JPH0915402A - 反射防止膜を有する光学物品およびその製造方法 - Google Patents

反射防止膜を有する光学物品およびその製造方法

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JPH0915402A
JPH0915402A JP7165550A JP16555095A JPH0915402A JP H0915402 A JPH0915402 A JP H0915402A JP 7165550 A JP7165550 A JP 7165550A JP 16555095 A JP16555095 A JP 16555095A JP H0915402 A JPH0915402 A JP H0915402A
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layer
film
optical article
hard coat
group
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JP7165550A
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Inventor
Kei Ishimura
圭 石村
Koji Narisawa
孝司 成澤
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】反射防止性能および耐久性に優れる反射防止膜
を備えるプラスチック基材の光学物品。 【構成】樹脂基材31表面にハードコート膜32を形成
し、ハードコート膜31表面にイオンビームクリーニン
グを施したのち、その表面に反射防止膜37を形成す
る。なお、イオンビームクリーニングは、アルゴンを用
い、1×10-4Torr以下に減圧した雰囲気中で、イ
オン電流密度を0.3〜30μA/cm2として行う。
得られた光学物品では、ハードコート膜31と反射防止
膜37との界面には、アルゴンが含まれている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチック基材およ
び反射防止膜を備える、メガネレンズ、カメラレンズ、
光学フィルターなどの光学物品と、その製造方法とに関
する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックは、ガラスに比べて、軽
量、かつ、加工性、耐衝撃性に優れ、染色しやすい等の
有用な利点を備えている。そこで、従来より、ガラスに
代わる光学素材として、プラスチックが注目されてい
る。例えば、ガラスレンズに代わるものとして、使用目
的に応じて改良したプラスチックレンズが次々に提案さ
れている。最近では、レンズの薄型化のために、高屈折
率、低色収差のプラスチックレンズが数多く提案されて
いる。
【0003】プラスチックは、前述したような数多くの
有用な利点を有している。しかし、その反面、一般に、
プラスチックは、硬度が不十分で傷がつきやすい、溶媒
に侵されやすい、帯電して埃を吸着する、耐熱性が不十
分である等の欠点もまた有している。実際、プラスチッ
クには、例えばメガネレンズやカメラレンズなどの光学
部材の素材として使用する場合に、ガラスに比べ実用上
不満足点が多い。そのため、通常、光学部材に用いられ
ているプラスチック基材の表面には、目的に応じて、プ
ラスチック基材の欠点をカバーするためのコーティング
が施されている。
【0004】しかし、プラスチック基材そのものの耐熱
性がガラス基材より劣るために、ガラスレンズに従来よ
り用いられているコーティングの多くは、プラスチック
レンズに用いることはできない。これらのコーティング
膜の形成に必要となる熱処理に、プラスチック基材が耐
えないからである。そこで、種々の目的のプラスチック
基材用コーティング膜が開発されている。
【0005】その一例として、表面反射を抑止するの反
射防止膜が挙げられる。近年、薄型化の要請から、プラ
スチックレンズを高屈折率化、あるいは非球面化する傾
向にあり、これに伴うレンズの曲率の拡大から、反射像
が目立つようになってきている。この表面反射を抑止す
る為、従来のプラスッチク基材に対する反射防止膜より
も、更に表面反射を少なくする多層反射防止膜が開発さ
れてきている。
【0006】この多層反射防止膜は、例えば、特開昭5
6−113101号公報,特開昭59−48702号公
報,特開昭59−78301号公報,特開昭59−78
304号公報,特開平4−217203号公報,特開平
4−328501号公報,特開平4−355402号公
報,特開平5−330849号公報,特開平5−530
02号公報,特公平6−85002号公報,特開平6−
11602号公報などに開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】最近の眼鏡用レンズ等
の光学物品に対して、より反射防止性能、耐擦傷性、密
着性、耐温水性、耐薬品性、耐候性、耐衝撃性の高いも
のが要求されている。特に、眼鏡用レンズは、その使用
目的、使用環境、デザイン等の多様化により、上記の性
能をさらに向上させる必要性が生じている。また、レン
ズの薄型化に伴って、基材となる材料の種類を変化させ
た場合、基材上に形成いするハードコート膜や反射防止
膜等の薄膜の性能が変化してしまい、上記の各性能が低
下することがあるという問題点も生じた。
【0008】そこで、本発明は、使用目的、使用環境、
デザイン、基材の種類等の各種条件が変化しても、上記
性能が低下しない、より高性能な光学物品を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来の樹脂
基材上に有機ケイ素化合物からなるハードコート膜を浸
漬法により形成し、さらにその上に無機化合物からなる
多層の反射防止膜を真空蒸着法により形成し、耐擦傷
性、密着性、耐温水性、耐薬品性、耐候性、耐衝撃性に
関する試験を行なった。
【0010】そして、その性能試験の結果と試験後の光
学物品の観察結果から、ハードコート膜や反射防止膜の
材料や膜厚、製造方法や製造条件についてさらに検討し
た。その結果、本発明者は、基材とハードコート膜、ハ
ードコート膜と反射防止層との各界面に着目し、特に基
材とハードコート膜の界面の性能を改善すれば、上記性
能を向上させることができることを見出した。
【0011】また、前記界面の改善に加えて、反射防止
膜の製造方法を改善すれば、さらに性能を向上させるこ
とが可能であることも判明した。
【0012】加えて、本発明者らは、特定のハードコー
ト層の組成における、好ましい製造条件を見出すことに
成功した。
【0013】そこで、本発明は、樹脂基材上にハードコ
ート膜を形成した後に、イオンビームクリーニングを行
ない、その上に反射防止膜を形成する。イオンビームク
リーニングを行なうことにより、ハードコート膜と反射
防止膜との界面における、ハードコート膜側の表面付近
に、水素原子が6×1021(atoms/cm3)の割
合で存在する領域が形成される。また、不活性ガスでイ
オンビームクリーニングを行なうと、例えばアルゴンガ
スを用いた場合、ハードコート膜側の表面付近には、ア
ルゴン原子が存在する領域が形成される。
【0014】また、特に有機ケイ素化合物に、酸化スズ
のコロイド粒子を核として、その周辺を酸化スズ−酸化
タングステン複合体のコロイド粒子が取り囲んだ二重構
造の分散相が分散した変性ゾルを添加したハードコート
膜をイオンビームクリーニングする場合には、1×10
-4Torr以下に減圧した雰囲気中で、アルゴンイオン
の電流密度を0.3〜30μA/cm2とすることが好
ましい。そして、反射防止膜を形成するときにイオンビ
ームアシストを行なうことにより、さらに性能を向上さ
せることができる。
【0015】
【作用】上記反射防止膜は、高い反射防止性能を得るた
めには、複数の層からなる多層膜であることが望まし
く、具体的には、ハードコート膜側から順に積層され
た、屈折率が1.9以上である第1層と、屈折率が1.
