JP5626310B2 - 車両用ドア構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用ドア構造に関し、特にドア本体の下縁部に沿ってウェザーストリップを備えた車両用ドア構造に関する。
下記特許文献1には、車体のサイドドア本体の下縁部に沿って中空状のウェザーストリップが設けられた自動車用ドアの排水構造が開示されている。この排水構造では、サイドドア本体の下縁部に設けられた排水孔とウェザーストリップの上部に設けられた連通孔とが連通されており、ウェザーストリップの両端が開口されている。
上記構成によれば、サイドドア本体内に浸入した雨水は塵埃や防塵ワックスと共に排水孔及び連通孔を通ってウェザーストリップ内を排水路として流れ、この雨水等はウェザーストリップの長手方向の両端の開口から排水されるようになっている。また、上記排水構造では、サイドドア本体の側部から内部に侵入する騒音がウェザーストリップによって抑制可能とされている。
特開平8−142673号公報
しかしながら、ウェザーストリップの両端の開口から騒音が侵入し、この騒音が連通孔、排水孔及びサイドドア本体の内部を通って室内まで侵入する。このため、サイドドア本体の下縁部から侵入する騒音に対して改善の余地があった。
本発明は上記事実を考慮し、ウェザーストリップによる排水性を確保することができると共に、ウェザーストリップの端部から侵入する騒音に対する遮音効果を向上することができる車両用ドア構造を得ることが目的である。
請求項1に記載された発明に係る車両用ドア構造は、下縁部に排水孔が設けられたドア本体と、下縁部に沿って配置されると共に内部が中空とされ、更に内部と排水孔とを連通する連通孔を有するウェザーストリップ本体と、ウェザーストリップ本体の端部から連通孔までの複数箇所に設けられると共に各々内部を仕切る仕切壁と、仕切壁の一部を貫通し排水を可能とする排水部と、を備えている。
請求項1に係る車両用ドア構造では、ドア本体の排水孔とウェザーストリップ本体の内部とが連通孔により連通されており、ウェザーストリップ本体の内部が中空とされている。更に、ウェザーストリップ本体の内部の仕切壁には一部を貫通し排水が可能とされた排水部が設けられている。このため、ドア本体の排水孔を通ってウェザーストリップ本体の内部に浸入した水等は、内部を排水路として流れ排水部を通ってウェザーストリップ本体の端部から排水されている。
ここで、ウェザーストリップ本体には、端部から連通孔までの複数箇所に仕切壁が設けられている。この仕切壁はウェザーストリップ本体の内部の内壁と共に音の拡張室を構成しており、ウェザーストリップ本体の端部から仕切壁の排水部を通って拡張室に侵入した騒音はこの拡張室において音波干渉により減衰可能とされる。減衰された騒音は拡張室から仕切壁の排水部、連通孔、排水孔のそれぞれを通ってドア本体を経由し室内に侵入する。従って、ウェザーストリップ本体の端部から侵入した騒音が効果的に減衰されるので、騒音に対する遮音効果を向上することができる。
請求項2に係る車両用ドア構造は、請求項1において、ウェザーストリップ本体が端部から連通孔までの間において長手方向に分割された分割構造とされ、仕切壁がウェザーストリップ本体の分割位置に設けられていることを特徴とする。
請求項2に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ本体が中空の内部に仕切壁を設けた構成とされている。このため、押出成形や射出成形によってウェザーストリップ本体を製作することが難しい。
ここで、内部に仕切壁を持たない中空のウェザーストリップ本体は押出成形や射出成形によって容易に製作可能である。このウェザーストリップ本体が長手方向に分割された分割構造とされることによって、ウェザーストリップ本体の分割位置に仕切壁を設けることができる。従って、仕切壁を持つウェザーストリップ本体が簡易に製作可能となる。
請求項3に係る車両用ドア構造は、請求項1において、ウェザーストリップ本体が端部から連通孔までの間に外周面から内部に貫通する挿入溝を備え、仕切壁は挿入溝から内部に挿入されていることを特徴とする。
請求項3に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ本体が中空の内部に仕切壁を設けた構成とされている。このため、押出成形や射出成形によってウェザーストリップ本体を製作することが難しい。
ここで、内部に仕切壁を持たない中空のウェザーストリップ本体は押出成形や射出成形によって容易に製作可能である。このウェザーストリップ本体が端部から連通孔までの間に外周面から内部に貫通する挿入溝を備えており、この挿入溝から内部に仕切壁が挿入されている。従って、仕切壁を持つウェザーストリップ本体が簡易に製作可能となる。
請求項4に係る車両用ドア構造は、下縁部に排水孔が設けられたドア本体と、下縁部に沿って配置されると共に内部が中空とされ、更に内部と排水孔とを連通する連通孔を有すると共に連通孔が形成された箇所を除き長手方向と交差する方向の断面が一部を開放した開断面とされたウェザーストリップ本体と、ウェザーストリップ本体の端部から連通孔までの複数箇所に設けられると共に各々内部を仕切る仕切壁と、仕切壁の一部を貫通し排水を可能とする排水部と、を備えている。
請求項4に係る車両用ドア構造では、前述の請求項1に係る車両用ドア構造により得られる作用と同様の作用を得ることができる。更に、請求項4に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ本体はその長手方向と交差する方向の断面の一部を開放した開断面とされている。
ここで、開断面を有するウェザーストリップ本体のばね定数は閉断面を有するウェザーストリップ本体のばね定数に比べて小さくなるので、前者の反力が後者の反力に比べて小さくなっている。このため、ドア本体を閉めたときにウェザーストリップ本体の反力が小さくなるので、ドア本体の閉まり性能を向上することができる。
請求項5に係る車両用ドア構造は、請求項4において、仕切壁がウェザーストリップ本体に一体に設けられていることを特徴とする。
請求項5に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ本体が開断面とされていることから、ウェザーストリップ本体に仕切壁を一体に設けることができる。例えば、ウェザーストリップ本体の内壁及び仕切壁を成形する金型と、ウェザーストリップ本体の外壁を成形する金型とを用いて、一度の射出成形により、ウェザーストリップ本体及び仕切壁が製作可能とされている。従って、ウェザーストリップ本体の構造を簡易とすることができる。
請求項6に係る車両用ドア構造は、請求項1〜請求項5のいずれか1項において、排水孔から連通孔まで貫通されると共にドア本体からウェザーストリップ本体への排水が可能とされる主貫通孔を有すると共に、下縁部とウェザーストリップ本体とを排水孔及び連通孔を介して挟込むクリップを更に備えている。
請求項6に係る車両用ドア構造では、下縁部とウェザーストリップ本体との間を排水孔及び連通孔を介して挟込むクリップが設けられており、このクリップによって下縁部にウェザーストリップ本体が固定されている。クリップには、排水孔と連通孔とを貫通し、ドア本体からウェザーストリップ本体への排水が可能とされる主貫通孔が設けられている。このため、ドア本体の下縁部へのウェザーストリップ本体の固定が確実なものとされると共に、ドア本体から主貫通孔を通ってウェザーストリップ本体への排水が確実なものとされている。
請求項7に係る車両用ドア構造は、請求項1〜請求項6のいずれか1項において、排水孔は下縁部に沿って複数箇所に配設された第1排水孔及び第2排水孔を備え、連通孔は、ウェザーストリップ本体の端部に配置されると共に第1排水孔と連通される第1連通孔と、ウェザーストリップ本体の中央部に配置されると共に第2排水孔と連通される第2連通孔と、を備え、下縁部と端部との間において第1排水孔及び第1連通孔の周囲をシールする第1シール部と、下縁部と中央部との間において第2排水孔及び第2連通孔の周囲をシールすると共に第1シール部よりも下縁部とウェザーストリップ本体との間の離間距離が短い第2シール部と、第1排水孔から第1連通孔まで貫通されると共にドア本体からウェザーストリップ本体への排水が可能とされる第1主貫通孔を有し、下縁部と端部とを第1排水孔及び第1連通孔を介して挟込む第1クリップと、第2排水孔から第2連通孔まで貫通されると共にドア本体からウェザーストリップ本体への排水が可能とされ、第1貫通孔よりも貫通長さが短い第2主貫通孔を有し、下縁部と中央部とを第2排水孔及び第2連通孔を介して挟込む第2クリップと、を更に備えている。
