JP5243065B2 - 反射防止膜及び光学素子 - Google Patents

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本発明は、基材の表面に形成される反射防止膜に関し、特に低い屈折率を有し、広い波長範囲の光線に対する反射防止性に優れた均一な反射防止膜及びその反射防止膜を有する光学素子に関する。
光ピックアップ装置や半導体装置の対物レンズ、眼鏡レンズ、光学用反射鏡、ローパスフィルタ等の光学基材には、光透過率を向上させることを目的として、反射防止膜が施される。従来、反射防止膜は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的方法により形成されてきた。しかしこれらの成膜方法は真空機器を必要とするためコストが高いという欠点を有する。
単層の反射防止膜は、基材より小さく、かつ空気等の入射媒質より大きい屈折率を有するように設計される。屈折率1.5程度のガラスからなるレンズの反射防止膜は、屈折率1.2〜1.25が理想的であると言われている。しかし、物理的方法により形成できる反射防止膜において、このような理想的な屈折率を有する物質は無いので、屈折率1.38のMgF2が反射防止膜材料として汎用されている。
しかし近年、幅広い波長領域の光線を使用する光学機器も製作されるようになってきており、幅広い波長範囲で優れた光学特性を有する反射防止膜が望まれるようになってきた。しかも光学素子は複数のレンズ群により構成されることが多いので、各レンズ面での反射による透過光量の損失が多くなるのを防ぐために、一般的に多層構成の反射防止膜を設けている。多層反射防止膜は、各層の界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計される。多層構成の反射防止膜は、さらにコストが高いという欠点を有する。
そこで、脱水重縮合を用いたゾル−ゲル法を利用した湿式法(ディップコート法、ロールコート法、スピンコート法、フローコート法、スプレーコート法等)により、反射防止膜を形成する方法が提案されている。
例えば特開2006-215542号(特許文献1)は、基材の表面に順に形成された緻密層及びシリカエアロゲル多孔質層からなり、屈折率が基材からシリカエアロゲル多孔質層まで順に小さくなっている反射防止膜を提案している。このシリカエアロゲル多孔質層は、(i) ゾル状又はゲル状の酸化珪素を有機修飾剤と反応させて有機修飾ゾル又は有機修飾ゲルとし、(ii) 前記有機修飾ゾル又は前記有機修飾ゲルをゾル状にしたものを緻密層表面にコーティングし、得られた有機修飾シリカゲル層にスプリングバック現象を生じさせ、有機修飾シリカエアロゲル層にし、(iii) 得られた有機修飾シリカエアロゲル層を熱処理して有機修飾基を除去することにより形成する。
シリカエアロゲル多孔質層は屈折率が1.20程度と小さく、それを有する反射防止膜は幅広い波長範囲で優れた反射防止特性を有する。しかもゾル−ゲル法により作製できることから、コストパフォーマンスにも優れている。しかし一層屈折率の低い反射防止膜が望まれる。
そこで「化学工業」,化学工業社,2005年9月,第56巻,第9号,pp.688-693(非特許文献1)は、高い光透過性を有するメソポーラスシリカナノ粒子集積膜として、塩酸酸性条件でテトラエトキシシラン、カチオン性界面活性剤(塩化セチルトリメチルアンモニウム)及び非イオン性界面活性剤[HO(C2H4O)106-(C3H6O)70-(C2H4O)106H]の混合溶液をエージングした後、アンモニア水を加えることにより、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、この溶液を基材の表面にコーティングし、乾燥し、焼成することによりカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去して得られるメソポーラスシリカナノ粒子集積膜を記載している。しかし非特許文献1のメソポーラスシリカナノ粒子集積膜は、原料における非イオン性界面活性剤/テトラエトキシシランのモル比が約0.009と比較的小さく、焼成温度が600℃と高いので、1.1以下の低屈折率を有さない。
そこで特開2006-130889号(特許文献2)は、屈折率が小さく、可視光領域から近赤外領域において90%以上の高い透過率を有する透明無機多孔体被膜として、基板表面に形成され、ナノスケールの微細孔を有し、屈折率が1.05〜1.3のメソポーラスシリカ薄膜を提案している。このメソポーラスシリカ薄膜は、界面活性剤、テトラエトキシシラン等のシリカ原料、水、有機溶媒及び酸又はアルカリの混合液を基材に塗布し、有機−無機複合体被膜を作製した後、この被膜を乾燥し、光酸化させて有機成分を除去することにより製造される。
日本国特許第3668126号(特許文献3)は、低い誘電率(多孔度が高く、屈折率が小さいことによる)を有するセラミックフィルムを形成する方法として、テトラエトキシシラン等のセラミック前駆体、触媒、界面活性剤および溶媒からなる液体を調製し、これを基板に塗布し、溶媒及び界面活性剤を除去して多孔性シリカフィルムを形成する方法を提案している。
しかし、特許文献2のメソポーラスシリカ薄膜及び特許文献3の多孔性シリカフィルムは、塗膜の乾燥時に界面活性剤のミセルの周囲にシリケートのネットワークを形成させ、加水分解・重縮合を進行させて、そのネットワークを固形薄膜化させるプロセスにより形成されるので、塗布後の加水分解・重縮合に長時間かかり、不均一である。
特開2006-215542号公報 特開2006-130889号公報 日本国特許第3668126号明細書 「化学工業」,化学工業社,2005年9月,第56巻,第9号,pp.688-693