5以下である第2層と、屈折率が2.1以上である含む
第3層と、屈折率が1.5以下である第4層とを備える
ことが望ましい。これらの各層は、蒸着法、イオンプレ
ーティング法、スパッタリング法などにより形成するこ
とができる。
【0016】各層をこのような組成にすると、第1層
は、下のハードコート膜と上の第2層の双方に対し、密
着性を向上せさる効果があり、第2層は、第1層と第3
層に対して密着性を向上させる。さらに、第1層と第2
層とを合わせた層は、全体として、第3層と第4層との
中間の屈折率を備えることになり、中間屈折率層として
機能する。この中間屈折層(第1層および第2層)上に
高屈折層(第3層)および低屈折層(第4層)をこの順
で積層することにより、本発明では、優れた反射防止特
性が実現されている。
【0017】第1層および第3層は、高屈折率物質を主
成分とすることが望ましい。第1層の高屈折率物質とし
ては、組成式がZrO2、HfO2、Ta25、あるいは
TiO2として表わされる物質、またはそれらの混合物
質等が挙げられ、第3層の高屈折率物質としては、組成
式がTa25あるいはTiO2として表わされる物質、
またはそれらの混合物質等が挙げられる。これらのう
ち、膜の特性、耐薬品性、耐熱性の点から、第1層、第
3層ともに組成式がTiO2である物質からなることが
望ましい。また、第2層および第4層は、低屈折率物質
を主成分とすることが望ましい。第2層および第4層の
低屈折率物質の組成式はSiO2であることが望まし
い。すなわち、上記第1層および第3層は、組成式がT
iO2である物質からなることが望ましく、上記第1層
および第3層は、組成式がSiO2である物質からなる
ことが望ましい。また、低屈折物質として、フッ化マグ
ネシウム(屈折率1.38)とアルミナ(屈折率1.6
0)との混合物を用いることもできる。
【0018】また、設計波長における反射率を0.6%
以下にし、反射光が白色光にならないようにして、望ま
しい美観を得るためには、設計波長をλ0とするとき、
第1層の光学的膜厚は、0.03〜0.08λ0であ
り、第2層の光学的膜厚は、0.06〜0.14λ0
あり、上記第3層の光学的膜厚は、0.40〜0.60
λ0であり、上記第4層の光学的膜厚は、0.22〜
0.27λ0であることが望ましい。なお、ここでは、
設計波長λ0を450〜600nmの範囲とする。ま
た、光学的膜厚とは、その膜における波長λ0の光の屈
折率と該膜の物理的膜厚との積である。
【0019】本発明では、上記ハードコート膜表面を、
イオンビームクリーニングにより処理しておくことで、
ハードコート膜と反射防止膜との密着性をさらに向上さ
せる。従って、これにより、ハードコート層との密着性
や、耐熱性、および耐擦傷性、耐温水性、耐薬品性など
の耐久性を向上する。なお、イオンビームクリーニング
は、主に減圧下で不活性元素のイオンを照射することに
より行われる。
【0020】イオンビームクリーニングおよびイオンビ
ームアシストのいずれの場合も、イオンビームには不活
性元素としてアルゴンを用い、1×10−4Torr以
下の減圧雰囲気中で、アルゴンイオン電流密度を0.3
〜30μA/cm2として行うことが望ましい。また、
照射時間は、15〜120秒間とすることが好ましい。
減圧が足りない場合や、イオン電流密度が低い場合、照
射時間が短すぎる場合、十分な耐熱性、耐久性が得られ
ないことがある。また、イオン電流密度が高すぎる場合
や、照射時間が長すぎる場合、ハードコート膜や樹脂基
材に対して損傷を与え、ハードコート膜や樹脂基材が着
色されてしまうことがある。
【0021】イオンビームクリーニングにより、ハード
コート膜と反射防止膜との界面におけるハードコート膜
側の表面付近の水素原子の含有量を減少させることがで
きる。そのため、ハードコート膜表面の内部応力が減少
する。例えば、アルゴンガスを用いた場合、アルゴンイ
オンがハードコート膜の結晶格子間に入り込み、吸蔵さ
れる状態になる。これにより、内部圧縮応力が形成さ
れ、例えば、基材が熱等により延びようと働いた場合
に、その延長方向に抑止効果が働くことになる。水素原
子の含有量は、例えばラザフォードバックスキャッタリ
ング法またはSIMS(二次イオン質量分析)法と呼ば
れる質量分析分光法で定量することができる。
【0022】また、本発明のハードコート膜となる有機
ケイ素化合物には、主に酸化スズのコロイド粒子を核
に、この核の周辺を酸化スズと酸化タングステン複合体
のコロイド粒子で取り囲んだ二重構造の微粒子を添加す
るか、または、酸化ケイ素微粒子を添加することが好ま
しいが、この他に、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化
アルミニウム、酸化鉄、酸化スズと酸化インジウムの混
合物等の無機微粒子を添加することも可能である。特に
酸化スズと酸化インジウムの混合物は帯電防止効果が高
い。これらの微粒子を添加することにより、より高硬度
な帯電防止性に優れほこりの付きにくく、かつ前記耐久
性を兼ね備えたハードコート膜を有する光学物品が得ら
れる。さらに基材の屈折率に合わせて選択された前記無
機微粒子をハードコート膜に添加することにより、反射
防止膜と基材の屈折率の差を調整することもでき、干渉
縞の発生を防止することも可能である。これらの微粒子
の平均粒径は1〜300μmであることが好ましく、そ
の添加量は5〜80重量%とすることが望ましい。
【0023】樹脂基材には、所望の形状をした光の透過
する樹脂製の基材を用いることができ、例えば、メチル
メタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1
種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合
体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイト単独
重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイト
