JP2011195973A - 紙塗工用共重合体ラテックス及び紙塗工用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 異なる単量体組成からなる少なくとも2段の重合工程を有し、かつ、1段目と2段目の単量体組成が規定範囲に入る単量体組成物を重合して得られる共重合体ラテックスであって、組成の違う構造を有する多層構造型重合体粒子であり、そのラテックスフィルムの超薄切片(厚み70〜80μm)をオスミウム染色後電顕観察した際に、オスミウムに濃く染色された部分が部分的連続層(不均一なミクロドメイン構造)を形成することを特徴とする紙塗工用共重合体ラテックス。
【選択図】 図2
Description
一般に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物の性能や塗工紙作成時の操業性あるいは最終的な塗工紙製品の表面強度、印刷光沢などの品質に影響することが知られている。
また、一般的に印刷時強度の向上にはラテックスの粒子径を小さくし接着表面積を増やしたり、官能基量を増やす事で塗料の安定性を確保し接着剤の効果を十分に引き出す事が重要であるが、これらに相反してラテックス粘度が上昇し、共重合体ラテックスの製造段階や運搬工程、保管工程、また紙塗工用組成物の調合工程において共重合体ラテックスの取り扱いが困難になるケースが増えており、高い品質を維持したまま如何にラテックス粘度を下げるかが問題となっている。
また、特開2004−182943号公報(特許文献2)では、微量の2、2、4―トリメチル−1、2−ジヒドロキノリン重合体、ベンゾチアジルスルフェンアミド誘導体又はビスフェノール誘導体の少なくとも1種の存在下で乳化重合することで小粒子径かつ低粘度の共重合体ラテックスの重合技術が紹介されている。
しかし、これらの様々な改良技術は、未だ塗工紙に求められる良好な印刷時強度と共重合体ラテックスの取り扱い性を両立させるには不十分であり、高い品質を維持したまま如何にラテックスの粘度を下げるかが問題となっている。
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
一般に、コアシェル構造などの異層構造ラテックスは、フィルムを作成する際に、連続したシェルの海にコアシェル粒子中のコアが1つ1つ島として存在しているような海島構造を形成したり、ハニカム構造を形成したりすることは周知である。本発明の共重合体ラテックスは、粒子中のオスミウムに淡く染色される部分を海にして、粒子中のオスミウムに濃く染色される部分が複数個集まったような部分的連続層が島として存在する海島構造(本発明では不均一なミクロドメイン構造という)のフィルムを形成するものである。一般にオスミウムに濃く染色される部分は、脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位が多い部分であるといわれている。このジエン由来の構造単位が多いすなわち衝撃緩和力が強い部分が、比較的ジエンの少ない海構造の中に一つ一つ小さいサイズで存在するよりも、複数個集まってラテックス粒子より大きいサイズになることで、フィルムの衝撃緩和力がより大きくなり、塗工紙にした際の印刷時強度が良好になるものである。かつ、このようなフィルムを形成するような多段重合方法によれば、理由はいまだに解明できていないものの、ラテックス粘度を大幅に低減できることが判明した。
また、エチレン系不飽和カルボン酸単量体は全体量の60重量%が1段目の重合工程で添加されるのが好ましく、60重量%未満では塗工紙の印刷時の強度発現が劣る傾向があり好ましくない。
また、2段目の単量体合計が10〜66重量%、3段目以降の単量体合計が2〜62重量%であると、より塗工紙の印刷時の強度発現が良好となるため好ましい。
また、紙塗工用組成物中の本発明の共重合体ラテックスの含有量は顔料100重量部(固形分)に対して2〜15重量部(固形分)を使用することが好ましい。共重合体ラテックスの含有量が2重量部以下では顔料を充分に接着できず好ましくなく、15重量部を超えると塗料中に占める共重合体ラテックスの製造コストの上昇を招く。より好ましくは2.5〜12部重量部(固形分)である。
温度40℃、湿度85%の雰囲気にてラテックスフィルムを作成する。その後ラテックスフィルムを約1g秤量しXgとする。これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させる。その後、これを秤量済みの300メッシュの金網で濾過し、その後トルエンを蒸発乾燥させ、その乾燥後重量からメッシュ重量を減じて、試料の乾燥後重量を秤量しYgとする。
ゲル含量(%)=Y/X*100
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、FPAR−1000(大塚電子製)を使用した。
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、5級(優)から1級(劣)まで相対的に目視評価した。
共重合体ラテックスの固形分を50%に調整した際のラテックスの粘度を、JIS K6838の測定方法に準じて測定した。得られた粘度について、下記のとおり判定した。
◎:300mPa・s以下
○:301〜800mPa・s
△:801〜2000mPa・s
×:2001mPa・s以上
40℃、65%の条件下で十分に乾燥させたラテックスフィルムからクライオミクロトーム(ライカ製:ミクロトーム(EM UC6/FC6型))を用いて−85℃で超薄切片を切り出す。ミクロトームの厚みの設定値は70nmとした。その後、得られた超薄切片を四酸化オスミウム(OsO4)で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子製:JEM−1400)を用いてフィルム切片(粒子断面)を観察・撮影した。
図2や3に示すような不均一なミクロドメイン構造の形成が確認された場合は、○とし、例えば図1に示したような均一なハニカム構造のように、図2や3に示すような不均一なミクロドメイン構造の形成が観察されなかった場合は、×として、観察結果を表1及び表2に示した。
耐圧製の重合反応器に、重合水140部と表1に示す1段目に記載の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、重合転化率が80%を越えた時点で、2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い最終の重合転化率が96%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスAを得た。
共重合体ラテックス(B、G〜J)の合成
各段の単量体組成を表1および表2に記載の内容に変更して、ラテックスAと同様に重合を行いラテックスB、およびG〜Jを得た。