従って、本発明の目的は、低い屈折率を有し、広い波長範囲の光線に対する反射防止性に優れた均一な反射防止膜及びその反射防止膜を有する光学素子を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含み、かつ非イオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比が所定値以上の溶液中でアルコキシシランを加水分解した後、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去して得られるメソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなるメソポーラスシリカ多孔質膜を、基材又はその上に形成された緻密膜の表面に形成すると、低い屈折率を有し、広い波長範囲の光線に対する反射防止性に優れた均一な反射防止膜が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第一の反射防止膜は、基材の表面に形成されたメソポーラスシリカナノ粒子が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤/前記アルコキシシランのモル比が2.5×10 -2 〜5×10 -2 である混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、(iii) 得られた溶液を前記基材の表面にコーティングし、(iv) 乾燥して前記溶媒を除去し、(v) 焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去してなり、前記メソポーラスシリカナノ粒子はメソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列したヘキサゴナル構造を有し、前記メソポーラスシリカ多孔質膜は窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有する構造を有し、前記孔径分布曲線において、粒子内細孔径によるピークが2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径によるピークが5〜200 nmの範囲内にあり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率は1.10以下であることを特徴とする。
本発明の第二の反射防止膜は、基材の表面に順に形成された緻密膜及びメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜がメソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜は、(1) 蒸着法により無機材料からなる単層又は多層の緻密膜を前記基材の表面に形成した後、(2)(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤/前記アルコキシシランのモル比が2.5×10 -2 〜5×10 -2 である混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、(iii) 得られた溶液を前記単層又は多層の緻密膜の表面にコーティングし、(iv) 乾燥して前記溶媒を除去し、(v) 焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去してなり、前記メソポーラスシリカナノ粒子はメソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列したヘキサゴナル構造を有し、前記メソポーラスシリカ多孔質膜は窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有する構造を有し、前記孔径分布曲線において、粒子内細孔径によるピークが2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径によるピークが5〜200 nmの範囲内にあり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率は1.10以下であることを特徴とする。
前記メソポーラスシリカ多孔質膜の物理膜厚が15〜500 nmであるのが好ましい。前記メソポーラスシリカ多孔質膜の空隙率が75〜90%であるのが好ましい。
第二の反射防止膜の好ましい例では、前記緻密膜は単層であり、屈折率が前記基材から前記メソポーラスシリカ多孔質膜まで順に小さくなっている。第二の反射防止膜の別の好ましい例では、前記緻密膜は多層であり、屈折率の異なる複数の膜を組合せてなる。
前記カチオン性界面活性剤として塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いるのが好ましい。前記非イオン性界面活性剤として式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるブロックコポリマーを用いるのが好ましい。前記カチオン性界面活性剤/前記非イオン性界面活性剤のモル比を4〜8とするのが好ましい。
前記酸性触媒として塩酸を用いるのが好ましい。前記塩基性触媒としてアンモニアを用いるのが好ましい。前記アルコキシシランとしてテトラエトキシシランを用いるのが好ましい。前記焼成を500℃以下の温度で行うのが好ましい。
本発明の光学素子は、上記反射防止膜を光学基材の表面に有することを特徴とする。
本発明の反射防止膜は、1.10以下の低い屈折率を有し、広い波長範囲の光線に対する反射防止性に優れ、均一である。このような優れた反射防止特性を有する本発明の反射防止膜をレンズに設けると、その中心部と周辺部での透過光量又は透過光色の異なりや、レンズ周辺部での反射光に起因するゴースト等の問題を著しく低減できる。このような優れた特性を有する光学素子を、カメラ、内視鏡、双眼鏡、プロジェクター等に使用すると、画像の質を著しく向上させることができる。さらに本発明の反射防止膜は、製造コストも低く、歩留まりが良好である。