と1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重
合体、硫黄含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリ
カーボネイト、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和
ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレ
タンなどの重合体からなる基材を用いることができる。
【0024】具体的には、樹脂基材の材料として、つぎ
の(a)〜(d)の樹脂が挙げられる。
【0025】(a)ジエチレングリコールビスアリルカ
ーボネイト
【0026】
【化1】
【0027】を重合させて得られる樹脂。
【0028】(b)m−キシリレンジイソシアネート
【0029】
【化2】
【0030】と、ペンタエリスリトールテトラキス(3
−メルカプトプロピオネート)
【0031】
【化3】
【0032】とを重合させて得られる樹脂。
【0033】(c)m−キシリレンジイソシアネート
と、1,2−ビス{(2−メルカプトエチル)チオ}メ
ルカプトプロパン
【0034】
【化4】
【0035】とを重合させて得られる樹脂。
【0036】(d)ジシクロヘキシルメタン−4,4’
−ジイソシアネート
【0037】
【化5】
【0038】と、4−メルカプトメチル−3,6−ジチ
ア−1,8−オクタンジチオール
【0039】
【化6】
【0040】およびその重合度5以下の脱水素縮合物の
混合物であって、4−メルカプトメチル−3,6−ジチ
ア−1,8−オクタンジチオールを75〜90w/w%
含む混合物とを重合させて得られる樹脂。
【0041】また、耐擦傷性を向上させるためのハード
コート膜としては、有機ケイ素化合物を主成分とする組
成物を熱硬化させて得られるハードコートを用いること
が、耐擦傷性の点から望ましい。
【0042】ハードコート膜は、具体的には、下記一般
式 R1 a2 bSi(OR34-(a+b) で表される有機ケイ素化合物中に、酸化スズのコロイド
粒子を核に、その周辺を酸化スズ−酸化タングステン複
合体のコロイド粒子が取り囲んだ二重構造の分散相が分
散した変性ゾルを重合させて得られる重合体からなるこ
とが望ましい。なお、ここで、R1およびR2は、アルキ
ル基と、アルケニル基と、アリール基と、ハロゲン基、
エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト
基、メタクリルオキシ基、またはシアノ基を有する炭化
水素基とから独立して選ばれる有機基であり、R3は、
炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基、ア
シル基、またはアリール基であり、aは0または1、b
は0または1である。このハードコート膜は、上述の変
性ゾルを加熱することにより形成することができる。
【0043】上記有機ケイ素化合物の具体的な例として
は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキ
シシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエト
キシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエ
トキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニル
トリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシランな
どが挙げられる。
【0044】また、前記ハードコート膜には、シリカ微
粒子(平均粒径1〜200nm)を含む樹脂膜を用いて
も良い。この膜は、シリカ微粒子を分散させた樹脂前駆
体組成物を加熱などにより硬化させることによって形成
することができる。なお、ここで樹脂には、アクリル樹
脂、セルロース系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、
シリコン樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができ
る。また、この樹脂として、上述の有機ケイ素化合物の
重合体を用いてもよい。
【0045】本発明は、カメラ用または眼鏡用などのレ
ンズや、CRT(陰極線管)用光学フィルタなど、用途
に応じた種々の光学物品に適用することができる。
【0046】
【実施例】以下、本発明を眼鏡用プラスチックレンズに
適用した場合の実施例について、図面を用いて説明す
る。
【0047】〔実施例1〕図3に示すように、下記構造
式(化1)
【0048】
【化1】
【0049】により表わされるジエチレングリコールビ
スアリルカーボネイト(ピッツバーグ・プレート・ガラ
ス社製「CR39」)を重合させて得られた合成樹脂基
材のレンズ31(直径70mm)の表面に、シリコン樹
脂とシリカ微粒子とを加熱硬化させたハードコート膜3
2を形成し、さらにこのハードコート膜32の表面をア
ルゴンで変性させたのち、第1層33〜第4層36の4
層からなる多層反射防止膜37を、真空蒸着法により成
膜した。
【0050】すなわち、ハードコート膜32を備える合
成樹脂基材レンズ31を真空槽内に設けられた回転する
ドームにセットし、真空槽内をアルゴン雰囲気にしたの
ち、真空槽内の温度を70℃に加熱して、真空槽内の雰
囲気を圧力が1.0×10-5torrになるまで排気
し、加速電圧500V、加速電流30mA、イオン電流
密度5μA/cm2の条件でArイオンビームクリーニ
ング60秒間を施して、ハードコート膜32の表面を変
性させた。
【0051】続いて、同じ条件でイオンビームアシスト
を行いながら、変性されたハードコート膜32の表面に
TiO2を蒸着させて光学的膜厚0.05λの第1層3
3を形成し、この第1層33表面にSiO2を蒸着させ
て光学的膜厚0.10λの第2層34を形成し、この第
2層34の表面にTiO2を蒸着させて光学的膜厚0.
