JP5503205B2 - 紙塗工用共重合体ラテックス及び紙塗工用組成物 - Google Patents
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Description
一般に紙塗工用組成物は、クレーや炭酸カルシウムなどの白色顔料を水に分散した顔料分散液、顔料同士および顔料を原紙に接着固定するためのバインダー、およびその他の添加剤によって構成される水性塗料である。バインダーとしてはスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスに代表されるような合成エマルションバインダーやデンプン、カゼインに代表されるような天然バインダーが使用される。その中でもスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスは、品質設計の自由度が大きく、今日では紙塗工用組成物に最も適したバインダーとして広く使用されており、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスの性能が紙塗工用組成物の性能や塗工紙作成時の操業性あるいは最終的な塗工紙製品の表面強度、印刷光沢などの品質に影響することが知られている。
一方、近年においては、顔料コストの高騰から顔料の低コスト化が行われ、高価なカオリンから安価な炭酸カルシウムへの配合比率が増しており、このような高炭酸カルシウム処方に適した紙塗工用組成物が求められている。とりわけ高炭酸カルシウム配合処方においては、白紙光沢の低下を炭酸カルシウム顔料の粒度を細かくすることで対策するケースが多く、それに伴い低下する印刷時強度をラテックスの性能向上によりカバーするなどラテックスが塗工紙に及ぼす影響はますます重要視されている。また、紙塗工用組成物中の炭酸カルシウム配合比率が増えると、組成物の安定性が損なわれ凝集物の発生など操業汚れが懸念されるため、組成物の機械的安定性の改良や、汚れが付着しても簡単に洗い流す事のできる組成物の再分散性の向上などが塗工操業性において重要な課題となっている。
特開2006−152484号公報(特許文献1)では、全顔料100質量%中に重質炭酸カルシウムを60%以上含有し、且つバインダーは、共重合体からなるコア部70〜95質量部と、共重合体からなるシェル部30〜5質量部とを備え、光散乱法による平均粒子径150nm以下のコア-シェル型共重合体を含有する共重合体ラテックスを含むことにより、印刷光沢が良好でかつインキセット、インキ乾燥性が良好な艶消し塗工紙を提供する艶消し塗工紙用組成物が紹介されている。また、特開平11−50390号公報(特許文献2)では、ブレードコーターで塗被し、該顔料として平均粒子径が0.1〜0.4μmの重質炭酸カルシウムを30〜100質量%含有せしめ、かつ該接着剤として平均粒子径が0.15〜0.30μmの共重合体ラテックスを全顔料に対して、固形分対比で5〜20質量%使用してなる印刷用塗被紙で光沢ムラが殆ど無い高品質に仕上がる技術が紹介されている。
しかし、これらの様々な改良技術は、未だ高炭酸カルシウムを含有する紙塗工用組成物に要求される性能を十分に満足するレベルには至っておらず、特にラテックスについて更なる改良が強く求められていた。
本発明における脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。特に1,3−ブタジエンの使用が好ましい。
また、エチレン系不飽和カルボン酸単量体として、1塩基酸と2塩基酸の重量比率(1塩基酸/2塩基酸)が0.01未満では塗料の再分散性が劣り、0.5を超えると塗工紙の印刷時の強度発現性が劣り好ましくない。好ましくは0.1以上0.5未満、さらに好ましくは0.2以上0.5未満である。
また、紙塗工用組成物中の共重合体ラテックスの含有量は顔料100重量部(固形分)に対して2〜20重量部(固形分)を使用することが好ましい。共重合体ラテックスの含有量が2重量部以下では顔料を充分に接着できず好ましくなく、20重量部を超えると不透明度や白紙光沢が低下して好ましくない。
室温雰囲気にてラテックスフィルムを作成する。その後ラテックスフィルムを約1g秤量し、これを400ccのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させる。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶部を乾燥後秤量し、この重量のはじめのラテックスフィルムの重量に占める割合をゲル含有量として重量%で算出した。
共重合体ラテックスの数平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、LPA−3000/3100(大塚電子製)を使用した。
バッキングロール等へのラテックスの付着しやすさの目安として、ラテックスフィルムのベタツキ性(粘着性)について試験を行った。ポリエステルフィルムに各々の共重合体ラテックスを塗布量12g/m2で塗工し、120℃オーブン中で1分間乾燥後、1cm幅の短冊状に切り黒色台紙上に下記の重合にて得られたラテックスA〜Kの11種類のクリアフィルムを並べて貼り付ける。
その上に、濾紙を重ねてRI印刷機を用いロ−ル間を通し圧着する。その後、濾紙を剥がした後の、濾紙の繊維の各クリアフィルム表面上への付着状態を見て、各クリアフィルムのベタツキ性を比較した。繊維の付着の少ないベタツキ性に優れるものを◎、繊維の付着が多くベタツキの劣るものを×とし、下記のとおり目視にて相対的に評価した。
(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)
紙塗工用組成物の固形分濃度を40重量%に調整し、200メッシュ金網にてろ過した試料(約50g)をマロン式機械的安定性試験機を用いて機械的せん断を与え、試験後の凝集物を200メッシュ金網で捕集して濾過残渣とした。その後金網上の濾過残渣を十分に乾燥して凝集物量(乾燥重量)を測定し、以下の式より凝集物割合(%)を算出し、4段階評価した。
