JP5605524B1 - ピザ生地およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

展延前に生地を休ませる、リタード工程を取ることなく、伸展性,作業性が良好で、且つ焼成後の食感も歯切れよいピザを提供する。
ピザ生地の製造において、水溶性大豆多糖類を添加して伸展性を向上させることで、リタード工程を取ることなく生地を薄く均一に展延することができる。さらに、口どけ，歯切れに優れた食感のピザを提供することができる。水溶性大豆多糖類の添加量は、小麦粉重量に対して0.05から５重量%が好ましく、0.1から３重量%がより好ましい。

Description

本発明は、従来よりも作業性に優れ安定して生産でき、且つ得られたピザクラストの食感も良好である、ピザ生地およびその製造方法に関するものである。

一般的にピザ生地は、小麦粉，塩，油脂などの原料に水を加えて混練し、分割，平たく圧延成型（展延）して製造される。その上にチーズや他の具材をトッピグして焼成されたものがピザ、生地に由来する部位がピザクラストである。ピザはパリっと歯切れの良い食感のクラストとするために、ミキシング工程で厚く弱いグルテン膜になるように生地が捏ね上げられる。通常のパンのように薄く強いグルテン膜にしてしまうと、このような歯切れの良い食感は得られない。

しかしながら、グルテン膜を厚く調製した生地は硬くて伸展性に欠如しており、そのため生地を展延しようとする時に、生地が損傷するといったトラブルが生じやすい。熟練した職人が手作業で展延を行う場合には微妙な力加減のコントロールができるためにそれほど大きな問題にはならないが、例えば展延ローラーのような機械を用いて薄く延ばそうとすると、生地の伸びが不十分なためにヒビ割れが生じたり、表面が荒れたりする問題があった。そのような理由から、ピザ生地を機械で展延する場合には、通常、低温条件下で30分から一晩ほど生地を熟成（寝かせ）させる、リタードといわれる工程がとられる。生地に対しリタード工程を行うことで生地の伸展性が良くなり、展延時のトラブルが減少する。

しかし、リタード工程を行うことで、機械で連続生産する場合にはライン中に、冷却に係る大掛かりな設備を必要とする。仮にリタード工程を省略化できれば、作業スペース，作業時間，エネルギーの面から大きな省力化を図ることができ、コストメリットは大きい。このために、いくつかの方法が提案されている。

特許文献１に記載されている方法は、ピザ生地にデュラム粉，米粉およびレシチンを配合するものであるが、本発明者らが検討した限りにおいては、レシチンが少ない場合には生地の伸展性が不十分であり、また伸展性を上げるためにレシチンの添加量を多くするとレシチンに由来する風味が強く出てしまうなどの問題があげられた。また、特許文献２および３は酵素を利用した技術であるが、酵素反応が温度などの影響によって振れ易く、そのため最終製品の品質が安定しない課題があった。

特開平１０−２５７８４７号公報 特開２０１０−８１８５８号公報 特開２０１１−１３５８１０号公報

ピザ生地の製造時に於いてリタード工程を省略できる、従来にない簡易な且つ効果的な方法を得ることを課題とした。

上記課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、水溶性大豆多糖類をピザ生地に添加することで、ピザ生地の伸展性が改善され、生地展延前のリタード工程を省略できる上に、食感，歯切れ，口どけが良いピザ生地が調製できることが判明し、本発明を完成させた。

即ち本発明は、
（１）水溶性大豆多糖類を含有することを特徴とする、ピザ生地。
（２）水溶性大豆多糖類の含有量が、小麦粉に対して0.05〜５重量%である、（１）記載のピザ生地。
（３）展延前にリタード工程を行わないことを特徴とする、（１）または（２）記載のピザ生地の製造方法。
である。

本発明によれば、簡便にピザ生地の伸展性を改善することで、展延前のリタード工程を省略でき、作業効率を向上させ、設備の簡素化が可能となる。さらには、焼成後の食感も歯切れや口どけが良好なピザ生地を提供することができる。