50λの第3層35を形成し、この第3層35表面にS
iO2を蒸着させて光学的膜厚0.24λの第4層36
を形成して、反射防止膜37を備えるプラスチックレン
ズを得た。ここで、λは、設計の中心波長であり、各実
施例、および各比較例では、特に記載しない限り、53
0nmとした。なお、第1層33および第3層35を形
成しているTiO2の屈折率は2.30であり、第2層
34および第4層36を形成しているSiO2の屈折率
は1.47である。
【0052】各実施例および比較例において形成された
反射防止膜37の各層33〜36の材質および光学的膜
厚を、表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、図1に示すように、
波長530nmにおける反射率が0.6%以下であっ
て、良好な結果が得られた。また、本実施例により得ら
れた光学物品について、性能試験を行ったところ、表2
に示すように良好な結果が得られた。
【0055】
【表2】
【0056】なお、表2に結果を示した性能試験は、つ
ぎの条件により行った。
【0057】(1)クラック発生温度 反射防止膜37を成膜したレンズを、60℃の温風オー
ブンの中に入れて、温度を上昇させた。温度を10℃上
昇させるごとに目視によりレンズの状態を観察し、クラ
ックがはじめて発生した温度をクラック発生温度とし
た。
【0058】(2)耐擦傷性1 反射防止膜37の表面に加重600gで押しつけたスチ
ールウール(#0000番)を、15秒間に30回往復
させたのち、反射防止膜37表面の傷の有無を観察し
た。なお、表2において、Aは傷がつかなかったことを
示し、Bは少し傷がついたことを示し、Cはかなり傷が
ついたことを示す。
【0059】(3)耐擦傷性2 反射防止膜37の表面に加重500gで押しつけた砂消
しゴム((株)ライオン製「砂消しゴムER−502
R」)を、15秒間に30回往復させたのち、反射防止
膜37表面の傷の有無を観察した。なお、表2におい
て、Aは全く傷がつかなかったことを示し、Bはほとん
ど傷がつかないことを示し、Cは傷がついたことを示
す。
【0060】(4)密着性 JIS D−202に準じて、試料表面に1mm間隔の
切れ込みを縦横にいれ、セロファン粘着テープ((株)
ニチバン製「セロテープ」)を貼付し、これを4kgの
力で剥がす剥離試験を10回繰り返して、何回目の剥離
試験で反射防止膜37が剥離するかを検査した。なお、
表2において、Aは全く剥がれなかったことを示し、B
は2回以上8回以下で剥がれたことを示し、Cは1回で
剥がれたことを示す。
【0061】〔実施例2〕m−キシリレンジイソシアネ
ート
【0062】
【化2】
【0063】と、ペンタエリスリトールテトラキス(3
−メルカプトプロピオネート)
【0064】
【化3】
【0065】とを重合させて得られる合成樹脂基材のレ
ンズ31(直径70mm)の表面にハードコート膜32
を形成した。ただし、本実施例のハードコート膜32
は、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
に、酸化スズのコロイド粒子を核にその周辺を酸化スズ
−酸化タングステン複合体のコロイド粒子が取り囲んだ
二重構造の粒子を分散させた変性ゾルの溶液に前記基材
を浸漬し乾燥することにより形成した。
【0066】つぎに、実施例1と同様にして、このハー
ドコート膜32の表面をイオンビームクリーニングによ
り変性させ、第1層33〜第4層36の4層からなる複
合反射防止膜37を成膜した。ただし、本実施例では、
第2層34の光学的膜厚0.09λとした。
【0067】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様の、
反射率の低い反射防止特性が得られた。また、本実施例
により得られた光学物品について、性能試験を行ったと
ころ、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0068】〔実施例3〕m−キシリレンジイソシアネ
ート
【0069】
【化2】
【0070】と、1,2−ビス{(2−メルカプトエチ
ル)チオ}メルカプトプロパン
【0071】
【化4】
【0072】とを重合させて得られる合成樹脂基材のレ
ンズ31(直径70mm)を実施例2と同一の溶液に浸
漬し、乾燥して、基材の表面に、実施例2と同様にし
て、ハードコート膜32を形成してイオンビームクリー
ニングにより変性させ、第1層33〜第4層36の4層
からなる反射防止膜37を形成した。
【0073】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様の、
反射率の低い反射防止特性が得られた。また、本実施例
により得られた光学物品について、性能試験を行ったと
ころ、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0074】〔実施例4〕実施例1と同様にして反射防
止膜37を備えるレンズを作製した。ただし、本実施例
では、反射防止膜37の各層33〜36の蒸着におい
て、イオンビームアシストを行わなかった。
【0075】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様の、
反射率の低い反射防止特性が得られた。また、本実施例
により得られた光学物品について、性能試験を行ったと
ころ、表2に示すように、実施例1に比べて耐熱性はや
や劣るものの、耐擦傷性、密着性は実施例1と同様に良
好であり、全体として十分実用に耐えるものであった。
