JP4656949B2 - 高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト - Google Patents

高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト Download PDF

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Description

本発明は、スイッチング電源等の電源トランス、特にフライバック方式の電源トランス等に用いて好適な、高い飽和磁束密度を有するMn−Zn−Ni系フェライトに関するものである。
フェライトと称される酸化物磁性材料は、Ba系フェライト、Sr系フェライトなどの硬質磁性材料と、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライトなどの軟質磁性材料とに分類される。このうち、軟質磁性材料は、非常にわずかな磁場に対しても十分に磁化されるため、電源や通信機器、計測制御機器、コンピュータなど、多方面の分野において用いられている。そのため、これらの軟磁性材料には、飽和磁束密度が大きいことのほか、保磁力が小さくて透磁率が高いこと、磁気損失が小さいことなどの特性が要求されている。
軟磁性材料には、上記フェライト以外に、金属系のものがある。この金属系の軟磁性材料は、飽和磁束密度が高いという特長を有している反面、高周波帯域で使用する場合には、電気抵抗が低いため、渦電流に起因する損失が大きくなって低損失を維持できないという問題がある。そのため、金属系磁性材料は、電子機器の小型化・高密度化に伴い、使用周波数帯域の高周波化が進む今日では、特に、スイッチング電源等に用いられている100kHz程度の周波数帯域では、渦電流損による発熱が大きくなるので用いることができない。
このような背景から、現在、高周波帯域で用いられている電源用トランスの磁心材料としては、酸化物系のフェライト、中でも、Mn−Zn系フェライトが主に用いられている。この高周波電源用のMn−Zn系フェライトには、キュリー温度Tcが高いこと、飽和磁束密度Bsが高いこと、および磁気損失Pcvが低いことが要求される。これらの特性のうち、キュリー温度Tc、飽和磁束密度Bsは、磁気モーメントを有する金属原子の種類、ならびにその金属原子が占める位置により変化することが知られており、主成分の組成によりほぼ決定される。
ところで、近年、電子機器の電源部分は、小型化への要請に応えるため、各種部品が高密度に積載され、それら部品からの発熱により高温化する傾向にある。その結果、フェライトコアが使用される温度、つまり動作温度は、80〜100℃にも達することがある。一般に、酸化物系フェライトの飽和磁束密度は、温度の上昇とともに減少し、キュリー温度Tcで磁気が消失しゼロとなる。したがって、キュリー温度が高いほど、室温からトランス動作温度(80〜100℃)までの飽和磁束密度を高く維持することができる。一般に、キュリー温度や飽和磁束密度は、基本組成であるFe23の量が多いほど高くなることが知られており、例えば、特許文献1には、Fe23量を増やすことにより飽和磁束密度を高める技術が開示されている。
一方、フェライトの磁気損失Pcvについては、それを支配する要因として、磁気異方性定数K1ならびに飽和磁歪定数λsが知られており、従来から、Mn−Zn系フェライトにおいては、これらのパラメータの値を小さくするようなMnO−ZnO−Fe23三元系の組成領域が選択されている。すなわち、磁気損失Pcvが小さい組成領域とは、電源用トランスの動作温度(80℃〜100℃)において、磁気異方性定数K1ならびに飽和磁歪定数λsがともに小さい三元系組成領域であり、具体的には、Fe23が52〜54mol%、ZnOが10〜16mol%付近の組成領域である。したがって、磁気損失は、この領域から外れるにつれて増加の一途をたどることになる。
また、Mn−Zn系フェライトの磁気損失Pcvは、温度による変化が大きいため、基本成分組成は、動作温度付近で磁気異方性定数K1がゼロとなるような範囲を選択しているが、従来のMn−Zn系フェライト(MnO−ZnO−Fe23三元系フェライト)では、飽和磁束密度を高めるためにFe23量を増していくと、磁気損失が最小となる温度は低温側に変化する。そのため、Fe23量を増加し、磁気損失が最小となる温度が室温付近まで低下した場合には、動作温度(80℃〜100℃)での磁気損失は非常に大きな値となってしまう。
