JP5266019B2 - 反射防止膜、その形成方法、光学素子、交換レンズ及び撮像装置 - Google Patents

反射防止膜、その形成方法、光学素子、交換レンズ及び撮像装置 Download PDF

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本発明は1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材上に設けられ、広い波長範囲で、かつ広い入射角度の光に対して優れた反射防止性を有し、かつ優れたヤケ防止性を有する反射防止膜、その形成方法、光学素子、交換レンズ及び撮像装置に関する。
写真用や放送用のカメラ等の撮像装置に用いられる単焦点レンズやズームレンズ等の交換レンズは、多数のレンズ群により構成されているので、各レンズ面での反射光量が多いと、透過光量の損失が多いのみならず、レンズ内又はレンズ間での多重反射に起因するフレアやゴーストが生じ易く、コントラストが低い。そのため交換レンズには、一般的に多層構成の反射防止膜が設けられている。多層反射防止膜は、各層の界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計される。しかし近年、広い波長範囲の光に対して優れた光学特性を有する反射防止膜が望まれるようになってきた。
また交換レンズには光学ガラスが多用されているが、光学ガラスはヤケ現象を生じ易い。ヤケ現象には、ガラスが水と接触することにより、ガラス中の塩基性成分が溶出してレンズ表面に薄膜が形成される青ヤケ現象と、ガラス中から溶出した成分が二酸化炭素等と反応した生成物がレンズ表面に析出する白ヤケ現象とがあるが、レンズに反射防止膜を形成しても、その水蒸気に対する遮蔽性が悪いとヤケ現象を防止できないことがある。
そこで特開2006-3562号(特許文献1)は、光学ガラス基材の表面に形成された複数の層からなる反射防止膜であって、基材及び各々の層の屈折率がそれぞれ0.02〜0.2の差で基材から順に小さくなっており、各々の層の物理膜厚が15〜200 nmであり、少なくとも最外層がシリカエアロゲル膜からなる反射防止膜を提案している。特許文献1は、実施例において、基材側から、第一層がアルミナ蒸着膜(屈折率1.64)からなり、第二層がシリカ蒸着膜(屈折率1.46)からなり、第三層がフッ化マグネシウム蒸着膜(屈折率1.38)からなり、第四層〜第六層がシリカエアロゲル膜からなる反射防止膜を記載している。この反射防止膜は、広い波長範囲で優れた光学特性を有し、かつ水蒸気に対する遮蔽性に優れたアルミナ蒸着膜が光学ガラス基材の表面に設けられるのでヤケ防止性にも優れている。
しかし特に高い曲率を有する広角レンズは、レンズ周辺部での光の入射角度が大きく、反射光量が多い。そのため反射防止膜には、広い波長範囲に対してのみならず、広い入射角度の光に対しても優れた反射防止性を有することが望まれるようになってきた。特許文献1の反射防止膜は、交換レンズに多用される1.45〜1.60の屈折率を有する基材に設けた場合、広い入射角度の光に対する光学特性が十分とはいえなかった。
特開2006-3562号公報
従って、本発明の目的は、1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材上に設けられ、広い波長範囲で、かつ広い入射角度の光に対して優れた反射防止性を有し、かつ優れたヤケ防止性を有する反射防止膜、その形成方法、光学素子、交換レンズ及び撮像装置を提供することである。
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材上に、85〜205 nmの光学膜厚を有し、アルミナを主成分とする緻密膜を形成し、その上に1.93〜2.77の屈折率を有する緻密膜及び1.33〜1.50の屈折率を有する緻密膜をそれぞれ所定の光学膜厚となるように交互に二層ずつ形成し、その上に1.05〜1.15の屈折率及び100〜230 nmの光学膜厚を有し、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体により形成されたメソポーラスシリカ多孔質膜を形成すると、広い波長範囲で、かつ広い入射角度の光に対して優れた反射防止性を有し、かつ優れたヤケ防止性を有する反射防止膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の反射防止膜は、400〜700 nmの波長の光に対して1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材の表面に、前記基材側から順に形成された第一層〜第六層の膜を有する反射防止膜であって、各々400〜700 nmの波長の光に対して、(1) 前記第一層が85〜205 nmの光学膜厚を有し、アルミナを主成分とする緻密膜からなり、(2) 前記第二層が1.93〜2.77の屈折率及び10〜100 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(3) 前記第三層が1.33〜1.50の屈折率及び20〜80 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(4) 前記第四層が1.93〜2.77の屈折率及び15〜105 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(5) 前記第五層が1.33〜1.50の屈折率及び110〜185 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(6) 前記第六層が1.05〜1.15の屈折率及び100〜230 nmの光学膜厚を有し、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体により形成されたメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有することを特徴とする。