【0076】〔実施例5〕実施例2と同様にして、反射
防止膜37を備えるレンズを作製した。ただし、本実施
例では、反射防止膜37の各層33〜36の蒸着におい
て、イオンビームアシストを行わなかった。
【0077】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様の、
反射率の低い反射防止特性が得られた。また、本実施例
により得られた光学物品について、性能試験を行ったと
ころ、表2に示すように、実施例2に比べて耐熱性はや
や劣るものの、耐擦傷性、密着性は実施例2と同様に良
好であり、全体として十分実用に耐えるものであった。
【0078】〔実施例6〕合成樹脂基材31として、ジ
シクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
【0079】
【化5】
【0080】と、4−メルカプトメチル−3,6−ジチ
ア−1,8−オクタンジチオール
【0081】
【化6】
【0082】およびその重合度5以下の脱水素縮合物の
混合物(単量体を75〜90w/w%含む)とを重合さ
せて得られる合成樹脂基材31を用い、実施例2と同様
にして、ハードコート膜32と反射防止膜37とを備え
るレンズを作製した。
【0083】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様の、
反射率の低い反射防止特性が得られた。また、本実施例
により得られた光学物品について、性能試験を行ったと
ころ、表2に示すように良好な結果が得られた。
【0084】〔実施例7〕実施例6と同様にして反射防
止膜37を備えるレンズを作製した。ただし、本実施例
では、反射防止膜37の各層33〜36の蒸着におい
て、イオンビームアシストを行わなかった。
【0085】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例6と同様の良
好な結果が得られた。また、本実施例により得られた光
学物品について、性能試験を行ったところ、表2に示す
ように、実施例6に比べて耐熱性はやや劣るものの、耐
擦傷性、密着性は実施例6と同様に良好であり、全体と
して十分実用に耐えるものであった。
【0086】〔実施例8〕実施例3と同様にして反射防
止膜37を備えるレンズを作製した。ただし、本実施例
では、反射防止膜37の各層33〜36の蒸着におい
て、イオンビームアシストを行わなかった。
【0087】本実施例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例3と同様の良
好な結果が得られた。また、本実施例により得られた光
学物品について、性能試験を行ったところ、表2に示す
ように、実施例6に比べて耐熱性はやや劣るものの、耐
擦傷性、密着性は実施例3と同様に良好であり、全体と
して十分実用に耐えるものであった。
【0088】〔比較例1〕実施例1と同様にして、合成
樹脂基材31表面にハードコート膜32を形成し、さら
にこのハードコート膜32の表面に、第1層33〜第4
層36の4層からなる複合反射防止膜37を、真空蒸着
法により成膜した。複合反射防止膜37は、Arイオン
ビームクリーニングおよびイオンビームアシストを行わ
ない以外は、実施例1と同様にして行った。
【0089】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐熱性、耐擦傷性ともに満足できる結果で
はなかった。
【0090】
【表3】
【0091】〔比較例2〕上述の比較例1において十分
な耐擦傷性が得られなかったので、本比較例において
は、ハードコート膜32と反射防止膜37との間に密着
性を高めるための密着層を形成し、レンズの性能を検査
した。
【0092】すなわち、本比較例では、実施例1と同様
にして基材31表面にハードコート膜32を形成し、こ
のハードコート膜32を備える合成樹脂基材レンズ31
を真空槽内に設けられた回転するドームにセットし、真
空槽内の温度を70℃に加熱して、真空槽内の空気を圧
力が1.0×10-5torrになるまで排気したのち、
SiO2を蒸着させて光学的膜厚0.07λの密着層を
形成し、さらに、TiO2を蒸着させて光学的膜厚0.
05λの第1層33を形成し、この第1層33表面にS
iO2を蒸着させて光学的膜厚0.10λの第2層34
を形成し、この第2層34の表面にTiO2を蒸着させ
て光学的膜厚0.50λの第3層35を形成し、この第
3層35表面にSiO2を蒸着させて光学的膜厚0.2
4λの第4層36を形成して、反射防止膜37を備える
プラスチックレンズを得た。
【0093】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐擦傷性1には改善が見られるものの、全
体としては満足できる結果ではなかった。
【0094】〔比較例3〕上述の比較例2においても十
分な耐擦傷性が得られなかったので、さらに密着性をよ
くするため、本比較例では、反射防止膜37の形成にお
いて、TiO2の替わりにZrO2を用いた。
【0095】すなわち、本比較例では、実施例1と同様
にして基材31表面にハードコート膜32を形成し、こ
のハードコート膜32を備える合成樹脂基材レンズ31
を真空槽内に設けられた回転するドームにセットし、真
空槽内の温度を70℃に加熱して、真空槽内の空気を圧
力が1.0×10-5torrになるまで排気したのち、
SiO2を蒸着させて光学的膜厚0.06λの密着層を
形成し、さらに、ZrO2を蒸着させて光学的膜厚0.