しかし、Fe23の量を、従来の範囲を超えてさらに増やしていくと、ZnOの量によっても異なるが、凡そ60mol%を境にして、磁気損失が最小となる温度が低下から上昇に転じることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。したがって、Fe23量の多い組成領域でも、基本成分を調整することにより、動作温度付近で磁気損失が最小となるようにすることができる。先述した特許文献1の技術でも、この付近の組成を選択、使用している。
特開平11−329822号公報 K.Ohta:"Magnetocrystalline Anisotropy and Magnetic Permeability of Mn-Zn-Fe Ferrites"、J.Phys.Soc.Japan、18(1963)685
ところが、MnO−ZnO−Fe23三元系においては、飽和磁束密度を高めるために、Fe23の含有量を60mol%超えまで増やすと、磁気損失が最小となる温度を動作温度付近とすることができる反面、飽和磁歪定数λsに対する最適組成領域から外れるため、磁気損失自体は増大する。したがって、従来は、高い飽和磁束密度を確保するために磁気損失を犠牲にするか、あるいは、磁気損失を優先して従来材並みの飽和磁束密度で満足するかのいずれかでしかなかった。この間題に対して、発明者らは、Fe23量が従来材より多い組成においては、NiOを基本成分に加えることにより、飽和磁束密度を高い値に維持したまま損失を低くすることができることを見出し、特願2003−420414に提案した。この技術によれば、従来材に比べると高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。しかし、近年における、電子機器の電源部分のさらなる小型化と高集積化への要請に応えるには、飽和磁束密度をより高めると同時に、磁気損失をより低減させて、発熱量を低減した材料の開発が必要とされている。
本発明の目的は、電源用トランス、特にフライバック方式のスイッチング電源用トランスとして好適な、高い飽和磁束密度と低い磁気損失を兼ね備えたMn−Zn−Ni系フェライトを提供することにある。
発明者らは、Fe23量が多く(>60mol%)かつNiOを基本成分に含むMn−Zn−Ni系フェライトは、従来のFe23が52〜54mol%、ZnOが10〜16mol%付近の組成を有するフェライトと比較して、飽和磁束密度Bsが高い反面、電気抵抗が一桁ほど小さく、そのため、高周波領域では渦電流損失が増加し、大きな発熱につながっていることに着目し、この電気抵抗を増大せしめる効果のある微量添加成分について鋭意研究を重ねた。その結果、添加成分として、Na,Kを含む化合物を添加した場合には、高い飽和磁束密度損なうことなく、電気抵抗を増加し、磁気損失を低減できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、基本成分が、Fe:58〜61.6mol%、ZnO:8〜14mol%、NiO:3〜8mol%、残部が実質的にMnOからなり、添加成分としてSiO:0.005〜0.05mass%およびCaO:0.02〜0.2mass%を含有するMn−Zn−Ni系フェライトにおいて、Na:0.02mass%以下(0を含まず)、K:0.015mass%以下(0を含まず)のいずれか1種または2種を合計で0.02mass%以下含有し、さらにTa,ZrO,Nb,V,HfO,Bi,MoO,TiOおよびSnOのうちから選ばれる1種または2種以上を下記範囲で含有し、100℃における飽和磁束密度が480mT以上、100kHz、200mTにおける磁気損失が900kW/m 以下であることを特徴とする高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライトフェライトである。

Ta:0.005〜0.1mass%
ZrO:0.01〜0.15mass%
Nb:0.005〜0.05mass%
:0.001〜0.05mass%