[1] 反射防止膜を有する光学素子
反射防止膜は光学基材(単に基材という)の表面に形成される。第一の反射防止膜はメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、第二の反射防止膜は基材側から順に形成された緻密膜及びメソポーラスシリカ多孔質膜からなる。
(1) 第一の反射防止膜を有する光学素子
図1は、基材1の表面に形成された第一の反射防止膜2を示す。第一の反射防止膜2はメソポーラスシリカ多孔質膜20からなる。図1に示す例では平板を基材1としているが、本発明はこれに限定されず、レンズ、プリズム、ライトガイド、フィルム又は回折素子でも良い。基材1の材料は、ガラス、結晶性材料及びプラスチックのいずれでも良い。基材1の材料の具体例として、BK7、LASF01、LASF016、LAK14、SF5等の光学ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英、青板ガラス、白板ガラス等が挙げられる。これらの基材1の屈折率は1.45〜1.85の範囲内である。
メソポーラスシリカ多孔質膜20は、メソポーラスシリカナノ粒子が集合してなる。図2は、メソポーラスシリカナノ粒子の一例を示す。この粒子200は、メソ孔200aを有するシリカ骨格200bからなり、メソ孔200aがヘキサゴナル状に規則的に配列した多孔質構造を有する。但し、メソポーラスシリカナノ粒子200はヘキサゴナル構造のものに限定されず、キュービック構造又はラメラ構造のものでもよい。よってメソポーラスシリカ多孔質膜20は、これらの三種の構造の粒子のいずれか又はこれらの混合物からなるものであればよいが、ヘキサゴナル構造の粒子200からなるのが好ましい。メソポーラスシリカナノ粒子200は、規則性に優れたメソ孔200aが均一に形成されているので、メソポーラスシリカ多孔質膜20は優れた透明性及び耐クラック性を有する。
メソポーラスシリカナノ粒子200の平均粒径は、200 nm以下が好ましく、20〜50 nmがより好ましい。この平均粒径が200 nm超だと、膜厚調整が困難であり、薄膜設計のフレキシビリティーが低い。しかもメソポーラスシリカ多孔質膜20の反射防止特性及び耐クラック性も低い。メソポーラスシリカナノ粒子200の平均粒径は動的光散乱法により求める。メソポーラスシリカ多孔質膜20の屈折率は空隙率に依存し、大きな空隙率を有するものほど屈折率が小さい。メソポーラスシリカ多孔質膜20の空隙率は75〜90%であるのが好ましい。この範囲内の空隙率を有するメソポーラスシリカ多孔質膜20の屈折率は1.05〜1.10である。この空隙率は76.5〜85%がより好ましい。
図3に示すように、メソポーラスシリカ多孔質膜20は、窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有するのが好ましい。詳しくは、メソポーラスシリカ多孔質膜20について窒素の等温脱着曲線を求め、これをBJH法で解析し、横軸を細孔直径とし、縦軸をlog微分細孔容積として表される孔径分布曲線が二つのピークを有するのが好ましい。BJH法は、例えば「メソ孔の分布を求める方法」(E. P. Barrett,L. G. Joyner, and P. P. Halenda , J.Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))に記載されている。log微分細孔容積は、細孔直径Dの対数の差分値d(logD)に対する差分細孔容積dVの変化量であり、dV/d(logD)で表される。小孔径側の第一ピークが粒子内細孔の径を示し、大孔径側の第二ピークが粒子間細孔の径を示す。メソポーラスシリカ多孔質膜20は、粒子内細孔径が2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径が5〜200 nmの範囲内にある分布を有するのが好ましい。
粒子内細孔容積V1と粒子間細孔容積V2の比は1/15以上〜1/2未満であるのが好ましい。この比が上記範囲であるメソポーラスシリカ多孔質膜20は1.10以下の小さな屈折率を有する。この比は1/10以上〜1/2未満であるのがより好ましい。比V1/V2は、第一及び第二のピーク間の最小値(縦軸座標の最小値)の点Eを通り、横軸と平行な直線をベースラインL0とし、各々のピークの最大傾斜線(最大傾斜点における接線)L1〜L4とベースラインL0との交点A〜Dにおける横軸座標(DA〜DD)を求め、各々BJH法による解析データにより、DA〜DBの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV1とし、DC〜DDの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV2とし、これらの比を算出することにより求める。
メソポーラスシリカ多孔質膜20の好ましい物理膜厚は15〜500 nmであり、より好ましくは100〜150 nmである。
(2) 第二の反射防止膜を有する光学素子
図4は、第二の反射防止膜の一例を示す。第二の反射防止膜2は、基材1側から順に形成された緻密膜21及びメソポーラスシリカ多孔質膜20からなる。メソポーラスシリカ多孔質膜20は上記と同じでよい。
屈折率は基材1から緻密膜21、メソポーラスシリカ多孔質膜20及び入射媒質Aの順に小さくなっているのが好ましい。緻密膜21及びメソポーラスシリカ多孔質膜20の光学膜厚d1及びd2は設計波長λdに対してλd/5〜λd/3の範囲であるのが好ましい。光学膜厚は膜の屈折率と物理膜厚との積である。また薄膜の構成を決定する際に用いる設計波長λdは、光学素子に使用する波長に応じて適宜設定し得るが、例えば可視域[CIE(国際照明委員会)の定義による380〜780 nmの波長域]のほぼ中心波長であるのが好ましい。
