JP4523430B2 - 高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト - Google Patents

高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト Download PDF

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Description

本発明は、スイッチング電源等の電源トランス、特にフライバック方式の電源トランス等に用いて好適な、高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトに関するものである。
フェライトと称される酸化物磁性材料は、Ba系フェライト、Sr系フェライトなどの硬質磁性材料と、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライトなどの軟質磁性材料とに分類される。このうち、軟質磁性材料は、非常にわずかな磁場に対しても十分に磁化されるため、電源や通信機器、計測制御機器、コンピュータなどの多方面の分野において用いられている。そのため、これらの軟磁性材料には、飽和磁束密度が大きいことのほか、保磁力が小さくて透磁率が高いこと、磁気損失が小さいことなどの特性が要求されている。
軟磁性材料には、上記フェライト以外に、金属系のものがある。この金属系の軟磁性材料は、飽和磁束密度が高いという特長を有している反面、高周波帯域で使用する場合には、電気抵抗が低いため、渦電流に起因する損失が大きくなって低損失を維持できないという問題がある。そのため、金属系磁性材料は、電子機器の小型化・高密度化に伴い、使用周波数帯域の高周波化が進む今日では、特に、スイッチング電源等に用いられている100kHz程度の周波数帯域では、渦電流損による発熱が大きくなるので用いることができない。
このような背景から、現在、高周波帯域で用いられている電源用トランスの磁心材料としては、酸化物系のフェライト、中でも、Mn−Zn系フェライトが主に用いられている。この高周波電源用のMn−Zn系フェライトには、キュリー温度Tcが高いこと、飽和磁束密度Bsが高いこと、および磁気損失Pcvが低いことが要求される。これらの特性のうち、キュリー温度Tc、飽和磁束密度Bsは、磁気モーメントを有する金属原子の種類、ならびにその金属原子が占める位置により変化することが知られており、主成分の組成によりほぼ決定される。
ところで、近年、電子機器の電源部分は、小型化への要請に応えるため、各種部品が高密度に積載され、それら部品からの発熱により高温化する傾向にある。その結果、フェライトコアが使用される温度、つまり動作温度は、80〜100℃にも達することがある。一般に、酸化物系フェライトの飽和磁束密度は、温度の上昇とともに減少し、キュリー温度Tcで磁気が消失しゼロとなる。したがって、キュリー温度が高いほど、室温からトランス動作温度(80〜100℃)までの飽和磁束密度を高く維持することができる。一般に、キュリー温度や飽和磁束密度は、基本組成であるFe23の量が多いほど高くなることが知られており、例えば、特許文献1には、Fe23量を増やすことにより飽和磁束密度を高める技術が開示されている。
一方、フェライトの磁気損失Pcvについては、それを支配する要因として、磁気異方性定数K1ならびに飽和磁歪定数λsが知られており、従来から、Mn−Zn系フェライトにおいては、これらのパラメータの値を小さくするようなMnO−ZnO−Fe23三元系の組成領域が選択されている。すなわち、磁気損失Pcvが小さい組成領域とは、電源用トランスの動作温度(80℃〜100℃)において、磁気異方性定数K1ならびに飽和磁歪定数λsがともに小さい三元系組成領域であり、具体的には、Fe23が52〜54mol%、ZnOが10〜16mol%付近の組成領域である。したがって、磁気損失は、この領域から外れるにつれて増加の一途をたどることになる。