HfO:0.005〜0.05mass%
Bi:0.003〜0.03mass%
MoO:0.003〜0.03mass%
TiO:0.01〜0.3mass%
SnO:0.01〜2.0mass%
本発明によれば、飽和磁束密度が高くかつ磁気損失の小さいMn−Zn−Ni系フェライトを提供することができる。このMn−Zn−Ni系フェライトは、フライバック方式の電源トランスに用いて好適であり、電源部分の発熱を抑制し、ひいては小型化に大いに寄与する。
本発明の基本的な技術思想について説明する。
軟磁性材料であるMn−Zn系フェライトに求められる磁気特性としては、キュリー温度Tcが高いこと、飽和磁束密度Bsが大きいこと、磁気損失Pcvが小さいことが挙げられる。これらの特性は、基本成分であるMnO:ZnO:Fe23の比でほぼ決定される。従来の電源用Mn−Zn系フェライトが採用していたFe23:52〜54mol%、ZnO:10〜16mol%の組成領域では、Fe23量の増加にともない飽和磁束密度が増加し、キュリー温度も上昇するが、磁気異方性定数K1がゼロとなる温度、すなわち磁気損失が最小となる温度も低下するため、トランス動作温度(80〜100℃)での磁気損失が増大する。一方、ZnOの量が増加すると、損失が最小となる温度が低温側に移行するため、この温度を動作温度付近に維持するためには、相対的にFe23の量を少なくする必要があり、飽和磁束密度の低下を招く。またZnO量の増加に伴いキュリー温度も低下する。
一方、Mn−Zn系フェライトにおいて、Fe23を60mol%超え含有させた場合には、磁気異方性定数K1がゼロとなる温度がトランス動作温度(80〜100℃)付近となる組成領域においても、Fe23量の増加にともない飽和磁束密度が増加し、キュリー温度も上昇する。しかも、損失が最小となる温度は、従来のMn−Zn系フェライトとは逆に、Fe23量の増加にともない、高温側へシフトする。また、この組成領域では、飽和磁歪定数λsが大きくなるため、従来のMn−Zn系フェライトと比べると、損失値は著しく大きくなる。
ここで、Fe23を58mol%以上、特に、60mol%を超えて含むMn−Zn系フェライトに、基本成分としてさらにNiOを加えた場合には、磁気損失が顕著に低下することができる。つまり、主成分のFe23やNiOの含有量を適正範囲にすれば、飽和磁束密度が大きく低下することなく、この組成領域に特徴的な、高い損失を低減することができる。MnO−ZnO−Fe23三元系にNiOを添加することにより磁気損失が低下する理由は明らかではないが、飽和磁歪定数λsが小さくなったためと考えられる。ところが、これらの組成からなる焼結体の比抵抗は、15〜80Ωcmであり、従来組成(Fe23が52〜54mol%、ZnOが10〜16mol%付近)と比較すると一桁程度小さい。
一般に、Mn−Zn系フェライトの損失は、渦電流損失、ヒステリシス損失、それ以外の残留損失に分類され、それらのうちの渦電流損失は、電気抵抗が低下すると増加し、とくに高周波になればなるほど顕著に増加する。このことは、Fe23が60mol%以下の従来のフェライトにおいても同様であり、その対策として、粒界に偏析して焼結体の抵抗を高める微量添加成分、例えば、Ta25,ZrO2,Nb25,V25,HfO2,Bi23,MoO3等を添加して、抵抗値を増加しようとしている。しかし、Fe23が多い(>60mol%)組成では、これらの成分添加は、抵抗増加に効果があるものの、その効果は従来組成と比べると非常に小さい。そこで、発明者らは、粒界の抵抗増加成分についてさらに研究を重ねた結果、上記添加成分に加えてさらに、アルカリ金属元素であるNa,Kを含む化合物を加えた場合には、従来の添加成分よりも顕著に粒界抵抗を高めることができ、損失低減に大きく寄与することを見出したのである。本発明は、上記知見に基づくものである。
次に、本発明のフェライトの成分組成を上記範囲とする理由について説明する。
Fe:58〜61.6mol%
