JP6112396B2 - Mn−Znフェライトおよびそれを用いたコイル部品 - Google Patents

Mn−Znフェライトおよびそれを用いたコイル部品 Download PDF

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Description

本発明は、チョークコイルやリアクタ等のコイル部品に好適に用いられるMn−Znフェライトおよびそれを用いたコイル部品に関する。
近年、ノート型パソコン等、各種電子機器においてLSIの高集積化、多機能化および高速化が進んでいるため、それに電力を供給する電源系にも高パワー(大電流)での動作に適応可能であることが要求されてきている。また、電子部品の集積度が上がると電子部品からの発熱により回路周辺の温度が上昇し、使用される電子部品の実用上の使用環境温度は100℃近くの高温に達する。したがってこれらの環境で使用される電源系は、大電流かつ高温の環境に適応したものであることが必要である。
また、EV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド電気自動車)等の車両に使用される高パワーを扱う電源系においても、その使用環境温度が広く、100℃近く、または100℃以上でも所定の性能を維持する必要がある。すなわち、EV等の車両用途においても、大電流かつ高温の環境に適応可能な電源系が要求されている。
上記電源系に用いられるチョークコイルには、高温においても、高い電流値までインダクタンス値が低下しにくいことが求められため、かかるチョークコイルを構成する磁性コアには、高い電流値まで磁気飽和しにくい高い最大磁束密度を有するものが要求される。これらチョークコイル等に使用される磁性コアとしては、価格、形状自由度等の観点からフェライトが適しており、その中でも特に最大磁束密度が高いMn−Znフェライトが適している。
従来、電源用チョークコイルに用いられるものも含め、Mn−Znフェライトでは50〜55mol%程度のFeを含有するのが一般的である。一方、Mn-Znフェライトでは、Fe含有量を増やすことで最大磁束密度等を向上できることが知られている。特許文献1には、さらにLi1/2O等を含有することによって最大磁束密度と保磁力をよりいっそう改善することを目的としたMn−Znフェライトの発明が開示されている。
特開2006−193343号公報
一般に、通常のMn−ZnフェライトよりもFeリッチなMn−Znフェライトでは最大磁束密度は大きくなるものの、コアロスが大きい。コアロスが大きいと発熱も大きくなるため、コアロスが最小となる温度(以下、ボトム温度ともいう)が実用上の使用環境温度よりも大幅に低いと、発熱による熱暴走の危険も高まる。したがって、ボトム温度を使用環境温度に近づけることおよびコアロス自体を低減することが、上記用途等に用いられるMn−Znフェライトの実用上の課題の一つとなる。
この点に関して、特許文献1では、Li1/2Oを含有することによって最大磁束密度が高められるとともに直流BH曲線における保磁力が低減されているものの、コアロスについては認識されていない。そこで、本発明者らがLi1/2Oの添加と高周波でのコアロスの関係を評価したところ、Li1/2Oの添加によってコアロスが増加してしまうことがわかった。すなわち、Li1/2Oの添加は、FeリッチなMn−Znフェライトにおいて、最大磁束密度とコアロスの両方を同時に改善する手段にはならないことを確認した。
本発明は上記課題に鑑み、高温・大電流の用途に好適であるとともに、最大磁束密度とコアロスを同時に改善することが可能なMn−Znフェライトおよびこれを用いたコイル部品を提供することを目的とする。
本発明のMn−Znフェライトは、主成分が62mol%以上、かつ65mol%以下のFe、14mol%以上、かつ20mol%以下のZnO、0.5mol%を超え、かつ1.5mol%未満の(Li0.5Fe0.5)O、0mol%を超え、かつ1.0mol%未満のCuO、残部MnOからなり、焼結体の三点曲げ強度が80MPa超であることを特徴とする。
また、前記Mn−Znフェライトにおいて、前記主成分100質量部に対して、副成分として、Bi 換算で、0質量部を超え、かつ0.06質量部以下のBiを含み、100℃における測定磁界1200A/mでの最大磁束密度が480mT以上、かつ周波数100kHz、印加磁束密度200mTの条件で測定したコアロスが最小となるボトム温度が80℃以上であり、前記ボトム温度におけるコアロスが970kW/m 以下であることが好ましい。
