JP5561205B2 - 自動車用エアバッグドア - Google Patents
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Description
接着力差発生手段による上記請求項1に記載の発明の効果は、第2領域にとどまらず、その周りの領域についても、第1領域との間で接着力差を出すための対象とした場合にも同様に得られる。しかし、この効果は、ドア表皮のうち、破断させたい箇所である第1領域での接着力を、同第1領域の周りの領域での接着力よりも低くすることで得られる。この点、第2領域(第1領域の幅方向両側においてテアラインに沿う帯状の領域)にのみ接着力差発生手段が設けられている請求項7に記載の発明では、接着力差発生手段の設けられる領域は、採り得る最少の領域となる。このため、接着力差発生手段を設けるための作業、材料等が必要最小限ですむ。
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
自動車において運転席及び助手席の前方には、図1に示すインストルメントパネル11が配置されている。インストルメントパネル11の主要部は、心材としての基材13によって構成されている。基材13のうち、後述する自動車用エアバッグドア21のドア基材27を除く箇所は、PP(ポリプロピレン)等の硬質の合成樹脂材料を用い、射出成形法によって成形されている。この基材13の助手席に近い側(図1の上側)を外側とし、遠い側(図1の下側)を内側とすると、基材13の外側には表皮14が積層されている。第1実施形態では、表皮14は、TPO(サーモプラスチックオレフィン)によって形成された表皮本体15と、ウレタンによって形成され、かつ表皮本体15の内側に溶着等の方法によって積層された発泡層16とからなる二層構造をなしている。表皮14は、発泡層16の内側の面において、オレフィン系等の接着剤により基材13に接着されている。すなわち、表皮14は基材13上に接着層17を介して積層されている。
インストルメントパネル11における基材13の一部には、同インストルメントパネル11の内外を連通させる開口部が設けられている。この開口部は、開口面積の大きな外側開口部24と、その外側開口部24よりも内側に位置し、かつ同外側開口部24よりも開口面積の小さな内側開口部25とからなる。外側開口部24と内側開口部25との間は、エアバッグ22側へ延びる係止部26となっている。
なお、テアラインの形成に係る種々のコストや生産工程の削減、さらには外観意匠の向上といった観点から、ドア表皮30には、上記ドア基材27とは異なりテアラインが形成されていない。
図2及び図3に示すように、ドア基材27の外側の面28とドア表皮30との接着に関わる箇所のうち、前記テアライン33を投影した箇所P(図3中、太い実線で示される箇所)を含み、かつ同テアライン33に沿って延びる帯状の領域を第1領域Z1とする。テアライン33と、そのテアライン33を基準として、同テアライン33の外縁から幅方向(図3では左右方向)両側へそれぞれ所定距離だけ離れた箇所との各間隔を「D」とすると、第1領域Z1の幅W1は、次式(1)で表される。
上記間隔Dは10mm〜40mmの範囲の値に設定されることが望ましく、第1実施形態では10mmに設定されている。
この接着力差発生手段は、各第2領域Z2において接着層17とドア基材27との間に形成されたプライマー層36からなる。各プライマー層36は、各第2領域Z2においてドア基材27の外側の面28の接着層17に対する接着性を改善するためのものであり、不揮発分の少ない低粘度液体をプライマー(下塗り剤)としてドア基材27に塗布することにより形成されている。この塗布された低粘度液体が充分に乾いたところで接着剤が塗り重ねられて接着層17が形成されている。使用に適するプライマーの種類は、ドア基材27の材質に応じて異なる。第1実施形態では、プライマーとしてCPO(塩素化ポリオレフィン)が用いられている。
自動車に対し前方から衝撃が加わらない通常時には、助手席用エアバッグ装置20では、インフレータ23から膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ22に供給される膨張用ガスがなく、同エアバッグ22は折り畳まれた状態に保持され続ける。