13λの第1層33を形成し、この第1層33表面にS
iO2を蒸着させて光学的膜厚0.05λの第2層34
を形成し、この第2層34の表面にZrO2を蒸着させ
て光学的膜厚0.25λの第3層35を形成し、この第
3層35表面にSiO2を蒸着させて光学的膜厚0.2
4λの第4層36を形成して、反射防止膜37を備える
プラスチックレンズを得た。なお、ZrO2の屈折率は
2.00である。また、本比較例では、λを580nm
とした。
【0096】本比較例により得られた光学物品につい
て、性能試験を行ったところ、表3に示すように、耐擦
傷性2についても改善が見られたものの、耐熱性は依然
として低く、満足できる結果ではなかった。また、本比
較例により得られた反射防止膜37の分光反射率特性を
測定したところ、図2に示すように、波長580nmに
おける反射率が0.6%より大きく、望ましい結果では
なかった。
【0097】〔比較例4〕実施例2と同様にして、合成
樹脂基材31表面にハードコート膜32を形成し、さら
にこのハードコート膜32の表面に、第1層33〜第4
層36の4層からなる複合反射防止膜37を、真空蒸着
法により成膜した。複合反射防止膜37は、Arイオン
ビームクリーニングおよびイオンビームアシストを行わ
ない以外は、実施例2と同様にして行った。
【0098】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐熱性、耐擦傷性ともに満足できる結果で
はなかった。
【0099】〔比較例5〕上述の比較例4において十分
な耐擦傷性が得られなかったので、本比較例において
は、ハードコート膜32と反射防止膜37との間に密着
性を高めるための密着層を形成し、レンズの性能を検査
した。すなわち、本比較例では、合成樹脂基材レンズ3
1およびハードコート膜32に、実施例2と同じものを
用い、第2層34の光学的膜厚を0.07λとした以外
は、比較例2と同様にして、反射防止膜37を備えるプ
ラスチックレンズを得た。
【0100】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例1と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐擦傷性1には改善が見られるものの、全
体としては満足できる結果ではなかった。
【0101】〔比較例6〕上述の比較例5においても十
分な耐擦傷性が得られなかったので、さらに密着性を良
くするため、本比較例では、反射防止膜37の形成にお
いて、TiO2の替わりにZrO2を用いた。すなわち、
本比較例では、合成樹脂基材レンズ31およびハードコ
ート膜32に、実施例2と同じものを用い、第1層33
の光学的膜厚を0.14λとし、第3層35の光学的膜
厚を0.22λとした以外は、比較例3と同様にして、
反射防止膜37を備えるプラスチックレンズを得た。
【0102】本比較例により得られた光学物品につい
て、性能試験を行ったところ、表3に示すように、耐擦
傷性2についても改善が見られたものの、耐熱性は依然
として低く、満足できる結果ではなかった。また、本比
較例により得られた反射防止膜37の分光反射率特性を
測定したところ、比較例3と同様に、反射率が高く、望
ましい結果ではなかった。
【0103】〔比較例7〕実施例6と同様にして、合成
樹脂基材31表面にハードコート膜32を形成したの
ち、このハードコート膜32の表面に、第1層33〜第
4層36の4層からなる多層反射防止膜37を、真空蒸
着法により成膜した。多層反射防止膜37は、Arイオ
ンビームクリーニングおよびイオンビームアシストを行
わない以外は、実施例6と同様にして行った。
【0104】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例6と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐熱性、耐擦傷性ともに満足できる結果で
はなかった。
【0105】〔比較例8〕上述の比較例7において十分
な耐擦傷性が得られなかったので、本比較例において
は、ハードコート膜32と反射防止膜37との間に密着
性を高めるための密着層を形成し、レンズの性能を検査
した。すなわち、本比較例では、合成樹脂基材レンズ3
1およびハードコート膜32に、実施例6と同じものを
用い、比較例5と同様にして、密着層と反射防止膜37
とを備えるプラスチックレンズを得た。
【0106】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例6と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐擦傷性1には改善が見られるものの、全
体としては満足できる結果ではなかった。
【0107】〔比較例9〕上述の比較例8においても十
分な耐擦傷性が得られなかったので、さらに密着性を良
くするため、本比較例では、反射防止膜37の形成にお
いて、TiO2の替わりにZrO2を用いた。すなわち、
本比較例では、合成樹脂基材レンズ31およびハードコ
ート膜32に、実施例6と同じものを用い、比較例6と
同様にして、反射防止膜37を備えるプラスチックレン
ズを得た。
【0108】本比較例により得られた光学物品につい
て、性能試験を行ったところ、表3に示すように、耐擦
傷性2についても改善が見られたものの、耐熱性は依然
として低く、満足できる結果ではなかった。また、本比
較例により得られた反射防止膜37の分光反射率特性を
測定したところ、比較例6と同様に、反射率が高く、望
ましい結果ではなかった。
【0109】〔比較例10〕実施例3と同様にして、合
成樹脂基材31表面にハードコート膜32を形成したの
ち、このハードコート膜32の表面に、第1層33〜第
4層36の4層からなる多層反射防止膜37を、真空蒸
着法により成膜した。多層反射防止膜37は、Arイオ
ンビームクリーニングおよびイオンビームアシストを行
わない以外は、実施例3と同様にして行った。
【0110】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例3と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐熱性、耐擦傷性ともに満足できる結果で
はなかった。
【0111】〔比較例11〕上述の比較例10において
十分な耐擦傷性が得られなかったので、本比較例におい
ては、ハードコート膜32と反射防止膜37との間に密
着性を高めるための密着層を形成し、レンズの性能を検