本発明のコイル部品は、前記Mn−Znフェライトと、前記Mn−Znフェライトの周囲に巻装されたコイルとを備えることを特徴とする。
本発明によれば、高温・大電流の用途に好適であるとともに、最大磁束密度とコアロスを同時に改善することが可能なMn−Znフェライトおよびこれを用いたコイル部品を提供することができる。

以下、本発明に係るMn−Znフェライトの実施形態を、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明では、特定の元素としてLiとCuを選択し、これらを複合で特定の範囲含有することで、最大磁束密度とコアロスの両方の改善が可能となったものである。以下、詳しく説明する。
本発明に係るMn-Znフェライトは、62mol%以上、かつ65mol%以下のFe、14mol%以上、かつ20mol%以下のZnO、0.5mol%を超え、かつ1.5mol%未満の(Li0.5Fe0.5)O、0mol%を超え、かつ1.0mol%未満のCuO、残部MnO、の比率で表される主成分組成を有する。最大磁束密度の向上とボトム温度の上昇に寄与するFeリッチな組成において、さらに(Li0.5Fe0.5)OとCuOを同時に含むことによって、従来は困難であった、最大磁束密度とコアロスの両方の改善が可能となる。これによって、高温・大電流の用途に好適なMn−Znフェライトが提供できる。
また、本発明においては、100℃における測定磁界1200A/mでの最大磁束密度が480mT以上、かつ周波数100kHz、印加磁束密度200mTの条件で測定したコアロスが最小となるボトム温度が80℃以上の特性を有するMn-Znフェライトを得ることができる。かかる構成によって、100℃近傍の高温でも磁気飽和しにくくなり、しかも熱暴走の危険も低減される。すなわち、100℃近傍の実用上の使用環境に特に好適なMn−Znフェライトが提供できる。ボトム温度はより好ましくは100℃以上である。前記ボトム温度の上限はこれを特に限定するものではないが、他の磁気特性等を維持しながらボトム温度を上昇させることには限界があること、および実用的な使用環境温度を考慮すれば、ボトム温度は140℃以下とすることが好ましく、120℃以下がさらに好ましい。なお、以下、特にことわらない限り、最大磁束密度は100℃における測定磁界1200A/mでの最大磁束密度をいい、コアロスは周波数100kHz、印加磁束密度200mTの条件で測定したコアロスをいうものとする。
上記主成分はスピネルフェライト相を構成する部分である。該組成比の限定理由を以下に説明する。Feの含有量が増えると最大磁束密度が増加し、ボトム温度も上昇する一方、コアロスも増加する。480mT以上の高い最大磁束密度を得るためにはFeの含有量は62mol%以上であることが必要である。また、コアロスを実用的な1000kW/m以下に抑えるためには、Feの含有量は65mol%以下であることが必要である。
ZnOの含有量を増やすことによってコアロスのボトム温度を高めることができる一方、最大磁束密度が低下し、コアロスも大きくなる。80℃以上のボトム温度を確保するためには、ZnOの含有量は14mol%以上であることが必要である。また、480mT以上の最大磁束密度、1000kW/m以下のコアロスを確保するためにはZnOの含有量は20mol%以下であることが必要である。
上述のように、(Li0.5Fe0.5)OとCuOを同時に含むことによって、最大磁束密度とコアロスの両方の改善が可能となる。(Li0.5Fe0.5)Oを単独で含有することで、最大磁束密度を高めることができる。しかしながら、(Li0.5Fe0.5)Oの含有量が増加するにしたがいコアロスも増加するため、(Li0.5Fe0.5)Oだけを一方的に含有しても、最大磁束密度とコアロスの両方を同時に改善することはできない。これに対して、本発明では(Li0.5Fe0.5)OにCuOを併用することによって最大磁束密度の低下を抑えつつ、コアロスを低減することができたものである。