請求項7に係る車両用ドア構造では、下縁部とウェザーストリップ本体の端部との間が第1シール部を介して第1クリップにより固定されると共に、第1排水孔と第1連通孔との間が第1クリップの第1主貫通孔により連通されている。一方、下縁部とウェザーストリップ本体の中央部との間が第1シール部よりも離間距離が短い第2シール部を介して第2クリップにより固定されると共に、第2排水孔と第2連通孔との間が第2クリップの第1主貫通孔よりも貫通長さが短い第2主貫通孔によって連通されている。このため、中央部から端部に向かって下方向の傾斜がウェザーストリップ本体に設定されている。従って、ウェザーストリップ本体の中央部から端部に向かって確実に排水がなされる。
請求項8に係る車両用ドア構造は、請求項1〜請求項6のいずれか1項において、下縁部とウェザーストリップ本体との間において排水孔及び連通孔の周囲をシールし、かつ下縁部及びウェザーストリップ本体とで閉空間を形成するシール部と、排水孔から連通孔に貫通されると共にドア本体からウェザーストリップ本体への排水が可能とされる主貫通孔を有し、下縁部とウェザーストリップ本体とを排水孔及び連通孔を介して挟込み、更に主貫通孔から閉空間に貫通される副貫通孔を有するクリップと、を更に備えている。
請求項8に係る車両用ドア構造では、下縁部とウェザーストリップ本体との間に閉空間を形成するシール部が設けられると共に、排水孔と連通孔とを連通する主貫通孔及び主貫通孔から閉空間に連通された副貫通孔を有するクリップが設けられている。
ここで、閉空間内の空気が「バネ」とされ、クリップの副貫通孔内の空気が「マス」とされる「1自由度のバネマス系」が構築されている。クリップの主貫通孔を通過する音が「マス」に当たると「バネ」が振動するので、音エネルギの少なくとも一部を振動エネルギに変換することができる。このため、ウェザーストリップ本体の端部から侵入した騒音がクリップを通過するときにこの騒音が効果的に減衰されるので、騒音に対する遮音効果をより一層向上することができる。また、「1自由度のバネマス系」による騒音の減衰は騒音の周波数に左右されないので、騒音に対する遮音効果の向上が安定して得られる。
請求項1に係る車両用ドア構造によれば、ウェザーストリップによる排水性を確保することができると共に、ウェザーストリップの端部から侵入する騒音に対する遮音効果を向上することができるという優れた効果が得られる。
請求項2、請求項3又は請求項5に係る車両用ドア構造によれば、請求項1に係る車両用ドア構造により得られる効果に加えて、ウェザーストリップが簡易に製作可能となるという優れた効果が得られる。
請求項4に係る車両用ドア構造によれば、請求項1に係る車両用ドア構造によって得られる効果に加えて、ドア本体の閉まり性能を向上することができるという優れた効果が得られる。
請求項6に係る車両用ドア構造によれば、請求項1〜請求項5に係る車両用ドア構造によって得られる効果に加えて、ドア本体の下縁部へのウェザーストリップの固定を確実にすることができるという優れた効果が得られる。
請求項7に係る車両用ドア構造によれば、請求項1〜請求項6に係る車両用ドア構造によって得られる効果に加えて、ウェザーストリップの排水性能を向上することができるという優れた効果が得られる。
請求項8に係る車両用ドア構造によれば、請求項1〜請求項6に係る車両用ドア構造によって得られる効果に加えて、ドア本体の下縁部へのウェザーストリップの固定を確実にすることができると共に、騒音の周波数に左右されずに騒音に対する遮音効果をより一層向上することができるという優れた効果が得られる。
第1実施の形態に係る車両用ドア構造を備えた車両の左側面図である。 図1に示される車両用ドア構造のウェザーストリップの斜視図である。 図2に示されるウェザーストリップの符号Aを付して破線で囲んだ領域の拡大斜視図である。 図2に示されるウェザーストリップの符号Bを付して破線で囲んだ領域の拡大斜視図である。 図4に示されるウェザーストリップのA−A切断線におけるドア本体を車両前方側から車両後方側に向かって見た断面図である。 図4に示されるウェザーストリップのB−B切断線におけるドア本体を車両前方側から車両後方側に向かって見た断面図である。 図4に示されるウェザーストリップのC−C切断線におけるドア本体を車両前方側から車両後方側に向かって見た断面図である。 図2に示されるウェザーストリップを車両側面側から見た断面図である。 図8に示されるウェザーストリップの要部の拡大断面図である。 (A)〜(E)はウェザーストリップの第1成形方法を説明する工程毎の斜視図であり、(A)は押出成形後のウェザーストリップ本体の斜視図、(B)は孔あけ加工後のウェザーストリップ本体の要部の拡大斜視図、(C)は分割加工後のウェザーストリップ本体の要部の拡大斜視図、(D)はウェザーストリップ本体に装着される仕切壁及びシール部材の斜視図、(E)はウェザーストリップ本体への仕切壁及びシール部材の装着状態を示す要部の拡大斜視図である。 (A)〜(D)はウェザーストリップの第2成形方法を説明する工程毎の斜視図であり、(A)はトリミング加工後のウェザーストリップ本体の要部の拡大斜視図、(B)は(A)に示されるD−D切断線(トリミング加工部分)で切ったウェザーストリップ本体の拡大断面図、(C)はウェザーストリップ本体に装着される仕切壁及びシール部材の斜視図、(D)はウェザーストリップ本体への仕切壁及びシール部材の装着状態を示す要部の拡大斜視図である。 図8に対応する第2実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップの断面図である。 図12に示されるウェザーストリップの要部の拡大断面図である。 (A)は図12に示されるウェザーストリップをドア本体に取付けるクリップを上方から斜め下方に向かって見た斜視図、(B)はクリップを下方から斜め上方に向かって見た斜視図である。 図8に対応する第3実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップの断面図である。 (A)は図15に示されるウェザーストリップの一端部における要部の拡大断面図、(B)は中央部における要部の拡大断面図である。 (A)は図16(A)に示されるクリップを上方から斜め下方に向かって見た斜視図、(B)は図16(B)に示されるクリップを上方から斜め下方に向かって見た斜視図である。 図13に対応する第4実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップの要部の拡大断面図である。 図18に示されるクリップを上方から斜め下方に向かって見た斜視図である。 音の低減効果を説明するための図18に対応するウェザーストリップの要部の拡大断面図である。 音の周波数と音の低減効果との関係を示すグラフである。 1自由度のバネマス系のモデル図である。 1自由度のバネマス系モデルにおける音の周波数と音の低減効果との関係を示すグラフである。 図2に対応する第5実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップの斜視図である。 図24に示されるウェザーストリップの符号Cを付して破線で囲んだ領域の拡大斜視図である。 図25に示されるウェザーストリップのE−E切断線におけるドア本体を車両前方側から車両後方側に向かって見た断面図である。 図25に示されるウェザーストリップのF−F切断線におけるドア本体を車両前方側から車両後方側に向かって見た断面図である。 図25に示されるウェザーストリップのG−G切断線におけるドア本体を車両前方側から車両後方側に向かって見た断面図である。 (A)は車両前方側から車両後方側に向かって見たドア本体とロッカモールとの間に閉断面を持つウェザーストリップが配置された状態を示す模式図、(B)はこの(A)に示された概念図を梁モデルに置き換えたモデル図である。 (A)は車両前方側から車両後方側に向かって見たドア本体とロッカモールとの間に開断面を持つウェザーストリップが配置された状態を示す模式図、(B)はこの(A)に示された概念図を梁モデルに置き換えたモデル図である。 成形方法を説明するための射出成形工程における金型及び図24に示されるウェザーストリップの図8に対応する断面図である。 (A)は図31に示されるH−H切断線における金型及びウェザーストリップの断面図、(B)は図31に示されるI−I切断線における金型及びウェザーストリップの断面図、(C)は図31に示されるJ−J切断線における金型及びウェザーストリップの断面図である。 離型工程における金型及びウェザーストリップの図31に対応する断面図である。 図33に示されるK−K切断線における金型及びウェザーストリップの断面図である。
