以下、本発明について実施形態や例事物等は示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態や例事物に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
1.シリカ体
[屈折率]
本発明のシリカ体は、光学機能層として高い光学特性を発現するために、屈折率が1.40以下、好ましくは1.35以下、より好ましくは1.28以下、特に好ましくは1.25以下の低屈折率シリカ体である。シリカ体の屈折率が大きすぎると十分な光学効果が得られない可能性がある。一方、シリカ体の屈折率の下限に特に制限は無いが、通常1.05以上、好ましくは1.10以上である。屈折率が小さすぎると本発明のシリカ体の機械的強度が著しく低下する可能性がある。
なお、ここで、シリカ体の屈折率は、分光エリプソメーター法、反射率測定、反射分光スペクトル測定或いはプリズムカプラーなどの光学的手法で測定された波長400nm〜700nmにおける値をいい、好ましくは分光エリプソメーターで測定されたものをいう。分光エリプソメーターで測定する場合、測定値をCauthyモデル又はTauc−Lorentzモデルでフィッティングすることで、屈折率を見積もることができる。
[水蒸気吸着特性]
本発明のシリカ体は特定の範囲の水蒸気吸着特性をもつことを特徴とする。
即ち、樹脂基材に対する密着性及びシリカ体上に積層する上層との密着性を改良し、かつ屈折率の低いシリカ体を形成するために、本発明のシリカ体は、25℃での相対水蒸気圧P/P0が0.3<P/P0<9の範囲における水蒸気吸着量差Δが0.05〜0.2g/gであり、かつ25℃での相対水蒸気圧P/P0=0.3における水蒸気吸着量が0.14g/g以下である。ここでPは25℃での水蒸気分圧であり、P0は25℃での飽和水蒸気圧である。また、水蒸気吸着量とは、シリカ体の単位重量当たりの水蒸気吸着重量である。
上記水蒸気吸着量差Δは、好ましくは0.08g/g以上、さらに好ましくは、0.1g/g以上であり、好ましくは0.18g/g以下、さらに好ましくは0.17g/g以下である。水蒸気吸着量差Δが小さすぎると、高温高湿の条件で基材との密着性が乏しくなり、シリカ体が剥れたり、傷付きやすくなる可能性がある。これはシリカ体が積層される基材の吸湿や熱膨張などの外部環境の変化により、密着性の著しい低下につながると考えられる。一方、水蒸気吸着量Δが大きすぎると、屈折率の変化が大きくなったり、シリカ体が割れたり、表面荒れが発生してしまう。
水蒸気吸着量差Δを上記範囲とすることで、様々な外部環境においてもシリカ体が呼吸するようにシリカ体の内部への水分吸着量をコントロールし、光学機能を損なわない屈折率の低さと柔軟性を保持することができ、密着性も著しく向上する。
また、本発明のシリカ体は、相対水蒸気圧P/P0=0.3の時の水蒸気吸着量が、0.14g/g以下であり、好ましくは0.1g/g以下、より好ましくは0.05g/g以下である。この水蒸気吸着量の下限は特に設けないが、通常0.001g/g以上である。この水蒸気吸着量が少なすぎると基材や上層との密着性が不良となり、耐摩耗性などの耐久性が劣るものとなる。また、水蒸気吸着量が多すぎると屈折率が大きくなり、反射防止効果や光学機能が得られなくなる。
なお、水蒸気吸着量は、相対水蒸気圧を変化させて、平衡状態での標準吸着量を容量法又は重量法で求める事ができる。一般的には容量法が用いられる。容量法で測定可能な装置は例えば日本ベル(株)社製「ベルソープ18」である。
基材上に形成されたシリカ体の水蒸気吸着量を直接測定には、例えば、基材上からシリカ体を剥離して、水蒸気吸着量を測定する。
又、後掲の実施例においては、シリカ体の製造に用いるシリカ系組成物をシリカ体の製造時の加熱温度で加熱してシリカ体の粉末を得、この粉末に対して水蒸気吸着量を測定する。この加熱工程においては、実際のシリカ体製造時の加熱時間よりも長く、例えば1〜10時間程度長い時間焼成を行うが、これは多量のシリカ体粉末を得るためには、シリカ体内部の溶媒除去に時間がかかるためである。このように、実際のシリカ体製造時の加熱時間よりも長い時間加熱を行っても加熱温度が同じであれば、本発明のシリカ体のゾルーゲル反応の進行は温度による影響が大きいため、シリカ体としての水蒸気吸着量を求めることができる。
後述のQ値の測定においても同様である。
[固体Si−NMR]
本発明のシリカ体は、水酸基を一定以上含むことにより、樹脂を含む様々な基材やシリカ体上に積層する上層との密着性に優れる。シリカ体中の水酸基及びアルコキシ基含有量は固体Si−NMRで確認することができる。
基材や上層との密着性を十分に確保するために、本発明のシリカ体の固体Si−NMRにおける{(Q3×1+Q2×2+Q1×3)+(T2×1+T1×2)+(D1×1)}/{(Q4+Q3+Q2+Q1)+(T3+T2+T1)+(D2+D1)}×100の値(以下「Q値」と称す場合がある。)は12〜50であることが好ましい。Q値はより好ましくは13以上、特に好ましくは15以上であり、その上限は通常40以下、好ましくは30以下である。{(Q3×1+Q2×2+Q1×3)+(T2×1+T1×2)+(D1×1)}/{(Q4+Q3+Q2+Q1)+(T3+T2+T1)+(D2+D1)}×100の値が小さすぎると、基材や上層との密着性が悪くなり、シリカ体の摩耗や剥離が起こりやすくなり、大きすぎると屈折率が高くなってしまう。
以下、Q値について説明する。
本発明のシリカ体を構成するシリカには、構造的に、3つのタイプがある。
第一に、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合してネット状に広がった構造を有するものである。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が、−OR(Rは、H又はアルキル基)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示すように4個の−OSiを有するSi(Q4)、下記式(B)に示すように3個の−OSiを有し、1個の−ORを有するSi(Q3)、下記式(C)に示すように2個の−OSiを有し、2個の−ORを有するSi(Q2)、下記式(D)に示すように1個の−OSiを有し、3個の−ORを有するSi(Q1)が存在する。
第二に、Siの四面体の頂点の内の1つがアルキル基で結合されている場合であり、一つのSiに注目した場合、下記式(E)に示すように3個の−OSiと1個の−Rを有するSi(T3)、下記式(F)に示すように2個の−OSiと1個の−R、1個の−ORを有するSi(T2)、下記式(G)に示すように1個の−OSiと1個の−R、2個の−ORを有するSi(T1)が存在する。
第三に、Siの四面体の頂点の内の2つがアルキル基で結合されている場合であり、一つのSiに注目した場合、下記式(H)に示すように2個の−OSiと2個の−Rを有するSi(D2)、下記式(I)に示すように1個の−OSiと2個の−R、1個の−ORを有するSi(D1)が存在する。
なお、上記式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表している。
そして、上記の{(Q3×1+Q2×2+Q1×3)+(T2×1+T1×2)+(D1×1)}/{(Q4+Q3+Q2+Q1)+(T3+T2+T1)+(D2+D1)}×100の値とは、水酸基(−ORのRがHのもの)、アルコキシ基(−ORのRがアルキル基のもの)を有するSiの全Siにおける割合を意味し、この値が高い程、水酸基(−ORのRがHのもの)、アルコキシ基(−ORのRがアルキル基のもの)が多く、基材や上層に対する密着性が高くなる。
なお、本発明において、固体Si−NMR測定は、固体Si−DD/MAS−NMR法で実施される。その測定条件を表1に示す。
波形分離解析は、フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメーターとして、非線形最小二乗法による最適化計算を行った。なお、各ピークの同定は、Engelhardt,G.:Michel,D.High-Resolution Solid-State NMR of Silicate and Zeolite:JOHN WILEY&SONS,Chichester,1987.等を参考にした。
波形分離解析により得られた各ピーク(Qn(n=1−4)、Tn(n=1−3)、Dn(n=1−2)のピーク面積から、総Si量に対するOR基(R=H又はアルキル)含有率{(Q3×1+Q2×2+Q1×3)+(T2×1+T1×2)+(D1×1)}/{(Q4+Q3+Q2+Q1)+(T3+T2+T1)+(D2+D1)}×100を求めた。
得られた測定データは波形分離解析を行って、各ピーク(Q4、Q3、Q2,Q1、T3、T2、T1、D2、D1)の抽出、分割を行う。ピーク抽出、分割により求めた各ピーク面積から、その比{{(Q3×1+Q2×2+Q1×3)+(T2×1+T1×2)+(D1×1)}/{(Q4+Q3+Q2+Q1)+(T3+T2+T1)+(D2+D1)}×100を算出することにより、Q値を得ることができる。
[シリカ含有量]
本発明のシリカ体は、シリカを主成分とする多孔質体であることが好ましい。
本発明のシリカ体のシリカ含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に制限はないが、例えば、本発明のシリカ体は、酸化珪素組成において、珪素を含む全ての陽性元素に対する珪素の割合が、通常50mol%以上、好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上である。この珪素の含有割合(本発明において「シリカ含有量」と称す。)が上記下限値未満であると、シリカ系多孔質体の表面粗さが極端に大きくなり、機械的強度も低下する可能性がある。また、シリカ含有量が高いほど表面平滑性のよいシリカ系多孔質体が形成される。なお、シリカ含有量の上限は理想的には100mol%である。
[多孔質構造]
本発明のシリカ体は、屈折率を低く維持するために好ましくは空孔を有した多孔質構造をとる。その多孔質構造には特に制限はなく、その空孔は、通常、トンネル状や独立空孔がつながった連結孔であるが、詳細な空孔の構造にも特に制限はない。ただし、当該空孔の構造としては連続的な空孔が好ましく、こうした連続的な空孔は電子顕微鏡により確認することができる。もしくは、水蒸気や窒素を吸着させて、その吸着量から空孔が存在することを確認することができる。
また、機械強度の高い骨格とするためには、規則構造を有さない方がよく、具体的には、XRDパターン(X線回折パターン)において、回折角(2θ)=0.5°〜10°の領域に、回折ピーク強度(面積)が標準偏差の2倍(即ち、2σ)以上の回折ピーク(以下、単に「回折ピーク」と称す。)を有さないことが好ましい。ここで、回折ピークとは、以下の定義により算出される周期構造サイズが10Å以上となる回折ピークをいう。また、σは標準偏差を表し、具体的には定義に従うものとする。
(回折ピークの説明)
回折ピークとは、以下の手順に従い計算される周期構造サイズが10Å以上となる回折ピークを言う。従って、周期構造サイズが10Åより小さくなる回折ピークは本発明に係る回折ピークとしない。
(周期構造サイズ計算方法)
周期構造サイズDは、下記式(i)に示すScherrer式に基づき算出できる。なお、式(i)において、Scherrer定数Kは0.9であり、測定に用いたX線波長をλとする。ブラッグ角θおよび実測半価幅β0は、それぞれプロファイルフィティング法により算出する。試料由来の半価幅βは、下記式(ii)を用いて補正計算する。標準Siの回折ピークより計算した実測半価幅の回帰曲線を作成し、該当する角度の半価幅を読み取り装置由来半価幅βiとする。なお、Dの単位はÅ(オングストローム)であり、β、β0及びβiの単位はラジアンとする。
(標準偏差の説明)
標準偏差σは、以下のように定義される。
また、多孔質構造の空孔サイズや空隙率を調整することで、シリカ体の屈折率、誘電率、密度等を調整することができ、それらを調整することで、光学用途の他にも、様々な用途にも応用することができるシリカ体が提供される。
空孔サイズには特に制限はないが、平均空孔サイズとして0.1〜300nmであることが、機械強度に優れた多孔質体となることから好ましい。平均空孔サイズは、0.5〜200nmがより好ましく、0.8〜100nmがさらに好ましく、1〜80nmが最も好ましい。平均空孔サイズが小さすぎると毛管力により空孔内に水蒸気が入り、それにより屈折率が変化したり、光学特性に影響を与える恐れがある。一方、大きすぎると、表面に欠陥ができ、表面性が悪化したり、散乱等のヘーズが生じる危険性がある。
空隙率には特に制限はないが、平均空隙率は10〜90%が好ましく、20〜85%がより好ましく、30〜80%がさらに好ましい。平均空隙率が小さすぎると屈折率が低くならず、十分な光学特性が得られない恐れがある。一方、大きすぎると、表面に欠陥ができ、表面性が悪化したり、散乱等のヘーズが生じる危険性がある。
[形状及び大きさ]
本発明のシリカ体の形状は特に制限はないが、膜状であることが好ましい。
