JP5560436B2 - MnZnNi系フェライト - Google Patents

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Description

本発明は、エネルギー鉄損の少ないMnZnNi系フェライトに関し、特に、スイッチング電源用トランス等の磁心に用いて好適な、140℃より高い温度域で高い飽和磁束密度と低い鉄損を示すMnZnNi系フェライトに関するものである。
酸化物磁性材料は、一般に「フェライト」と総称されている。このフェライトは、Ba系フェライトやSr系フェライト等の硬質磁性材料と、MnZn系フェライトやNiZn系フェライト等の軟質磁性材料とに分けられる。このうち、軟質磁性材料は、わずかな磁場に対しても容易に磁化する材料であるため、電源機器や通信機器、計測制御機器、磁気記録、コンピュータなどの広い分野で用いられている。この軟磁性材料に要求される特性としては、保磁力が小さく、透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大きく、低鉄損であることなどが挙げられる。
また、軟磁性材料には、上記酸化物系のフェライト以外に、金属系の材料がある。この金属系軟磁性材料は、酸化物系のものと比べて飽和磁束密度が高いという特長を有する反面、電気抵抗が小さいため、高周波領域で使用する場合には、発生する渦電流に起因して鉄損が大きくなってしまうという問題がある。そのため、電子機器の小型化・高密度化の要請から使用周波数の高周波化が進んでいる近年においては、100kHz程度の高周波数帯域において用いられるスイッチング電源等には、金属系磁性材料を用いることはほとんど不可能となってきている。
このような背景から、従来、高周波数帯域で用いられる電源用トランスの磁心材料には、鉄損の小さい(発熱の少ない)MnZn系フェライトが用いられてきた。しかし、この材料も、電気抵抗率が0.01〜0.05Ω・m程度と低いため、さらに電気抵抗を高めて渦電流損を低減することにより、全体としての鉄損を低くして発熱量を抑えた磁性材料の開発が望まれていた。
この要求に対しては、例えば、特許文献1には、MnZn系フェライトに、副成分としてSiOやCaOなどの酸化物成分を微量添加し、粒界に偏析させ、粒界抵抗を高めることにより、全体としての抵抗率を数Ω・m以上として、発熱を抑制する技術が開示されている。
また、フェライトを電源用トランスに使用する際に考慮しなければならないことは、フェライトが組み込まれた機器の使用時における温度(動作温度)と、フェライト自体の鉄損に起因した発熱による温度上昇である。例えば、フェライトの鉄損が極小となる温度(以降、「鉄損極小温度」ともいう。)が室温付近にある場合には、発熱によって磁心の温度が上昇すると、鉄損が上昇し、それに伴ってさらに発熱が大きくなり、これが繰り返されて温度上昇が加速する、いわゆる熱暴走を起こす危険性があるからである。
従来、トランスの動作温度は50〜70℃付近であった。そこで、従来のフェライトは、上記熱暴走の危険性を回避するために、鉄損極小温度を約100℃に設定し、室温付近における鉄損の温度係数を負として、温度が上昇した場合には鉄損が減少するような材料設計がなされていた。しかし、鉄損極小温度が100℃程度では、何らかの原因で100℃以上に温度が上昇した場合には、やはり鉄損は増大して熱暴走を起こす危険性がある。
さらに、最近では、電子機器の小型化に対応するため、電子部品の積載密度が高度化しており、使用時の発熱による温度上昇がより大きくなる傾向にある。その結果、最近の電子部品は、100℃を超えて、120〜140℃、さらには150℃といった、これまで想定していなかった高温度域で使用される場合も出てきている。したがって、設計上の鉄損極小温度を、これまでの100℃付近から、140℃以上、好ましくは150℃程度まで上げることが検討されている。そのためには、フェライトコアの鉄損の温度依存性も、これらの設計変更に対応させてやる必要がある。
というのは、高温度域で動作させるべく、鉄損極小温度を140℃以上にした場合、一般には、温度の上昇に伴って飽和磁束密度が減少するため、トランス稼動時の磁束密度を従来の100℃程度で設計していたときの値を確保できなくなるという問題がある。例えば、従来のトランス用低損失材の100℃における飽和磁束密度は、汎用材で390〜400mT程度であるが、150℃の温度では、350mT程度以下まで低下する。したがって、その分、コアの形状を大きくしてやるなどの設計変更が必要となり、製造コストの上昇を招いていた。