屈折率が基材1から順に小さくなるように設けた緻密膜21及びメソポーラスシリカ多孔質膜20の二層からなる反射防止膜2において、各層21及び20の光学膜厚を設計波長λdに対してλd/5〜λd/3の範囲とすると、反射防止膜2の光学膜厚D(光学膜厚d1及びd2の合計)は2λd/5〜2λd/3の範囲となり、基材1から入射媒質Aにかけての光学膜厚に対する屈折率の変化は、図5に示すように滑らかな階段状となる。反射防止膜2の光学膜厚Dが2λd/5〜2λd/3の範囲であると、反射防止膜2表面での反射光と、反射防止膜2と基材1の境界での反射光との光路差が設計波長λdのほぼ1/2となるので、これらの光線が干渉により打ち消し合う。基材1から入射媒質Aにかけての光学膜厚に対する屈折率の変化を滑らかな階段状とすると、光学膜厚に対する屈折率の変化を滑らかにでき、各層の境界において起こる入射光の反射を広い波長域で低減できる。さらに各層の界面で生じる反射光は、各層に入射する光線と干渉することによって相殺し合う。したがって、反射防止膜2は広い波長域及び広い入射角範囲の光線に対して優れた反射防止効果を示す。各層21及び20の光学膜厚がλd/5〜λd/3の範囲でないと、基材1から入射媒質Aにかけての光学膜厚に対する屈折率の変化が滑らかでない。このため、各層21及び20の界面における反射率が大きくなってしまう。緻密膜21及びメソポーラスシリカ多孔質膜20の光学膜厚d1及びd2は設計波長λdに対して各々λd/4.5〜λd/3.5であるのがより好ましい。
基材1と緻密膜21との間、緻密膜21とメソポーラスシリカ多孔質膜20との間、及びメソポーラスシリカ多孔質膜20と入射媒質Aとの間の屈折率差R1,R2,R3はそれぞれ0.02〜0.4であるのが好ましく、これにより光学膜厚に対する屈折率の変化を直線に概略近似できる程度の滑らかさのものとすることができる。したがって反射防止膜2の反射防止効果が一層向上する。
緻密膜21は、金属酸化物等の無機材料からなる層(「無機層」と言う)である。無機層に使用可能な無機材料の例としてフッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、クライオライト、チオライト及びこれらの混合物が挙げられる。
第二の反射防止膜2の緻密膜21は多層であってもよい。図6は、多層の緻密膜21を有する第二の反射防止膜の一例を示す。この例の反射防止膜2は、緻密膜21が第一層210〜第四層214の五層構成である以外、図4に示す二層構成の反射防止膜2と同じである。ただし多層の緻密膜21は五層構成に限定されない。多層の緻密膜21は、各層の界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計するのが好ましい。具体的には、屈折率の異なる複数の膜を適宜組合せることにより、反射防止効率をより高めることが可能である。多層の緻密膜21を形成する場合、材料として例えばSiO2、TiO2、Al2O3、MgF2、SiN、CeO2、ZrO2、HfO2、Ta2O5等を用いることができる。多層構成の緻密膜21の具体例として、真空蒸着法によりTiO2とMgF2とを交互に四〜六層コートした構成、及びTiO2とSiO2とを交互に四〜六層コートした構成が挙げられる。
[2] 反射防止膜の形成方法
(1) メソポーラスシリカ多孔質膜の形成
メソポーラスシリカ多孔質膜は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子(以下「界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体」とよぶことがある)の溶液(ゾル)を調製し、(iii) ゾルを基材又は緻密膜表面にコーティングし、(iv) 乾燥して溶媒を除去し、(v) 焼成してカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去することにより形成することができる。
(a) 原料
(a-1) アルコキシシラン
アルコキシシランはモノマーでも、オリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するのが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシランを出発原料とすることにより、優れた均一性を有するメソポーラスシリカ多孔質膜が得られる。アルコキシシランモノマーの具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては、上述のモノマーの重縮合物が好ましい。アルコキシシランオリゴマーはアルコキシシランモノマーの加水分解・重縮合により得られる。アルコキシシランオリゴマーの具体例として、一般式RSiO1.5(ただしRは有機官能基を示す。)により表されるシルセスキオキサンが挙げられる。
(a-2) 界面活性剤
(i) カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤としては、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルトリエチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルメチルアンモニウム、ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとして、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウムとして、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルキルメチルアンモニウムとして、塩化ドデシルメチルアンモニウム、塩化セチルメチルアンモニウム、塩化ステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンジルメチルアンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウムとして、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