Feは、60mol%を超える領域では、その量が多いほど飽和磁束密度を高める働きがある。しかし、64mol%付近まで上昇すると、飽和磁束密度はほぼ飽和し、あるいは低下に転じる。また、Feは、多過ぎると、損失が最小となる温度が高くなるため、トランス動作温度での損失が増大する。このような理由から、Feの含有量は、上限を64mol%であるが、61.6mol%とする。一方、Feは、少なくなると、損失が最小となる温度が低温側に移行し、やはり動作温度での損失が増大するが、さらに、Feが少なくなって58mol%未満となると、逆に損失が最小となる温度が高温側に移行するため、トランス動作温度での損失は低くなる。しかし、100℃における飽和磁束密度が大きく低下してしまうので、Feの下限は58mol%とする。好ましくは、59〜61.6mol%の範囲である。
ZnO:8〜14mol%、
損失が最小となる温度を動作温度とするためには、Fe23の含有量に応じて、ZnOの含有量を調節する必要がある。本発明のFe23含有量が多い組成のフェライトでは、高い飽和磁束密度を得るためには、ZnOの組成は、4〜16mol%の範囲であることが好ましく、10〜12mol%付近で最大の飽和磁束密度となる。ただし、ZnOが少なくなると損失値が著しく増加するため、ZnOの下限を8mol%とする。好ましくは、10〜14mol%である。
NiO:3〜8mol%
NiOは、MnO−ZnO−Fe23三元系に加えることにより、飽和磁歪定数λsを小さくして磁気損失を低減する効果を有する。しかし、NiOの含有量が3mol%未満では、この改善効果が小さい。一方、NiOの含有量を増やすと、損失が最小となる温度が高温側にシフトして行くが、8mol%を超えた場合には、Fe23やZnOの量を調整しても、損失が最小となる温度を動作温度付近に維持できなくなる。よって、NiOは3〜8mol%の範囲とする。好ましくは、5〜8mol%である。
本発明のMn−Zn−Ni系フェライトは、上記基本成分に、添加成分としてSiO2,CaOを下記の範囲で添加する必要がある。
SiO2:0.005〜0.05mass%
SiO2は、粒界を高抵抗化すると共に、焼結を促進する効果があり、その効果を引き出すためには0.005mass%以上の添加が必要である。しかし、多すぎた場合には、異常粒成長を起こすため、上限を0.05mass%とする。ただし、この上限付近の添加量では、粒成長を抑止して最適な結晶組織とするために、焼結温度を下げる等の配慮が必要である。好ましい添加量は、0.005〜0.02mass%である。
CaO:0.02〜0.2mass%
CaOは、SiO2とともに、粒界を高抵抗化して磁気損失を小さくする働きがある。0.02mass%未満ではその効果が得られず、一方、0.2mass%を超えると、焼結密度が低下するので、0.2mass%以下とする。好ましい添加量の範囲は、0.01〜0.1mass%である。
本発明のMn−Zn−Ni系フェライトは、上記基本成分、添加成分に加えてさらに、Na,Kの1種または2種を下記の範囲で添加することにより、焼結体の電気抵抗を高めて、低い磁気損失を得ることができる。
Na:0.02mass%以下(ただし、0を含まず)
Naは、粒成長を抑制すると共に、結晶粒界に偏析して電気抵抗を高める効果があり、損失の低減に寄与する。上記電気抵抗を高める効果は、後述する酸化物系の添加成分に比べて大きく、添加量にほぼ比例して増加するが、0.02mass%付近でほぼ飽和する。また、Naの添加によって、僅かではあるが焼結密度が低下し、それに伴い、飽和磁束密度も低下する傾向がある。そのため、添加量は低く抑えることが好ましく、0.02mass%を上限とする。なお、損失低減効果を享受すると共に、飽和磁束密度を高く維持する観点からは、Naの好ましい添加範囲は0.0005〜0.015mass%である。
K:0.015mass%以下(ただし、0を含まず)
Kは、Naと同様に、結晶粒界に偏析して電気抵抗を高める効果がある。その効果は、Naより少ない添加量で発現するが、添加量が多くなると、その効果が減少する。また、Kの添加量の増加にしたがい、焼結密度が低下し、飽和磁束密度も低下するため、上限を0.015mass%とする。好ましくは、0.0005〜0.010mass%の範囲である。
本発明のMn−Zn−Ni系フェライトは、磁気損失をより小さくするために、上記基本成分および必須添加成分の他にさらに、スピネルに固溶しないTa25,ZrO2,Nb25,V25,HfO2,Bi23,MoO3やスピネル構成元素として部分的に固溶するTiO2およびSnO2の中から選ばれる1種または2種以上を、下記の範囲で添加することができる。