前記メソポーラスシリカナノ粒子はヘキサゴナル構造を有するのが好ましい。前記メソポーラスシリカ多孔質膜の孔径分布曲線は、粒子内細孔径によるピークを2〜10 nmの範囲内に有し、粒子間細孔径によるピークを5〜200 nmの範囲内に有するのが好ましい。粒子内細孔と粒子間細孔との容積比は1/15〜1/1であるのが好ましい。前記第六層の空隙率は65〜90%であるのが好ましい。
前記第一層の屈折率は1.58〜1.71であるのが好ましい。前記第二層及び第四層は、Ta2O5、TiO2、Nb2O5、ZrO2、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3及びZnOからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのが好ましい。前記第三層及び第五層は、MgF2及びSiO2のいずれかであるのが好ましい。
前記第六層の上にさらに撥水性又は撥水撥油性を有する厚さ0.4〜100 nmの膜を有してもよい。
本発明の好ましい例では、0〜50°の入射角の光の波長領域400 nm〜700 nmにおける反射率は1%以下である。
上記反射防止膜を形成する方法は、(1) 蒸着法により、前記第一層〜第五層の緻密膜を前記基材の表面に形成した後、(2)(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、(iii) 得られた溶液を前記第五層の表面にコーティングし、(iv) 乾燥して前記溶媒を除去し、(v) 焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする。
前記カチオン性界面活性剤として塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用いるのが好ましい。前記非イオン性界面活性剤として式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるブロックコポリマーを用いるのが好ましい。
本発明の光学素子は、上記反射防止膜を有することを特徴とする。
本発明の交換レンズは、上記光学素子を有することを特徴とする。
本発明の撮像装置は、上記光学素子を有することを特徴とする。
本発明の反射防止膜は、特に1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材に用いるの適しており、広い波長範囲で、かつ広い入射角度の光に対して優れた反射防止性を有し、かつ優れたヤケ防止性を有する。本発明の反射防止膜を有する光学素子は、一眼レフカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置用の交換レンズとして有用である。
[1] 反射防止膜を有する光学素子
反射防止膜は光学ガラス基材(単に基材という)の表面に形成される。図1は、基材1及びその表面に形成された反射防止膜2からなる光学素子の例を示す。
(1) 基材
図1に示す例では平板を基材1としているが、本発明はこれに限定されず、レンズ、プリズム、ライトガイド又は回折素子でも良い。基材1の屈折率は、400〜700 nmの波長に対して1.45〜1.60である。基材1の屈折率がこの範囲であると、交換レンズに用いた場合、可視光の波長帯域において光学性能が良好になるとともに、コンパクト化を図ることができる。この屈折率は1.51〜1.59が好ましい。
基材1を構成する光学ガラスの具体例として、BK7、BAK1、BAK2、BALF4、K3、KF6、KZF2、KZF5、LF5、LLF1、LLF2、LLF6、石英ガラス等が挙げられる。
(2) 反射防止膜
反射防止膜2は、基材1側から順に形成された第一層21〜第六層26の膜を有する。図2に示すように、反射防止膜2は最表面に撥水性又は撥水撥油性を有する膜(単に撥水/撥油性膜という)27を有しても良い。
(a) 第一層
第一層21は、アルミナを主成分とし、400〜700 nmの波長の光に対して85〜205 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなる。アルミナは、高密着性及び高光透過性を有し、コストパフォーマンスが良いという利点がある。しかもアルミナは水蒸気に対する遮蔽性に優れているので、第一層をアルミナを主成分とする緻密膜にすることにより、基材1表面のヤケを防止することができる。第一層21はアルミナのみからなるのが好ましい。アルミナの純度は99%以上が好ましい。第一層21の屈折率は、1.58〜1.71であるのが好ましく、1.60〜1.70であるのがより好ましい。第一層21の光学膜厚は135〜190 nmであるのが好ましい。
(b) 第二層
第二層22は、400〜700 nmの波長の光に対して1.93〜2.77の屈折率及び10〜100 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなる。第二層22の屈折率は2.30〜2.40であるのが好ましく、光学膜厚は20〜40 nmであるのが好ましい。第二層22の緻密膜を構成する材料は、Ta2O5、TiO2、Nb2O5、ZrO2、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3及びZnOからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのが好ましい。
(c) 第三層
第三層23は、400〜700 nmの波長の光に対して1.33〜1.50の屈折率及び20〜80 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなる。第三層23の屈折率は1.34〜1.43であるのが好ましく、光学膜厚は45〜75 nmであるのが好ましい。第三層23の緻密膜を構成する材料は、MgF2及びSiO2のいずれかであるのが好ましい。
(d) 第四層
第四層24は、400〜700 nmの波長の光に対して1.93〜2.77の屈折率及び15〜105 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなる。第四層24の屈折率は2.30〜2.40であるのが好ましく、光学膜厚は20〜40 nmであるのが好ましい。第四層24の緻密膜を構成する材料は第二層22について記載したものと同じでよい。
