JP3917325B2 - フェライト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライトに関し、特に、0 〜100 ℃程度の広い温度範囲において損失(磁気損失)が小さく、かつ損失の温度変化がほとんどないフェライトに関する。
【0002】
【従来の技術】
フェライトと称される酸化物磁性材料は、BaフェライトやSrフェライトなどの硬質磁性材料とMnZnフェライトやNiZnフェライトなどの軟質磁性材料とに分類される。このうち軟質磁性材料は、非常にわずかな磁場に対しても十分に磁化する材料であり、スイッチング電源用トランス等の磁心として用いられている。それ故に、この軟質磁性材料には、キュリー温度が高いこと、保磁力が小さく透磁率が高いこと、飽和磁束密度が高いこと、損失が小さい(低損失)ことなどの多くの特性が要求される。
【0003】
電子機器の小型化、高密度化に伴って使用周波数領域の高周波化が進む今日では、軟質磁性材料のなかでも、損失が小さく、発熱が少ないMnZnフェライトを電源用トランスの磁心材料として用いることが主流となっている。
【0004】
損失を支配する要因として磁気異方性定数(K1)ならびに磁歪定数(λs )が知られている。MnZnフェライトにおいても、電源用トランスの動作温度(50〜80℃)近傍で、磁気異方性定数(K1)ならびに磁歪定数(λs )がともに小さくなるように、MnO 、ZnO 、およびFe2O3 の組成が選択されている。しかしながら、電源用トランスへ応用する場合、動作温度よりも高めの90〜100 ℃で損失が極小となるように設定される。これは以下のような理由によるものである。MnZnフェライトの損失は大きな温度依存性を持っており、室温から温度が高くなるにつれて損失は低下し、極小温度を境に増加に転じる。電源用トランスの動作温度が50〜80℃であっても、周囲の電子部品の温度上昇や使用環境温度によっては、トランスの温度がしばしば100 ℃近くになる場合もある。このような条件を想定し、またMnZnフェライトの損失の温度依存性を考慮して、電源用トランス磁心材料では90〜100 ℃付近で損失が極小となるように材料設計されている。
しかしながら、本質的には動作温度である50〜80℃付近で損失が小さいことが望まれるため、損失の絶対値を小さくするとともに、損失の温度変化を出来る限り小さくすることが必要である。この要請については、特公平8−1844号公報において、Fe2O3 、ZnO 、MnO を主成分とし、CoO を1000〜4000ppm と、さらにCaO 、Ta2O5 およびSiO2を複合添加することで、500 kHz以上の周波数領域で、20〜120 ℃の温度範囲において損失が小さいMnZnフェライトを得ることができる旨が記載されている。また、特開平8−191011号公報においてもCoO が添加されたMnZnCo系フェライト磁心材料が開示されている。
【0005】
しかしながら、ここ数年来の電源の用途も変化しており、例えば屋外で、あるいは冷凍庫内で使用される場合もあり、より低温での環境も考慮に入れる必要が生じてきた。しかるに上記材料の0℃付近での損失は大きく、低温で使用する場合には問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術が抱えている上述した課題を解決できるフェライトを提供することにあり、特に、現在、スイッチング電源に適用されている数百kHz 程度の周波数領域において、0 〜100 ℃程度の広い温度範囲で損失が小さく、かつ損失の温度変化が非常に小さなフェライトを提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上掲の目的を達成するために、発明者らはMnO-ZnO-Fe2O3 三元系を基本としてこれにCoO を含有させた基本成分系に、SiO2およびCaO を含有せしめたフェライトにおいて、損失の絶対値と温度依存性におよぼすCoO の含有量に着目しその特性について鋭意研究を行った。その結果、CoO の含有量に見合ったFe2O3 およびZnO の含有量を決めること、すなわち、CoO の含有量に応じて他の基本組成範囲を選択することにより、損失が小さく、かつ損失の温度変化が非常に小さくなることを知見した。
【0008】
