JP2008280193A - メソポーラスシリカ微粒子の製造方法、シリカ系被膜形成用塗布液、シリカ系被膜 - Google Patents

メソポーラスシリカ微粒子の製造方法、シリカ系被膜形成用塗布液、シリカ系被膜 Download PDF

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Abstract

【課題】微小な球形形状のメソポーラスシリカ微粒子を得ることができ、また高温焼成を伴なわずにSDAを液相中で抽出除去することができると共に、表面への化学修飾を容易に行なうことができるメソポーラスシリカ微粒子を得ることができるメソポーラスシリカ微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】テトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤、2つ以上の水酸基を有する多価アルコール、及び水を含有する混合液中で、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランをアルカリ存在下で共加水分解反応させることにより、メソ孔を表面に有する球状のシリカナノ粒子を生成させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、メソポーラスシリカ微粒子の製造方法、及び、この製造方法で得られたメソポーラスシリカ微粒子を用いて得られるシリカ系被膜形成用塗布液、ならびにこのシリカ系被膜形成用塗布液を用いて得られるシリカ系被膜に関するものである。
界面活性剤の集合体を構造規定剤(Structure−directing agent:SDA)として用いてメソポーラスシリカ微粒子を製造することが、従来から種々検討されている(例えば特許文献1等参照)。これらのメソポーラスシリカは細孔サイズが均一であり、大きな空隙率をもっている点に特徴があり、このような構造の特徴を活かして、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率の材料への応用が期待されている。
メソポーラスシリカ微粒子をこれらの材料に使用するためには、メソポーラスシリカ微粒子を媒質に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材に塗布して被膜を形成する必要があり、メソポーラスシリカ微粒子を媒質に均一に分散するためには、メソポーラスシリカ微粒子に媒質に適応した表面修飾を行なう必要がある。
しかしメソポーラスシリカ微粒子は通常、シリカ骨格を形成した後に、焼成(通常450℃)してSDAを取り除くことによって、細孔が形成されるものであり、このように高温で焼成すると、メソポーラスシリカ微粒子の表面の表面修飾するためのサイトが減少することになり、媒質に適応した表面修飾を行なうことが困難になるものであった。
また高温焼成する前のメソポーラスシリカ微粒子の表面にはSi−OH基が多数存在するので、表面修飾が容易であり、アルコキシシランの加水分解物樹脂等にそのままで容易に分散し、媒質との複合には有利であるが、最終的にメソポーラスシリカ微粒子間に空隙を発生させるためには、メソポーラスシリカ微粒子と媒質からなる薄膜を高温焼成する必要がある。しかし、塗布液を塗布する基材など周辺部位の関係上、高温焼成することが不可能である場合があり、また高温焼成によって周辺部位にダメージを与えてしまうおそれがあるという問題がある。媒質に分散させる前の粉末の状態でメソポーラスシリカ微粒子を高温焼成する方法もあるが、この場合には、メソポーラスシリカ微粒子同士が凝集・焼結して、媒質への分散が困難になるという問題がある。
また通常、メソポーラスシリカ微粒子はロッド形状に形成されたり、粒子径が100nm以上に形成されたりすることが多い。しかし、例えば低屈折率(Low−n)の用途に応用する場合には、メソポーラスシリカ微粒子と媒質からなる薄膜の膜厚は100nm前後であり、このような薄い膜厚の被膜を表面平滑に形成することは困難であるという問題がある。
さらにメソポーラスシリカ微粒子のメソ孔は、オープンな細孔とクローズな細孔の集合であったり、配列が不均一であったりすることが多いが、このようなメソ孔であると、SDAの抽出やメソポーラスシリカ微粒子の表面修飾を容易に行なうことができないという問題がある。
一方、二重構造を有するシリカ微粒子も提案されている(特許文献2参照)。このものは、空隙率の高い前躯体シリカ微粒子の周りを、密度の高いシリカで被覆し、クローズな空隙を有することが特徴である。そしてこの微粒子の利点は、分散させる媒体が空隙内部に入り込むことがないので、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率の材料への応用用途に対して有利であるということであるが、構造上、微粒子強度を得るために密度の高いシリカ被覆層を比較的厚くする必要があるので、空隙率に限界があり、また高性能な物性を得るためには高い割合で媒質に分散させる必要があって、結果的に被膜強度に問題が生じるという欠点がある。
特開2002−53773号公報 特開2001−233611号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、微小な球形形状のメソポーラスシリカ微粒子を得ることができ、また高温焼成を伴なわずにSDAを液相中で抽出除去することができると共に、表面への化学修飾を容易に行なうことができるメソポーラスシリカ微粒子を得ることができるメソポーラスシリカ微粒子の製造方法を提供することを目的とするものである。また、このメソポーラスシリカ微粒子を用いて、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率などの用途の被膜を形成することができるシリカ系被膜形成用塗布液、シリカ系被膜を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係るメソポーラスシリカ微粒子の製造方法は、テトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤、2つ以上の水酸基を有する多価アルコール、及び水を含有する混合液中で、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランをアルカリ存在下で共加水分解反応させることにより、メソ孔を表面に有する球状のシリカナノ粒子を生成させることを特徴とするものである。
