JP5632956B1 - 共重合体ラテックス - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な接着強度を発現でき、低粘度化を実現でき、且つ、塗工紙作成時の操業性が良好な共重合体ラテックスを提供すること。【解決手段】乳化重合により得られる共重合体ラテックスであって、共重合体は、(a)脂肪族共役ジエン系単量体15〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体5〜35質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜30質量%、及び、(d)これらと共重合可能な単量体0〜75質量%、からなる単量体成分で構成されており、上記乳化重合は、反応系のポリマー転化率が1.0%に到達した到達時までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入せず、上記到達時から、単量体成分の全量投入終了した終了時までの時間、の60%の時点までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入して行われる、共重合体ラテックス。【選択図】なし
Description
本発明は、共重合体ラテックスに関する。
従来より、塗工紙及び電池用電極の材料などの様々な用途に共重合体ラテックスが利用されている。共重合体ラテックスは、各用途における操業性に優れて使いやすく、最終製品に高度な物性バランスを与えるよう改良が重ねられているものの、更に高度な物性バランスを与えることができる共重合体ラテックスが切望されている。
例えば、塗工紙は、その印刷効果が高い等の理由から、非常に数多くの印刷物に利用されている。季刊、月間紙等の定期刊行物の中にも、全ての頁に塗工紙が使用される場合もかなり増えている。特に、メールオーダービジネスにおけるダイレクトメールや商品カタログ等においては、そのほとんどが全ての頁に塗工紙を使用している。
一般に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液と、顔料同士および顔料と原紙とを接着固定するためのバインダーと、その他の添加剤とによって構成される水性塗料である。バインダーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーや、デンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でも、乳化重合により得られるスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、その特性が紙塗工用組成物の性能や塗工紙作成時の操業性あるいは最終的な塗工紙製品の表面強度、印刷光沢などの品質に影響することが知られている(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。
最近、紙塗工用組成物などの塗料に対し、低コスト化が図られており、高価なカオリンから安価な炭酸カルシウムへの配合比率が増すと共に、塗料コストに占める割合の大きな共重合体ラテックスの配合量を減らす動きがある。そのため、少ない配合量でも十分な接着強度を発現できる共重合体ラテックスが求められている。
しかし、高性能化への対応は共重合体ラテックスの粘度を増加させる傾向にあり、一般的には共重合体ラテックスの高性能化と低粘度化とはトレードオフの関係にある。共重合体ラテックスの接着強度の向上を図る場合、粘度の増加に伴う作業性の低下が懸念される。
また、共重合体ラテックスは、電池用電極の材料としても利用されており、電極作成時に電極活物質への被覆性に優れることが望まれている。
本発明の目的は、十分な接着強度を発現できるとともに、低粘度化を実現でき、且つ、塗工紙作成時の操業性及び電極活物質への被覆性も良好である共重合体ラテックスを提供することにある。
本発明は、乳化重合により得られる共重合体ラテックスであって、上記共重合体は、(a)脂肪族共役ジエン系単量体15〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体5〜35質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜30質量%、及び、(d)これらと共重合可能な単量体0〜75質量%、からなる単量体成分で構成されており、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体を30質量%を超えて含有し、上記乳化重合は、反応系のポリマー転化率が1.0%に到達した到達時までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入せず、上記到達時から上記単量体成分の全量投入終了した終了時までの時間、の60%の時点までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入して行われる、共重合体ラテックスを提供する。
本発明の共重合体ラテックスは、十分な接着強度を発現できるとともに、低粘度化を実現でき、且つ、塗工紙作成時の操業性及び電極活物質への被覆性も良好なものとなる。ここで、塗工紙作成時の操業性は、共重合体ラテックスの耐ベタツキ性及び紙塗工用組成物の再分散性により評価することができる。また、共重合体ラテックスの電極活物質への被覆性が良好であることにより、充放電を繰り返した際の電池のサイクル特性を向上させることができる。
本発明の共重合体ラテックスにおいて、上記乳化重合は、重合開始剤投入開始時の反応系に、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量の0質量%超40質量%以下を含有させ、上記反応系が、上記到達時から上記終了時までの時間、の5%の時点以降から、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の残部の添加を開始して、上記到達時から上記終了時までの時間、の80%の時点までに、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量の92質量%以上を投入して行われることが好ましい。上記条件を満たすように(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体を添加することにより、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体を多量に添加した場合でもラテックス粘度の増加を抑制することができ、共重合体ラテックスの粘度、接着強度及び塗工紙作成時の操業性をよりバランス良く向上させることができる。
また、本発明の共重合体ラテックスは、上記共重合体ラテックスを用いて作製した厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムの、切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比(切断時引張応力/100%伸び時の引張応力)が3.5未満であり、且つ、上記ラテックスフィルムの切断時伸びが300%を超えるものであることが好ましい。共重合体ラテックスが上記条件を満たすことにより、共重合体ラテックスの接着強度、塗工紙作成時の操業性及び電極活物質への被覆性をより向上させることができる。
本発明によれば、十分な接着強度を発現できるとともに、低粘度化を実現でき、且つ、塗工紙作成時の操業性及び電極活物質への被覆性も良好である共重合体ラテックスを提供することができる。
本実施形態に係る共重合体ラテックスは、乳化重合により得られる共重合体ラテックスであって、上記共重合体は、(a)脂肪族共役ジエン系単量体25〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体5〜35質量%、(c)シアン化ビニル単量体5〜30質量%、及び、(d)これらと共重合可能な単量体0〜65質量%、からなる単量体成分で構成されており、上記乳化重合は、反応系のポリマー転化率が1.0%に到達した到達時までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入せず、上記到達時から上記単量体成分の全量投入終了した終了時までの時間、の60%の時点までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入して行われる、共重合体ラテックスである。
まず、上記共重合体を構成する単量体成分について説明する。