(ii) 非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤として、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーとして、例えば式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるものが挙げられる。このブロックコポリマーの市販品として、例えばPluronic(登録商標、BASF社)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。
(a-3) 触媒
(i) 酸性触媒
酸性触媒の例として、塩化水素酸(塩酸)、硫酸、硝酸等の無機酸やギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
(ii) 塩基性触媒
塩基性触媒の例としてアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。好ましいアミンの例としてアルコールアミン及びアルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン等)が挙げられる。
(a-4) 溶媒
溶媒としては純水を用いる。
(b) 形成方法
(b-1) 酸性条件での加水分解・重縮合
純水に酸性触媒を添加して酸性溶液を調製し、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を添加し混合液を調製した後、アルコキシシランを添加し、加水分解・重縮合する。酸性溶液のpHは約2とするのが好ましい。アルコキシシランのシラノール基の等電点は約pH2であるので、pH2付近では酸性溶液中でシラノール基が安定的に存在する。溶媒/アルコキシシランのモル比は30〜300にするのが好ましい。このモル比を30未満とすると、アルコキシシランの重合度が高くなり過ぎる。一方300超とすると、アルコキシシランの重合度が低くなり過ぎる。
カチオン性界面活性剤/溶媒のモル比は1×10-4〜3×10-3とするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は、1.5×10-4〜2×10-3がより好ましい。
カチオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は1×10-1〜3×10-1が好ましい。このモル比を1×10-1未満とすると、メソポーラスシリカナノ粒子のメソ構造(六方配列構造)の形成が不十分となる。一方3×10-1超とすると、メソポーラスシリカナノ粒子の粒径が大きくなり過ぎる。このモル比は、1.5×10-1〜2.5×10-1がより好ましい。
非イオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は2.5×10-2〜5×10-2である。このモル比を2.5×10-2未満とすると、メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率が1.10超となる。
カチオン性界面活性剤/非イオン性界面活性剤のモル比は4〜8とするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は5〜7がより好ましい。
アルコキシシランを含む溶液を1〜24時間程度エージングする。具体的には、20〜25 ℃で溶液を強撹拌する。エージングにより加水分解・重縮合が進行し、シリケート(アルコキシシランを出発物質とするオリゴマー)を含有するゾルが生成する。
(b-2) 塩基性条件での加水分解・重縮合
得られた酸性ゾルに、塩基性触媒を添加して溶液を塩基性にし、さらに加水分解・重縮合し、反応を完結させる。これにより平均粒径が200 nm以下のメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。溶液のpHは9〜12となるように調整するのが好ましい。
塩基性触媒を添加することにより、カチオン性界面活性剤ミセルの周囲にシリケート骨格が形成されて、規則的な六方配列が成長することによりシリカとカチオン性界面活性剤とが複合した粒子が形成される。この複合粒子は成長に伴って表面の有効電荷が減少するので、表面に非イオン性界面活性剤が吸着する。その結果、非イオン性界面活性剤で被覆され、かつカチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子(粒子形状は図2を参照されたい)の溶液(ゾル)が得られる[例えば今井宏明,「化学工業」,化学工業社,2005年9月,第56巻,第9号,pp.688-693]。このメソポーラスシリカナノ粒子の形成過程において、非イオン性界面活性剤の吸着により、上記複合粒子の成長が抑制されるので、以上のような二種類の界面活性剤を用いた調製方法により得られるメソポーラスシリカナノ粒子は、平均粒径が200 nm以下で、かつメソ細孔の規則性に優れている。
(b-3) 塗布