すなわち、本発明のフェライトは、ZnO:6〜14mol%、CoO:0.5mol%を超えて0.8mol%以下、Fe2O3:[55.91−2.3×{CoO(mol%)}−0.18×{ZnO(mol%)}]mol%以上、[56.01−2.3×[CoO(mol%)]−0.18×[ZnO(mol%)]]mol%以下、残部が実質的にMnOの組成となる基本成分に対して、外枠量でSiO2:0.0050〜0.0500wt%およびCaO:0.0200〜0.2000wt%を含有させ、さらにTa2O5、ZrO2、Nb2O5、V2O5およびHfO2のうちから選ばれる少なくとも1種の成分を下記の範囲で含有させるフェライトであって、最大磁束密度200mT、周波数100kHz、温度範囲が0〜100℃で測定した損失の変化幅(ΔP/P)が10%未満となることを特徴とする。
ここで、変化幅(%)=(|Pmax−Pmin|/Pmax)×100
(ただし、Pmax:損失の最大値、Pmin:損失の最小値))
記
Ta2O5:0.0050〜0.1000wt%
ZrO2:0.0100〜0.1500wt%
Nb2O5:0.0050〜0.0500wt%
V2O5:0.0050〜0.0500wt%
HfO2:0.0050〜0.0500wt%
【0009】
また、上記発明において、さらにTiO2とSnO2の少なくとも一種の成分を外枠量として、下記の範囲で含有させるとともに、上記Fe2O3 の含有量をCoO およびZnO の上記範囲での含有量およびTiO2とSnO2の下記の範囲での含有量に応じて下記の範囲で減少させることが望ましい。
TiO2:0.0500〜0.3000wt%
SnO2:0.0500〜0.8000wt%
Fe2O3 :[55.91 −2.3 ×{CoO(mol %) }−0.18×{ZnO(mol %) }−4.2 ×{TiO2(mol%) }−2.4 ×{SnO2(mol%) }]mol %以上、[56.01 −2.3 ×[CoO(mol%)]−0.18×[ZnO(mol%)]−4.2 ×{TiO2(mol%) }−2.4 ×{SnO2(mol%) }]mol %以下。
【0010】
上記発明において、各組成を上記の如く選択することによって、最大磁束密度200mT、周波数100kHz、温度範囲が0〜100℃で測定した損失の変化幅(ΔP/P)が10%未満となるようなフェライト、すなわち、損失の温度変化が非常に小さなフェライトが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるフェライトにおいて、成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
ZnO :6 〜14 mol%
フェライトには、飽和磁束密度が大きいこと、キュリー温度が高いこと、損失が小さいことが求められる。前者2項目は、基本成分であるMnO 、ZnO ,Fe2O3 ,CoO の含有量の比でほぼ決まる。Zn0 の含有量が少ない領域においては、ZnO の含有量の増加に伴って飽和磁束密度は増加するが、これと同時にキュリー温度も低下する。ZnO の含有量が大きすぎると、CoO を含有する場合、損失が極小となる温度と損失値が、わずかなCoO 含有量の増加で急激に大きくなる。したがって、ZnO 量は6 mol%以上で14 mol%以下とする。
【0012】
損失が極小となる温度は磁気異方性定数(K1)の温度変化を反映している。すなわち、K1は低温では負の値であり、温度上昇とともに増加し、やがて正の値となる。このK1=0となった点で損失が極小となる。MnZnフェライトの主要化合物であるスピネルを構成する各元素イオンがそれぞれK1に寄与している。Fe2O3 が50mol %以上の領域においては、Fe2O3 量の増加に伴い損失が極小となる温度は低下する。これは化学量論組成より過剰のFe2O3 を含む組成においては2 価の鉄イオンが存在し、これがK1=0となる温度を低温側にシフトさせる。これらの構成イオンの寄与の総和により、K1の温度依存性が決まる。
【0013】
CoO:0.5mol%を超えて0.8mol%以下
CoO は、損失の温度変化を小さくする働きがある。これはコバルトイオンにK1=0となる温度を低温側にシフトさせる働きと、K1の温度変化を緩やかにする働きがあるため、CoO を添加すると、2価の鉄イオンのK1に対する寄与に置き変わり、その結果、K1 の温度依存性が小さくなると考えられている。したがって、コバルトイオン、2価の鉄イオン、その他のイオン量を適宜調整することによって、K1の温度変化を非常に小さくし、K1をゼロに近い値でほぼ一定とできる可能性がある。