以下、図面を参照し、本発明に係る車両用ドア構造の実施の形態を説明する。なお、図において適宜示されている矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。また、矢印Wは車両幅方向を示している。
[第1実施の形態]
(車両用ドア構造の構成)
図1には一般的なセダン系の車両10の左側から見た側面が示されている。車両10の左側面であって車両前方側には、フロントドア開口10Aに対して開閉可能とされたスイング式のフロントサイドドア本体12が設けられている。同様に、車両10の左側面であってフロントサイドドア本体12よりも車両後方側には、リアドア開口10Bに対して開閉可能とされたスイング式のリアサイドドア本体14が設けられている。本発明に係る車両用ドア構造は、上記フロントサイドドア本体12、リアサイドドア本体14の双方に適用されており、両者は同一構造であるので、以下においてはフロントサイドドア本体12側についてのみ説明する。
図5に示されるように、フロントサイドドア本体12は、車室の車両幅方向の外側に配置されたドアアウタパネル12Aと、ドアアウタパネル12Aよりも車両幅方向の内側に配置されドアアウタパネル12Aとで閉断面を構成するドアインナパネル12Bとを備えている。なお、このフロントサイドドア本体12のドア内部12Cは空間とされている。
ドアインナパネル12Bは、車両上下方向及び車両前後方向に沿って設けられた第1縦壁12Eと、その下方端から車両幅方向の外側に屈曲された第1横壁12Fと、その外側端から車両下方向に屈曲された第2縦壁12Gと、その下方端から車両幅方向の外側に屈曲された第2横壁12Hと、その外側端から車両下方向に屈曲された第3縦壁12Iとにより構成されている。ドアアウタパネル12Aの下端部はヘミング加工により第3縦壁12Iに折返されて結合されている。なお、ドアインナパネル12Bの車両幅方向の内側には意匠面としての図示しないドアトリムが取付けられている。
図5に示されるように、フロントサイドドア本体12の下縁部よりも車両幅方向の内側には、内部が中空とされた閉断面を有し、車両前後方向に延設されたロッカ18が設けられている。このロッカ18の車両幅方向の外側には、車両前後方向に沿って延設され、車両上下方向の中間部分に縦壁16Aを有するロッカモール16が設けられている。
図1及び図5〜図7に示されるように、フロントドア開口10Aがフロントサイドドア本体12によって閉止された状態において、フロントサイドドア本体12の下縁部の第2横壁12Hとロッカモール16の縦壁16Aとの間にはフロントサイドドア本体12の下縁部に沿ってドア下ウェザーストリップ(以下、単に「ウェザーストリップ」という。)20が介在されている。具体的には、ウェザーストリップ20は、フロントサイドドア本体12の第2横壁12Hに取付けられている。
(ウェザーストリップの構成)
図2〜図4に示されるように、ウェザーストリップ20は、車両前方側から見て内部空間22Dを持つ中空断面を有し、フロントサイドドア本体12の第2横壁12Hに沿って細長く形成されると共に両端が開放されたウェザーストリップ本体22をベースとして構成されている。このウェザーストリップ本体22の長手方向と交差(直交)する方向に切断したときの断面は、後述する連通孔22A〜22Cが形成された箇所を除き、開放された部分が存在しない(内部空間22Dとその外周とが連通されていない閉じた断面形状を有する)閉断面とされている。ウェザーストリップ本体22のフロントサイドドア本体12側の上壁部22Rは、第2横壁12Hへの安定した取付けを可能とするために、車両前方側から見て第2横壁12Hと同様な平坦な面とされている。ウェザーストリップ本体22の上壁部22R以外は車両前方側から見て円弧形状を有する曲壁部22Sとされている。ウェザーストリップ本体22は、フロントサイドドア本体12のドア内部12Cから排水孔12H1〜12H3(図8参照)を通って流入する水、雨水、塵埃、防錆ワックス等(以下、単に「水等」と省略する。)をその両端から排水する排水路として機能している。ウェザーストリップ本体22は、例えばクロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等の高分子弾性体材料により形成されている。
図7及び図8に示されるように、フロントサイドドア本体12の下縁部に沿ったドアインナパネル12Bの第2横壁12Hの複数箇所には、ドア内部12Cから外部に貫通され、車両平面視で例えば略円形状を有する合計3個の排水孔12H1〜12H3が設けられている。ここで、排水孔12H1はフロントサイドドア本体12の車両前後方向の前端側に設けられている。また、排水孔12H2はフロントサイドドア本体12の車両前後方向の中間部に設けられている。更に、排水孔12H3はフロントサイドドア本体12の車両前後方向の後端側に設けられている。なお、この排水孔12H1〜12H3の個数は本発明において特に限定されるものではない。
ウェザーストリップ20では、ウェザーストリップ本体22の上壁部22Rの排水孔12H1と対向する位置に配置され、排水孔12H1と連通されると共に外周から内部空間22Dに貫通され、車両平面視で例えば略円形状を有する連通孔22Aが設けられている。同様に、上壁部22Rの排水孔12H2と対応する位置には連通孔22Bが設けられており、排水孔12H3と対応する位置には連通孔22Cが設けられている。
ウェザーストリップ本体22の上壁部22Rには、第2横壁12Hとの間に配置されると共に、車両平面視で連通孔22A及び排水孔12H1の周囲を取囲むリング形状とされ、連通孔22A及び排水孔12H1の周囲をシールするシール部28Aが設けられている。シール部28Aは、排水孔12H1から連通孔22Aへの排水の周囲への漏れを防止している。シール部28Aは、本実施の形態においてウェザーストリップ本体22と同等の材質により別部材として形成されており、接着剤によりウェザーストリップ本体22に固定されている。同様に、上壁部22Rの連通孔22Bの周囲にはシール部28Aと同一構造を有するシール部28Bが設けられており、連通孔22Cの周囲にはシール部28Aと同一構造を有するシール部28Cが設けられている。
図2〜図8に示されるように、更にウェザーストリップ本体22の長手方向の複数箇所には仕切壁24A〜24Fが設けられている。仕切壁24A〜24Fは、中空内部22Dを長手方向と交差する方向(ここでは直交する方向)に仕切るように配置されており、互いにウェザーストリップ本体22の長手方向に離間して配置されている。各仕切壁24A〜24Fの下部には、板厚方向に貫通し、水等の排水を可能とする排水部26A〜26Fが設けられている。ウェザーストリップ本体22の車両前方側の一端(端部)には仕切壁24Aが設けられ、ウェザーストリップ本体22の一端と連通孔22Aとの間であって連通孔22Aに近い箇所には仕切壁24Bが設けられている。つまり、ウェザーストリップ本体22の一端から連通孔22Aまでの間に2枚の仕切壁24A及び仕切壁24Bが設けられている。仕切壁24A及び仕切壁24Bは、ウェザーストリップ本体22の一端から連通孔22Aまでの間の内部空間22Dを部分的に仕切り(区切り)、ウェザーストリップ本体22の内壁と共に拡張室22Eを構成している。
更に、仕切壁24Bからウェザーストリップ本体22の中央部の連通孔22Bまでの間であって連通孔22Bに近い箇所には仕切壁24Cが設けられている。つまり、ウェザーストリップ本体22の一端から連通孔22Bまでの間に3枚の仕切壁24A、仕切壁24B及び仕切壁24Cが設けられている。仕切壁24B及び仕切壁24Cは、ウェザーストリップ本体22の内部空間22Dを部分的に仕切り、ウェザーストリップ本体22の内壁と共に拡張室22Fを構成している。なお、連通孔22Bの車両前方側、車両後方側に各々配置された2枚の仕切壁24C及び仕切壁24Dによってもウェザーストリップ本体22の内部空間22Dが部分的に仕切られて拡張室22Iを構成しているように見えるが、効果としては小さい。
一方、ウェザーストリップ本体22の車両後方側の他端(端部)には仕切壁24Fが設けられ、ウェザーストリップ本体22の他端と連通孔22Cとの間であって連通孔22Cに近い箇所には仕切壁24Eが設けられている。つまり、ウェザーストリップ本体22の他端から連通孔22Cまでの複数箇所に2枚の仕切壁24F及び仕切壁24Eが設けられている。仕切壁24F及び仕切壁24Eは、ウェザーストリップ本体22の他端から連通孔22Cまでの間の内部空間22Dを部分的に仕切り、中空内部22Dの内壁と共に拡張室22Hを構成している。更に、仕切壁24Eからウェザーストリップ本体22の中央部の連通孔22Bとの間であって連通孔22Bに近い箇所には仕切壁24Dが設けられている。つまり、ウェザーストリップ本体22の他端から連通孔22Bまでの間に3枚の仕切壁24F、仕切壁24E及び仕切壁24Dが設けられている。仕切壁24E及び仕切壁24Dは、ウェザーストリップ本体22の内部空間22Dを部分的に仕切り、中空内部22Dの内壁と共に拡張室22Gを構成している。
