JP5742519B2 - セラミックス多孔質体 - Google Patents
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Description
特許文献4の場合、メチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランからなるアルコキシシラン中に高分子を添加することで、縮合反応したシリカ中の高分子を取り除き、高い多孔度を有するシリカ多孔質体を得ている。この方法では、1〜2官能のアルキル基を有するアルコキシシラン類を添加することで、シリカ多孔質体を安定に製造することができるが、基材の種類によってシリカ成分と基材との密着性が弱くなり、十分な機械強度が発現できないことがある。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)炭素数6〜10のアルキル基を含有し、全アルコキシシラン化合物由来の珪素原子に対する炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類由来の珪素原子の割合
が、0.05以上、0.75以下であり、かつ表面の最小反射率が1.0%以下であることを特徴とし、珪素を含む陽性元素を含有し、珪素の含有量が、陽性元素の含有量に対して90mol%以上であるセラミックス多孔質体。
(2) 表面の最小反射率が0.5%以下である(1)に記載のセラミックス多孔質体。(3)基材と、該基材上に設けられた、膜厚が0.05〜3μmである(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とするセラミックス多孔質積層体。(4)該基材のガラス転移温度が200℃以下であることを特徴とする(3)に記載のセラミックス多孔質積層体。
(5)基材と、該基材上に設けられた(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする光学部材。
(6)基材と、該基材上に設けられた(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする反射防止積層体。
1.セラミックス多孔質体
〔炭素数6〜10のアルキル基〕
本発明のセラミックス多孔質体は、炭素数6〜10のアルキル基を有する。本発明のセラミックス多孔質体が有するアルキル基は、もっとも好ましくは炭素数6〜8である。炭素数3を下回ると耐磨耗性が低下し、炭素数12を超えると多孔質構造が安定して製造できなくなり、多孔度の低下に伴う反射防止性の著しい低下が起こる。
本発明のセラミックス多孔質体は、空孔を有した多孔質構造を有する非金属材料かつ無機材料である。その材料は結晶性でも非結晶性でもよいが、基材への追随性の観点から非結晶性が好ましい。具体的には酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミなどの金属酸化物、窒化珪素などの金属窒化物などが挙げられる。
また、機械強度の高い骨格とするためには、規則構造を有さない方がよく、具体的には、XRDパターン(X線回折パターン)において、回折角(2θ)=0.5°〜10°の領域に、回折ピーク強度(面積)が標準偏差の2倍(即ち、2σ)以上の回折ピークを有さないことが好ましい。ここで、回折ピークとは、以下の定義により算出される周期構造サイズDが10Å以上となる回折ピークをいう。また、σは標準偏差を表わす。
〔空孔サイズ〕
空孔サイズには特に制限はないが、平均空孔サイズは通常0.1〜300nmで、機械強度の優れた多孔質体となる。0.5〜200nmが好ましく、0.8〜100nmがさらに好ましく、1〜80nmがもっとも好ましい。小さすぎると毛管力により空孔内に水
蒸気が入り、それにより屈折率が変化したり、光学特性に影響を与える恐れがある。一方、大きすぎると、表面に欠陥ができ、表面性が損なわれ、散乱等のヘーズが生じる危険性がある。
空隙率には特に制限はないが、平均空隙率は、10〜90%が好ましく、20〜85%がより好ましく、30〜80%がさらに好ましい。小さすぎると屈折率が低くならず、十分な光学特性が得られない恐れがある。一方、大きすぎると、表面に欠陥ができ、表面性が損なわれ、散乱等のヘーズが生じる危険性がある。
反射防止性を維持しつつ、優れた耐磨耗性を得るためには、炭素数6〜10のアルキル基を含有することが重要であるが、本発明のセラミックス多孔質体は酸化珪素を主成分とすることが好ましい。セラミックス多孔質体中のケイ素元素の含有量は、90mol%以
上である。前記の珪素の含有割合が少なすぎると、セラミックス多孔質体の表面粗さが大きくなり、機械的強度も低下する可能性がある。また、珪素の含有割合が高いほど表面平滑性のよいセラミックス多孔質体が形成される。なお、上限は理想的には100mol%である。
本発明のセラミックス多孔質体の反射防止性と耐磨耗性の両立の観点から、表面の最小反射率は1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.2%以下である。1.5%を越えると反射防止性が低下するだけではなく、多孔質構造による表面の荒れが生じ易く、そうした表面構造が同時に耐磨耗性にも悪影響する。一方、0.01%を下回るとセラミックス多孔質体表面に付着する汚れが反射防止性に影響を与え易くなるため、適用できる用途が限られてしまうという恐れがある。
〔屈折率〕
本発明のセラミックス多孔質体は、屈折率が1.3以下であることが好ましい。中でも、1.28以下が好ましく、1.27以下がより好ましく、1.25以下が特に好ましい。さらに好ましくは1.23以下である。屈折率が大きすぎると本発明のセラミックス多孔質体中の歪みが大きくなり、外力に対して弱くなる可能性がある。一方、屈折率の下限に特に制限は無いが、通常1.05以上、好ましくは1.08以上である。屈折率が小さすぎると本発明のセラミックス多孔質体の機械的強度が著しく低下する可能性がある。