【0014】
すなわち、あるZnO 量に対して、K1の温度変化を十分小さくするCoO 量の範囲が決まり、これらのZnO 量、CoO 量に対して最適なFe203 量を決めることにより、K1の温度変化を小さくして、損失を一定に近づけることができる。
ここで、K1の温度変化を十分に小さくするためには、0.5mol%を超えるCoO 量が必要であり、逆に多すぎると損失が大きくなるため、0.8mol%を上限とした。
これらのZnO 量、CoO 量の各 mol%に対して、次式で表されるFe203 量とすることにより、温度に対し損失をほぼ一定とすることができ、その変化幅は10%以下となることがわかった。
Fe203 :[55.91 −2.3 ×{CoO(mol%) }−0.18×{ZnO(mol%) }]mol%以上、[56.01 −2.3 ×[CoO(mol%)] −0.18×[ZnO(mol%)] ]mol%以下。
【0015】
以上は基本成分に関するものであるが、SiO2、CaO を外枠量として添加することは、焼結性を高め、かつ、粒界相を高抵抗化して低損失を実現するために必要不可欠である。
SiO2:0.0050〜0.0500wt%
SiO2の添加は焼結促進の効果があり、その添加効果を引き出すためには0.0050wt%以上必要であり、多すぎると異常粒成長を起こすため上限を0.0500wt%とする。ただし、この上限付近の含有量では焼結温度を下げる等の考慮が必要である。SiO2の含有量が比較的多い場合は、最適な粒界の制御が難しいため、SiO2の含有量を0.0050〜0.0350wt%とすることが好ましい。
【0016】
CaO :0.0200〜0.2000wt%
また、CaO はSiO2とともに粒界を高抵抗化して損失を小さくする効果がある成分である。0.0200wt%以下ではその効果が見られず、0.2000wt%を越えると焼結性に問題があるので0.2000wt%以下とした。SiO2が少ない場合、CaO の含有量は0.0200〜0.1250wt%であるのが好ましい。
【0017】
本発明にかかるフェライトでは、スピネルを形成しない化合物である、Ta2O5 、ZrO2、Nb2O5 、V2O5、HfO2のうちから選ばれる少なくとも1種の成分を含有させることが、損失の小さいフェライトとする上で必須である。以下、各成分の限定理由を述べる。
【0018】
Ta2O5 :0.0050〜0.1000wt%
Ta2O5 は、SiO2、CaO の共存下で比抵抗の増大に有効に寄与するが、含有量が0.0050wt%に満たないとその添加効果に乏しく、一方、0.1000wt%を超えると逆に損失が大きくなる。したがって、Ta2O5 の含有量を0.0050〜0.1000wt%に限定した。ただし、含有量が多くなると、その効果が顕著でなくなるため、含有量は0.0100〜0.0800wt%の範囲であることが好ましい。
【0019】
Zr02:0.0100〜0.1500wt%
Zr02は、SiO2、CaO などの共存下でTa2O5 と同様に粒界の抵抗を高めて高周波数領域での損失の低下に有効に寄与する成分である。抵抗増加の割合はTa2O5 と比べると効果が少ないが、損失低下の寄与は大きく、特に、損失が極小となる温度付近から高温側での損失低下に寄与している。
Zr02の含有量は0.0100wt%未満ではその効果に乏しく、一方、0.1500wt%を超えると、逆に比抵抗を高める効果が少なくなり損失が大きくなるため、含有量を0.0100〜0.1500wt%に限定した。Zr02の好ましい含有量は0.0100〜0.1000wt%の範囲である。
【0020】
Nb2O5 :0.0050〜0.0500wt%
Nb2O5 は、SiO2、CaO とともに粒界相を形成し、粒界抵抗を高め、損失低下に寄与する成分である。このNb2O5 の含有量が0.0050wt%未満ではその効果に乏しく、0.0500wt%を越えると過剰に粒界相に析出して、かえって損失が大きくなってしまうので、0.0050〜0.0500wt%の範囲に限定した。最も顕著な効果が得られるのは、0.0050〜0.0250wt%の範囲である。
【0021】
V2O5:0.0050〜0.0500wt%、HfO2:0.0050〜0.0500wt%