(a)脂肪族共役ジエン系単量体(以下、(a)成分という場合もある)としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、並びに、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などの単量体が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、1,3−ブタジエンを用いることが好ましい。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体(以下、(b)成分という場合もある)としては、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸などのモノカルボン酸単量体、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などのジカルボン酸単量体並びにこれらの無水物が挙げられる。これらの単量体は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(c)シアン化ビニル単量体(以下、(c)成分という場合もある)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを用いることが好ましい。
(d)上記(a)成分〜(c)成分と共重合可能な単量体(以下、(d)成分という場合もある)としては、アルケニル芳香族単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体などの単量体が挙げられる。
アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチル−α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、スチレンを用いることが好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート及び2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本実施形態においては、工業的に容易に製造され、入手の容易性及びコストの観点から、メチルメタクリレートを用いることが好ましい。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート及び2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、上記単量体の他に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体を使用することができる。
(a)成分の含有量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、15〜60質量%であり、17〜56質量%であることが好ましく、20〜52質量%であることがより好ましい。なお、共重合体ラテックスを紙塗工用組成物に使用する場合においては、(a)成分の含有量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、25〜60質量%であることが好ましく、27〜56質量%であることがより好ましく、30〜52質量%であることが更に好ましく、30〜55質量%であることが特に好ましい。(a)成分の含有量を上記範囲とすることにより、接着強度と操業性とのバランスに優れた共重合体ラテックスを得ることができる。
(b)成分の含有量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、5〜35質量%であり、5.5〜33質量%であることが好ましく、6〜28質量%であることがより好ましい。(b)成分の含有量を上記範囲とすることにより、共重合体ラテックスの接着強度及び電極活物質への被覆性を十分に向上させることができる。
本実施形態においては、(b)成分がエチレン系不飽和モノカルボン酸単量体を30質量%を超えて含有することが好ましく、37質量%以上含有することがより好ましく、45質量%以上含有することが更に好ましい。エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体の含有量を上記範囲とすることにより、pH中性域での粘度低減効果がより高い、共重合体ラテックスを得ることができる。
(c)成分の含有量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、5〜30質量%であり、7〜27質量%であることが好ましく、9〜25質量%であることがより好ましい。(c)成分の含有量を上記範囲とすることにより、耐溶剤性の良好な共重合体ラテックスを得ることができる。
(d)成分の含有量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、0〜75質量%であり、2〜72質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましい。なお、共重合体ラテックスを紙塗工用組成物に使用する場合においては、(d)成分の含有量は、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、0〜65質量%であることが好ましく、2〜62質量%であることがより好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
本実施形態においては、共重合体ラテックスの硬さをコントロールすることを目的として、(d)成分として、スチレンを、共重合体を構成する単量体成分全量に対し、0〜75質量%含有させることが好ましく、共重合体ラテックスを紙塗工用組成物に使用する場合は、0〜65質量%含有させることが好ましい。
次に、本実施形態に係る乳化重合について説明する。
本実施形態において、乳化重合は、反応系のポリマー転化率が1.0%に到達した到達時までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入せず、上記到達時から上記単量体成分の全量投入終了した終了時までの時間、の60%の時点までに、上記(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入して行われる。
上記到達時とは、反応系に添加した単量体のポリマー転化率が1.0%に到達した時点をいう。ポリマー転化率が1.0%に到達した時点は、単量体成分、開始剤及び水が共存開始した時点(0点)から30分後に実測することから算出する。30分後に測定したポリマー転化率が1%を超えていなかったら、さらに30分経ってから測定し、ポリマー転化率が1%超えるまで30分毎に測定する。ポリマー転化率が1%を超えたら、1%を超えたデータと0点とを結んでポリマー転化率が1.0%となる時点を「到達時」とする。
ポリマー転化率は、反応槽内より採取した反応液を秤量し、150℃で1時間乾燥後、再度秤量して固形分量Cを測定して、次式より算出することができる。
ポリマー転化率(%)=[固形分量C(g)−反応液に含まれる単量体以外の固形分量(g)]/反応系に添加した単量体成分量(g)×100
なお、「到達時」は、予め求められたデータに基づき設定することができる。例えば、実施する乳化重合と同様の反応系を用意し、この反応系のポリマー転化率の推移に基づき予め到達時を求めておくことができる。
ポリマー転化率(%)=[固形分量C(g)−反応液に含まれる単量体以外の固形分量(g)]/反応系に添加した単量体成分量(g)×100
なお、「到達時」は、予め求められたデータに基づき設定することができる。例えば、実施する乳化重合と同様の反応系を用意し、この反応系のポリマー転化率の推移に基づき予め到達時を求めておくことができる。
上記到達時までに、反応系に(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入せず、上記到達時から単量体成分((a)〜(d)成分)の全量投入終了した終了時までの時間、の60%の時点までに、(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入して乳化重合を行うことにより、得られる共重合体ラテックスは、十分な接着強度を発現できるとともに、低粘度化を実現でき、且つ、塗工紙作成時の操業性も良好なものとなる。上記到達時までに反応系に(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入した場合、共重合体ラテックスをフィルムにした際の耐溶剤性が劣り、接着強度が低下する。また、上記到達時から単量体成分の全量投入終了時までの時間、の60%の時点までに、(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入しなかった場合、ラテックス粘度の低減効果が著しく劣ることとなる。
