式、などが挙げられる。
加熱温度に制限は無く、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を硬化できれば任意であるが、加熱温度の上限として、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、230℃以上、更に好ましくは300℃以上、320℃以上、350℃以上である。また、通常750℃以下、好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下である。加熱温度が低すぎると得られる膜(即ち、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体)の屈折率が下がらなかったり、着色したりする可能性がある。一方、加熱温度が高すぎると基材と本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体との密着性が低下する可能性がある。なお、加熱工程において、前記の加熱温度で連続的に加熱を行なってもよいが、2度以上に分けて段階的に加熱を行うようにしてもよい。加熱を行う際、昇温速度は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1℃/分以上、好ましくは10℃/分以上、また、通常700℃/分以下、好ましくは400℃/分以下で昇温する。昇温速度が遅すぎると膜が緻密化し、膜歪みが大きくなって耐水性が低くなる可能性があり、昇温速度が速すぎると膜歪みが大きくなって耐水性が低くなる可能性がある。加熱を行う時間は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。加熱時間が短すぎるとシリカ多孔質体中に組成物中の有機溶媒や水など(アルコキシシラン類以外のもの)が残存してしまい、耐環境性を著しく低下する恐れがある。一方、長すぎるとアルコキシシラン類の重縮合反応が進み、基板との密着性が低くなる可能性がある。
加熱を行う際の圧力は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、圧力の上限を通常0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下とする。一方、圧力の下限にも制限は無いが、通常10−4MPa以上、好ましくは10−3MPa以上、より好ましくは10−2MPa以上である。圧力が低すぎるとアルコキシシランの反応よりも溶媒の気化が進行し、耐水性が低い膜になる可能性がある。加熱を行う際の雰囲気は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、乾燥ムラの生じにくい環境が好ましい。その中でも、大気雰囲気下で加熱を行うことが好ましい。また、不活性ガス処理を行ない、不活性雰囲気下で乾燥を行うことも可能である。
以上のように、加熱処理を行うことにより、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物の膜を硬化させて、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を得ることができる。また、前記の膜は通常は基材表面に形成されるため、本実施例の製造方法によれば、本実施例の反射防止膜を製造することも可能である。
加熱工程の後、必要に応じて、冷却工程を行なってもよい。冷却工程では、加熱工程で高温となった本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を冷却する。この際、冷却速度は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常700℃/分以下、好ましくは200℃/分以下、より好ましくは100℃/分以下、更に好ましくは50℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると隣接する膜間の線膨張が異なることによる膜質の低下が予想される。また、冷却工程における雰囲気は本実施例の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却する。
加熱工程の後、必要に応じて、後処理工程を行なってもよい。後処理工程で行う具体的な操作に制限は無いが、例えば、得られたシリカ多孔質体をシリル化剤で処理することで、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の表面をより機能性に優れたものにできる。具体例を挙げると、シリル化剤で処理することにより、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体に疎水性が付与され、アルカリ水などの不純物により空孔が汚染されるのを防ぐことができる。
