JP7188972B2 - フェンダーインシュレータ及びその製造方法 - Google Patents
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こうしたことから、図2に描くフェンダーライナー73に繊維系の吸音材を貼付けることで対策を講じているものもあるが、該繊維系吸音材は、降雨時などで吸水して吸音特性が変化する。吸音性能が落ちて車室内が騒音悪化する問題があった。
また、ヘルムホルツレゾネータをフェンダー内に設置することも考えられるが、ヘルムホルツレゾネータ容量が大きく、FF車では設置が難しい場合があった。
請求項7に記載の発明の要旨は、車両のピラーとフェンダーとの間で、車両に配設されるフェンダーインシュレータの製造方法において、ピラーとフェンダーとの隙間を塞ぐ形の板状体にして、前記ピラーと前記フェンダー間を繋ぐ板状主部に、開口部を構成する一対の開口セル間を棒部で仕切って双方の開口セルが近接配置された樹脂製のハウジングを射出成形した後、該ハウジングと同系素材の熱可塑性エラストマー製の膜振動可能な膜状にして、一対の前記開口セルの全周縁に係止させて両開口セルを塞ぐセル膜と、前記棒部に取り巻き包み込んで係止する筒部分と、が一体の弾性膜を射出成形することを特徴とするフェンダーインシュレータの製造方法にある。
フェンダーインシュレータFSは、車両のピラーとフェンダーとの間で、車両の上下方向に配設される縦長形状品である。フェンダーインシュレータFSは、図2のごとく車幅方向外側縁1cをフェンダーの裏面に沿わせた板状体で、フロントフェンダー72(以下、単に「フェンダー」ともいう。)と車両骨格たるフロントピラー71(以下、単に「ピラー」ともいう。)との間の隙間εを遮蔽する(図3)。フェンダー72が組付けられると、ピラー71との間に縦長スリット状の隙間εができるが、この隙間εを通って車室空間RMへの図3の矢印で示す音の進入を、本フェンダーインシュレータFSで止める。ここでは、フェンダー72の車両後方部が屈曲してフェンダー内側に延在するフランジ721と、ピラー71の車両前方側の側壁とに、フェンダーインシュレータFSを車両前方側から当接して隙間εを塞いでいる。フェンダーインシュレータFSは、その縦長方向を車両上下方向に合わせて隙間εが埋まるように、車体Pに取付けられる。
フェンダーインシュレータFSは、ハウジング1と弾性膜2とを具備する。
補強リブ1Bは、板状主部1Aの剛性や強度を補強する部分で、板状主部1Aの外周縁から車両前方側に屈曲、延在した鍔部である。前記車幅方向外側縁1cは補強リブ1Bで形成する。また、両側鍔部の内面に両側端を結合して帯幅方向を板状主部1Aに起立させた帯板部も補強リブ1Bの一部で、板状主部1Aの上端から所定間隔で下端まで略水平に配される。
接続用板部1Cは、相手部材のピラー71又はフェンダー72への取付け片部である。本実施形態は、フェンダーインシュレータFSの上端部111と下端部112に板状主部1Aからそれぞれ延在する接続用板部1Cを設け、該接続用板部1Cに相手部材への取付け用孔19を設ける(図4)。
ピラー71とフェンダー72との隙間εを、まずフェンダーインシュレータFSで塞いで高周波音を遮音し、さらに開口セル13を塞ぐ弾性膜2の膜振動によって例えば250Hz域の音波を効果的に低減させる。基本構成は、第一に板状主部1Aと例えば共振周波数を250Hzに設定した各開口セル13を塞ぐ弾性膜2とで隙間εに蓋をして、高い周波数域の騒音を遮音する。そして、第二に一対の開口セル13を塞いだ弾性膜2に係るセル膜3に250Hz付近の低周波が当たると、セル膜3は共振し、その振動(音)エネルギーが熱エネルギーに変換されることになって、該低周波の音が弱まる吸音作用を生じさせる。また弾性膜2の共振は、一方のセル膜3と他方のセル膜3とに位相差が発生するため、ターゲットの250Hz音に干渉して打ち消す。
そして、この棒部16に取り巻き包み込んで係止する弾性膜2に係る筒部分4と、該筒部分4の両側から延在して一対の開口セル13を塞ぐ弾性膜2に係る両セル膜3と、が一体成形されたフェンダーインシュレータFSになっている。セル膜3を1.8mm厚とし、且つ板状主部1Aに、開口セル13の大きさを400mm×400mmの開口にして、該開口セル13を一対揃え、棒部16の径を2~2.5mmφとすることで、セル膜3の共振周波数を約250Hzに設定し、セル膜3で250Hz付近の低周波騒音を効果的に遮音できるフェンダーインシュレータFSになる。