（ピザ生地）
本発明において、ピザ生地とは強力粉，中力粉、薄力粉等の小麦粉に，食塩，油脂、イーストなどの原料を添加して水を加えて捏ね上げてできたもので、さらにそれを平たく延ばす成型、すなわち展延がなされるものを指す。この展延は、捏ね上げた生地を一定の重量に分割してから展圧機等で伸ばして行う方法や、分割は行わずに先に展延した後に、適当な大きさに抜型等でくり抜く方法がある。展延成型後のピザ生地の形状は様々であるが、一般的には、円盤状あるいは小判状のものが多く使用されており、その厚みは概ね１mm〜10mm、好ましくは２mm〜５mmである。
このようにしてできたピザ生地は、焼成され，蒸され，または油調等の加熱処理をして食される。また、生地のまま、或いは加熱処理後に、冷蔵または冷凍保存することもできる。

（リタード工程）
本発明でいうリタード工程とは、低温環境下に生地を休ませることで生地の状態を展延に適したものにし、その後の操作を行いやすくするための工程を指す。生地配合や目的とする物性にもよるが、通常は、-20〜10℃の温度下に、15分間乃至は24時間生地を静置することで行う。-15〜５℃の温度下、15分〜18時間の静置が好ましい。通常、このリタード工程は展延工程の前に行うことが効果的であり、このリタード工程を省略できることが、本発明の特徴である。

（水溶性大豆多糖類）
本発明で使用できる水溶性大豆多糖類とは、大豆から抽出される水溶性の多糖類を指し、その製造方法は特に限定されるものではない。一般的には、分離大豆蛋白質を抽出した後の副産物であるオカラを原料に、これに水を加えて大豆蛋白質の等電点とされる弱酸性下且つ100℃を超える高温条件下で抽出される。抽出された水溶性大豆多糖類は、抽出ろ液をそのまま原料として使用しても良く、さらに活性炭や脱塩といった精製工程を経たものを使用しても良い。
水溶性大豆多糖類の添加量としては、小麦粉重量に対して0.05重量%以上５重量%以下が好ましく、0.1重量%以上３重量%以下がさらに好ましい。水溶性大豆多糖類の添加量が0.05重量%未満では目的とされる効果が得にくい場合があり、また５重量%より多いと生地のべちゃつきにより、その後の作業性が悪くなる傾向がみられる

本発明における水溶性大豆多糖類は、粉状，粒状，液状など様々な形態をとってもよい。水溶性大豆多糖類の添加の方法としては、他の原料に粉体混合しても良く、また予め水溶液等に添加して用いても、マーガリン等の水相側に予め溶解させたような形態で使用しても良い。

（他の機能材との併用）
本発明で使用する水溶性大豆多糖類は、他のベーカリー品質改良剤、例えば、増粘多糖，乳化剤，酵素，還元剤などと併用しても何ら差し支えはない。

（効果）
本発明は、水溶性大豆多糖類を他の原料と一緒に添加してミキシングすることにより簡便に生地の伸展性が向上し、その後にリタード工程を経なくとも展延成型することができる技術である。また本技術によれば、生地の伸展性が向上することに加えて、薄く展延した後の生地の縮みも小さくすることができ、従って均一な形状の生地を製造することも可能となる。さらには、焼成後における食感，歯切れおよび口どけに優れたピザ生地を提供できる。

以下に実施例を示し、本発明の効果を詳細に説明する。

●試験例１（生地伸展性評価）実施例１〜６，比較例１〜２
ピザ生地を簡易想定した配合（表１）により生地を調製した。すなわち、強力粉（イーグル、日本製粉）に対し、食塩（食塩、日本塩事業）1.8重量%，アスコルビン酸（アスコルビン酸、扶桑化学工業）100ppm，水溶性大豆多糖類（ソヤファイブ-S、不二製油）0.05〜５重量%，水60〜65重量%の割合でコートミキサー（AM-20、愛工舎製作所）に投入し、低速５分，中速６分、捏ね上げ温度22℃の条件でミキシングを行った。温度21℃，湿度70%条件下で10分間休ませた後、生地を150gに分割した。丸めを行いモルダーに通した後、実施例１〜６と比較例１に関してはリタード工程をとらずにすぐさまエクステンソグラフ（BRABENDER社）にかけて、延伸抵抗（R）（生地を5.0cm伸ばす時の抗張力(BU)）および延伸度（E）（切れるまで伸ばした時の生地の長さ(mm)）をそれぞれ測定した。
また、比較例２に関しては、生地を一度-２℃の低温庫内で60分間のリタード工程を行ってから、エクステンソグラフを用いて延伸抵抗（R）および延伸度（E）を測定した。測定により得られた値からR/Eをそれぞれ算出し、生地の伸展性を評価した。