シリル化剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類;トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロソラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類;ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類;などが挙げられる。なお、シリル化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。シリル化の具体的操作としては、例えば、シリル化剤をシリカ多孔質体に塗布したり、シリル化剤中にシリカ多孔質体を浸漬したり、シリカ多孔質体をシリル化剤の蒸気中に曝したりすることにより、行うことができる。
また、後処理の別の例としては、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を多湿条件下でエージングすることで、多孔質構造中に存在する未反応シラノールを減らすことができ、これにより、本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体の耐水性をより向上させることも可能である。
本実施例の製造方法では、本実施例の効果を著しく損なわない限り、上述した各工程の工程前、工程中及び工程後の任意の段階で、任意の工程を行なってもよい。本実施例の製造方法によれば、屈折率が低く、耐水性に優れる本実施例の反射防止膜に用いるシリカ多孔質体を製造できる。また、本実施例の製造方法によれば、本実施例の反射防止膜の材料となる組成物及び反射防止膜を製造することもできる。即ち、本実施例の製造方法によれば、低屈折率という光学的性能を安定して維持できるシリカ多孔質体並びに、シリカ多孔質体を用いた反射防止膜を提供できる。特に、製造できるシリカ多孔質体は耐水性に優れるため、屋外での使用を前提とした用途にも好適に使用できる。
<反射防止膜の製造例>
例えば、本実施例の反射防止膜は、以下の実施例のようにシリカ系前駆体を調製し、製膜することで形成される。
<シリカ系前駆体の調製>
テトラエトキシシラン1.70g、メチルトリエトキシシラン1.73g、及びエタノール(沸点78.3℃)0.58gを混合した。混合物にさらに水1.39g、触媒として0.3重量%の塩酸水溶液3.26gを加えて、63℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。次に、鋳型剤としてALDRICH社製ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドトリブロックポリマー(重量平均分子量5,800、エチレンオキサイド部位の割合は30重量%)0.61gをエタノール0.8gと混合して混合物(B)とした。混合物(B)に上記混合物(A)を混合し、室温で60分撹拌し混合物(C)を調製した。この混合物(C)10mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分撹拌した。その後、0.20μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
<反射防止膜の製膜>
青板ガラス表面に対して、以上で得たシリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光エリプソメーター(ホリバ・ジョバンイボン製UVISEL)により測定し、Tauc−Lorentz分散式で解析した。その結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.19であり、膜厚は150nmであった。得られた反射防止膜の反射率測定を反射分光膜厚計(大塚電子製FE−3000)を用いて、波長300−1100nmの範囲で行った。JIS R3106に基づき算出した日射反射率と可視光線反射率を表1に示す。
<耐酸性評価>
得られた反射防止膜を1規定の塩酸水溶液に24時間浸漬した後、塩酸水溶液から取り出して乾燥させて、反射防止膜の評価と同様に屈折率測定をおこなったところ、屈折率は1.20となった。浸漬前(屈折率1.19)からの屈折率差は0.01と小さいことから、本実施例の反射防止膜は、耐酸性が高く、酸性雨への耐久性が良好であることがわかる。
本実施例の太陽電池モジュールについて、南側に受光面を向けて設置した時の性能の、設置角度への依存性を評価した。すなわち、上記で作製した反射防止膜を青板ガラス上に成膜する場合を想定し、反射防止膜の膜厚と屈折率とに基づき、日射反射率を計算した。計算した日射反射率を表2に示す。
東京での春分・秋分の南中高度は55°である。図2に示すように、受光面の水平面に対する角度が35°となるように設置した太陽電池モジュールに対して入射する太陽光の入射角は、南中高度が55°の時に0°となる。また、受光面が水平面に垂直となるように設置した太陽電池モジュールに対して入射する太陽光の入射角は、南中高度が55°の時には55°となる。
上記の反射防止膜積層ガラスに対する、入射角0°−55°での日射反射率(Rar)を表2に示す。太陽高度が55°である場合、受光面の水平面に対する設置角度がα°であれば日射の入射角は(α−35)°となる。表2では、太陽高度が55°である場合の、受光面の水平面に対する設置角度に対応する、日射反射率を示している。すなわち、受光面の水平面に対する設置角度が35°−90°の間である場合の、東京での春分・秋分の南中時(南中高度55°)における日射反射率を、表2に示している。