界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の溶液(ゾル)を基材の表面にコーティングする。ゾルのコーティング方法として、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法、リバースコート法、フレキソ法、グラビアコート法、印刷法及びこれらを併用する方法等が挙げられる。得られる多孔質膜の厚さは、例えば、スピンコート法における基材回転速度やディッピング法における引き上げ速度の調整、塗布液の濃度の調整等により制御することができる。スピンコート法における基材回転速度は、例えば約500〜約10,000 rpmとするのが好ましい。
ゾルの濃度及び流動性が適切な範囲になるように、塗布の前にさらに分散媒としてゾルと同じpHの塩基性水溶液を加えても良い。塗布液中の界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の割合は10〜50質量%とするのが好ましい。この割合の範囲外だと、均一な薄膜を形成し難い。
(b-4) 乾燥
塗布したゾルから溶媒を揮発させる。塗布膜の乾燥条件は特に制限されず、基材の耐熱性等に応じて適宜選択すればよい。自然乾燥してもよいし、50〜200℃の温度で15分〜1時間熱処理して乾燥を促進してもよい。
(b-5) 焼成
乾燥した膜を焼成してカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去することにより、メソポーラスシリカ多孔質膜を形成する。焼成温度は300℃以上〜500℃以下が好ましい。焼成温度を500℃超とすると、屈折率が1.10超となる恐れがある。焼成温度の上限は450℃以下がより好ましい。焼成温度の下限は350℃とするのがより好ましい。焼成時間は1〜6時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。焼成中にメソポーラスシリカ粒子同士の結合及びメソポーラスシリカ粒子と基材との結合が強くなるので、基材に対する密着性及び耐クラック性が向上する。
(2) 緻密膜の形成
無機層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法等により形成することができる。
蒸着法を用いる場合、無機材料からなる蒸着材を加熱により蒸発させ、真空中で基材に付着させて無機層を形成する。蒸着材を蒸気にする方法は特に制限されず、例えば通電加熱型ソースを用いる方法、E型電子銃により電子ビームを当てる方法、ホローカソード放電により大電流電子ビームを当てる方法、レーザパルスを当てるレーザアブレーション等が挙げられる。基材はその膜形成面が蒸着材に対向するように設置し、その状態で蒸着中に回転させるのが好ましい。蒸着時間、加熱温度等を適宜設定することにより、所望の厚さを有する層を形成することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
pH2の塩酸(0.01N)40 gに、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(関東化学株式会社製)1.21 g(0.088 mol/L)、及びブロックコポリマーHO(C2H4O)106-(C3H6O)70-(C2H4O)106H(商品名「Pluronic F127」、Sigma-Aldrich社)7.58 g(0.014 mol/L)を添加し、23℃で1時間撹拌し、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)4.00 g(0.45 mol/L)を添加し、23℃で3時間撹拌した後、28質量%アンモニア水3.94 g(1.51 mol/L)を添加してpHを11とし、23℃で0.5時間撹拌した。得られた界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の溶液を、屈折率が1.518のBK7ガラスからなる平板(φ30 mm)の表面にスピンコート法により塗布し、80℃で0.5時間乾燥した後、400℃で3時間焼成した。得られた反射防止膜の特性を表1に示す。屈折率及び物理膜厚の測定には、レンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を使用した。
実施例2
上記ブロックコポリマーの濃度を0.016 mol/Lとした以外実施例1と同様にして、界面活性剤−メソポーラスシリカナノ粒子複合体の溶液を調製した。この溶液を用いた以外実施例1と同様にして、屈折率が1.700のLAK14からなる平板(φ30mm)の表面にメソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。得られた反射防止膜の特性を表1に示す。
実施例3
電子ビーム式の蒸着源を有する装置を用いて、真空蒸着法により上記BK7ガラス(屈折率1.518)の表面に、物理膜厚が93 nmのフッ化マグネシウム層(屈折率1.388)を形成した(光学膜厚:130 nm)。このフッ化マグネシウム緻密膜上に、実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。得られた反射防止膜の層構成及び特性を表1に示す。
実施例4
上記装置を用いて、真空蒸着法により上記LAK14ガラス平板(屈折率:1.700)の表面に、物理膜厚が93 nmのフッ化マグネシウム層(屈折率1.388)を形成した(光学膜厚130nm)。このフッ化マグネシウム緻密膜上に、実施例2と同様にしてメソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。得られた反射防止膜の層構成及び特性を表1に示す。
実施例5
上記BK7ガラス平板(屈折率:1.518)の表面に、表1に示す構成になるように、上記装置を用いて真空蒸着法により多層の緻密膜を形成した。得られた多層の緻密膜上に、実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