査した。すなわち、本比較例では、合成樹脂基材レンズ
31およびハードコート膜32に、実施例3と同じもの
を用い、比較例5と同様にして、密着層と反射防止膜3
7とを備えるプラスチックレンズを得た。
【0112】本比較例により得られた反射防止膜37の
分光反射率特性を測定したところ、実施例3と同様に、
良好な結果が得られた。しかし、本比較例により得られ
た光学物品について、性能試験を行ったところ、表3に
示すように、耐擦傷性1には改善が見られるものの、全
体としては満足できる結果ではなかった。
【0113】〔比較例12〕上述の比較例11において
も十分な耐擦傷性が得られなかったので、さらに密着性
を良くするため、本比較例では、反射防止膜37の形成
において、TiO2の替わりにZrO2を用いた。すなわ
ち、本比較例では、合成樹脂基材レンズ31およびハー
ドコート膜32に、実施例3と同じものを用い、比較例
6と同様にして、反射防止膜37を備えるプラスチック
レンズを得た。
【0114】本比較例により得られた光学物品につい
て、性能試験を行ったところ、表3に示すように、耐擦
傷性2についても改善が見られたものの、耐熱性は依然
として低く、満足できる結果ではなかった。また、本比
較例により得られた反射防止膜37の分光反射率特性を
測定したところ、比較例6と同様に、反射率が高く、望
ましい結果ではなかった。
【0115】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、樹脂基
材上に形成したハードコート膜の表面をイオンビームク
リーニングにより処理した後に反射防止膜を形成するこ
とから、耐擦傷性、密着性、耐熱性、耐温水性、耐薬品
性、耐候性、耐衝撃性に優れ、様々な使用条件、使用環
境に適用できる光学物品が得られる。また、反射防止膜
を形成する時に、イオンビームアシストを行なうことに
より、さらに耐熱性の面が向上した光学物品が得られ
る。さらに、ハードコート膜となる有機ケイ素化合物に
無機微粒子を添加することにより、より高硬度で帯電防
止効果をあわせもつ光学物品が得られる。
【0116】さらに、眼鏡レンズの場合、高屈折率の材
料で基材を形成すれば、より薄型で、かつ、上記耐久性
の優れた眼鏡レンズが得られる。また、基材の屈折率と
反射防止膜の屈折率との差異が生じる場合は、ハードコ
ート膜となる有機ケイ素化合物に無機微粒子を添加する
ことにより、屈折率の差に起因する干渉縞の発生を防止
することもでき、イオンビームクリーニングによる高耐
久性に加えて、干渉縞の発生しない、かつより薄型の光
学物品が得られる。
【0117】加えて、眼鏡レンズの場合、レンズ自体の
耐久性や薄型が実現できるので、そのデザインに対する
制約が少なくなり、より自由な設計が可能となる。
【0118】によれば、分光特性が安定で、かつ反射防
止性能に優れ、さらに、耐久性に優れる反射防止膜と、
プラスチック基材とを備える光学物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1において作成されたレンズの分光反
射率特性を示すグラフである。
【図2】 比較例3において作成されたレンズの分光反
射率特性を示すグラフである。
【図3】 実施例1において作成されたレンズの部分断
面図である。
【符号の説明】
31…合成樹脂基材、32…ハードコート膜、33…反
射防止膜第1層、34…反射防止膜第2層、35…反射
防止膜第3層、36…反射防止膜第4層、37…多層反
射防止膜。

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】樹脂基材と、上記樹脂基材表面に形成され
    たハードコート膜と、上記ハードコート膜表面に形成さ
    れた反射防止膜とを備える光学物品において、 上記ハードコート膜と上記反射防止膜との界面のハード
    コート側の表面付近には、6×1021(atoms/c
    3)以下の水素原子が存在していることを特徴とする
    光学物品。
  2. 【請求項2】樹脂基材と、上記樹脂基材表面に形成され
    たハードコート膜と、上記ハードコート膜表面に形成さ
    れた反射防止膜とを備える光学物品において、 上記ハードコート膜と上記反射防止膜との界面のハード
    コート側の表面付近には、不活性元素の原子が存在して
    いることを特徴とする光学物品。
  3. 【請求項3】請求項2において、 上記不活性元素は、アルゴンであることを特徴とする光
    学物品。
  4. 【請求項4】請求項1または2において、 上記反射防止膜は、複数の層からなる多層膜であること
    を特徴とする光学物品。
  5. 【請求項5】請求項4において、 上記反射防止膜は、ハードコート膜側から順に積層され
    た、 屈折率が1.9以上である第1層と、 屈折率が1.5以下である第2層と、 屈折率が2.1以上である第3層と、 屈折率が1.5以下である第4層とを備えることを特徴
    とする光学物品。
  6. 【請求項6】請求項5において、 上記第1層は、組成式がZrO2、HfO2、Ta25
    あるいはTiO2として表わされる物質、またはそれら
    の混合物からなり、 上記第3層は、組成式がTa25あるいはTiO2とし
    て表わされる物質、またはそれらの混合物からなり、 上記第2層および第4層は、組成式がSiO2として表
    わされる物質からなることを特徴とする光学物品。
  7. 【請求項7】請求項5において、 上記第1層および第3層は、組成式がTiO2として表
    わされる物質からなり、 上記第2層および第4層は、組成式がSiO2として表
    わされる物質からなるることを特徴とする光学物品。
  8. 【請求項8】請求項5または7において、 設計波長をλ0とするとき、波長λ0における膜の屈折率
    と該膜の幾何的膜厚との積である光学的膜厚は、 上記第1層は、0.03〜0.08λ0であり、 上記第2層は、0.06〜0.14λ0であり、 上記第3層は、0.40〜0.60λ0であり、 上記第4層は、0.22〜0.27λ0であることを特
    徴とする光学物品。
  9. 【請求項9】請求項1において、 眼鏡用プラスチックレンズであることを特徴とする光学
    物品。
  10. 【請求項10】請求項1または2において、 上記樹脂基材は、 ウレタン樹脂とジエチレングリコールビスアリルカーボ
    ネイトを重合させて得られる樹脂とから選ばれるいずれ
    かの樹脂からなることを特徴とする光学物品。
