JP5181175B2 - Mn−Zn−Co系フェライト - Google Patents

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本発明は、鉄損の少ないMn−Zn−Co系フェライトに関し、特に、スイッチング電源用トランス等の磁心に用いて好適な、広範囲の温度領域で低エネルギー損失かつ高透磁率を示すMn−Zn−Co系フェライトに関するものである。
酸化物磁性材料は、一般に「フェライト」と総称されているが、このフェライトには、大きく分けて、Ba系フェライト、Sr系フェライト等の硬質磁性材料と、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト等の軟質磁性材料とがある。このうち、軟質磁性材料は、わずかな磁場に対しても十分に磁化する材料であるため、電源や通信機器、計測制御機器、磁気記録、コンピュータなどの広い分野で用いられている。この軟質磁性材料に要求される特性としては、保磁力が小さく、透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大きく、低鉄損であることなどが挙げられる。
なお、軟磁性材料には、上記酸化物系のフェライト以外に、金属系のものがある。しかし、金属系軟磁性材料は、酸化物系のものと比べて飽和磁束密度が高いという特長を有する反面、電気抵抗が小さいため、高周波領域で使用する場合には、発生する渦電流に起因して鉄損が大きくなってしまうという問題がある。そのため、電子機器の小型化・高密度化の要請から使用周波数の高周波化が進んでいる近年においては、例えば、100kHz程度の高周波数帯において用いられるスイッチング電源等においては、金属系磁性材料を用いることはほとんど不可能となっている。
このような背景から、高周波域で用いられる電源用トランスの磁心材料としては、従来、鉄損の小さい(発熱の少ない)Mn−Zn系フェライトが主に用いられてきた。しかし、この材料は、電気抵抗率が0.01〜0.05Ω・m程度と低いため、電気抵抗をさらに高めて渦電流損を低減することにより、全体としての鉄損を低くして、発熱量を抑えた磁性材料の開発が望まれていた。
この問題に対しては、例えば、特許文献1には、Mn−Zn系フェライトに、副成分としてSiOやCaOなどの酸化物を微量添加し、粒界に偏析させて粒界抵抗を高め、全体としての抵抗率を数Ω・m以上とすることにより、発熱を抑制する技術が開示されている。
また、フェライトが電源トランスに使用される場合に考慮しなければならないのは、フェライトが組み込まれた機器の使用時における温度(動作温度)と、フェライト自体の鉄損に起因した発熱によって起こる温度上昇である。例えば、フェライトの鉄損が極小となる温度が室温付近にある場合には、発熱によって磁心温度が上昇すると、鉄損が上昇し、それに伴いさらに発熱が大きくなり、これが繰り返されて温度上昇が加速する、いわゆる熱暴走を起こす危険性があるからである。
トランスの動作温度は、従来は50〜70℃付近であるが、上記熱暴走の危険性を回避するため、現行のフェライトでは、鉄損が極小となる温度を約100℃とし、室温付近における鉄損の温度係数を負として温度上昇とともに鉄損が減少するような材料設計がなされている。しかし、鉄損極小温度が100℃程度の材料でも、温度が100℃以上に上昇した場合には、やはり鉄損は増大して熱暴走を起こす危険性が大きい。
さらに最近では、電子機器の小型化に対応するため、電子部品の積載密度が高密度化しており、発熱による温度上昇がより大きくなる傾向にある。そのため、最近の電子部品は、これまで想定していなかった、100℃を超える120〜140℃といった高温度域で使用されるものも現れるようになってきている。しかし、設計時における動作温度は、依然として100℃付近であり、この温度域で低鉄損であることに対する要求に変わりはない。したがって、フェライトの鉄損は、広い温度範囲で、特に、100〜140℃程度の高温度域でも小さいことが必要となる。
また、フェライトコアが使用されるスイッチング電源の中で、フォワード型と呼ばれる回路方式の電源では、トランス1次コイルの励磁に使用される電力は、2次側に伝達されることがないため、無効電力となり、電力効率低下の要因となっている。この励磁電力を下げるには、トランスコイルのインダクタンスを上げることが有効であり、コアの透磁率を上げることが必要とされる。そのため、この用途に用いられるフェライトには、広い温度範囲で低鉄損であると同時に、トランス動作時における透磁率、すなわち、微小信号に対する初透磁率ではなく、200mT程度の大励磁下での振幅比透磁率が高いことが望まれている。