この発明によれば、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの加水分解重縮合化合物の層間に4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤がSDAとしてインターカーレートされ、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成された、微小な球形形状のメソポーラスシリカ微粒子を得ることができるものである。そしてこの4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤は、高温焼成をする必要なく、液相中で抽出除去することができるものであり、またアミノ基を有するアルコキシシランに起因するアミノ基がメソポーラスシリカ微粒子の表面に存在し、表面への化学修飾を容易に行なうことができるものである。
また請求項2の発明は、請求項1で生成したシリカナノ微粒子を回収した後、酸溶液中で4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出して、ヘキサゴナル状の空隙を有するメソポーラスシリカ微粒子を得ることを特徴とするものである。
この発明によれば、SDAとして作用する4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を酸溶液中で容易にメソ孔から抽出除去することができ、高温焼成をする必要なく、ヘキサゴナル状の空隙を有するメソポーラスシリカ微粒子を得ることができるものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、メソポーラスシリカ微粒子の表面に存在するアミノ基を介して表面修飾をすることを特徴とするものである。
この発明によれば、アミノ基との化学反応によって、表面修飾を容易に行なうことができるものである。
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、2つ以上の水酸基を有する多価アルコールが、エチレングリコールであることを特徴とするものである。
この発明によれば、テトラアルコキシシラン及びアミノ基を有するアルコキシシランの水に対する分散性を高めて、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランとの反応性を向上することができるものである。
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、アミノ基を有するアルコキシシランが、アミノプロピルトリアルコキシシランであることを特徴とするものである。
この発明によれば、アミノ基が表面に存在するメソポーラスシリカ微粒子を容易に得ることができるものである。
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの配合比率が、モル比で100:10〜100:30の範囲であることを特徴とするものである。
この発明によれば、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されたメソポーラスシリカ微粒子を容易に得ることができるものである。
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランが共加水分解反応して得られる縮合化合物の質量が、上記混合液全体の質量に対して5質量%以下であることを特徴とするものである。
この発明によれば、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランは混合液中に希薄に存在した状態で共加水分解反応するものであり、反応速度を抑制して、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されたメソポーラスシリカ微粒子を容易に得ることができるものである。
本発明の請求項8に係るシリカ系被膜形成用塗布液は、請求項1乃至7のいずれか1項で得られたメソポーラスシリカ微粒子を媒質に分散させて成ることを特徴とするものである。
この発明によれば、基材への塗布・乾燥によってメソポーラスシリカ微粒子からなる被膜を形成することができ、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率の材料などに容易に応用することができるものである。
本発明の請求項9に係るシリカ系被膜は、請求項8に記載のシリカ系被膜形成用塗布液を基材に塗布・乾燥して製膜して成ることを特徴とするものである。
この発明によれば、メソポーラスシリカ微粒子を用いて、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率などの用途の被膜を形成することができるものである。
本発明によれば、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの加水分解重縮合化合物の層間に4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤がSDAとしてインターカーレートされ、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成された、微小な球形形状のメソポーラスシリカ微粒子を得ることができるものである。そしてこの4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤は、高温焼成をする必要なく、液相中で抽出除去することができるものであり、またアミノ基を有するアルコキシシランに起因するアミノ基がメソポーラスシリカ微粒子の表面に存在し、表面への化学修飾を容易に行なうことができるものである。
また、このメソポーラスシリカ微粒子を媒質に分散させた塗布液を基材に塗布・乾燥して製膜することによって、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率などの用途の被膜を形成することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明においてテトラアルコキシシランとしては、一般式が
Si(OR (1)
で示されるものを用いることができる。
式(1)においてRは炭素数1〜10のアルキル基であり、このようなテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどを例示することができ、なかでもテトラエトキシシラン(Si(OC)が好ましい。
