以下、本発明の好ましい実施例について、添付した図面に基づいて詳細に説明する。図面中、矢印「Fr」は前、「Rr」は後、「L」は左、「R」は右方向を示している。
図1に示すように、車体側部構造10は、車体側部の下方で車体前後方向に延びるサイドシル11と、サイドシル11の前端部から上方に立ち上げられたフロントピラー12と、サイドシル11の車体前後方向の途中の部位から上方に立ち上げられたセンタピラー13と、フロントピラー12およびセンタピラー13の各上端部13aに支持されて車体側部の上方に設けられたレール部材15と、レール部材15やセンタピラー13などを車体外側から覆うサイドパネル16と、レール部材15に端部が設けられて車幅方向に延出されたアーチ部材18と、アーチ部材18に支持されたルーフパネル20とを備えている。
図2及び図3に示すように、ルーフパネル20は、アーチ部材18を上方から覆うパネル本体21と、パネル本体21の前端部21aから車体前方側に向けて張り出された前ルーフフランジ(ルーフフランジ)22と、パネル本体21の側部21bから車幅方向外側に向けて張り出された側方ルーフフランジ23とを備えている。
前ルーフフランジ22は、パネル本体21の前端部21aから車体前方側に向けて張り出された張出片である。この前ルーフフランジ22は、アーチ部材18に沿って車幅方向に延出され、アーチ部材18にスポット溶接で接合されている。
前ルーフフランジ22にはレール部材15(具体的には、レールアウタ32、レールインナ36)の近傍部位22aにルーフ凹部24が形成されている。ルーフ凹部24は、前ルーフフランジ22の前縁22bから車体後方に凹んだ部位で、凹み幅W1、凹み深さ(凹み量)D1に形成されている。このルーフ凹部24は、後述するアウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56に対応する部位に、アウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56を回避するように形成されている。
側方ルーフフランジ23は、パネル本体21の側部21bから車幅方向外側に向けて張り出された張出片である。この側方ルーフフランジ23は、レール部材15に沿って車体前後方向に延出され、レール部材15にスポット溶接で結合されている。
図1に示すように、レール部材15は、フロントピラー12の上端部12aおよびセンタピラー13の上端部13aに支持されて車体側部の上方に設けられている。レール部材15は、図4に示すように、車体前後方向に延びるとともに車幅方向外側に設けられたアウタ部材31と、アウタ部材31より車幅方向中央側に配置されたインナ部材35と、アウタ部材31およびインナ部材35間に介在されたパッチ部材41(図6も参照)とを備えている。
図5及び図6に示すように、アウタ部材31は、車体前後方向に延びるとともに車幅方向外側に設けられたレールアウタ32と、レールアウタ32に一体に設けられて車幅方向中央側に向けて延びるアウタ延長部33とを有する。
アウタ延長部33は、レールアウタ32に一体に設けられて車幅方向中央側に向けて延びることにより、車幅方向中央側の端部33aがアーチ部材18(アーチアッパ62)の車幅方向外側の端部(アーチ部材18の端部)62aに重なり合うように形成されている。
このアウタ延長部33は、レールアウタ32から車幅方向中央側に向けて延びる延長部本体45と、延長部本体45の前端部45aから車体前方に向けて張り出された前アウタフランジ(アウタフランジ)46と、延長部本体45の後端部45bから車体後方に向けて張り出された後アウタフランジ48とを有する。
前アウタフランジ46は、アーチアッパ62の前アッパフランジ(アッパフランジ)64に下方から重なり合うように車幅方向に延出され、車幅方向中央側の端部46aにアウタ突出部47を有する。アウタ突出部47は、突出高さL1に形成されることで、後述するアッパ突出部65の下面に重なるように形成されている。後アウタフランジ48は、車幅方向中央側の端部48aに形成されたアウタ取付孔49を有する。
レール部材15のインナ部材35は、レールアウタ32より車幅方向中央側に配置されてレールアウタ32とともに車体前後方向に延びるレールインナ36と、レールインナ36に一体に設けられて車幅方向中央側に向けて延びるインナ延長部37とを有する。レールアウタ32およびレールインナ36は略同じ長さに形成され、レールアウタ32およびレールインナ36で車体前後方向に延びる閉断面が形成されている。
インナ延長部37は、レールインナ36に一体に設けられて車幅方向中央側に向けて延びることにより、車幅方向中央側の端部37aがアーチ部材18(アーチロア72)の車幅方向外側の端部(アーチ部材18の端部)72aに重なり合うように形成されている。