ところで、フェライトの鉄損を支配する因子の1つとして、磁気異方性定数Kがある。鉄損は、この磁気異方性定数Kの温度変化にともなって変化し、K=0となる温度で極小となる。したがって、フェライトの鉄損の温度変化を小さくするには、磁気異方性定数Kの温度依存性(鉄損温度係数)を小さくすることが必要となる。
磁気異方性定数Kは、フェライトの主相であるスピネル化合物を構成する元素の種類によりほぼ決定される。Mn−Zn系フェライトの場合、Coイオンを導入することによりその温度依存性を小さくし、鉄損温度係数の絶対値を小さくすることができ(例えば、非特許文献1および2参照)、これにより、100℃付近での鉄損が小さく、かつ、その前後の温度範囲でも鉄損が比較的小さいフェライト材料を得ることが可能となる。しかし、Coを加えることにより、鉄損極小温度が低下したり、あるいは、焼成温度や焼成雰囲気の酸素濃度の僅かな変動によって、鉄損温度係数や極小温度が大きく変動したりするという別の問題が生じている。
例えば、特許文献2には、Fe,ZnO,MnOを主成分とし、CoOを0.01mol%以上0.5mol%未満含有するMn−Zn−Co系フェライトにおいては、従来よりも広い温度範囲でK=0となるので、高い透磁率と低い損失が広い温度範囲で、実現できることが開示されている。しかし、この特許文献2の技術では、同文献の第1図に示されているように、コア損失の極小温度が低温度側に移行するため、最近のような高い動作温度での損失は大きくなり、温度上昇が加速する危険性が解消されていない。
また、特許文献3には、Fe,ZnO,MnOを主成分とし、これに1000〜4000ppmのCoOに加えてさらにCaO,Ta,SiOを複合添加することで、数100kHz以上の周波数領域で、従来よりも広範囲な温度域において、電力損失の小さいMn−Zn系フェライトを得ることができること、また、この程度のCoO添加量であれば、電力損失の温度曲線が低温側にシフトし過ぎることはないことが記載されている。しかし、この技術によっても、主成分組成によっては、焼成温度や雰囲気中の酸素濃度の僅かな変動により、損失の温度係数や極小温度が大きく変動してしまうという問題がある。
これらの問題点を改善する技術として、特許文献4には、低電力損失かつ電力損失の温度変化の小さいフェライト材料が開示されている。また同文献には、電力損失が最小となる温度より60℃〜20℃低い40℃の温度帯域において、電力損失の温度変化が小さいフェライト材料が開示されている。また、特許文献5には、CoOとNbの添加により、小さい電力損失を得るだけでなく、電力損失を平坦化して広い温度範囲で電力損失を最低とする技術が開示されている。
また、特許文献6には、酸化鉄、酸化亜鉛および酸化マンガンを主成分とする磁性フェライト材料において、ZnO:7.0〜9.0mol%、MnO:36.8〜39.2mol%、残部酸化鉄の主成分組成を有し、副成分としてCoを2500〜4500ppmの範囲で含有した、20〜100℃の温度帯域における電力損失の最小値が300kW/m以下でかつその温度帯域における電力損失の最大値と最小値の差が150kW/m以下である磁性フェライト材料が開示されている。また同文献には、20〜100℃の温度帯域における電力損失の最小値が350kW/m以下でかつその温度帯域における電力損失の最大値と最小値の差が50kW/m以下である磁性フェライト材料も開示されている。
さらに、特許文献7には、主成分としてFe:53.2〜54.5mol%、ZnO:7.5〜11.5mol%、残部MnOを含むMn−Zn系フェライトに対して、Co:2000〜4500ppm、SiO:60〜140ppm、CaO:300〜700ppmを含有し、さらに、Nb:100〜350ppmおよび/またはZrO:50〜450ppmを含有したMn−Zn系フェライトでは、電力損失の低減と広い温度領域での低損失化が実現できることが開示されている。
特公昭36−002283号公報 特公平04−033755号公報 特開平06−290925号公報 特開平08−191011号公報 特開平09−134815号公報 特開2001−080952号公報 特開2002−231520号公報 特開2006−213532号公報 「The Fffect of Cobalt subusutitutions on some properties of manganese zinc ferrites」,A.D.Giles and F.F.Westendorp:J.Phys.D:Appl.Phys.,9(1976)2117 「Low−loss Power Ferrites for frequencies up to 500kHz」,T.G.W.Stijintjes and J.J.Roelofsma;Adv.Cer.16(1986)493