なお、図示が省略されているが、第1実施の形態に係るウェザーストリップ20は接着剤、両面接着テープ等の接着手段を用いて第2横壁12Hに接着され固定されている。また、ウェザーストリップ20は、第2横壁12Hの排水孔12H1〜12H3と異なる位置に設けられた第1クリップ止用孔と、この第1クリップ止用孔に対応する位置においてウェザーストリップ本体22に設けられた第2クリップ用止孔とに連通するクリップによって、第2横壁12Hに取付けられ固定されてもよい。
(ウェザーストリップの第1製造方法)
第1実施の形態に係るウェザーストリップ20の第1製造方法は以下の通りである。図10(A)に示されるように、まず最初に、押出成形(又は射出成形)によって、細長くかつ中空内部22Dを有すると共に中空閉断面形状のウェザーストリップ本体22が形成される。次いで、図10(B)に示されるように、孔あけ加工によって、ウェザーストリップ本体22の上壁部22Rの長手方向の一端部に平面視で略円形状をなす連通孔22Aが形成される。同様に、ウェザーストリップ本体22の上壁部22Rの長手方向の中央部に連通孔22Bが形成され、そして他端部に連通孔22Cが形成される。
ウェザーストリップ20を分割構造とするため、図10(C)に示されるように、分割加工(切断加工)によって、ウェザーストリップ本体22が長手方向と交差する方向(ここでは直交する方向)に沿って複数のウェザーストリップ本体22(1)、22(2)、22(3)、22(4)、…に分割される。ウェザーストリップ本体22の分割箇所は各々仕切壁24B〜24Eが形成される箇所である。具体的には、ウェザーストリップ本体22は、その一端から連通孔22Aまでの間であって連通孔22Aに近い箇所において、ウェザーストリップ本体22(1)、22(2)として分割されている。また、ウェザーストリップ本体22は、連通孔22Bよりも一端側の箇所において、ウェザーストリップ本体22(2)、22(3)として分割されている。これら以外も同様にウェザーストリップ本体22が長手方向で分割されている。
一方、図10(D)に示されるように、例えば射出成形によって、ウェザーストリップ本体22の内部空間22Dを仕切る(塞ぐ)仕切壁24A〜24F及びリング形状のシール部材(シール部)28A〜28Cが形成される。仕切壁24A〜24Fは、ウェザーストリップ本体22の分割された断面の輪郭形状と同等の輪郭形状を有する板状の仕切壁本体24aと、この仕切壁本体24aの中央部に一体に形成されると共にウェザーストリップ本体22の中空内部22Dに嵌合される突出した形状を有する突出部位24bとを備えている。更に、仕切壁24A〜24Fには、突出部位24bの一部を切欠き仕切壁本体24aを貫通し排水を可能とする排水部26A〜26Fが各々設けられている。排水の溜まりを防止するために、排水部26A〜26Fの位置は、ウェザーストリップ20のフロントサイドドア本体12への取付け状態において、最も車両下方側に設定されている。また、特に限定されるものではないが、排水部26A〜26Fの開口面積は、排水孔12H1(又は12H2或いは12H3)から排水された水等がウェザーストリップ20の両端から排水されているので、排水孔12H1の開口面積の2分の1程度に設定されることが好ましい。
図10(E)に示されるように、ウェザーストリップ本体22(1)の車両前方側の一端に仕切壁24Aが接着剤により接着され固定される。更に、ウェザーストリップ本体22(1)の車両後方側の他端とウェザーストリップ本体22(2)の車両前方側の一端との間に仕切壁24Bが接着剤により接着され固定されると共に、ウェザーストリップ本体22(2)の連通孔22Aの周囲にシール部材28Aが接着剤により接着され固定される。以下同様に、ウェザーストリップ本体22の分割された間に仕切壁24C〜24Eが接着され固定され、ウェザーストリップ本体22の車両後方側の他端に仕切壁24Fが接着され固定される。更に、ウェザーストリップ本体22の連通孔22Bの周囲にシール部材28Bが接着され固定されると共に、連通孔22Cの周囲にシール部材28Cが接着され固定される。
これら一連の製造工程が終了すると、第1製造方法により製作されたウェザーストリップ20が完成する。
(ウェザーストリップの第2製造方法)
第1実施の形態に係るウェザーストリップ20の第2製造方法は以下の通りである。まず最初に、前述の図10(A)に示されたウェザーストリップ本体22の製造方法と同様に、押出成形(又は射出成形)によってウェザーストリップ本体22が形成される。次いで、前述の図10(B)に示された連通孔22A〜22Cの製造方法と同様に、孔あけ加工によって、ウェザーストリップ本体22に連通孔22A〜22Cが形成される。
次に、図11(A)に示されるように、トリミング加工によって、ウェザーストリップ本体22の長手方向と交差する方向(ここでは直交する方向)に沿って外周の一部に外周面から中空内部22Dに貫通された挿入溝22J、22Kが形成される。図11(A)並びに後述する図11(D)では、ウェザーストリップ本体22の長手方向の中央部分、すなわち連通孔22Bの周囲の領域が抜粋されて示されている。挿入溝22Jはウェザーストリップ本体22の連通孔22Bよりも車両前方側の箇所に設けられており、ウェザーストリップ本体22の長手方向と一致する挿入溝22Jの溝幅TWはこの挿入溝22Jに挿入される仕切壁24Cの厚さt(図11(C)参照)と略同等とされている。図11(B)に示されるように、挿入溝22Jの溝長TLは、仕切壁24Cがウェザーストリップ本体22の外周から内部空間22Dに埋設可能とするために、ウェザーストリップ本体22の長手方向と略直交する仕切壁24Cの最大幅BWと略同等か、又はウェザーストリップ本体22に伸縮性があるので最大幅BWよりも小さく設定されている。挿入溝22Kはウェザーストリップ本体22の連通孔22Bよりも車両後方側の箇所に設けられており、挿入溝22Kには仕切壁24Dが挿入されるようになっている。挿入溝22Kの溝幅及び溝長は挿入溝22Jの溝幅TW及び溝長TLと同等とされている。
図11(C)に示されるように、例えば射出成形によって、ウェザーストリップ本体22の内部空間22Dを仕切る仕切壁24A〜24F及びリング形状のシール部材(シール部)28A〜28Cが形成される。仕切壁24A〜24Fは、ウェザーストリップ本体22の挿入溝22J、22K等に挿入される構成とされ、円滑な挿入を可能とするために、突出部分を持たない平板とされている。更に、仕切壁24A〜24Fには、その周縁部分の一部を切欠いて貫通され排水を可能とする排水部26A〜26Fが設けられている。排水部26A〜26Fの位置及び開口面積は、前述の図10(D)に示された排水部26A〜26Fの位置及び開口面積と同等とされている。
図8及び図11(D)に示されるように、ウェザーストリップ本体22の車両前方側の一端に仕切壁24Aが接着剤により接着され固定されると共に、車両後方側の他端に仕切壁24Fが接着剤により接着され固定される。ウェザーストリップ本体22の挿入溝22Jには仕切壁24Cが挿入されると共に、仕切壁24Cが接着剤によりウェザーストリップ本体22に接着され固定される。また、ウェザーストリップ本体22の挿入溝22Kには仕切壁24Dが挿入されると共に、仕切壁24Dが接着剤によりウェザーストリップ本体22に接着され固定される。これら以外の仕切壁24B、24Eは、図示が省略された挿入溝に挿入されて、同様に接着剤によりウェザーストリップ本体22に接着され固定される。更に、ウェザーストリップ本体22の連通孔22Aの周囲にはシール部材28Aが、連通孔22Bの周囲にはシール部材28Bが、連通孔28Cの周囲にはシール部材28Cが各々接着され固定される。
これら一連の製造工程が終了すると、第2製造方法により製作されたウェザーストリップ20が完成する。
(第1実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1実施の形態に係る車両用ドア構造では、フロントサイドドア本体12の排水孔12H1〜12H3とウェザーストリップ本体22の中空内部22Dとが連通孔22A〜22Cにより連通されている。更に、中空内部22Dの仕切壁24A〜24Fには一部を貫通し排水が可能とされた排水部26A〜26Fが設けられている。このため、フロントサイドドア本体12の排水孔12H1〜12H3を通ってウェザーストリップ本体22の中空内部22Dに浸入した水等は、中空内部22Dを排水路として流れ、排水部26B〜26Eを通ってウェザーストリップ本体22の端部の排水部26A又は26Fから排水可能とされている。
