JP2013047780A - 光学素子、それを用いた光学系および光学機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この光学素子は、基材2上に反射防止膜が形成されている。ここで、反射防止膜は、基材2上に形成される第1層4と、第1層4の上に形成され、第1層4とは異なる材質からなる第2層5と、第2層5の上に形成され、凹凸構造体からなる第3層6とを含む。また、第3層6は、凹凸構造体の空間充填率を連続して変化させることで、それぞれ厚さに対する屈折率が一定の割合で変化する3つの領域を有する。
【選択図】図2
Description
まず、本発明の一実施形態に係る光学素子について説明する。図1は、本実施形態に係る光学素子1の構成を示す模式断面図である。なお、この図1では、光学素子1の表面部分を拡大して示している。この光学素子1は、光透過性を有する基材2と、この基材2の表面上(基材上)に形成され、基材2の側から順に反射防止膜3を構成する3つの層、第1層4、第2層5および第3層6とを含む。ここで、「反射防止膜」とは、例えばデジタルカメラなどの光学機器に用いられる撮影レンズにて、その結像光学系に採用される光学素子の表面に形成され、不要光によるゴーストやフレアを回避するための膜を示す。なお、以下の説明において例示する屈折率の値は、全て基準波長550nmで規定している。
(neff 2−1)/(neff 2+2)=ff(nm 2−1)/(nm 2+2) (1)
すなわち、波長以下のピッチで、空間充填率ffが連続して変化するような構造体を形成すれば、第3層6は、屈折率が実質的に連続して変化する構造体となる。
次に、本発明の第2実施形態に係る光学素子について説明する。本実施形態の光学素子は、第1実施形態に係る光学素子1の構造において、基材2の材質、および反射防止膜3の各層の厚さと屈折率を変更したものである。図5は、本実施形態に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図5(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。なお、説明の簡単化のために、本実施形態における光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本実施形態では、基材2として屈折率が1.888である株式会社オハラ製の硝材S−LAH58を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は、厚さを50nm、屈折率を1.695とする膜とし、第2層5は、厚さを20nm、屈折率を1.580とする膜とする。さらに、第3層6は、厚さを232nmとし、屈折率は、1.58から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6は、上記のように第1領域から第3領域までの3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ35nmに渡り、屈折率が6.57×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ72nmに渡り、屈折率が1.94×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ125nmに渡り、屈折率が1.68×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、本発明の第3実施形態に係る光学素子について説明する。本実施形態の光学素子も、第1実施形態に係る光学素子1の構造において、基材2の材質、および反射防止膜3の各層の厚さと屈折率を変更したものである。図6は、本実施形態に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図6(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。ここでも、本実施形態における光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本実施形態では、基材2として屈折率が1.934である株式会社オハラ製の硝材S−NPH2を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は、厚さを30nm、屈折率を1.70とする膜とし、第2層5は、厚さを45nm、屈折率を1.55とする膜とする。さらに、第3層6は、厚さを235nmとし、屈折率は、1.55から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6は、上記のように第1領域から第3領域までの3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ17nmに渡り、屈折率が11.76×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ48nmに渡り、屈折率が2.92×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ170nmに渡り、屈折率が1.24×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、本発明の第4実施形態に係る光学素子について説明する。本実施形態の光学素子も、第1実施形態に係る光学素子1の構造において、基材2の材質、および反射防止膜3の各層の厚さと屈折率を変更したものである。図7は、本実施形態に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図7(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。ここでも、本実施形態における光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本実施形態では、基材2として屈折率が1.716である株式会社オハラ製の硝材S−LAL8を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は、厚さを50nm、屈折率を1.56とする膜とし、第2層5は、厚さを18nm、屈折率を1.51とする膜とする。さらに、第3層6は、厚さを230nmとし、屈折率は、1.51から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6は、上記のように第1領域から第3領域までの3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ42nmに渡り、屈折率が4.52×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ28nmに渡り、屈折率が4.29×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ160nmに渡り、屈折率が1.25×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、本発明の第5実施形態に係る光学素子について説明する。本実施形態の光学素子も、第1実施形態に係る光学素子1の構造において、基材2の材質、および反射防止膜3の各層の厚さと屈折率を変更したものである。