を見積もることができる。
〔厚さ〕
本発明のセラミックス多孔質体の厚さには特に制限はないが、光学機能層として用いるためには、また膜の耐磨耗性の観点においても、0.05〜50μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、0.05〜3μmがより好ましく、0.07〜3μmがより好ましく、0.09〜1μmがさらに好ましく、0.11〜0.5μmがもっとも好ましい。0.05μmより薄いと、基材の平面度を向上させる必要がある場合があり、特に基材の大面積化の観点で、製膜工程が困難になる場合がある。一方、50μmを越えると、膜厚方向における多孔質構造が不均質になり、多孔質体に歪みが残存し易くなる可能性があり、耐磨耗性に対しても悪影響を及ぼす危険性がある。
本発明のセラミックス多孔質体の形状は特に制限はないが、膜状であることが好ましい。セラミックス多孔質体の厚さは上記の膜厚と同様とすることができる。また、セラミックス多孔質体を光学機能層として使用する場合、セラミックス多孔質体は一定サイズ以上の基材に備えることが好ましい。即ち0.0025m2以上が好ましく、0.05m2以上がより好ましく、0.1m2以上がさらに好ましく、1m2以上がもっとも好ましい。かかるサイズより小さいと、光学特性が十分に現れない可能性がある。
本発明のセラミックス多孔質体は、用途に応じて、他の層や基材と積層構成とする必要がある。こうした場合、表面の静的接触角を制御することが好ましく、具体的には、1時間の加熱処理後の水に対する静的接触角が、通常25°以上、中でも30°以上、特には33°以上であることが好ましく、また、通常90°以下、中でも87°以下、更には85°以下、特には82°以下が好ましい。前記の静的接触角が小さすぎると、セラミック体の親水性が高くなりすぎて、その表面に水分が吸着しやすくなり、他の層との密着性が低下する可能性がある。一方、前記の静的接触角が大きすぎると、セラミック体の表面が疎水状態となり、積層する層や基材の制限が大きくなる可能性がある。加熱処理とは通常200℃の条件でよく、基材が樹脂の場合には、樹脂基材のガラス転移温度以下で行うことができる。
本発明のセラミックス多孔質体は、表面粗さRaが7nm以下であることが好ましい。中でも、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましく、1nm以下が特に好ましい。表面粗さRaが大きすぎるとセラミックス多孔質体の均質性が劣る可能性がある。一方、表面粗さRaの下限に制限は無いが、通常0.2nm以上、好ましくは0.3nm以上である。表面粗さRaが小さすぎるとセラミックス多孔質体の歪みが極度に大きくなる可能性があり、耐磨耗性に対しても悪影響を及ぼす危険性がある。したがって、耐磨耗性においても上記範囲内であることが好ましい。
〔耐水性〕
本発明のセラミックス多孔質体は、本発明のセラミックス多孔質体を膜状にして光学用途に使用する場合には、光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を制御することが重要であるため、水中に浸漬処理の前後での膜厚の変化が少ない方が好ましい。具体的には、水浸漬処理の前後での膜厚の変化率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、10%以下が特に好ましい。変化率が大きすぎると光学用途の適用において性能が低下する可能性がある。水浸積処理とは常温(25℃)の水に24時間浸積することでよい。
また、セラミックス多孔質体は、水浸漬処理した後にクラックが少ないものが好ましく、そのクラックは目視若しくは光学顕微鏡で観測できる。具体的には、クラックのサイズが100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい、1μm以下がさらに好ましい。100μmを越えると基材との密着性の低下やヘーズが大きくなる可能性がある。さらに1mm×1mm内に前記クラックが存在しない領域の面積合計がセラミックス多孔質体表面に対して50%以上であることが好ましく、70%以下がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。50%未満の場合、光学用途として光学性能の安定性や外観が低下する可能性がある。
本発明のセラミックス多孔質積層体は、基材と、透光基材の片面若しくは両面に設けられた本発明のセラミックス多孔質体とを備えて構成される。また、本発明のセラミックス多孔質積層体は、必要に応じて、基材及びセラミックス多孔質体以外の部材を備えていても良い。
用いられる基材は用途に応じて任意のものを用いることができる。中でも、汎用材料からなる透光基材を用いることが好ましい。なお、透光基材とは、所定の波長の光の透過性が高い基材をいうこととし、該波長は、透光基材の用途に応じて適宜選択される。透光基材の波長550nmの全光線透過率は、通常65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。また、透光基材は性能に影響を及ぼさない限り、散乱やヘーズを有していてもよい。なお、該波長は、可視光の範囲に限定されないが、太陽電池用途においては、可視光線領域の高い透過性が好ましい。
透光基材の材料の例を挙げると、珪酸ガラス、高珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛
アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、バリウムガラスなどの珪酸塩ガラス、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸ガラス、燐酸塩ガラスなどのガラス及びこれらの強化ガラス;ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の合成樹脂、ETFE、PFA、PCTFE、ECTFE、PVDFPVFなどのフッ素含有樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の組合せで用いることができる。