V2O5、HfO2はともに異常粒成長を抑制し、かつ粒界抵抗を高める働きがある成分である。これらの含有量が0.0050wt%未満ではその改善効果がなく、一方、0.0500wt%を超えると損失が大きくなるため、0.0050〜0.0500wt%の範囲に限定した。どちらかといえば高価格であるので、ともに0.0050〜0.030 wt%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0022】
上記発明において、外枠量として含有させるSiO2、CaO 、Ta2O5 、ZrO2、Nb2O5 、V2O5およびHfO2の他に、さらにTiO2あるいはSnO2の少なくとも一種の成分を含有させることが損失を小さくする点で望ましいが、その際に、TiO2とSnO2の含有量に応じてFe2O3 の含有量を減少させるような微調整が必要ある。以下、説明する。
【0023】
TiO2:0.0500〜0.3000wt%
TiO2は、一部粒界に存在し焼結後の冷却過程で粒界再酸化を助長して損失を小さくする成分である。また、TiO2は4価のイオン(Ti+4)としてスピネル格子の原子とも置換して損失が極小となる温度を低下させる働きもある。TiO2の含有量が0.0500wt%未満ではその改善効果がなく、一方、含有量が多すぎると異常粒成長を引き起こして損失が大きくなるため、0.3000wt%以下で含有させる。好ましくは、0.0500〜0.2500wt%の範囲で含有させる。
【0024】
SnO2:0.0500〜0.8000wt%
SnO2もTiO2と同様な働きがあり、損失低下に寄与する成分である。また、4価のイオン(Sn4+)としてスピネル格子の原子とも置換して、損失が最小となる温度を低下させる働きもある。しかしながら、SnO2の含有量が多すぎると損失が大きくなるため、0.0500〜0.8000wt%の範囲で含有させ、好ましくは、0.0500〜0.6000wt%で含有させる。
なお、これらの成分は製造時に必ずしも酸化物の形で添加する必要はなく、たとえば、炭酸塩の形で混合してもかまわない。
【0025】
上記発明において、Fe2O3 の含有量が、基本成分であるCoO およびZnO の含有量だけでなく、TiO2とSnO2の含有量に応じて調整される必要があり、TiO2を1wt%含有した場合には、Fe2O3 量を4.2mol%減少させ、SnO2を1wt%含有した場合には、Fe2O3 量を2.4mol%減少させることが有効であることがわかった。すなわち、Fe2O3 の含有量は、以下の式で表される。
Fe2O3 :[55.91 −2.3 ×{CoO (mol%) }−0.18×{ZnO (mol%) }−4.2 ×{TiO2(mol%) }−2.4 ×{SnO2(mol%) }]mol%以上、[56.01 −2.3 ×[CoO(mol%)]−0.18×[ZnO(mol%)]−4.2 ×{TiO2(mol%) }−2.4 ×{SnO2(mol%) }]mol %以下。
【0026】
以上は、各組成の限定理由の説明であるが、2価の鉄イオン量は、上記各組成だけでなく、材料の酸化度、すなわち焼成中の酸素濃度によっても影響を受けるため、特に、900 ℃以下の冷却過程の酸素濃度に注意を払う必要があり、500 ppm以下の酸素濃度であることが好ましい。
本発明における損失の温度変化について、測定条件が周波数100 kHz、最大磁束密度200 mTで規定しているが、数百kHzまでの周波数で、かつ異なる最大磁束密度での測定条件の場合でも、損失の温度変化に対する効果はほぼ同じであることが認められた。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
最終組成として表1に示した組成となるよう、基本成分の原料を配合したのち、ボールミルを用いて湿式混合を16時間かけて行ない、その後乾燥した。この混合粉を大気雰囲気で970 ℃で2 時間の仮焼を行なった。この仮焼粉に対して、SiO2:0.008 wt%、CaCO3 :0.13wt%、Ta2O5 :0.04wt%およびHfO2:0.02wt%を添加し、再度ボールミルを用いて湿式混合粉砕して乾燥させた。この粉末にポリビニルアルコール5wt%水溶液を10wt%加えた後、造粒した粉末を外径36mm、内径24mm、高さ12mmのリング状に成形し、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1330℃、3 時間の焼成を行なった。