図8は、本実施形態に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図8(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。ここでも、本実施形態における光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本実施形態では、基材2として屈折率が1.658である株式会社オハラ製の硝材S−NBH5を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は、厚さを62nm、屈折率を1.52とする膜とし、第2層5は、厚さを10nm、屈折率を1.46とする膜とする。さらに、第3層6は、厚さを240nmとし、屈折率は、1.46から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6は、上記のように第1領域から第3領域までの3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ18nmに渡り、屈折率が7.78×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ60nmに渡り、屈折率が2.33×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ162nmに渡り、屈折率が1.11×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、本発明の第6実施形態に係る光学素子について説明する。本実施形態の光学素子も、第1実施形態に係る光学素子1の構造において、基材2の材質、および反射防止膜3の各層の厚さと屈折率を変更したものである。図9は、本実施形態に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図9(a)は図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。ここでも、本実施形態における光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本実施形態では、基材2として屈折率が2.011である株式会社オハラ製の硝材S−LAH79を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は厚さを55nm、屈折率を1.75とする膜とし、第2層5は厚さを18nm、屈折率を1.54とする膜とする。さらに、第3層6は厚さを256nmとし、屈折率は1.54から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6は、上記のように第1領域から第3領域まで3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ36nmに渡り、屈折率が5.28×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ60nmに渡り、屈折率が2.83×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ160nmに渡り、屈折率が1.13×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、本発明の第7実施形態に係る光学素子について説明する。本実施形態の光学素子も第1実施形態に係る光学素子1の構造において、基材2の材質、および反射防止膜3の各層の厚さと屈折率を変更したものである。図10は、本実施形態に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に図10(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。ここでも、本実施形態における光学素子の構成要素には第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本実施形態では、基材2として屈折率が2.170である株式会社住田光学ガラス製の硝材K−PSFn215を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は厚さを50nm、屈折率を1.81とする膜とし、第2層5は厚さを16nm、屈折率を1.56とする膜とする。さらに、第3層6は厚さを240nmとし、屈折率は、1.56から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6は、上記のように第1領域から第3領域まで3つの領域を有する。この場合、第1領域は厚さ40nmに渡り、屈折率が4.5×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ55nmに渡り、屈折率が3.64×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ145nmに渡り、屈折率が1.24×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、参考として、上記実施形態に係る光学素子1に対する、第1比較例としての光学素子について説明する。この第1比較例では、特に、従来技術である特許文献1に示す反射防止膜を有する光学素子との比較を行う。まず、図11および図12は、特許文献1に記載の構成に基づいて計算した反射防止膜を有する第1比較例に係る光学素子の反射率特性を示すグラフである。これらの図は、図3(b)などの上記実施形態に係る光学素子1の反射率特性を示すグラフに対応している。特に、図11(a)は、基材や反射防止膜の各層の屈折率分散を考慮していないため若干の誤差はあるが、ほぼ特許文献1に記載の結果が現れたグラフである。次に、図11(b)は、特許文献1に記載の構成において、反射防止膜の各層の厚さがそれぞれ10%薄い場合の光学素子の反射率特性を示すグラフである。この場合、光学厚さ(光学的膜厚)は、第1層では0.243λ、第2層では0.063λ、第3層では0.27λ、さらに第4層では0.234λとなる。次に、図12(a)は、特許文献1に記載の構成において、反射防止膜の各層の厚さがそれぞれ10%厚い場合の光学素子の反射率特性を示すグラフである。この場合、光学厚さは、第1層では0.297λ、第2層では0.077λ、第3層では0.33λ、さらに第4層では0.286λとなる。これらの結果から明らかなように、上記実施形態の光学素子1の方が、反射防止膜の各層の厚さが±10%変化した場合の反射率特性の変動が少なく、優れた反射防止性能を有することが分かる。