本発明のシリカ体の厚さには特に制限はないが、光学機能層として用いるためには、0.05〜10μmが好ましく、0.08〜8μmがより好ましく、0.1〜5μmがさらに好ましく、0.13〜3μmが最も好ましい。厚さが0.05μmより薄いと、基材の平面度を著しく向上させる必要があり、特に基材の大面積化の観点で、製膜工程が困難になる。一方、厚さが10μmを超えると、シリカ体製造時の焼成工程において、シリカ系前駆体−基材界面でゾル−ゲル反応の進行が不均質になり、多孔質体に歪みが残存し易くなる可能性がある。
なお、膜厚は、ケーエルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用い、測定条件として、スタイラス・フォース(触圧)0.2mg、スキャン速度10um/秒で測定することができる。また、分光エリプソメーター、反射分光スペクトル法、プリズムカプラによっても評価できる。
また、本発明のシリカ体を光学機能層として使用する場合、シリカ体は一定サイズ以上の面積を有することが好ましい。具体的には、シリカ体の面積は0.0025m2以上が好ましく、0.05m2以上がより好ましく、0.1m2以上がさらに好ましく、1m2以上が最も好ましい。かかるサイズより小さいと、光学特性が十分に現れない可能性がある。
[表面性]
本発明のシリカ体は、用途に応じて、他の層や基材と積層構成とする必要がある。こうした場合、表面の静的接触角を制御することが好ましく、具体的には、水に対する静的接触角が、通常25°以上、中でも30°以上、更には40°以上、特には55°以上であることが好ましく、また、通常90°以下、中でも87°以下、更には85°以下、特には82°以下であることが好ましい。前記の静的接触角が小さすぎると、シリカ体の親水性が高くなりすぎて、その表面に水分が吸着しやすくなり、上層との密着性が低下する可能性がある。一方、前記の静的接触角が大きすぎると、シリカ体の表面が疎水状態となり、積層する層や基材の制限が大きくなる可能性がある。
なお、前記の静的接触角は、以下の要領で測定できる。即ち、常温、常湿下でシリカ体の表面に水滴を滴下させ、その際の水滴の接触角を測定する。水滴サイズ2μlを滴下し、滴下1分以内に測定し、これを5回以上繰り返し、その平均値を前記の静的接触角として求める。
本発明のシリカ体は、算術表面粗さRaが通常20nm以下であることが好ましく、好ましくは15nm以下、より好ましくは7nm以下、さらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは3nm以下である。算術表面粗さRaが大きすぎるとシリカ体の均質性が低下する可能性がある。一方、算術表面粗さRaの下限に制限は無いが、通常0.2nm以上、好ましくは0.3nm以上である。算術表面粗さRaが小さすぎるとシリカ体の歪みが極度に大きくなる可能性がある。
なお、算術表面粗さRaは、JIS B0601:2001に規定されている基準に基づき、ケ−エルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用いて、1走査距離0.5μmの条件で数回測定した平均値を算出して求めることができる。
[耐水性]
本発明のシリカ体は、膜状として光学用途に使用する場合には、光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を制御することが重要であるため、水中への浸漬処理の前後での膜厚の変化が少ない方が好ましい。具体的には、常温、常湿下の条件での水浸漬処理の前後での膜厚の変化率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、10%以下が特に好ましい。この変化率が大きすぎると光学用途の適用において性能が低下する可能性がある。ここで、水浸漬処理とは、常温(25℃)の水に24時間浸漬することである。
なお、膜厚の測定は、前述の如く、ケーエルエー・テンコール社製P−15型接触式表面粗さ計を用い、測定条件はスタイラス・フォース(触圧)0.2mg、スキャン速度10um/秒として行なえばよい。また、分光エリプソメーター、反射分光スペクトル法、プリズムカプラによっても評価できる。
また、シリカ体は、水浸漬処理した後にクラックが少ないものが好ましく、そのクラックは目視若しくは光学顕微鏡で観測できる。具体的には、常温、常湿下の条件で水浸漬処理した後に形成されるクラックのサイズ(長さ)が100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。クラックのサイズが100μmを超えると基材との密着性の低下やヘーズが大きくなる可能性がある。さらに1mm×1mmの領域内に前記クラックが存在しない領域の合計の面積が、シリカ体の全表面積に対して50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。この割合が50%未満の場合、光学用途として光学性能の安定性や外観が低下する可能性がある。
また、耐湿熱性の評価として、以下のような「高温高湿処理」もある。
即ち、本発明のシリカ体の波長550nmにおける屈折率n1を事前に測定した後、このシリカ体を温度85℃、湿度85%RH、又は温度60℃、湿度90%RHの条件下に静置し、500時間後に取り出す。その後、このシリカ体の波長550nmにおける屈折率n2を再度測定する。このときの屈折率差の絶対値Δn=|n2−n1|は0.001〜0.15が好ましく、0.003〜0.12がより好ましく、0.005〜0.1が更に好ましく、0.008〜0.08が特に好ましい。Δnが0.15より大きいものは耐湿熱性に劣り、また、0.001より小さいものは材料の熱による変化から考えて、現実的にはありえない。
また、シリカ体は、高温高湿処理した後にクラックが少ないものが好ましい。クラックは目視若しくは光学顕微鏡で観測できる。
2.シリカ体の製造方法
本発明のシリカ体の製造方法において用いるシリカ系組成物には、アルコキシシラン化合物、水、有機溶媒、及び鋳型材が含まれる。
このシリカ系組成物は、特に、2種以上のアルコキシシラン類に由来する加水分解基含有シラン、その加水分解物及び部分縮合物よりなる加水分解基含有シラン類と、水と、有機溶媒と、鋳型剤と、触媒とを含み、該組成物中の全加水分解基含有シラン類由来の珪素原子に対する水の割合(mol/mol)が10以上50以下であることが好ましい。
なお、ここで「2種以上のアルコキシシラン類由来の加水分解基含有シラン、その加水分解物及び部分縮合物よりなる加水分解基含有シラン類」とは、少なくとも2種のアルコキシシラン類を「アルコキシシラン類A」と「アルコキシシラン類B」としたとき、アルコキシシラン類Aである加水分解基含有シラン、その加水分解物及びその部分縮合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上と、アルコキシシラン類Bである加水分解基含有シラン、その加水分解物及びその部分縮合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上とを少なくとも含む、或いは、アルコキシシラン類Aとアルコキシシラン類Bとの部分縮合物を少なくとも含むことを意味する。
上記好適なシリカ系組成物に含まれる加水分解基含有シラン類が、2種以上のアルコキシシラン類で構成されていることが好ましい理由は以下の通りである。
即ち、後述の製膜工程で形成された鋳型材とシリカ成分とを含む前駆体の構造を、加熱工程でも維持するためには、シリカ成分には鋳型材と親和性の高い部分と低い部分が存在する必要がある。つまり、鋳型材と親和性の高い部分によりシリカ成分のゾル−ゲル反応による構造変形を抑制し、一方、鋳型材と親和性の低い部分(シリカ成分間の親和性の高い部分)で、鋳型材の消失時の構造変形を抑制することが必要となる。
本発明では、2種以上のアルコキシシラン類よりなる加水分解基含有シラン類を用いることにより、上記の異なる構造変形抑制作用を得る。
2−1.シリカ系組成物
2−1−1.アルコキシシラン化合物
本発明で用いるアルコキシシラン化合物は、上述の如く、好ましくは、2種以上のアルコキシシラン類からなる加水分解基含有シラン類を含む。
アルコキシシラン類としては、テトラアルコキシシラン類、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類、トリアルキルアルコキシシラン類、これらの部分縮合物(オリゴマー等)などの加水分解基含有シラン類が挙げられる。なお、これらのアルコキシシラン類に含まれるアルコキシ基の炭素数は1〜5で、さらに好ましくは炭素数2〜4、アルキル基の炭素数は1〜6で、さらに好ましくは炭素数2〜4であることが好ましい。
本発明のシリカ系組成物には、これらを同種同士、又は任意の組み合わせにより2種以上を任意の比率で組み合わせることが重要である。
[テトラアルコキシシラン類]
テトラアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(t−ブトキシ)シラン、テトラ(n−ペントキシ)シラン、テトラ(イソペントキシ)シランなどが挙げられる。
また、これらのテトラアルコキシシランの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
後述の粗乾燥工程におけるシリカ系前駆体の安定性の観点では、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン並びにそれらのオリゴマーが好ましく、テトラエトキシシランがさらに好ましい。
ただし、テトラアルコキシシランは経時的に加水分解及び部分縮合を生じやすいため、テトラアルコキシシランのみを用意した場合でも、通常はそのテトラアルコキシシラン類の加水分解物及び部分縮合物がテトラアルコキシシランと共存することが多い。
[トリアルコキシシラン類]
トリアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン等の珪素原子に置換するアルキル基がハロゲン原子で置換されていてもよいトリアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン等の珪素原子に置換するアルキル基がハロゲン原子で置換されていてもよいモノアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン等のフェニルトリアルコキシシラン、また、珪素原子に置換するアルキル基が反応性官能基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキシプロピルトリメトキシシラン等の置換モノアルキルアルコキシシランが挙げられる。
また、これらのトリアルコキシシランの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
[ジアルコキシシラン類]
ジアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルジ−n−プロポキシシラン、エチルジイソプロポキシシラン等のモノアルキルジアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン等が挙げられる。
また、これらのジアルコキシシランの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
[トリアルキルアルコキシシラン類]
トリアルキルアルコキシシランの種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン等が挙げられる。
また、これらのトリアルキルアルコキシシランの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
[他の加水分解基含有シラン類]
他の加水分解基含有シランを挙げると、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリル)ベンゼン等の有機残基が2つ以上のトリアルコキシシリル基を結合したものが挙げられる。
また、これらの加水分解基含有シランの加水分解物及び部分縮合物(オリゴマー等)なども挙げられる。
[好ましい組み合わせ]
上記の加水分解基含有シラン類の中でも多孔質構造の骨格を強固にするためには、テトラアルコキシシラン、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランを含むことが好ましく、テトラアルコキシシランがより好ましい。
さらに、多孔質体の耐環境性の観点では、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を有するモノアルキル又はモノフェニルトリアルコキシシラン類及びジアルキルジアルコキシシラン類が好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエチルシランなどが好ましいものとして挙げられる。
また、ゾル−ゲル反応の制御という観点では、その組み合わせとしては、テトラアルコキシシラン類とモノアルキルトリアルコキシシラン類、或いはモノアルキルトリアルコキシシラン類同士が好ましい。