上記到達時までに反応系に投入する(c)成分の量は、(c)成分の全量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。上記到達時までの(c)成分の投入量を10質量%以上にすることで、重合安定性をより良好にすることができる傾向があり、90質量%以下にすることで、得られる共重合体ラテックスの接着強度が向上する傾向がある。
また、上記到達時から上記終了時までの時間、の60%の時点までに投入する(c)成分の量は、接着強度の向上及びラテックス粘度の低減の観点から、(c)成分の全量を基準として85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
本実施形態に係る反応系には、上記(a)〜(d)成分以外に、乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤、更に必要に応じて、連鎖移動剤、還元剤などを配合することができる。
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、及びアルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。乳化剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、又はt−ブチルハイドロパーオキサイドを用いることが好ましい。重合開始剤の配合量は、単量体組成、重合反応系のpH、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整される。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α−メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩;L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩;デキストロース、サッカロースなどの還元糖類;ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸が好ましい。還元剤の配合量は、他の添加剤などの組み合わせを考慮して適宜調整することができる。
また、本実施形態に係る反応系には、共重合体の分子量及び架橋構造を制御する目的で、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素;ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素化合物を配合することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、シクロヘキセン、トルエンを用いることが好ましい。
更に、本実施形態に係る反応系には、必要に応じて、電解質、酸素補足剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
本実施形態においては、重合開始剤投入開始時の反応系に(a)成分の一部、(b)成分の一部、(c)成分の一部、(d)成分の一部、乳化剤、還元剤、連鎖移動剤を含有させることが好ましい。
重合開始剤投入開始時の反応系に(a)成分の一部を含有させる場合、(a)成分の全量の1〜25質量%を含有させることが好ましく、3〜20質量%を含有させることがより好ましい。
重合開始剤投入開始時の反応系に(b)成分の一部を含有させる場合、(b)成分の全量の0質量%超40質量%以下を含有させることが好ましく、0.1〜30質量%を含有させることがより好ましい。更に、(b)成分は、上記到達時から上記終了時までの時間、の5%の時点以降から、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の残部の添加を開始して、上記到達時から終了時までの時間、の80%の時点までに、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量の92質量%以上を投入することが好ましい。この条件を満たすように(b)成分を添加することで、十分な接着強度を発現でき、低粘度の共重合体ラテックスを得ることができる。さらに、上記到達時から終了時までの時間、の70%の時点までに上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量の95%以上を添加することが好ましく、最も好ましくは、60%の時点までに上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量を添加することが上記効果を得るために好ましい。
重合開始剤投入開始時の反応系に(c)成分の一部を含有させる場合、すなわち、上記到達時までに反応系に(c)成分を投入する場合、上述した通り、その量は(c)成分の全量の100質量%未満であり、10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。
重合開始剤投入開始時の反応系に(d)成分の一部を含有させる場合、(d)成分の全量の1〜45質量%を含有させることが好ましく、2〜30質量%を含有させることがより好ましい。
乳化剤及び重合開始剤は全量を重合開始剤投入開始時の反応系に含有させることが好ましい。
重合開始剤投入開始時の反応系は、例えば、耐圧性の重合反応容器に、純水、上述した各(a)〜(d)成分、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、その他の成分を所定量加え、例えば、傾斜翼、タービン翼、マックスブレンド翼などにより撹拌することにより調製できる。
本実施形態においては、安全性に配慮した槽内圧力および生産性の観点から、上記反応温度を30〜100℃の範囲に設定することが好ましく、40〜85℃の範囲に設定することがより好ましい。この場合、上記の反応温度の範囲に開始温度を有する重合開始剤が用いられる。
反応系の温度は、例えば、外部加熱により0.25〜1.0℃/分で昇温することができる。
上記到達時以降の反応系に(a)〜(d)成分を添加する方法としては、例えば、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード方法を採用することができる。反応系内の単量体をある一定濃度以下に抑制して安全性を向上する観点からは、連続添加方法(以下、連添という場合もある)を採用することが好ましい。更に、連添を複数回行ってもよい。
乳化重合の反応時間については、例えば、生産性の観点から、上記到達時から(a)〜(d)成分の全量投入終了時までの時間を1〜15時間とすることが好ましく、2〜10時間とすることがより好ましい。また、乳化重合は、(a)〜(d)成分のポリマー転化率が95%以上となるまで行うことが好ましく、97%以上となるまで行うことがより好ましい。
また、本実施形態においては、ポリマー転化率が95%を超えたことを確認して反応を終了させることが好ましい。ポリマー転化率は、固形分量から算出、又は重合槽を冷却した熱量から算出できる。こうして、共重体ラテックスが得られる。
共重合体ラテックスは、分散安定性の観点から、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどにより、pHが5〜8.5に調整されていることが好ましく、5.5〜7.5に調整されていることがより好ましい。
また、共重合体ラテックスは、加熱減圧蒸留などの方法により、未反応単量体及び他の低沸点化合物が除去されていることが好ましい。
共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスを用いて作製した厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムの、切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比(切断時引張応力/100%伸び時の引張応力)が3.5未満であり、且つ、上記ラテックスフィルムの切断時伸びが300%を超えるものであることが好ましい。ここで、ラテックスフィルムの切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比、及び、ラテックスフィルムの切断時伸びは、以下の方法で測定される。