また、参考として、上記実施形態に係る光学素子1に対する、第2比較例としての光学素子について説明する。この第2比較例では、特に、上記実施形態における各種数値範囲を逸脱した構成を有する光学素子との比較を行う。図13は、第2比較例に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図13(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。なお、本比較例においても光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本比較例では、基材2として、第1実施形態と同様に、屈折率が1.808である株式会社オハラ製の硝材S−LAH65を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は、厚さを28nm、屈折率を1.620とする膜とし、第2層5は、厚さを30nm、屈折率を1.52とする膜とする。さらに、第3層6は、厚さを190nmとし、屈折率は、1.52から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6も、第1実施形態と同様に第1領域から第3領域までの3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ12nmに渡り、屈折率が14.17×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ30nmに渡り、屈折率が5.67×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ148nmに渡り、屈折率が1.22×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
さらに、参考として、上記実施形態に係る光学素子1に対する、第3比較例としての光学素子について説明する。この第3比較例でも、第2比較例と同様に、上記実施形態における各種数値範囲を逸脱した構成を有する光学素子との比較を行う。図14は、第3比較例に係る光学素子の構造および特性を示すグラフである。特に、図14(a)は、図2に対応した光学素子の屈折率構造を具体的に示すグラフである。なお、本比較例においても光学素子の構成要素には、第1実施形態の光学素子1のものと同一の符号を付す。本比較例でも、基材2として、第1実施形態(第2比較例)と同様に、屈折率が1.808である株式会社オハラ製の硝材S−LAH65を採用する。また、反射防止膜3を構成する層のうち、第1層4は、厚さを35nm、屈折率を1.620とする膜とし、第2層5は、厚さを48nm、屈折率を1.52とする膜とする。さらに、第3層6は、厚さを320nmとし、屈折率は、1.52から1.0に連続して変化する凹凸構造体とする。また、第3層6も、第1実施形態と同様に第1領域から第3領域までの3つの領域を有する。この場合、第1領域は、厚さ45nmに渡り、屈折率が3.78×10−3nm−1の割合で連続して変化する。第2領域は、厚さ75nmに渡り、屈折率が2.27×10−3nm−1の割合で連続して変化する。そして、第3領域は、厚さ148nmに渡り、屈折率が0.90×10−3nm−1の割合で連続して変化する。
次に、本発明の一実施形態の光学系および光学機器について説明する。本実施形態の光学系は、例えば、デジタルカメラやビデオカメラなどの光学機器が備えるレンズ部またはレンズ鏡筒の内部に構成される結像光学系を含み、この結像光学系の一部として、上記実施形態にて説明した光学素子1を採用し得る。図16は、本発明の一実施形態に係る光学系100の構成を示す要部断面図である。この光学系100は、焦点距離14mm(f=14.3)のカメラ用広画角レンズであり、このときの画角ωは、56.5°であり、FNo.は、2.89である。また、(表1)は、光学系100のレンズ設計値を示す表である。(表1)では、光学系100の最も左側に位置する被写体像の入射面から撮像面(撮像素子またはフィルム101)に対向するまでの各光学面に対応する面番号No.が付されている。そして、この各面番号No.に対して、曲率半径r(mm)、レンズ面間の厚さd(mm)、基準波長550nmにおける屈折率nおよびアッベ数νをそれぞれ示している。この光学系100では、被写体像の入射側に位置する光学素子として、上記実施形態に係る光学素子1が配置され、その像側の面(No.2)に反射防止膜3が形成されている。このように、No.2の面は、大きな曲率(開角)を有するにも関わらず、上記実施形態に示す反射防止膜3が形成されることで、面の中心部から周辺部まで高い反射防止性能を実現することができる。したがって、本実施形態の光学系100は、フレアやゴーストなどの不要光の発生を抑制する高品質、高品位なものとなる。なお、本実施形態で説明した光学系100は、一例であり、例えば、焦点距離の長い望遠レンズや、双眼鏡などの観察光学系として、上記実施形態の光学素子1を採用し得る。さらに、光学機器は、このような光学系100を採用することで、フレアやゴーストなどの不要光の発生を抑制した画像や動画が得られる高品質、高品位なものとなる。
2 基材
3 反射防止膜
4 第1層
5 第2層
6 第3層
Claims (8)
- 基材上に反射防止膜が形成された光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材上に形成される第1層と、
前記第1層に形成され、前記第1層とは異なる材質からなる第2層と、
前記第2層に形成され、凹凸構造体からなる第3層と、を含み、
前記第3層は、前記凹凸構造体の空間充填率を連続して変化させることで、それぞれ厚さに対する屈折率が一定の割合で変化する3つの領域を有する、
ことを特徴とする光学素子。 - 屈折率を規定する基準波長を550nmとした場合、
前記基材は、屈折率が1.65〜2.20の範囲にあり、
前記第1層は、厚さが30〜70nmで、屈折率が1.52〜1.82の範囲にあり、
前記第2層は、厚さが10〜50nmで、屈折率が1.40〜1.58の範囲にあり、
前記第3層は、厚さが200〜300nmで、屈折率が1.40〜1.58の範囲から1.0に向かって変化し、
前記領域は、前記第2層から順に、
厚さが15〜45nmに渡り、屈折率が4.4〜12×10−3nm−1の割合で変化する第1領域と、
厚さが25〜75nmに渡り、屈折率が1.9〜4.3×10−3nm−1の割合で変化する第2領域と、
厚さが120〜200nmに渡り、屈折率が0.9〜1.8×10−3nm−1の割合で変化する第3領域と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。 - 前記第1層、前記第2層、および前記第3層は、ウェットプロセスにて形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記第1層は、有機樹脂層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学素子。
- 前記第2層は、酸化アルミニウムを主成分とする多孔質層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学素子。
- 前記第3層は、酸化アルミニウムを主成分とする板状結晶から形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学素子。
- 少なくとも2つ以上の光学素子を有する光学系であって、
前記光学素子のうち少なくとも1つは、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学素子であることを特徴とする光学系。 - 光学系を有する光学機器であって、
前記光学系は、請求項7に記載の光学系であることを特徴とする光学機器。
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