(e) 第五層
第五層25は、400〜700 nmの波長の光に対して1.33〜1.50の屈折率及び110〜185 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなる。第五層25の屈折率は1.34〜1.43であるのが好ましく、光学膜厚は120〜170 nmであるのが好ましい。第五層25の緻密膜を構成する材料は第三層23について記載したものと同じでよい。
(f) 第六層
第六層26は、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体により形成されたメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、400〜700 nmの波長の光に対して1.05〜1.15の屈折率及び100〜230 nmの光学膜厚を有する。屈折率は1.06〜1.12が好ましく、光学膜厚は105〜155 nmが好ましい。
図3は、メソポーラスシリカナノ粒子の一例を示す。この粒子200は、メソ孔200aを有するシリカ骨格200bからなり、メソ孔200aがヘキサゴナル状に規則的に配列した多孔質構造を有する。但し、メソポーラスシリカナノ粒子はヘキサゴナル構造のものに限定されず、キュービック構造又はラメラ構造のものでもよい。よってメソポーラスシリカ多孔質膜20は、これらの三種の構造の粒子のいずれか又はこれらの混合物からなるものであればよいが、ヘキサゴナル構造の粒子200からなるのが好ましい。
メソポーラスシリカナノ粒子200の平均粒径は、200 nm以下が好ましく、20〜50 nmがより好ましい。この平均粒径が200 nm超だと、膜厚調整が困難であり、反射防止性が低い。メソポーラスシリカナノ粒子200の平均粒径は動的光散乱法により求める。メソポーラスシリカ多孔質膜20の屈折率は空隙率に依存する。メソポーラスシリカ多孔質膜20の空隙率が大きいほど屈折率が小さい。空隙率は65〜90%が好ましく、75〜80 %がより好ましい。
図4に示すように、メソポーラスシリカ多孔質膜20は、窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有するのが好ましい。この孔径分布曲線は、詳しくは、メソポーラスシリカ多孔質膜20について窒素の等温脱着曲線を求め、これをBJH法で解析し、横軸を細孔直径とし、縦軸をlog微分細孔容積として表したものである。BJH法は、例えば「メソ孔の分布を求める方法」(E. P. Barrett,L. G. Joyner, and P. P. Halenda , J.Am. Chem. Soc., 73, 373(1951))に記載されている。log微分細孔容積は、細孔直径Dの対数の差分値d(logD)に対する差分細孔容積dVの変化量であり、dV/d(logD)で表される。小孔径側の第一ピークが粒子内細孔の径を示し、大孔径側の第二ピークが粒子間細孔の径を示す。メソポーラスシリカ多孔質膜20の孔径分布は、粒子内細孔径が2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径が5〜200 nmの範囲内にあるのが好ましい。
粒子内細孔容積V1と粒子間細孔容積V2の比は1/15〜1/1であるのが好ましい。この比が上記範囲であるメソポーラスシリカ多孔質膜20は、1.15以下の小さな屈折率を有する。比V1/V2は1/10以上1/1.5未満であるのがより好ましい。比V1/V2は、第一及び第二のピーク間の縦軸座標の最小値の点Eを通り、横軸と平行な直線をベースラインL0とし、各々のピークの最大傾斜線(最大傾斜点における接線)L1〜L4とベースラインL0との交点A〜Dにおける横軸座標(DA〜DD)を求め、各々BJH法による解析データにより、DA〜DBの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV1とし、DC〜DDの範囲の径を有する細孔の合計容積を算出してV2とし、これらの比を算出することにより求める。
(g) 撥水/撥油性膜
撥水/撥油性膜27の材質は無色で透明性が高いものである限り特に制限されず、フッ素を含有する有機化合物、フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマー、フッ化ピッチ[例えばCFn(n:1.1〜1.6)]等が挙げられる。
フッ素含有有機化合物として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂としては、フッ素含有オレフィン系ポリマー、及びフッ素含有オレフィン系モノマー及びコモノマーからなるコポリマーが挙げられる。そのような(コ)ポリマーとして、ポリテトラフルオロエチレン、テトラエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエ−テルコポリマー、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。フッ素樹脂として市販のフッ素含有組成物を重合させたものを使用してもよい。市販のフッ素含有組成物として、オプスター(ジェイエスアール株式会社製)、サイトップ(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