このようにして得られた焼結体試料(適合例1および比較例1〜3)のそれぞれについて、巻線を施し(1次側5巻・2次側5巻)100kHzの周波数で最大磁束密度200mT の条件下で、交流BHトレーサーにより損失を0〜120 ℃の温度範囲で測定した。その温度範囲内での損失の変化を図1に示す。また、そのときの80℃における損失ならびに式(1) で求めた損失の変化幅(0〜100 ℃)を表1にあわせて示した。この表に示すように、本発明による限定された範囲内の成分組成とした適合例1によるフェライトは、損失の変化幅が6.2 %であり、比較例1〜3の変化幅と比べてみても、損失がほとんど変化しないことがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例2)
主成分組成が表2および表3に示す組成となるよう、実施例1と同様に仮焼粉を作製し、同様の添加物を加えて粉砕、成形したものを焼成し、試料を作製した。得られた焼結体試料(適合例2〜19および比較例4〜38)について、実施例1と同様に周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で、損失を0 〜120 ℃の温度範囲において測定した。その一部の試料について、温度に対する損失の変化を図2〜図6に示した。これらの図においては、ZnO およびCoO の含有量が同じであるが、Fe2O3 含有量が異なる試料毎に比較して示した。たとえば、図2においては、ZnO およびCoO の含有量がそれぞれ12.0mol %および0.51mol %と同じであるが、Fe2O3 含有量がそれぞれ52.59 mol %、52.49 mol %、52.39 mol %と異なっている適合例3、比較例6、比較例7について示した。これら図2〜6から明らかなように、Fe2O3 の含有量が最適値よりも多い場合は、低温で損失が大きくなり、最適値より少ない場合は、全温度範囲で損失が大きくなる傾向がある。また、各組成における80℃の損失、式(1) で求めた損失の変化幅、および各適合例2〜19のFe2O3 含有量が請求項1に記載された範囲内にあることを表2および表3にあわせて示した。
【0030】
ここで、表2および表3におけるZnO 量に対する最適なFe2O3 量を求めるために、CoO 含有量をパラメータとしてプロットすると、図7のようになり、ZnO 量が6〜14 mol%の範囲でほぼ直線状になり、その傾きはCoO 濃度によらずほぼ一定であり、ZnO 量に対して約-0.18 であることがわかる。ただし、切片(ZnO が0mol%の時のFe2O3 の量)が異なっている。これらの各点を直線近似した直線の切片をCoO 量に対してプロットすると、図8に示すように、傾きがほぼ約-2.3、切片が55.96 の直線上に並んでいることがわかる。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
したがって、損失が温度に対してほぼ一定となるような、最適なFe2O3 量は、両方のグラフにおける直線近似から以下のように近似される。
[Fe2O3(mol%)]=55.96−2.3 ×[CoO(mol%)]−0.180 ×[ZnO(mol%)]
【0034】
実施例1における適合例1と同じCoO およびZnO 含有量である適合例18、19および比較例18〜20の損失の温度変化を、適合例1と比較して図9に示す。ここで、これらのコアの、式(1) による損失の変化幅(ΔP/P)は、図10に示すように、Fe2O3 量が先に求めた最適Fe2O3 量の±0.05mol %以内であれば、温度変化としては小さいものと評価される。よって、Fe2O3 量の範囲は、次のようになる。
Fe2O3 :[55.91 −2.3 ×{CoO (mol%) }−0.18×{ZnO (mol%) }]mol %以上、[56.01 −2.3 ×[CoO(mol%)]−0.18×[ZnO(mol%)]]mol %以下。
【0035】
(実施例3)
最終組成としてFe203 :Mn0 :ZnO :CoO が52.9:37.0:9.4 :0.61のモル比の主成分組成に対して、実施例1と同様に仮焼粉を作製し、表4で示した各種酸化物を添加して粉砕、成形したものを、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1200〜1350℃において2〜6時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料(適合例20〜39、および比較例39〜51)に実施例1 と同様に巻き線を施し、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で、損失を測定した。各組成における80℃における損失、および式(1) で求めた損失の変化幅を表4にあわせて示した。なお、実施例3の場合、請求項1に記載されたFe203 含有量の範囲は52.82 〜52.92 である。この表に示すように、各種酸化物の適切な成分範囲内での添加による効果は明らかであり、損失が小さくなっていること、およびその損失の変化幅は10%未満となっていることがわかる。