また、基材への濡れ性の観点では、テトラアルコキシシラン類とジアルキルジアルコキシシラン類、モノアルキルトリアルコキシシラン類とジアルキルジアルコキシシラン類の組み合わせが好ましい。
更に、表面の平滑性向上の観点からは、3種以上の加水分解基含有シラン類を用いることが好ましい。
[加水分解基含有シラン類の比率及び含有量]
本発明で用いるシリカ系組成物において、2種以上の加水分解基含有シラン類を組み合わせる比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に制限はないが、例えば、2種の加水分解含有シラン類を用いた場合、形成されるシリカ体の耐水性の観点から、加水分解基含有シラン類の珪素原子換算比で、2:8が好ましく、3:7がより好ましく、4:6がさらに好ましく、5:5が最も好ましい。この比率は、アルコキシシラン類、その加水分解物および縮合物の合計での比率である。
さらに、多孔質構造の骨格を強固する観点では、テトラアルコキシシラン類を含むことが有効であり、その比率は、組成物中のテトラアルコキシシラン類由来の珪素原子の割合が、組成物中の全加水分解基含有シラン類由来の珪素原子の割合に対して通常0.15(mol/mol)以上、好ましくは0.3(mol/mol)以上、より好ましくは0.35(mol/mol)以上であり、また、通常0.9(mol/mol)以下、好ましくは0.8(mol/mol)以下、より好ましくは0.7(mol/mol)以下となるような量であることが好ましい。前記の割合が低い場合、製膜時の硬化反応が遅くなり、結果として不均質なシリカ系多孔質体となり、耐摩耗性や耐水性に悪影響を与える可能性がある。一方、前記の割合が高い場合、得られるシリカ系多孔質体中の残存シラノール基が多くなり、製膜時の湿度などの外部環境に影響され易くなり、高い多孔度のシリカ系多孔質体が安定して製造できない可能性がある。
ここで、全加水分解基含有シラン類の珪素原子とは、シリカ系組成物に含有される上述のテトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、これらの加水分解物や部分縮合物(オリゴマー等)などの加水分解基含有シラン類が有する珪素原子の数の合計をいう。従って、シリカ系組成物が加水分解基含有シラン類以外に珪素原子を有する化合物を含有していたとしても、当該化合物が有する珪素原子は前記の割合の算出には関与しない。なお、前記の加水分解基含有シラン類の珪素原子の割合は、Si−NMRにより測定することができる。
シリカ系組成物中に、加水分解基含有シラン類を含めて、珪素を含有する化合物(珪素原子含有化合物)は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上含有されていることが好ましく、また通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下含有されていることが好ましい。珪素原子含有化合物の含有量が0.01重量%を下回ると、加熱工程においてシリカ前駆体の造膜性が低下する可能性があり、多孔質体の表面性が悪化し、外観不良になる恐れがある。一方、50重量%を超えると基材の平面性の影響を受けやすくなり、製膜工程におけるゾル−ゲル反応が面方向で不均一になる恐れがある。
また、得られるシリカ体の膜厚制御の観点から、シリカ系組成物中の前記珪素原子含有化合物や下記に説明する鋳型材などを含む固形分濃度は通常0.02重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。また通常50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。
シリカ系組成物の固形分濃度がこの上限より多いと相対的に水又は有機溶媒が少なくなり、逆にこの下限より少ないと相対的に水又は有機溶媒が多くなり、それぞれ後述する問題がある。
2−1−2.水
本発明で用いるシリカ系組成物は水を含有する。水はゾル−ゲル反応においては必須であるが、本発明ではシリカ系組成物の表面張力を制御し、製膜工程において良質なシリカ系前駆体を形成する上で重要な役割をする。用いる水の純度には特に制限はないが、通常は、イオン交換及び蒸留のうち、いずれか一方又は両方の処理を施した水を用いればよい。ただし、例えば光学用途積層体のような微小不純物を特に嫌う用途分野に適用する場合には、より純度の高いシリカ体が望ましいため、蒸留水をさらにイオン交換した超純水を用いることが好ましい。また、不純物の中でも100nm以上のコンタミ(汚濁物)はシリカ系組成物におけるゾル−ゲル反応の進行に影響を与える恐れがある。従って、例えば0.01μm〜0.5μmの孔径を有するフィルターを通して微粒子を除去した水を用いるのが好ましい。
水の使用量としては、シリカ系組成物中の全加水分解基含有シラン類由来の珪素原子に対する水の割合が、通常10(mol/mol)以上、好ましくは11(mol/mol)以上、より好ましくは12(mol/mol)以上、また、通常50(mol/mol)以下、好ましくは30(mol/mol)以下、より好ましくは20(mol/mol)以下となるようにする。この水の割合が上記下限よりも少ないと、ゾル−ゲル反応のコントロールが難しく、ポットライフも短く、また、不均質な状態で膜が形成され、得られるシリカ体の表面が荒れて耐摩耗性が劣る可能性がある。また、不均質な状態で膜が形成されているため耐湿熱性も劣る可能性がある。また、上記上限よりも多いと、ゾル−ゲル反応が進みにくくなるため反応に時間がかかることにより、得られるシリカ体の耐水性が低下する可能性がある。従って、シリカ系組成物中の水の量を上記範囲内に制御することは、得られるシリカ体の耐摩耗性、耐水性の向上のためには重要な条件である。
なお、シリカ系組成物中の水の量は、カールフィッシャー法(電量滴定法)により測定することができる。
2−1−3.有機溶媒
2−1−3−1.アルコール類
本発明で用いるシリカ系組成物は有機溶媒を含有する。有機溶媒としてはアルコール類が最も適している。アルコール類は前記加水分解基含有シラン類に対して親和性を有するため、多孔質体形成中のゾル−ゲル反応を均質に進行させるために重要な役割をする。さらに製膜工程に生じる気−液(組成物)界面、固(基材)−液(組成物)界面において安定した状態を保つことで、良質なシリカ系前駆体を支えることができる。
アルコール類の種類に制限は無い。好適なものの例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2-メチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリンなどの3価アルコール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコールなどが挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらの中でも、シリカ系組成物中に含有される加水分解基含有シラン類の加水分解反応の進行の観点から1価アルコール、2価アルコールが好ましく、1価アルコールがより好ましい。
また、得られるシリカ体の表面性の観点から、アルコール類としてメタノール、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールが、また後述のアルコール類以外の有機溶媒としてエチルアセテート、酢酸メチル、イソブチルアセテートなどが好ましい。従って、これらの中から選ばれるものを用いることが好ましい。
また、製膜工程におけるシリカ系前駆体の多孔質構造形成を容易にし、基材との濡れ性を向上させる観点から、有機溶媒の沸点は110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。このようなものとして例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、t−ブタノール、2−プロパノールなどが好ましい。
一方、加熱工程において多孔質構造の変形を抑制する観点から、有機溶媒の沸点は100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がより好ましい。このようなものとして例えば、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノールが好ましい。
さらに上記の沸点が異なるアルコール類を混合して用いてもよく、その際、各工程における共沸を抑制するために、組み合わせるアルコール類の沸点の差は5℃以上であることが好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。また、高沸点側のアルコール類の割合は、全有機溶媒中に通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上とする。なお、当該割合の上限は通常98重量%である。この上限を超えると、得られるシリカ体の表面性が低下する恐れがあり、上記下限を下回ると十分な効果が得られない危険性がある。
2−1−3−2.アルコール類以外の有機溶媒
本発明で用いるシリカ系組成物には上記アルコール類以外の有機溶媒を含有してもよい。基材との濡れ性や製膜工程における造膜性をより向上させるために、アルコール類以外の有機溶媒を用いることができる。
好適な有機溶媒の例を挙げると、酢酸メチル、エチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテル類又はエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジン等のウレア類;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
2−1−3−3.含有量
本発明のシリカ系組成物中の有機溶媒の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、通常0.05重量%以上、中でも0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましい。また、通常50重量%以下、中でも40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。有機溶媒の使用量が少なすぎても、多すぎても十分な効果を得られない可能性がある。
有機溶媒中のアルコール類の含有量は、通常0.1重量%以上、中でも1.0重量%以上、特に10重量%以上が好ましい。有機溶媒中のアルコール類の含有量が少な過ぎると、加水分解したシリカ成分が組成物中で不安定になり、凝集が起こる可能性がある。
2−1−4.鋳型材
本発明の製造方法で用いるシリカ系組成物は鋳型材を含有する。鋳型材は、シリカ系前駆体中においてシリカ成分と不規則な構造を形成し、220℃以下での加熱工程でその全部又は一部が除去されることで多孔質構造を形成するものである。
鋳型材の種類は本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリレート系高分子、ポリアンハイドライド系高分子、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、ポリエステル系高分子等の有機高分子が挙げられる。