[比較例1]
比較例1の太陽電池モジュールは、実施例1と同様の太陽電池モジュールであるが、反射防止膜1を有さない。比較例1の太陽電池モジュールの性能を評価するために、反射防止膜を積層していない受光面側ガラスの反射率測定を実施例1と同様に行った。測定結果から、JIS R3106に基づき算出した日射反射率と可視光線反射率を表1に示す。また、比較例1の太陽電池モジュール性能の設置角度依存性を評価するために、設置角度を変えた時の反射防止膜を積層していない青板ガラスの日射反射率(Rref)の算出を実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
比較例2の太陽電池モジュールは、実施例1と同様の太陽電池モジュールであるが、波長650nmでの屈折率が1.35である反射防止膜を青板ガラス上に成膜することを想定した。例えば、一般的なフッ素樹脂製の反射防止膜の屈折率は1.35程度である。比較例2の太陽電池モジュール性能の設置角度依存性を評価するために、実施例1と同様に日射反射率を算出した。すなわち、波長650nmでの屈折率が1.35である反射防止膜を積層した受光面側ガラスの日射反射率(Rar)を、設置角度を変えながら測定、算出した。結果を表2に示す。
表1は、JIS R3106に基づき求めた、実施例1及び比較例1の日射反射率及び可視光線反射率である。反射防止膜のない比較例1に比べて、実施例1では日射反射率、可視光線反射率ともに大きく減少している。日射反射率が減少するということは、太陽電池セルに到達する太陽光が増加するということであり、すなわち太陽電池のエネルギー変換効率が向上する。また、可視光線反射率が減少することにより、本太陽電池モジュールを窓ガラスに設置した場合に、室内がより明るくなる効果が得られる。
表2は、入射角を変えながら波長300−2100nmの範囲でシミュレーションを行って求めた、実施例1及び比較例2の反射防止膜積層ガラス及び、比較例1の受光面側ガラスの日射反射率である。比較例1の受光面側ガラスと比較した時の、実施例1の反射防止膜積層ガラスの反射率の減少は、設置角度が60°以上である時に大きいことが分かる。設置角度が75°以上の場合に反射率の減少はより大きくなり、とりわけ設置角度90°の時、すなわち垂直設置時に顕著なことがわかる。太陽電池の受光面と水平面との角度がより大きくなるように設置した場合に対応する日射反射率がより小さくなることは、垂直に近い角度で太陽電池を設置する場合に、反射防止膜が積層されていることが好ましいことを示す。
また、比較例2の太陽電池モジュールに用いる反射防止膜は屈折率が1.35と高い。このために、実施例1に比べて日射反射率の値も大きく、日射に対する反射防止性能が低い。したがって、実施例1で用いられるような低屈折率の反射防止膜を有する太陽電池モジュールは、比較例2に比べて、発電効率が高いことが予測される。
さらに、反射防止膜を積層した時の反射防止性能を定量化するために、日射反射防止率ΔRを、式(1)のように定義する。
ΔR=Rref−Rar (1)
式(1)において、Rrefは比較例1の受光面側ガラスの反射率である。また、Rarは実施例1及び比較例2の反射防止膜積層ガラスの反射率である。式(1)に従って求めた、実施例1及び比較例2の反射防止膜積層ガラスの日射反射防止率を、表3及び図6に示す。
前出の表2に示される通り、受光面の水平面に対する角度が増加するのに伴い、実施例1(屈折率1.19)と比較例2(屈折率1.35)ともに日射反射率は増加し、太陽電池セルまで透過する日射は減少する。しかし、実施例1の反射防止率は、比較例2と比べ、受光面の水平面に対する角度の増加により大きく向上する。つまり、実施例1の反射防止膜は、受光面の水平面に対する角度が60°付近に、75°付近に、さらには垂直に近づくほど、ガラス基板の反射を抑制する割合が大きくなることを示している。したがって、実施例1の反射防止膜を有する太陽電池モジュールを、受光面の水平面に対する角度を60°以上にして設置することで、実施例1の太陽電池モジュールの日射に対する反射防止性能を大きく引き出すことができる。受光面の水平面に対する角度を75°以上、より好ましくは垂直に近い角度とすることで、さらに大きい反射防止性能を引き出すことができる。このため、実施例1の太陽電池モジュールは、受光面の水平面に対する角度を60°以上、好ましくは75°以上、より好ましくは垂直に近い角度として設置する用途において、特に有効である。
以上述べたように、実施例1の太陽電池モジュールは、反射防止膜1の、第1基材である裏面側ガラス5と反対側の表面における日射の入射角が55°以下である場合には、日射反射率が3%以下である。これは、太陽の南中高度が55°である場合には、たとえ垂直に設置したとしても、南中時の反射防止膜1の日射反射率が3%以下であることを示す。このため、実施例1の太陽電池モジュールは、受光面の水平面に対する角度を60°以上として、好ましくは75°以上として、より好ましくは垂直に近い角度として設置する場合に適している。
[実施例2]