したがって、140℃以上で使用されるフェライトの場合にも、飽和磁束密度の値は、鉄損極小温度を100℃で設計していた従来のフェライトと同じ、375mT程度以上であることが強く求められている。さらに、140℃以上の高温度で安定して稼働するためには、キュリー温度も、従来材と同じレベルである220℃程度以上であることが要求されている。
ところで、フェライトの鉄損を支配する因子の1つに、磁気異方性定数Kがある。鉄損は、この磁気異方性定数Kの温度変化にともなって変化し、K=0となる温度で極小となる。したがって、鉄損の温度依存性を変えるには、磁気異方性定数Kの温度依存性(鉄損温度係数)とその絶対値を変えてやることが必要となる。
磁気異方性定数Kは、フェライトの主相であるスピネル化合物を構成する元素の種類によりほぼ決定され、MnZn系フェライトの場合、Coイオンを導入することによりその温度依存性を小さくし、鉄損温度係数の絶対値を小さくすることができる(例えば、非特許文献1および2参照)。これにより、100℃付近での鉄損が小さく、かつ、その前後の温度範囲でも鉄損が比較的小さい材料を得ることができる。しかし、CoOを加えることにより、鉄損極小温度が低下したり、あるいは、焼成温度や焼成雰囲気の酸素濃度の僅かな変動によって、鉄損温度係数や極小温度が大きく変動したりするという別の問題が発生する。
そこで、例えば、特許文献2には、Fe,ZnO,MnOを主成分とし、CoOを0.01mol%以上0.5mol%未満添加したMnZnCo系フェライトにおいては、従来よりも広い温度範囲でK=0となり、高い透磁率と低い損失が広い温度範囲で実現できる技術が開示されている。しかし、特許文献2に記載されたフェライトは、同文献の第1図に示されているように、コア損失の極小温度が大きく低温度側に移行しているため、近年における140℃以上の高い動作温度では、温度上昇が加速して熱暴走を起こす危険性が解消されているとは言えない。
特公昭36−002283号公報 特公平04−033755号公報
「The effect of cobalt substitutions on some properties of manganese zinc ferrites」、A.D.Giles and F.F.Westendorp:J.Phys.D:Appl.Phys、9(1976)2117 「Low−Loss Power Ferrites for Frequencies up to 500kHz」、T.G.W.Stijintjes and J.J.Roelofsma;Adv.Cer.16(1986)493
上記のように、従来のフェライトは、いずれも電力損失の最小値を示す鉄損極小温度が100℃以下であり、140℃以上の高温度域に鉄損極小温度があるものは開示されていない。また、鉄損極小温度が100℃以上に高くなればなるほど飽和磁束密度が減少するため、その鉄損極小温度での鉄損値が増大する。そのため、100℃以上での熱暴走は抑えられても、肝心の損失値が大きくなるので、発熱問題は依然として解決されていない状況にある。
そこで、本発明は、最近の電子部品が、100℃を大きく超えて、これまで想定していなかった150℃といった高温度域で使用されるようになってきた状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、140〜160℃の温度範囲に鉄損極小値が存在し、かつ、150℃における飽和磁束密度が高く、鉄損値も低いMnZnNi系フェライトを提供することにある。
発明者らは、従来技術が抱える上記問題点を解決するため、MnZn系フェライトの基本成分であるMnO,ZnOおよびFeの含有量が、鉄損とその極小温度に及ぼす影響について調査すると共に、磁気特性改善のために添加している種々の金属酸化物が、140℃以上の温度域における飽和磁束密度と鉄損に及ぼす影響について鋭意研究を重ねた。その結果、MnO,ZnOおよびFeの基本成分に加えてさらにNiOを基本成分として加えて、それらの組成範囲を適正化した上で、さらに、添加成分としてSiO,CaOおよびNbを適正量添加することにより、鉄損の極小温度を高温側に移行させ、かつ飽和磁束密度を高めることができること、そして、これにさらに添加成分として、WOおよびMoOのうちから選ばれる1種または2種以上を適正量添加することにより、より安定して140℃以上の高温度域で高飽和磁束密度と低損失を実現したフェライトを得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、Fe:52.0〜53.5mol%、ZnO:5.0〜10.0mol%、NiO:0.08〜0.16mol%、残部がMnOおよび不可避的不純物からなる基本成分組成を有するMnZnNi系フェライトにおいて、上記FeとZnOが下記(1)式;