また、Mn−Zn系フェライトの磁気損失Pcvは、温度による変化が大きいため、基本成分組成は、動作温度付近で磁気異方性定数K1がゼロとなるような範囲を選択しているが、従来のMn−Zn系フェライト(MnO−ZnO−Fe23三元系フェライト)では、飽和磁束密度を高めるためにFe23量を増していくと、磁気損失が最小となる温度は低温側に変化する。そのため、Fe23量を増加し、磁気損失が最小となる温度が室温付近まで低下した場合には、動作温度(80℃〜100℃)での磁気損失は非常に大きな値となってしまう。
しかし、Fe23の量を、従来の範囲を超えてさらに増やしていくと、ZnOの量によっても異なるが、凡そ60mol%を境にして、磁気損失が最小となる温度が低下から上昇に転じることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。したがって、Fe23量の多い組成領域でも、基本成分を調整することにより、動作温度付近で磁気損失が最小となるようにすることができる。先述した特許文献1の技術でも、この付近の組成を選択、使用している。
特開平11−329822号公報 K.Ohta:"Magnetocrystalline Anisotropy and Magnetic Permeability of Mn-Zn-Fe Ferrites"、J.Phys.Soc.Japan、18(1963)685
ところが、MnO−ZnO−Fe23三元系においては、飽和磁束密度を高めるために、Fe23の含有量を60mol%超えまで増やすと、磁気損失が最小となる温度を動作温度付近とすることができる反面、飽和磁歪定数λsに対する最適組成領域から外れるため、磁気損失自体は増大する。したがって、従来は、高い飽和磁束密度を確保するために磁気損失を犠牲にするか、あるいは、磁気損失を優先して従来材並みの飽和磁束密度で満足するかのいずれかでしかなかった。この間題に対して、発明者らは、Fe23量が従来材より多い組成においては、NiOを基本成分に加えることにより、飽和磁束密度を高い値に維持したまま損失を低くすることができることを見出し、特願2003−420414に提案した。この技術によれば、従来材に比べると高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。しかし、近年における、電子機器の電源部分の小型化への要請に応えるには、さらに飽和磁束密度を高め、磁気損失を低減させた材料開発が必要とされる。
本発明の目的は、電源用トランス、特にフライバック方式のスイッチング電源用トランスとして好適な、高い飽和磁束密度と低い磁気損失を兼ね備えたMn−Zn−Ni系フェライトを提供することにある。
発明者らは、上述した課題を達成するために、Fe23量が従来材より多く、かつNiOを基本成分に加えた組成を有するMn−Zn−Ni系フェライトにおいて、飽和磁束密度Bsをより高くし、磁気損失をより低くするため、フェライト焼結体中に含まれる不純物ならびに結晶組織がそれらの特性に及ぼす影響を詳細に調査した。その結果、フェライト中に含まれる不純物であるPおよびBの含有量を極微量に低減することにより、さらには、フェライト結晶粒の粗大粒の発生を抑制することにより、高い飽和磁束密度を損なうことなく磁気損失を低減できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、基本成分が、Fe:60.8〜64mol%、ZnO:8〜14mol%、NiO:5.2〜8mol%、残部が実質的にMnOからなり、添加成分として0.005〜0.05mass%のSiOおよび0.02〜0.2mass%のCaOを含有し、さらに、Ta:0.005〜0.1mass%、ZrO:0.01〜0.15mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、V:0.001〜0.05mass%、HfO:0.005〜0.05mass%、Bi:0.003〜0.03mass%、MoO:0.003〜0.03mass%、TiO:0.01〜0.3mass%およびSnO:0.01〜2.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、かつ、P、Bの含有率がそれぞれ0.001mass%以下であり、100℃における飽和磁束密度が485mT以上、100kHz、200mTにおける磁気損失が1000kW/m 以下である高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライトである。