Ta25:0.005〜0.1mass%
Ta25は、SiO2,CaOの共存下で比抵抗の増大に寄与するが、含有量が0.005mass%に満たない場合はその添加効果に乏しく、一方、0.1mass%を超えると、逆に磁気損失の増大を招く。したがって、Ta25は、0.005〜0.1mass%の範囲で添加するのが好ましい。
ZrO2:0.01〜0.15mass%
ZrO2は、SiO2,CaO,Ta25の共存下で、Ta25と同様に、粒界の抵抗を高めて高周波帯域での磁気損失の低減に寄与する。Ta25と比べると、抵抗増加の効果が少ないが、損失低減への寄与は大きく、特に、磁気損失が最小となる温度付近から高温側における損失の低減に有効に寄与する。ZrO2含有量が0.01mass%未満では、その効果に乏しく、一方、0.15mass%を超えると、逆に比抵抗を高める効果が飽和し、磁気損失が増大する。よって、ZrO2は0.01〜0.15mass%とすることが好ましい。
Nb25:0.005〜0.05mass%
Nb25は、SiO2,CaOと共に粒界相を形成し、粒界抵抗を高めて磁気損失の低減に寄与する。0.005mass%未満ではその効果に乏しく、逆に、0.05mass%を超えると、過剰に粒界相に析出し、磁気損失を増大するので、0.005〜0.05mass%の範囲で添加するのが好ましい。
25:0.001〜0.05mass%、HfO2:0.005〜0.05mass%
25,HfO2は、ともに異常粒成長を抑制し、粒界抵抗を高める働きがある。少ないとその改善効果がなく、また多すぎると磁気損失が増大するため、V25は0.001〜0.05mass%、HfO2は0.005〜0.05mass%の範囲で添加することが好ましい。
Bi23:0.003〜0.03mass%、MoO3:0.003〜0.03mass%
Bi23,MoO3は、結晶粒内の応力を緩和する働きがあり、磁気損失の低減に寄与する。少ないとその改善効果がなく、また多すぎると磁気損失が増大するため、Bi23は0.003〜0.03mass%、MoO3は0.003〜0.03mass%の範囲で添加するのが好ましい。
TiO2:0.01〜0.3mass%、SnO2:0.01〜2.0mass%
TiO2,SnO2は、スピネル構成元素として部分的に粒内に固溶する成分である。TiO2は、一部粒界にも存在し、焼成後の冷却過程で粒界再酸化を助長して磁気損失を低下させる。この効果を得るためには、0.01mass%以上の添加が好ましい。逆に、多すぎると異常粒成長を引き起こすため、0.3mass%以下の範囲で添加することができる。SnO2は、損失低減に寄与するためには、0.01mass%以上添加することが好ましく、また、TiO2ほど異常粒成長を引き起こさないため、上限は2.0mass%まで添加することができる。
Mn−Zn−Ni系フェライトの基本成分の最終組成が表1に示した組成となるように、原料酸化物を配合し、ボールミルを用いて湿式混合し、乾燥し、その後、この混合粉を大気雰囲気中で925℃×3時間の仮焼を行ない仮焼粉とした。この仮焼粉に対し、最終組成がSiO:0.006mass%、CaCO3:0.13mass%、KCO:0.015mass%、Nb:0.02mass%となるよう添加し、再度ボールミルを用いて湿式混合して粉砕し、乾燥して得た粉末に、ポリビニルアルコール5mass%水溶液を10mass%加えて造粒し、外径36mm、内径24mm、高さ12mmのリング状に成形した。この成形体を、酸素濃度を8vol%以下に制御した窒素・空気混合ガス中で1370℃×2時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料に、1次側20巻・2次側40巻の巻線を施し、直流BHループトレーサーを用いて、100℃における、1200A/mの磁場をかけたときの磁束密度を測定した。なお、上記磁束密度は、この大きさの磁場ではほぼ飽和しており、飽和磁束密度Bsと見なせる。また、同じ焼結体試料に、1次側5巻・2次側5巻の巻線を施し、交流BHトレーサーを用いて、100℃における、周波数100kHz、最大磁束密度200mTの電力損失Pcvを測定した。