270.0≦5Fe+ZnO≦272.5 ・・・(1)
(ここで、Fe,ZnOは、それぞれの基本成分の組成(mol%)を表す。)
を満たして含有し、添加成分として、当該フェライトに対してSiO:50〜500massppm、CaO:1310〜1910massppm、Nb:50〜500massppmを含有し、さらに、WOおよびMoOのうちから選ばれる1種または2種を合計:200〜2000massppm含有し、150℃、磁化力1200A/mにおける飽和磁束密度が375mT以上で、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定したときの鉄損極小温度が140〜160℃の範囲にあり、150℃における鉄損が450kW/m 以下であることを特徴とする、140℃以上の温度で低鉄損を示すMnZnNi系フェライトである。
本発明によれば、100℃以上の高温域、特に140〜160℃の温度域で飽和磁束密度が高く、かつ、鉄損が低いMnZnNi系フェライトを提供することができる。斯かる特性を有する本発明のMnZnNi系フェライトは、動作温度が高温化したスイッチング電源のトランスコア材等に好適に用いることができる。
ZnO量およびFe量と飽和磁束密度との関係を示すグラフである。
本発明のMnZnNi系フェライトは、飽和磁束密度、鉄損極小温度およびキュリー温度を最適化する観点から、その基本成分組成は、Fe:52.0〜53.5mol%、ZnO:5.0〜10.0mol%、NiO:0.08〜0.16mol%、残部MnOであり、さらに、FeとZnOが、下記(1)式;
270.0≦5Fe+ZnO≦272.5 ・・・(1)
ここで、Fe,ZnOは、それぞれの基本成分の組成(mol%)を表す。
を満たして含有するものである。
上記範囲に制限する理由について、以下に具体的に説明する。
Fe:52.0〜53.5mol%
Feは、添加量が少ないほど鉄損極小値が高温となるが、鉄損を低減させる観点から52.0mol%以上とする必要がある。一方、Feの含有量が多くなると、鉄損極小温度140℃以上を実現するためには、ZnOの含有量を少なくする必要があり、Feが53.5mol%を超えると、ZnOは5mol%以下となってしまい、飽和磁束密度が低下して本発明が目的とする値を得ることができなくなる。よって、Feは52.0〜53.5mol%の範囲とする。好ましくは、52.1〜52.9mol%の範囲である。
ZnO:5.0〜10.0mol%
ZnOは、キュリー温度を220℃以上とする観点から、5.0〜10.0mol%の範囲とする必要がある。軟磁性フェライトに求められる磁気特性としては、前述したように、飽和磁束密度が大きいこと、キュリー温度が高いこと、鉄損が小さいことおよび透磁率が高いことが挙げられる。このうち、飽和磁束密度、キュリー温度は、基本成分であるFe,ZnO,MnOの比でほぼ決定される。ZnOの含有量が比較的少ない領域においては、ZnOが増加するのにともなって、キュリー温度は低下する。したがって、140℃以上の高温域で、飽和磁束密度を高く維持し、かつ、安定してフェライトを動作させるには、キュリー温度を従来材レベルの220℃程度以上に高くすることが重要である。しかし、ZnOが5.0mol%未満では、キュリー点は220℃以上に高くできるが、150℃における飽和磁束密度が375mT以下まで低下してしまう。一方、10.0mol%を超えると、キュリー温度を220℃以上とするために、Feの含有量を増やす必要があり、鉄損極小温度を140℃以上とすることができなくなる。よって、キュリー点を220℃以上、150℃での飽和磁束密度を375mT以上とし、さらに、鉄損極小温度を140〜160℃の範囲とするため、ZnOは5.0〜10.0mol%の範囲とする。好ましくは、5.5〜8.5mol%の範囲である。
5Fe+ZnO:270.0〜272.5(mol%)
上述したように、FeとZnOは、相互に影響し合っており、それらの含有量は、キュリー点を220℃以上、150℃での飽和磁束密度を375mT以上とし、さらに、鉄損極小温度を140〜160℃の範囲とする観点から決定される必要がある。それらの特性をより安定して実現するためには、FeとZnOは、上記範囲で含有していることに加えて、下記(1)式;
270.0≦5Fe+ZnO≦272.5 ・・・(1)
