JP6653810B1 - 反射防止膜、該反射防止膜の製造方法、該反射防止膜を備える光学素子及び光学機器 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特開2015−72464号公報(特許文献2)には、金属酸化物骨格を有するメソポーラスナノ粒子と、金属酸化物骨格を有するメソポーラス透明材料とからなる反射防止膜が記載されており、また、当該メソポーラスナノ粒子及び/又はメソポーラス透明材料が、シリカ骨格を有するものが特に好ましい旨が記載されている。
また、反射防止膜の反射率は材料の屈折率に依存するため、単一の物質で所望の屈折率を実現することは困難であり、高屈折率の物質と低屈折率の物質を組み合わせて膜形成を行うことが必須であった。そのため、設計時、製造時の工数が増加し、またリップルが大きくなるという問題が生じていた。
また、上記特許文献1には、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層の焼成温度は300〜500℃が好ましいことが記載されており、上記特許文献2には、焼成温度は300〜800℃が好ましいことが記載されている。したがって、これら文献に記載の方法も、耐熱性の低いプラスチック樹脂製のレンズには適用できなかった。
第n−1層が、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層であり
前記第n層が、光学膜厚が100nm以下であり、屈折率が前記第n−1層の屈折率よりも高い層であることを特徴とする、反射防止膜である。
メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層を形成する、メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程と、
第n層を形成する、最外層形成工程と、を備える、反射防止膜の製造方法である。
メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層を形成する、メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程と、
第n層を形成する、最外層形成工程を備え、
前記メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程を、ゾル−ゲル法により行う、反射防止膜の製造方法である。
さらに好ましくは、上記反射防止膜の製造方法は、前記基材から第n−1層の屈折率がこの順に低くなるように、各層の屈折率を設定する、屈折率設定工程を備える。
メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層を形成する、メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程と、
緻密層を形成する、緻密層形成工程と、
第n層を形成する、最外層形成工程を備え、
前記緻密層形成工程を、基材温度が160℃以下となる処理温度でスパッタリング法により行う、反射防止膜の製造方法である。
また、上記課題を解決する、本発明に係る光学機器は、上記光学素子を備える光学機器である。
本発明の反射防止膜20が形成された基材10を図1に示す。図1に示す基材10は平板であるが、形状は特に限定されず、曲面を有していてもよい。具体的には、例えば、レンズ、プリズム、ライトガイド、フィルム、又は回折素子が挙げられる。
基材10の材質は、光学素子に用いられている基材であれば材料は特に限定されず、例えばガラス、結晶性材料及びプラスチック等が挙げられる。ガラスは例えば、光学ガラス、硬質ガラス、蛍石ガラス、青板ガラス、白板ガラスなどが挙げられる。プラスチックは例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリシクロヘキシルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等が挙げられる。
本発明の反射防止膜20は、基材10上に第1層21から第n層23(nは2以上の整数)までをこの順に積層させてなる、多層膜である(図1参照)。nは、一般的に反射防止膜を形成する際の層数の範囲内で任意に設定することができるが、n=3〜5であるのが好ましい。
第n−1層22の屈折率及び光学膜厚を上記範囲内に設定することにより、反射防止膜20の反射防止効果を向上させることができる。
メソポーラスシリカナノ粒子は、ヘキサゴナル構造の他に、キュービック構造及び/又はラメラ構造を有していてもよい。
第n層23の光学膜厚及び屈折率を上記範囲に設定することで、反射防止膜20の屈折率をさらに低下させ、また強度を向上させることができる。
上記構成にすることにより、反射防止膜20の反射防止効果を、より向上させることができる。
上記構成にすることにより、反射防止膜20の反射防止効果を、より向上させることができる。
また、後述する屈折率設定工程における屈折率の設定が容易になる。
上記緻密層を備える形態とすることで、反射防止膜20の反射防止効果を、より向上させることができる。また、特に第1層を緻密層とする場合、シラノール基を有しない基材上でも、安定した反射防止膜を形成することができる。
本発明の反射防止膜の製造方法は、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層を形成する、メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程と、第n層を形成する、最外層形成工程と、を備える。