（表１）生地伸展性の評価

結果を表１に示す。リタード工程を経なかったために比較例１の生地は硬く伸展性に欠如していたが、水溶性大豆多糖類を添加した実施例１乃至６については、同じくリタード工程をとらなかったにもかかわらず、生地の伸展性は良好であり、リタード工程により伸展性が回復した比較例２と比べてもその効果は十分なものであった。

●試験例２（生地安定性評価）実施例７〜１０、比較例３
表２に示した配合に従い、生地を調製した。低速５分，中速６分，高速５分、捏ね上げ温度22℃の条件にてミキシングを行った後、温度21℃、湿度70%の条件下で10分間フロアタイムをとった。生地を250gに分割後、丸めを行い、リバースシーターで５mmの厚さまで展延した。リバースシーターから出てきた直後に生地の表面に15cm間隔で２点印をつけた。４分間シーターの上で静置後、２点間の距離変化を測定した。

（表２）安定性（展延後の縮み）の評価

結果を表２に示す。実施例７〜１０が示すように、水溶性大豆多糖類を添加した生地は、比較例３に比べてリバースシーターを用いて展延した後の縮みが少なく、成型後の安定性が高いことがわかった。

●試作例（ピザ生地の調製）実施例11〜16，比較例４〜５
表３の配合に従い、ピザ生地を調製した。すなわち、強力粉に対し、食塩1.8重量%，脱脂粉乳２重量%，イースト3.2重量%，アスコルビン酸100ppm，水溶性大豆多糖類（ソヤファイブ-S、不二製油）0.1〜３重量%，水60〜63重量%の割合でコートミキサーに投入し、低速３分，中速４分，温度25℃で捏ね上げた。温度29℃，湿度70%で40分間一次発酵をとった。生地を150ｇに分割して丸めた後、実施例11〜16および比較例４はリタード工程を行わずにすぐさまリバースシーターで厚さ３mmの円盤状に展延し、比較例５は-６℃で２時間のリタード工程後に同じく展延した。各展延品を240℃のオーブンで15分間焼成した後に、比較例５を基準にして、展延時の作業性および食感をそれぞれ以下の通りに評価した。なお、食感に関しては、５人のパネラーの平均値を算出した。

（表３）ピザ生地の組成と評価

（展延時の作業性）
５：比較例５よりも、生地がよく伸び、またその後の縮みも小さいため、安定して展延できる。
４：比較例５と比べて、生地の伸びは良く、伸ばした後の縮みも少ない。展延がしやすい。
３：比較例５とほぼ同等の作業性
２：比較例５よりも、生地の伸びは悪く、伸ばした後の縮みも大きい。展延後の形状が不安定。
１：比較例５に比べて、生地が硬く伸びず、展延時に生地に損傷がみられる。
（食感）
５：非常に歯切れが良くて口どけにも優れている。
４：歯切れが良く、口どけも良好。
３：基準評価
２：歯切れ感に乏しく、口どけもあまり良くない。
１：重たくボソボソとしており口どけが悪い。

結果を表３に示す。比較例４は、丸めの後にリタード工程を行うことなく展延を行ったため、伸展性に欠如しており、展延の際に亀裂が入るなど生地損傷がみられた。また、展延後の生地の厚さにバラつきがみられ、均一な形状に展延するのが困難であった。さらに焼成後の食感もボソボソとして口どけが悪く、ピザ生地に相応しくないものであった。これに対し、実施例11〜16が示すように水溶性大豆多糖類を添加した生地は、リタード工程をとらなくても伸展性および安定性に優れており、２時間のリタード工程を行った比較例５と比較しても、作業性は良好であった。さらには、焼成後の食感も、口の中でボソボソすることなく、歯切れ，口どけに優れたピザ生地であった。

Claims (1)

1. アスコルビン酸を使用し、展延前にリタード工程を行わないことを特徴とする、R(延伸抵抗）／E(延伸度）が５〜８である、水溶性大豆多糖類の含有量が、小麦粉に対して0.1〜３重量%であるピザ生地の製造法。