上記磁束密度および電力損失の測定結果を表1中に併記して示した。この表から、本発明の基本成分に適合した実施例(No.2,3,5〜8)では、480mTを超える飽和磁束密度と900kW/m以下の低い損失を兼ね備えたフェライトが得られることがわかる。
Figure 0004656949
Mn−Zn−Ni系フェライトの基本成分が、最終組成としてFe:MnO:ZnO:NiOが61.6:20.2:12.8:5.4のモル比を有するよう調整した仮焼粉を、実施例1と同様にして作製した。この仮焼粉に対し、最終組成がSiO:0.009mass%、CaCO:0.1mass%、Ta:0.035mass%、ZrO:0.02mass%となるよう添加し、さらに、NaCO,KCOを、添加量を0〜0.025mass%近傍までの範囲で変化させて添加し、湿式粉砕して得た粉砕粉を、実施例1と同様にして、造粒、成形した後、酸素濃度を8vol%以下に制御した窒素・空気混合ガス中で1370℃×2時間の焼成を行った。
このようにして得られた焼結体試料について、実施例1と同様の条件で、磁束密度と磁気損失を測定した。また、電気抵抗率ρ(Ω・cm)を4端子法で測定した。それらの結果を、Na,Kの添加量との関係で整理し、図1〜3に示した。これらの図から、Na,Kの添加量が、本発明の範囲にある場合には、損失が低いMn−Zn−Ni系フェライトが得られることがわかる。
Mn−Zn−Ni系フェライトの基本成分が、最終組成としてFe23:MnO:ZnO:NiOが60.8:20.4:13.6:5.2のモル比を有するよう調整した仮焼粉を、実施例1と同様にして作製し、この仮焼粉に、添加成分として、表2および表3に示した各種酸化物を添加して粉砕し、成形したものを、酸素濃度を10vol%以下に制御した窒素・空気混合ガス中で1230〜1380℃×2〜6時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料を、実施例1と同様の条件で、磁束密度および磁気損失を測定し、これらの測定結果を表2および表3に併記して示した。表2および表3から、添加成分の添加量が本発明の範囲である場合には、飽和磁束密度が高くかつ比較的損失が低いMn−Zn−Ni系フェライトが得られているのに対し、添加量が、本発明から外れているものは、いずれも磁気損失が大きくなっていることがわかる。
Figure 0004656949
Figure 0004656949
本発明の技術は、大電流を流すことが要求されるチョークコイルにも適用することができる。
Na,Kの添加量がMn−Zn−Ni系フェライトの磁気損失Pcvに及ぼす影響を示すグラフである。 Na,Kの添加量がMn−Zn−Ni系フェライトの飽和磁束密度Bsに及ぼす影響を示すグラフである。 Na,Kの添加量がMn−Zn−Ni系フェライトの電気抵抗率ρに及ぼす影響を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 基本成分が、Fe:58〜61.6mol%、ZnO:8〜14mol%、NiO:3〜8mol%、残部が実質的にMnOからなり、添加成分としてSiO:0.005〜0.05mass%およびCaO:0.02〜0.2mass%を含有するMn−Zn−Ni系フェライトにおいて、Na:0.02mass%以下(0を含まず)、K:0.015mass%以下(0を含まず)のいずれか1種または2種を合計で0.02mass%以下含有し、さらにTa,ZrO,Nb,V,HfO,Bi,MoO,TiOおよびSnOのうちから選ばれる1種または2種以上を下記範囲で含有し、100℃における飽和磁束密度が480mT以上、100kHz、200mTにおける磁気損失が900kW/m 以下であることを特徴とする高飽和磁束密度Mn−Zn−Ni系フェライト。

    Ta:0.005〜0.1mass%
    ZrO:0.01〜0.15mass%
    Nb:0.005〜0.05mass%
    :0.001〜0.05mass%
    HfO:0.005〜0.05mass%
    Bi:0.003〜0.03mass%
    MoO:0.003〜0.03mass%
    TiO:0.01〜0.3mass%
    SnO:0.01〜2.0mass%
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