図7はコンピュータ解析による車両後方側から見た弾性膜2に係る車両後方側膜面3bの解析模式図を示す。図7で、上半部が上側開口セル13を塞いで紙面手前側(車両後方側)へ凸状に膨らむセル膜3の車両後方側膜面3bを表し、下半部が下側開口セル13を塞いで紙面奥側(車両前方側)へ凸状に膨らむセル膜3の車両後方側膜面3bを表している。
また、棒部16以外の開口セル13の周縁131に、板状主部1Aから開口セル13内に張り出す内鍔14を設け、且つ弾性膜2が図9のごとく該内鍔14を挟着して開口セル周縁131に係止しているフェンダーインシュレータFSとするのがより好ましい。ハウジング1と同系素材の熱可塑性エラストマー製弾性膜2が、射出成形で開口セル13の周縁131に融着係止して成形されるが、弾性膜2の厚みは小さく(2mm程度)、該弾性膜2を開口セル周縁131へ突き合せて融着係止させるだけでは所望の結合力が得られない場合があるからである。内鍔14があれば、ハウジング1の成形後、弾性膜2の成形で、セル膜3の外周部にできる挟着部分35によって内鍔14を挟むので、融着面積が大になる。ハウジング1と同系素材の熱可塑性エラストマー製弾性膜2の融着による結合に加え、その融着面積の増大によって開口セル周縁131への弾性膜2の結合強化につながる。
尚、図9の棒部16は横断面をほぼ菱形にしている。後述の製造方法において、スライド型部65のスライドで弾性膜2を成形する際、棒部16周りの肉厚を一定にし易いためである。図中、符号1aは板状主部1Aの車両前方側表面、符号1bは板状主部1Aの車両後方側裏面、符号3aはセル膜3の車両前方側膜面、符号40は筒孔、符号41は車両前方側の筒部分、符号42は車両後方側筒部分、符号43は筒部分の筒内壁、符号75はステップアウター、符号76はエンジンフード、符号77はルーフを示す。
フェンダーインシュレータの製造方法は、車両のピラー71とフェンダー72との間で、車両に配設されるフェンダーインシュレータの製法であって、ハウジング1を射出成形した後、弾性膜2を射出成形して、ハウジング1に設けた開口部12を構成する少なくとも一対の開口セル13を、該弾性膜2で塞ぐ製法である(図9~図11)。ここでは、(1)で述べた図1~図5に示すフェンダーインシュレータFSで、一対の開口セル13を有する開口部12が二組形成されたフェンダーインシュレータFSの製造とする。但し、該開口部12は図6に代わって図9の構造になっている。
次いで、第一固定型5Aに設けた図示しないランナー,ゲートを経由して硬質樹脂材料をハウジング用キャビティC1へ注入し、ベースのハウジング1を射出成形する(図10のイ)。ピラー71とフェンダー72間を繋ぐ板状主部1Aに、開口部12を構成する一対の開口セル13間を棒部16で仕切って双方の開口セル13が近接配置された硬質樹脂製ハウジング1を射出成形する。
ハウジング用キャビティC1には、開口セル13内に張り出す内鍔14用キャビティが設けられている。ハウジング1の成形で、開口セル13内(又は開口枠15内)に張り出す内鍔14を一体成形する。ハウジング1の成形,硬化後、型開し、次いで、可動型6を別の第二固定型5Bへ移送する(図10のロ)。
その後、図11(イ)に示すランナー58,ゲート57を通って、弾性膜用キャビティC2にハウジング1と同系素材の弾性膜用熱可塑性エラストマー材料gを注入する。そうして、熱可塑性エラストマー製の膜振動可能な膜状にして、一対の開口セル13の全周縁131に係止させて両開口セル13を塞ぐセル膜3と、棒部16に取り巻き包み込んで係止する筒部分4と、が一体の弾性膜2を射出成形する(図11のロ)。このとき、内鍔14を挟着するようにして開口セル周縁131に係止する弾性膜2の挟着部分35をも一体成形する。本実施形態は、一対の開口セル13を有する開口部12が二組あるので、二組の弾性膜2を射出成形する。
弾性膜2の成形後、脱型すれば図9に示す板状主部1Aと弾性膜2とが一体化した所望のフェンダーインシュレータFSを得る。本実施形態は図10、図11の二色成形を活用してフェンダーインシュレータFSを製造したが、ハウジング1をインサート品にしてインサート成形で造ることもできる。
他の構成は(1)で述べた内容と同様で、その説明を省く。(1)と同一符号は同一又は相当部分を示す。
