JP3220386B2 - 鉄基軟質磁性合金 - Google Patents

鉄基軟質磁性合金

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、変圧器や電動機
の鉄芯材料として有利に適合する、磁束密度が高くかつ
鉄損の小さい軟質の磁性合金に関する。
【0002】
【従来の技術】変圧器や電動機の鉄芯材料には、これら
機器の高効率化や小型化をはかるために、磁束密度が高
くかつ鉄損の低いことが要求される。この種の鉄芯材料
に供する磁性合金としては、Fe−Si合金やFe基のアモル
ファス合金などがよく知られている。
【0003】まず、電磁鋼板として多用されるFe−Si合
金は、その一層の低鉄損化をはかるため、高級鋼種にお
いては3wt%をこえる量のSiを添加、あるいはさらにAl
を添加して、電気抵抗率を上昇させることにより、鉄損
を抑制する努力が払われてきた。しかし、Si添加量が3
wt%をこえると、鉄損は低減するものの、磁束密度が低
下して励磁電流が大きくなるため、鉄芯の巻線に起因し
た銅損が増加することになる。これは、Siに加えてAlを
添加する場合にも同様である。
【0004】また、Fe−Si合金系の電磁鋼板において、
Feの電気抵抗率を上昇させる合金元素としては、SiやAl
のほかにPについても、その作用が知られている。しか
しながら、Pの添加による電気抵抗率の上昇は、SiやAl
に比べるとその絶対値が小さく、しかも電気抵抗率の増
加が顕著になるまで添加すると、透磁率等の磁気特性、
そして加工性が劣化すると考えられてきたため、主たる
合金元素としては採用されなかった。
【0005】例えば、特開平6−116687号公報や特開平
6−192731号公報には、主たる合金元素であるSiに加え
て、微量のPを補助的に添加することが、示されてい
る。また、特開昭62−988 号公報および特公昭62−3226
7 号公報には、多量のSiを含むFe−SiまたはFe−Si−Al
合金の加工性を向上させる目的でPを添加する方法が提
案されているが、これらの提案は多量のSiやAlによっ
て、すでに高い電気抵抗率を獲得したFe合金に対してP
を添加する技術であり、Pにより電気抵抗率の増加や磁
気特性の向上をはかるものではない。
【0006】一方、Si含有量の少ない、低級電磁鋼板に
おいては、特開平2−66138 号公報に例示されるよう
に、Pを少量含有する組成が提案されている。しかし、
Pの添加を最小限に抑えるところから明らかなように、
電気抵抗率の上昇効果を活用する技術ではなく、あくま
で電気抵抗の低い低級電磁鋼板を対象とする改良技術で
あった。また、同公報には、PのほかにMnを含有するこ
とによって、熱間加工性や集合組織を改善することも示
されているが、高い水準での電気抵抗率の増加を達成す
るには至っていない。さらに、特開昭62−222021号公報
にも、低級電磁鋼板においてMnを比較的多量に添加し、
加工性や磁気特性を改善することが示されているが、同
様に高い水準での電気抵抗率の増加を達成するには至っ
ていない。
【0007】なお、アモルファス合金はFe−Si合金に比
較して、より低い鉄損が得られるけれども、磁束密度は
一段と低下するため、鉄損と銅損の双方を同時に低減す
ることは難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、
SiやAlの合金量を増加することなしに、電気抵抗率と磁
束密度をともに高めて鉄損および銅損の双方を抑制し
た、新規な合金組成について提案することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者らは、種々の合金
元素を添加した電磁鋼板に関する研究において、鋼中不
純物とくにCの量を制限し、かつ板厚を適正な値に設定
すれば、相当量のPを添加しても加工性は確保されて製
板が可能であり、しかも磁束密度および鉄損の総合的な
磁気特性において従来のけい素鋼板よりも優れた性能を
付与し得ることを見出し、先に特願平7−194859号明細
書にて提案した。その後、更に研究を続けたところ、3
wt%をこえない程度のSiを含有するFe−Si合金に、Pお
よびMnを複合添加すると、Siを増量した場合に生じる磁
束密度の低下は回避され、しかも電気抵抗率を増加し得
ることを見出した。なお、PおよびMnを複合添加した場
合も、磁気特性や加工性を確保するために、C量を制限
することが有効である。以上の知見によって、磁束密度
および電気抵抗率を、これまで予想できなかった水準に
まで総合的に向上することができた。
【0010】すなわち、この発明は、C:0.02wt%未
満、Si:0.05〜3wt%、Mn:0.1 〜2wt%およびP:0.
6 超〜1.2 wt%を含有し、残部が実質的にFeからなるこ
とを特徴とする鉄基軟質磁性合金である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の各成分組成の
限定理由について説明する。 C:0.02wt%未満 Cは、Fe−Si合金においてPおよびMnを複合添加した場
合、優れた磁気特性および加工性を確保するために、そ
の含有を抑制する必要があり、0.02wt%未満であれば、
磁気特性および加工性の劣化を回避できる。とりわけ、
Pの含有量を多くする場合には、それに応じてCをさら
に低減することが、加工性を確保するのに有利であり、
一方Mn量が多い場合にも、それに応じてCをさらに低減
することが、磁気特性を確保するのに有利である。
【0012】具体的には、Cの含有量を0.01wt%以下に
抑制することが有効であり、またMnの含有量が 0.1〜0.