まず、共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH10に調整し、そこに増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量:700万)を固形分割合で1質量%以下添加して粘度調整し、塗布液を調製する。ここで、ポリアクリル酸ナトリウムの添加量は、上記上限値を超えない範囲であれば引張応力に影響を与えないため、塗布液の粘度が厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムを作製可能な粘度となるように適宜調整すればよい。上記ポリアクリル酸ナトリウムとしては、例えば、第一工業製薬製のIX1177(商品名)を用いることができる。
次に、得られた塗布液をフィルムアプリケーターで薄膜化して乾燥させる。乾燥は、20〜25℃、45〜55%RHの条件下で40〜48時間放置することで行うことができる。なお、上記温度条件でラテックスの連続フィルムが得られない場合には、JIS K6828−2の方法に準じて測定したラテックスの最低造膜温度よりも17〜23℃高い温度、45〜55%RHの条件下で40〜48時間時間放置して乾燥させてもよい。次いで、乾燥後の薄膜に対し、130℃で15分間加熱処理を施すことで、0.3mm〜0.5mm厚のラテックスフィルムを得ることができる。
得られたラテックスフィルムについて、厚さ以外はJIS K−6251に記載のダンベル状3号型の形状及び寸法に打ち抜いて試験片とする。この試験片を、乾燥用シリカゲルを設置したデシケーター中で24時間以上放置した後、引張圧縮試験機を用いて500mm/minの引っ張り速度で試験することで、引張応力及び伸び率(変位)を測定する。引張圧縮試験機としては、引張圧縮試験機(例えば、ミネベア株式会社製の商品名:TechnoGraph TGE−5kN)を用いることができる。得られた測定結果に基づき、切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比(切断時引張応力/100%伸び時の引張応力)、及び、切断時伸び(ラテックスフィルムが切断した時の伸び率)を求めることができる。なお、引張応力及び伸び率の測定時の試験条件等は以下の通りとする。
(試験条件等)
チャック間距離:50mm
試験力容量:5kN
試験温度:23℃、50%RH
伸び率:ダンベル状3号型の標線間距離を基準にした初期に対する比率(%)で表す。
応力:JIS K−6251記載の用語の定義による。単位はMPa。
・切断時引張応力:試験片が切断したときに記録される引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
・100%伸び時の引張応力:試験片に100%の伸びを与えた時の引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
チャック間距離:50mm
試験力容量:5kN
試験温度:23℃、50%RH
伸び率:ダンベル状3号型の標線間距離を基準にした初期に対する比率(%)で表す。
応力:JIS K−6251記載の用語の定義による。単位はMPa。
・切断時引張応力:試験片が切断したときに記録される引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
・100%伸び時の引張応力:試験片に100%の伸びを与えた時の引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
上記方法で求められる共重合体ラテックスのフィルム特性は、接着強度の観点から、ラテックスフィルムの切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比(切断時引張応力/100%伸び時の引張応力)が3.5未満であり、且つ、ラテックスフィルムの切断時伸びが300%を超えることが好ましい。
共重合体ラテックスの粘度は、共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量:6000)2.5質量部(固形分)を添加し、純水によって固形分濃度50.0質量%に調整し、且つ、pH調整剤でpH6.5に調整した場合の25℃における粘度が、50〜1000mPa・sであることが好ましく、70〜700mPa・sであることがより好ましい。上記ポリアクリル酸ナトリウムとしては、例えば、東亞合成株式会社製のアロン(登録商標)T−50(商品名)を用いることができる。上記pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸などを用いることができる。なお、粘度は、JIS K7117−1の測定方法に準じて、B型(BL型)粘度計を用いて回転数60rpmでの回転開始1分後の粘度として測定される。
共重合体ラテックスには、必要に応じて、防腐剤、老化防止剤、分散剤、印刷適性向上剤、表面サイズ剤、潤滑剤、界面活性剤などの機能性添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、種類及び使用量ともに適宜適量使用することができる。
実施形態に係る共重合体ラテックスは、十分に低い粘度を有することができるため、共重合体ラテックスを移送するためのポンプへの負担を少なくすることができハンドリングに優れる。また、実施形態に係る共重合体ラテックスは、高接着強度でありながら、優れた耐ベタツキ性及び再分散性を有することができる。そのため、塗工紙作成時のバッキングロール等へのラテックスの付着を抑制することができ、塗工紙作成時の操業性を向上させることができる。更に、実施形態に係る共重合体ラテックスは、優れた接着強度を得ることができるため、塗工紙製品の表面強度(ドライピック強度)及び電極塗工層の結着力を向上させることができる。実施形態に係る共重合体ラテックスは、上述した各特性に優れることから、特に塗工紙製品を製造するための紙塗工用組成物、及び、電極を製造するための電池電極用組成物に配合されるバインダーとして有用である。
実施形態に係る共重合体ラテックスは、紙塗工用、不織布などの繊維結合用、カーペットのバッキング用、電池用(例えば電極、セパレータ、耐熱保護層など)、塗料用、粘接着剤用などのバインダーとして有用である。
紙塗工用組成物は、例えば、実施形態に係る共重合体ラテックスと、必要に応じて、顔料、他のバインダー、助剤などとを含むものが挙げられる。
顔料としては、カオリンクレー、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機顔料、ポリスチレンラテックスなどの有機顔料を用いることができる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
他のバインダーとしては、澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の変性澱粉、大豆蛋白、カゼインなどの天然バインダー、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性合成バインダー、ポリ酢酸ビニルラテックス、アクリル系ラテックスなどの合成ラテックスなどが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
助剤としては、分散剤(ピロリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、消泡剤(ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイルなど)、レベリング剤(ロート油、ジシアンジアミド、尿素など)、防腐剤、離型剤(ステアリン酸カルシウム、パラフィンエマルジョンなど)、蛍光染料、カラー保水性向上剤(アルギン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。
紙塗工用組成物における共重合体ラテックスの含有量は、顔料100質量部に対して固形分の含有量が1〜20質量部となることが好ましく、2〜15質量部となることがより好ましい。
電池電極用組成物は、例えば、実施形態に係る共重合体ラテックス及び活物質と、必要に応じて、助剤などとを含むものが挙げられる。