【0036】
【表4】
【0037】
(実施例4)
最終組成としてFe2O3 :Mn0 :ZnO :CoO が表5の主成分組成となるように、実施例1と同様に仮焼粉を作製し、また表5で示した各種酸化物とTa205 :0.04wt%およびZrO2:0.025 wt%を添加して粉砕、成形したものを、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1200〜1350℃において2〜6時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料(適合例40〜47、および比較例52〜57)を、実施例1と同様に巻き線を施し、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で、損失を測定した。各添加物組成における80℃の損失、式(1) で求めた損失の変化幅、および各適合例40〜47のFe2O3 含有量が請求項2に記載された範囲内にあることを表5にあわせて示した。この表に示すように、TiO2とSnO2を添加した場合には、Fe2O3 の含有量を微調整する必要があり、Fe2O3 量が不適当であると損失の変化幅が大きくなり、一方、添加量の少ない場合は、損失低下の改善が見られないことがわかる。
【0038】
【表5】
【0039】
(実施例5)
最終組成としてFe2O3 :Mn0 :ZnO :CoO が表6の主成分組成となるよう、実施例1 と同様に仮焼粉を作製し、また表6で示した各種酸化物とNb205 :0.01wt%およびV2O5:0.0085wt%を添加して粉砕、成形したものを、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1200〜1350℃において2〜6時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料(適合例48〜53、および比較例58〜61)を、実施例1と同様に巻き線を施し、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で、損失を測定した。各添加物組成における80℃の損失、式(1) で求めた損失の変化幅、および各適合例48〜53のFe2O3 含有量が請求項2に記載された範囲内にあることを表6にあわせて示した。この表に示すように、TiO2とSnO2を添加した場合には、Fe2O3 の含有量を微調整する必要があり、Fe2O3 量が不適当であると損失の変化幅が大きくなり、一方、添加量の多い場合は、損失が大きくなることがわかる。
【0040】
【表6】
【0041】
(実施例6)
最終組成としてFe2O3 :Mn0 :ZnO :CoO が表7の主成分組成となるよう、実施1 と同様に仮焼粉を作製し、また表7で示した各種酸化物とNb205 :0.012wt %およびHfO2:0.0085wt%を添加して粉砕、成形したものを、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス中で1200〜1350℃において2 〜6 時間の焼成を行なった。このようにして得られた焼結体試料(適合例54〜58、および比較例62〜64)を、実施例1と同様に巻き線を施し、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で、損失を測定した。各添加物組成における80℃の損失、式(1) で求めた損失の変化幅、および各適合例54〜58のFe2O3 含有量が請求項2に記載された範囲内にあることを表7にあわせて示した。この表に示すように、TiO2とSnO2を添加した場合には、Fe2O3 の含有量を微調整する必要があり、Fe2O3 量が不適当であると損失の変化幅が大きくなり、一方、添加量の少ない場合は、損失低下の改善が見られないことがわかる。
【0042】
【表7】
【0043】
【発明の効果】