実施例6
上記LAK14ガラス平板(屈折率:1.700)の表面に、表1に示す構成になるように、上記装置を用いて真空蒸着法により多層の緻密膜を形成した。得られた多層の緻密膜上に、実施例2と同様にしてメソポーラスシリカ多孔質膜を形成した。
比較例1
上記装置を用いて、真空蒸着法により上記BK7ガラス平板(屈折率1.518)の表面に、物理膜厚が100 nm(光学膜厚139 nm)のフッ化マグネシウム層(屈折率1.388)を形成することにより反射防止膜を作製した。得られた反射防止膜の特性を表1に示す。
比較例2
上記装置を用いて、真空蒸着法により上記LAK14ガラス平板(屈折率1.700)の表面に、物理膜厚が99 nm(光学膜厚137 nm)のフッ化マグネシウム層(屈折率1.388)を形成することにより反射防止膜を作製した。得られた反射防止膜の特性を表1に示す。
比較例3
上記BK7ガラス平板(屈折率1.518)の表面に、表1に示す構成になるように、上記装置を用いて真空蒸着法により多層の緻密膜を形成することにより反射防止膜を作製した。
比較例4
上記LAK14ガラス平板(屈折率:1.700)の表面に、表1に示す構成になるように、上記装置を用いて真空蒸着法により多層の緻密膜を形成することにより反射防止膜を作製した。
比較例5
特開2006-215542号の実施例1と同様にして、上記BK7ガラス平板の表面にMgF2層及びシリカエアロゲル多孔質層からなる反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の特性を表1に示す。
Figure 0005243065
注:(1) ηは屈折率を表す。
分光反射率の測定
実施例1〜6及び比較例1〜5の反射防止膜について、380〜780 nmの波長域の0°の入射角の光線の分光反射率をレンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を用いて測定した。また比較例6として上記BK7ガラス平板(屈折率:1.518)のみ、比較例7として上記LAK14ガラス平板(屈折率:1.700)のみについても同様にして分光反射率を測定した。結果を図7〜10に示す。実施例1〜6の反射防止膜は、0°の入射角の光線に対する分光反射率が5%以下であり、特に実施例1及び3〜6の反射防止膜は、分光反射率がほぼ2%以下であった。これに対して比較例1〜4では緻密質のみの反射防止膜を形成しているので、緻密質及びメソポーラスシリカ多孔質膜からなる実施例3〜6の反射防止膜に比較して分光反射率が劣っていた。比較例5の反射防止膜はシリカエアロゲル多孔質層(屈折率1.20)を有するので、緻密質及びメソポーラスシリカ多孔質膜(屈折率1.088及び1.091)からなる実施例3〜6の反射防止膜に比較して分光反射率が劣っていた。比較例6,7では反射防止膜を形成していないので、反射防止膜を有する実施例1〜6に比較して明らかに分光反射率が劣っていた。
孔径分布の測定
実施例1及び2の反射防止膜について、自動非表面積・細孔分布測定装置「トライスター3000」(株式会社島津製作所)で窒素ガスの等温脱着曲線を求め、これをBJH法で解析してlog微分細孔容積分布による孔径分布曲線を求めた。結果を図11に示す。
図11より明らかなように、実施例1及び2の反射防止膜は、いずれも孔径分布曲線が二つのピークを有し、粒子内細孔径が2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径が5〜200 nmの範囲内にある分布を有していた。実施例1の反射防止膜について、図3に示すDAを2.1 nmとし、DBを3.1 nmとし、DCを12.2 nmとし、DDを40.6 nmとし、各々BJH法による解析データにより、2.1〜3.1 nmの範囲の径を有する細孔の合計容積を求めて粒子内細孔容積V1とし、12.2〜40.6 nmの範囲の径を有する細孔の合計容積を求めて粒子間細孔容積V2とし、比V1/V2を求めた結果、1/2.1であった。実施例2の反射防止膜について、DAを1.9 nmとし、DBを3.0 nmとし、DCを17.3 nmとし、DDを64.3 nmとした以外上記と同様にして、比V1/V2を求めた結果、1/6.0であった。
本発明の反射防止膜を有する光学素子の一例を示す断面図である。 図1の反射防止膜を構成するメソポーラスシリカ粒子の一例を示す斜視図である。 典型的な孔径分布曲線を示すグラフである。 本発明の反射防止膜を有する光学素子の別の例を示す断面図である。 図4の反射防止膜の光学膜厚と屈折率との関係を示すグラフである。 本発明の反射防止膜を有する光学素子のさらに別の例を示す断面図である。 実施例1〜3の反射防止膜の分光反射率を示すグラフである。 実施例4〜6の反射防止膜の分光反射率を示すグラフである。 比較例1〜3の反射防止膜の分光反射率を示すグラフである。 比較例4,5の多層反射防止膜及び比較例6,7のガラス平板の分光反射率を示すグラフである。 実施例1の反射防止膜の孔径分布曲線を示すグラフである。
符号の説明
1・・・光学基材
2・・・反射防止膜
20・・・メソポーラスシリカ多孔質膜
200・・・メソポーラスシリカナノ粒子
200a・・・メソ孔
200b・・・シリカ骨格
21,210,211,212,213,214・・・緻密膜

Claims (12)

  1. 基材の表面に形成されたメソポーラスシリカナノ粒子が集合してなるメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、