ガラス以外の樹脂基材においては、基材のガラス転移温度が200℃以下であることが好ましい。より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、もっとも好ましくは120℃以下である。下限値の制限は特にないが、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、もっとも好ましくは80℃以上である。200℃を越えると、製膜時の熱処理による樹脂基材の熱収縮が大きくなり、線膨張の小さいセラミックス多孔質体との界面で剥離や局所的な欠陥が生じる危険性がある。一方、50℃を下回ると製膜時の熱処理による樹脂基材の形状変化により、多孔構造が形成し難くなり結果として高い反射
防止性能を得ることができない危険性がある。
また、樹脂基材の場合、製膜面に表面処理を施してもよい。具体的には、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。基材と多孔質体との密着性の観点から、コロナ処理、プラズマ処理が好ましい。
透光基材の寸法は任意である。ただし、透光基材として板状の基板を用いる場合には、当該基板の厚さは、機械的強度及びガスバリア性の観点から、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、1mm以上がより好ましい。また、当該厚さは、軽量化及び光線透過率の観点から、80mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下が特に好ましい。さらに透光基材の大きさとしては、光学的な効果を得る観点から0.1m2以上が好ましく、0.5m2以上がより好ましく、1m2以上が特に好ましい。上限には特に制限はないが、通常100m2以下が好ましく、50m2以下がより好ましい。
また、透光基材の中心線平均粗さも任意である。ただし、積層するセラミックス多孔質体の製膜性の観点から、当該中心線平均粗さは10nm以下が好ましく、8nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましく、3nm以下が特に好ましい。
一方、防眩性を付与する場合、透光基材の中心線平均粗さは上記の限りではなく、透光基材の表面は凸凹を有することが好ましい。かかる凹凸は透光基材の片面のみでも、両面に有していてもよいが、セラミックス多孔質体が積層される面に有することが好ましい。
また、セラミックス多孔質体が太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス、無機エレクトロルミネッセンス、LEDなどの光デバイスに適用される場合、用いる透光基材の片側、若しくは両面に電極が形成されていてもよい。電極は直接又は他の層を介して透光基材に設けることができる。電極の材料としては、例えばアルミニウム、錫、マグネシウム、
金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、又はこれらを含む合金、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。中でも透明性の観点で酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、又はこれを主組成としたものが好ましい。
また、透光基材上に有機系透明電極を用いることも可能である。この場合、上記の無機系電極と組み合わせることも可能である。有機系透明電極としては、例えばPEDOT等の導電性高分子を用いることができる。
本発明のセラミックス多孔質体は、光学部材にも適用可能である。本発明で言う光学部材とは、透光基材を通る光の反射、透過、回折等の現象を制御するフィルターをいうが、これらに限定されるものではない。本発明のセラミックス多孔質体は極めて最小反射率が低いため、これらの光の現象を制御することが容易であると同時に、耐磨耗性に優れているので、光学部材として様々な製品に適用可能である。通常、上述の基材上に本発明のセラミックス多孔質体を設けた積層体を、光学部材として使用する。
本発明のセラミックス多孔質体は、必要に応じて他の層と組み合わせて、可視光線反射膜、紫外線反射膜、近赤外線反射膜、赤外線反射膜等として使用される。
さらに、太陽光発電等の発電デバイスに適用することで光取り込み膜や光閉じ込め膜として用いたり、さらにはディスプレイ、照明等の発光デバイスに適用することで光取り出し膜(または輝度向上膜)としても用いたりすることができる。
なお、本発明のセラミックス多孔質体を上記太陽電池以外の光学用途に用いる場合であっても、通常は、セラミックス多孔質体の光線透過率が高いことが好ましい。これにより、セラミックス多孔質体に安定かつ有効な光学性能を備えさせることができるからである。
光学部材に用いられる他の層としては、光学部材の種類や用途に応じて適宜選択され、例えば高屈折率層、散乱層、金属層、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、接着層、ハード層、ガスバリア層、導電性層、アンチグレア層、拡散層等が挙げられる。これらの層は、透光基材のいずれの面に形成されていてもよく、またセラミックス多孔質体上に積層されていてもよい。なお、これらの層は光学部材中に、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組合せで用いてもよい。