図3は本実施例に係る太陽電池モジュールの断面図である。本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例1に類似しているが、受光面側ガラス2の代わりに透明導電膜付きガラス6を用いる。本実施例に係る太陽電池モジュールは、透明導電膜付きガラス6に形成された薄膜太陽電池セル3が透明樹脂4により封止され、さらに裏面側ガラス5で覆われた構造となる。反射防止膜1は、受光面側透明導電膜付きガラス6の受光面側(外側)表面に積層される。本実施例の反射防止膜1は、実施例1と同様のシリカ多孔質体からなる膜である。
[実施例3]
図4は本実施例に係る太陽電池モジュールの断面図である。本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例1に類似しているが、裏面側ガラス5の裏面側に、中空層8を介して網入りガラス7を有する。受光面側ガラス2と裏面側ガラス5の間には太陽電池セル3が透明樹脂4によって封止され、反射防止膜1は受光面側ガラス2の受光面側(外側)表面に積層される。太陽電池セル3は、透過光を得るために間隔をおいて配置されている。本実施例の反射防止膜1は、実施例1と同様のシリカ多孔質体からなる膜である。本実施例の太陽電池モジュールは、中空層のために断熱性を有し、窓等の建材として好適である。太陽電池モジュールは、中空層の代わりに、他の断熱材からなる断熱層を有してもよい。また、断熱層は受光面側ガラス2と裏面側ガラス5との間に存在しても、外側に存在してもよい。
[実施例4]
図5は本実施例に係る太陽電池モジュールの断面図である。本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例1に類似しているが、受光面側ガラス2の代わりに透明導電膜付きガラス6を用いる。また、本実施例に係る太陽電池モジュールは裏面側ガラス5の裏面側に中空層8を介して網入りガラス7を備える。本実施例に係る太陽電池モジュールは、透明導電膜付きガラス6に形成された薄膜太陽電池セル3が透明樹脂4により封止され、裏面側ガラス5で覆われた構造となる。反射防止膜1は受光面側透明導電膜付きガラス6の受光面側(外側)表面に積層される。本実施例の反射防止膜1は、実施例1と同様のシリカ多孔質体からなる膜である。本実施例の太陽電池モジュールは、断熱性を有し、窓等の建材として好適である。
[実施例5]
図6は本実施例に係る太陽電池モジュールの断面図である。本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例1に類似しているが、太陽電池セルとして基材上に設けられた薄膜太陽電池セルを用いる。本実施例に係る太陽電池モジュールは、第1基材としての裏面側ガラス5と、基材9上に設けられた薄膜太陽電池セル3を含む透明樹脂4の層と、第2基材としての受光面側ガラス2と、反射防止膜1とを、この順番に積層した構造を持つ。
基材9としては、ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂などの樹脂材料;アルミニウム箔および板、ステンレス製薄膜および鋼板などの金属材料が挙げられる。なお、これらのうちの1種を用いてもよいが、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも基材9の材料は、耐熱性の観点から、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ステンレス製薄膜が好ましい。また、複数の太陽電池セルがモジュール中に存在する場合は、全ての太陽電池セルが同一の基材上に設けられていてもよいし、それぞれの太陽電池セルが別の基材上に設けられていてもよい。
本実施例に係る太陽電池モジュールの具体的な製造法の一例を次に示す。すなわち、裏面側ガラス、透明樹脂としてEVAフィルム、ポリエチレンナフタレート基材上に設けられたアモルファスシリコン太陽電池セル、EVAフィルム、反射防止膜を予め設けた受光面側ガラスを積層し、真空ラミネートすることにより、本実施例に係る太陽電池モジュールが得られる。
[実施例6]
本発明に係る反射防止膜は、実施例1に記した以外の方法で製造することも可能であり、以下の製造例6−1〜6−6ではそれぞれ他の方法を説明する。
[製造例6−1]
<シリカ系前駆体の調製>
三菱化学社製MKCシリケートMS51(テトラメトキシシランのオリゴマー)1.71g、メチルトリメトキシシラン1.72g、及びエタノール(沸点78.3℃)0.59gを混合した。混合物にさらに水1.41g、触媒としてアルミニウムアセチルアセトネート錯体0.034gを加えて、63℃のウォーターバス中で120分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。次に、鋳型剤としてALDRICH社製ポリエチレングリコール(重量平均分子量6,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)0.65gをエタノール0.8gと混合して混合物(B)とした。混合物(B)に上記混合物(A)を混合し、室温で60分撹拌し混合物(C)を調製した。この混合物(C)10mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分撹拌した。その後、0.20μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