ここで、図8及び図9に示されるように、ウェザーストリップ20の車両前方側の一端側で発生した音(騒音)N1は、仕切壁24Aの排水部26Aを通過して仕切壁24A及び仕切壁24Bにより構成された拡張室22E内に侵入する。拡張室22E内では、仕切壁24A、仕切壁24B、内部空間22Dの内壁によって音N1が反射されると共に、音波干渉が生じ、これにより減衰された(小さくなった)音N2が生成される。この音N2は、拡張室22Eから仕切壁24Bの排水部26Bを通過して仕切壁24B及び仕切壁24Cにより構成された拡張室22Fに侵入する。拡張室22F内では、拡張室22E内での音の減衰効果と同様に、減衰された音N2が音波干渉により更に減衰されて音N4が生成される。拡張室22E内では、2枚の仕切壁24A及び仕切壁24Bが略垂直な音の反射面をなしかつ略平行に配置されているので、音波干渉が十分に行われ、音N2の減衰幅が大きくなる。同様に、拡張室22F内では、2枚の仕切壁24B及び仕切壁24Cが略垂直な音の反射面をなしかつ略平行に配置されているので、音波干渉が十分に行われ、音N4の減衰幅が大きくなる。
拡張室22E内で減衰された音N2は、仕切壁24Bの排水部26Bを通り、音N3として連通孔22A及び排水孔12H1を抜け、フロントサイドドア本体12のドア内部12Cに侵入する。音N3は、拡張室22F内での減衰は期待できないが、拡張室22E内で十分に減衰されているので、ドア内部12Cには小さい音として侵入する。同様に、拡張室22F内で減衰された音N4は、仕切壁24Cの排水部26Cを通り、音N5として連通孔22B及び排水孔12H2を抜け、フロントサイドドア本体12のドア内部12Cに侵入する。音N5は、拡張室22I内での減衰は期待できないが、拡張室22E内及び拡張室22F内で十分に減衰されているので、ドア内部12Cには更に小さい音として侵入する。
一方、ウェザーストリップ本体22の車両後方側の他端側で発生した音N6でも、上記と同様の作用が得られる。すなわち、音N7は拡張室22Hにより減衰され、音N9は拡張室22Gにより減衰される。また、音N8は連通孔22C及び排水孔12H3を通ってフロントサイドドア本体12のドア内部12Cに侵入し、音N10は連通孔22B及び排水孔12H2を通ってフロントサイドドア本体12のドア内部12Cに侵入する。
従って、第1実施の形態に係る車両用ドア構造によれば、ウェザーストリップ20による排水性を確保することができると共に、ウェザーストリップ20の端部から侵入する音(騒音)N1、N6に対する遮音効果を向上することができるという効果が得られる。
また、第1実施の形態に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ本体22が中空内部22Dに仕切壁24A〜24Fを設けた構成とされている。このため、押出成形や射出成形によって、ウェザーストリップ本体22を製作することが難しい。ここで、前述の図10(A)〜図10(E)に示されている第1製造方法では、中空内部22Dに仕切壁24A〜24Fを持たないウェザーストリップ本体22が押出成形や射出成形によって容易に製作可能である。このウェザーストリップ本体22には複数のウェザーストリップ本体22(1)、22(2)、…等として長手方向に分割された分割構造が採用されている。これにより、ウェザーストリップ本体22(1)、22(2)間の分割箇所等に仕切壁24A〜24Fを設けることができる。従って、仕切壁24A〜24Fを持つウェザーストリップ本体22が簡易に製作可能となる。
更に、前述の図11(A)〜図11(D)に示される第2製造方法では、中空内部22Dに仕切壁24A〜24Fを持たないウェザーストリップ本体22が押出成形や射出成形によって容易に製作可能である。このウェザーストリップ本体22が一端から連通孔22A〜22Cまでの複数箇所に外周面から中空内部22Dに貫通する挿入溝22J、22K等を備えており、この挿入溝22J、22K等から中空内部22Dに仕切壁24A〜24Fが挿入されている。従って、仕切壁24A〜24Fを持つウェザーストリップ本体22が簡易に製作可能となる。
従って、第1実施の形態に係る車両用ドア構造によれば、ウェザーストリップ20を簡易に製作することができるという効果が得られる。
[第2実施の形態]
次に、図12〜図14を用いて、本発明の第2実施の形態に係る車両用ドア構造について説明する。なお、第2実施の形態並びにそれ以降の実施の形態において、第1実施の形態で説明した構成要素と同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、この同一符号が付された構成要素の説明は重複するので省略する。
(車両用ドア構造の構成)
図12及び図13に示されるように、第2実施の形態に係る車両用ドア構造では、フロントサイドドア本体12の排水孔12H1からウェザーストリップ20の連通孔22Aまで貫通されると共にフロントサイドドア本体12からウェザーストリップ本体22への排水を可能とする第1主貫通孔30H及び第2主貫通孔30Iを有すると共に、フロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ本体22とを排水孔12H1及び連通孔22Aを介して挟込むクリップ30Aが設けられている。また、クリップ30Aと同様の構成とされたクリップ30Bが排水孔12H及び連通孔22Bの箇所に設けられると共に、クリップ30Cが排水孔12H3及び連通孔22Cの箇所に設けられている。
また、排水孔12H1〜12H3及び連通孔22A〜22Cの各々周囲においてフロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ本体22との間には、第1実施の形態に係る車両用ドア構造と同様に、シール部28A〜28Cがそれぞれ設けられている。
図12、図13、図14(A)及び図14(B)に示されるように、クリップ30Aは、ウェザーストリップ本体22の中空内部22Dの内壁に係止されるリング板形状の第1係止部30Eと、その上端から連通孔22A及び排水孔12H1を通過すると共に車両上下方向に延設された第1主貫通孔30Hを内部に有する中空円柱形状の筒部30Fと、その上端に設けられ第2横壁12Hのドア内部12C側に係止されると共に一端が第1主貫通孔30Hに接続され他端がドア内部12Cに通じる第2主貫通孔30Iを内部に有する略山形形状の第2係止部30Gとを備えている。
クリップ30Aは、その第1係止部30Eと第2係止部30Gとの間に、ウェザーストリップ本体22及び第2横壁12Hをシール部28Aを介して挟込む構成とされている。すなわち、接着剤を用いた固定ではなく、フロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ20とがクリップ30Aによる機械的な結合により固定されている。
第2主貫通孔30Iは軸方向に見て十字状に交差した2つの排水路として構成されており、この第2主貫通孔30Iの十字状の交差部(中央部)が第1主貫通孔30Hに連通されている。第2主貫通孔30Iの十字状の四方に伸びる端部がドア内部12Cに開放されており、ここからドア内部12Cの水等が浸入する。この水等は第1主貫通孔30Hを通ってウェザーストリップ本体22の内部空間22D内に排水される。
クリップ30Aは、例えば射出成形によって第1係止部30E、筒部30F及び第2係止部30Gを一体に成形したものである。クリップ30Aは、例えばウェザーストリップ本体22に比べて硬質な樹脂により形成されている。クリップ30B、30Cの構成はいずれもクリップ30Aの構成と同様とされている。
(第2実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第2実施の形態に係る車両用ドア構造では、フロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ本体22との間を排水孔12H1〜12H3及び連通孔22A〜22Cを介して挟込むクリップ30A〜30Cが設けられている。このクリップ30A〜30Cによりフロントサイドドア本体12の下縁部にウェザーストリップ本体22が固定されている。クリップ30A〜30Cには排水孔12H1〜12H3及び連通孔22A〜22Cを貫通する第1主貫通孔30Hが設けられている。このため、フロントサイドドア本体12の下縁部へのウェザーストリップ20の固定を確実なものとすることができると共に、フロントサイドドア本体12のドア内部12Dからウェザーストリップ20への排水を確実なものとすることができる。
[第3実施の形態]