本発明のセラミックス多孔質体は、通常、炭素数3〜12のアルキル基を有するアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなるアルコキシシラン類群より選ばれる一種(以下、適宜「アルコキシシラン化合物」ともいう。)と、界面活性剤と、有機溶媒と、水とを含むセラミック組成物を、透光基材上に塗布しセラミック前駆体を製膜する製膜工程、該セラミック前駆体を加熱することでセラミックス多孔質体とする加熱工程を経て製造される。
以下、本発明で用いるセラミック組成物について詳細に説明する。
本発明のセラミックス多孔質体の製造方法において用いるセラミック組成物には、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン化合物と、界面活性剤と、有機溶媒と、水とが含まれる。以下に詳細を述べる。
高い反射防止性を維持しつつ、同時に優れた耐磨耗性を得るためには、炭素数6〜10
のアルキル基を有することが重要であるため、本発明で用いるアルコキシシラン化合物は炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群を含有すればよく、特に制限はないが、以下の第1及び第2の化合物(群)のうちいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。
炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群(即ち、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、テトラアルコキシシラン類群(即ち、テトラアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種と、他のアルコキシシラン類群(即ち、他のアルコキシシラン類、その加水分解物及び部分縮合物からなる群)より選ばれる少なくとも一種との組み合わせ。
特定部分縮合物(即ち、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種とテトラアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種と他のアルコキシシラン類群より選ばれる少なくとも一種との部分縮合物)。
(炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群)
炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、ヘキシルトリメトキシシラン、イソヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、イソヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリ(n−プロポキシ)シラン、イソヘキシルトリ(n−プロポキシ)シラン、フェニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ヘプチルトリ(n−プロポキシ)シラン、オクチルトリ(n−プロポキシ)シラン、2−エチルヘキシルトリ(n−プロポキシ)シラン、ノニルトリ(n−プロポキシ)シラン、デシルトリ(n−プロポキシ)シラン、ドデシルトリ(n−プロポキシ)シラン、等がある。
これらの異なる炭素数を有する複数のアルキル基を2種以上混合してもよい。
テトラアルコキシシラン類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シランなどが挙げられる。また、テトラアルコキシシラン類群の例としては、前記のテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
ただし、テトラアルコキシシラン類は経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシラン類のみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシラン類と共存することが多い。
(他のアルコキシシラン類群)
他のアルコキシシラン類は、上述した炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群に属さないアルコキシシランであれば、任意のものを使用できる。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したもの;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等のケイ素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有するもの;などが挙げられる。また、他のアルコキシシラン類群の例としては、前記の他のアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。例えば3−トリハイドロキシシリル−1−プロパン−スルフォン酸等がある。
オロプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシ−1H、1H、2H、2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシランなどが好ましいものとして挙げられる。
上述した炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と、上述のテトラアルコキシシラン類群又は/及び他のテトラアルコキシシラン類群とを併用してもよい。上述した炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群、及び他のテトラアルコキシシラン類群の組み合わせの中でも、特に好ましい組み合わせとしては、炭素数6〜10のアルキルアルコキシシラン類として、脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン類としてのテトラエトキシシラン、他のアルコキシシラン類としての炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基を有するモノアルキルアルコキシシラン又はジアルキルアルコキシシランとの組み合わせが挙げられる。この組み合わせによれば、塗膜性に優れたセラミック組成物を容易に得られる。