また本発明においてアミノ基を有するアルコキシシランとしては、一般式が
(HN)(R4−nSi(OR (2)
で示されるものを用いることができる。
式(2)において、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rは炭素数1〜10のアルキル基である。このアミノ基を有するアルコキシシランの具体例は、特に限定されるものではないが、アミノプロピルトリエトキシシラン(HN−(C)−Si−(OC)などのアミノプロピルトリアルコキシシランを挙げることができる。
さらに本発明ではSDAとして、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を用いるものである。このような4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどを挙げることができる。
上記のテトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を水中に分散乃至溶解させ、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを反応させるのであるが、テトラアルコキシシランやアミノ基を有するアルコキシシランを水中に分散させるために、さらに、2つ以上の水酸基を有する多価アルコールを添加する。この2つ以上の水酸基を有する多価アルコールとしては任意のものを用いることができるものであり、例えば2価アルコールのエチレングリコール、プロピレングリコール、3価アルコールのグリセリンなどを例示することができる。そして反応触媒としてアンモニアなどのアルカリの存在下、上記の混合液を攪拌することによって、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを共加水分解反応させることができるものである。
ここで、上記の混合液において、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの配合比率は、モル比で100:10〜100:30の範囲に設定するのが好ましい。テトラアルコキシシラン100モルに対して、アミノ基を有するアルコキシシランが10モル未満であると、生成物の構造の規則性が低下し易くなって、メソ孔がヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されたメソポーラスシリカ微粒子を得ることが難しくなる。逆に40モルを超えると、生成物が無定形になり易くなる。
また4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤の配合量は、特に制限されるものではないが、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの合計量に対して、75〜100質量%程度に設定するのが好ましい。さらに多価アルコールの配合量も、特に制限されるものではないが、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの合計量に対して、2200〜6700質量%程度に設定するのが好ましい。
そして、上記の混合液を40〜70℃程度の加温下、30分〜5時間程度攪拌することによって、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランが共加水分解反応し、アルコキシシランの縮合化合物からなるシリカナノ粒子1を、図2(a)に示すように混合液2中に生成させることができる。このシリカナノ粒子1は、層間に4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5がインターカーレートされた状態でシリカ骨格3が成長し、メソ孔4を有するメソポーラスシリカ微粒子1として形成されるものである。このメソ孔4は4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5がSDAとして充填された状態で生成されるものであり、メソ孔4の直径は1〜10nm程度である。そして図1(a)(b)に模式的に示すように、メソ孔4はシリカ骨格3間にヘキサゴナル状に規則的に配列して形成されており、メソポーラスシリカ微粒子1は直径が20〜200nmの球状に形成されるものである。このメソポーラスシリカ微粒子1のシリカ骨格3の表面には、アミノ基を有するアルコキシシランに起因するアミノ基が多数存在している。
尚、本発明において、共加水分解反応する際に、多価アルコールを含有していることが重要であり、多価アルコールが含有されていないと、得られる粒子が球状にならず、ロッド状になってしまい、生成物の構造の規則性も低下してしまうものである。また、アミノ基を有するアルコキシシランを含有していることも重要であり、テトラアルコキシシランのみを上記と同様に加水分解した場合には、生成物は無定形になってしまうものである。
ここで、上記の反応混合液2中のテトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの濃度は、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランが共加水分解反応して得られる縮合化合物の質量が、混合液2の全体の質量に対して5質量%以下(下限は特に設定されないが、実用上、0.1質量%程度が下限である)となるような、希薄濃度になるようにするのが好ましく、このため混合液2中には大量の水が含有されるようにするのが好ましい。このようにテトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを混合液2中に希薄に存在させた状態で共加水分解反応させることによって、反応速度を抑制することができ、メソポーラスシリカ微粒子1に形成されるメソ孔4を、両末端がオープンで且つ規則的に配列されたヘキサゴナル状に形成することが容易になるものである。
上記のように混合液2中でテトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランを共加水分解反応させて、メソポーラスシリカ微粒子1を生成させた後、40〜70℃程度の加温下、10〜100時間程度静置して熟成する。
次に、メソ孔4に4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5が充填されたメソポーラスシリカ微粒子1を混合液2から分離して回収する。メソポーラスシリカ微粒子1の回収は、例えば遠心分離や濾過などで行なうことができる。