<反射防止膜の製膜>
ガラス表面に対して、以上で得たシリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光エリプソメーター(ホリバ・ジョバンイボン製UVISEL)により測定し、Tauc−Lorentz分散式で解析した。その結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.25であり、膜厚は158nmであった。
[製造例6−2]
<シリカ系前駆体の調製>
三菱化学社製MKCシリケートMS51(テトラメトキシシランのオリゴマー)1.70g、メチルトリエトキシシラン1.71g、及びエタノール(沸点78.3℃)0.59gを混合した。混合物にさらに水1.41g、触媒として0.3重量%の塩酸水溶液3.20gを加えて、63℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。次に、鋳型剤としてALDRICH社製ポリエチレングリコール(重量平均分子量6,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)0.65gをエタノール0.8gと混合して混合物(B)とした。混合物(B)に上記混合物(A)を混合し、室温で60分撹拌し混合物(C)を調製した。この混合物(C)10mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分撹拌した。その後、0.20μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
<反射防止膜の製膜>
ガラス表面に対して、以上で得たシリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光エリプソメーター(ホリバ・ジョバンイボン製UVISEL)により測定し、Tauc−Lorentz分散式で解析した。その結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.24であり、膜厚は155nmであった。
[製造例6−3]
<シリカ系前駆体の調製>
テトラエトキシシラン1.72g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン0.45g メチルトリエトキシシラン1.04g、及びエタノール(沸点78.3℃)0.60gを混合した。混合物にさらに水1.40g、触媒として0.3重量%の塩酸水溶液3.22gを加えて、63℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。次に、鋳型剤としてALDRICH社製ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドトリブロックポリマー(重量平均分子量4,900、エチレンオキサイド部位の割合は30重量%)0.64gをエタノール0.8gと混合して混合物(B)とした。混合物(B)に上記混合物(A)を混合し、室温で60分撹拌し混合物(C)を調製した。この混合物(C)10mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分撹拌した。その後、0.20μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
<反射防止膜の製膜>
ガラス表面に対して、以上で得たシリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光エリプソメーター(ホリバ・ジョバンイボン製UVISEL)により測定し、Tauc−Lorentz分散式で解析した。その結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.15であり、膜厚は155nmであった。
[製造例6−4]
<シリカ系前駆体の調製>
テトラエトキシシラン1.72g、メチルトリエトキシシラン1.74g、及びエタノール(沸点78.3℃)0.60gを混合した。混合物にさらに水1.40g、触媒として0.3重量%の塩酸水溶液3.22gを加えて、63℃のウォーターバス中で30分、さらに室温で30分攪拌することで、混合物(A)を調製した。次に、鋳型剤としてALDRICH社製ポリエチレングリコール(重量平均分子量6,000、エチレンオキサイド部位の割合は100重量%)0.63gをエタノール0.8gと混合して混合物(B)とした。混合物(B)に上記混合物(A)を混合し、室温で60分撹拌し混合物(C)を調製した。この混合物(C)10mlと、希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分撹拌した。その後、0.20μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)でろ過することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