インナ延長部37の車幅方向中央側の端部37aは、アウタ延長部33の車幅方向中央側の端部33aより車幅方向中央側に向けて延出している。アウタ延長部33をインナ延長部37に重ね合わせることで、アウタ延長部33およびインナ延長部37で閉断面が形成されている。
インナ延長部37は、レールインナ36から車幅方向中央側に向けて延びる延長部本体54と、延長部本体54の前端部54aから車体前方に向けて張り出された前インナフランジ(インナフランジ)55と、延長部本体54の後端部54bから車体後方に向けて張り出された後インナフランジ57とを有する。
前インナフランジ55は、アーチロア72の前ロアフランジ(ロアフランジ)74に下方から重なり合うように車幅方向に延出されることで、車幅方向中央側の端部55aがロアフランジ凹部75(後述する)に配置されている。この前インナフランジ55は、車幅方向中央55bにアウタ突出部47の下面に重なるインナ突出部56を有する。インナ突出部56は突出高さL1に形成されている。後インナフランジ57は、車幅方向中央57aに形成された第1インナ取付孔58と、車幅方向中央57a側の端部57bに形成された第2インナ取付孔59を有する。
パッチ部材41は、レールアウタ32およびレールインナ36間に設けられた補強用のレールパッチ42と、レールパッチ42に一体に設けられたパッチ延長部43とを有する。
レールパッチ42は、レールアウタ32およびレールインナ36で形成された閉断面内において車体前後方向に延びるように配置されている。この状態で、レールパッチ42の複数の接合部42aがレールアウタ32の内面にスポット溶接で結合されている。レールアウタ32の内面にレールパッチ42をスポット溶接で結合することでレールアウタ32を補強することができる。
パッチ延長部43は、レールパッチ42に一体に設けられてアウタ延長部33およびインナ延長部37で形成された閉断面内に延出されている。この状態で、パッチ延長部43の複数の接合部43aがアウタ延長部33の内面にスポット溶接で結合されている。アウタ延長部33の内面にパッチ延長部43をスポット溶接で結合することでアウタ延長部33を補強することができる。
このように、レールパッチ42でレールアウタ32を補強するとともに、パッチ延長部43でアウタ延長部33を補強することで、レール部材の剛性を高めることができる。よって、車体側部構造の剛性を良好に確保することができる。
図5及び図7に示すように、アーチ部材18は、アウタ延長部33の車幅方向中央側の端部33aに連結可能なアーチアッパ62と、インナ延長部37の車幅方向中央側の端部37aに連結可能なアーチロア72とを備えている。
アーチアッパ62は、アーチロア72の上方側に設けられて車幅方向外側の端部62aがアウタ延長部33の上面に上方から載置可能な梁部材である。このアーチアッパ62は、車幅方向に延出されたアッパ本体63と、アッパ本体63の前端部63aから車体前方に向けて張り出された前アッパフランジ64と、アッパ本体63の後端部63bから車体後方に向けて張り出された後アッパフランジ66とを有する。
前アッパフランジ64は、前ルーフフランジ22に下方から重なり合うように車幅方向に延出され、車幅方向外側の端部64aに車体前方側に突出するアッパ突出部65を有する。
アッパ突出部65は、前アッパフランジ64の前縁64bから車体前方に突出した部位で、突出高さL1に形成されている。このアッパ突出部65は、車幅方向においてルーフ凹部24に対応する部位に形成されている。よって、アッパ突出部65は、ルーフ凹部24の底部24aより車体前方側に突出されている。
後アッパフランジ66は、車幅方向外側の端部66aに形成された第1アッパ取付孔67と、第1アッパ取付孔67より車幅中央側に形成された第2アッパ取付孔68を有する。
アーチロア72は、アーチアッパ62の下方側に設けられて車幅方向外側の端部72aが、インナ延長部37のうち車幅方向中央側の端部37aの上面に上方から載置可能な梁部材である。アーチロア72にアーチアッパ62を重ね合わせることで、アーチアッパ62およびアーチロア72で車幅方向に延びる閉断面が形成されている。
このアーチロア72は、車体幅方向に延出されたロア本体73と、ロア本体73の前端部73aから車体前方に向けて張り出された前ロアフランジ74と、ロア本体73の後端部73bから車体後方に向けて張り出された後ロアフランジ76とを有する。
前ロアフランジ74は、前アッパフランジ64に下方から重なり合うように車幅方向に延出され、ルーフ側スポット溶接部92(後述する)より車幅方向中央側にロアフランジ凹部75を有している。後ロアフランジ76は、車幅方向外側の端部76aに形成されたロア取付孔77を有する。
図4及び図5に示すように、インナ延長部37にアウタ延長部33を重ね合わせた状態で、アーチロア72にアーチアッパ62を重ね合わせる。アウタ延長部33のうち車幅方向中央側の端部33aにアーチアッパ62のうち車幅方向外側の端部62aを上方から重ね合わせる。同時に、インナ延長部37のうち車幅方向中央側の端部37aにアーチロア72のうち車幅方向外側の端部72aを上方から重ね合わせる。