次に、図15〜図17を用いて、本発明の第3実施の形態に係る車両用ドア構造について説明する。第3実施の形態は前述の第2実施の形態に係る車両用ドア構造の排水性能を更に高めた例を説明するものである。
(車両用ドア構造の構成)
図15、図16(A)、図16(B)、図17(A)及び図17(B)に示されるように、第3実施の形態に係る車両用ドア構造では、車両前後方向の前部(一端部)、後部(他端部)のクリップ30A、30Cの第1主貫通孔30H(又は筒部30F)の車両上下方向の貫通長さL1に対して、中央部のクリップ30Bの第1主貫通孔30H(又は筒部30F)の同一方向の貫通長さL3が短く設定されている。この長さの違いに対応させて、クリップ30A、30Cの周囲に設けられたシール部28A、28Cの離間距離(又は高さ)L2に対してクリップ30Bの周囲に設けられたシール部28Bの離間距離(又は高さ)L4が短く(又は低く)設定されている。ここで、離間距離L1、L2はフロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ本体22との間の車両上下方向の長さである。
このようなクリップ30A〜30Cを用いることにより、ウェザーストリップ本体22が下り傾斜になるように傾斜されている。正確に表現すれば、ウェザーストリップ本体22は中央部から両端(端部)に向かって車両下方向に僅かに湾曲されている。
(第3実施の形態の作用及び効果)
第3実施の形態に係る車両用ドア構造では、フロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ本体22の一端部及び他端部との間がシール部28A、28Cを介してクリップ30A、30Cにより固定されると共に、排水孔12H1、12H3と連通孔22A、22Cとの間がクリップ30A、30Cの第1主貫通孔30Hにより連通されている。一方、フロントサイドドア本体12の下縁部とウェザーストリップ本体22の中央部との間がシール部28A、28Cよりも離間距離L4が短いシール部28Bを介してクリップ30Bにより固定されると共に、第2排水孔12H2と連通孔22Bとの間がクリップ30A、30Cの第1主貫通孔30Hよりも貫通長さL3が短い第1主貫通孔30Hによって連通されている。このため、ウェザーストリップ本体22が中央部から一端部及び他端部に向かって下り勾配となる傾斜とされているので、ウェザーストリップ本体22の中央部から一端部及び他端部に向かって確実に排水が可能とされる。従って、第3実施の形態に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ20の排水性能を向上させることができる。
[第4実施の形態]
次に、図18〜図23を用いて、本発明の第4実施の形態に係る車両用ドア構造について説明する。第4実施の形態は、前述の第2実施の形態又は第3実施の形態に係る車両用ドア構造において、クリップ30A〜30Cでの音(騒音)の低減効果を向上した例を説明するものである。
(車両用ドア構造の構成)
図18及び図19に示されるように、本実施の形態に係る車両用ドア構造では、前述の第2実施の形態又は第3実施の形態と同様に、シール部28Aは、フロントサイドドア本体12の排水孔12H1及びウェザーストリップ本体22の連通孔22Aの周囲において、フロントサイドドア本体12の下縁部の第2横壁12Hとウェザーストリップ本体22との間に設けられている。シール部28Aは、例えば前述の図3に示されるように車両平面視で略リング形状とされているので、排水孔12H1及び連通孔22Aの周囲全域を囲むと共に、第2横壁12Hとウェザーストリップ本体22との間を離間させている。シール部28Aの内壁は、第2横壁12Hのウェザーストリップ本体22側の下面、ウェザーストリップ本体22の上壁部22R及びクリップ30Aの筒部30Fの外周面と共に、シール部28Aよりも外側の空間に対して密閉された閉空間32を形成している。
一方、第2横壁12Hにウェザーストリップ本体22を固定するクリップ30Aには、フロントサイドドア本体12のドア内部12Cとウェザーストリップ20の内部空間22Dとの間を連通する第1主貫通孔30H及び第2主貫通孔30Iが設けられている。本実施の形態に係る車両用ドア構造では、更に、クリップ30Aに第1貫通孔30Hから閉空間32に連通された副貫通孔30Mが設けられている。第1主貫通孔30Hは車両上下方向に貫通されているのに対して、副貫通孔30Mは第1貫通孔30Hの貫通方向に対して交差する水平方向に貫通されている。ここでは、第2横壁12Hとウェザーストリップ本体22との間において筒部30Fに副貫通孔30Mが設けられている。減衰する音(騒音)の周波数により適宜サイズが調節されるが、副貫通孔30Mの開口寸法(直径)は第1主貫通孔30Hの開口寸法(直径)に対して小さく設定されている。また、副貫通孔30Mの開口寸法はシール部28Aの離間距離L2(図16(A)参照)に対して小さく設定されている。なお、クリップ30B、30Cの構成はクリップ30Aの構成と同一とされている。
(音の低減効果)
ここで、クリップ30A(及びクリップ30B、30C)での音の低減効果について説明する。図20に示されるように、ウェザーストリップ20の車両前方側で先に発生した音N1は拡張室22E内に侵入すると、この音N1は例えば拡張室22E内において仕切壁24Bで反射されて音N2になる。音N2がウェザーストリップ20の車両前方側で後に発生した音N11と衝突したとき、音N2、音N11のそれぞれの波長と音圧(音の大きさ)とによって音の低減効果が異なる。
図21には音の周波数(Hz)と音の低減効果(dB)との関係が示されている。図21に示される符号Gが付された破線は、本発明に係る車両用ドア構造の拡張室22Eを備えていないウェザーストリップにおける音の周波数と音の低減効果との関係を示している。このウェザーストリップでは、拡張室22E等を構成する仕切壁24A、24B等が設けられていないので、ウェザーストリップの一端から侵入した音N1は音波干渉も無くそのままフロントサイドドア本体12のドア内部12Cに抜ける。このため、根本的に音の低減効果を期待することができない。
図21に示される符号Fが付された一点鎖線は、前述した第2実施の形態又は第3実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップ20における音の周波数と音の低減効果との関係を示している。このウェザーストリップ20では、先に発生し侵入した音N1が仕切壁24Bで反射されて音N2となる。この音N2が後に発生し侵入した音N11と衝突したとき、音N2の位相と音N11の位相とが180度反転されていると、音N2と音N11とが相殺され、音の低減効果が最大値NRmaxになる。図20に示されるウェザーストリップ本体22の長手方向と一致する拡張室22Eの長さがLの場合、音が減衰される周波数の条件は下記(1)式に示される通りである。


ここで、λは波長、mは奇数である。
また、ウェザーストリップ20において、音N2の位相と音N11の位相とが同相(位相差0度)の場合、音N2と音N11とが相殺されないので、音の低減効果が最小値NRminになる。すなわち、音N2、音N11の周波数帯域によっては音の低減効果を得ることができない場合が存在する。音が減衰されない周波数の条件は下記(2)式に示される通りである。

ここで、nは偶数である。
図22には1自由度のバネマス系のモデルが示されている。本実施の形態に係る車両用ドア構造では、上記の通り、第2横壁12Hとウェザーストリップ本体22との間に閉空間32が設けられている。更に、クリップ30A(又はクリップ30B若しくはクリップ30C)には副貫通孔30Mが設けられている。このような構成により、閉空間32内の空気が「バネK」とされ、副貫通孔30M内の空気が「マスM」とされる「1自由度のバネマス系」が構築されている。クリップ30Aの第1主貫通孔30Hを通過する音(例えば図8に示される音N3)がマスMに当たるとバネKが振動するので、音エネルギの少なくとも一部が振動エネルギに変換される。このため、ウェザーストリップ20の一端から侵入した音N1が音N3としてクリップ30Aを通過するときに、この音N3を効果的に減衰することができる。また、前述の図8に示される音N1が音N5としてクリップ30Bを通過するときも同様に、音N5を減衰することができる。また、音N6が音N8としてクリップ30Cを通過するときも同様に、音N8を減衰することができる。更に、音N6が音N10としてクリップ30Bを通過するときも同様に、音N10を減衰することができる。