共重合体ラテックス(C〜E、K、M〜N)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水140部と表1および表2に示す1段目に記載の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、重合転化率が50%を越えた時点で、2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行う。2段目を添加後、重合転化率が80%を越えた時点で3段目の各単量体および他の化合物を加えて、最終重合転化率が96%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスC〜E、K、M〜Nを得た。
共重合体ラテックス(F)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水140部と表1に示す1段目に記載の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、重合転化率が50%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行う。2段目の単量体を添加後、重合転化率が80%を越えた時点で3段目の各単量体および他の化合物を加えて、重合転化率が85%を越えた時点で4段目の各単量体および他の化合物を加えて最終の重合転化率が96%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスFを得た。
共重合体ラテックス(L)の合成
耐圧製の重合反応器に、重合水140部と表2に示す1段目に記載の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、重合転化率が96%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpHを7に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスLを得た。
下記に示した配合処方に従って共重合体ラテックスA〜Nを用い、水酸化ナトリウムでpH9.5に調整し、紙塗工用組成物を作製した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
配合処方
微粒カオリン 40部
重質炭酸カルシウム 60部
変性デンプン 1部
共重合体ラテックス 5部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 67%
塗工原紙(坪量55g/m2)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が10g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。得られた塗工紙を各試験に供して評価し、その結果を表1および表2に示した。
実施例2に比較して、比較例3では1段目に添加する単量体合計が32重量%を超えており、比較例4では2段目のシアン化ビニル系単量体合計が30重量%を超えており、いずれもフィルムが不均一なミクロドメイン構造を形成しておらず、塗工紙の印刷時強度が劣り、ラテックス粘度が高い。
比較例5では、1段目のエチレン性不飽和単量体が20重量%を超え、かつ1段目の単量体合計が32重量%を超えており、比較例6では、1段重合の共重合体ラテックスであり、いずれも本発明範囲外でることからフィルムが不均一なミクロドメイン構造を形成しておらず、著しくラテックス粘度が高く、塗工紙の印刷時強度も劣る。
実施例3に対して、比較例7では2段目以降の脂肪族共役ジエン系単量体が60重量%を超えており、比較例8では、2段目以降のシアン化ビニル系単量体が5重量%未満であり、いずれもフィルムが不均一なミクロドメイン構造を形成しておらず、塗工紙の印刷時強度が劣り、ラテックス粘度が高い。
Claims (4)
- 異なる単量体組成から構成される少なくとも2段の重合工程を有し、かつ、1段目に脂肪族共役ジエン系単量体1.5〜24重量%、シアン化ビニル系単量体5.1〜25重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体3.1〜20重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜22.3重量%から構成される単量体の合計が13〜32重量%(全単量体合計100重量%)であり、さらに2段目以降に脂肪族共役ジエン系単量体10〜60重量%、シアン化ビニル単量体5〜30重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0〜13重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜72重量%から構成される単量体合計68〜87重量%(全単量体合計100重量%)を重合して得られる共重合体ラテックスであって、組成の違う構造を有する多層構造型重合体粒子であり、かつラテックスフィルムの超薄切片(厚み70〜80μm)をオスミウム染色後電顕観察した際に、オスミウムに濃く染色された部分が部分的連続層(不均一なミクロドメイン構造)を形成することを特徴とする紙塗工用共重合体ラテックス。
- 異なる単量体組成からなる少なくとも3段の重合工程を有し、1段目に脂肪族共役ジエン系単量体1.5〜24重量%、シアン化ビニル単量体5.1〜25重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体4.1〜20重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜21.3重量%から構成される単量体合計13〜32重量%を重合し、2段目以降に脂肪族共役ジエン系単量体10〜60重量%、シアン化ビニル単量体5〜30重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0〜13重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜72重量%から構成される単量体合計68〜87重量%を重合することを特徴とする請求項1に記載の共重合体ラテックス。
- エチレン系不飽和カルボン酸単量体全使用量の60重量%以上が1段目の重合工程で添加され、最終段の重合工程では添加されないことを特徴とする請求項1または2に記載の共重合体ラテックス。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体ラテックスを含有する紙塗工用組成物。
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