しかしながら、特許文献4および特許文献5に記載されたフェライトの電力損失は、十分に低いものではなく、また、電力損失の温度変化も十分に平坦化されているとは言えない。しかも、これらの文献には、電源用トランス材料として、さらに広い温度帯域、特に140℃程度の高温度域で、低い電力損失を示すと共に、その温度変化を小さくし、さらに振幅比透磁率を高くすることについては開示されていない。また、特許文献6に記載されたフェライトは、電力損失が低いとは言え、いずれも電力損失の最小値が300kW/m程度であり、低損失化の要求には十分に応えられておらず、しかも、同文献には、140℃までの高温域での低損失化と高透磁率化については開示されていない。また、特許文献7の技術においても、同文献の表1、表2に示されているように、100℃において、250kW/m以下(100kHz、200mT)の低損失のフェライトが得られているわけではなく、ましてや、25℃という低温から140℃という高温までの広い温度範囲において、350kW/m以下の低い損失や6500以上の高い振幅比透磁率μaを得ることについては開示されていない。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、25〜140℃という広い温度帯域において、特に、140℃の高温域において、鉄損の絶対値およびその温度変化が小さく、かつ、振幅比透磁率の絶対値が高くてその温度変化が小さいMn−Zn−Co系フェライトを提供することにある。
発明者は、さきの出願(特許文献8)において、Fe,ZnOおよびMnOの組成を適正範囲に絞り込み、また、CoOの効果は基本成分の組成により異なるため、その組成に応じた最適のCoO量を選択することにより、低損失、高比透磁率でかつ高温度域まで温度変化が小さいフェライトを得ることができること、さらに、原料酸化鉄中の塩素量を一定値以下に制限するとともに、焼成後の最終焼結体中における塩素量を所定値以下に低減することにより、その効果がより向上することを開示した。
発明者は、さらに、従来技術が抱える上記問題点を解決するために、基本成分であるFe,ZnO,CoOの含有量が鉄損と透磁率の温度特性に及ぼす影響について調査するとともに、添加成分として含有させる種々の金属酸化物が、最終コアの鉄損および振幅比透磁率とそれらの温度依存性に及ぼす影響について鋭意研究を重ねた。その結果、Fe,ZnOおよびMnOの組成を適正範囲に絞り込み、その範囲に応じた最適CoO量を選択することにより、極めて低損失、高比透磁率で、かつ高温度域まで温度変化が小さいフェライトを得ることができること、そしてさらに、添加成分として、BeOを所定の範囲で添加することにより、その効果はより高められることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、Fe:52.0〜53.0mol%、CoO:0.15〜0.5mol%、ZnO:11.5〜12.5mol%、残部がMnOおよび不可避的不純物からなる基本成分組成を有するMn−Zn−Co系フェライトにおいて、当該フェライトに対して、添加成分としてBeO:10〜95massppm、SiO:50〜500massppm、CaO:200〜2000massppm、ZrO:100〜1500massppmおよびTa:50〜1000massppmを含有することを特徴とするMn−Zn−Co系フェライトである。
本発明のMn−Zn−Co系フェライトは、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損極小温度が80〜120℃の温度範囲にあり、100℃における鉄損が250kW/m以下、25〜140℃の温度範囲における鉄損最大値が350kW/m以下であることを特徴とする。
また、本発明のMn−Zn−Co系フェライトは、最大磁束密度200mT、周波数100kHz、25〜140℃の温度範囲で測定した振幅比透磁率μaが6500以上であり、かつ、下記式;
変動係数(%)=(25〜140℃の温度範囲におけるμa値の標準偏差)/(25〜140℃の温度範囲におけるμa値の平均値)×100
で定義されるμaの変動係数が1.5%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、25〜140℃という広い温度範囲で鉄損が低くかつ振幅比透磁率が高いMn−Zn−Co系フェライトを提供することができる。したがって、本発明のフェライトは、スイッチング電源等のトランスコア材に用いて好適である。
本発明のMn−Zn−Co系フェライトは、飽和磁束密度、キュリー温度および鉄損の極小温度と温度特性を最適化する観点から、主成分組成が、Fe:52.0〜53.0mol%、CoO:0.15〜0.5mol%、ZnO:11.5〜12.5mol%、残部MnOからなるものである。上記範囲に制限する理由について、以下に具体的に説明する。
Fe:52.0〜53.0mol%