この状態で、後インナフランジ57の第1インナ取付孔58、後アウタフランジ48のアウタ取付孔49、および後アッパフランジ66の第1アッパ取付孔67にボルト81を差し込み、第1アッパ取付孔67から突出したねじ部81aがナット82にねじ結合される。このナット82は、後アッパフランジ66の表面において第1アッパ取付孔67に同軸上に溶接されている。
さらに、後インナフランジ57の第2インナ取付孔59、後ロアフランジ76のロア取付孔77、および後アッパフランジ66の第2アッパ取付孔68にボルト81を差し込み、第2アッパ取付孔68から突出したねじ部81aがナット82にねじ結合される。このナット82は、後アッパフランジ66の表面において第2アッパ取付孔68に同軸上に溶接されている。
図2及び図3に示すように、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前ロアフランジ74がスポット溶接で結合される。前アウタフランジ46および前インナフランジ55がスポット溶接で結合されている。
次に、図8〜図17に基づいて、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64、前ロアフランジ74、前アウタフランジ46および前インナフランジ55をスポット溶接する例について詳しく説明する。
図8及び図9に示すように、車体側部構造10は、第1スポット溶接部91と、第1スポット溶接部91より車体中心側に設けられたルーフ側スポット溶接部92と、ルーフ側スポット溶接部92より車体中心側に設けられた第2スポット溶接部93とを備えている。さらに、車体側部構造10は、第1スポット溶接部91およびルーフ側スポット溶接部92間に設けられた第3スポット溶接部94と、第1スポット溶接部91より車体外側に設けられた第4スポット溶接部95と、第4スポット溶接部95より車体外側に設けられたサイド側溶接部96を備えている。
図5及び図9に示すように、前アッパフランジ64は前ルーフフランジ22より車体前方側に突出するアッパ突出部65を有する。前アウタフランジ46はアッパ突出部65の下面に重なるアウタ突出部47を有する。さらに、前インナフランジ55はアウタ突出部47の下面に重なるインナ突出部56を有する。
従って、アッパ突出部65、アウタ突出部47およびインナ突出部56の三枚の突出部を前ルーフフランジ22より車体前方側に突出させることができる。図10に示すように、アッパ突出部65、アウタ突出部47およびインナ突出部56の三枚の突出部がスポット溶接されることにより第1スポット溶接部91が形成される。
車体側部構造10の組立工程として、例えば、図11に示すように、アーチ部材18にルーフパネル20を一体に組み付けてルーフユニット102とし、レール部材15およびサイドパネル16を一体に組み付けてレールユニット103とする。ルーフユニット102やレールユニット103を組み付けた後工程で、ルーフユニット102およびレールユニット103を組み付ける工程が考えられる。この場合でも、三枚の突出部65,47,56を前ルーフフランジ22より車体前方側に突出させることで、前ルーフフランジ22を除いた三枚の突出部65,47,56のみをスポット溶接して第1スポット溶接部91(図2及び図9)とすることができる。
通常、複数の板材をスポット溶接する際に、複数の板材の結合を確保するためには、板材を三枚に抑えることが好ましい。よって、図10に示すように、第1スポット溶接部91をアッパ突出部65、アウタ突出部47およびインナ突出部56の三枚とすることで、アッパ突出部65、アウタ突出部47およびインナ突出部56をスポット溶接で強固に結合できる。このように、アウタ延長部33およびインナ延長部37にアーチアッパ62(すなわち、アーチ部材18)を強固に結合することで、車体側部構造10の剛性を良好に確保することができる。
図9に示すように、前ルーフフランジ22のうち、アウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56に対応するレール部材15の近傍部位22aにルーフ凹部24を有する。このルーフ凹部24でアウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56を回避するようにした。よって、アウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56の突出高さL1を小さく抑えることができる。これにより、フロントウインドガラス側への突出量を抑えて車体側部構造10のデザイン性を高めることができる。
さらに、アウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56を前ルーフフランジ22より車体前方側に突出させることで、ルーフ凹部24の凹み深さD1を小さく抑えることができる。換言すれば、アウタ突出部47、アッパ突出部65およびインナ突出部56を突出させることで、ルーフ凹部24の凹み深さD1を小さく抑えてもスポット溶接代を十分に確保できる。