    前記メソポーラスシリカ多孔質膜は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤/前記アルコキシシランのモル比が2.5×10 -2 〜5×10 -2 である混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、(iii) 得られた溶液を前記基材の表面にコーティングし、(iv) 乾燥して前記溶媒を除去し、(v) 焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去してなり、
    前記メソポーラスシリカナノ粒子はメソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列したヘキサゴナル構造を有し、
    前記メソポーラスシリカ多孔質膜は窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有する構造を有し、前記孔径分布曲線において、粒子内細孔径によるピークが2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径によるピークが5〜200 nmの範囲内にあり、
    前記メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率は1.10以下であることを特徴とする反射防止膜。
  2. 基材の表面に順に形成された緻密膜及びメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜がメソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなり、
    前記メソポーラスシリカ多孔質膜は、(1) 蒸着法により無機材料からなる単層又は多層の緻密膜を前記基材の表面に形成した後、(2)(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤/前記アルコキシシランのモル比が2.5×10 -2 〜5×10 -2 である混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、(iii) 得られた溶液を前記単層又は多層の緻密膜の表面にコーティングし、(iv) 乾燥して前記溶媒を除去し、(v) 焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去してなり、
    前記メソポーラスシリカナノ粒子はメソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列したヘキサゴナル構造を有し、
    前記メソポーラスシリカ多孔質膜は窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有する構造を有し、前記孔径分布曲線において、粒子内細孔径によるピークが2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径によるピークが5〜200 nmの範囲内にあり、
    前記メソポーラスシリカ多孔質膜の屈折率は1.10以下であることを特徴とする反射防止膜。
  3. 請求項2に記載の反射防止膜において、前記緻密膜は単層であり、屈折率が前記基材から前記メソポーラスシリカ多孔質膜まで順に小さくなっていることを特徴とする反射防止膜。
  4. 請求項2に記載の反射防止膜において、前記緻密膜は多層であり、屈折率の異なる複数の膜を組合せてなることを特徴とする反射防止膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜において、前記粒子内細孔と前記粒子間細孔との細孔容積比が1/15以上〜1/2未満であることを特徴とする反射防止膜。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の反射防止膜において、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の物理膜厚が15〜500 nmであることを特徴とする反射防止膜。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の反射防止膜において、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の空隙率が75〜90%であることを特徴とする反射防止膜。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止膜おいて、前記カチオン性界面活性剤として塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用い、前記非イオン性界面活性剤として式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるブロックコポリマーを用いることを特徴とする反射防止膜
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜おいて、前記酸性触媒として塩酸を用い、前記塩基性触媒としてアンモニアを用い、前記アルコキシシランとしてテトラエトキシシランを用いることを特徴とする反射防止膜
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止膜おいて、前記カチオン性界面活性剤/前記非イオン性界面活性剤のモル比を4〜8とすることを特徴とする反射防止膜
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止膜おいて、前記焼成を500℃以下の温度で行うことを特徴とする反射防止膜
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の反射防止膜を、光学基材の表面に有することを特徴とする光学素子。
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