(メタ)アクリレート系高分子は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、それらの誘導体より構成される。具体例として、ジエチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、ビニルピリジン、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジエチレングリコールメタクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、アミルアクリレート、2−メトキシプロピルアクリレート、2−エトキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−メトキシプロピルメタクリレート、2−エトキシプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアンハイドライド系高分子は、炭素数2以上の脂肪族ジカルボン酸から得られる。具体例として、ポリマロニックアンハイドライド、ポリスクシニックアンハイドライド、ポリオキサリックアンハイドライド、ポリグルタリックアンハイドライド等、それらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエーテル系高分子は、炭素数2以上のポリアルキレングリコール化合物から構成される。具体例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体等、それらのメチルエーテル、エチルエーテル;ポリエチレングリコールモノ−p−メチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ−p−エチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ−p−プロピルフェニルエーテル、それらのメチルエーテル、エチルエーテル;ポリエチレングリコールモノペンタン酸エステル、ポリエチレングリコールモノヘキサン酸エステル、ポリエチレングリコールモノヘプタン酸エステル、それらのメチルエーテル、エチルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネート系高分子は、炭素数2以上の脂肪族ポリカーボネートであり、具体例として、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネート、それらのメチルエーテル、エチルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系高分子は、炭素数2以上の脂肪族鎖及びエステル結合からなる化合物で構成されている。具体例として、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンスクシネート、ポリエチレングリタレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリプロピレンマロネート、ポリプロピレンスクシネート、ポリプロピレングリタレート、これらのメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多孔質構造形成の観点から、鋳型材の重量平均分子量は、通常500以上であり、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、5,000以上が特に好ましい。重量平均分子量が小さすぎると、加熱工程におけるシリカ成分のゾル−ゲル反応によって構造変形してしまい、膜歪みの増大や十分な多孔度が得られない可能性がある。一方、鋳型材の重量平均分子量の上限に制限はないが、通常100,000以下、好ましくは70,000以下、より好ましくは40,000以下である。重量平均分子量が大きすぎるとシリカ系組成物の増粘が急激になり、造膜性が低下する可能性がある。
シリカ系組成物のポットライフ、製膜工程におけるシリカ体の安定性の観点から、鋳型材としては(メタ)アクリル系高分子、ポリエーテル系高分子が好ましく、ポリエーテル系高分子がより好ましい。中でも加水分解基含有シラン類との親和性の観点から、ポリエーテル系高分子を構成する繰り返し単位のアルキレングリコール化合物の炭素数が2〜4のものが好ましく、2若しくは3のものがより好ましい。
さらに2種以上のアルコキシシラン類よりなる加水分解基含有シラン類と形成するシリカ系前駆体の構造を製膜工程から加熱工程まで安定に維持するためには、鋳型材としては、炭素数の異なるアルキレングリコール化合物を組み合わせた共重合体が好ましい。この際、共重合体中の、炭素数の短い、つまり加水分解基含有シラン類のシラノール基との親和性の高いアルキレングリコール化合物由来の構成単位の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常20重量%以上、好ましくは23重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、また、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。上記の範囲に収まることで、加水分解基含有シラン類のゾル−ゲル反応中において形成される加水分解基含有シラン類の加水分解物や縮合物に対して、鋳型材がさらに安定に存在することが可能となる。
本発明で用いるシリカ系組成物の鋳型材の含有量は、組成物中の全加水分解基含有シラン類由来の珪素原子に対する鋳型材の割合として、通常0.001(mol/mol)以上、好ましくは0.002(mol/mol)以上、より好ましくは0.003(mol/mol)以上、また、通常0.05(mol/mol)以下、好ましくは0.04(mol/mol)以下、より好ましくは0.03(mol/mol)以下となるようにする。鋳型材の割合が少な過ぎるとシリカ系組成物の安定性が低下するだけでなく、製造されるシリカ体に十分な多孔質構造を形成することができず、低屈折率を実現できないおそれがある。一方、鋳型材の割合が多すぎる場合には、シリカ系組成物中で過剰の鋳型材が分離、析出し、均一な組成物となり難い。
2−1−5.界面活性剤
本発明で用いるシリカ系組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては公知の何れのものを用いることもできる。特に基材の大面積化においては、シリカ系組成物に界面活性剤を添加することで、造膜性が著しく向上する場合がある。
界面活性剤を用いる場合、その種類、組み合わせ、比率には特に制限はなく、以下の界面活性剤のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
具体的な界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコールなどのノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、親油基がフッ化炭素基のフッ素系界面活性剤、親油基がシロキサン鎖のシリコーン系界面活性剤、親油基がアルキル基の界面活性剤等から2種以上が選択されることが好ましく、中でもノニオン系界面活性剤とフッ素系界面活性剤(特にパーフルオロアルキル基を含有するもの)との組合せ、及びノニオン系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤(特にシロキサン結合を含有するもの)との組合せから選択されることが好ましい。
これらの界面活性剤の親水基は、例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等が好ましい。また、ポリエーテル、ポリグリセリン等も好ましい。
フッ素系界面活性剤として、例えば、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、シリコーン系界面活性剤として、例えばSH21シリーズ、SH28シリーズ(東レ・ダウコーニング株式会社)などが挙げられる。
シリカ系組成物中の全加水分解基含有シラン類由来の珪素原子に対する界面活性剤の割合として、得られるシリカ体の表面性の観点から、通常0.001(mol/mol)以上、好ましくは0.002(mol/mol)以上、より好ましくは0.003(mol/mol)以上、また、通常0.05(mol/mol)以下、好ましくは0.04(mol/mol)以下、より好ましくは0.03(mol/mol)以下となるようにする。
2−1−6.触媒
本発明で用いるシリカ系組成物には触媒を含有していてもよく、触媒としては例えば上述した加水分解基含有シラン類の加水分解及び脱水縮合反応を促進させる物質を任意に用いることができる。
その例を挙げると、フッ酸、燐酸、ホウ酸、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、ステアリン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、クエン酸、コハク酸などの酸類;アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;ピリジンなどの塩基類;アルミニウムのアセチルアセトン錯体などのルイス酸類;などが挙げられる。
また、触媒の例としては、金属キレート化合物も挙げられる。この金属キレート化合物の金属種としては、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。金属キレート化合物の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
アルミニウム錯体としては、例えば、ジ−エトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−イソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
チタン錯体としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等を挙げることができる。
上述したものの中でも、加水分解基含有シラン類の加水分解及び脱水縮合反応をより容易に制御するためには、酸類若しくは金属キレート化合物が好ましく、酸類がさらに好ましい。
なお、触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、シリカ系組成物中の加水分解基含有シラン類に対して、通常0.001mol倍以上、中でも0.003mol倍以上、特には0.005mol倍以上が好ましく、また、通常0.8mol倍以下、中でも0.5mol倍以下、特には0.1mol倍以下が好ましい。触媒の使用量が少なすぎると加水分解反応が適度に進まず、製造後にシリカ体中にシラノール基などの活性基が残存しやすくなり、シリカ体の耐水性が低下する可能性があり、多すぎると反応制御が困難になり、製造中に触媒濃度が更に高くなることで、得られるシリカ体の表面性が低下する可能性がある。
なお、造膜性の観点でシリカ系組成物のpHが6以下であることが好ましい。シリカ系組成物のpHはより好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。この範囲にすることで製造時に基材の表面改質を同時に行うことができ、より造膜性が向上する傾向になる。
2−1−7.その他
本発明で用いるシリカ系組成物には、上述したアルコキシシラン化合物、水、有機溶媒、触媒、界面活性剤、鋳型材以外の成分を含有していても良い。また、当該成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
2−2.シリカ系組成物の調製
上述したシリカ系組成物を構成する各成分を混合して、シリカ系組成物を調製する。この際、各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分は、全量を一回で混合しても良く、2回以上に分けて連続又は断続的に混合しても良い。
ただし、従来、制御困難とされているゾル−ゲル反応を制御して、シリカ系組成物をより工業的に有利に調合するためには、以下の要領で混合することが好ましい。
即ち、2種以上のアルコキシシラン類からなる加水分解基含有シラン類、水及び有機溶媒(熟成後希釈を行う場合は、全有機溶媒の一部)を混合し、その混合物を一定のゾル−ゲル反応(熟成)させることで加水分解基含有シラン類をある程度加水分解及び脱水重縮合させる。そして、その混合物に鋳型材を混合してシリカ系組成物を調合する。これにより、ゾル−ゲル反応条件下で、加水分解基含有シラン類と鋳型材との親和性を維持することができる。なお、熟成は前記の混合物と鋳型材とを混合した後で行なってもよい。
触媒を用いる場合、触媒は水及び有機溶媒とともに混合することが好ましい。
前記熟成の際、加水分解基含有シラン類の加水分解・脱水重縮合反応を進めるためには、加熱することが好ましい。加熱条件として、用いる溶媒の沸点を超えなければ、特に制限は無いが、通常30℃以上、中でも40℃以上、50℃以上とすることがさらに好ましく、55℃以上とすることが最も好ましい。加熱温度が低すぎると反応時間が極度に長くなり、十分なゾル−ゲル反応が進まず、加水分解基含有シラン類と鋳型材との親和性が得られない可能性がある。一方、加熱温度の上限は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。90℃を超えると組成物中の鋳型材の分子運動が激しくなり、上記同様、加水分解基含有シラン類と鋳型材との親和性が制御できなくなる可能性がある。
また、加熱を伴う熟成時間に制限は無いが、通常10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、また、通常20時間以下、好ましくは15時間以下、より好ましくは8時間以下、さらに好ましくは4時間以下である。熟成時間が短すぎると均一に反応を進めることが難しくなる可能性があり、長すぎると溶媒の揮発が無視できなくなり、組成比が変化してシリカ組成物の安定性が低くなる可能性がある。
さらに、熟成時の圧力条件に制限は無いが、通常は常圧で熟成を行なうことが好ましい。圧力が変化すると溶媒の沸点も変化し、熟成中の溶媒が揮発(蒸発)することで、組成比が変化して、シリカ系組成物の安定性が低くなる可能性がある。
また、熟成後、塗布工程前に、用いる組成物に有機溶媒を更に混合して希釈することが好ましい。これにより、シリカ系組成物内でのゾル−ゲル反応速度を低下させることができ、シリカ系組成物のポットライフを長く維持することが可能となる。この場合、熟成前に、シリカ系組成物に用いる全有機溶媒の0.1重量%以上、特に0.5重量%以上、95重量%以下、特に98重量%以下の有機溶媒を混合し、熟成後に、有機溶媒の残部を更に混合して希釈することが好ましい。