480mT以上の最大磁束密度を得るためには、0.5mol%を超える(Li0.5Fe0.5)Oを含有することが好ましい。一方、(Li0.5Fe0.5)Oの含有量が過度に多くなると、コアロスが大きくなりすぎ、CuOを添加してもコアロスを十分な水準まで低減することが困難になる。そのため、(Li0.5Fe0.5)Oの含有量は1.5mol%未満にすることが好ましい。
上述のようにCuOは(Li0.5Fe0.5)Oとの同時置換でコアロスを低減する効果を発揮するため、CuOは0mol%を超えて含有するものとする。一方、CuOが多くなりすぎると、逆にコアロスが増加するようになるとともに、最大磁束密度の低下も大きくなる。CuOを含有しない場合に比べて低いコアロスを得るためには、CuOの含有量は1.0mol%未満が好ましい。コアロス低減の観点からは、(Li0.5Fe0.5)OとCuOの含有量の合計が1.5mol%以下であることがより好ましい。また、CuOと(Li0.5Fe0.5)Oとの同時置換の効果をより明確に享受する観点からは、(Li0.5Fe0.5)OとCuOの含有量の合計は0.7mol%以上がさらに好ましい。
また、CuOの含有は、(Li0.5Fe0.5)Oの含有だけでは得られない、焼結体強度向上の効果も発揮する。Mn-Znフェライトの組成が60mol%を超えるFeリッチな組成になると、焼結体密度が上がりにくくなる。そのため、焼結体密度の増加を通じて焼結体強度の向上を図ることは困難になってくる。これに対して、CuOの含有によれば、必ずしも焼結体密度が向上せずとも、焼結体強度の向上が可能である。
主成分のうちFe、ZnO、(Li0.5Fe0.5)OおよびCuO以外の残部はMnOで構成すればよい。ただし、MnOの一部をCoO、NiO等で置換してもよい。ボトム温度を上昇させるためには、ZnO量を多くする必要があるため、MnOの含有量は20mol%未満にすることがより好ましい。また、不可避不純物は含まれる。
また、例えば以下に示すような副成分を含むこともできる。主成分100質量部に対して副成分としてCaをCaCO換算で0.02〜0.3質量部、SiをSiO換算で0.003〜0.015質量部含有させることによって高い電気抵抗率を併せ持ったフェライト焼結体を得ることができる。Caの含有量が前記範囲よりも少ないと電気抵抗率向上の十分な効果が得られず、Caの含有量が前記範囲よりも多いと焼結性が低下する。また、Siの含有量が前記範囲よりも少ないと電気抵抗率向上の十分な効果が得られず、Siの含有量が前記範囲をよりも多いと焼結体組織中に粗大粒が発生し、磁気特性・体積抵抗率が低下する恐れがある。
また、コアロスの低減、初透磁率の向上の観点からBiを含有することも好ましい。かかるBiの効果を発揮させるためには、主成分100質量部に対してBiをBi換算で0質量部を超えて含有すればよい。一方、Biの含有量が多くなりすぎると、異常粒成長が生じ、コアロスの増加や初透磁率の低下を招くおそれがあるため、その含有量はBi換算で0.06質量部以下が好ましい。Bi含有の効果を享受しつつ、より安定にMn-Znフェライトを製造するためには、Biの含有量は、Bi換算で0.04質量部以下であることがさらに好ましい。また、コアロス低減等の観点から、Nb、Zr、V、Ta、W、Mo、Alおよび希土類金属(Yを含む)を酸化物換算で0.2質量部以下含んでもよい。
上述のように(Li0.5Fe0.5)OおよびCuOを同時に含有する構成等を採用することで、高最大磁束密度を維持しながら、ボトム温度におけるコアロスを1000kW/m以下にすることができる。コアロスを970kW/m以下にした、より低損失なMn-Znフェライトを提供することも可能である。
本発明に係るMn−Znフェライトは、例えばMn−Znフェライトの製造に従来から適用されている粉末冶金的方法によって製造することができる。すなわち所定の割合で秤量したFe、MnO、ZnO、LiCO、CuOなどの主原料を混合する混合工程、混合工程を経た原料粉を仮焼する仮焼工程、仮焼工程を経た原料粉を粉砕する粉砕工程、粉砕工程を経た原料粉(以下粉砕粉ともいう)を用いて所定形状の成形体を形成する成形工程、および前記成形体を焼成する焼成工程を経て、Mn−Znフェライトの焼結体を得ることができる。