図21に示される符号Eが付された実線は、本実施の形態に係る車両用ドア構造における音の周波数と音の低減効果との関係を示している。この車両用ドア構造では、1自由度のバネマス系が構築されているので、特に音の低減効果が最小値NRminとなる周波数帯域において、音の低減効果を中間値NRmidまで改善することができる。音の減衰周波数fは下記(3)式に示される通りである。

ここで、cは音速(km/h)、lは副貫通孔30Mの貫通長さ(mm)、Δlは副貫通孔30Mの開口端補正値(mm)、Sは副貫通孔30Mの面積(mm2)、Vは閉空間32の体積(mm3)である。
図23には前述の1自由度のバネマス系モデルにおける音の周波数(Hz)と音の低減効果(dB)との関係が示されている。本実施の形態に係る車両用ドア構造では、1自由度のバネマス系が構築されているので、特定の周波数で共振したとき、顕著な音の低減効果を得ることができる。また、1自由度のバネマス系では、副貫通孔30Mの容積と閉空間32の容積との比率を調整することよって音の低減効果が得られる周波数を制御することができる。例えば、副貫通孔30Mの容積を一定(マスMを一定)にして、閉空間32の容積を大きくすると、バネKの振動数が小さくなるので、符号Hが付された実線から符号Iが付された破線の低い周波数側に共振周波数が移動する。逆に、副貫通孔30Mの容積を一定(マスMを一定)にして、閉空間32の容積を小さくすると、バネKの振動数が大きくなるので、符号Hが付された実線から符号Jが付された破線の高い周波数側に共振周波数が移動する。
(第4実施の形態の作用及び効果)
第4実施の形態に係る車両用ドア構造では、閉空間32内の空気が「バネK」とされ、クリップ30A〜30Cの副貫通孔30M内の空気が「マスM」とされる「1自由度のバネマス系」が構築されている。クリップ30A〜30Cの第1主貫通孔30Hを通過する音N3(又音N5、音N8若しくは音N10。図8参照。)がマスMに当たるとバネKが振動するので、音エネルギの少なくとも一部が振動エネルギに変換される。このため、ウェザーストリップ20の一端部(又は他端部)から侵入した音N1(又は音N6)がクリップ30A〜30Cを通過するときに効果的に減衰されてフロントサイドドア本体12のドア内部12Cに侵入するので、騒音に対する遮音効果をより一層向上することができる。また、1自由度のバネマス系による音N3等の減衰は音の周波数に左右されずに減衰されるので、騒音に対する遮音効果を安定して得ることができる。
従って、第4実施の形態に係る車両用ドア構造によれば、第2実施の形態又は第3実施の形態に係る車両用ドア構造によって得られる効果に加えて、騒音に対する遮音効果をより一層向上することができると共に、遮音効果を安定して得ることができる。
なお、本実施の形態に係る車両用ドア構造では、クリップ30A〜30Cの筒部30Fの全周囲に渡って閉空間32が設けられる必要はない。つまり、筒部30Fの周囲の少なくとも一部に副貫通孔30Mに連接された閉空間32が設けられていればよい。
[第5実施の形態]
次に、図24〜図34を用いて、本発明の第5実施の形態に係る車両用ドア構造について説明する。第5実施の形態は、前述の第1実施の形態〜第4実施の形態に係る車両用ドア構造において、ウェザーストリップ20の断面形状を変えた例を説明するものである。
(ウェザーストリップの構成)
図24及び図25に示されるように、本実施の形態に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ20のウェザーストリップ本体22が、連通孔22A〜22Cが形成された箇所を除いて開断面内部22Lを備えている。この開断面内部22Lは、前述した中空内部22Dと同様に、排水孔12H1〜12H3及び連通孔22A〜22Cを通って排水された水等の排水路とされている。
図24〜図28に示されるように、ウェザーストリップ本体22は、略平坦な上壁部22Rと、上壁部22Rの車両内側端から車両下方側に延びる第1縦壁部22Tと、上壁部22Rの車両外側端から車両下方側に第1縦壁部22Tに略平行にかつそれよりも長く延びる第2縦壁部22Uと、を備えている。第1縦壁部22Tの下端と第2縦壁部22Uの下端との間には開放部27が形成されている。つまり、ウェザーストリップ本体22の断面形状は車両前方側から車両後方側に見て逆L字形状により構成されている。
ウェザーストリップ本体22には、開断面内部22Lにおいて、長手方向の複数箇所にこの長手方向と交差する方向(ここでは直交する方向)を仕切る複数の仕切壁24A〜24Fが設けられている。この複数の仕切壁24A〜24Fには、各々、長手方向に貫通し排水を可能とする排水部26A〜26Fが設けられている。第1実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップ20と同様に、本実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップ20では、車両前方側の一端部から車両後方側の他端部に向かって仕切壁24A〜24Fが順次配列されている。また、ウェザーストリップ本体22の一端と連通孔22Aとの間には2枚の仕切壁24A及び仕切壁24Bが設けられており、一端と連通孔22Bとの間には3枚の仕切壁24A、仕切壁24B及び仕切壁24Cが設けられている。一方、ウェザーストリップ本体22の他端と連通孔22Cとの間には2枚の仕切壁24F及び仕切壁24Eが設けられており、他端と連通孔22Bとの間には3枚の仕切壁24F、仕切壁24E及び仕切壁24Dが設けられている。また、複数の仕切壁24A〜24Fによって拡張室24E〜24Iが形成されている。本実施の形態に係る車両用ドア構造では、仕切壁24A〜24Fがウェザーストリップ本体22の内壁に一体に構成されている。この製造方法は後に説明する。
連通孔22Aの周囲においてウェザーストリップ本体22の上壁部(上面部)22Rとドアインナパネル12Bの第2横壁12Hとの間にはシール部28Aが設けられている。第1実施の形態に係る車両用ドア構造のシール部28Aと同様に、本実施の形態に係る車両用ドア構造のシール部28Aは、車両平面視でリング形状とされると共に、ウェザーストリップ本体22と同等の材質により形成されている。更に、シール部28Aはウェザーストリップ本体22と一体に構成されている。同様に、連通孔22Bの周囲においてウェザーストリップ本体22と第2横壁12Hとの間にはシール部28Bが設けられ、連通孔22Cの周囲においてウェザーストリップ本体22と第2横壁12Hとの間にはシール部28Cが設けられている。
(ドアの閉まり性能)
図29(A)には前述した第1実施の形態に係る車両用ドア構造の閉断面形状を持つウェザーストリップ20を簡略化したモデルが示されている。図29(B)には図29(A)に示されたモデルを置換えた梁モデルが示されている。図29(A)に示されるように、フロントドア開口10Aがフロントサイドドア本体12によって閉止されたとき、ウェザーストリップ本体22には車両幅方向の内側から外側に向かってロッカモール16からの力F1が作用する。この状態は、図29(B)に示されるように、支持端S1(例えばフロントサイドドア本体12)にウェザーストリップ本体22の一端が支持され、ウェザーストリップ本体22の他端が支持端S2(例えばロッカモール16)に支持された両持ち梁(両端支持梁)のモデルに置換えられる。この両持ち梁のばね定数k(N/mm)は下記式(4)に示される通りである。

ここで、EIは曲げ剛性(Nmm2)、lは梁の長さ(mm)である。
図30(A)には本実施の形態に係る車両用ドア構造の開断面形状を持つウェザーストリップ20を簡略化したモデルが示されている。図30(B)には図30(A)に示されたモデルを置換えた梁モデルが示されている。図30(A)に示されるように、フロントドア開口10Aがフロントサイドドア本体12によって閉止されたとき、ウェザーストリップ本体22には車両幅方向の内側から外側に向かってロッカモール16からの力F1が作用する。この状態は、図30(B)に示されるように、ウェザーストリップ20に開放部27が設けられているので、支持端S1にウェザーストリップ20の一端が支持された片持ち梁(一端支持梁。符号20(1))並びにウェザーストリップ20の他端が支持端S2に支持された片持ち梁(一端支持梁。符号20(2))のモデルに置換えられる。この2つの片持ち梁には力F1の2分の1の力F2がそれぞれ作用する。片持ち梁のばね定数k(N/mm)は下記式(5)に示される通りである。
ばね定数kは反力と等価であり、第1実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップ本体22の反力に比べて、本実施の形態に係る車両用ドア構造のウェザーストリップ本体22の反力は16分の1に小さくなる。このため、フロントドア開口10Aがフロントサイドドア本体12によって閉止されたとき、ウェザーストリップ20の反力が格段に小さいことから、フロントサイドドア本体12のドア閉まり性能を向上することができる。前述のように、ここではフロントサイドドア本体12について説明しているが、開放部27を有するウェザーストリップ20がリアサイドドア本体14に設けられていれば、このリアサイドドア本体14のドア閉まり性能も向上することができる。