本発明の上記Mn−Zn−Ni系フェライトは、最大結晶粒径が100μm以下の焼結体からなることを特徴とする。
本発明によれば、飽和磁束密度が高くかつ磁気損失の小さいMn−Zn−Ni系フェライトを提供することができる。このMn−Zn−Ni系フェライトは、フライバック方式の電源トランスに用いて好適であり、電子機器の電源部分の小型化に大いに寄与する。
本発明を開発する基礎となった技術思想について説明する。
軟磁性材料であるMn−Zn系フェライトに求められる磁気特性としては、キュリー温度Tcが高いこと、飽和磁束密度Bsが大きいこと、磁気損失Pcvが小さいことが挙げられる。これらの特性は、基本成分であるMnO:ZnO:Fe23の比でほぼ決定される。従来の電源用Mn−Zn系フェライトが採用していたFe23:52〜54mol%、ZnO:10〜16mol%の組成領域では、Fe23量の増加にともない飽和磁束密度が増加し、キュリー温度も上昇するが、磁気異方性定数K1がゼロとなる温度、すなわち磁気損失が最小となる温度も低下するため、トランス動作温度(80〜100℃)での磁気損失が増大する。一方、ZnOの量が増加すると、損失が最小となる温度が低温側に移行するため、この温度を動作温度付近に維持するためには、相対的にFe23の量を少なくする必要があり、飽和磁束密度の低下を招く。またZnO量の増加に伴いキュリー温度も低下する。
一方、Mn−Zn系フェライトにおいて、Fe23を60mol%超え含有させた場合には、磁気異方性定数K1がゼロとなる温度がトランス動作温度(80〜100℃)付近となる組成領域においても、Fe23量の増加にともない飽和磁束密度が増加し、キュリー温度も上昇する。しかも、磁気損失が最小となる温度は、従来のMn−Zn系フェライトとは逆に、Fe23量の増加にともない、高温側へシフトする。また、この組成領域では、飽和磁歪定数λsが大きくなるため、従来のMn−Zn系フェライトと比べると、損失値は大きくなる。
ここで、Fe23を58mol%以上、特に、60mol%を超えて含むMn−Zn系フェライトに、基本成分としてさらにNiOを加えた場合には、磁気損失が最小となる温度が上昇するため、この温度を動作温度付近に維持するためには、Fe23量を減らす必要がある。そして、この場合には、飽和磁束密度は若干下がる傾向にあるが、NiOを加えることにより損失を顕著に低下することができる。つまり、基本成分であるFe23やNiOの組成を適正範囲に制御すれば、飽和磁束密度を大きく低下させることなく、磁気損失を低減できることがわかった。さらに、フェライト中に含まれる、不純物としてのPとBの量を低く抑えて、焼結後のフェライト粒径を最大で100μm以下に制御すれば、飽和磁束密度の低下を伴うことなく磁気損失をより低減できることが新たにわかった。本発明は、上記技術思想に基づくものである。
次に、本発明のフェライトの成分組成を、上記範囲に限定する理由について説明する。
Fe60.8〜64mol%
本発明のフェライトは、Feが60mol%を超える領域では、その量が多いほど、ほぼ単調に飽和磁束密度が高くなるが、64mol%付近では、増加の割合が小さくなるかあるいは低下に転じる。しかし、Feが多すぎると、損失が最小となる温度が高くなるため、トランス動作温度での損失が増大する。そのため、Feの含有量の上限は64mol%とする。一方、Feが少なくなると、損失が最小となる温度が低温側に移行し、同じく動作温度での損失が増大する。さらに、Feが少なくなり、58mol%以下となると、逆に損失が最小となる温度が高温側に移行するため、トランス動作温度で損失は低くなるが、100℃における飽和磁束密度が大きく低下してしまう。したがって、下限は60.8mol%とした。好ましくは60.8〜62mol%である。
ZnO:8〜14mol