フッ素を含有する有機−無機ハイブリッドポリマーとして、フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーが挙げられる。フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーとして、フルオロカーボン基を有するフッ素含有シラン化合物を加水分解して得られるポリマーが挙げられる。フッ素含有シラン化合物は、式:CF3(CF2)a(CH2)2SiRbXc(ただしRはアルキル基であり、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、aは0〜7の整数であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつb + c = 3である。)により表される。上記式により表される化合物の具体例として、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)7(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3Cl2等が挙げられる。フルオロカーボン基を有する有機珪素ポリマーとしては、ノベックEGC-1720(住友スリーエム株式会社製)、XC98-B2472(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、X71-130(信越化学工業製)等が挙げられる。
撥水/撥油性膜27の厚さは0.4〜100 nmであるのが好ましい。この厚さが0.4 nm未満であると撥水/撥油性が不十分でありる。一方100 nm超であると反射防止膜の透明性及び光学特性が損なわれる。撥水/撥油性膜27の屈折率は1.5以下であるのが好ましく、1.45以下であるのがより好ましい。
[2] 反射防止膜の形成方法
(1) 第一層〜第五層の形成
緻密膜からなる第一層21〜第五層25は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の化学蒸着法等により形成することができる。
蒸着法を用いる場合、無機材料からなる蒸着材を加熱により蒸発させ、真空中で基材に付着させて緻密膜を形成する。蒸着材を蒸気にする方法は特に制限されず、例えば通電加熱型ソースを用いる方法、E型電子銃により電子ビームを当てる方法、ホローカソード放電により大電流電子ビームを当てる方法、レーザパルスを当てるレーザアブレーション等が挙げられる。基材1はその膜形成面が蒸着材に対向するように設置し、その状態で蒸着中に回転させるのが好ましい。蒸着時間、加熱温度等を適宜設定することにより、所望の厚さを有する層を形成することができる。
(2) 第六層の形成
メソポーラスシリカ多孔質膜からなる第六層26は、(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、カチオン性界面活性剤を細孔内に有し、非イオン性界面活性剤で表面が被覆されたメソポーラスシリカナノ粒子(「界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子」と呼ぶ。)を含むゾルを調製し、(iii) このゾルを第六層26にコーティングし、(iv) 乾燥して溶媒を除去し、(v) 焼成してカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去することにより得られる。
(a) 原料
(a-1) アルコキシシラン
アルコキシシランはモノマーでもオリゴマーでも良い。アルコキシシランモノマーはアルコキシル基を3つ以上有するのが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシランを出発原料とすることにより、均一性に優れたメソポーラスシリカ多孔質層が得られる。アルコキシシランモノマーの具体例としてはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジエトキシジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びジメチルジエトキシシランが挙げられる。アルコキシシランオリゴマーとしては上記モノマーの重縮合物が好ましい。アルコキシシランオリゴマーはアルコキシシランモノマーの加水分解・重縮合により得られる。アルコキシシランオリゴマーの具体例として、一般式RSiO1.5(Rは有機官能基を示す。)により表されるシルセスキオキサンが挙げられる。
(a-2) 界面活性剤
(i) カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤の具体例としてはハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルトリエチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルメチルアンモニウム及びハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウムが挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとしては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム及び塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとしては、例えば塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられる。ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウムとしては、例えば塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及び塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムが挙げられる。ハロゲン化アルキルメチルアンモニウムとしては、例えば塩化ドデシルメチルアンモニウム、塩化セチルメチルアンモニウム、塩化ステアリルメチルアンモニウム及び塩化ベンジルメチルアンモニウムが挙げられる。ハロゲン化アルコキシトリメチルアンモニウムとしては、例えば塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