本工程は、ゾル−ゲル法で行うのが好ましい。本工程は、例えば、特開2010−132485号公報に記載の方法で形成することができる。すなわち、アルコキシシラン、触媒、界面活性剤、及び溶媒を含む混合溶液をエージングしてアルコキシシランを加水分解、重縮合し、得られたメソポーラスシリカナノ粒子を含む溶液を基材又は前層の表面(以下、塗布面という)に塗布し、乾燥して溶媒を除去し、焼成して界面活性剤を除去することで、メソポーラスシリカナノ粒子層を形成することができる。
また、市販されているメソポーラスシリカナノ粒子を含む混合調整液を調製し、塗布面に塗布し、乾燥・焼成して形成する形態としてもよい。
メソポーラスシリカナノ粒子は、ガラスフレーク(フレーク状のメソポーラスシリカナノ粒子)を使用することができ、例えば、日本板硝子株式会社等から販売されているものを購入することができる。
また、混合調整液は、その組成により屈折率を自由に変化させることができる。具体的には、例えば、特許第5313750号公報に記載の方法で、調製することができる。メソポーラスシリカナノ粒子層の屈折率は空隙率に依存し、空隙率が大きいほど屈折率が小さくなるので、所望する屈折率によって、適当な組成で調整する。
また、塗布時にディスペンサー等を用いる場合、塗布面とディスペンサーの距離は、3〜10cmが好ましい。
上記構成とすることで、塗布時間を短くすることができ、膜に筋が入る、色むらができるといった外観不良を抑制することができる。
焼成時の最高温度は160℃以下であり、好ましくは120℃以下である。また、炉内の温度を下げる時間を除く焼成時間は、3時間以下であり、好ましくは2時間以下である。ステップ方式による焼成では、例えば、以下のステップで焼成することができる。
すなわち、30分かけて室温から50℃まで昇温した後、30分かけて50℃から120℃まで昇温し、120℃を保ったまま60分間焼成する。その後、焼成炉の扉を開放し、30分間かけて炉内の温度を下げることにより、焼成することができる。
ステップ方式で焼成することにより、プラスチックレンズ等の耐熱性の比較的低い基材上にも、メソポーラスシリカナノ粒子層を形成することができる。
本工程は、一般的な物理成膜法により行われ、例えば真空蒸着法やスパッタリング法が挙げられるが、スパッタリング法で行うのが好ましい。スパッタリング法としては、コンベンショナル・スパッタリング、マグネトロン・スパッタリング、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリング、反応性スパッタリング等が挙げられる。
スパッタリングで最外層を形成することにより、反射防止膜の耐擦傷性を向上させることができる。
基材温度を上記範囲に設定することにより、プラスチックレンズ等の耐熱性の低い基材でも、膜形成をすることができる。また、反射防止膜の耐擦傷性を向上させることができる。
まず、基材の屈折率と、第n層に使用する材料の屈折率から、第n−1層の屈折率、光学膜厚、及び、第n層の光学膜厚を、暫定的に設定する。この時、第n−1層の屈折率は、第n層の屈折率よりも低くなるように設定する。
次に、フレネルの式から、反射防止膜全体の反射率を算出し、当該反射率が、所望の波長範囲で屈折率が0.5%以下となるように、第1層から第n−2層までの屈折率及び光学膜厚を設定する。このとき、屈折率の検討範囲は、1.2から基材の屈折率未満の範囲で検討する。
最後に、最も広い波長帯で低反射率が実現できるよう、第1層から第n−1層までの屈折率及び、第1層から第n層までの光学膜厚を設定する。
段落0037で述べたように、メソポーラスシリカナノ粒子層の空隙率が大きいほど屈折率が小さくなるので、上記屈折率設定工程で設定した屈折率を示すように、適当な組成で混合調整液を調製する。
第1層から第n−1層を全て上記メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程により行うことで、製造工程を簡略化することができる。
また、屈折率設定工程を備えることにより、中間屈折率への置き換えが不要になり、製造工程をさらに簡略化することができる。
基材温度を上記範囲に設定することで、プラスチックレンズ等の耐熱性の比較的低い基材に対しても、スパッタリング法によって膜形成することができる。
本発明の反射防止膜は、反射防止特性及び耐擦傷性に優れているため、一眼レフカメラレンズ、一眼レフカメラ交換用レンズ、携帯電話・スマートフォン内蔵カメラレンズ、望遠鏡レンズ等の種々の光学素子への反射防止効果及び耐擦傷性の付与に有効である。
また、本発明の反射防止膜を備える光学素子は、一眼レフカメラ、携帯電話・スマートフォン内蔵カメラ、望遠鏡等、種々の光学機器に有用である。
下記表1に記載の層構成に従って、本実施例に係る反射防止膜を形成した。基材及び各層の屈折率は、波長587.56nmの光に対する屈折率であり、以降の実施例においても同様である。各層の形成手順を以下に示す。
5014CL(APEL社製)からなる光学レンズの表面に、下記表1に示す構成の緻密層からなる第1層を、SWOS-2000(深セン市三海科技有限公司製)によるスパッタリング法により形成した。スパッタリング時には、基材温度は30℃とし、下記表2に示す蒸着条件で蒸着した。
日本板硝子株式会社から購入したフレーク状のメソポーラスシリカナノ粒子を用いて、特許第5314750号公報に記載の方法で、下記表1に示す屈折率を有する混合調整液を調製した。
ステップ方式は具体的には、まず、30分かけて焼成炉内の温度を50℃まで昇温した後、30分かけて炉内の温度を120℃まで上昇させた。そして、120℃を保ったまま60分間焼成した後、焼成炉の扉を開放し、炉内の温度を下げた。
第2層の表面に、下記表1に示す構成の最外層を、スパッタリング時の基材温度を20℃とした以外は、第1層と同様に形成した。
下記表3に記載の層構成に従って、本実施例に係る反射防止膜を形成した。各層の形成手順を以下に示す。
まず、第1層及び第2層の屈折率を設定した。具体的には、以下のステップで設定した。
(ステップ1)
