JP4215204B2 - エアバッグカバー及びその製造方法 - Google Patents
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近年急速に普及し、その配設箇所も運転席用のステアリングホイール、助手席用のインストルメントパネルだけでなく、乗員を側面部の衝撃から保護する側部用エアバッグ車体側部窓上部に配設されるようになった。
これらの中で、インストルメントパネルの下部に配設される助手席用エアバッグ装置においては、それをカバーするエアバッグカバーをインストルメントパネルとは別体として用意し、これをインストルメントパネルに設けた開口部に組みつけるというのが普通であったが、近年ではこれらを一体化してモジュール化して製造、組み立て作業の合理化を図ると共に、内装部品としてのインストルメントパネルの外観を向上させることが要望されている。
また、このようにパネル成形後にエアバッグカバー体を展開するための破断予定線を後加工することなく、成形時にこの破断予定線も形成するという成形方法の提案もされている(特開2002−234413、特許文献2)。
また、後者の成形方法は、後加工を要しない点で合理的な方法であるが、成形型内に破断予定線を形成するためのコアを進退自在に設けることが必要であり、金型も複雑となり、また成形方法も煩雑となる。
このようなタイプの内装部品として、ポリプロピレンの基材層に発泡ポリウレタンを介して表皮を設けたものがある。しかし、ポリプロピレンとポリウレタンとは接着性が劣るため、ポリプロピレンの基材層表面にプライマーを塗布した上でインサート成形によりポリウレタン表面層を成形する方法で製造されていた。
この成形法は、プライマーを使用する点で、作業性に劣り、コスト的にも不利である。
また、表皮を含まない基材層とポリウレタン表面層の2層構造とした場合においても、所定の破断特性を安定的に得るのは技術的に難しい。すなわち、本発明者は、従来技術の教示するところに基づいた種々の試行結果から、基材層に設けた弱部の真上に向かって表皮層の破断を安定的に生起させるための技術手段が必要であるとの知見を得ている。これは、エアバッグカバーが下方のエアバッグから押し上げられて破断する際に、まず、基材層に設けられた弱部で破断するが、このときポリウレタン表面層は、基材層弱部の真上で直ちに基材層とともに破断せず、基材層から剥離しつつ、かつ引き伸ばされながら破断するために、表面層に剪断力が掛かる。更にエアバッグは、均一に押し上げられるとは限らず、そのためにエアバッグカバーは段違い隆起による剪断力が掛かる場合もあり、こうした要因により所望の安定した破断特性を確実に、高い信頼性もって得ることは困難であるためと推定される。
前記エアバッグカバー破断時の衝撃力による層剥離は、従来のプライマーの塗布やウォータージェットによる粗面化処理による接着力では十分に回避することはできない。
また、本発明は、前記破断予定線に沿った所望の開裂を確実に行うことのできるインストルメントパネル一体化に好適なエアバッグカバーを製造するにあたって、成形後の加工を要せず、簡易に成形できるエアバッグカバーの製造方法を提供することを目的とするものである。
(1) 収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成する破断予定部をエアバッグ装置に面する側に有するエアバッグカバーであって、
エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層されるポリウレタン樹脂からなる軟質樹脂製の表面層を有し、
破断予定部は基材層のエアバッグ装置対向側に設けた弱部よりなる2層構造のエアバッグカバーにおいて、前記弱部に対応する基材層の表面層側部位において基材層と表面層との間に表面層とウレタン結合にて結合した接着層を有し、該弱部における基材層と表面層との間をエアバッグカバー破断時に積層状態を維持するのに十分な接着強度をもって接着していることを特徴とするエアバッグカバー、
(2) 収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成する破断予定部をエアバッグ装置に面する側に有するエアバッグカバーであって、
エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層されるポリウレタン樹脂からなる軟質樹脂製の表面層を有し、
破断予定部は基材層のエアバッグ装置対向側に設けた弱部よりなる2層構造のエアバッグカバーにおいて、前記弱部に対応する基材層の表面層側部位において基材層と表面層との間に表面層とウレタン結合にて結合した接着層を有し、該弱部に対応する基材層の表面層側部位を他の部位よりも大きな接着強度をもって基材層と表面層とが接着していることを特徴とするエアバッグカバー、
(3) 表面層の引張強度は70kgf/cm以下であり、基材層と表面層との接着強度より小である、前記(1)または前記(2)記載のエアバッグカバー、
(4) 前記弱部に対応する基材層の表面層側部位において基材層と表面層との間に表面層とウレタン結合にて結合した接着層を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載のエアバッグカバー、
(5) 表面層が反応射出成形で形成したポリウレタン、基材層がポリオレフィン材料からなる前記(1)〜(4)のいずれか1項記載のエアバッグカバー、
(6)収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成する破断予定部をエアバッグ装置に面する側に有する
エアバッグカバーの製造方法であって、
A.エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層を成形する工程、
B.基材層の少なくとも破断予定部相当位置に下記D工程で導入されるポリウレタン成形材料とウレタン結合を形成し得る遊離のイソシアネート基を有する接着剤を付与する工程、
C.基材層を金型に配置する工程、
D.金型にポリウレタン成形材料を導入し、基材層上の接着剤と接する側にポリウレタンの表面層を形成する工程とを含むエアバッグカバーの製造方法、
に関するものである。
また、本発明のエアバッグカバーは、成形後の後加工を要せずに従来の成形方法により容易に製造するすることができ、かつその成形にも複雑な金型を必要とせず、一般的な反応射出成形を利用したインサート成形で対応することができる。