(ii) 非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤としては、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー及びポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーとしては、例えば式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるものが挙げられる。このブロックコポリマーの市販品として、例えばPluronic(登録商標、BASF社)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルが挙げられる。
(a-3) 触媒
(i) 酸性触媒
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸及びギ酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
(ii) 塩基性触媒
塩基性触媒としては、例えばアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。アミンの好ましい例としてアルコールアミン及びアルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン)が挙げられる。
(a-4) 溶媒
溶媒としては純水が好適に用いられる。
(b) 形成方法
(b-1) 酸性条件での加水分解・重縮合
溶媒に酸性触媒を添加して酸性溶液を調製し、酸性溶液にカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を添加して酸性混合液を調製する。この酸性混合液にアルコキシシランを添加し、加水分解・重縮合する。その際、酸性混合液のpHは約2であるのが好ましい。アルコキシシランのシラノール基の等電点のpHは約2であるので、酸性混合液のpHを約2にすることにより、シラノール基は酸性混合液中で安定的に存在できる。溶媒/アルコキシシランのモル比は30〜300であるのが好ましい。このモル比が30未満であるとアルコキシシランの重合度が高すぎ、300超であるとアルコキシシランの重合度が低すぎる。
カチオン性界面活性剤/溶媒のモル比は1×10-4〜3×10-3であるのが好ましく、1.5×10-4〜2×10-3であるのがより好ましい。これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。
カチオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は1×10-1〜3×10-1であるのが好ましい。このモル比が1×10-1未満であると、メソポーラスシリカナノ粒子のメソ構造(六方配列構造)の形成が不十分である。3×10-1超であると、メソポーラスシリカナノ粒子の粒径が大きくなり過ぎる。このモル比は、1.5×10-1〜2.5×10-1がより好ましい。
非イオン性界面活性剤/アルコキシシランのモル比は1.55×10-2〜4.5×10-2である。このモル比が1.55×10-2未満になると第六層26の屈折率が1.15を超える。このモル比が4.5×10-2超であると第六層26の屈折率が1.05を下回る。
カチオン性界面活性剤/非イオン性界面活性剤のモル比は4.5〜12.5にするのが好ましく、これによりメソ細孔の規則性に優れたメソポーラスシリカナノ粒子が得られる。このモル比は5.0〜7.5であるのがより好ましい。
アルコキシシランを含む溶液を20〜25℃で15分間〜24時間強撹拌することによりエージングする。エージングにより加水分解・重縮合が進行し、シリケートオリゴマーを含む酸性ゾルが生成する。
(b-2) 塩基性条件での加水分解・重縮合
得られた酸性ゾルに塩基性触媒を添加して塩基性にし、さらに加水分解・重縮合させる。塩基性ゾルのpHは9〜12であるのが好ましい。塩基性触媒を添加することにより、カチオン性界面活性剤ミセルの周囲にシリケート骨格が形成され、規則的な六方配列が成長することによりシリカとカチオン性界面活性剤とが複合した粒子が形成される。この複合粒子は成長に伴って表面の有効電荷が減少するので、表面に非イオン性界面活性剤が吸着する。その結果、カチオン性界面活性剤を細孔内に有し、非イオン性界面活性剤で表面が被覆された界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子(粒子形状は図3を参照されたい。)を含むゾルが得られる[例えば今井宏明,「化学工業」,化学工業社,2005年9月,第56巻,第9号,pp.688-693]。
界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子の形成過程において、非イオン性界面活性剤が表面に吸着されるので、上記複合粒子の成長が抑制される。このようにカチオン性と非イオン性の二種類の界面活性剤を用いることにより、平均粒径が200 nm以下で、規則性に優れたメソ細孔を有する界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子が得られる。
(b-3) 塗布
界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子を含むゾルを第五層25の表面にコーティングする。コーティング方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法、リバースコート法、フレキソ法、グラビアコート法、印刷法及びこれらを併用する方法が挙げられる。得られる多孔質層の厚さはスピンコート法における基材の回転速度、ディッピング法における引き上げ速度、塗布液の濃度等により調節できる。スピンコート法における基材の回転速度は500〜10,000 rpmであるのが好ましい。
界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子を含むゾルの濃度及び流動性が適切な範囲になるように、塗布の前にさらに分散媒として上記ゾルとほぼ同じpHの塩基性水溶液を加えても良い。塗布液中の界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子の割合は10〜50質量%であるのが好ましい。これにより均一な多孔質層が得られる。
