JP4082279B2 - エアバッグ装置用自動車内装品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ飛び出しのための蓋体部を備えたエアバッグ装置用自動車内装品に関する。
【0002】
以下、エアバッグ装置用自動車内装品として、主としてエアバッグ装置を装着するインストルメントパネル(以下「インパネ」と記す。)を例に採り説明するが、その他、エアバッグ装置を装着するサイドドア、ピラー、フロント・バックシート等の自動車内装品にも本発明は適用可能である。
【0003】
【背景技術】
エアバッグ装置を装着するインパネ(自動車内装品)として、インパネ本体が、内側層と外側層とを備えた複層構造のものがある。
【0004】
そして、複層構造のインパネ本体において、エアバッグの展開性能を確保する見地から、内側層、さらには、外側層に形態的に工夫を施したものが、特許文献1・2等において提案されている。
【0005】
特許文献1には、基材(内側層)の裏面側から形成された脆弱部(テアライン溝)に対応させて表皮(外側層)に脆弱部(薄肉部)を設けたインパネが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、蓋体部(リッド)のヒンジ部を除いた三辺における端縁にパッドに食い込むように突出しリッドが開いたとき対向するパッド及び表皮を破裂するカッター部を突設したものが記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−78756号公報
【特許文献2】
実開平5−3056号公報
【0008】
【発明の開示】
本発明の目的は、エアバッグ蓋体部の新規な展開構造(破断構造)を備えたエアバッグ装置用自動車内装品を提供することにある。
本発明に係るエアバッグ装置用自動車内装品は、エアバッグ飛び出しのための両開きの蓋体部を備えたエアバッグ装置用自動車内装品であって、少なくとも蓋体部が、エアバッグの膨出時に該エアバッグに当接する内側層と、該内側層の外側に接する外側層とを備え、
内側層が、エアバッグの当接側に先端鋭角状断面を有して先端が破断起点部とされる連続又は不連続のテアライン溝を備えるとともに、該テアライン溝の一方側へオフセットした位置で外側層との当接面側に凸条を備え、
凸条の側縁(立ち上がり位置)が角状に形成されて応力集中点部とされ、凸条の側縁とテアライン溝の先端 ( 破断起点部 ) との直線距離が内側層の肉厚より小さくなるように形成されているエアバッグ装置用自動車内装品において、
凸条の横断面が略三角形であり、凸条の側縁とテアライン溝の先端とを結ぶ直線の延長線上に、凸条の一方の斜辺が重合して位置することを特徴とする。
【0011】
内側層の外側層との当接面側に該テアライン溝とオフセットした位置に外側層との当接面側に凸条を備え、凸条に形成された応力集中点部(角状の側縁)とテアライン溝の破断起点部(先端部)との直線距離が内側層の肉厚より小さいため、破断起点部で発生した亀裂が最短距離を確実に伝播し(走り)、内側層の破断完了時間が短くなる。そして、通常、外側層は内側層より格段に破断強度が小さい。したがって、蓋体部の展開性能が向上する。なお、応力集中点部(角状側縁)を有する凸条がテアライン溝からオフセットしていないと、すなわち、平面同一軸線状にあると、テアライン溝の破断起点(鋭角状先端)との距離が略同一となり、両側へ破断が発生し易く、破断伝播が抑制されるおそれがある。これに対して、オフセットしていると、凸条の応力集中点部が一方の側縁に定まり、破断伝播が抑制されるおそれがない。凸条の横断面が略三角形であり、前記凸条の側縁と前記テアライン溝の先端とを結ぶ直線の延長線上に、凸条の一方の斜辺が重合して位置するため、内側層(基体層)の破断伝播方向と、外側層(クッション層)において亀裂が伝播する方向(横断面略三角形状の凸条の一方の斜面)とが同一直線上に並んで、亀裂伝播が安定し、クッション層の破断が円滑に行われる。
【0012】
上記構成において、テアライン溝の横断面を略三角形とし、該三角形における一方の斜辺の延長線上に応力集中点部を位置させるようにすることが望ましい。破断力作用線上に応力集中点部が存在する結果となり、破断伝播がより円滑になることが期待できる。したがって、蓋体部の展開性能の更なる向上が期待できる。