Feは、CoOとの関係で、鉄損極小温度を80℃以上とするために52.0mol%以上とする必要がある。しかし、53.0mol%を超えると、室温付近の鉄損が上昇するため、上限を53.0mol%とする。好ましくは、52.3〜52.7mol%の範囲である。
ZnO:l1.5〜12.5mol%
軟磁性フェライトに求められる磁気特性としては、前述したように、飽和磁束密度が大きいこと、キュリー温度が高いこと、鉄損が小さいことおよび透磁率が高いことが挙げられる。このうち、飽和磁束密度、キュリー温度は、基本成分であるMnO,ZnO,Feの比でほぼ決定される。ZnOの量が少ない領域においては、ZnO量の増加に伴い飽和磁束密度が増加するが、これに伴ってキュリー温度も低下する。ZnO量が11.5mol%より少ないと、CoOによる透磁率の温度変化抑制効果が小さく、結果として鉄損値が高くなり、振幅比透磁率も向上しなくなる。また、鉄損が極小となる温度も、先に述べたように、基本成分の比によりほぼ決まり、ZnO量が多すぎると、CoO量の変動による鉄損極小温度の変化が非常に敏感となり、僅かのCoO含有量の増加で極小温度が大きく変化する。特に、ZnO量が12.5mol%より多いと、CoO量の0.1mol%程度の違いでも、鉄損極小温度が25℃程度も変化することがある。したがって、鉄損極小温度を80〜120℃にするには、ZnO量を11.5〜12.5mol%の範囲とする必要がある。
CoO:0.15〜0.5mol%
CoOは、透磁率の温度係数を小さくする働きもあるが、0.5mol%を超えて過剰に含む場合には、鉄損の温度係数が室温以上で正となるため熱暴走を起こしたり、あるいは、経時変化が大きくなったりするため望ましくない。一方、CoO量が0.15mol%より少ないと、透磁率の温度変化を抑制する効果が小さい。したがって、CoOの含有量は0.15〜0.5mol%の範囲とする。
本発明に係るフェライトは、Mn−Zn−Co−Fe四元系フェライトであり、上記Fe,CoO,ZnO以外の残部の基本成分は、MnOである。なお、上記基本成分以外の残部は、後述する添加成分を除いて、不可避的不純物である。
BeO:10〜100massppm
本発明のMn−Zn−Co系フェライトにおいては、基本成分であるFe,ZnO,MnOおよびCoOの組成範囲を上記適正範囲に制御することは最も重要なことである。しかし、本発明のフェライトにおいては、小さな鉄損と大きな振幅比透磁率を同時に安定して実現するために、さらにBeOを添加成分として適正量含有させる必要がある。BeOの添加が、最終焼結体の磁気特性に影響を及ぼす機構については、明確ではないが、BeOは比抵抗が高く、低い比誘電率と誘電損失を有する酸化物であるため、最終焼結体の特性、特に100℃以上の高温度側での鉄損や振幅比透磁率に好ましい影響を及ぼすためと考えられる。BeOの上記効果は、フェライト全体に対する添加量が10massppmより少ないと発現せず、一方、100massppmより多くなると、逆に異常粒成長を生じさせて鉄損を大幅に増大させる。よって、本発明においては、BeO:10〜100massppmの範囲で添加する。
本発明の、フェライトは、上記必須とする成分のほかに、下記添加成分を添加することができる。すなわち、本発明のフェライトの基本成分であるFe,ZnO,MnOおよびCoOは、スピネル構造を形成するものであり、これに、スピネルを形成しないSiO,CaO,Ta,ZrO,Nb,V等の添加成分を適量添加することにより、鉄損のより少ない高性能のMn−Zn−Co系フェライトを得ることができる。とりわけ、SiO,CaO,TaおよびZrOの複合添加は、効果的である。
SiOは、CaOとともに粒界高抵抗相を形成して粒界を高抵抗化し、鉄損の低減に寄与する。しかし、フェライト全体に対する添加量が50massppm未満ではその効果が小さく、一方、500massppmを超えると、焼結時に異常粒成長を起こして鉄損を大幅に増大させる原因ともなる。CaOも、SiOとの共存した場合には、粒界抵抗を高めて低鉄損化に寄与するが、フェライト全体に対する添加量が200massppmより少ないとその効果は小さく、一方、2000massppmより多くなると、鉄損は逆に増大する。したがって、SiOならびにCaOのフェライト全体に対する添加量は、それぞれ、SiO:50〜500massppm、CaO:200〜2000massppmの範囲で添加するのが好ましい。
Taは、SiO,CaOの共存下で、比抵抗を高める効果を有するが、フェライト全体に対する添加量が50massppmに満たないとその添加効果に乏しく、一方、1000massppmを超えると逆に鉄損の増大を招く。したがって、Taは、50〜1000massppmの範囲で添加するのが好ましい。また、ZrOは、SiO,CaO,Taの共存下で、Taと同様に、粒界の抵抗を高めて高周波での鉄損の低減に有効に寄与するが、フェライト全体に対する添加量が100massppm未満ではその効果に乏しく、一方、1500massppmを超えると、逆に比抵抗を高める効果が少なくなり鉄損が増大する。よって、ZrOは、100〜1500massppmの範囲で添加することが好ましい。