このように、ルーフ凹部24の凹み深さD1を小さく抑えることで、ルーフ凹部24に応力集中が作用することを好適に抑えることができる。これにより、ルーフ凹部24が変形の起点になることを避けることができ、車体側部構造10の剛性を良好に確保することができる。
図3及び図9に示すように、第1スポット溶接部91より車幅方向中央側において、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前ロアフランジ74(車幅方向外側の端部74a)の三枚がスポット溶接されたルーフ側スポット溶接部92が位置している。よって、図12に示すように、アーチ部材18にルーフパネル20を一体的に組み付けてルーフユニット102とした状態で、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前ロアフランジ74の三枚をスポット溶接してルーフ側スポット溶接部92とすることができる。
このように、三枚のフランジをスポット溶接することで、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前ロアフランジ74を強固に結合できる。これにより、ルーフユニット102の結合強度を十分に確保することができる。
前インナフランジ55は、前ロアフランジ74(車幅方向外側の端部74a)に対応する部位に下方に膨出する膨出部55cを有する。よって、前インナフランジ55がルーフ側スポット溶接部92に干渉することを膨出部55cで回避することができる。
図3及び図9に示すように、前ロアフランジ74はロアフランジ凹部75を有する。このロアフランジ凹部75はルーフ側スポット溶接部92より車幅方向中央側に位置している。前インナフランジ55のうち車幅方向中央側の端部55aはロアフランジ凹部75まで延びている。
図13に示すように、ロアフランジ凹部75において、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前インナフランジ55をスポット溶接することで、ルーフ側スポット溶接部92の近傍に第2スポット溶接部93が位置する。このように、三枚のフランジをスポット溶接することで、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前インナフランジ55を強固に結合できる。
ルーフ側スポット溶接部92において前アッパフランジ64および前ロアフランジ74(車幅方向外側の端部74a)がスポット溶接されている。さらに、第2スポット溶接部93において前アッパフランジ64および前インナフランジ55がスポット溶接されている。よって、ルーフ側スポット溶接部92の近傍に第2スポット溶接部93が位置することで、前インナフランジ55(インナ延長部37)を前ロアフランジ74(アーチロア72)に対して略水平方向に連続させた状態に保持できる。これにより、図14に示すように、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19を閉断面に保つことができる。このように、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19を閉断面に保つことで連結部19の剛性を十分に確保することができる。
車体側部構造10の組立工程として、アーチ部材18にルーフパネル20を一体に組み付けてルーフユニット102とし、レール部材15およびサイドパネル16を一体に組み付けてレールユニット103とする。
つぎに、ルーフユニット102やレールユニット103を組み付けた後工程で、ルーフユニット102およびレールユニット103を組み付ける。
この際に、アウタ延長部33の車幅方向中央側の端部33aにアーチアッパ62の車幅方向外側の端部62aを上方から載置する。同様に、インナ延長部37の車幅方向中央側の端部37aにアーチロア72の車幅方向外側の端部72aを上方から載置する。よって、ルーフユニット102やレールユニット103を組み付けた後工程で、ルーフユニット102およびレールユニット103を簡単に組み付けることができる。
図5及び図9に示すように、アーチロア72より車幅方向外側で、かつアウタ延長部33より車幅方向中央側に第3スポット溶接部94が備えられている。第3スポット溶接部94は、図15に示すように、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前インナフランジ55の三枚がスポット溶接された部位である。このように、三枚のフランジをスポット溶接することで、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前インナフランジ55を強固に結合できる。この第3スポット溶接部94は第1スポット溶接部91より車幅方向中央側に位置する。