【0013】
上記各構成において、内側層と外側層とを同一成形材料で形成した場合は、内側層と外側層との射出成形時の融着が良好となる。
【0014】
上記各構成で、外側層をRIMウレタン等で反応射出成形する場合は、反応射出成形の成形サイクルが短いことに起因する生産性の増大が期待できる。
【0015】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態について、図例に基づいて説明をする。
【0016】
エアバッグ飛び出しのための蓋体部を備えた自動車内装品として、図1に示すようなインパネ12における、エアバッグ装置Mの組付け部位(図1の2−2線部位)におけるエアバッグ蓋体部14の構成が、図2に示すような構成のものに適用する場合を例に採り説明をする。
【0017】
すなわち、クッション層(外側層)16と基体層(内側層)18とを備えている。基体層18は、基体蓋体部(通常、軟質樹脂製)22と基体本体部(通常、硬質樹脂製)23とが射出成形により融着一体化されている構成である。
【0018】
そして、基体蓋体部22は、裏面側に左・右ヒンジ溝24、26及びテアライン溝28を備え、それらのテアライン溝28及びヒンジ溝24、26で区画されている構成で、該ヒンジ溝24、26をヒンジ中心として、上部へ回動可能な構成とされている。
【0019】
通常、エアバッグ本体30は、エアバッグ装置Mが作動して自動車内装品に形成されたエアバッグ用蓋体部におけるテアライン部Tを破断することにより車室内乗員側へ開いて膨出するようになっている。
【0020】
上記インパネ12において、基体層(内側層)18には、図例では、三角形のテアライン溝28が形成されている。ここで、テアライン溝28の形成態様は、連続状でもミシン目(ステッチ)等の非連続状でもよい。また、テアライン溝28の断面形状は、通常、図例の如く、先端鋭角状の三角形とするが、確実な破断起点部が存在するなら、半円、矩形、台形、逆U字形、さらには、実質的に隙間を有しない切れ込み(スリット)であってもよい。なお、テアライン溝28における断面三角形の頂角の角度は、通常、30〜90°とする。
【0021】
そして、基体層(内側層)18に形成したテアライン溝28からオフセットした(ずれた)位置で、基体層(内側層)18のクッション層(外側層)16との当接面側に凸条32(32A)を形成してある(図3・4参照)。そして凸条32(32A)はその両側縁が角状とされ応力集中点部32aを形成している。
【0022】
なお、図例では、凸条32のオフセットの形態は、テアライン溝28の鋭角状先端(破断起点部)28aが、凸条32の両側縁(応力集中点部)の外側にくるものであるが、凸条32の両側縁(応力集中点部)の内側にくる構成としてもよい。
図例では、テアライン溝28の断面である三角形における一方の斜辺の延長線Lの上に凸条32の一側縁(応力集中点部)32aがくるようになっている。
【0023】
この構成とした場合は、破断力の作用線上に応力集中点部32aがくるため、基材層(内側層)18の亀裂伝播がより円滑となる。
【0024】
そして、図例では、凸条32が先端鋭角状であるため、凸条32の先端がクッション層16を突き切る結果、クッション層16の破断もより迅速に行なわれる。しかし、凸条32の先端が鋭角状(エッジ状)であるため、凸条先端の残肉量が少ないと、表面側から触ったとき違和感が発生し易い。すなわち、触感的に凸条32の存在が表面側に顕現し易い。
【0025】
なお、図4に示す如く、テアライン溝28の断面三角形における一方の斜辺の延長線L上に凸条32Aの一側縁(応力集中点部)32aがこなくても、テアライン溝28の頂部(破断起点部)28aから凸条32の近い方の一側縁(図例では左側:応力集中点部)32aのまでの距離が基体層(内側層)18の肉厚より短ければよい。また、凸条32Aの断面形状も、上記の如く、三角形である必然性はなく、図例の如く、半円状、さらには、矩形、台形、逆U字形等任意である。半円状としたときは、上記先端鋭角とした場合のような触感不良が発生するおそれがない。
【0026】
なお、凸条32(32A)は、テアライン溝28の場合と同様、連続状でも不連続状であってもよく、