(1)ドア基材27の外側の面28とドア表皮30との接着に関わる箇所のうち、テアライン33を投影した箇所Pを含み、かつ同テアライン33に沿って延びる帯状の領域を第1領域Z1とするとともに、第1領域Z1の幅方向両側においてテアライン33に沿う帯状の領域を第2領域Z2とする。ドア基材27に対するドア表皮30の接着力を、第1領域Z1において各第2領域Z2よりも低くする接着力差発生手段を設けている(図2、図3)。
このため、プライマー層36が設けられている第2領域Z2では、同プライマー層36が設けられていない第1領域Z1よりも、接着層17のドア基材27に対する接着力を高めることができ、上記(1)の効果を得ることができる。
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図4を参照して説明する。
第2実施形態では、ドア基材27の外側の面28のうち、第1領域Z1よりも各第2領域Z2において粗く形成された箇所(以下「粗面28A」という)によって接着力差発生手段が構成されている。各粗面28Aは、図4では、太い実線で示されている。こうした粗面28Aを形成するために、第2実施形態では、ドア基材27の樹脂成形後であって、接着層17が形成される前(接着剤が塗布される前)の段階で、ドア基材27の外側の面28のうち第2領域Z2に対応する箇所が火炎に曝されている。ドア基材27の外側の面28のうち第1領域Z1に対応する箇所については火炎に曝されず、平滑面28Bとなっている。
上記構成を有する第2実施形態の自動車用エアバッグドア21では、第1領域Z1よりも各第2領域Z2においてドア基材27の外側の面28が粗く形成(粗面28Aが形成)されることで、接着層17の粗面28Aとの密着力が高められるとともに、接着面積が増大する。これらのことから、各第2領域Z2では第1領域Z1に比べ、接着層17のドア基材27に対する接着力が高められる。
(4)ドア基材27の外側の面28のうち、第1領域Z1よりも第2領域Z2において粗く形成された粗面28Aによって接着力差発生手段を構成している。
(5)各第2領域Z2においてドア基材27の外側の面28を火炎に曝すことにより、上記(4)の粗面28Aを形成している。このような簡単な方法で、ドア基材27の外側の面28の一部を粗面28Aにすることができる。
次に、本発明を具体化した第3実施形態について図5を参照して説明する。
第3実施形態では、ドア基材27の外側の面28のうち各第2領域Z2に対応する箇所は、ドア表皮30がドア基材27に接着される前に加熱されて温度が高くされた加熱面28Cとなっている。各加熱面28Cは、図5では、太い実線で示されている。これに対し、ドア基材27の外側の面28のうち第1領域Z1に対応する箇所は、加熱されず上記加熱面28Cよりも温度の低い非加熱面28Dとなっている。そして、上記加熱面28Cによって接着力差発生手段が構成されている。さらに、ドア表皮30は、第1領域Z1では非加熱面28Dにおいてドア基材27に接着され、各第2領域Z2では加熱面28Cにおいてドア基材27に接着されている。
上記構成を有する第3実施形態の自動車用エアバッグドア21では、ドア基材27の外側の面28のうち、ドア表皮30がドア基材27に接着される前には、加熱面28Cにおいて非加熱面28Dよりも温度が高くなっていて、接着剤との密着性が向上している。このため、ドア表皮30がこの加熱面28Cにおいてドア基材27に密着することで、各第2領域Z2では第1領域Z1よりも接着層17のドア基材27に対する接着力が高められる。
(6)ドア基材27の外側の面28のうち、ドア表皮30がドア基材27に接着される前に加熱されることで、第1領域Z1の非加熱面28Dよりも第2領域Z2において温度が高くされた加熱面28Cによって接着力差発生手段を構成している。
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態について図6を参照して説明する。
上記構成を有する第4実施形態の自動車用エアバッグドア21では、ドア表皮30がドア基材27に接着されていない第1領域Z1では、接着されている各第2領域Z2よりも、ドア基材27に対するドア表皮30の接着力が低くなる。
(7)各第2領域Z2において、ドア表皮30をドア基材27に接着し、第1領域Z1において、ドア表皮30をドア基材27に接着しないことによって接着力差発生手段を構成している。
<基材13について>