正極活物質としては、特に限定されないが、非水電解液二次電池の場合、例えば、MnO2、MoO3、V2O5、V6O13、Fe2O3、Fe3O4などの遷移金属酸化物、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiXCoYSnZO2などのリチウムを含む複合酸化物、LiFePO4などのリチウムを含む複合金属酸化物、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、CuF2、NiF2などの金属フッ化物が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
負極活物質としては、特に限定されないが、非水電解液二次電池の場合、例えば、フッ化カーボン、黒鉛、炭素繊維、樹脂焼成炭素、リニア・グラファイト・ハイブリット、コークス、熱分解気層成長炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素、黒鉛ウィスカー、擬似等方性炭素、天然素材の焼成体、およびこれらの粉砕物などの導電性炭素質材料、ポリアセン系有機半導体、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子、並びに、ケイ素、スズなどの金属単体、もしくは金属酸化物、もしくはその金属の合金を含む複合材料などが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
助剤としては、水溶性増粘剤、分散剤、安定化剤、導電剤などが挙げられる。水溶性増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどが挙げられ、分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどが挙げられ、安定化剤としては、例えば、ノニオン性、アニオン性界面活性剤などが挙げられ、導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンナノファイバーなどが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
電池電極用組成物中の共重合体ラテックスの含有量は、活物質100質量部(固形分)に対して、0.1〜10質量部(固形分)であることが好ましく、0.5〜7質量部であることがより好ましい。共重合体ラテックスの含有量を、0.1質量部以上とすると、活物質や集電体などに対する良好な接着力が得られる観点から好ましく、10質量部以下とすると、二次電池として組み立てたときに過電圧が著しく上昇し、電池特性を低下させることを防ぐ観点から好ましい。
電池電極用組成物は、集電体に塗布、乾燥されることにより、集電体上に電極塗工層を形成し、電極シートを得る。そのような電極シートは、例えば非水電解液二次電池の正極板または負極板として用いられる。
電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としては、例えば、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの公知の方法を用いることができ、乾燥には、放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが用いられる。
本実施形態に係る共重合体ラテックスを使用した電池電極用組成物は、例えば、非水電解液二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの二次電池の電極用として好適である。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<共重合ラテックスの製造>
表1〜4に示す材料を同表に示す配合量(単位:質量部)で配合して反応を行い、共重合体ラテックスを合成した。具体的な合成手順を以下に示す。
表1〜4に示す材料を同表に示す配合量(単位:質量部)で配合して反応を行い、共重合体ラテックスを合成した。具体的な合成手順を以下に示す。
なお、表1〜4中の各成分及び記号は下記の化合物を示す。
(a)成分:脂肪族共役ジエン系単量体
BDE:1,3−ブタジエン
(b)成分:エチレン系不飽和カルボン酸単量体
IA:イタコン酸
FA:フマル酸
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
(c)成分:シアン化ビニル単量体
ACN:アクリロニトリル
(d)成分:(a)〜(c)成分と共重合可能な単量体
STY:スチレン
MMA:メタクリル酸メチル
(その他の成分)
tDM:t−ドデシルメルカプタン
乳化剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
KPS:過硫酸カリウム
電解質:炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
PW:純水
(a)成分:脂肪族共役ジエン系単量体
BDE:1,3−ブタジエン
(b)成分:エチレン系不飽和カルボン酸単量体
IA:イタコン酸
FA:フマル酸
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
(c)成分:シアン化ビニル単量体
ACN:アクリロニトリル
(d)成分:(a)〜(c)成分と共重合可能な単量体
STY:スチレン
MMA:メタクリル酸メチル
(その他の成分)
tDM:t−ドデシルメルカプタン
乳化剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
KPS:過硫酸カリウム
電解質:炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
PW:純水
(参考例1)
耐圧性の重合反応容器に、シクロヘキセン10質量部、及び、表1の1段目に示す配合量(質量部)の各単量体成分とその他の化合物を加えて十分攪拌し、反応液を得た。
耐圧性の重合反応容器に、シクロヘキセン10質量部、及び、表1の1段目に示す配合量(質量部)の各単量体成分とその他の化合物を加えて十分攪拌し、反応液を得た。
次に、重合槽内温度を上げていき、反応系のポリマー転化率が1.0%になった時点を到達時とし、この到達時を基準(0分)として90分後から、表1の2段目に示す配合量(質量部)の各単量体成分とその他の化合物を、表1の2段目に示す連添時間帯(到達時を基準として90分後から285分後まで、ただし(b)成分は90分後から180分後まで)に、反応液に添加した。なお重合系の反応温度は67℃とした。
続いて、表1の3段目に示す配合量(質量部)の各単量体成分とその他化合物を、表1の3段目に示す連添時間帯(到達時を基準として285分後から465分後まで)に、反応液に添加した。
続いて、表1の4段目に示す配合量(質量部)の各単量体成分とその他化合物を、表1の4段目に示す連添時間帯(到達時を基準として465分後から480分後まで)に、反応液に添加した。
単量体成分の全量の投入を終了した後、重合槽内温度を85℃に昇温し、85℃を維持した。ポリマー転化率が97%を超えたことを重合槽を冷却した熱量から確認して、重合を終了し、反応生成物を得た。
重合反応終了後、水酸化ナトリウムを用いて反応生成物のpHを6.5に調整した。次いで、未反応単量体及び他の低沸点化合物を除去するために反応生成物の加熱減圧蒸留を行い、共重合体ラテックスAを得た。
(実施例2〜9)
各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表1又は2に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスB〜Iをそれぞれ得た。
各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表1又は2に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスB〜Iをそれぞれ得た。
(比較例1、4〜7)
各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表2又は3に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスCE−1、CE−4〜CE−7をそれぞれ得た。
各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表2又は3に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスCE−1、CE−4〜CE−7をそれぞれ得た。
(比較例2)
