JP2007078780A - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基材と、その基材の上に、直にまたは他の層を介して積層された多層の反射防止層とを有し、多層の反射防止層は、少なくとも一層の有機層と、少なくとも一層の無機層とを備え、その最表層が有機層である、眼鏡レンズを提供する。耐熱性では、多層の無機層からなる反射防止層を備えた眼鏡レンズよりも高く、反射防止効果では、有機層からなる反射防止層を備えた眼鏡レンズよりも高い性能を備えた眼鏡レンズを提供できる。
【選択図】 図7
Description
(A)一般式:R1 pR2 qSiX1 4−q−pで表される有機ケイ素化合物
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、X1は加水分解性基であり、pおよびqは、少なくとも一方は1であり、他方は0または1である。)
(B)シリカ系微粒子
有機層においては、(A)成分(以降ではA成分)の有機ケイ素化合物がバインダーとして機能し、(B)成分(以降ではB成分)のシリカ系微粒子は屈折率を低く調整できる成分である。
図1に、本例で製造された眼鏡レンズ10の概略構成を断面図により示す。なお、眼鏡レンズ10においては、一般的に、基材の両面に、同じ構成の層が形成されるが、以下では、基材の一方の面上に形成された層構成を代表して示してある。以下の各例においても同様である。レンズ基材11は、屈折率1.67の眼鏡用のプラスチックレンズ基材(セイコーエプソン(株)製:セイコースーパーソブリン用レンズ生地(以下SSVと略す。)である。このレンズ基材11の表面に、ハードコート層20と、無機層31および有機層32からなる反射防止層30と、防汚層40とを成層し、眼鏡レンズ10を製造した。
ハードコート層20の塗布液HC1は、次のように調製した。撹拌子を備えた反応容器に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−2940)74.93gと、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン37.61gと、0.1規定塩酸水溶液38.2gとを投入し、60分撹拌した。次に、蒸留水275.11gを投入し、さらに60分撹拌した。その後、ルチル型酸化チタン・酸化ジルコニウム・酸化珪素・酸化スズの複合ゾル(触媒化成工業(株)製:オプトレイク1120Z(11RU−7/A8))584.39gと、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−7604)0.30gとを添加した。そして、充分に撹拌した後、ハードコート層20用の塗布液HC1を得た。
基材11の上に形成されたハードコート層20の上に、レンズ基板11の側から順に、高屈折率の無機層31としてTiO2層31aと、低屈折率の有機層32とを積層し、無機層31と有機層32とからなる2層の反射防止層30を形成した。
まず、ハードコート層20の表面20sを、プラズマ処理(アルゴンプラズマ400W×60秒)する。その上に、以下の条件で、イオンアシスト蒸着法(真空蒸着法)により、TiO2層31aを成層した。
加速電圧:520V
加速電流:270mA
真空度:酸素を導入して4.0×10−3Paを保持する。
有機層32を形成するための塗布液(低屈折率層コーティング組成物)AR1を調製した。先ず、ステンレス製容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGME)48.6gと、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン14.1gとを混合した。その後、0.1規定塩酸水溶液4.0gを撹拌しながら滴下し、5時間撹拌した。この液に、イソプロパノール分散中空シリカゾル(平均粒径91nm、固形分濃度30wt%)33.3gを加えて十分に混合した後、硬化触媒としてAl(C5H7O2)3を0.06gと、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L7604)とを0.03g添加して撹拌して溶解した。そして、固形分濃度が20%の有機層32のコーティング原液を得た。このコーティング原液を希釈するために、300ppm濃度のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L7604)入りのPGME溶液を準備した。そして、コーティング原液35.3gに対して、希釈用界面活性剤入りのPGME溶液114.7gを混合して、十分に撹拌して、固形分濃度が約4.7%の有機層32用のコーティング液AR1を得た。