アルコキシシラン化合物としては、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と、テトラアルコキシシラン類群又は/及び他のアルコキシシラン類群との部分縮合物を使用することもできる。具体的には、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群とテトラアルコキシシラン類群との部分縮合物、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群と他のアルコキシシラン類群との部分縮合物、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群とテトラアルコキシシラン類群と他のアルコキシシラン類群との部分縮合物である。
上記部分縮合物は、1種類のみ用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、上記部分縮合物と、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類群、テトラアルコキシシラン類群、及び他のアルコキシシラン類群からなる群より選ばれる1種以上とを、併用してもよい。
本発明で用いるセラミック組成物において、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン化合物の含有比率は特に制限されない。しかしながら、セラミックス多孔質体の空孔形成の観点から、全アルコキシシラン化合物由来の珪素原子に対する炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類由来の珪素原子の割合が、通常0.05(mol/mol)以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.13以上、もっとも好ましくは0.15以上である。また、通常0.75以下、好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下、もっとも好ましくは0.5以下である。上限値を越えると未反応シラノールが残存しやすくなるため、多孔質体の耐水性が低下したり、多孔度の低下による反射防止性の低下を引き起こす恐れがある。一方、下限値を下回ると、耐磨耗性が低くなり、容易に擦傷したり、磨耗しやすくなる恐れがある。
また、テトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子とは、組成物に含有されるテトラアルコキシシラン類群が有するケイ素原子の数と、テトラアルコキシシラン類群を含む部分縮合物が有するケイ素原子のうちテトラアルコキシシラン類群に対応する部分構造に属するケイ素原子の数との合計をいう。したがって、セラミック組成物がアルコキシシラン化合物以外にケイ素原子を有する化合物を含有していたとしても、当該化合物が有するケイ素原子は前記の割合の算出には関与しない。なお、前記の全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対するテトラアルコキシシラン類由来のケイ素原子の割合は、Si−NMRにより測定することができる。
。
本発明では、上記製膜工程におけるセラミック組成物の吐出性、及びセラミック前駆体の造膜性、さらには得られるセラミックス多孔質体の低屈折率化の観点から、用いるセラミック組成物に界面活性剤を含有する。界面活性剤とは、親油基(低極性)と親水基(高極性)とを備えた分子のことをいう。界面活性剤は、上記の定義に沿った化合物であれば公知の何れの界面活性剤を用いることもできる。例えば、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。中でも、セラミック組成物の吐出性及びセラミック前駆体の造膜性の観点から、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましく、セラミックス多孔質体の低屈折率化の観点から、非イオン系界面活性剤が好ましい。さらに非イオン系界面活性剤の中でも分子量が高い方が好ましい。具体的には重量平均分子量は、通常200以上であり、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。
なお、非イオン系界面活性剤にエチレンオキサイド部位を有することより、アルコキシシラン化合物のゾル−ゲル反応中において形成されるアルコキシシラン化合物の加水分解物や縮合物に対して安定となる。
なお、上記ノニオン系界面活性剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えば、上記のような界面活性剤の他に、親油基がフッ化炭素基のフッ素系界面活性剤、親油基がシロキサン鎖のシリコーン系界面活性剤、親油基がアルキル基の界面活性剤等から2種以上が選択されることが好ましく、中でも非イオン性系界面活性剤とフッ素系界面活性剤(特にパーフルオロアルキル基を含有するもの)との組合せ、及び非イオン性系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤(特にシロキサン結合を含有するもの)との組合せから選択されることが好ましい。