このように構成したフェンダーインシュレータFSは、板状主部1Aに少なくとも一対の開口セル13が近接配置され、且つ各開口セル13を弾性膜2で塞いでいるので、特許文献1,2等のインシュレータでは透過してしまった例えば250Hz付近の低周波ノイズを該弾性膜2で効果的に低減できる。
ハウジング1と開口部12を塞ぐ弾性膜2とで隙間εをシールして、高周波域の騒音を遮音する。さらに、硬質の板状主部1Aでは透過し易い250Hz付近の低周波音に対して、弾性膜2の膜振動によって低減する。本フェンダーインシュレータFSだけで、低周波音を含めた幅広い周波数音を除去できる。
そして、ヘルムホルツレゾネータを用いた場合はその容量が大きく、図12(ロ)のFR車に対応できても、前輪タイヤ8と前ドア9間の距離L1が小になる図12(イ)のFF車対応が困難になる虞があるが、本フェンダーインシュレータFSは難なく対応できる。本フェンダーインシュレータFSは車両前後方向厚みが小さいので、前輪タイヤ8と前ドア9との間隔L1が狭いFF車を含めた全車種に設置可能で、適用範囲が広い。
さらに、本フェンダーインシュレータFSは、ハウジング1を樹脂製にして、弾性膜2が該ハウジングの樹脂と同系素材の熱可塑性エラストマー製であり、図10,図11ごとくの二色成形によって両者の一体化成形ができ、生産性向上,低コスト化を実現する。
加えて、ハウジング1がオレフィン系樹脂製であると、軽くて耐熱性が比較的良好で械的強度に優れたポリプロピレン樹脂等でハウジング1を形成でき、車両用として打ってつけとなる。
このように本発明のフェンダーインシュレータFSは、上述した種々の優れた効果を発揮し、極めて有益である。
1A 板状主部
12 開口部
13 開口セル
131 開口セル周縁(開口セルの周縁)
14 内鍔
16 棒部
2 弾性膜
3 セル膜
4 筒部分
71 ピラー(車体骨格)
72 フェンダー(フロントフェンダー)
Claims (7)
- 車両のピラーとフェンダーとの間で、車両に配設されるフェンダーインシュレータにおいて、
ピラーとフェンダーとの隙間を塞ぐ形の板状体に成形され、且つ前記ピラーと前記フェンダー間を繋ぐ板状主部に、開口部を構成する少なくとも一対の開口セルが近接配置されている樹脂製のハウジングと、
前記各開口セルを塞ぐ膜振動可能な膜状にして、各開口セルの全周縁に係止し、且つ前記ハウジングの樹脂と同系素材の熱可塑性エラストマー製弾性膜と、を具備することを特徴とするフェンダーインシュレータ。 - 前記開口部を棒部で仕切って一対の前記開口セルが形成され、且つ前記板状主部の成形で、該棒部が一体成形されている請求項1記載のフェンダーインシュレータ。
- 前記棒部に取り巻き包み込んで係止する前記弾性膜に係る筒部分と、該筒部分の両側から延在して一対の前記開口セルを塞ぐ前記弾性膜に係る両セル膜と、が一体成形されている請求項2記載のフェンダーインシュレータ。
- 前記板状主部に、前記開口部が複数設けられ、且つ該開口部に前記開口セルが複数形成されている請求項2又は3に記載のフェンダーインシュレータ。
- 前記棒部以外の前記開口セルの周縁に、前記板状主部から開口セル内に張り出す内鍔が設けられ、且つ前記弾性膜が該内鍔を挟着するようにして開口セル周縁に係止している請求項2乃至4のいずれか1項に記載のフェンダーインシュレータ。
- 前記ハウジングがオレフィン系樹脂製であり、且つ前記弾性膜がオレフィン系熱可塑性エラストマー製である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフェンダーインシュレータ。
- 車両のピラーとフェンダーとの間で、車両に配設されるフェンダーインシュレータの製造方法において、
ピラーとフェンダーとの隙間を塞ぐ形の板状体にして、前記ピラーと前記フェンダー間を繋ぐ板状主部に、開口部を構成する一対の開口セル間を棒部で仕切って双方の開口セルが近接配置された樹脂製のハウジングを射出成形した後、該ハウジングと同系素材の熱可塑性エラストマー製の膜振動可能な膜状にして、一対の前記開口セルの全周縁に係止させて両開口セルを塞ぐセル膜と、前記棒部に取り巻き包み込んで係止する筒部分と、が一体の弾性膜を射出成形することを特徴とするフェンダーインシュレータの製造方法。
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