処理圧力:0.1Torr
導入ガス:乾燥空気
電極間距離:24cm
電源出力:DC1KV
処理時間:60sec
基材11の上にハードコート層20および反射防止層30が形成されたプラスチックレンズ10を洗浄し、反射防止層30の表面に防汚加工(撥水加工)を行った。防汚層用の処理液WRとしては、フッ素系シラン化合物(ダイキン工業(株)製:オプツールDSX)の0.1%溶液(溶媒:パーフロロヘキサン)を用いた。この防汚層用の処理液WRの中にレンズ10を浸積し、1分放置後10cm/minで引き上げ、反射防止層30の最表層である有機層32の表面32sに防汚処理液WRを塗布した。塗布後、室温に一日放置し、反射防止層30の最表層である有機層32の表面32sに防汚層(撥水膜)40を形成した。これらの工程により、実施例1の眼鏡レンズ10が製造された。
図2に、実施例2の眼鏡レンズ10の概略構成を示してある。この例では、レンズ基材11として、屈折率1.60の眼鏡用プラスチック製レンズ基材(セイコーエプソン(株)製:セイコースーパールーシャス用レンズ生地(以下SLUと略す。)を用いて眼鏡レンズ10を製造した。
ハードコート層20の塗布液HC2は、次のように調製した。撹拌子を備えた反応容器に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製:LS−2940)42.40gと、ビニルトリメトキシシラン56.30gと、ジシラン化合物(DS)15.6gと、IPA分散コロイド状シリカ(触媒化成工業(株)製:オスカル1432)46.70gと、ルチル型酸化チタン・酸化ジルコニウム・酸化珪素・酸化スズの複合ゾル(触媒化成工業(株)製:オプトレイク1120Z(11RU−7/A8))500.00gとを投入した。そして、充分に撹拌した後に、0.1規定塩酸水溶液38.90gを投入し、60分撹拌した。次に、蒸留水200.00g、イソプロピルセロソルブ65.10gを投入し、60分撹拌した。その後、エポキシメタクリレート(EA−1)32.00gと、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−7604)0.30gとを添加し、充分に撹拌した後、ハードコート層20用の塗布液HC2を得た。
基材11の上に形成されたハードコート層20の上に、レンズ基板11の側から順に、高屈折率の無機層31としてZrO2層31bと、低屈折率の有機層32とを積層し、無機層31および有機層32の2層からなる反射防止層30を形成した。
まず、ハードコート層20の表面20sを、上記1.2.1と同様の条件でプラズマ処理する。その上に、上記1.2.1と同じ条件で、イオンアシスト蒸着法により、ZrO2層31bを形成した。この工程により形成されたZrO2層31bの屈折率は2.05、光学層厚は0.075λである。
下地となる無機層31であるZrO2層31bの表面31sに、上記1.2.2と同じ条件で前処理を行い、上記1.2.2と同じ塗布液AR1を同じ条件で塗布し、ZrO2層31bに重ねて有機層32を形成した。この工程により形成された有機層32は、屈折率が1.40、光学層厚0.291λである。
上記1.3と同様に、反射防止層30の最表層である有機層32の表面32sに防汚層40を形成した。これらの工程により、実施例2の眼鏡レンズ10が製造された。
図3に、実施例3の眼鏡レンズ10の概略構成を示してある。この例では、レンズ基材11として、屈折率1.67のレンズ生地(SSV)を用いて眼鏡レンズ10を製造した。
上記1.1と同様に、塗布液HC1を用いて、スピンコーティングによりハードコート層20を形成した。この工程によりレンズ表面11sに形成されたハードコート層20は、屈折率が1.67で、層厚は2μmである。