  11. 【請求項11】請求項10において、 上記ウレタン樹脂は、 m−キシリレンジイソシアネートと、ペンタエリスリト
    ールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)とを
    重合させて得られる樹脂、 m−キシリレンジイソシアネートと、1,2−ビス
    {(2−メルカプトエチル)チオ}メルカプトプロパン
    とを重合させて得られる樹脂、および、 4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オク
    タンジチオールおよびその重合度5以下の脱水素縮合物
    の混合物であって、4−メルカプトメチル−3,6−ジ
    チア−1,8−オクタンジチオールを75〜90w/w
    %含む混合物と、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−
    ジイソシアネートとを重合させて得られる樹脂のうちの
    いずれかの樹脂であることを特徴とする光学物品。
  12. 【請求項12】請求項1または2において、 上記ハードコート膜は、 有機ケイ素重合体を含むことを特徴とする光学物品。
  13. 【請求項13】請求項12において、 上記ハードコート膜は、 下記一般式 R1 a2 bSi(OR34-(a+b) (なお、ここで、R1およびR2は、アルキル基と、アル
    ケニル基と、アリール基と、ハロゲン基、エポキシ基、
    グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリル
    オキシ基、またはシアノ基を有する炭化水素基とから独
    立して選ばれる有機基であり、R3は、炭素数1〜8の
    アルキル基、アルコキシアルキル基、アシル基、または
    アリール基であり、aは0または1、bは0または1で
    ある。)で表される有機ケイ素化合物および/またはそ
    の加水分解生成物を含むことを特徴とする光学物品。
  14. 【請求項14】請求項13において、 上記ハードコート膜は、 酸化スズのコロイド粒子を核に、その周辺を酸化スズ−
    酸化タングステン複合体のコロイド粒子が取り囲んだ二
    重構造の分散相(平均粒子径1〜300μm)が分散し
    た変性ゾルを5〜80重量%含む上記有機ケイ素化合
    物、および、 シリカ粒子(平均粒子径1〜300μm)を5〜80重
    量%含む上記有機ケイ素化合物のうちのいずれかの有機
    ケイ素化合物からなることを特徴とする光学物品。
  15. 【請求項15】樹脂基材表面にハードコート膜を形成す
    るハードコート膜形成工程と、 上記ハードコート膜表面にイオンビームクリーニングを
    施すクリーニング工程と、 上記イオンビームクリーニングを施した上記ハードコー
    ト膜表面に反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程と
    を備えることを特徴とする光学物品の製造方法。
  16. 【請求項16】請求項15において、 上記イオンビームクリーニングは、不活性ガスと、酸素
    ガスと、不活性ガスおよび酸素ガスの混合ガスとのうち
    から選ばれる少なくとも一種のガスを用いて行われるこ
    とを特徴とする光学物品の製造方法。
  17. 【請求項17】請求項16において、 上記不活性ガスは、アルゴンであることを特徴とする光
    学物品の製造方法。
  18. 【請求項18】請求項15において、 上記反射防止膜形成工程は、 上記反射防止膜の少なくとも一層を、イオンビームアシ
    ストを施しながら、真空蒸着法により形成する工程を含
    むことを特徴とする光学物品の製造方法。
  19. 【請求項19】請求項15において、 上記反射防止膜形成工程は、 真空蒸着法またはスパッタリング法により、屈折率が
    1.9以上である第1層を形成する第1の層形成工程
    と、 真空蒸着法またはスパッタリング法により、屈折率が
    1.5以下である第2層を形成する第1の層形成工程
    と、 真空蒸着法またはスパッタリング法により、屈折率が
    2.1以上である第3層を形成する第1の層形成工程
    と、 真空蒸着法またはスパッタリング法により、屈折率が
    1.5以下である第4層を形成する第1の層形成工程と
    を、この順に備えることを特徴とする光学物品の製造方
    法。
  20. 【請求項20】請求項19において、 上記第1層および第3層は、それぞれ、組成式がTiO
    2で表される物質を主成分として含み、 上記第2層および第4層は、それぞれ、組成式がSiO
    2で表される物質を主成分として含むことを特徴とする
    光学物品の製造方法。
  21. 【請求項21】請求項20において、 設計波長をλ0とするとき、波長λ0における膜の屈折率
    と該膜の幾何的膜厚との積である光学的膜厚は、 上記第1層は、0.03〜0.08λ0であり、 上記第2層は、0.06〜0.14λ0であり、 上記第3層は、0.40〜0.60λ0であり、 上記第4層は、0.22〜0.27λ0であることを特
    徴とする光学物品の製造方法。
  22. 【請求項22】請求項15において、 上記ハードコート膜形成工程は、 上記樹脂基材上に、下記一般式 R1 a2 bSi(OR34-(a+b) (なお、ここで、R1およびR2は、アルキル基と、アル
    ケニル基と、アリール基と、ハロゲン基、エポキシ基、
    グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリル
    オキシ基、またはシアノ基を有する炭化水素基とから独
    立して選ばれる有機基であり、R3は、炭素数1〜8の
    アルキル基、アルコキシアルキル基、アシル基、または
    アリール基であり、aは0または1、bは0または1で
    ある。)で表される有機ケイ素化合物中に、酸化スズの
    コロイド粒子を核に、その周辺を酸化スズ−酸化タング
    ステン複合体のコロイド粒子が取り囲んだ二重構造の分
    散相が分散した変性ゾルの膜を形成し、該膜を加熱する
    工程を含むことを特徴とする光学物品の製造方法。
  23. 【請求項23】請求項15において、 上記光学物品は、眼鏡用プラスチックレンズであること
    を特徴とする光学物品の製造方法。
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