損失が最小となる温度を動作温度とするためには、Feの含有量に応じて、ZnOの含有量を調節する必要がある。本発明のFe含有量が多い組成のフェライトでは、高い飽和磁束密度を得るためには、ZnOの組成は、4〜16mol%の範囲であることが好ましく、10〜12mol%付近で最大の飽和磁束密度となる。ただし、ZnOが少なくなると損失値が著しく増加するため、ZnOの下限を8mol%とする。好ましくは、10〜14mol%である。
NiO:5.2〜8mol%
NiOは、MnO−ZnO−Fe三元系に加えることにより、損失を低減する効果を有する。ただし、NiOの含有量が5.2mol%未満では、その改善効果を得ることができない。一方、NiOの添加量が8mol%以上では、その損失改善効果が飽和する。また、損失が最小となる温度は、NiOを増すことにより高温側にシフトするため、含有量が多すぎる場合には、FeやZnOの量を調整しても、この温度を動作温度付近に維持できなくなる。また、8mol%以上では、飽和磁束密度が減少する。そのため、NiOの含有量の上限は8mol%とする
本発明のフェライトは、基本成分が、上記Fe、ZnOおよびNiO以外の残部は、実質的にMnOからなるものである。
本発明のフェライトは、焼結性を高めると共に、粒界相を高抵抗化して低い磁気損失を得るために、上記基本成分に加えてさらに、SiO2,CaOを下記の範囲で添加する必要がある。
SiO2:0.005〜0.05mass%
SiO2は、焼結を促進する効果があり、その効果を得るためには0.005mass%以上添加する必要がある。しかし、多すぎると異常粒成長を起こすので上限を0.05mass%とする。好ましい添加量は、0.005〜0.02mass%である。なお、この上限付近の添加量では、粒成長を抑止して最適な結晶組織とするためには、焼結温度を下げる等の配慮が必要である。
CaO:0.02〜0.2mass%
CaOは、SiO2とともに粒界を高抵抗化して磁気損失を小さくする。0.02mass%以下ではその効果が得られず、逆に、0.2mass%を超えると、焼結密度が低下するので0.2mass%以下とする。好ましい添加量は、0.01〜0.1mass%である。
本発明のフェライトは、上記基本成分および必須添加成分の他にさらに、磁気損失の小さい高性能な電源用Mn−Zn−Ni系フェライトとするために、スピネルに固溶しないTa25,ZrO2,Nb25,V25,HfO2,Bi23,MoO3やスピネル構成元素として部分的に固溶するTiO2およびSnO2の中から選ばれる1種または2種以上を、下記の範囲で添加することができる。
Ta25:0.005〜0.1mass%
Ta25は、SiO2,CaOの共存下で比抵抗の増大に寄与するが、含有量が0.005mass%に満たない場合はその添加効果に乏しく、一方、0.1mass%を超えると、逆に磁気損失の増大を招く。したがって、Ta25は、0.005〜0.1mass%の範囲で添加するのが好ましい。
ZrO2:0.01〜0.15mass%
ZrO2は、SiO2,CaO,Ta25の共存下で、Ta25と同様に、粒界の抵抗を高めて高周波帯域での磁気損失の低減に寄与する。Ta25と比べると、抵抗増加の効果が少ないが、損失低減への寄与は大きく、特に、磁気損失が最小となる温度付近から高温側における損失の低減に有効に寄与する。ZrO2含有量が0.01mass%未満では、その効果に乏しく、一方、0.15mass%を超えると、逆に比抵抗を高める効果が飽和し、磁気損失が増大する。よって、ZrO2は0.01〜0.15mass%とすることが好ましい。
Nb25:0.005〜0.05mass%
Nb25は、SiO2,CaOと共に粒界相を形成し、粒界抵抗を高めて磁気損失の低減に寄与する。0.005mass%未満ではその効果に乏しく、逆に、0.05mass%を超えると、過剰に粒界相に析出し、磁気損失を増大するので、0.005〜0.05mass%の範囲で添加するのが好ましい。
25:0.001〜0.05mass%、HfO2:0.005〜0.05mass%
25,HfO2は、ともに異常粒成長を抑制し、粒界抵抗を高める働きがある。少ないとその改善効果がなく、また多すぎると磁気損失が増大するため、V25は0.001〜0.05mass%、HfO2は0.005〜0.05mass%の範囲で添加することが好ましい。