また、シリカ体の製造における歩留まりの観点では、加熱を伴わない熟成を行うことが好ましい。加熱を伴わない熟成は、シリカ系組成物の調製後に行ってもよい。
シリカ系組成物のポットライフの観点では、更に、中和工程を行ったり、触媒除去工程を行ってもよい。
2−3.シリカ体の製造方法
本発明のシリカ体の製造方法は、上述のシリカ系組成物を基材上に湿式製膜した後、220℃以下で加熱することを特徴とし、上記シリカ系組成物を用いてこのような比較的低温の焼成を行う本発明の方法によれば、屈折率が1.40以下と低く、かつ基材やシリカ体へ積層する上層との密着性に優れたシリカ体を製造することができる。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
2−3−1.製膜工程
本発明のシリカ体の製造方法では、前述の組成を有するシリカ系組成物を基材上に展開して湿式製膜することで、シリカ系前駆体を製造する。なお、以下において、シリカ系組成物を「塗布液」と称す場合がある。
[基材]
基材としては特に制限はなく、用途に応じて任意のものを用いることができる。中でも、汎用材料からなる透光基材を用いることが好ましい。なお、透光基材とは、所定の波長の光の透過性が高い基材をいうこととし、該波長は、透光基材の用途に応じて適宜選択される。また、透光基材は性能に影響を及ぼさない限り、散乱やヘーズを有していてもよい。なお、該波長は、可視光の範囲に限定されないが、レンズや、ディスプレイ、太陽電池、太陽熱発電などの光デバイス、建材や自動車の内外装の用途においては、可視光線領域の波長に対して高い透過性を有することが好ましい。
基材の材料の例を挙げると、珪酸ガラス、高珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス(青板ガラス)、カリ石灰ガラス、バリウムガラスなどの珪酸塩ガラス、硼珪酸ガラスやアルミナ珪酸ガラス、燐酸塩ガラスなどのガラス及びこれらの強化ガラス;ポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ビスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素含有樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を任意の組合せで用いることができる。
中でも寸法安定性の観点では、ガラス、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂が好ましく、耐候性の観点から、フッ素含有樹脂、ソーダ石灰ガラス、芳香族ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂が好ましい。さらに、耐衝撃性の点から強化ガラス、芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも好ましい。
また、本発明のシリカ体は比較的低温の焼成で製造されるものであるため、耐熱性の低い樹脂基材上に積層して形成することが可能である。例えば、ガラス転移温度(Tg)が比較的低いポリメチルメタクリレート、架橋アクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリシクロオレフィン等の非晶性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂なども基材として用いることができ、Tgが100℃以下、更に70℃以下、更には65℃以下の基材を使用することも可能である。
例えば基材としてレンズを用いる場合、通常、レンズの片面もしくは両面に本発明のシリカ体を被覆形成して、レンズ表面での反射を抑制することで、明るさの向上やゴーストの抑制が実現する。
また、例えば基材としてディスプレイに樹脂基材を用いる場合、その両面若しくは片面に本発明のシリカ体を被覆形成することで、輝度等が向上させる。
本発明のシリカ体は樹脂基材への密着性に優れているため、このような用途に好適である。
また、例えば、基材として太陽電池用カバーガラスを用いる場合、通常、太陽電池の光エネルギーを取り入れる面、すなわち受光面側の被覆に本発明のシリカ体を用いた場合、本発明のシリカ体は透光基材表面の反射防止層として機能し、発電出力の向上を実現する。本発明のシリカ体は耐久性に優れているため、このような用途に好適である。
なお、単結晶太陽電池、多結晶太陽電池などの近赤外光でも光電変換可能な太陽電池に用いられる太陽電池用カバーガラスを透光基材として用いる場合には、通常のソーダ石灰ガラスでは含有される2価の鉄イオンによって近赤外領域に吸収を持つため、鉄イオン含有量を低減することで光透過性を高めることが好ましく、さらに耐衝撃強度が優れた白板強化ガラスを上記透光基材として用いることがより好ましい。
本発明に用いられる基材の寸法は任意である。ただし、透光基材として板状の基板を用いる場合には、当該基板の厚さは、機械的強度及びガスバリア性の観点から、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、1mm以上がより好ましい。また、当該厚さは、軽量化及び光線透過率の観点から、80mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下が特に好ましい。
さらに透光基材の大きさ(面積)としては、光学的な効果を得る観点から0.1m2以上が好ましく、0.5m2以上がより好ましく、1m2以上が特に好ましい。上限には特に制限はないが、通常100m2以下が好ましく、50m2以下がより好ましい。
また、基材のシリカ体形成面の中心線平均粗さも任意である。ただし、形成するシリカ体の製膜性の観点から、シリカ体形成面の基材の中心線平均粗さは10nm以下が好ましく、8nm以下がより好ましく、5nm以下が更に好ましく、3nm以下が特に好ましい。
この中心線平均粗さは、JIS−B0601:1994に従った汎用の表面粗さ計(例えば、(株)東京精密社製サーフコム570A)により測定される。
[製膜方法]
本発明において、シリカ系組成物の湿式製膜方法に特に制限はなく、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、テーブルコーター、アプリケーター、ドクターブレードコーター、を用いる方法、ディップコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。
製膜方法は、用いる基材の種類、形状、サイズにより適当なものを選択することができる。中でも得られるシリカ体の均質性の観点で、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ダイコート法が好ましく、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ダイコート法が特に好ましい。
例えば、シリカ系前駆体の膜厚の均一性の観点からディップコート法が好ましく、ディップコート法においては、任意の速度で、基材を塗布液に浸漬した後引き上げればよい。この際の引き上げ速度に制限は無いが、通常0.01mm/秒以上、好ましくは0.05mm/秒以上、より好ましくは0.1mm/秒以上、また、通常50mm/秒以下、好ましくは30mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下である。引き上げ速度が遅すぎたり速すぎたりすると、シリカ系前駆体の膜厚にムラができる可能性がある。一方、基材を塗布液中に浸漬する速度に制限はないが、通常は、引き上げ速度と同程度の速度で基材を塗布液中に浸漬することが好ましい。さらに、基材を塗布液中に浸漬してから引き上げるまでの間、適当な時間浸漬を継続してもよい。この浸漬を継続する時間に制限は無いが、通常1秒以上、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。この時間が短すぎると基材へのシリカ系前駆体の密着性に劣る可能性があり、長すぎると浸漬中に膜が形成されて形成されるシリカ体の平滑性に劣る可能性がある。
さらに、膜厚精度の観点からスピンコート法が好ましく、スピンコート法でシリカ系前駆体を形成する場合、回転速度は、通常10rpm以上、好ましくは50rpm以上、より好ましくは100rpm以上、また、通常100000rpm以下、好ましくは50000rpm以下、より好ましくは10000rpm以下である。回転速度が遅すぎると、形成されるシリカ系前駆体の膜厚にムラができる可能性があり、速すぎると溶媒の気化が進みやすくなりアルコキシシラン化合物の加水分解等の反応が十分進まず、形成されるシリカ体の耐水性に劣る可能性がある。
さらに、基材形状の多様性の観点から、基材に対して塗布液を霧状に噴出するスプレーコート法が好ましく、この場合、用いるスプレーノズルの方式も特に制限はなく、各々のスプレーノズルの利点を考慮して選択すればよい。スプレーノズルの代表的な例としては、二流体スプレーノズル(二流体霧化方式)、超音波スプレーノズル(超音波霧化方式)、回転式スプレーノズル(回転霧化方式)などが挙げられる。シリカ系組成物の霧化と気体流による霧化粒子の基材への搬送とを独立に制御できる点では、超音波スプレーノズル、及び回転式スプレーノズルが好ましく、シリカ系組成物の液性維持の観点では二流体スプレーノズルが好ましい。
シリカ系組成物の霧化粒子の搬送に利用する気体流の気流速度は、用いるシリカ系組成物の種類等により適宜調整することが好ましいが、通常0.01m/秒以上で、通常5m/秒以下、好ましくは4m/秒以下、より好ましくは3m/秒以下である。気流速度が速過ぎると、基材上に形成されるシリカ系前駆体が不均質になる可能性がある。
またこの際に用いる気体としては特に限定されないが、窒素等の不活性ガスが好ましい。またスプレーノズルと基材との距離は基材のサイズにより適宜調整することが好ましいが、通常3cm以上、好ましくは6cm以上、より好ましくは9cm以上で、通常100cm以下、好ましくは80cm以下、より好ましくは50cm以下である。この範囲を超えると膜厚ムラが発生する可能性がある。
また、基材サイズの大型化の観点からダイコート法が好ましく、特に製膜時のゾル−ゲル反応をシリカ系組成物の組成に依らず、安定した状態で進行させて、良好なシリカ系前駆体とするためには、シリカ系組成物の吐出部と基材との距離を制御し、さらに該シリカ系組成物を流延することが好ましい。
ダイコート法は、シリカ系組成物を一定流量で供給し、それをスリットを経てダイリップより吐出することにより基材表面上にシリカ系組成物を塗布してシリカ系前駆体を形成させるものであり、基材を一定速度で搬送させることにより、目的とするシリカ体を形成し得るものである。
ダイコート法による場合のスリットの幅には特に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下である。この下限値を下回るとコンタミにより目詰まりを起こす恐れがあり、上限値を超えると均一な膜を製膜できない恐れがある。
ダイリップ(スリット)と基材との間隔(距離)であるGapには特に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上で、また、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50μm以下の範囲にすることにより、良質なシリカ系前駆体を得ることができる。
吐出流量には特に制限はないが、通常1〜100cc/分、好ましくは1〜50cc/分、より好ましくは1〜20cc/分、さらに好ましくは2〜10cc/分、最も好ましくは3〜6cc/分である。この下限値を下回ると流延時のスリット速度精度を厳密にしなければいけなくなるため、基材の大面積化が難しくなる。一方、上限値を超えるとシリカ系組成物に対流が生じ、安定なシリカ系前駆体を形成することができなくなる。
塗工速度には特に制限はないが、通常5〜300mm/秒、好ましくは10〜200mm/秒、より好ましくは20〜100mm/秒、さらに好ましくは30〜80mm/秒、最も好ましくは40〜60mm/秒である。この下限値を下回ると製膜工程におけるシリカ系前駆体の流延条件を精密に制御しなければならず、生産性を損なう恐れがあり、上限値を超えると製膜工程においてシリカ系前駆体にせん断応力がかかり、鋳型材とシリカ成分とで構成される構造を破壊する恐れがある。
塗工停止時間には特に制限はないが、通常0.1〜3秒、好ましくは0.1〜2秒、より好ましくは0.2〜1秒、さらに好ましくは0.2〜0.8秒、最も好ましくは0.3〜0.6秒である。この下限値を下回ると基材とシリカ系前駆体の界面状態が安定せず、基材との密着性が低下したり、膜表面のレベリングが進まず、膜の外観が悪化する恐れがあり、上限値を超えると基材とシリカ系前駆体の界面でのゾル−ゲル反応が進行しすぎてしまい、流延時に局所的な欠陥が生じる恐れがある。
塗工距離には特に制限はないが、通常0.05〜500m、好ましくは0.1〜300m、より好ましくは0.5〜100m、さらに好ましくは0.8〜50m、最も好ましくは1〜5mである。この下限値を下回ると製膜工程における流延初期の不安定な状態を前駆体全体に及ぼす恐れがあり、上限値を超えるとシリカ系組成物中の局所的な不均一構造が得られるシリカ体の表面性に影響を与える恐れがある。