<反射防止膜の製膜>
ガラス表面に対して、以上で得たシリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、450℃のホットプレートで2分焼成し、室温で5分冷却することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光エリプソメーター(ホリバ・ジョバンイボン製UVISEL)により測定し、Tauc−Lorentz分散式で解析した。その結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.24であり、膜厚は155nmであった。
[製造例6−5]
<シリカ系前駆体の調製>
テトラエトキシシラン6.78g、メチルトリエトキシシラン6.92g、エタノール(沸点78.3℃)2.30g、水5.56g、及び0.3重量%の塩酸水溶液13.0gを混合し、60℃のウォーターバス中で30分、更に室温で30分攪拌して、混合物(A)を得た。次に、鋳型材として、ポリエチレンオキサイドーポリプロピレンオキサイドーポリエチレンオキサイドトリブロックポリマー(ALDRICH製、重量平均分子量5650、エチレンオキサイド部位の割合30重量%)6.14gとエタノール3.20gとを混合した混合液(B)に、前記の混合物(A)を添加して、室温で60分攪拌し、0.45μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)で濾過することにより混合物(C)を調製した。この混合物(C)110mlと希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分攪拌することで組成物(D)(シリカ系前駆体)を得た。
<反射防止膜の製膜>
透明ポリイミドフィルム(三菱ガス化学製ネオプリム L−1000、100μm厚)に対して、以上で得たシリカ系前駆体を500rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、200℃に設定したオーブン中で大気雰囲気環境において10分加熱することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光膜厚計(大塚電子製FE−3000)により反射分光測定した結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.30であり、膜厚は200nmであった。
<耐酸性評価>
得られた反射防止膜を1規定の塩酸水溶液に24時間浸漬した後、塩酸水溶液から取り出して乾燥させて、反射防止膜の評価と同様に屈折率測定をおこなったところ、屈折率は1.30となった。浸漬前(屈折率1.30)からの屈折率差は、有効数字を考慮して0.01未満であることから、本実施例の反射防止膜は、耐酸性が高く、酸性雨への耐久性が良好であることがわかる。
[製造例6−6]
<シリカ系前駆体の調製>
実施例1と同様にしてシリカ系前駆体を得た。
<反射防止膜の製膜>
ETFEフィルム(AGC製100HK―DCS)に対して、以上で得たシリカ系前駆体を250rpm、2分間の条件でスピンコーター(ミカサ(株)社製)を用いてスピンコートを行った。その後、180℃に設定したオーブン中で大気雰囲気環境において15分加熱することで、反射防止膜を得た。
<反射防止膜の評価>
得られた反射防止膜を分光膜厚計(大塚電子製FE−3000)により反射分光測定した結果、得られた反射防止膜の波長650nmにおける屈折率は1.26であり、膜厚は280nmであった。
<耐酸性評価>
得られた反射防止膜を1規定の塩酸水溶液に24時間浸漬した後、塩酸水溶液から取り出して乾燥させて、反射防止膜の評価と同様に屈折率測定をおこなったところ、屈折率は1.28となった。浸漬前(屈折率1.26)からの屈折率差は0.02と小さいことから、本実施例の反射防止膜は、耐酸性が高く、酸性雨への耐久性が良好であることがわかる。
[透光性を有さない太陽電池モジュール]
以上の実施例では、窓などに設置することを目的とした採光機能を有する太陽電池モジュールについて説明した。窓に設置する場合、室内へ光を取り入れるために、太陽電池モジュールは透光性を備えることが好ましい。しかし、本発明の太陽電池モジュールは透光性を有するものには限られない。例えば、壁に設置することを目的とする場合は必ずしも透光性を有する必要はない。この場合、図1に示す裏面側ガラス5は、代わりに樹脂、金属等の不透明な基材であってもよい。また図1のように、太陽電池セルが透過光を得るために間隔を置いて配置される必要もない。
透光性を有さない太陽電池モジュールにおいて裏面側ガラス5として用いられる樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂の中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。なお、1種類のみの材料を用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