Bi23:0.003〜0.03mass%、MoO3:0.003〜0.03mass%
Bi23,MoO3は、結晶粒内の応力を緩和する働きがあり、磁気損失の低減に寄与する。少ないとその改善効果がなく、また多すぎると磁気損失が増大するため、Bi23は0.003〜0.03mass%、MoO3は0.003〜0.03mass%の範囲で添加するのが好ましい。
TiO2:0.01〜0.3mass%、SnO2:0.01〜2.0mass%
TiO2,SnO2は、スピネル構成元素として部分的に粒内に固溶する成分である。TiO2は、一部粒界にも存在し、焼成後の冷却過程で粒界再酸化を助長して磁気損失を低下させる。この効果を得るためには、0.01mass%以上の添加が好ましい。逆に、多すぎると異常粒成長を引き起こすため、0.3mass%以下の範囲で添加することができる。SnO2は、損失低減に寄与するためには、0.01mass%以上添加することが好ましく、また、TiO2ほど異常粒成長を引き起こさないため、上限は2.0mass%まで添加することができる。
本発明のフェライトは、上記基本成分および添加成分に加えて、不純物であるPおよびBの含有量を下記の範囲に抑えることを必須とする。
P,B:0.001mass%以下
P,Bは、焼結初期段階で、粒成長を著しく促進し、結晶粒を大きくする作用がある。しかし、P,Bがそれぞれ0.001mass%以上含まれる場合には、焼結体中に粒径が非常に大きな結晶粒が存在する一方で、細かい結晶粒も存在するようになり、不均質な結晶組織となる。このような組織をもつフェライトコアは磁気損失が大きくなる。従って、焼結体の異常粒成長を阻止して結晶粒径の分布幅が小さい均一な結晶組織の焼結体とし、低い磁気損失を得るためには、P,Bの含有量は、それぞれ0.001mass%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.0004mass%以下である。
次に、本発明のフェライト焼結体が有すべき結晶粒径について説明する。
結晶粒径:100μm以下
上述したように、本発明において、高い飽和磁束密度と低い磁気損失を得るためには、基本成分と添加成分を所定の範囲に制御することが重要である。しかし、さらに低い磁気損失を実現するためには、上記の制御以外に、焼結体の結晶組織を均質化することが重要であり、特に、結晶粒の大きさが揃っていること、すなわち粒度分布がシャープであることが好ましい。というのは、100kHz程度の周波数を対象とするフェライトならば、損失を低減する観点からは、平均結晶粒径が10μm程度であればよいが、より低い周波数を対象とするならば、それより大きな結晶粒であることが望ましい。しかし、結晶粒を大きくし過ぎて、100μmを超える粒が生じた場合には、損失を著しく増大させてしまう。そこで、本発明のフェライトは、結晶粒径の大きさの最大値を100μm以下に制限する必要がある。ここで、上記結晶粒径とは、焼結体の切断面を研磨した後、エッチングし、顕微鏡により撮影した写真(500倍)を、画像解析して得た結晶粒の面積から求めた円相当径のことである。
次に、上記結晶粒径を得るための条件について説明する。
飽和磁束密度を高めるには、焼結体の密度を高めることが必要となるが、焼結体密度は、主に製造条件により決定される。一般に、Mn−Zn系フェライト焼結体は、基本成分を含む酸化物原料を混合し、仮焼した後、微量添加成分を加えて粉砕し、その粉砕粉を圧縮して得た成形体を焼成して製造する。この製造工程では、各原料粉は、仮焼の段階で反応してスピネル化合物となるが、すべての反応が終了してスピネル単相となってしまうと粉砕し難くなるので、通常、一部を未反応のまま残し、後の焼成段階で完全なスピネル化合物とするのが普通である。この焼成段階では、スピネル化反応と同時に、粉砕粉どうしが結合、粒成長して緻密化が進行する。しかし、粒成長し過ぎると、不均質な粒成長が起こり、100μm以上の大きな粒が発生して損失増大を招くことがある。したがって、飽和磁束密度を高めるに当たっては、粒成長を促進して緻密化を図ると同時に、粗大粒を発生させないことが必要となる。