ダイリップと基板支持台の水平出し精度は、通常±5μm以下、好ましくは±2μm以下、より好ましくは±1μm以下とすることで再現性よく塗布することができる。
使用し得るダイの形状としては、シリカ系組成物を横方向に均一に分配し得るものであれば特に制限はない。例としては、一般のフィルムキャスティング時に使用されるTダイ形状のもの、あるいはフィッシュテイルダイ形状のもの、あるいはコートハンガーダイ形状のもの等が挙げられる。さらには、ダイ横方向への分配をより均一にしやすくするために、ダイリップ間隔の調整機構を有するものであることが望ましい。
湿式製膜により形成されるシリカ系前駆体の膜厚(塗布膜厚)には特に制限はないが、通常0.1〜100μmであり、0.5〜80μmが好ましく、1〜55μmがより好ましく、5〜40μmがさらに好ましく、10〜25μmが最も好ましい。この範囲を外れると製膜工程におけるシリカ系組成物のゾル−ゲル反応の進行を制御することが難しくなり、基材との濡れ性の影響を受けやすくなったり、それに伴いシリカ系前駆体のレベリング効果が劣り、シリカ系前駆体の外観が悪化する恐れがある。
例えば、ダイコート法による場合、該シリカ系前駆体膜厚は吐出液量と基材の移動速度で制御する機構が好ましく、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下の範囲にすることにより、塗布ムラの少ない均一なシリカ体を得ることができる。
[製膜工程の環境]
製膜工程を行う際の相対湿度には特に制限はないが、相対湿度を制御することによりさらに安定した連続製膜が可能となることから、例えば、相対湿度が通常20%RH以上、好ましくは25%RH以上、より好ましくは30%RH以上、さらに好ましくは35%RH、また、通常85%RH以下、好ましくは80%RH以下、より好ましくは75%以下RHの環境下においてシリカ系前駆体の製膜を行なうようにすることが好ましい。
製膜工程を行なう際の温度に制限は無いが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上、最も好ましくは25℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さら好ましくは60℃以下、特に好ましくは50℃以下、とりわけ好ましくは40℃以下である。シリカ系前駆体を製造する際の温度が低すぎるとゾル−ゲル反応の進行が遅くなり、均質なシリカ系前駆体を得られない恐れがあったり、溶媒が気化しにくくなり膜の表面平滑性が低下したりする可能性がある。また、この温度が高すぎると縮合反応が急速に起こることで、未加水分解の加水分解基含有シラン類が多く残存するため、膜ひずみが大きくなり、例えば、得られるシリカ体の耐久性に影響を与える恐れがある。
また、製膜工程を行う際の圧力に制限は無いが、通常0.05MPa以上、好ましくは0.08MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、また、通常0.3MPa以下、好ましくは0.2MPa以下、より好ましくは0.15MPa以下である。圧力が低すぎると溶媒が気化しやすくなり膜化後のレベリング効果が得られず膜の平滑性が低くなる可能性があり、高すぎると溶媒が気化しにくくなり膜の表面性が低くなる可能性がある。
さらに、製膜工程を行う際のクリーン度には特に制限はないが、基材上に存在するコンタミを核とした膜欠陥や核周辺でのゾル−ゲル反応の進行を抑制する観点から、通常、雰囲気中の塵埃径0.5μm以上の塵埃数は3,000,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、5,000以下がさらに好ましい。
また、製膜工程における雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中でシリカ系前駆体の製膜を行なっても良く、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中でシリカ系前駆体の製膜を行なってもよい。
[前処理]
本発明の製造方法では、シリカ系組成物を基材上に湿式製膜するに先立って、シリカ系組成物の濡れ性、製造されるシリカ系前駆体の密着性の観点から、基材に表面処理を施してもよい。そのような基材の表面処理の例を挙げると、シランカップリング処理、アンカーコート処理、コロナ処理、UVオゾン処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、表面処理は、1種のみを行なってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行なってもよい。なお、シランカップリング処理として、後述するシリル化剤を用いることもできる。
また、製膜工程は一回で行なってもよいが、二回以上に分けて行なってもよい。例えば、後述する粗乾燥工程を介して、製造工程を二回以上行なうようにすれば、積層構造を有するシリカ体を形成することが可能である。これは、例えば屈折率が異なる層を積層したい場合などに有用である。
[後処理]
本発明の製造方法では、上述の製膜工程の後に、シリカ系前駆体中のアルコール類又は触媒を除去することを目的として、シリカ系前駆体を粗乾燥させる粗乾燥工程を行なってもよい。粗乾燥工程を行なうことで、シリカ系前駆体中のアルコール類や触媒が除去されることで、前駆体中に存在する鋳型材とシリカ成分が安定した状態で不規則な構造を形成し、シリカ系前駆体の構造を安定化することができる。
粗乾燥工程における粗乾燥の手法は制限されない。例えば加熱乾燥、減圧乾燥、通風乾燥等が挙げられる。これらは1種を単独で実施してもよく、2種以上を組み合わせて実施してもよい。
粗乾燥の手段も任意である。例えば粗乾燥を加熱乾燥により行なう場合、加熱乾燥の手段の例として、ホットプレート、オーブン、赤外線照射、電磁波照射等が挙げられる。また通風加熱乾燥の手段としては、例えば送風乾燥オーブン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
粗乾燥時の温度は制限されないが、通常は室温以上であることが好ましい。特に加熱乾燥を行なう場合、その温度は通常20℃以上、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、最も好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、最も好ましくは100℃以下の範囲が望ましい。なお、加熱乾燥時の温度は一定でもよいが、変動してもよい。
粗乾燥時の圧力も制限されないが、特に減圧乾燥を行なう場合、通常は常圧以下、好ましくは10kPa以下、より好ましくは1kPa以下がより好ましい。
粗乾燥時の湿度も制限されないが、シリカ系前駆体の吸湿を防ぐため、通常は60%RH程度以下とすることが望ましく、好ましくは常圧で30%RH以下、或いは真空状態(湿度0%RH)とすることが望ましい。
粗乾燥時の雰囲気も制限されず、大気雰囲気でも、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気でも、真空雰囲気でもよい。これらはシリカ系前駆体の特性等を考慮して選択すればよい。但し、通常はクリーンな雰囲気であることが好ましい。
粗乾燥時間も制限されず、シリカ系前駆体中のアルコール類や水が除去できれば任意であるが、粗乾燥時の温度・圧力・湿度等の条件や、シリカ系組成物中に含まれるアルコール類や溶媒の沸点、プロセス速度、シリカ系前駆体の特性等を考慮して決定することが好ましい。この時間は、通常1秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。
2−3−2.加熱工程
上述した製膜工程の後に、シリカ系前駆体を220℃以下の温度で加熱焼成することで、シリカ体とする加熱工程を行なう。この220℃以下の温度での加熱により、鋳型材と加水分解基含有シラン類からなるシリカ成分により形成された構造から、鋳型材を除去し、さらにシリカ成分をある程度ゾル−ゲル反応させて硬化させることで、前駆体で形成した構造を維持して安定した多孔質構造を得ることができる。さらに得られたシリカ体は低い屈折率を有するため、高い光学特性が実現される。
加熱の方式は特に制限されず、例えば加熱炉(ベーク炉)内に基材を配置してシリカ系前駆体を加熱する炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基材を置き、そのプレートを介してシリカ系前駆体を加熱するホットプレート方式、基材の上面側及び/又は下面側にヒーターを配置し、ヒーターから電磁波(例えば赤外線等)を照射して、シリカ系前駆体を加熱する方式等が挙げられる。
加熱温度の下限には制限は無く、シリカ系前駆体をある程度硬化させ、シリカ体とすることが可能であれば任意であるが、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。加熱温度の上限は220℃以下、好ましくは200℃以下である。加熱温度が低すぎると鋳型材が多孔質体中に残存し、ゾル−ゲル反応も不十分となり十分な屈折率が得られない恐れがある。一方、加熱温度が高すぎるとゾル−ゲル反応の進行が進み密着性に寄与する水酸基やアルコキシ基が少なくなり、基材やシリカ体へ積層する上層との密着性が不十分になってしまうとともに、過度にシリカネットワークの架橋が進行することで、形成されるシリカ体の柔軟性が損なわれる可能性がある。
なお、加熱工程において、前記の加熱温度で連続的に加熱を行なってもよいが、断続的に加熱を行なうようにしてもよい。
加熱を行なう際の昇温速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1℃/分以上、好ましくは10℃/分以上、また、通常500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下で昇温する。昇温速度が遅すぎると加熱工程でのゾル−ゲル反応は安定して進行するものの、構造内の鋳型材が熱運動することで、製膜工程で形成した構造が壊れていく恐れがある。一方、昇温速度が速すぎると、基材と形成されるシリカ体との熱膨張の差による膜の歪みが大きくなって局所的なクラックの原因となる可能性がある。
加熱を行なう時間は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。加熱時間が短すぎると加熱温度を高くする必要があるため、安定して多孔質構造を得ることが難しくなる可能性があり、長すぎると膜に欠陥があった場合にそこを起点とした多孔質構造の破壊の原因となる可能性がある。
加熱を行なう際の圧力は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、減圧環境としてもよく、加熱工程では、圧力を、通常0.2MPa以下、好ましくは0.15MPa以下、より好ましくは0.1MPa以下とする。一方、圧力の下限に制限は無いが、通常10−4MPa以上、好ましくは10−3MPa以上、より好ましくは10−2MPa以上である。圧力が低すぎると加水分解基含有シラン類のゾル−ゲル反応よりもアルコール類の揮発が進行し、吸湿性の高いシリカ体となりやすく、光学特性の環境依存性に影響を与える恐れがある。
加熱を行なう際の雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、乾燥ムラの生じにくい環境が好ましい。特に大気雰囲気下で加熱を行なうことが好ましい。また、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で加熱を行なうことも可能である。
以上のように、加熱処理を行なうことによりシリカ体を得ることができるが、加熱工程の後に、必要に応じて冷却工程や後処理工程等を実施することも可能である。
2−3−3.冷却工程
冷却工程とは、加熱工程で高温となったシリカ体を冷却する工程である。この際、冷却速度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1℃/分以上、好ましくは0.5℃/分以上、より好ましくは0.8℃/分以上、更に好ましくは1℃/分以上、また、通常100℃/分以下、好ましくは50℃/分以下、より好ましくは30℃/分以下、更に好ましくは20℃/分以下である。冷却速度が遅すぎると連続コーティングを実現するには製造コストが高くなる可能性があり、速すぎると基材の熱歪みが大きくなるため、基材全体に対して均一精密な冷却制御が必要となる。
また、冷却工程における雰囲気は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、大気中に限らず、例えば、真空環境、不活性ガス環境であってもよい。さらに、温度及び湿度に制限は無いが、通常は常温・常湿で冷却することが好ましい。
2−3−4.後処理工程