耐圧性の重合反応器に、シクロヘキセン10質量部を加える代わりにα−メチルスチレンダイマー0.3質量部を加えたこと、及びシクロヘキセンを2段目に7質量部、3段目に7質量部を各々連続添加したこと、各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表2に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスCE−2を得た。
耐圧性の重合反応器に、シクロヘキセン10質量部を加える代わりにα−メチルスチレンダイマー0.3質量部を加えたこと、及びシクロヘキセンを2段目に7質量部、3段目に7質量部を各々連続添加したこと、各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表2に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスCE−2を得た。
(比較例3)
耐圧性の重合反応器に、シクロヘキセン10質量部を加える代わりにα−メチルスチレンダイマー0.5質量部を加えたこと、α−メチルスチレンダイマーを2段目に0.2質量部及び3段目に0.2質量部を各々単量体成分と共に連続添加したこと、各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表3に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスCE−3を得た。
耐圧性の重合反応器に、シクロヘキセン10質量部を加える代わりにα−メチルスチレンダイマー0.5質量部を加えたこと、α−メチルスチレンダイマーを2段目に0.2質量部及び3段目に0.2質量部を各々単量体成分と共に連続添加したこと、各単量体成分及びその他の化合物の配合量、連添時間帯、反応温度を表3に示す条件に変更したこと以外は、参考例1と同様にして共重合体ラテックスCE−3を得た。
<(b)成分及び(c)成分の投入状況>
参考例1、実施例2〜9及び比較例1〜7の各共重合体ラテックスの製造時における、(b)成分及び(c)成分の投入状況を表4にまとめて示す。
参考例1、実施例2〜9及び比較例1〜7の各共重合体ラテックスの製造時における、(b)成分及び(c)成分の投入状況を表4にまとめて示す。
<共重合体ラテックスの評価>
上記で得られた共重合体ラテックスについて下記の方法に従って、引張応力、耐ベタツキ性及びラテックス粘度の評価を行った。
上記で得られた共重合体ラテックスについて下記の方法に従って、引張応力、耐ベタツキ性及びラテックス粘度の評価を行った。
[引張応力]
共重合体ラテックスを用いて、以下の手順で厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムを作製した。まず、共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH10に調整し、そこに増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(第一工業製薬製、商品名:IX-1177、重量平均分子量:700万〜800万)を固形分割合で1質量%以下添加して粘度調整し、塗布液を調製した。ここで、ポリアクリル酸ナトリウムの添加量は、上記上限値を超えない範囲で、塗布液の粘度が厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムを作製可能な粘度となるように適宜調整した。
共重合体ラテックスを用いて、以下の手順で厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムを作製した。まず、共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpH10に調整し、そこに増粘剤としてポリアクリル酸ナトリウム(第一工業製薬製、商品名:IX-1177、重量平均分子量:700万〜800万)を固形分割合で1質量%以下添加して粘度調整し、塗布液を調製した。ここで、ポリアクリル酸ナトリウムの添加量は、上記上限値を超えない範囲で、塗布液の粘度が厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムを作製可能な粘度となるように適宜調整した。
得られた塗布液をフィルムアプリケーターで薄膜化し、23℃、50%RHの条件下で48時間放置して乾燥させた。なお、上記乾燥条件でラテックスの連続フィルムが得られない場合には、JIS K6828−2の方法に準じて測定したラテックスの最低造膜温度より20℃高い温度、50%RHの条件下で48時間放置して乾燥させた。更に、乾燥後の薄膜に対し、130℃に設定されたオーブン中にて15分間加熱処理を施し、0.3mm〜0.5mm厚のラテックスフィルムを得た。得られたラテックスフィルムを、厚さ以外はJIS K−6251に記載のダンベル状3号型の形状及び寸法に打ち抜いて試験片とした。この試験片をデシケーター中で24時間放置後、ミネベア株式会社製の引張圧縮試験機(商品名:TechnoGraph TGE−5kN)を用いて、500mm/minの引っ張り速度で試験した際の応力と伸び率(変位)を測定した。測定結果から、切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比(切断時引張応力/100%伸び時の引張応力)、及び、切断時伸び(ラテックスフィルムが切断した時の伸び率)を求め、表5に示した。なお、試験条件等は以下の通りである。
(試験条件等)
チャック間距離:50mm
試験力容量:5kN
試験温度:23℃、50%RH
伸び率:ダンベル状3号型の標線間距離を基準にした初期に対する比率(%)で表す。
応力:JIS K−6251記載の用語の定義による。単位はMPa。
・切断時引張応力:試験片が切断したときに記録される引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
・100%伸び時の引張応力:試験片に100%の伸びを与えた時の引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
チャック間距離:50mm
試験力容量:5kN
試験温度:23℃、50%RH
伸び率:ダンベル状3号型の標線間距離を基準にした初期に対する比率(%)で表す。
応力:JIS K−6251記載の用語の定義による。単位はMPa。
・切断時引張応力:試験片が切断したときに記録される引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
・100%伸び時の引張応力:試験片に100%の伸びを与えた時の引張力を試験片の初期断面積で除したもの。
[ラテックス粘度]
分散剤として東亞合成株式会社製のアロン(登録商標)T−50(商品名、ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量:6000)を、共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し一律2.5質量部(固形分換算)添加後、純水によって固形分濃度50.0質量%、pH6.5、液温25℃に調整した。なお、ラテックスのpHは必要に応じて水酸化ナトリウム、塩酸などのpH調整剤で調整を行った。調整後の共重合体ラテックスの粘度を、JIS K7117−1の測定方法に準じて、B型(BL型)粘度計を用いて回転数60rpmでの回転開始1分後の粘度を測定した。得られた粘度について、下記のとおり判定した。粘度は低い方が良好である。結果を表5に示す。
A:500mPa・s未満
B:500以上1000mPa・s未満
C:1000以上1500mPa・s未満
D:1500以上2000mPa・s未満
E:2000mPa・s以上
分散剤として東亞合成株式会社製のアロン(登録商標)T−50(商品名、ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量:6000)を、共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し一律2.5質量部(固形分換算)添加後、純水によって固形分濃度50.0質量%、pH6.5、液温25℃に調整した。なお、ラテックスのpHは必要に応じて水酸化ナトリウム、塩酸などのpH調整剤で調整を行った。調整後の共重合体ラテックスの粘度を、JIS K7117−1の測定方法に準じて、B型(BL型)粘度計を用いて回転数60rpmでの回転開始1分後の粘度を測定した。得られた粘度について、下記のとおり判定した。粘度は低い方が良好である。結果を表5に示す。
A:500mPa・s未満
B:500以上1000mPa・s未満
C:1000以上1500mPa・s未満
D:1500以上2000mPa・s未満