7 wt%の場合はCを0.02wt%未満に、Mnの含有量が0.7
wt%を越える場合は、Cを0.01wt%以下に抑制するこ
と、が好ましい。
【0013】Si:0.05〜3wt% Siは、0.05wt%未満では電気抵抗率が不足して高い抵抗
の磁性合金が得られず、一方3wt%をこえると、磁束密
度が低下して励磁電流が大きくなるため、鉄芯の巻線に
起因した銅損が増加することになるため、0.05〜3wt%
の範囲とする。
【0014】 Mn:0.1 〜2wt%およびP:0.6 超〜1.2 wt% PおよびMnは、3wt%未満程度のSiを含有するFe合金に
おいて、Siを増量した場合に生じていた、磁束密度の低
下をまねくことなしに電気抵抗率を上昇するのに有効で
ある。そのためには、P:0.6 wt%超およびMn:0.1 wt
%以上は必要であり、しかもP:0.6 wt%以下およびM
n:0.1 wt%未満では、Siを単に増加させた場合に対す
る優位性を十分に発揮できない。
【0015】一方、Pは1.2 wt%をこえると加工性が著
しく劣化し製板が困難になるため、そしてMnは2wt%を
こえると磁化容易性が防げられて透磁率が低下し、ひい
てはヒステリシス損失が上昇するため、P:1.2 wt%以
下およびMn:2wt%以下に限定する。
【0016】また、上記成分に加えて、磁気特性の改善
を目的として、Al, Cr, Sn, Be, Ti, V,Zn, Ga, Ge,
As, Se, Mo, SbおよびW等のフェライト形成元素を添加
することも可能である。これらのフェライト形成元素
は、鉄の変態点を上げて高温でオーステナイト相が析出
しにくくし、その結果高温での結晶成長性を改善してヒ
ステリシス損失を抑制し、かつ、電気抵抗を増加させて
渦電流損失を抑制する。これらフェライト形成元素の添
加量は、その1種または2種以上合計で0.1 wt%未満で
は効果が得られず、一方、5.0 wt%を越えると磁気特性
がかえって劣化するため、合計量を 0.1〜5.0 wt%とす
ることが好ましい。
【0017】なお、この発明に従う磁性合金は、以下に
示す工程に従って製造することができる。まず、原材料
としては、C量が0.02wt%未満の鉄、15〜30wt%P程度
のフェロりん、50〜80wt%Si程度のフェロシリコン、50
〜80wt%Mn程度のフェロマンガンを用いる。また、フェ
ロシリコン、フェロマンガンに代えて、それぞれ金属シ
リコン、金属マンガンを用いることも可能である。そし
て、溶解は真空またはArなどの不活性雰囲気中で行う。
その後、鋳造した鋳塊を熱間鍛造または熱間圧延によっ
て1〜5mm厚の板状とする。さらに薄い板状とする場合
には、100 〜400 ℃の温間または冷間圧延によって、0.
2 〜1mm厚の板とする。つぎに、水素中で800 〜1300℃
の焼鈍を施す。
【0018】
【実施例】所定の組成に成分調整した複数種の合金鉄鋳
片を、1200℃に加熱後、800MPaの圧力で熱間鍛造し、引
き続き水素雰囲気中で1200℃、60min の焼鈍を施した。
かくして得られた鍛造材から、0.5mm 厚の試験片を切り
出して、四端子法による電気抵抗率と、振動試料法によ
る磁束密度(印加磁界50kA/m) とを測定した。これらの
測定結果および周波数50Hz、磁束密度1.5Tにおける鉄損
を、合金の組成と併せて表1に示す。
【0019】なお、表中の合金No. 1〜10は2つずつ対
になっており、奇数番はFe−Si合金、偶数番は同程度の
電気抵抗率を有するFe−Si−P−Mn合金である。これら
の対比から、とりわけPを0.6 wt%超かつ1.2 wt%以下
で含む合金No. 8は、Fe−Si合金(合金No. 7に)対し
て極めて高い磁束密度を有することがわかる。
【0020】また、合金No. 12〜15のFe−Si−P−Mn合
金は、合金No. 11のFe−Si合金と比較すると、Siが0.05
wt%以上の合金No. 14, 15の場合に合金No. 11よりも高
い磁束密度を有する。
【0021】合金No. 17〜19および8のFe−Si−P−Mn
合金は、合金No. 5のFe−Si合金と比較すると、Mnが0.
1 〜2wt%の合金No. 5よりも電気抵抗率と磁束密度が
高い。
【0022】合金No. 20〜22および18のFe−Si−P−Mn
合金は、合金No. 9のFe−Si合金と比較すると、Cが0.
02wt%以下の合金No. 9よりも磁束密度が高く、Cが低
い程有利な特性となっている。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】この発明によれば、電気抵抗率および磁
束密度の高い、従って鉄損および銅損の低い磁性合金を
提供できる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 303 C22C 38/04 H01F 1/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.02wt%未満、 Si:0.05〜3wt%、 Mn:0.1 〜2wt%および P:0.6 超〜1.2 wt% を含有し、残部が実質的にFeからなることを特徴とする
    鉄基軟質磁性合金。
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