このようにメソポーラスシリカ微粒子1を分離・回収した後、メソポーラスシリカ微粒子1のメソ孔4から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5を抽出して除去する。4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5の抽出は、図2(b)のようにメソポーラスシリカ微粒子1を酸溶液6中に浸漬して、イオン交換させることによって行なうことができる。この酸溶液6としては、例えば酸とアルコールの混合溶液を用いることができるものであり、酸としては硝酸アンモニウムなどを、アルコールとしてはエタノールやメタノールなどを用いることができる。そしてメソ孔4から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5を抽出して除去したメソポーラスシリカ微粒子1を、遠心分離や濾過などして酸溶液6から回収し、乾燥することによって、図1(c)(d)に示すようなヘキサゴナル状の空隙として形成されたメソ孔4を有する、メソポーラスシリカ微粒子1の粉体を得ることができるものである。
このようにして得られるメソポーラスシリカ微粒子には、シリカ骨格の表面に多数のアミノ基が存在している。従って、このアミノ基に各種の化合物を化学反応させて結合させることによって、アミノ基を介してメソポーラスシリカ微粒子の表面を各種の化合物で修飾することができる。この表面修飾に用いる修飾剤としては、アミノ基と化学反応して結合する基を有するものであれば、任意のものを用いることができるものであり、例えばビニ化合物、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、イソシアネート化合物などを挙げることができる。この表面修飾の反応の条件としては、用いた修飾剤とアミノ基が化学反応する温度・時間であれば特に制限されるものではなく、例えば30〜100℃程度の温度で10〜50時間程度反応させればよい。
尚、メソポーラスシリカ微粒子を表面修飾する工程は、このようにメソ孔4から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5を抽出して除去した後であってもよいが、メソ孔4から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤5を抽出する前であってもよい。
上記のようにして得られたメソポーラスシリカ微粒子を、低屈折率(Low−n)、低誘電率(Low−k)、低熱伝導率等の材料用途に使用する場合、メソポーラスシリカ微粒子からなる被膜を形成することが望ましい。このような被膜を形成するにあたっては、まず、メソポーラスシリカ微粒子を揮発性を有する媒質に分散させて塗布液を調製する。この媒質としては、水や、溶媒を用いることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、へキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭素類を挙げることができる。
そしてこの塗布液を基材の表面に塗布・乾燥して製膜することによって、シリカ系被膜を形成することができるものである。シリカ系被膜の厚さはその用途によって異なり、任意である。このとき、例えば低屈折率(Low−n)の用途に応用する場合にはシリカ系被膜の膜厚は100nm前後の薄膜に形成する必要のあることが多いが、本発明で得られるメソポーラスシリカ微粒子は粒径が微小な球形であるので、表面が平滑な被膜に形成することができるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
冷却管、攪拌機、温度計を取り付けた1Lのセパラブルフラスコに、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを1.3g、蒸留水を180g、エチレングリコールを30g、25質量%濃度のアンモニア水溶液を8.0mL、室温で順次仕込み、攪拌を行ないながら昇温して50℃まで加温し、この温度で30分間攪拌した。次にこれにテトラエトキシシラン1.5mLとγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.29mLとをすばやく加えた。このときのテトラエトキシシランとγ−アミノプロピルトリエトキシシランのモル比は100:20である。そして反応温度を50℃に保ったまま、混合液を2時間攪拌し、さらに攪拌を停止した後に、50℃の温度を保持して20時間静置した。
この工程において、混合液中では、テトラエトキシシランとγ−アミノプロピルトリエトキシシランが共加水分解反応し、メソ孔にヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドが充填された状態のメソポーラスシリカ微粒子が生成される。
次に、加温を停止し、混合液の温度が室温に戻ってから、混合液を遠心分離機にセットし、20000rpmで20分間遠心分離することによって、固体成分を液体から分離して回収した。
このように回収した固体成分をエタノールで洗浄した後、硝酸アンモニウムを1質量%濃度で溶解したエタノール溶液に、約1gの固体成分を加えて分散させ、30分間還流した。
この工程において、メソ孔内のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドはイオン交換反応で硝酸アンモニウム/エタノール溶液に抽出され、メソ孔内から除去される。
次に、硝酸アンモニウム/エタノール溶液に固体成分を分散させた分散液を遠心分離機にセットし、2000rpmで20分間遠心分離することによって、固体成分を液体から分離して回収した。
そしてこのように回収した固体成分をエタノールで洗浄した後、80℃で24時間乾燥することによって、白色粉末のメソポーラスシリカ微粒子を得た。
このようにして得たメソポーラスシリカ微粒子のX線回折チャートにはd値=3.5nmにピークがみられ、ヘキサゴナル構造の特性がみられるものであった。X線回折チャートを図3に示す。図3においてaはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを抽出する前、bは抽出した後である。
またこのメソポーラスシリカ微粒子のメソ孔を窒素吸着BET法により測定したところ、比表面積1530m/g、細孔容量1.97mL/g、平均細孔径2.54nmであった。図4に細孔分布を示す。