(b-4) 乾燥
塗布したゾルを乾燥して溶媒を揮発させる。乾燥条件は特に制限されず、基材1及び第一層〜第六層の耐熱性等に応じて適宜決めることができる。乾燥は自然乾燥でも良く、50〜200℃で15分〜1時間熱処理しても良い。
(b-5) 焼成
乾燥した膜を焼成してカチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を除去することにより、メソポーラスシリカ多孔質層17を形成する。焼成温度は300℃〜500℃であるのが好ましい。焼成温度は300℃未満であると焼成が不十分であり、焼成温度が500℃超であると反射防止膜2の屈折率が1.15を超える。焼成温度は350℃〜450℃であるのがより好ましい。焼成時間は1〜6時間であるのが好ましく、2〜4時間であるのがより好ましい。
(3) 撥水/撥油性膜の形成
撥水/撥油性膜は、フッ素含有有機化合物、フッ素含有有機−無機ハイブリッドポリマー、又はフッ化ピッチにより形成する。このうち、フッ素含有有機化合物からなる撥水/撥油性膜は、コート法等のウェット法や化学蒸着法により形成することができる。フッ素含有有機−無機ハイブリッドポリマーからなる撥水/撥油性膜は、コート法により形成することができる。フッ化ピッチからなる撥水/撥油性膜は、フッ化ピッチの溶液を塗布することにより形成できる。そこで、コート法によりフッ素含有有機化合物からなる撥水/撥油性膜(フッ素樹脂層)を形成する場合について、以下詳細に説明する。
(a) コーティング液の調製
フッ素樹脂層を形成するには、(i) フッ素含有オレフィン系ポリマーと架橋性化合物とを含有する組成物の溶液(コーティング液(i))を第六層26に塗布した後で架橋させても良いし、(ii) フッ素含有オレフィン系モノマー及びコモノマーを含有する組成物の溶液(コーティング液(ii))を第六層26に塗布した後、重合させても良い。(i)又は(ii)の方法を用いてフッ素樹脂層を形成する方法は、例えば特開平11-228631号及び特開平11-337706号に詳細に記載されている。
コーティング液(i)及び(ii)の調製に用いる好ましい溶媒としてメチルエチルケトン、メチルi-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。フッ素含有オレフィン系ポリマー及びフッ素含有オレフィン系モノマーの濃度は、5〜80質量%とするのが好ましい。
(b) コーティング
フッ素樹脂層を形成する方法は、コーティング液(i)又は(ii)を使用する以外上記のメソポーラスシリカ多孔質膜とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。コーティング液(i)又は(ii)の層を形成した後、架橋反応又は重合反応させる。フッ素含有オレフィン系モノマー又は架橋性化合物が熱硬化性の場合、100〜140℃に30〜60分程度加熱するのが好ましい。紫外線硬化性の場合、50〜3,000 mJ/cm2程度でUV照射する。層の厚さにも拠るが、照射時間は通常0.1〜60秒程度である。
[3] 反射防止膜を有する光学素子
本発明の反射防止膜は、特に1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材に用いるのに適しており、広い波長範囲で、かつ広い入射角度の光に対して優れた反射防止性を有し、かつ優れたヤケ防止性を有する。反射防止膜の反射率は、波長領域が400 nm〜700 nmで、0〜50°の入射角の光において1%以下であり、特に0°及び30°の入射角の光において0.5%以下である。本発明の反射防止膜を有する光学素子は、一眼レフカメラ、ビデオカメラ等の撮像装置用の交換レンズとして有用である。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
(1) 第一層〜第五層の形成
屈折率が1.518のBK7ガラスからなる平板(φ30 mm)の表面に、電子ビーム式の蒸着源を有する装置を用いて、真空蒸着法により、表1に示す構成の第一層〜第五層の緻密膜を形成した。
(2) 第六層の形成
pH2の塩酸(0.01N)40 gに、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(関東化学株式会社製)1.21 g(0.088 mol/L)、及びブロックコポリマーHO(C2H4O)106-(C3H6O)70-(C2H4O)106H(商品名「Pluronic F127」、Sigma-Aldrich社)7.58 g(0.014 mol/L)を添加し、23℃で1時間撹拌し、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)4.00 g(0.45 mol/L)を添加し、23℃で3時間撹拌した後、28質量%アンモニア水3.94 g(1.51 mol/L)を添加してpHを11とし、23℃で0.5時間撹拌した。得られた界面活性剤−メソポーラスシリカナノ複合粒子の溶液を、第五層の表面にスピンコート法により塗布し、80℃で0.5時間乾燥した後、300℃で3時間焼成した。
(3) 屈折率及び光学膜厚
得られた反射防止膜の特性を表1に示す。屈折率(波長550 nmの光における屈折率)及び物理膜厚の測定には、レンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、オリンパス株式会社製)を使用した。光学膜厚は膜の屈折率と物理膜厚との積である。
Figure 0005266019
注:(1) 波長550 nmの光における屈折率。
(2) 膜の屈折率と物理膜厚との積である。
(4) 孔径分布の測定
反射防止膜について、自動非表面積・細孔分布測定装置「トライスター3000」(株式会社島津製作所)で窒素ガスの等温脱着曲線を求め、これをBJH法で解析してlog微分細孔容積分布による孔径分布曲線を求めた。結果を図5に示す。