上記において、テアライン溝28の深さは、基体層18の材質、厚さおよび溝形態により異なるが、材質:オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、基体層厚さ:1〜5mmで、残肉厚t1:連続溝の場合0.1〜2mm、ミシン目(ステッチ)等の不連続溝の場合0〜2mmとする。連続溝では、残存肉厚0では、テアライン部の強度を確保し難くなる。
【0027】
また、凸条32の高さは、特に限定されず、応力集中点部32aを形成可能な大きさ、たとえば、1mm以上であればよく、かつ、凸条32、32Aの存在が、視覚的若しくは触感的に表面(意匠面)側に顕現しない残肉厚とする。具体的には、残肉厚t2:0.1〜2mmとする。このとき、残肉厚が少ない方が、外側層であるクッション層16の破断に際して、基体層18の凸条32、32Aとクッション層の界面に亀裂が伝播した後、クッション層16の残肉部が破断するため、亀裂伝播が安定し、結果的にクッション層16の破断が円滑に行なわれる。この見地からは、残肉厚は0.1〜0.5mmが望ましい。
【0031】
なお、凸条32、32A及びテアライン溝34の双方をミシン目等の非連続状とする場合、応力集中点部と破断起点部の直線距離が、内側層の肉厚より小さくなる結果となれば、必ずしも、凸条32、32Aとテアライン溝28とは完全に一致(対応)している必要はなく、シフトしていたり、交互に形成されていたりしてもよい。
【0032】
また、上記各実施形態においては、内側層:軟質樹脂、外側層:クッション層(表皮一体発泡層)としたが、組み合わせは、軟質樹脂/軟質樹脂、硬質樹脂/軟質樹脂、又は硬質樹脂/硬質樹脂のいずれでもよい。
【0033】
硬質樹脂としては、PPT(タルク充填ポリプロピレン)、PPC(カーボン充填ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)/ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体)、PC(ポリカーボネート)、ASG(ガラス繊維充填アリル)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン三元共重合体)、PPE(ポリフェニレンエーテル)等を挙げることができる。これらの硬質樹脂の中、軽量化等の見地から、無機充填剤で強化した結晶性ポリオレフィン系樹脂(例えば、PPT)が好ましい。
【0034】
また、軟質樹脂としては、PVC、軽量化の見地から、上記発泡ポリウレタンクッション層以外に、オレフィン系(TPO)、1,2−PB系(RB)、スチレン系(TPS)等の非極性熱可塑性エラストマーを好適に使用できるが、ポリエステル系(TPEE)、アミド系(TPA)、ウレタン系(TPU)等の極性熱可塑性エラストマーも使用可能である。
【0035】
上記において、基体層(内側層)18とクッション層(外側層)16とを融着させる場合は、非極性樹脂相互又は極性樹脂相互の組み合わせとすることが望ましいが、両層を接着剤結合させたり、機械的結合させたりする場合は、非極性樹脂/極性樹脂の組み合わせであってもよい。
【0036】
なお、成形に際して、各層における、テアライン溝、凸条の残肉厚が小さいときは、材料流れの問題が発生し易いため、流動性の良好な成形材料を使用することが望ましい。
【0038】
次に、上記構成のインパネは、汎用の複層構造のインパネと同様にして製造する。
【0039】
例えば、図2に示す場合は、基体蓋体部22と基体本体部23とを二色成形後、基体層18をインサートとしてクッション層16を発泡ウレタンRIMで成形して製造する。
【0040】
他に、表皮インモールド成形、別体物を接着剤で又は機械的結合で一体化させる等任意である。
【0041】
こうして製造したインパネは、従来と同様にして、エアバッグ装置Mを組み付け、実車に装着して使用をする。
【0042】
エアバッグ装置Mは、基本的には、バッグ本体30と、該バッグ本体30に膨張ガスを流入させるインフレータ36と、それらの部材を一体化させるバッグケース38とからなる。バッグケース38は、インフレ―タ36を保持し、バッグ本体30内に膨張ガス流入をガイドするディフューザ缶40が一体化されている。