後処理工程で行なう具体的な操作に制限は無いが、例えば、得られたシリカ体をシリル化剤で処理することで、シリカ体の表面をより機能性に優れたものにすることができる。例えば、シリル化剤で処理することにより、シリカ体に撥水性、撥油性、防汚性、防曇性、光触媒能、滑雪性などを付与することが可能である。
シリル化剤としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類;トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類;ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等のフッ化アルキル基やフッ化アリール基を有するアルコキシシラン類;などが挙げられる。なお、シリル化剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シリル化の具体的操作としては、例えば、シリル化剤をシリカ体に塗布したり、シリル化剤中にシリカ体を浸漬したり、シリカ体をシリル化剤の蒸気中に曝したりすることにより、行なうことができる。
また、後処理の別の例としては、本発明のシリカ体を多湿条件下で熟成することで、多孔質構造中に存在する未反応シラノールを減らすことができ、これにより、シリカ体の耐環境性をより向上させることも可能である。さらには、シリカ体の上に他の無機酸化物膜を形成することで、機械強度や耐アルカリ性を向上させることも可能である。
2−3−5.洗浄工程
後処理工程として、得られたシリカ体の表面を水や有機溶媒により洗浄し、表面のチリやほこり(不純物)を取り除くこともできる。表面を洗浄することにより、シリカ体上へ積層する上層との密着性が良好になる可能性がある。洗浄に使用する有機溶媒としては、アルコール類が良い。アルコール類の種類に特に制限はないが、好適なものの例を挙げると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリンなどの3価アルコール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコールなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
2−3−6.その他の工程
本発明のシリカ体の製造方法では、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した各工程の工程前、工程中及び工程後の任意の段階で、任意の他の工程を行なってもよい。
2−4.積層体
本発明のシリカ体は、通常、直接又は他の層を介して基材上に設けられて本発明のシリカ体として用いられるが、通常は本発明のシリカ体は基材上に膜状に設けられる。
また、本発明のシリカ体は、他の層と組み合わせることもできる。
この場合、組み合わせる他の層としては、用途に応じて適宜選択され、本発明のシリカ体を他の層と組み合わせることで、前述の表面反射防止膜の他に、紫外線反射膜、近赤外線反射膜、赤外線反射膜等、さらには、ディスプレイ等の発光デバイスに適用することで光取り出し膜(又は輝度向上膜)としても用いることができる。
組み合わせる他の層の具体例として、高屈折率層、散乱層、金属層、偏光層、熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、光触媒層、耐腐食層、耐指紋性層、接着層、ハード層、ガスバリア層、導電性層、アンチグレア層、拡散層等が挙げられる。
これらの層は、樹脂、金属酸化物、金属、染料等の機能に応じた物質により形成されるが、特に水酸基等の極性基を有していることが、シリカ体との接着の観点から好ましい。
例えば、使用される樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
また、金属や金属酸化物等としては、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、窒化チタン、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ハフニウム、フッ化ランタンや電極材料に使用されるようなアルミニウム、錫、マグネシウム、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金又は、これらを含む合金、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、又は、これらを主成分とした材料が挙げられる。
また、これらの層はウエットコーティング(液相法)により形成されたもののみならず、蒸着やスパッタリング等のドライコーティング(気相法)により形成したものであってもよい。
これらの層は、基材のいずれの面に形成されていてもよく、またシリカ体上に積層されていてもよい。なお、これらの層は積層体中に、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組合せで用いてもよい。また、特性に影響を及ぼさない限り、上記の各構成間に他の層があっても構わない。
また、本発明の積層体には、基材のシリカ体が形成された面とは反対側の面に電極を有することもできる。基材のシリカ体が形成された面とは反対側の面に電極を有する積層体とすることで、ディスプレイや太陽電池といった光デバイスの部材として好適に用いることが可能となる。また、電極は直接又は他の層を介して基材に設けることができる。
電極材としては、アルミニウム、錫、マグネシウム、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、又はこれらを含む合金、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛などが挙げられる。中でも透明性の観点で酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、又はこれを主組成としたものが好ましく、これらは1種単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
またその膜厚は通常10nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。また通常500nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。電極の膜厚が10nmを下回ると膜に欠陥ができ易くなる傾向があり、500nmを超えると透明性を損なう可能性がある。
本発明の光学用途積層体を太陽電池として構成した一例を図1に示す。例えば、本発明の光学用途積層体を太陽電池として構成する場合には、図1に示す如く、通常シリカ体6及び基材5を、太陽電池の光エネルギーを取り入れる受光面側の被覆に用いる構成とする。
更に、太陽電池では、通常は一対の電極1及び3を設け、当該電極1及び3の間に半導体層2が位置するように構成する。
また、基材5と電極3との間に中間層4があってもよい。さらには、図示しない熱線遮断層、紫外線劣化防止層、親水性層、防汚性層、防曇層、防湿層、粘着層、ハード層、導電性層、反射層、アンチグレア層、拡散層等を組み合わせてもよい。
ここで、太陽電池とは、光起電力効果を利用して、光エネルギーを電力に変換することのできる素子又は装置であり、例として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などのシリコン系太陽電池、CIS系太陽電池、CIGS系太陽電池、GaAs系太陽電池などの化合物太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、多接合型太陽電池、HIT太陽電池が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
半導体層2は、半導体材料を含有する層である。太陽電池では、通常、光を取り込むことで半導体層2で電気エネルギーが生じ、その電気エネルギーを取り出すことで電池として機能するようになっている。
この際、半導体層2に用いられる半導体の種類に制限は無い。また、半導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、半導体層2には、太陽電池としての機能を著しく損なわない限りその他の材料が含有されていても良い。
また、半導体層2は、単一の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の膜によって構成されていても良い。具体的な型式でいえば、太陽電池における半導体層としては、例えば、バルクヘテロ接合型、積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型、ハイブリッド型などのいずれであってもよい。
なお、半導体層2の厚さに特に制限はないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の寸法で形成される。
一方、電極1,3は、導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。電極1,3は、半導体層2で生じた電気エネルギーを取り出すためのものである。ただし、半導体層2の種類に応じて一対の電極1,3のうち、少なくとも一方は透明である(即ち、太陽電池が発電するために半導体層が吸収する光を透過させる)ことが好ましい。
透明な電極材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理により特性(電気特性や濡れ特性等)を改良してもよい。
ただし、本発明の光学用途積層体を太陽電池として構成する場合には、シリカ体6から半導体層2までのC光の全光線透過率を、80%以上とすることが好ましく、83%以上とすることがより好ましく、86%以上とすることがさらに好ましく、90%以上とすることが特に好ましい。光の透過率が高いほど太陽電池が効率よく発電できるからである。また、前記全光線透過率は理想的には100%であるが、光学用途積層体の表面での部分反射を考慮すると通常99%以下である。
本発明のシリカ体は、低屈折率を有するとともに耐摩耗性、耐水性に優れるため、このように太陽電池に非常に適した性能を発揮することが可能である。
また、本発明の光学用途積層体を太陽電池として構成する場合には、シリカ体6及び基材5のC光の全透過率を、80%以上とすることが好ましく、83%以上とすることがより好ましく、86%以上とすることがさらに好ましく、90%以上とすることが特に好ましい。光の透過率が高いほど太陽電池が効率よく発電できるからである。また、前記全光線透過率は理想的には100%であるが、光学用途積層体の表面での部分反射を考慮すると通常99%以下である。
本発明のシリカ体は、低屈折率を有するとともに耐水性に優れるため、このように太陽電池に非常に適した性能を発揮することが可能である。
なお、本発明の光学用途積層体を太陽電池以外の光学用途に用いる場合であっても、通常は、シリカ体の光線透過率は高いことが好ましい。これにより、本発明の光学用途積層体に、光学用途部材を構成する部材として有効な光学性能と性能の安定性とを備えさせることができるからである。
また、本発明の光学用途積層体は、耐摩耗性、耐水性に優れ、平滑な表面を有する点において、エレクトロルミネッセンス(EL)素子にも好適である。
本発明の光学用途積層体を用いたエレクトロルミネッセンス素子は、本発明のシリカ体、2つの電極、及び上記電極の間にエレクトロルミネッセンス層を有するものであればよく、通常、(i)電極(陰極)、(ii)エレクトロルミネッセンス層、(iii)電極(陽極)、(iv)本発明のシリカ体膜、及び(v)透光体がこの順に配置される構成をとること等が可能である。例えば、透光体としてガラス基材を用い、その上にシリカ体膜を形成後、電極を積層してゆくこともできる。(i)〜(v)の順を維持するものであれば、それぞれの層の間に他の層を有していてもよい。例えば(iii)電極(陽極)と(iv)本発明のシリカ体膜との間に、光散乱層及び/又は高屈折率層を入れること等も可能である。
(i)陰極として用いられる材料は、仕事関数の低い金属が好ましく、特に、アルミニウム、錫、マグネシウム、インジウム、カルシウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、白金、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等で形成されるが、特にアルミニウムで形成することが好ましい。陰極の厚さは、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上である。また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。