第4スポット溶接部95は、アーチアッパ62より車幅方向外側に位置している。第4スポット溶接部95は、図16に示すように、前ルーフフランジ22、前アウタフランジ46および前インナフランジ55の三枚がスポット溶接された部位である。このように、三枚のフランジをスポット溶接することで、前ルーフフランジ22、前アウタフランジ46および前インナフランジ55を強固に結合できる。
この第4スポット溶接部95は、図9に示すように、第1スポット溶接部91より車幅方向外側に位置する。よって、第1スポット溶接部91の両側に第3スポット溶接部94および第4スポット溶接部95を設けることができる。第1スポット溶接部91は前ルーフフランジ22を溶接しない部位である。よって、第1スポット溶接部91の両側に第3、第4のスポット溶接部94,95を設けることにより、第1スポット溶接部91の両側で前ルーフフランジ22を結合することができる。このように、第1スポット溶接部91の両側で前ルーフフランジ22を結合することで、前ルーフフランジ22の結合強度を確保することができる。
ルーフ側スポット溶接部92の両側に第2スポット溶接部93および第3スポット溶接部94が備えられている。ルーフ側スポット溶接部92において、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前ロアフランジ74の三枚がスポット溶接されている。
さらに、第2、第3のスポット溶接部93,94において、前ルーフフランジ22、前アッパフランジ64および前インナフランジ55の三枚がスポット溶接されている。よって、ルーフ側スポット溶接部92および第2、第3のスポット溶接部93,94において、前ロアフランジ74および前インナフランジ55が強固に結合されている。前ロアフランジ74および前インナフランジ55が強固に結合されることで、アーチロア72およびインナ延長部37が強固に結合される。
第1スポット溶接部91において、アッパ突出部65およびアウタ突出部47がスポット溶接されることで、前アッパフランジ64および前アウタフランジ46が強固に結合されている。前アッパフランジ64および前アウタフランジ46が強固に結合されることで、アーチアッパ62およびアウタ延長部33が強固に結合されている。
このように、アーチロア72およびインナ延長部37が強固に結合され、かつアーチアッパ62およびアウタ延長部33が強固に結合されることで、レール部材15およびアーチ部材18が好適に結合されている。
さらに、ルーフ側スポット溶接部92および第2、第3のスポット溶接部93,94は、第1スポット溶接部91より車幅方向中央側に所定間隔だけ離れて設けられている。このように、溶接部92〜94を第1スポット溶接部91から車体幅方向中央側に離間することで、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19に作用する応力を溶接部92〜94や第1スポット溶接部91に好適に分散させることができる。これにより、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19の剛性を十分に確保することができる。
すなわち、図3及び図9に示すように、第1スポット溶接部91でアッパ突出部65およびアウタ突出部47を結合することで、第1スポット溶接部91でアーチアッパ62およびアウタ延長部33が結合される。さらに、溶接部92〜94で前ロアフランジ74(車幅方向外側の端部74a)および前インナフランジ55(車幅方向中央側の端部55a)を結合することで、溶接部92〜94でアーチロア72およびインナ延長部37が結合される。
よって、アーチアッパ62およびアウタ延長部33の第1スポット溶接部91と、アーチロア72およびインナ延長部37の溶接部92〜94を離間させることができる。これにより、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19に作用する応力を溶接部92〜94や第1スポット溶接部91に好適に分散させることができる。したがって、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19の剛性を十分に確保することができる。
図9に示すように、第4スポット溶接部95より車幅方向外側で、かつレールインナ36(図6)より車幅方向中央側にサイド側溶接部96が設けられている。サイド側溶接部96は、図17に示すように、前ルーフフランジ22、サイドパネル16のサイドフランジ16aおよび前インナフランジ55の接合部55d(すなわち、三枚)がスポット溶接された部位である。
このように、三枚をスポット溶接することで、前ルーフフランジ22、サイドパネル16のサイドフランジ16aおよび前インナフランジ55の接合部55dを強固に結合できる。サイドパネル16のサイドフランジ16aは、レールインナ36の接合部36aに結合されている。