基材11の上に形成されたハードコート層20の上に、レンズ基板11の側から順に、無機層31として、SiO2層31c、ZrO2層31b、SiO2層31cおよびZrO2層31bの4層と、有機層32とを積層し、無機層31および有機層32からなる5層の反射防止層30を形成した。
まず、ハードコート層20の表面20sを、上記1.2.1と同様の条件でプラズマ処理する。その上に、上記1.2.1と同じ条件で、イオンアシスト蒸着法により、SiO2層31c、ZrO2層31b、SiO2層31cおよびZrO2層31bを順番に形成した。この工程により形成された各層の屈折率および光学層厚は、基板11の側から順番に以下の通りである。
SiO2層31c:屈折率1.46、光学層厚0.075λ
ZrO2層31b:屈折率2.05、光学層厚0.17λ
SiO2層31c:屈折率1.46、光学層厚0.05λ
ZrO2層31b:屈折率2.05、光学層厚0.25λ
下地となる無機層31であるZrO2層31bの表面31sに、上記1.2.2と同じ条件で前処理を行い、上記1.2.2と同じ塗布液AR1を同じ条件で塗布し、ZrO2層31bに重ねて有機層32を形成した。この工程により形成された有機層32は、屈折率が1.40、光学層厚0.272λである。
上記1.3と同様に、反射防止層30の最表層である有機層32の表面32sに防汚層40を形成した。これらの工程により、実施例3の眼鏡レンズ10が製造された。
図4に、実施例4の眼鏡レンズ10の概略構成を示してある。この例では、レンズ基材11として、屈折率1.60のレンズ生地(SLU)を用いて眼鏡レンズ10を製造した。
上記2.1と同様に、塗布液HC2を用いて、スピンコーティングによりハードコート層20を形成した。この工程によりレンズ表面11sに形成されたハードコート層20は、屈折率が1.60で、層厚は2μmである。
基材11の上に形成されたハードコート層20の上に、レンズ基板11の側から順に、無機層31として、SiO2層31c、ZrO2層31b、SiO2層31c、ZrO2層31bおよびSiO2層31cの5層と、有機層32とを積層し、無機層31および有機層32からなる6層の反射防止層30を形成した。
まず、ハードコート層20の表面20sを、上記1.2.1と同様の条件でプラズマ処理する。その上に、上記1.2.1と同じ条件で、イオンアシスト蒸着法により、SiO2層31c、ZrO2層31b、SiO2層31c、ZrO2層31bおよびSiO2層31cを順番に形成した。この工程により形成された各層の屈折率および光学層厚は、基板11の側から順番に以下の通りである。
SiO2層31c:屈折率1.46、光学層厚0.083λ
ZrO2層31b:屈折率2.05、光学層厚0.17λ
SiO2層31c:屈折率1.46、光学層厚0.075λ
ZrO2層31b:屈折率2.05、光学層厚0.195λ
SiO2層31c:屈折率1.46、光学層厚0.025λ
下地となる無機層31であるSiO2層31cの表面31sに、上記1.2.2と同じ条件で前処理を行い、上記1.2.2と同じ塗布液AR1を同じ条件で塗布し、SiO2層31cに重ねて有機層32を形成した。この工程により形成された有機層32は、屈折率が1.40、光学層厚0.28λである。
上記1.3と同様に、反射防止層30の最表層である有機層32の表面32sに防汚層40を形成した。これらの工程により、実施例4の眼鏡レンズ10が製造された。
図5に、比較例1の眼鏡レンズ90の概略構成を示してある。この例では、レンズ基材11として、屈折率1.67のレンズ生地(SSV)を用いて眼鏡レンズ90を製造した。
上記1.1と同様に、塗布液HC1を用いて、スピンコーティングによりハードコート層20を形成した。この工程によりレンズ表面11sに形成されたハードコート層20は、屈折率が1.67で、層厚は2μmである。
基材11の上に形成されたハードコート層20の上に、レンズ基板11の側から順に、SiO2層31c、ZrO2層31b、SiO2層31c、ZrO2層31b、およびSiO2層31cの、5層の無機層からなる反射防止層91を形成した。これら各層の形成条件および層厚は、上記4.2.1と同じである。
上記1.3と同様に、反射防止層91の表面91sに防汚層40を形成した。これらの工程により、比較例1の眼鏡レンズ90が製造された。