基材層は、厚み2.5〜4.0mmで、比較的硬質な材料、例えばポリプロピレンをタルクなどで補強したPPC樹脂で構成することが好ましい。また、その上に積層される表面層は、厚み0.5〜2mmで、軟質の材料、例えばポリウレタンで構成することが好ましい。また、本発明においては、表面層に弱部を設けることは必要ではないが、弱部を設けない場合には表面層の強度を予め弱部を設けたものと同程度の強度としたものが好ましい。より好ましい具体例で言えば、引張り荷重70kgf/cm以下の無発泡又は比重0.8以上の微小発泡ポリウレタン樹脂である。
無論これらの材料に制限されるというものではない。要は、基材層がより硬質でエアバッグカバーとしての必要な強度を保持でき、また表面層はより軟質で、好ましくは弾性を有し、表面外観、触感を向上させる材料であればよい。この表面外観の観点からは、表面層における弱部に対応する部位をあまり薄くすると、その部位が視覚的に認識されることになるので、好ましくない。
また、基材層の表面を必要に応じて、フレーム処理、プラズマ処理等の接着力を高めるための公知の前処理を施すこともできる。
すでに述べたように、要は、基材層に表面層を破断時に層剥離を生じない十分な接着力をもって接着が可能であれば反応射出成形法に制限されることなく、予め形成した表皮を貼り合わせる等の方法によって、本発明のエアバッグカバーを製造することもできる。
本発明のエアバッグカバーにおける破断予定線は、エアバッグカバーの扉部の形状に従い、片開き扉の場合にはコの字型、両開き扉の場合にはH型の形に設けることができる。
本発明のエアバッグカバーは特にインストルメントパネル一体化に好適であるが、これに制限されるものではない。
図1は、一体に成形したエアバッグカバーを搭載したインストルメントパネルの斜視図である。図1中、Bはその裏面に設けた破断予定線で、AとCとは開裂する扉のヒンジ部を形成する。図2は、図1の矢印を付した箇所の断面説明図であり、図3は図2に示す弱部の詳細図であって、本発明のエアバッグカバーの破断予定線を形成する溝部周辺の構造を説明する断面説明図である。
図2、3において、1はあらかじめ射出成形された基材層でタルクを添加して強度を上げたポリプロピレン樹脂で構成されている。2は基材層に設けた有底の弱部であり、この弱部に対応する部位には遊離のイソシアネート基を有するポリウレタン系接着剤が塗布されている(塗布面は図3において有底の弱部2のセンター対応部位を中心に40mm幅、すなわち左右に20mm幅であり、両側の隆起部を少し越える範囲まで塗布される)。3は無発泡ポリウレタン樹脂からなる表面層で、該ポリウレタンは平均分子量2000〜6000のポリオールとイソシアネートからなる成形材料を使用し、イソシアネートはMDI、例えばポリオール変性MDIと非変性MDIを1:1の重量比で混合したものを用い、インサートされた前記基材上に反応射出成形で積層成形され、かつ前記接着剤との間でウレタン結合により破断時においてもこの間で層剥離が生じないように強く接着されている。4は表面層隆起部を示す。こうした隆起部を設けることにより、エアバッグカバーが段違いに隆起するような場合であっても、破断部位の位置ずれを極力抑制することでき、実質上破断予定線どおりに開裂することができる。この場合、より一層所望の破断特性を得るために図3に示すような構成において、基材層の弱部を表面層側に突きだし、表面層を薄肉とすることもできる。
なお、表面層の隆起部4は、弱部に沿って、連続的に設けても、また、適宜間隔をあけて間欠的に設けてもよく、さらに弱部の両側に、また片側だけに設けることもできる。
2:弱部
3:表面層
4:表面層隆起部
Claims (5)
- 収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成する破断予定部をエアバッグ装置に面する側に有するエアバッグカバーであって、
エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層されるポリウレタン樹脂からなる軟質樹脂製の表面層を有し、
破断予定部は基材層のエアバッグ装置対向側に設けた弱部よりなる2層構造のエアバッグカバーにおいて、前記弱部に対応する基材層の表面層側部位において基材層と表面層との間に表面層とウレタン結合にて結合した接着層を有し、該弱部における基材層と表面層との間をエアバッグカバー破断時に積層状態を維持するのに十分な接着強度をもって接着していることを特徴とするエアバッグカバー。 - 収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成する破断予定部をエアバッグ装置に面する側に有するエアバッグカバーであって、
エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層されるポリウレタン樹脂からなる軟質樹脂製の表面層を有し、
破断予定部は基材層のエアバッグ装置対向側に設けた弱部よりなる2層構造のエアバッグカバーにおいて、前記弱部に対応する基材層の表面層側部位において基材層と表面層との間に表面層とウレタン結合にて結合した接着層を有し、該弱部に対応する基材層の表面層側部位を他の部位よりも大きな接着強度をもって基材層と表面層とが接着していることを特徴とするエアバッグカバー。 - 表面層の引張強度は70kgf/cm以下であり、基材層と表面層との接着強度より小である、請求項1または請求項2記載のエアバッグカバー。
- 表面層が反応射出成形で形成したポリウレタン、基材層がポリオレフィン材料からなる請求項1〜3のいずれか1項記載のエアバッグカバー。
- 収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成する破断予定部をエアバッグ装置に面する側に有するエアバッグカバーの製造方法であって、
A.エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層を成形する工程、
B.基材層の少なくとも破断予定部相当位置に下記D工程で導入されるポリウレタン成形材料とウレタン結合を形成し得る遊離のイソシアネート基を有する接着剤を付与する工程、
C.基材層を金型に配置する工程、
D.金型にポリウレタン成形材料を導入し、基材層上の接着剤と接する側にポリウレタンの表面層を形成する工程とを含むエアバッグカバーの製造方法。
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