【0043】
そして、バッグケース38の前・後壁38a、38bに、基体層18の裏面に形成された前・後取付け壁20A、20Bを挿入係合させて、エアバッグアセンブリとし、図示しないブラケットを介して車体(実車)に装着する。
【0044】
そして、車体に所定値以上の衝撃荷重が作用すると、バッグ蓋体部14のテアライン部Tが下記の如く破断して、蓋体部が開いてエアバッグ30が迅速に膨張展開する。
【0045】
まず、バッグ本体30が、膨張することにより基体20を裏側(下面)から押圧する。この結果、基体20におけるテアライン溝28の底部(頂部)に応力が集中して、テアライン溝28の頂部28aが破断起点となり、凸条32、32Aで、外側層16との接触面側に形成された応力集中点部32aに亀裂が伝播する。そして、凸条32(又は32A)とクッション層16の界面に沿って亀裂が頂部32b又は頂部近くまで伝播し、該頂部32bがクッション層の破断起点となり、その勢いでクッション層16の残肉厚部が上方に向かって破断する。
【0046】
他方、凸条34で応力集中点部34aを形成した場合は、応力集中点部34aがクッション層16の破断起点となり、略上方に向かって亀裂が伝播してクッション層16の破断が完了する。
【0047】
なお、上記では蓋体部14が観音開きの場合を例に採り説明したが、片開きの場合でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する蓋体部付きインストルメントパネルを示す全体斜視図
【図2】図1における2−2線概略断面図
【図3】本発明の内側層の外側層との接触面側に凸条を形成して応力集中点部を形成した一例を示す要部断面図
【図4】同じく他の例を示す要部断面図
【符号の説明】
12 インストルメントパネル(インパネ)
14 エアバッグ蓋体部
16 インパネ表皮(外側層)
18 クッション層(内側層)
28 テアライン溝
28a 鋭角状先端(破断起点部)
32、32A 凸条
32a 応力集中点部(凸条の一側縁)
Claims (5)
- エアバッグ飛び出しのための両開きの蓋体部を備えたエアバッグ装置用自動車内装品であって、
少なくとも前記蓋体部が、エアバッグの膨出時に該エアバッグに当接する内側層と、該内側層の外側に接する外側層とを備え、
前記内側層が、前記エアバッグの当接側に先端鋭角状断面を有して先端が破断起点部とされる連続又は不連続のテアライン溝を備えるとともに、該テアライン溝の一方側へオフセットした位置で前記外側層との当接面側に凸条を備え、
前記凸条の側縁(立ち上がり位置)が角状に形成されて応力集中点部とされ、前記凸条の側縁と前記テアライン溝の先端との直線距離が前記内側層の肉厚より小さくなるように形成されているエアバッグ装置用自動車内装品において、
前記凸条の横断面が略三角形であり、前記凸条の側縁と前記テアライン溝の先端(破断起点部)とを結ぶ直線の延長線上に、前記凸条の一方の斜辺が重合して位置することを特徴とするエアバッグ装置用自動車内装品。 - 前記テアライン溝の横断面が略三角形であり、該三角形における一方の斜辺の延長線上に前記凸条の側縁が位置することを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置用自動車内装品。
- 前記内側層と外側層とが同一成形材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のエアバッグ装置用自動車内装品。
- 前記外側層が反応射出成形されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載のエアバッグ装置用自動車内装品。
- 前記テアライン溝の深さが、前記内側層厚さ: 1 〜 5 mmで連続溝の場合 0.1 〜 2 mmとされ、不連続溝の場合: 0 〜 2 mmとされ、また、前記凸条の高さが前記外側層の残肉厚: 0.1 〜 2 mmを有して1mm以上とされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一記載のエアバッグ装置用自動車内装品。
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