フッ素系界面活性剤として、例えば、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2、−テトラフロロプロピル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、全アルコキシシラン化合物由来のケイ素原子に対する界面活性剤の割合として、得られるセラミックス多孔質体の表面性の観点から、通常0.001(mol/mol)以上、好ましくは0.002(mol/mol)以上、より好ましくは0.003(mol/mol)以上、また、通常0.05(mol/mol)以下、好ましくは0.04(mol/mol)以下、より好ましくは0.03(mol/mol)以下となるようにする。
本発明のセラミックス多孔質体の製造方法に用いる有機溶媒には特に限定されないが、好適な有機溶媒の例を挙げると、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、炭素数1〜4の二価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、エチルアセテート、イソブチルアセテート、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の、前記アルコール類のエーテルまたはエステル化物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらを2種以上選択して用いても良い。
て、3−メチルー1−ブタノール、、1−ペンタノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、グリセリン、ジエチレングリコール ジメチルエーテル、トリエチレ
ングリコールなどが好ましい。該有機溶媒の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限されないが、通常、100〜500が好ましい、より好ましくは110〜400、さらに好ましくは115〜350、もっとも好ましくは120〜300である。100を下回ると、一方、500を超えるとアルコキシシラン化合物が形成するゲル構造内における有機溶剤の占める立体的サイズが大きいため、除去後のセラミックス多孔質体の歪が大きくなる恐れがある。
セラミック組成物は水を含有する。用いる水の純度は高いほうが好ましい。通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方または両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、例えば光学用途積層体のような微小不純物を特に嫌う用途分野に、得られたセラミックス多孔質体を用いる場合には、より純度の高いセラミックス多孔質体が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。詳しくは、例えば0.01μm〜0.5μmの孔径を有するフィルターを通した水を用いればよい。
セラミック組成物には触媒を含有していてもよく、例えば上述したアルコキシシラン化合物の加水分解および脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。
その例を挙げると、フッ酸、燐酸、ホウ酸、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、ステアリン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
タン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等を挙げることができる。
なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、造膜性の観点で組成物のpHが5.5以下であることが好ましい。より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。この範囲にすることで製膜時に基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
本発明で用いるセラミック組成物には、上述したアルコキシシラン化合物、有機溶媒、界面活性剤、水、触媒以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
以下、本発明のセラミックス多孔質体の製造方法について詳細に説明する。
上述した組成物を構成する各成分を混合して、セラミック組成物を調製する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。
くなる可能性がある。
また、熟成後、塗布工程前に用いる組成物は有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、セラミック組成物内でのゾル−ゲル反応速度を低下させることができ、セラミック組成物のポットライフを長く維持することが可能となる。また、セラミックス多孔質体の製造における歩留まりの観点では、加熱を伴わない熟成を行うことが好ましい。加熱を伴わない熟成は、セラミック組成物の調製後に行ってもよい。
[製膜工程]
本発明で用いるセラミック組成物を膜化する膜化工程を行う。膜化工程では、通常、所定の基材の表面に本発明で用いるセラミック組成物を成膜して本発明のセラミックス多孔質体を形成する。製膜の方法に制限は無いが、例えば、セラミック組成物をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード等を使用して基材上に延ばす流延法;セラミック組成物に基材を浸漬し引き上げるディップコート法;スピンコート法、キャピラリーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などの周知を挙げることができる。これらの方法のうち、流延法、ダイコート法、ディップコート法、スプレーコート法及びスピンコート法がセラミック組成物を均一に塗布することができるので好ましく採用される。中でも、均質な膜を形成する上ではスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法が特に好ましい。