本発明によるフェライトは、0 〜100 ℃程度の比較的広い温度範囲において、損失が小さく、かつ損失の温度変化がほとんどないので、スイッチング電源トランス等の磁心に最適なフェライトとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた各フェライトの損失と温度との関係を、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で測定した結果を示すグラフである。
【図2】実施例2で得られた適合例3および比較例6、7のフェライトの損失と温度との関係を、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で測定した結果を示すグラフである。
【図3】実施例2で得られた適合例7および比較例14、15のフェライトの損失と温度との関係を、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で測定した結果を示すグラフである。
【図4】実施例1、2で得られた適合例1および比較例18、19のフェライトの損失と温度との関係を、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で測定した結果を示すグラフである。
【図5】実施例2で得られた適合例13および比較例29、30のフェライトの損失と温度との関係を、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で測定した結果を示すグラフである。
【図6】実施例2で得られた適合例15および比較例33、34のフェライトの損失と温度との関係を、周波数100kHz、最大磁束密度200mT の条件下で測定した結果を示すグラフである。
【図7】実施例2において、CoO 量を変化させた場合の、ZnO 量に対する最適Fe2O3 量の関係を示すグラフである。
【図8】図7におけるy切片に対するCoO 量の関係を示すグラフである。
【図9】実施例1、2で得られた適合例1、18、19および比較例18、19、20のフェライトの損失の温度変化を示すグラフである。
【図10】図9に示す各フェライトが含有するFe2O3 量に対する損失の変化幅を示すグラフである。
Claims (2)
- ZnO:6〜14mol%、CoO:0.5mol%を超えて0.8mol%以下、Fe2O3:[55.91−2.3×{CoO(mol%)}−0.18×{ZnO(mol%)}]mol%以上、[56.01−2.3×[CoO(mol%)]−0.18×[ZnO(mol%)]]mol%以下、残部が実質的にMnOの組成となる基本成分に対して、外枠量でSiO2:0.0050〜0.0500wt%およびCaO:0.0200〜0.2000wt%を含有させ、さらにTa2O5、ZrO2、Nb2O5、V2O5およびHfO2のうちから選ばれる少なくとも1種の成分を下記の範囲で含有させるフェライトであって、最大磁束密度200mT、周波数100kHz、温度範囲が0〜100℃で測定した損失の変化幅(ΔP/P)が10%未満となることを特徴とするフェライト。ここで、変化幅(%)=(|Pmax−Pmin|/Pmax)×100
(ただし、Pmax:損失の最大値、Pmin:損失の最小値)
記
Ta2O5:0.0050〜0.1000wt%
ZrO2:0.0100〜0.1500wt%
Nb2O5:0.0050〜0.0500wt%
V2O5:0.0050〜0.0500wt%
HfO2:0.0050〜0.0500wt% - さらにTiO2とSnO2の少なくとも一種の成分を外枠量として、下記の範囲で含有させるとともに、上記Fe2O3の含有量をCoO、ZnOの上記含有量およびTiO2、SnO2の下記含有量に応じて下記の範囲で減少させることを特徴とする請求項1に記載のフェライト。
TiO2:0.0500〜0.3000wt%
SnO2:0.0500〜0.8000wt%
Fe2O3:[55.91−2.3×{CoO(mol%)}−0.18×{ZnO(mol%)}−4.2×{TiO2(mol%)}−2.4×{SnO2(mol%)}]mol%以上、[56.01−2.3×[CoO(mol%)]−0.18×[ZnO(mol%)]−4.2×{TiO2(mol%)}−2.4×{SnO2(mol%)}]mol%以下
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