また図5にこのメソポーラスシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真(3万倍)を、図6にこのメソポーラスシリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真((a)は10万倍)を示す。これらの電子顕微鏡写真にみられるように、メソポーラスシリカ微粒子は粒子径70〜100nmの球形であり、ヘキサゴナル状の空隙が規則正しく配列していることが確認される。
(実施例2)
実施例1と同様にして、テトラエトキシシランとγ−アミノプロピルトリエトキシシランを共加水分解反応させた後、反応後の混合液を遠心分離して固体成分を分離回収し、固体成分をエタノールで洗浄した。
次に、メチルビニルケトン(CHCHCOCH)を0.32質量%濃度になるように添加したメタノール溶液に、この回収した固体成分を分散させ、50℃で24時間、マイケル付加重合を行なった。
この工程おいて、メソポーラスシリカ微粒子の表面のアミノ基にメチルビニルケトンが次の反応式のように反応し、メソポーラスシリカ微粒子の表面が修飾された。
−Si−(C)−NH+CHCHCOCH
→ −Si−(C)−N(CHCHCOCH
次に、この反応後の混合液を遠心分離機にセットし、2000rpmで20分間遠心分離することによって、固体成分を液体から分離して回収し、固体成分をエタノールで洗浄した。
後は、実施例1と同様にして、メソ孔内のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを抽出して除去し、エタノールで洗浄した後に乾燥することによって、白色粉末のメソポーラスシリカ微粒子を得た。
このメソポーラスシリカ微粒子をIRで分析したところ、1724cm−1にエステル結合に起因する吸収がみられ、表面装飾されていることが確認された。図7にIRチャートを示す。
(比較例1)
実施例1において、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いないようにした他は、実施例1と同様にして粒子を得た。
この粒子のX線回折チャートにはd値=3.5nmにピークがみられたが、電子顕微鏡で観察した結果、粒子は球状ではなく、ロッド状であった。
本発明で得られるメソポーラスシリカ微粒子を模式的に示すものであり、(a)(b)はメソ孔から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出する前の、正面断面図と側面断面図、(c)(d)はメソ孔から4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出した後の、正面断面図と側面断面図である。 メソポーラスシリカ微粒子を製造する工程を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ概略図である。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子のX線回折チャートである。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子の細孔分布を示す図である。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1で得たメソポーラスシリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。 実施例2で得たメソポーラスシリカ微粒子のIRチャートである。
符号の説明
1 メソポーラスシリカ微粒子
3 シリカ骨格
4 メソ孔
5 界面活性剤

Claims (9)

  1. テトラアルコキシシラン、アミノ基を有するアルコキシシラン、4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤、2つ以上の水酸基を有する多価アルコール、及び水を含有する混合液中で、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランをアルカリ存在下で共加水分解反応させることにより、メソ孔を表面に有する球状のシリカナノ粒子を生成させることを特徴とするメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  2. 請求項1で生成したシリカナノ微粒子を回収した後、酸溶液中で4級アンモニウム塩カチオン性界面活性剤を抽出して、ヘキサゴナル状の空隙を有するメソポーラスシリカ微粒子を得ることを特徴とするメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  3. メソポーラスシリカ微粒子の表面に存在するアミノ基を介して表面修飾をすることを特徴とする請求項1又は2に記載のメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  4. 2つ以上の水酸基を有する多価アルコールが、エチレングリコールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  5. アミノ基を有するアルコキシシランが、アミノプロピルトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  6. テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランの配合比率が、モル比で100:10〜100:30の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  7. テトラアルコキシシランとアミノ基を有するアルコキシシランが共加水分解反応して得られる縮合化合物の質量が、上記混合液全体の質量に対して5質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のメソポーラスシリカ微粒子の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項で得られたメソポーラスシリカ微粒子を媒質に分散させて成ることを特徴とするシリカ系被膜形成用塗布液。
  9. 請求項8に記載のシリカ系被膜形成用塗布液を基材に塗布・乾燥して製膜して成ることを特徴とするシリカ系被膜。
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