(ウェザーストリップの製造方法)
本実施の形態に係るウェザーストリップ20の製造方法は以下の通りである。図31、図32(A)〜図32(C)に示されるように、ウェザーストリップ20は第1金型(下金型)42及び第2金型(上金型)44を有する金型40を用いた射出成形により形成されている。つまり、第1金型42とその上に組合わせた第2金型44との間のウェザーストリップ本体22を成形するキャビティ(型)内に材料となる高分子弾性体材料が射出される。ここでは、ウェザーストリップ本体22、連通孔22A〜22C、仕切壁24A〜24F、排水部26A〜26F及びシール部28A〜28Cが同時に成形されている。つまり、ウェザーストリップ本体22に仕切壁24A〜24F及びシール部28A〜28Cが一体に成形されている。なお、高分子弾性体材料が射出された後、保圧、冷却が順次行われる。
図33及び図34に示されるように、冷却された後、金型40の型開きが行われ、成形されたウェザーストリップ20が取り出される。このような製造方法によれば、一度の射出成形工程により、ウェザーストリップ本体22、連通孔22A〜22C、仕切壁24A〜24F、排水部26A〜26F及びシール部28A〜28Cが一体に形成されたウェザーストリップ20を形成することができる。
(第5実施の形態の作用及び効果)
第5実施の形態に係る車両用ドア構造では、前述の第1実施の形態〜第4実施の形態に係る車両用ドア構造により得られる作用と同様の作用を得ることができる。更に、本実施の形態に係る車両用ドア構造では、ウェザーストリップ本体22が開断面形状とされている。
ここで、開断面形状を持つウェザーストリップ本体22のばね定数は閉断面形状を持つウェザーストリップ本体22のばね定数に比べて小さくなるので、前者の反力は後者に比べて小さくなる。このため、フロントドア開口10Aがフロントサイドドア本体12によって閉止されたときのウェザーストリップ本体22からの反力が小さくされるので、フロントサイドドア本体12の閉まり性能を向上することができる。
また、第5実施の形態に係る車両用ドア構造では、仕切壁24A〜24Fがウェザーストリップ本体22の開断面内部22Lに一体に構成された簡易な構造とされている。加えて、シール部28A〜28Cがウェザーストリップ本体22の上壁部22Rに一体に構成された簡易な構造とされている。このため、ウェザーストリップ20が簡易に製作可能となる。例えば、上記のように、ウェザーストリップ本体22の開断面内部22Lの内壁及び仕切壁24A〜24Fの輪郭を成形する第1金型42と、ウェザーストリップ本体22の外壁を成形する第2金型44とを備えた金型40を製作し、この第1金型42と第2金型44との間にウェザーストリップ本体22の材料を射出し成形することによって、1回の射出成形によってウェザーストリップ20を製作することができる。
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本発明は、ハッチバック系車両のバックドアに設けられたウェザーストリップを備えた車両用ドア構造に適用可能である。また、本発明は、スライド式のドア本体に設けられたウェザーストリップを備えた車両用ドア構造に適用可能である。
10 車両
10A フロントドア開口
10B リアドア開口
12 フロントサイドドア本体
12A ドアアウタパネル
12B ドアインナパネル
12C ドア内部
12H 第2横壁
12H1〜12H3 排水孔
14 リアサイドドア本体
16 ロッカモール
18 ロッカ
20 ウェザーストリップ
22 ウェザーストリップ本体
22A〜22C 連通孔
22D 中空内部
22E〜22I 拡張室
22J、22K 挿入溝
22L 開断面内部
24A〜24F 仕切壁
26A〜26F 排水部
27 開放部
28A〜28C シール部又はシール部材
30A〜30C クリップ
30E 第1係止部
30F 筒部
30G 第2係止部
30H 第1主貫通孔
30I 第2主貫通孔
30M 副貫通孔
32 閉空間
40 金型
42 第1金型
44 第2金型

Claims (8)

  1. 下縁部に排水孔が設けられたドア本体と、
    前記下縁部に沿って配置されると共に内部が中空とされ、更に当該内部と前記排水孔とを連通する連通孔を有するウェザーストリップ本体と、
    前記ウェザーストリップ本体の端部から前記連通孔までの複数箇所に設けられると共に各々前記内部を仕切る仕切壁と、
    前記仕切壁の一部を貫通し排水を可能とする排水部と、
    を備えた車両用ドア構造。
  2. 前記ウェザーストリップ本体は前記端部から前記連通孔までの間において長手方向に分割された分割構造とされ、前記仕切壁は前記ウェザーストリップ本体の分割位置に設けられている請求項1に記載の車両用ドア構造。
  3. 前記ウェザーストリップ本体は前記端部から前記連通孔までの間に外周面から前記内部に貫通する挿入溝を備え、前記仕切壁は前記挿入溝から前記内部に挿入されている請求項1に記載の車両用ドア構造。
  4. 下縁部に排水孔が設けられたドア本体と、
    前記下縁部に沿って配置されると共に内部が中空とされ、更に当該内部と前記排水孔とを連通する連通孔を有すると共に当該連通孔が形成された箇所を除き長手方向と交差する方向の断面が一部を開放した開断面とされたウェザーストリップ本体と、
    前記ウェザーストリップ本体の端部から前記連通孔までの複数箇所に設けられると共に各々前記内部を仕切る仕切壁と、
    前記仕切壁の一部を貫通し排水を可能とする排水部と、
    を備えた車両用ドア構造。
  5. 前記仕切壁は前記ウェザーストリップ本体に一体に設けられている請求項4に記載の車両用ドア構造。
  6. 前記排水孔から前記連通孔まで貫通されると共に前記ドア本体から前記ウェザーストリップ本体への排水が可能とされる主貫通孔を有すると共に、前記下縁部と前記ウェザーストリップ本体とを前記排水孔及び前記連通孔を介して挟込むクリップを更に備えている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の車両用ドア構造。
  7. 前記排水孔は前記下縁部に沿って複数箇所に配設された第1排水孔及び第2排水孔を備え、
    前記連通孔は、前記ウェザーストリップ本体の前記端部に配置されると共に前記第1排水孔と連通される第1連通孔と、前記ウェザーストリップ本体の中央部に配置されると共に前記第2排水孔と連通される第2連通孔と、を備え、
    前記下縁部と前記端部との間において前記第1排水孔及び前記第1連通孔の周囲をシールする第1シール部と、
    前記下縁部と前記中央部との間において前記第2排水孔及び前記第2連通孔の周囲をシールすると共に、前記第1シール部よりも前記下縁部と前記ウェザーストリップ本体との間の離間距離が短い第2シール部と、
    前記第1排水孔から前記第1連通孔まで貫通されると共に前記ドア本体から前記ウェザーストリップ本体への排水が可能とされる第1主貫通孔を有し、前記下縁部と前記端部とを前記第1排水孔及び前記第1連通孔を介して挟込む第1クリップと、
    前記第2排水孔から前記第2連通孔まで貫通されると共に前記ドア本体から前記ウェザーストリップ本体への排水が可能とされ、前記第1貫通孔よりも貫通長さが短い第2主貫通孔を有し、前記下縁部と前記中央部とを前記第2排水孔及び前記第2連通孔を介して挟込む第2クリップと、を更に備えている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車両用ドア構造。
  8. 前記下縁部と前記ウェザーストリップ本体との間において前記排水孔及び前記連通孔の周囲をシールし、かつ前記下縁部及び前記ウェザーストリップ本体とで閉空間を形成するシール部と、
    前記排水孔から前記連通孔に貫通されると共に前記ドア本体から前記ウェザーストリップ本体への排水が可能とされる主貫通孔を有し、前記下縁部と前記ウェザーストリップ本体とを前記排水孔及び前記連通孔を介して挟込み、更に前記主貫通孔から前記閉空間に貫通される副貫通孔を有するクリップと、
    を更に備えた請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車両用ドア構造。
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