E:2000mPa・s以上
[耐ベタツキ性]
バッキングロール等へのラテックスの付着しやすさの目安として、共重合体ラテックスのフィルムの耐ベタツキ性(粘着性)について試験を行った。ポリエステルフィルムに各共重合体ラテックスを塗布量12g/m2で塗工し、120℃のオーブン中で1分間乾燥してラテックスフィルムを形成した。各ラテックスフィルムを1cm幅の短冊状に切断し、黒色台紙上に全てのラテックスフィルムの短冊を並べて貼り付けた。その上に濾紙を重ねてRI印刷機を用い圧着した。その後、濾紙を剥がした後の、濾紙の繊維の各ラテックスフィルム表面上への付着状態を目視で観察し、各ラテックスフィルムの耐ベタツキ性を比較評価した。繊維の付着の少ないものを耐ベタツキ性に優れるとしてA評価とし、繊維の付着が多いものを耐ベタツキ性に劣るとしてE評価とし、下記のとおりA、B、C、D、Eの5段階で、耐ベタツキ性の優劣を目視にて相対的に評価した。結果を表5に示す。耐ベタツキ性に優れるほど、バッキングロール等にラテックスが付着しにくく、塗工紙作成時の操業性に優れる。
(優) A > B > C > D > E (劣)
バッキングロール等へのラテックスの付着しやすさの目安として、共重合体ラテックスのフィルムの耐ベタツキ性(粘着性)について試験を行った。ポリエステルフィルムに各共重合体ラテックスを塗布量12g/m2で塗工し、120℃のオーブン中で1分間乾燥してラテックスフィルムを形成した。各ラテックスフィルムを1cm幅の短冊状に切断し、黒色台紙上に全てのラテックスフィルムの短冊を並べて貼り付けた。その上に濾紙を重ねてRI印刷機を用い圧着した。その後、濾紙を剥がした後の、濾紙の繊維の各ラテックスフィルム表面上への付着状態を目視で観察し、各ラテックスフィルムの耐ベタツキ性を比較評価した。繊維の付着の少ないものを耐ベタツキ性に優れるとしてA評価とし、繊維の付着が多いものを耐ベタツキ性に劣るとしてE評価とし、下記のとおりA、B、C、D、Eの5段階で、耐ベタツキ性の優劣を目視にて相対的に評価した。結果を表5に示す。耐ベタツキ性に優れるほど、バッキングロール等にラテックスが付着しにくく、塗工紙作成時の操業性に優れる。
(優) A > B > C > D > E (劣)
<塗工紙の作成及び評価>
上記で得られた共重合体ラテックスを用いて下記の方法により紙塗工用組成物を調製して塗工紙を作成した。
上記で得られた共重合体ラテックスを用いて下記の方法により紙塗工用組成物を調製して塗工紙を作成した。
(紙塗工用組成物の調製)
下記に示した配合処方に従って紙塗工用組成物を作製した。なお、紙塗工用組成物は、水酸化ナトリウムでpH9.5に調整し、純水を必要量添加することによって固形分濃度を67質量%に調整した。
(配合処方)
カオリン((株)イメリスミネラルズ・ジャパン製、商品名:DBグレーズ) 20質量部
重質炭酸カルシウム((株)イメリスミネラルズ・ジャパン製、商品名:カービタル90) 80質量部
変性デンプン(日本食品化工(株)製、商品名:MS4600) 2質量部
共重合体ラテックス 6質量部(固形分)
下記に示した配合処方に従って紙塗工用組成物を作製した。なお、紙塗工用組成物は、水酸化ナトリウムでpH9.5に調整し、純水を必要量添加することによって固形分濃度を67質量%に調整した。
(配合処方)
カオリン((株)イメリスミネラルズ・ジャパン製、商品名:DBグレーズ) 20質量部
重質炭酸カルシウム((株)イメリスミネラルズ・ジャパン製、商品名:カービタル90) 80質量部
変性デンプン(日本食品化工(株)製、商品名:MS4600) 2質量部
共重合体ラテックス 6質量部(固形分)
(再分散性の評価)
バッキングロール等へのラテックスの付着しやすさの目安として、紙塗工用組成物の再分散性について試験を行った。NBR黒ゴム板上に各紙塗工用組成物を並べて#6ワイヤーバーにて塗布し、60℃熱風循環式オーブンにて3分間乾燥させた後、30℃の流水で1分間洗浄してNBR黒ゴム板上に残った組成物の皮膜を目視にて観察した。皮膜の残量の少ないものを再分散性に優れるとしてA評価とし、皮膜の残量の多いものを再分散性に劣るとしてE評価とし、下記のとおりA、B、C、D、Eの5段階で、再分散性の優劣を目視にて相対的に評価した。結果を表5に示す。再分散性に優れるほど、バッキングロール等に付着した紙塗工用組成物を容易に洗浄することができ、塗工紙作成時の操業性に優れる。
(優) A > B > C > D > E (劣)
バッキングロール等へのラテックスの付着しやすさの目安として、紙塗工用組成物の再分散性について試験を行った。NBR黒ゴム板上に各紙塗工用組成物を並べて#6ワイヤーバーにて塗布し、60℃熱風循環式オーブンにて3分間乾燥させた後、30℃の流水で1分間洗浄してNBR黒ゴム板上に残った組成物の皮膜を目視にて観察した。皮膜の残量の少ないものを再分散性に優れるとしてA評価とし、皮膜の残量の多いものを再分散性に劣るとしてE評価とし、下記のとおりA、B、C、D、Eの5段階で、再分散性の優劣を目視にて相対的に評価した。結果を表5に示す。再分散性に優れるほど、バッキングロール等に付着した紙塗工用組成物を容易に洗浄することができ、塗工紙作成時の操業性に優れる。
(優) A > B > C > D > E (劣)
(塗工紙の作成)
塗工原紙(坪量55g/m2)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が10g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。得られた塗工紙について、下記の方法によりドライピック強度の評価を行った。結果を表5に示す。
塗工原紙(坪量55g/m2)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が10g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。得られた塗工紙について、下記の方法によりドライピック強度の評価を行った。結果を表5に示す。
(塗工紙のドライピック強度の評価)
RI印刷機を用い、各塗工紙にピッキングテスト用墨インキ(DICグラフィックス(株)製)を同時に印刷した。得られた印刷物を塗工上質紙に押し当ててインキを写し取り、インキが写し取られなかった部分(白抜け部分)をピッキング発生箇所と見なし、このときのピッキングの程度を肉眼で判定し、ピッキングの発生量が最も少ないものを5級とし、5級(優)から1級(劣)まで相対的に目視評価した。この評価の数値が高いほどドライピック強度が高く、接着強度に優れる。
RI印刷機を用い、各塗工紙にピッキングテスト用墨インキ(DICグラフィックス(株)製)を同時に印刷した。得られた印刷物を塗工上質紙に押し当ててインキを写し取り、インキが写し取られなかった部分(白抜け部分)をピッキング発生箇所と見なし、このときのピッキングの程度を肉眼で判定し、ピッキングの発生量が最も少ないものを5級とし、5級(優)から1級(劣)まで相対的に目視評価した。この評価の数値が高いほどドライピック強度が高く、接着強度に優れる。
<電極の作製及び評価>
上記で得られた共重合体ラテックスを用いて、下記の方法により電池電極用組成物を調製して電極を作製した。
上記で得られた共重合体ラテックスを用いて、下記の方法により電池電極用組成物を調製して電極を作製した。
(電池電極用組成物の調製)
(1−1)正極用組成物の調製
正極活物質としてLiCoO2を100質量部と、導電剤としてアセチレンブラックを5質量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1質量部と、結着剤として、各実施例および各比較例の共重合体ラテックスを固形分で2質量部とを全固形分が65質量%となるように適量の純水を加えて混練し、正極用組成物を調製した。
(1−1)正極用組成物の調製
正極活物質としてLiCoO2を100質量部と、導電剤としてアセチレンブラックを5質量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1質量部と、結着剤として、各実施例および各比較例の共重合体ラテックスを固形分で2質量部とを全固形分が65質量%となるように適量の純水を加えて混練し、正極用組成物を調製した。
(1−2)負極用組成物の調製
負極活物質として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100質量部に対して、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1質量部と、結着剤として、各実施例および各比較例の共重合体ラテックスを固形分で2質量部とを全固形分が45質量%となるように適量の純水を加えて混練し、負極用組成物を調製した。