0回転/分以上、好ましくは50回転/分以上、より好ましくは100回転/分以上、また、通常100000回転/分以下、好ましくは50000回転/分以下、より好ましくは10000回転/分以下である。回転速度が遅すぎると膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると溶媒の気化が進みやすくなりアルコキシシラン類の加水分解等の反応が十分進まず耐水性が低い可能性がある。
処理、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、表面処理は、1種のみを行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。
基材上にセラミック組成物を製膜した後、粗乾燥工程を行ってもよい。
粗乾燥の手段も任意である。例えば粗乾燥を加熱乾燥により行なう場合、加熱乾燥の手段の例として、ホットプレート、オーブン、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また通風加熱乾燥の手段としては、例えば送風乾燥オーブン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粗乾燥時の湿度も制限されないが、セラミック前駆体の吸湿を防ぐため、通常は60%RH程度以下とすることが望ましく、好ましくは常圧で30%RH以下、或いは真空状態(湿度0%RH)とすることが望ましい。
粗乾燥時間も制限されず、セラミック前駆体中の有機溶媒や水が除去できれば任意であるが、粗乾燥時の温度・圧力・湿度等の条件や、セラミック組成物中に含まれる有機溶媒の沸点、プロセス速度、セラミック前駆体の特性等を考慮して決定することが好ましい。通常1秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。
製膜工程で得られたセラミック前駆体を加熱することでセラミックス多孔質体を得ることができる。加熱条件は基材の種類や組成物に使用する有機溶剤により調整することができ、特に制限されない。
加熱工程により、基材との密着性、膜表面の平滑性、膜構造の多孔質化とその安定化が進行することで、光学用途に有用な耐久性と光学機能を発現できる。
以上のように、加熱処理を行なうことによりセラミックス多孔質体を得ることができるが、加熱工程の後に、必要に応じて冷却工程や後処理工程等を実施することも可能である。
冷却工程とは、加熱工程で高温となったセラミックス多孔質体を冷却する工程である。この際、冷却速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常100℃/分以下、好ましくは50℃/分以下、より好ましくは30℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると局所的なクラックの原因となる可能性がある。
また、冷却工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却することが好ましい。
後処理工程で行なう具体的な操作に制限は無いが、例えば、得られたセラミックス多孔
質体をシリル化剤で処理することで、セラミックス多孔質体の表面をより機能性に優れたものにできる。具体例を挙げると、シリル化剤で処理することにより、セラミックス多孔質体に疎水性が付与され、膜表面や膜中の細孔が汚染されるのを防ぐことができる。
また、後処理の別の例としては、本発明のセラミックス多孔質体を多湿条件下で熟成することで、多孔質構造中に存在する未反応シラノールを減らすことができ、これにより、セラミックス多孔質体の耐水性をより向上させることも可能である。さらには、セラミックス多孔質体の上に他の無機酸化物膜を形成することで、機械強度や耐アルカリ性を向上させることも可能である。
[セラミック組成物の調製]
テトラエトキシシラン(以下、TEOS)1.86g、メチルトリエトキシシラン(以下、MTES)0.64g、エタノール(沸点78.3℃)0.58g、水1.39g及び、0.3重量%の塩酸水溶液3.25gを混合し、ウォーターバス中で30分攪拌した。次にヘキシルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM−3063)1.33gを加えて混合しウォーターバス中で30分攪拌した。更に室温で30分攪拌して、混合物(A)を得た。
このセラミック組成物中の全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.3で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類(メチルトリエトキシシラン)由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.2である。
得られた組成物を基材として大判スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製 S112、厚み1mm)を使用して、スピンコーター(ミカサ製MS−A150)で塗布した。スピンコーターは、回転数500rpm、回転時間120秒、塗布液量1mlとした。
[加熱工程]
次に450℃に設定したオーブンに置き、大気雰囲気下で2分間加熱することで、基材上に概観外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
分光膜厚計(大塚電子製FE−3000)により、反射率を測定した結果、基材上に得られたセラミックス多孔質体の最小反射率は0.48%であり、その時の波長は507nmであった。フレネルの式を用いて屈折率を算出した結果、1.29であった。
《摩耗試験》