・基材13のうちドア基材27を除く箇所は、上記PPとは異なる材料、例えばPC(ポリカーボネート)/ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体)、ASG(ガラス繊維強化アクリロニトリル・スチレン)等によって形成されてもよい。
・テアライン33は、溝状の凹部を有することにより肉厚の小さくなった薄肉部と、凹部を有しない厚肉部とが交互に設けられたものであってもよいし、凹部を連続して1本の溝状をなすように形成したもの(薄肉部のみからなるもの)であってもよい。いずれの場合であっても、薄肉部では、凹部の分だけ厚みが薄くなり破断強度が低くなる。
・テアライン33は、平面視で、上記各実施形態(二重Y字形)とは異なる形状を有するもの、例えばH字状をなすものであってもよい。
・表皮本体15は、上記TPOとは異なる材料、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)によって形成されてもよい。
・表皮本体15に、タルク、ガラス繊維等の繊維状強化剤が含有されてもよい。こうすることにより、表皮本体15の剛性が高められて同表皮本体15が伸びにくくなり、反面破断されやすくなる。
<接着力差発生手段について>
・第2実施形態の接着力差発生手段の変更例として、火炎に曝されることに代え、第2領域Z2においてドア基材27の外側の面28にシボが入れられてもよい。
・第1〜第4実施形態の接着力差発生手段の各種内容を適宜組合わせたものを、新たな接着力差発生手段としてもよい。
Claims (8)
- 基材の外側に表皮を接着してなる自動車のインストルメントパネルの一部として形成されるものであり、
前記基材の一部を構成するドア基材と、
前記表皮の一部を構成するドア表皮と、
前記ドア基材及び前記ドア表皮のうち同ドア基材のみに形成され、かつ展開膨張するエアバッグにより押圧されたときに同ドア基材の破断の起点となるテアラインと
を備える自動車用エアバッグドアにおいて、
前記ドア基材の外側の面と前記ドア表皮との接着に関わる箇所のうち、前記テアラインを投影した箇所を含み、かつ同テアラインに沿って延びる帯状の領域を第1領域とするとともに、前記第1領域の幅方向両側において前記テアラインに沿う帯状の領域を第2領域とした場合、前記ドア基材に対する前記ドア表皮の接着力を、前記第1領域において少なくとも前記第2領域よりも低くする接着力差発生手段を設けることを特徴とする自動車用エアバッグドア。 - 前記ドア表皮は、接着層を介して前記ドア基材に接着されるものであり、
前記接着力差発生手段は、前記第2領域において前記接着層と前記ドア基材との間に形成されたプライマー層からなる請求項1に記載の自動車用エアバッグドア。 - 前記接着力差発生手段は、前記ドア基材の前記外側の面のうち、前記第1領域よりも前記第2領域において粗く形成された粗面からなる請求項1又は2に記載の自動車用エアバッグドア。
- 前記粗面は、前記第2領域において前記ドア基材の前記外側の面が火炎に曝されることにより形成されたものである請求項3に記載の自動車用エアバッグドア。
- 前記粗面は、前記第2領域において前記ドア基材の前記外側の面にシボが入れられることにより形成されたものである請求項3又は4に記載の自動車用エアバッグドア。
- 前記接着力差発生手段は、前記ドア基材の前記外側の面のうち、前記ドア表皮が前記ドア基材に接着される前に加熱されることにより、前記第1領域よりも前記第2領域において温度が高くされた加熱面からなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動車用エアバッグドア。
- 前記接着力差発生手段は、前記第2領域のみに設けられている請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動車用エアバッグドア。
- 前記第2領域では、前記ドア表皮が前記ドア基材に接着されており、
前記接着力差発生手段は、前記第1領域において前記ドア表皮を前記ドア基材に接着しないことにより、前記第2領域よりも前記第1領域において、前記ドア基材に対する前記ドア表皮の前記接着力を低くするものである請求項1〜7のいずれか1つに記載の自動車用エアバッグドア。
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