図5より明らかなように、反射防止膜の孔径分布曲線は二つのピークを有し、粒子内細孔径が2〜10 nmの範囲内にあり、粒子間細孔径が5〜200 nmの範囲内にある分布を有していた。反射防止膜について、図4に示すDAを2.1 nmとし、DBを3.1 nmとし、DCを12.2 nmとし、DDを40.6 nmとし、各々BJH法による解析データにより、2.1〜3.1 nmの範囲の径を有する細孔の合計容積を求めて粒子内細孔容積V1とし、12.2〜40.6 nmの範囲の径を有する細孔の合計容積を求めて粒子間細孔容積V2とし、第六層の比V1/V2を求めた結果、1/2.1であった。
(5) 分光反射率の測定
反射防止膜に対して、350〜850 nmの波長域の0°、30°及び50°の入射角の光線の分光反射率を分光光度計(形式:U4000、日立製作所(株)製)を用いて測定した。結果を図6に示す。400〜700 nmの波長領域の0°、30°及び50°の入射角の光線に対する分光反射率は1%以下であり、特に0°の入射角の光に対する分光反射率は0.3%以下であった。
(6) ヤケ防止性の評価
反射防止膜を設けた平板を、60℃の温度及び90%の相対湿度の条件で7日間処理した後、外観を目視で観察した結果、ヤケは生じていなかった。
実施例2
基材として屈折率が1.585のLF5ガラスからなる平板(φ30 mm)を用い、第一層〜第五層の緻密膜を表2に示す構成となるようにした以外実施例1と同様にして、反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の屈折率及び光学膜厚を表2に示す。
Figure 0005266019
注:(1) 波長550 nmの光における屈折率。
(2) 膜の屈折率と物理膜厚との積である。
反射防止膜について、実施例1と同様にして第六層の比V1/V2を求めた結果、1/2.1であった。
反射防止膜に対して測定した分光反射率の結果を図7に示す。400〜700 nmの波長領域の0°、30°及び50°の入射角の光線に対する分光反射率は1%以下であり、特に0°の入射角の光に対する分光反射率は0.3%以下であった。
反射防止膜を設けた平板について、実施例1と同様にしてヤケ防止性の評価を行った結果、ヤケは生じていなかった。
実施例3
メソポーラスシリカ多孔質膜上に、フッ素系表面処理剤(製品名「ノベックEGC-1720」、住友スリーエム株式会社製)をスピンコート法により塗布し、室温で24時間乾燥して撥水/撥油性膜(光学膜厚:9nm、屈折率:1.34)を形成した以外実施例1と同様にして、反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の屈折率及び光学膜厚を表3に示す。
Figure 0005266019
注:(1) 波長550 nmの光における屈折率。
(2) 膜の屈折率と物理膜厚との積である。
(3) フッ素系表面処理剤(製品名「ノベックEGC-1720」、住友スリーエム株式会社製)。
反射防止膜に対して測定した分光反射率の結果を図8に示す。400〜700 nmの波長領域の0°、30°及び50°の入射角の光線に対する分光反射率は1%以下であり、特に30°の入射角の光に対する分光反射率は0.3%以下であった。
反射防止膜の水及びn-ヘキサデカンに対する接触角を測定した結果、それぞれ108°及び60°であり、反射防止膜は優れた撥水性及び撥油性を有していた。
実施例4
メソポーラスシリカ多孔質膜上に、上記フッ素系表面処理剤をスピンコート法により塗布し、室温で24時間乾燥して撥水/撥油性膜(光学膜厚:8nm、屈折率:1.34)を形成した以外実施例2と同様にして、反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の屈折率及び光学膜厚を表4に示す。
Figure 0005266019
注:(1) 波長550 nmの光における屈折率。
(2) 膜の屈折率と物理膜厚との積である。
(3) フッ素系表面処理剤(製品名「ノベックEGC-1720」、住友スリーエム株式会社製)。
反射防止膜に対して測定した分光反射率の結果を図9に示す。400〜700 nmの波長領域の0°、30°及び50°の入射角の光線に対する分光反射率は1%以下であり、特に0°及び30°の入射角の光に対する分光反射率は0.3%以下であった。
反射防止膜の水及びn-ヘキサデカンに対する接触角を測定した結果、それぞれ107°及び58°であり、反射防止膜は優れた撥水性及び撥油性を有していた。
比較例1
基材として上記LF5ガラス平板を用いた以外特開2006-3562号の実施例1と同様にして、Al2O3、SiO2、MgF2及び三層のシリカエアロゲル多孔質層からなる反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の特性を表5に示す。
Figure 0005266019
注:(1) 波長550 nmの光における屈折率。
(2) 膜の屈折率と物理膜厚との積である。
反射防止膜に対して測定した分光反射率の結果を図10に示す。また実施例1、2及び比較例1の反射防止膜について、400〜700 nmの波長領域の0°、30°及び50°の入射角の光線に対する平均反射率を表6に示す。
Figure 0005266019
図10から、比較例1の反射防止膜も400〜700 nmの波長領域の0°、30°及び50°の入射角の光線に対する分光反射率は1%以下であることが分かった。しかし、表6から明らかなように、各入射角の光線に対する平均反射率は、いずれも実施例1及び2の方が比較例1より優れており、特に0°及び30°の入射角の光線に対する平均反射率については、実施例1及び2が比較例1より一桁小さかった。
本発明の反射防止膜を有する光学素子の一例を示す断面図である。 本発明の反射防止膜を有する光学素子の別の例を示す断面図である。 本発明の反射防止膜の第六層を構成するメソポーラスシリカ粒子の一例を示す斜視図である。 本発明の反射防止膜の第六層の典型的な孔径分布曲線を示すグラフである。 実施例1の反射防止膜の孔径分布曲線を示すグラフである。 実施例1の反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。 実施例2の反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。 実施例3の反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。 実施例4の反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。 比較例1の反射防止膜の分光反射率を表すグラフである。