CaCO等の副成分の原料は、仮焼後の原料粉に添加することが好ましいが、仮焼前の混合工程において添加することも可能である。仮焼の条件は、仮焼後のスピネル相の割合や粉砕性等を考慮して決める。例えば、雰囲気中の酸素量が少ないほど仮焼後のスピネル相の割合が上昇する。雰囲気中の酸素量を制御して仮焼を行うこともできるが、量産性・コストの観点からは、大気中で仮焼を行うことが好ましい。また、仮焼温度が高くなると、スピネル化反応は進むものの、仮焼後の原料粉が粗大化し、粉砕しにくくなる。したがって、仮焼温度は850℃〜1000℃とすることが好ましい。仮焼温度での保持時間は例えば1〜4時間であるが、これに限定されるものではない。
仮焼工程を経た原料粉は、ボールミルやアトライタ等の粉砕機を用いた粉砕工程によって微細化される。粒径の小さい粉砕粉を用いることで高密度の焼結体が得やすくなる。一方、粉砕粉の粒径が小さくなりすぎると、焼結体に異常粒成長が生じる可能性が高まる。また、粒径が小さい粉砕粉を得るためには、粉砕工程に多大な時間を要する。したがって、粉砕粉の平均粒径は、空気透過法による平均粒径で1.2〜1.6μmとすることが好ましい。
成形工程として金型を用いた加圧成形を適用する場合、成形性の観点から、例えばスプレードライヤを用いて粉砕粉を造粒するのが一般的である。造粒のためのバインダとしては、例えばポリビニルアルコール等の有機バインダを用いることができる。バインダの添加量を増やすことで成形性が向上するが、多すぎると造粒後の原料粉の粒径制御や取り扱いが困難になる。バインダの添加量は、粉砕粉100質量部に対して、固形分で0.5〜2質量部が好ましい。また、成形工程は、加圧成形に限らず、押し出し成形等、他の成形方法を適用することもできる。
バインダを含んだ成形体は、脱バインダ工程を経て焼成される。脱バインダ工程は、焼成工程の中に組み込まれていてもよいし、焼成工程とは別個の工程として設けてもよい。成形体を加熱することによりバインダが分解、飛散し、脱バインダが行われる。通常、800℃以下で脱バインダが完了する。かかる温度までの雰囲気は大気中とすることが簡易で好ましい。一方、窒素雰囲気のように、大気雰囲気よりも低い酸素濃度の雰囲気に制御することで、脱バインダ時に還元作用を強めることもできる。
焼成温度は、1250〜1400℃の範囲とすることが好ましい。焼結温度が1250℃未満となると焼結体密度および最大磁束密度が上がりにくくなる。また、1400℃を超えると焼結体中に異常粒成長が生じる可能性が高くなる。焼成温度保持時の雰囲気の酸素濃度は、0.5〜5vol%が好ましい。また、脱バインダ後の800℃〜1275℃までの昇温時の雰囲気は0.5vol%以下の酸素濃度が好ましい。800℃以上の昇温時に酸素濃度を下げるのは、この温度範囲で起こるスピネル化反応を促進させるためである。さらに、焼成温度保持後の冷却時の雰囲気は、フェライトの平衡酸素分圧に沿って冷却することが好ましい。冷却時の酸素濃度が高すぎるとヘマタイト相が発生し、磁気特性が劣化するおそれがある。また、冷却時の酸素濃度が低すぎると、表面のZn成分の気散により焼結体に歪が生じ、磁気特性が劣化するおそれがある。
さらに、高い最大磁束密度を得る観点から、Mn−Znフェライトの焼結体の密度は4.85×10kg/m以上であることが好ましい。焼結体密度は、より好ましくは4.90×10kg/m以上である。
本発明のMn−Znフェライトは、チョーク、インダクタ、トランス等、各種のインダクタンス素子に用いることができる。本発明のコイル部品は、上記のMn−Znフェライトと、該Mn−Znフェライトの周囲に巻装されたコイルとを備える。例えば、ドラム型、E型等の形状のMn−Znフェライトの焼結体を作製し、それをコアとしてその周囲にコイルを配置する。コイルは、ボビンに導線を巻回して構成してもよい。本発明に係るMn−Znフェライトを用いてコイル部品を構成することによって、高温かつ大電流の環境下での使用に好適なコイル部品および該コイル部品を用いたDC−DCコンバータ等の電源装置の提供できる。
表1に示す組成になるよう秤量したFe、MnO、ZnO、LiCOおよびCuOを湿式アトライタにて1時間混合した後乾燥し、これを大気中960℃で1.5時間仮焼した。仮焼後の原料粉100質量部に対して、添加物としてCaをCaCO換算で0.125質量部、SiをSiO換算で0.009質量部、NbをNb換算で0.02質量部添加し、粉砕粉の空気透過法での平均粒径が1.3〜1.4μmの範囲になるように粉砕時間を調整して湿式アトライタによる粉砕を行った。粉砕した原料粉100質量部に対して、バインダとして固形分で1.2質量部のポリビニルアルコールを添加した後、造粒を行った。造粒後の原料粉を加圧成形し、リング状の成形体を得た。得られた成形体は、100℃/hの昇温速度で昇温し、1325℃にて5時間焼成した。800℃までの脱バインダ工程、脱バインダ終了後から焼成温度保持にいたる工程、焼成温度およびその後の冷却工程は、空気と窒素ガスを混合して調整した酸素濃度雰囲気下で行った。