以上説明したように、本発明の車体側部構造10によれば、図3に示すように、レールアウタ32にアウタ延長部33を一体的に設けるとともに、レールインナ36にインナ延長部37を一体的に設け、アウタ延長部33およびインナ延長部37で閉断面を形成した。さらに、図7に示すように、アーチ部材18をアーチアッパ62およびアーチロア72で閉断面に形成した。図4に示すように、アーチアッパ62をアウタ延長部33の上面に載置可能とし、アーチロア72をインナ延長部37の上面に載置可能とした。
これにより、閉断面に形成したアウタ延長部33およびインナ延長部37に、閉断面に形成したアーチ部材18を設けることが可能になり、車体側部構造10の剛性を確保することができる。
レール部材15およびアーチ部材18は略直交するように設けられている。このため、レール部材15およびアーチ部材18が交差部26(図4)で連結された場合、交差部26に応力が集中して交差部26の剛性を確保することが難しい。
そこで、車体側部構造10において、レールアウタ32にアウタ延長部33を一体に備えるとともに、レールインナ36にインナ延長部37を一体に備えるようにした。そして、アウタ延長部33にアーチアッパ62を設け、インナ延長部37にアーチロア72を設けるようにした。よって、レール部材15およびアーチ部材18の連結部19を交差部26から離すことができるので、交差部26の剛性を高めることができる。これにより、例えば、車体前方から作用した荷重F(図4)をレール部材15および交差部26を経てアーチ部材18に好適に伝えることができる。
車体側部構造10は、図2に示すように、アーチ部材18の上方にルーフパネル20が設けられることにより、ルーフパネル20でアーチ部材18が覆われている。このアーチ部材18の上方にルーフパネル20を設ける際に、ルーフパネル20の側方ルーフフランジ23や前ルーフフランジ22の端部22cがレール部材15のレールアウタ32やサイドパネル16(サイドフランジ16a)に溶接で結合される。
図4に示すように、レールアウタ32にアウタ延長部33が一体に設けられている。よって、レールアウタ32の組立公差を小さく抑えることが可能である。組立公差を小さく抑えたレールアウタ32に、図2に示すように、ルーフパネル20の側方ルーフフランジ23や前ルーフフランジ22の端部22cが溶接される。これにより、側方ルーフフランジ23や前ルーフフランジ22の端部22cを所望の位置に精度よく溶接できるので、ルーフパネル20を所定位置に精度よく位置決めできる。
加えて、図3に示すように、レールアウタ32はレールインナ36に沿って略同じ長さに延出されている。よって、レールアウタ32をルーフパネル20の側方ルーフフランジ23および前ルーフフランジ22の端部22c(フランジ全域)に亘って延出することが可能である。
これにより、ルーフパネル20の側方ルーフフランジ23および前ルーフフランジ22の端部22cをレールアウタ32に設ける際に、側方ルーフフランジ23および前ルーフフランジ22の端部22cがレールアウタ32およびレールインナ36の境界を跨がないようにできる。したがって、側方ルーフフランジ23および前ルーフフランジ22の端部22c(すなわち、ルーフパネル20)を所望の位置に精度よく溶接できるので、ルーフパネル20を所定位置に精度よく位置決めすることができる。
本発明による車体側部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。例えば、実施例では、ルーフパネル20の前ルーフフランジ22にルーフ凹部24を設けて第1スポット溶接部91の溶接代を確保する例について説明したが、これに限定するものではない。すなわち、前ルーフフランジ22にルーフ凹部24を設けないで、アッパ突出部65、アウタ突出部47およびインナ突出部56の突出量を調整して第1スポット溶接部91の溶接代を確保することも可能である。前ルーフフランジ22にルーフ凹部24を設けないようにすることで、ルーフ凹部24を設けた場合より一層好適に応力集中を抑えることができる。
さらに、実施例で示した車体側部構造10、レール部材15、サイドパネル16、アーチ部材18、ルーフパネル20、パネル本体21、前ルーフフランジ22、ルーフ凹部24、レールアウタ32、アウタ延長部33、レールインナ36、インナ延長部37、パッチ部材41、レールパッチ42、パッチ延長部43、アウタ延長部の延長部本体45、前アウタフランジ46、アウタ突出部47、インナ延長部の延長部本体54、前インナフランジ55、インナ突出部56、アーチアッパ62、アッパ本体63、前アッパフランジ64、アッパ突出部65、アーチロア72、ロア本体73、前ロアフランジ74およびロアフランジ凹部75などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。