(ここで、Fe,ZnOは、それぞれの基本成分の組成(mol%)を表す。)
を満たして含有している必要があることを新たに見出した。
NiO:0.08〜0.16mol%
NiOは、MnZn系フェライトのスピネル相を構成し、ZnO,MnOとともに磁気異方性に影響し、高温で高飽和磁束密度と低損失を実現するのに有効な成分である。特に、鉄損極小温度を140℃以上とし、150℃での高い飽和磁束密度を実現するには、先述した基本成分のFeとZnOに加えてさらに、基本成分としてNiOを0.08〜0.16mol%の範囲で添加することが有効である。0.08mol%未満では、上記効果は発現せず、一方、0.16mol%を超える添加は、鉄損の増大を招くからである。好ましくは、0.09〜0.14mol%の範囲である。
MnO:基本成分の残部
本発明のフェライトは、Fe−ZnO−MnO−NiOの四元系フェライトであり、上記Fe,ZnO,NiO以外の残部基本成分は、MnOである。
本発明の、フェライトは、上記基本成分のほかに、下記の添加成分を含有することが必要である。すなわち、本発明のフェライトの基本成分であるFe,ZnO,MnO,NiOは、スピネル構造を形成するものであり、これにスピネルを形成しないSiO,CaO,Ta,ZrO,Nb等の添加成分を微量加えることにより、100℃以上の高温でも鉄損の少ない高性能なMnZnNi系フェライトを得ることができる。中でも、SiO,CaO,Nbの複合添加は効果的であり、その作用は以下の通りである。
SiO:50〜500massppm
SiOは、CaOとともに粒界に高抵抗相を形成して、鉄損を低減するのに寄与する。しかし、SiOの添加量が50massppm未満ではその効果は小さく、一方、500massppmを超えて添加すると、焼結時に異常粒成長を起こして鉄損を大幅に増大させるおそれがある。よって、SiOは、50〜500massppmの範囲で添加する。安定して低損失を実現するには50〜300massppmの範囲が好ましい。
CaO:200〜2000massppm
CaOは、SiOと共存した場合には、粒界に高抵抗相を形成して、低鉄損化に寄与する。しかし、CaOの添加量が200massppmより少ないとその効果が小さく、一方、2000massppmを超えると、逆に鉄損は増大してしまう。よって、CaOは、200〜2000massppmの範囲で添加する。より安定して低損失を実現するには200〜1500massppmの範囲が好ましい。
Nb:50〜500massppm
Nbは、SiO,CaOの共存下で、比抵抗の増大に有効に寄与するが、含有量が50massppm未満では、その添加効果に乏しく、一方、500massppmを超えると逆に鉄損の増大を招く。よって、Nbは、50〜500massppmの範囲で添加する。より低損失を得るためには、50〜300massppmの範囲が好ましい。
上記のように、基本成分であるFe,ZnO,MnO,NiOの組成範囲を適正化した上で、さらに、SiO,CaO,Nbを複合して添加することは100℃以上の高温での磁気特性の改善には有効である。しかし、140℃以上の高温度でも、小さな鉄損を安定して実現するためには、さらにWOおよびMoOのうちから選ばれる1種または2種を下記範囲で複合添加することが極めて有効である。
WOおよびMoOのうちから選ばれる1種または2種:合計で200〜2000massppm
WOおよびMoOは、SiO,CaOおよびNbなどと複合して添加することにより、140℃以上の高温での低鉄損を実現することができる。その理由については、まだ明確とはなっていないが、上述したNbと同様な効果によるものと考えられる。これらの元素は、各々単独で添加しても、複合して添加してもよいが、合計の添加量が200massppm未満では、添加効果に乏しく、一方、2000massppmを超えて多量に添加すると、異常粒成長の発生などによって、却って磁気特性の劣化を招く。よって、これらの成分は、合計で200〜2000massppmの範囲で添加する。異常粒の発生を確実に防止する観点からは、200〜1500massppmの範囲で添加するのが好ましい。
次に、本発明に係るMnZnNi系フェライトの製造方法について、説明する。
本発明のMnZnNi系フェライトは、まず基本成分組成が本発明の規定する所定比率となるようFe,ZnO,MnOおよびNiOの粉末原料を秤量し、これらを十分に混合してから仮焼し、得られた仮焼粉を粉砕する。次いで、上記仮焼粉に、上述したSiOやCaO,Nbと、WOおよびMoOのうちから選ばれる1種または2種の添加成分を、本発明が規定する所定の比率となるように加えてさらに粉砕する。この粉砕作業においては、添加した成分の濃度に偏りがないよう、充分に均質化する必要がある。その後、上記仮焼粉の粉末に、ポリビニルアルコール等の有機物バインダーを添加し、造粒し、圧力を加えて所定の形状に成形し、適宜の条件で焼成し、焼結体とする。