発明者らは、緻密化と粒成長とを両立させる条件を探すべく、Fe23量が60mol%程度でかつNiOを含む基本成分からなるフェライト焼結体の結晶組織を詳細に調べた。その結果、この組成では、Fe23量を52〜58mol%含む従来のMn−Zn系フェライトと比べると、スピネル化が進行しにくく、緻密化の進行も遅いこと、さらに、同じ焼成条件では、焼結体密度が低くなり、結晶粒径も小さくなることがわかった。そして、上記成分系のフェライトでは、焼成工程における昇温速度を上げるかあるいは焼成温度を高めることによって、初めて、焼結体密度を高め、かつ所望の大きさの結晶粒が得られることがわかった。ただし、この焼成条件では、やはり、100μm以上の結晶粒が発生することがある。
そこで、さらに、この粗大粒の発生と不純物の含有量との関係を調べたところ、P,Bの含有量がそれぞれ0.001mass%以下であれば、粗大粒がほとんど発生しないことがわかった。つまり、焼結体の結晶組織を均質化し、100μmを超えるような粗大粒の発生を抑制するには、不純物としてのP,Bの含有量を0.001mass%以下の極微量に低減することが必要であり、このことによってのみ、焼結体密度を高くする焼成条件、すなわち飽和磁束密度Bsを高くする条件でも、異常粒成長を抑制でき、ひいては、磁気損失Pcvを低減できることがわかった。
Mn−Zn−Ni系フェライトの基本成分の最終組成が、表1に示した組成となるように原料を配合した後、ボールミルを用いて湿式混合して乾燥し、この混合粉を大気雰囲気下で930℃×2時間の焼成を行い、仮焼粉とした。この仮焼粉に対し、SiO2,CaCO3,Nb25をそれぞれSiO2:0.006mass%、CaCO3:0.13mass%、Nb25:0.02mass%となるよう添加し、再度、ボールミルを用いて湿式混合して粉砕し、乾燥し、さらに、この粉末に、ポリビニルアルコール5mass%水溶液を10mass%加えて造粒した後、外径36mm、内径24mm、高さ12mmのリング状に成形し、この成形体を、酸素濃度を10vol%以下に制御した窒素・空気混合ガス中で、1360℃×2時間の焼成を行い最終の焼結体を得た。
このようにして得た焼結体試料に、1次側5巻・2次側5巻の巻線を施したのち、交流BHトレーサーを用いて、100℃で、100kHzの周波数で最大磁束密度200mTにおける磁気損失を測定した。また、同じ焼結体試料に、1次側20巻・2次側40巻の巻線を施し、直流BHループトレーサーを用いて、100℃で、1200A/mの磁場をかけたときの磁束密度を測定した。なお、この磁束密度は、上記大きさの磁場ではほぼ飽和しており、飽和磁束密度と見なせる。なお、これらの焼結体試料について、P,Bの含有量を分析した結果、全ての試料において、Pは0.0003mass%以下、Bは0.0002mass%以下、あるいは分析限界以下であった。
磁束密度および磁気損失の測定結果を表1中に併記して示した。この表1の結果から、本発明の基本成分に適合した実施例では、いずれも飽和磁束密度が485mTを超え、損失値も1000kW/m3以下のフェライト焼結体が得られていることがわかる。
Figure 0004523430
Mn−Zn−Ni系フェライトの基本成分が、最終組成としてFe23:MnO:ZnO:NiOが63.9:20.9:9.8:5.4のモル比となるよう配合した6種類の仮焼粉を、実施例1と同様にして作製した。この際、基本成分の原料酸化鉄として、P,Bを比較的高濃度含むものと低濃度のもの2種類を準備し、それらの配合比率を変えることにより、上記6種類の仮焼粉中に含まれるP,Bの量を変化させた。さらに、これらの仮焼粉に対し、最終的に得られる焼結体中に含まれる添加成分の含有量が、SiO2:0.009mass%、CaO:0.1mass%、Nb25:0.015mass%、ZrO2:0.009mass%となるようにSiO2,CaO,Nb25およびZrO2を添加し、湿式粉砕した後、この粉砕粉を、実施例1と同様にして、造粒、成形し、酸素濃度を5vol%以下に制御した窒素・空気混合ガス中で1350℃×2時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料について、実施例1と同様の条件で、磁気損失をおよび磁束密度を測定した。