図6に、比較例2の眼鏡レンズ90の概略構成を示してある。この例では、レンズ基材11として、屈折率1.67のレンズ生地(SSV)を用いて眼鏡レンズ90を製造した。
上記1.1と同様に、塗布液HC1を用いて、スピンコーティングによりハードコート層20を形成した。この工程によりレンズ表面11sに形成されたハードコート層20は、屈折率が1.67で、層厚は2μmである。
下地となるハードコート層20の表面20sに、上記1.2.2と同じ条件で前処理を行い、上記1.2.2と同じ塗布液AR1を同じ条件で塗布し、ハードコート層20に重ねて有機層32からなる反射防止層92を形成した。この工程により形成された有機層32は、屈折率が1.40、光学層厚0.24λである。
上記1.3と同様に、反射防止層92の有機層32の表面92sに防汚層40を形成した。これらの工程により、比較例2の眼鏡レンズ90が製造された。
上記の実施例1〜4および比較例1〜2で得られた眼鏡レンズ10および90をサンプルレンズとして、それらについて、クラックの発生温度を測定して耐熱性を評価し、また、反射率を測定して反射防止効果を評価した。
サンプルレンズを40℃のオーブン(恒温槽)の中に入れて30分間加熱した。次に、オーブンからサンプルレンズを取り出した後、室温で30分放置した。その後、サンプルレンズの外観を、暗箱内で目視検査し、クラックの発生の有無を確認した。クラックが発生していない場合は、オーブンの設定温度を10℃ずつ上げてサンプルレンズを再度、30分間加熱し、同様の評価を行い、100℃まで試験を行った。濃いクラックの発生を確認したときの温度を、クラック発生温度とした。そして、以下の段階に分けて評価した。「◎」は耐熱性が非常に高く、クラック発生温度が100℃、または100℃でもクラックが発生しないことを示している。「○」は耐熱性が高く、クラック発生温度が80℃〜90℃であることを示している。「×」は耐熱性が低く、クラック発生温度が70℃以下であることを示している。
レンズ表面の反射率の測定は、分光光度計((株)日立製作所製:U−3500)で行った。可視光域(400nm〜800nm)の平均反射率(片面)を測定し、その結果から、以下の段階に分けて評価した。「◎」は反射防止効果が非常に大きく、平均反射率が2%以下であることを示している。「○」は反射防止効果が十分にあり、平均反射率が3.5%以下であることを示している。「×」は反射防止効果がほとんどなく、平均反射率が3.5%を越えることを示している。
図7に、実施例1〜4および比較例1、2に関する層構成と評価結果を纏めて示してある。耐熱性において、実施例1〜4は、いずれも「○」であり、十分に高い耐熱性を備えている。比較例1は、耐熱性が低く、比較例2は、耐熱性が非常に高い。
30 反射防止層、31 無機層、32 有機層、40 防汚層
Claims (5)
- 基材と、その基材の上に、直にまたは他の層を介して積層された多層の反射防止層とを有し、
前記多層の反射防止層は、少なくとも一層の有機層と、少なくとも一層の無機層とを備えており、
前記反射防止層の最表層は、有機層である、光学物品。 - 請求項1において、前記少なくとも一層の有機層の屈折率は、前記多層の反射防止層に含まれる無機層のいずれの層の屈折率より低い、光学物品。
- 請求項1または2において、前記少なくとも一層の有機層は、下記(A)成分および(B)成分を含有する、光学物品。
(A)一般式:R1 pR2 qSiX1 4−q−pで表される有機ケイ素化合物
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、X1は加水分解性基であり、pおよびqは、少なくとも一方は1であり、他方は0または1である。)
(B)シリカ系微粒子 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の光学物品は、眼鏡レンズである、光学物品。
- 前記基材の上に、直にまたは他の層を介して積層された多層の反射防止層を形成する工程を有し、
前記多層の反射防止層は、少なくとも一層の有機層と、少なくとも一層の無機層とを備えており、前記多層の反射防止層を形成する工程は、前記無機層の上に、前記有機層を形成する工程を含む、光学物品の製造方法。
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