符号の説明
1・・・基材
2・・・反射防止膜
21,22,23,24,25・・・緻密膜
26・・・メソポーラスシリカ多孔質膜
27・・・撥水/撥油性膜

Claims (14)

  1. 400〜700 nmの波長の光に対して1.45〜1.60の屈折率を有する光学ガラス基材の表面に、前記基材側から順に形成された第一層〜第六層の膜を有する反射防止膜であって、各々400〜700 nmの波長の光に対して、(1) 前記第一層が85〜205 nmの光学膜厚を有し、アルミナを主成分とする緻密膜からなり、(2) 前記第二層が1.93〜2.77の屈折率及び10〜100 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(3) 前記第三層が1.33〜1.50の屈折率及び20〜80 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(4) 前記第四層が1.93〜2.77の屈折率及び15〜105 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(5) 前記第五層が1.33〜1.50の屈折率及び110〜185 nmの光学膜厚を有する緻密膜からなり、(6) 前記第六層が1.05〜1.15の屈折率及び100〜230 nmの光学膜厚を有し、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体により形成されたメソポーラスシリカ多孔質膜からなり、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の窒素吸着法により求めた孔径分布曲線が二つのピークを有することを特徴とする反射防止膜。
  2. 請求項1に記載の反射防止膜において、前記メソポーラスシリカナノ粒子がヘキサゴナル構造を有することを特徴とする反射防止膜。
  3. 請求項1又は2に記載の反射防止膜において、前記メソポーラスシリカ多孔質膜の孔径分布曲線が、粒子内細孔径によるピークを2〜10 nmの範囲内に有し、粒子間細孔径によるピークを5〜200 nmの範囲内に有することを特徴とする反射防止膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜において、粒子内細孔と粒子間細孔との容積比が1/15〜1/1であることを特徴とする反射防止膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止膜において、前記第六層の空隙率が65〜90%であることを特徴とする反射防止膜。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止膜において、前記第一層の屈折率が1.58〜1.71であることを特徴とする反射防止膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止膜において、前記第二層及び第四層がTa2O5、TiO2、Nb2O5、ZrO2、HfO2、CeO2、SnO2、In2O3及びZnOからなる群から選ばれた少なくとも一種からなり、前記第三層及び第五層がMgF2及びSiO2のいずれかであることを特徴とする反射防止膜。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止膜において、前記第六層の上にさらに撥水性又は撥水撥油性を有する厚さ0.4〜100 nmの膜を有することを特徴とする反射防止膜。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止膜において、0〜50°の入射角の光の波長領域400 nm〜700 nmにおける反射率が1%以下であることを特徴とする反射防止膜。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止膜を形成する方法であって、(1) 蒸着法により、前記第一層〜第五層の緻密膜を前記基材の表面に形成した後、(2)(i) 溶媒、酸性触媒、アルコキシシラン、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解・重縮合させ、(ii) 得られたシリケートを含む酸性ゾルに塩基性触媒を添加することにより、前記非イオン性界面活性剤で被覆され、かつ前記カチオン性界面活性剤を細孔内に有するメソポーラスシリカナノ粒子の溶液を調製し、(iii) 得られた溶液を前記第五層の表面にコーティングし、(iv) 乾燥して前記溶媒を除去し、(v) 焼成して前記カチオン性界面活性剤及び前記非イオン性界面活性剤を除去することを特徴とする方法。
  11. 請求項10に記載の反射防止膜の形成方法において、前記カチオン性界面活性剤として塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを用い、前記非イオン性界面活性剤として式:RO(C2H4O)a-(C3H6O)b-(C2H4O)cR(但し、a及びcはそれぞれ10〜120を表し、bは30〜80を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を表す)で表されるブロックコポリマーを用いることを特徴とする方法。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止膜を有することを特徴とする光学素子。
  13. 請求項12に記載の光学素子を有することを特徴とする交換レンズ。
  14. 請求項12に記載の光学素子を有することを特徴とする撮像装置。
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