第3層に用いるフッ素樹脂の屈折率(1.30)よりも、屈折率の値が小さくなるように、第2層の屈折率を1.16に設定した。また、第2層の光学膜厚を70nm、第3層の光学膜厚を10nmに、暫定的に設定した。
(ステップ2)
SIM上の反射率のグラフを参照し、膜全体の反射率の理論値が0.5%以下となる波長帯が最も広くなるように、第1層の屈折率を1.41、光学膜厚を70nmに暫定的に設定した。
(ステップ3)
広い波長帯でリップルが抑制され、またより広い波長帯で膜全体の反射率の理論値が0.5%以下となるように、第1層の屈折率、及び、第1層から第3層の光学膜厚を調整した(下記表3参照)。
上記設定した屈折率を有する、第1層形成用混合調整液及び第2層形成用混合調整液を、特許第5314750号公報に記載の方法で調製した。
そして、第2層形成用混合調整液を第1層の表面に0.3cc滴下し、第1層と同様に、第2層を形成した。
第2層の表面に、下記表3に示す構成の最外層を、実施例1の第3層と同様に形成した。
下記表4に記載の層構成に従って、基材としてEP-4500(三菱ガス化学株式会社製)を用い、混合調整液の滴下量を0.1ccとした以外は、実施例2と同様の方法で、本実施例に係る反射防止膜を形成した。
実施例1と同様の方法で、本実施例の反射防止膜の反射防止特性を測定した。結果を図4に示す。
また、基材と膜構成の組合せにより、最も低い反射率を示す波長帯が異なることから、用途や使用環境に合わせて、任意の波長帯において最も低い反射率を示すように、基材や膜構成を設定することができる。
下記表5に記載の膜構成及び条件で、反射防止膜を形成し、各反射防止膜の膜強度を評価した。
各条件において、第1層及び第2層は、上記実施例2(1)と同様に形成した。
条件2、3の反射防止膜では、第3層は、MIC-1350(シンクロン社製)を用いたイオンビーム蒸着で形成した。蒸着条件を、表6に示す。
条件4の反射防止膜では、第3層は、実施例1の第3層と同様に形成した。
この結果は、メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程において、焼成をステップ方式で行うことによって、膜強度が向上することを示している。
この結果は、最外層形成工程を、基材温度が160℃以下の、従来に比して低温の条件のスパッタリング法により行うことによって、膜強度が向上することを示している。
下記表8〜19に、本発明に係る反射防止膜の製造例1〜12を示す。
本製造例に係る基材は光学水晶からなる光学レンズを想定し、基材の屈折率は製造例1〜3では1.430、製造例4〜6では1.516、製造例7〜9では1.613、製造例10〜12では1.671を想定して設計した。
また、各製造例の反射防止膜の、理論的に考えられる反射防止特性を、図5〜8に示す。なお、反射率の理論値は、以下の算出方法によって算出した。
(1)膜総数と各層の組合せの設定
本製造例においては、膜総数を3又は4、第n−1層の屈折率を1.16、第n層を二酸化ケイ素からなる膜とし、屈折率を1.47、光学膜厚を10nmで固定して、フレネルの式から反射率の理論値を算出した。
また、第1層を緻密層とし、材料は二酸化ケイ素(屈折率1.46)又はフッ化マグネシウム(屈折率1.38)を想定し、同様に反射率の理論値を算出した。
(2)広い波長帯で低反射となる設計の検討、最適化
実施例2の屈折率設定工程と同様にして、各層の屈折率及び光学膜厚を設定した。
また、本発明に係る反射防止膜の製造方法は、優れた反射防止特性を有する反射防止膜を、従来の製造方法に比して低温で、簡便に製造することができる。
20 反射防止膜
21 第1層
22 第n−1層
23 第n層
Claims (8)
- 基材と、前記基材に対して第1層から第n層(nは3以上の整数)をこの順で積層してなる反射防止膜を備える光学素子であって、
前記反射防止膜の第1層から第n−1層が、メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層であり
前記反射防止膜の第n層が、光学膜厚が100nm以下であり、屈折率が前記第n−1層の屈折率よりも高い層であり、
前記基材から前記第n−1層までの屈折率が、この順で低くなることを特徴とする、光学素子。 - n=3〜5であり、前記反射防止膜全体の反射率が0.5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
- 請求項1又は2に記載の光学素子を製造する製造方法であって、
メソポーラスシリカナノ粒子の集合体からなる層を形成する、メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程と、
第n層を形成する、最外層形成工程と、を備える、光学素子の製造方法。 - 前記メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程を、ゾル−ゲル法により行うことを特徴とする、請求項3に記載の光学素子の製造方法。
- さらに、前記基材から第n−1層の屈折率がこの順に低くなるように、各層の屈折率を設定する、屈折率設定工程を備えることを特徴とする、請求項4に記載の光学素子の製造方法。
- 前記メソポーラスシリカナノ粒子層形成工程において、前記メソポーラスシリカナノ粒子層をステップ方式により焼成することを特徴とする、請求項3〜5の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
- さらに前記最外層形成工程を、スパッタリング法により行うことを特徴とする、請求項3〜6の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の光学素子を備えることを特徴とする、光学機器。
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