負極活物質として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100質量部に対して、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1質量部と、結着剤として、各実施例および各比較例の共重合体ラテックスを固形分で2質量部とを全固形分が45質量%となるように適量の純水を加えて混練し、負極用組成物を調製した。
(電極の作製)
(1−1)正極の作製
上記のようにして得られた正極用組成物を集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布し、130℃で5分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが100μmの正極を得た。
(1−1)正極の作製
上記のようにして得られた正極用組成物を集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布し、130℃で5分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが100μmの正極を得た。
(1−2)負極の作製
上記のようにして得られた負極用組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔に塗布し、130℃で5分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが100μmの負極を得た。なお、電極活物質の被覆性を評価する際には、ロールプレスによる圧延を行う前の状態のものを用いた。
上記のようにして得られた負極用組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔に塗布し、130℃で5分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが100μmの負極を得た。なお、電極活物質の被覆性を評価する際には、ロールプレスによる圧延を行う前の状態のものを用いた。
(共重合体ラテックスの活物質への被覆性の評価)
共重合体ラテックスが活物質の表面をより多く被覆することにより、充放電を繰り返した際のサイクル特性が向上することから、上記の方法で得られた各負極シートにおいて、下記の方法により共重合体ラテックスの活物質への被覆性を評価した。すなわち、上記で得られた各負極シート(圧延前のもの)を1cm四方に切り、四酸化オスミウム雰囲気下で染色した後、走査型電子顕微鏡(日本電子製、商品名:JSM−6510LA)を用いて、5000倍にて観察した。SEM観察画像において、活物質の面積に対し、活物質上に共重合体ラテックスが付着している面積を目視で確認し、下記のとおり評価した。なお、SEM観察画像8画面のうち、最も平均的な画像を選び、評価した。結果を表6に示す。
A:活物質の表面の80%以上を共重合体ラテックスが被覆している。
B:活物質の表面の60%以上80%未満を共重合体ラテックスが被覆している。
C:活物質の表面の40%以上60%未満を共重合体ラテックスが被覆している。
D:活物質の表面の40%未満しか共重合体ラテックスが被覆していない。
共重合体ラテックスが活物質の表面をより多く被覆することにより、充放電を繰り返した際のサイクル特性が向上することから、上記の方法で得られた各負極シートにおいて、下記の方法により共重合体ラテックスの活物質への被覆性を評価した。すなわち、上記で得られた各負極シート(圧延前のもの)を1cm四方に切り、四酸化オスミウム雰囲気下で染色した後、走査型電子顕微鏡(日本電子製、商品名:JSM−6510LA)を用いて、5000倍にて観察した。SEM観察画像において、活物質の面積に対し、活物質上に共重合体ラテックスが付着している面積を目視で確認し、下記のとおり評価した。なお、SEM観察画像8画面のうち、最も平均的な画像を選び、評価した。結果を表6に示す。
A:活物質の表面の80%以上を共重合体ラテックスが被覆している。
B:活物質の表面の60%以上80%未満を共重合体ラテックスが被覆している。
C:活物質の表面の40%以上60%未満を共重合体ラテックスが被覆している。
D:活物質の表面の40%未満しか共重合体ラテックスが被覆していない。
(電極塗工層の結着力の評価)
上記の方法で得られた各電極シート(各正極および各負極)の表面に、ナイフを用いて活物質層から集電体に達する深さまでの切り込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本入れて碁盤目の切り込みを作った。この切り込みを入れた活物質層の表面に粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質が脱落したマス目を数え、下記のとおり評価した。結果を表6に示す。
A:活物質が脱落したマス目が5未満
B:活物質が脱落したマス目が5以上12未満
C:活物質が脱落したマス目が12以上18未満
D:活物質が脱落したマス目が18以上25以下
上記の方法で得られた各電極シート(各正極および各負極)の表面に、ナイフを用いて活物質層から集電体に達する深さまでの切り込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本入れて碁盤目の切り込みを作った。この切り込みを入れた活物質層の表面に粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質が脱落したマス目を数え、下記のとおり評価した。結果を表6に示す。
A:活物質が脱落したマス目が5未満
B:活物質が脱落したマス目が5以上12未満
C:活物質が脱落したマス目が12以上18未満
D:活物質が脱落したマス目が18以上25以下
表5に示した結果から明らかなように、参考例1、実施例2〜9の共重合体ラテックスA〜Iはいずれも、比較例1〜7の共重合体ラテックスCE−1〜CE−7と比較して、十分な接着強度、十分に低い粘度、十分な耐ベタツキ性及び十分な再分散性の全てをバランス良く備えていることが確認された。また、表6に示した結果から明らかなように、電池電極用としての評価においても、十分な結着力(正極及び負極の両方)及び良好な電極活物質の被覆性をバランス良く備えていることが確認された。
Claims (3)
- 乳化重合により得られる共重合体ラテックスであって、
前記共重合体は、
(a)脂肪族共役ジエン系単量体15〜60質量%、
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体5〜35質量%、
(c)シアン化ビニル単量体5〜30質量%、及び、
(d)これらと共重合可能な単量体0〜75質量%、からなる単量体成分で構成されており、
前記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、エチレン系不飽和モノカルボン酸単量体を30質量%を超えて含有し、
前記乳化重合は、
反応系のポリマー転化率が1.0%に到達した到達時までに、前記(c)シアン化ビニル単量体の全量を投入せず、
前記到達時から、単量体成分の全量投入終了した終了時までの時間、の60%の時点までに、前記(c)シアン化ビニル単量体の全量の80質量%以上を投入して行われる、共重合体ラテックス。 - 前記乳化重合は、
重合開始剤投入開始時の反応系に、前記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量の0質量%超40質量%以下を含有させ、
前記反応系が、前記到達時から前記終了時までの時間、の5%の時点以降から、前記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の残部の添加を開始して、前記到達時から前記終了時までの時間、の80%の時点までに、前記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全量の92質量%以上を投入して行われる、請求項1記載の共重合体ラテックス。 - 前記共重合体ラテックスを用いて作製した厚さ0.3〜0.5mmのラテックスフィルムの、切断時引張応力と100%伸び時の引張応力との比(切断時引張応力/100%伸び時の引張応力)が3.5未満であり、且つ、前記ラテックスフィルムの切断時伸びが300%を超える、請求項1又は2記載の共重合体ラテックス。
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