凝集物量(乾燥重量)
凝集物割合(%)=――――――――――――――――――――×100
試料重量(湿潤重量)×固形分濃度(40%)
◎・・・0.001%未満 (非常に良い)
○・・・0.001%以上0.01%未満( 良い )
△・・・0.01%以上0.1%未満 (少し悪い)
×・・・0.1%以上 (非常に悪い)
NBR黒ゴム板上に各組成物サンプルを並べて#6ワイヤーバーにて塗布し60℃熱風循環式オーブンにて3分間乾燥させた後、30℃の流水で1分間洗浄してNBR黒ゴム板上に残った組成物の皮膜を目視にて観察した。皮膜の付着の少ない再分散性に優れるものを◎、皮膜の付着の多い再分散性に劣るものを×とし、下記のとおり目視にて相対的に評価した。
(優)◎ > ○ > △ > ×(劣)
RI印刷機で各塗工紙試料を同時に印刷した際のピッキングの程度を肉眼で判定し、5級(優)から1級(劣)まで相対的に評価した。
共重合体ラテックスの固形分を50%に調整した際のラテックスの粘度を、JIS K6838の測定方法に準じて測定した。その結果から、下記のとおり4段階で評価した。
◎:300mPa・s未満
○:300mPa・s以上〜700mPa・s未満
△:700mPa・s以上〜2000mPa・s未満
×:2000mPa・s以上
耐圧製の重合反応器に、重合水120部、過硫酸カリウム0.9部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、これら共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムを用いてpHを8に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスA、I、Jを得た。
共重合体ラテックス(B〜H、K)の作製
耐圧製の重合反応器に、重合水120部、過硫酸カリウム0.9部を仕込み、十分攪拌した後、表1および表2に示す1段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を開始した。重合転化率が70%を越えた時点で、次いで2段目の各単量体および他の化合物を加えて70℃にて重合を行い、最終転化率が97%を超えた時点で重合を終了した。
次いで、これら共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムを用いてpHを8に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックスB〜H及びKを得た。
下記に示した配合処方1、2に従って共重合体ラテックスA〜E、およびF〜Kを用い、NaOHでpH9.5に調整し、紙塗工用組成物を作製した。
(紙塗工用組成物の配合処方)
配合処方1
重質炭酸カルシウム 100部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 67%
配合処方2
カオリン 40部
重質炭酸カルシウム 60部
変性デンプン 2部
共重合体ラテックス 7部
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
固形分濃度 67%
塗工原紙(坪量55g/m2)に、上記の紙塗工用組成物を片面あたりの塗被量が10g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し乾燥した後、線圧60kg/cm、温度50℃の条件でカレンダー処理を行って塗工紙を得た。得られた塗工紙を各試験に供して評価し、その結果を表1および表2に示した。
比較例1は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体として1塩基酸と2塩基酸の重量比率(1塩基酸/2塩基酸)が0.5を超え、塗工紙のドライピック強度が劣る。
比較例2は、1塩基酸と2塩基酸の重量比率(1塩基酸/2塩基酸)が0.01未満であり、紙塗工用組成物の再分散性が劣る。
比較例3では、エチレン性不飽和カルボン酸単量体が4.5重量%未満であり、紙塗工用組成物の機械的安定性と塗工紙のドライピック強度が大きく劣る。
比較例4は、脂肪族共役ジエン系単量体が35重量%未満であり、ベタツキ性は良好であるものの塗工紙のドライピック強度が劣っている。脂肪族共役ジエン系単量体が65重量%以上である比較例5においては、ラテックスフィルムのベタツキ性が劣る。
比較例6は、共重合体ラテックスの数平均粒子径が150nmを超えており、塗工紙のドライピック強度が劣る。
Claims (2)
- 全顔料100重量%中炭酸カルシウムを90重量%以上含有する紙塗工用組成物においてバインダーとして使用される共重合体ラテックスであり、脂肪族共役ジエン系単量体35〜65重量%、シアン化ビニル単量体10〜40重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体4.5〜10重量%およびこれらと共重合可能な他の単量体0〜50.5重量%(単量体合計100重量%)を乳化重合して得られる共重合体ラテックスで、エチレン系不飽和カルボン酸単量体として1塩基酸と2塩基酸の重量比率(1塩基酸/2塩基酸)が0.01以上〜0.5未満の範囲にあり、かつ、数平均粒子径が60〜150nmであることを特徴とする共重合体ラテックス。
- 請求項1に記載の共重合体ラテックスを用い、該ラテックスが顔料100重量部(固形分)に対して2〜20重量部(固形分)であり、かつ、全顔料100重量%中に占める炭酸カルシウムの配合量が90重量%以上である紙塗工用組成物。
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