かくして得られた本発明のMnZnNi系フェライトは、従来のMnZn系フェライトでは不可能であった、鉄損極小温度が140〜160℃の温度範囲にあり、150℃における飽和磁束密度が375mT以上で、鉄損が450kW/m以下という極めて優れた高温磁気特性を有する。
最終焼結体(フェライト)の基本成分が表1−1および表1−2に示した組成となるようフェライト原料を混合し、大気雰囲気下で、925℃×3時間の仮焼後、その仮焼粉に、添加成分として、同じく表1−1および表1−2に示した量のSiO,CaO,Nb,WO,MoOを添加し、ボールミルで12時間の粉砕を行った。その後、上記粉砕粉にPVAを添加し、造粒した後、外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状に成形し、酸素分圧を1〜5vol%の範囲に制御した窒素・空気混合ガス中で、1330℃×2時間の焼成を施した。この際、500℃から1300℃までの昇温速度は、650℃/hrとした。
次いで、上記焼成後のリング状試料に、1次側5巻、2次側5巻の巻線を施し、交流BHループトレーサを用いて、周波数100kHzで磁束密度200mTまで励磁したときの鉄損を40〜200℃の温度範囲で測定した。また、150℃において、1200A/mで磁化したときの飽和磁束密度についても測定した。さらに、別途10巻の巻線を施し、LCRメータでインダクタンスの温度変化を測定してキュリー温度を求めた。
Figure 0005560436
Figure 0005560436
上記結果を表1−1および表1−2中に併記して示した。ここで、表1−1のNo.1〜20の例は、本発明の成分組成に適合する発明例(ただし、No.2,3,6,7,11,17,18および20は参考例)であり、また、表1−1および表1−2のNo.21〜54の例は、本発明の成分組成から逸脱した比較例を示している。また、図1には、全ての例のZnO量およびFe量と飽和磁束密度との関係を示した。これらの結果から、本発明例は、Fe,ZnO,MnO,NiOの基本成分組成とSiO,CaO,Nbの添加成分組成を適正範囲に制御した上で、さらに、WOおよび/またはMoOを合計で200〜2000massppmの範囲で添加した結果、いずれの条件でも、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定したときの鉄損極小温度が140〜160℃の範囲にあり、しかも、150℃における飽和磁束密度が375mT以上でかつ鉄損が450kW/m以下であることがわかる。以上の結果から、本発明によれば、140℃以上の高温でも、高飽和磁束密度で低損失を有するMnZnNi系フェライトが得られることが確認された。
本発明のフェライトは、140℃以上の高温度域において、飽和磁束密度が高く鉄損が低い特性を有するので、動作温度が通常の電子機器よりも高温となる自動車用の各種電源トランスコアやチョークコイル等にも好適に用いることができる。

Claims (1)

  1. Fe:52.0〜53.5mol%、ZnO:5.0〜10.0mol%、NiO:0.08〜0.16mol%、残部がMnOおよび不可避的不純物からなる基本成分組成を有するMnZnNi系フェライトにおいて、上記FeとZnOが下記(1)式を満たして含有し、添加成分として、当該フェライトに対してSiO:50〜500massppm、CaO:1310〜1910massppm、Nb:50〜500massppmを含有し、さらに、WOおよびMoOのうちから選ばれる1種または2種を合計:200〜2000massppm含有し、150℃、磁化力1200A/mにおける飽和磁束密度が375mT以上で、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定したときの鉄損極小温度が140〜160℃の範囲にあり、150℃における鉄損が450kW/m 以下であることを特徴とする、140℃以上の温度で低鉄損を示すMnZnNi系フェライト。

    270.0≦5Fe+ZnO≦272.5 ・・・(1)
    ここで、Fe,ZnOは、それぞれの基本成分の組成(mol%)を表す
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