表1および表2に示した種々のFe,ZnO,CoOの組成を有し、残部がMnOとなるようにフェライト原料を混合した後、930℃で3時間の仮焼を行い、この仮焼粉に、表1および表2に併記したように、添加成分として種々の量のBeO,SiO,CaO,TaおよびZrOを添加し、ボールミルで10時間粉砕し、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのリング状のコアに成形した。その後、この成形したコアを、酸素分圧1〜5vol%の範囲に制御した窒素・空気混合ガス中で1330℃×3時間の焼成を行い、焼結体試料とした。なお、焼成時における500℃から1300℃までの昇温速度は650℃/hrとした。
上記のようにして得たリング状試料に、1次側5巻・2次側5巻の巻線を施し、交流BHループトレーサーを用いて、周波数100kHzで磁束密度200mTまで励磁したときの25℃〜140℃の温度範囲における鉄損と振幅比透碇率μaを測定した。
また、上記振幅比透磁率μaの平均値と標準偏差から、下記式;
変動係数(%)=(25〜140℃の温度範囲におけるμa値の標準偏差)/(25〜140℃の温度範囲におけるμa値の平均値)×100
を用いて、変動係数を求めた。
さらに、上記測定結果に基づき、鉄損が極小となる温度と、100℃での鉄損値、25〜140℃の温度範囲での鉄損最大値、振幅比透磁率の最小値および変動係数を求めた。
上記測定の結果を、表1および表2に併記して示した。ここで、表1に示した試料No.1〜24は、本発明の発明例、表2の試料No.25〜48は、本発明の比較例である。表1,2からわかるように、本発明例では、Fe,ZnO,MnO,CoOの基本組成とSiO,CaO,Ta,ZrOの添加成分の組成を適切に選んだ上でさらに、BeOを10〜100massppm添加しているため、いずれの例でも、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損極小温度が80〜120℃の範囲にあり、100℃における鉄損が250kW/m以下、25〜140℃の温度範囲における鉄損の最大値が350kW/m以下で、さらに25〜140℃の温度範囲の振幅比透磁率が6500以上でその変動係数が1.5%以下となっており、広い温度範囲で低損失、高透磁率で、かつその温度変化の少ないMn−Zn−Co系フェライトが得られていることがわかる。それに対して、本発明の範囲を外れる比較例では、上記いずれか1以上の特性が発明例に対して劣るものとなっている。
Figure 0005181175
Figure 0005181175
本発明のフェライトは、広い温度範囲で透磁率が高いという優れた特性を有するので、ノイズフィルタ用のコアにも好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. Fe:52.0〜53.0mol%、CoO:0.15〜0.5mol%、ZnO:11.5〜12.5mol%、残部がMnOおよび不可避的不純物からなる基本成分組成を有するMn−Zn−Co系フェライトにおいて、当該フェライトに対して、添加成分としてBeO:10〜95massppm、SiO:50〜500massppm、CaO:200〜2000massppm、ZrO:100〜1500massppmおよびTa:50〜1000massppmを含有することを特徴とするMn−Zn−Co系フェライト。
  2. 最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損極小温度が80〜120℃の温度範囲にあり、100℃における鉄損が250kW/m以下、25〜140℃の温度範囲における鉄損最大値が350kW/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のMn−Zn−Co系フェライト。
  3. 最大磁束密度200mT、周波数100kHz、25〜140℃の温度範囲で測定した振幅比透磁率μaが6500以上であり、かつ、下記式で定義されるμaの変動係数が1.5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のMn−Zn−Co系フェライト。

    変動係数(%)=(25〜140℃の温度範囲におけるμa値の標準偏差)/(25〜140℃の温度範囲におけるμa値の平均値)×100
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