(ii)エレクトロルミネッセンス層は、電界が印加されることにより発光現象を示す物質により成膜されたものであり、その物質としては、付活酸化亜鉛ZnS:X(ただし、Xは、Mn、Tb、Cu、Sm等の付活元素である。)、CaS:Eu、SrS:Ce、SrGa2S4:Ce、CaGa2S4:Ce、CaS:Pb、BaAl2S4:Eu等の従来使用されている無機EL物質、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体、芳香族アミン類、アントラセン単結晶等の低分子色素系の有機EL物質、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の共役高分子系の有機EL物質等、従来使用されている有機EL物質を用いることができる。エレクトロルミネッセンス層の厚さは、通常10nm以上、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上であり、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下とされる。エレクトロルミネッセンス層は、蒸着やスパッタリング等の真空成膜プロセス、あるいはキシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン等を溶媒とする塗布プロセスにより形成することが可能である。
(iii)陽極としては、錫を混合した酸化インジウム(通常ITOと呼ばれている。)、アルミニウムを混合した酸化亜鉛(通常AZOと呼ばれている。)、インジウムを混合した酸化亜鉛(通称IZOと呼ばれている。)等の複合酸化物薄膜が好ましく用いられるが、特にITOであることが好ましい。
陽極は、可視光に対して透明性を有する透明電極層とすることも可能であり、透明電極層として形成される場合、可視光波長領域における光線透過率は大きいほど好ましい。この際、可視光波長領域における光線透過率の下限としては通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。また上限としては通常99%以下である。また陽極の電気抵抗は、面抵抗値として小さいほど好ましく、通常1Ω/□(オームパースクウェア;□=1cm2)以上とされ、通常100Ω/□以下、好ましくは70Ω/□以下、より好ましくは50Ω/□以下とされる。
また陽極を透明電極とする場合の厚さとしては、上述した光線透過率及び面抵抗値を満足するものであれば特に限定されないが、通常0.01μm以上であり、また導電性の観点から好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。また上限としては通常10μm以下であるが、光線透過率の観点から1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。
また、本発明の光学用途積層体には、例えば、他の光学機能層及び保護膜を備えていてもよい。他の光学機能層は、用いる用途により適宜選択することができる。また、これらの層は1層のみでもよく、2以上の層を任意に組み合わせて用いてもよい。
本発明の光学用途積層体は、本発明のシリカ体を備えるため、屈折率が低く、基材とシリカ体及びシリカ体とシリカ体に積層される上層との密着性に優れる。
本発明のシリカ体は、レンズやディスプレイ、太陽電池、太陽熱発電などの光デバイス、建材や自動車の内外装に用いられる低反射層、反射防止層、外観向上を目的とした光制御層などの光学機能層に好適に用いることができる。さらに、本発明のシリカ体は、多孔質構造を利用して、抗菌剤の担持や反応基修飾によるバイオチップ等に使用することもできる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[実施例1]
<シリカ系組成物の調製>
テトラエトキシシラン6.78g、メチルトリエトキシシラン6.92g、エタノール(沸点78.3℃)2.30g、水5.56g及び、0.3重量%の塩酸水溶液13.0gを混合し、60℃のウォーターバス中で30分、更に室温で30分攪拌して、混合物(A)を得た。
次に、鋳型材として、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドトリブロックポリマー(ALDRICH製、重量平均分子量5650、エチレンオキサイド部位の割合30重量%)6.14gとエタノール3.20gとを混合した混合液(B)に、前記の混合物(A)を添加して、室温で60分攪拌し、0.45μmのフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)で濾過することにより混合物(C)を調製した。
この混合物(C)10mlと希釈溶媒として1−ブタノール(沸点117.3℃)40mlとを混合し、室温で30分攪拌することでシリカ系組成物I(pH3.5)を得た。
<水蒸気吸着特性の測定>
得られたシリカ系組成物Iを120mmφのガラスシャーレに6ml注ぎ、室温下、相対湿度40%の条件にて溶媒を除去して乾燥させた。その後、200℃で2時間、大気雰囲気で加熱焼成して、粉末を得た。
得られた粉末について、25℃での相対水蒸気圧と吸着量の関係を日本ベル(株)社製「ベルソープ18」を用いて測定した。その結果。水蒸気吸着特性は図2のようになり、相対水蒸気圧0.3≦P/P0≦0.9の水蒸気吸着量差Δは、0.152g/gで、相対水蒸気圧P/P0=0.3における水蒸気吸着量は、0.013g/gであった。
<固体Si-NMRの測定>
水蒸気吸着特性の測定と同様にして得られた粉末について、Varian社製「VarianNMRSystems400WB」を使用して測定と解析を行なった。その結果、Q値({(Q3×1+Q2×2+Q1×3)+(T2×1+T1×2)+(D1×1)}/{(Q4+Q3+Q2+Q1)+(T3+T2+T1)+(D2+D1)}×100)は、21.9であった。
<製膜工程>
シリカ系組成物Iを、基材として透明ポリイミドフィルム(三菱ガス化学製「ネオプリム L−1000」、Tg260℃、厚さ100μm)を使用して、スピンコーター(ミカサ製「MS−A150」)で塗布した。スピンコート条件は、回転数500rpm、回転時間120秒、塗布液量1mlとした。
<加熱工程>
シリカ系組成物Iを塗布した基材を、200℃に設定したオーブンに置き、大気雰囲気下で10分間加熱することにより、基材上に外観の良好なシリカ体を得た。
<屈折率、膜厚算出>
得られたシリカ体について、分光膜厚計(大塚電子製FE−3000)により、反射率を測定した結果、基材上に得られたシリカ体の最小反射率は波長550nmにおいて0.21%であり、フレネルの式を用いて屈折率を算出した結果、1.30であった。また、算出した屈折率と前記の波長より膜厚を算出した結果、200nmであった。
これらの結果を表2にまとめて示す。
[実施例2]
<シリカ系組成物の調製>
実施例1において混合物(C)40mlと希釈溶媒として1−ブタノール36mlとを混合した以外は実施例1と同様にして、シリカ系組成物IIを得た。
<加熱工程>
基材として青板ガラス(厚さ1.5mm)を用い、シリカ系組成物としてシリカ系組成物IIを用い、加熱時間を15分にした以外は実施例1と同様の操作を行って、シリカ体を製造し、各評価を行なった。結果を表2に示す。
このシリカ系組成物IIは、実施例1のシリカ系組成物Iと固形分組成が同一であり、200℃の加熱焼成による粉末性能は、実施例1と同等の結果となる。
[実施例3]
<シリカ系組成物の調製>
実施例1と同様にして、シリカ系組成物Iを得た。
<加熱工程>
基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂(株)製「ダイアホイル O100E」、Tg76℃、厚さ188μm)を用い、シリカ系組成物としてシリカ系組成物Iを用い、基材を200℃のホットプレートに置いて、加熱時間を1分にした以外は実施例1と同様の操作を行って、シリカ体を製造し、各評価を行なった。結果を表2に示す。
このシリカ系組成物Iは、実施例1のシリカ系組成物Iと同一であり、200℃の加熱焼成による粉末性能は、実施例1と同等の結果となる。
[比較例1]
<水蒸気吸着特性の測定>
実施例2と同様にして調製したシリカ系組成物IIの加熱を450℃で2時間行なったこと以外は、実施例1の水蒸気吸着特性測定と同様に行った。結果を図2に示す。
<固体Si-NMRの測定>
加熱を450℃で2時間行なった以外は、実施例1の固体Si−NMRの測定と同様に行った。結果を表2に示す。
<製膜工程>
シリカ系組成物IIを、基材として実施例2で用いたと同様の青板ガラスを使用して、スピンコーター(ミカサ製「MS−A150」)で塗布した。スピンコート条件は、回転数500rpm、回転時間120秒、塗布液量1mlとした。
<加熱工程>
シリカ系組成物IIを塗布した基材を、450℃のホットプレート上に置き、大気中で2分間加熱することにより、基材上に外観の良好なシリカ体を得た。
<屈折率、膜厚算出>
実施例1と同様にして屈折率と膜厚を算出した。結果を表2に示す。
なお、基材として、透明ポリイミドフィルム(三菱ガス化学製「ネオプリムL−1000」)を使用して上記と同様にしてシリカ体の製造を試みたが、基材が変形し、シリカ体を積層することはできなかった。
[比較例2]
<シリカ系組成物の調製>
テトラエトキシシラン3.47g、メチルトリメトキシシラン2.27g、エタノール(沸点78.3℃)4.6g、水0.60g、及び塩酸6.1×10−5gを混合し、60℃のウォーターバス中で90分攪拌することで、混合物(D)を調製した。
次に、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイドトリブロックコポリマー(BASF製「PLURONIC F127」、重量平均分子量11,500、エチレンオキサイド部位の割合は70重量%)2.52gとエタノール26.07gとを混合溶解し、さらに、水2.40gと塩酸0.0048gとを混合した混合物(E)に、前記の混合物(D)を添加し、室温で3日間攪拌し、0.45μmフィルター(ワットマンジャパン(株)社製)で濾過することにより、シリカ系組成物IIIを得た。
<水蒸気吸着特性の測定>
得られたシリカ系組成物IIIを120mmφのガラス製シャーレに6.3ml注ぎ、室温下、相対湿度40%の条件にて溶媒を除去して乾燥させた。その後、シャーレを130℃に設定したホットプレート上に置き、20分間加熱して溶媒を乾燥させた。その後、400℃で5時間、大気雰囲気中で加熱焼成して、粉末を得た。
得られた粉末について25℃での相対水蒸気圧と吸着量との関係を日本ベル(株)社製「ベルソープ18」を用いて測定した。結果を図2及び表2に示す。
<固体Si-NMRの測定>
水蒸気吸着特性の測定と同様にして得られた粉末をVarian社製「VarianNMRSystems400WB」を使用して測定と解析を行なった。結果を表2に示す。
<製膜工程>
シリカ系組成物IIIを、基材として実施例2で用いたと同様の青板ガラスを使用して、スピンコーター(ミカサ製「MS−A150」)で塗布した。スピンコート条件は、回転数1000rpm、回転時間60秒、塗布液量1mlとした。
<加熱工程>
シリカ系組成物IIIを塗布した基材を、130℃に設定したオーブンに置き、大気雰囲気下で10分間加熱した後、設定温度を400℃にして1時間加熱して、基材上に外観の良好なシリカ体を得た。
<屈折率、膜厚算出>
実施例1と同様にして屈折率と膜厚を算出した。結果を表2に示す。
なお、表2には、各例で得られたシリカ体の密着性の評価結果を併記した。シリカ体と基材との密着性は、クアラテック手袋(アズワン株式会社製)に500gの荷重をかけて、表面をこすった時の傷の付き具合により調べた。傷の付いていない場合を○とし、傷付いた場合を×とした。
シリカ体と上層(接着剤)との密着性は、シリカ体表面に、テープ(scotch、住友スリーエム株式会社製)を貼り付けて、テープを剥した後の状態により確認した。テープが剥れない、若しくはテープの接着剤層が残った場合を○とし、テープが剥れた場合を×とした。
また、表2には、各例で製造されたシリカ体の面積、厚さ、シリカ含有量、XRDパターンの回析ピークの有無と、以下の方法で調べた算術表面粗さRa、静的接触角、耐湿熱性、平均空隙率についても記載した。
<算術表面粗さRa>
接触式表面粗さ計により、1走査距離0.50μmの条件で3回測定した平均値を算出した。
<静的接触角>
First Ten社製接触角測定器FTÅ125を用いて測定した。シリカ体表面は接触角を測定する直前に除電送風機にて静電気を除電した。また一回の測定に400μlの脱イオン水をシリカ体に専用のシリンジを用いて滴下し、専用ソフトFTÅ32を用いて接触角を測定した。このとき、シリカ体の表面上の無作為に5点以上の場所について測定を行い、それぞれの接触角の平均の値をシリカ体の接触角とした。
<耐湿熱性>
シリカ体については、波長550nmにおける屈折率n1を事前に測定後、温度85℃、湿度85%RHの条件下に静置し、500時間後に取り出す。その後、波長550nmにおける屈折率n2を再度測定する。
このときの屈折率差の絶対値Δn=|n2−n1|が0.001〜0.15を○、それ以外を×とした。また、膜にクラックが発生している場合も×とした。比較例2では、膜にクラックが発生した。
<空隙率>
シリカ体がシリカと空気より形成されているとして、得られたシリカ体の屈折率から、シリカの屈折率(1.45)と空気の屈折率(1.00)より算出した。
表2より、本発明のシリカ体は低屈折率で基材及びその上層との密着性に優れることが分かる。