ミルスペックMIL−CCC−c−440に記載のチーズクロスを荷重500g/cm2で得られた多孔質シリカ膜表面上を20往復させた。摩耗性の評価は、「表面上に傷が全く確認できない」場合は◎、「目立った傷はなく、傷が基材へ到達していない」場合は○、「膜がなく傷が基板へ到達している」場合は×とした。実施例1は、表面上に傷が全く確認できなかったので、◎とした。
ヘーズメータ(スガ試験機製TMダブルビーム自動ヘーズコンピューターHZ−2)により、ヘーズと全光線透過率を測定した。得られた積層体のヘーズは0.43%、全光線透過率は93.5%であった。
[実施例2]
MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、1−ブタノール45.49gを、MTES0.80g、ヘキシルトリメトキシシラン1.11g、1−ブタノール45.24gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[実施例3]
MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、P123 1.54g、1−ブタノール45.49gを、MTES0.48g、ヘキシルトリメトキシシラン1.55g、P123 1.61g、1−ブタノール46.06gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
アルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子の比率(mol/mol)は0.35で、全アルコキシシラン類由来の珪素原子に対する他のアルキルアルコキシシラン類由来の珪素原子(メチルトリエトキシシラン)の比率(mol/mol)は0.15である。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[実施例4]
TEOS1.86g、MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、P123 1.54g、1−ブタノール45.49gを、TEOS1.30g、MTES1.59g、ヘキシルトリメトキシシラン0.66g、P1231.56g、1−ブタノール44.54gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[実施例5]
TEOS1.86g、MTES0.64g、ヘキシルトリメトキシシラン1.33g、P123 1.54g、1−ブタノール45.49gを、TEOS1.12g、MTES1.59g、ヘキシルトリメトキシシラン0.89g、P123を1.56g、1−ブタノール44.68gに変更し、ヘキシルトリメトキシシランを加えた後でウォーターバスでの加温時間を30分から2時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[実施例6]
MTES0.64g、1−ブタノール45.49gをMTES1.11g、1−ブタノール44.89gに変更し、更に、ヘキシルトリメトキシシラン1.33gをデシルトリメトキシシラン(信越化学製KBM3103C)0.70gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[実施例7]
MTES0.64g、デシルトリメトキシシラン0.70g、1−ブタノール45.49gをMTES0.95g、デシルトリメトキシシラン0.94g、1−ブタノール45.19gに変更した以外は、実施例6と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[比較例1]
TEOS1.86g、MTES0.64g、1−ブタノール45.49gを、TEOS1.70g、MTES1.73g、1−ブタノール43.9gに変更し、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学製KBM3063)を加えなかった以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
[比較例2]
MTES0.64gをトリメチルメトキシシラン(東レ・ダウ Z−6013)0.280g、に変更し、ヘキシルトリメトキシシラン1.33gを1.55gに変更し、1−ブタノール45.49gを45.14gに変更した以外は、実施例1と同様にして、セラミック組成物を得た。
実施例1と同様に[製膜工程][加熱工程]を行ない、基材上に外観の良好なセラミックス多孔質体(膜厚は110〜160nm、表面粗さRaは3nm以下)を得た。
Claims (6)
- 炭素数6〜10のアルキル基を含有し、全アルコキシシラン化合物由来の珪素原子に対する炭素数6〜10のアルキル基を有するアルコキシシラン類由来の珪素原子の割合が、0.05以上、0.75以下であり、かつ表面の最小反射率が1.0%以下であることを特徴とし、珪素を含む陽性元素を含有し、珪素の含有量が、陽性元素の含有量に対して90mol%以上であるセラミックス多孔質体。
- 表面の最小反射率が0.5%以下である請求項1記載のセラミックス多孔質体。
- 基材と、該基材上に設けられた、膜厚が0.05〜3μmである請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とするセラミックス多孔質積層体。
- 該基材のガラス転移温度が200℃以下であることを特徴とする請求項3に記載のセラミックス多孔質積層体。
- 基材と、該基材上に設けられた請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする光学部材。
- 基材と、該基材上に設けられた請求項1又は2に記載のセラミックス多孔質体とを備えることを特徴とする反射防止積層体。
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