上記測定の結果を、P,Bの含有量の分析結果と併せて表2に示した。この表2から、P,B量が本発明の範囲内である場合には、いずれも磁気損失が1000kW/m3以下のMn−Zn−Ni系フェライトが得られているのに対し、P,Bの量が本発明から外れるものは、いずれも1000kW/m3以上であることがわかる。
Figure 0004523430
実施例2で作製した発明例のNo.14および比較例のNo.18の2つの試料を切断した後、断面を研磨し、エッチングしてから、光学顕微鏡を用いて500倍の倍率で写真撮影を行い、この写真を画像処理して結晶粒径分布を求め、その結果を図1に示した。なお、上記結晶粒径は、焼結体の切断面を研磨した後、エッチングし、顕微鏡により撮影した写真(500倍)を、画像解析して結晶粒の面積を求め、この結晶粒を円と仮定して求めた直径のことである。図1の結果から、不純物であるP,Bの含有量が少ないNo.14では、100μm以上の粗大粒を含まない比較的シャープな粒径分布を示しており、これに対して、P,Bを多く含むNo.18は、100μm以上の粗大粒が多数存在しており、これが損失増大の原因となっていることがわかる。
Mn−Zn−Ni系フェライトの基本成分が、最終組成としてFe23:MnO:ZnO:NiOが61.9:19.7:12.2:6.2のモル比となるよう配合した仮焼粉を、実施例1と同様にして作製し、その仮焼粉に各種の添加成分を表3および表4に示した量で添加し、粉砕、成形したものを、酸素濃度を10vol%以下に制御した窒素・空気混合ガス中で、1230〜1380℃において2〜6時間の焼成を行なった。このようにして得た焼結体試料を、実施例1と同様の条件で磁気損失および磁束密度を測定した。
上記測定結果を、P,Bの分析結果とも併せて、表3および表4中に示した。表3および表4から、添加成分の添加量が、本発明の範囲内である場合には、いずれも飽和磁束密度が485mT以上と高く、磁気損失が1000kW/m3と低いMn−Zn−Ni系フェライトが得られるのに対し、添加成分の量が、本発明より外れているものは、いずれも磁気損失が1000kW/m3を超えていることがわかる。
Figure 0004523430
Figure 0004523430
本発明の技術は、大電流を流すことが要求されるチョークコイルにも適用することができる。
発明例と比較例のフェライト焼結体の結晶粒径分布を比較して示すグラフである。

Claims (2)

  1. 基本成分が、Fe:60.8〜64mol%、ZnO:8〜14mol%、NiO:5.2〜8mol%、残部が実質的にMnOからなり、添加成分として0.005〜0.05mass%のSiOおよび0.02〜0.2mass%のCaOを含有し、さらに、Ta:0.005〜0.1mass%、ZrO:0.01〜0.15mass%、Nb:0.005〜0.05mass%、V:0.001〜0.05mass%、HfO:0.005〜0.05mass%、Bi:0.003〜0.03mass%、MoO:0.003〜0.03mass%、TiO:0.01〜0.3mass%およびSnO:0.01〜2.0mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、かつ、P、Bの含有率がそれぞれ0.001mass%以下であり、100℃における飽和磁束密度が485mT以上、100kHz、200mTにおける磁気損失が1000kW/m 以下である高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト。
  2. 最大結晶粒径が100μm以下の焼結体からなることを特徴とする請求項1に記載の高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト。
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