透光性を有さない太陽電池モジュールにおいて裏面側ガラス5として用いられる金属の例としては、アルミニウム箔および板、ステンレス製薄膜および鋼板などが挙げられる。かかる金属材料には、腐食防止処理が施されていることが好ましい。耐候性の高さという観点からは、ガルバニウム鋼板を用いることが好ましい。なお、1種類の材料のみを用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに裏面側ガラス5には、樹脂と金属の複合材料を用いることができる。例えば、アルミニウム箔もしくはアルミニウム板にフッ素系樹脂を積層した材料を用いることができる。フッ素系樹脂としては、例えば、一弗化エチレン(商品名:テドラー,デュポン社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマー、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)、フルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体(FEVE)等が挙げられる。なお、1種類のフッ素系樹脂のみを用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
[実施例7]
本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例5に類似しているが、裏面側ガラス5の代わりにフルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体を積層したアルミニウム板(0.5mm厚)を用いる。裏面側ガラスを用いた場合に比べて軽量となり、さらに強度も増すことで、建材として好適となる。
[実施例8]
本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例7に類似しているが、反射防止膜を積層した受光面側ガラス2の代わりに製造例6−5と同様に反射防止膜を積層した透明ポリイミドフィルムを用いた。ガラスを用いた場合に比べて軽量となり、建材として好適である。さらに曲げ加工が可能となり、曲面壁面等に施工できる利点がある。
[実施例9]
本実施例に係る太陽電池モジュールの構成は実施例7に類似しているが、反射防止膜を積層した受光面側ガラス2の代わりに製造例6−6と同様に反射防止膜を積層したETFEフィルムを用いた。ガラスを用いた場合に比べて軽量となり、建材として好適である。さらに曲げ加工が可能となり、曲面壁面等に施工できる利点がある。ETFEフィルムは耐候性が高いため、屋外に設置しても良好な耐久性を示す。
[その他の実施例]
また、上述の太陽電池モジュールを窓等の建材に設置するのではなく、建材があらかじめ太陽電池セルを備えている構成としてもよい。例えば、この太陽電池セルを備える建材は、図1に類似する構造を持つが、モジュールとして提供されるのではない。この太陽電池セルを備える建材は、例えば窓材又は壁材のような建材であって、第1基材と、太陽電池セルを含む層と、太陽電池セルを含む層を保護する第2基材と、反射防止膜とを、この順番に積層した構造を有する建材であればよい。この場合、第1基材として用いられるのはガラス又は樹脂にとどまらない。木材、石材、石膏、樹脂、金属、コンクリート等、建材として用いられる様々な素材を第1基材として、太陽電池を備える建材を構成してもよい。この太陽電池セルを備える建材を用いれば、より簡便に建造物の窓又は壁に太陽電池を備え付けることができる。
例えば太陽電池セルを備える窓材とする場合は、太陽電池モジュール周囲をサッシで枠組みし、建築物が備える外枠に組み込む。サッシおよびその外枠の材料には、アルミ、樹脂、木材およびそれらの複合材が挙げられる。樹脂またはアルミ・樹脂の複合材が断熱性の点から好ましい。窓としては開閉可能、開閉不可の固定窓いずれでもよい。開閉可能な窓としては、横引き、片開き、両開き、上下動、ルーバー、滑り出しが挙げられる。なかでも太陽電池素子がより太陽光に照射される観点から、固定窓、ルーバー、滑り出しが好ましい。
また、例えば太陽電池セルを備える壁材、例えばカーテンウォールとする場合は、建築物への固定方法として、方立方式、無目通し方式、予め太陽電池モジュールを組み込んだパネルを並べるパネル方法およびパネルを組み合わせた後、太陽電池モジュールを組み合わせるパネル方式、スパンドレル方式などが挙げられる。太陽電池モジュールを固定する材料には、アルミ、アルミ合金、ステンレス、鋼材などの金属または樹脂または木材およびそれらの複合材が挙げられる。金属が耐久性の観点から好ましいが、金属とその樹脂との複合材も断熱性の点から好ましい。
以上に述べた太陽電池モジュール又は太陽電池セルを備える建材は、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、セルローズなどの断熱材と組み合わせ、断熱性を持たせてもよい。例えば、実施例3及び4の構成において、中空層の代わりに断熱材層を備えてもよい。また、太陽電池モジュール又は太陽電池セルを備える建材が、空気を循環させることのできる通風口を有してもよい。夏は暑い空気を排出し、冬は温まった空気を循環させることで、建物内部の温度を快適に調整することができる利点がある。