得られた外径30mm、内径20mm、高さ7mmのリング状焼結体について、23℃における100kHzでの初透磁率μi、100℃における測定磁界1200A/mでの最大磁束密度Bmを測定した。また、周波数100kHz、印加磁束密度200mTの条件でコアロスPcvの温度依存性を測定し、コアロスのボトム温度Tbも求めた。結果を表2に示す。
また、比較のために、CuOを含有せず、LiCOの含有量等を変えたMn-Znフェライトを上記と同様にして作製した。作製したMn-Znフェライトの組成および評価結果を表3に示す。
Figure 0006112396
Figure 0006112396
Figure 0006112396
表3に示すように、(Li0.5Fe0.5)Oを単独で用いた場合には、(Li0.5Fe0.5)Oの含有量を増やすことによって、最大磁束密度Bmを高めることが可能であるが、同時にコアロスPcvも増加し、1000kW/mを超える大きな値となってしまうことがわかる。
これに対して、表1および2に示すように、(Li0.5Fe0.5)Oの一部をCuOで置換し、(Li0.5Fe0.5)Oと同時にCuOを0mol%を超え、かつ1.0mol%未満含有することによって、CuOを含有しない場合に対して、最大磁束密度Bmの低下を抑えながらコアロスPcvを低減できることがわかる。CuOの含有量が0.8mol%以下のMn-Znフェライト(No2〜5、No8〜11)では、CuOを含有しないMn-Znフェライト(No1、No7)に比べて、最大磁束密度Bmの低下を1%以下に抑えながら、コアロスPcvを低減することが可能であった。本発明の組成範囲を採用したNo2〜5、No8〜11のMn-Znフェライトでは、いずれも480mT以上の最大磁束密度Bmと80℃以上のボトム温度Tbが実現されている。したがって、(Li0.5Fe0.5)OとCuOとを所定量同時に含有することが、かかる高Bm等の特性を維持しながらコアロスPcvを低減するうえで特に有効であることがわかる。
No7〜12の組成のMn-Znフェライトについては、別途直方体状の焼結体試料を作製し、焼結体強度を評価した。長さ51.5mm、幅10.3mm、厚さ3.0mmの試料を用い、スパン30mm、荷重速度10mm/分の条件で、三点曲げ強度を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0006112396
表4に示すように、(Li0.5Fe0.5)Oを単独で含有するNo7のMn-Znフェライトの強度は60MPaと低いものとなった。これに対して、CuOを同時に含有したMn-Znフェライト(No8〜11)では三点曲げ強度は80MPaを超え、CuOを含まないNo7のMn-Znフェライトに比べて30%以上向上した。表2に示すように、CuOを含有しても焼結体密度は4.90×10kg/m以下のままで大きな変化を示していないことから、単純な高密度化以外の作用機序によってMn-Znフェライトの強度が高められていることがわかる。
次に、表1のNo8の組成に対して、異なる量のBiを含有させ、Biの含有以外は上記実施例と同様にしてMn-Znフェライトを作製し、評価した。Bi換算で示したBiの含有量と評価結果を表5に示す。
Figure 0006112396
表5に示すように、Biの添加量が増加するにしたがい、初透磁率が増加した。表3の結果から0.06質量部以下のBiを添加することによって、高Bm、低コアロスの特性を備えつつ、初透磁率をさらに向上できることがわかる。

Claims (3)

  1. 主成分が62mol%以上、かつ65mol%以下のFe、14mol%以上、かつ20mol%以下のZnO、0.5mol%を超え、かつ1.5mol%未満の(Li0.5Fe0.5)O、0mol%を超え、かつ1.0mol%未満のCuO、残部MnOからなり、
    焼結体の三点曲げ強度が80MPa超であるMn−Znフェライト。
  2. 前記主成分100質量部に対して、副成分として、Bi 換算で、0質量部を超え、かつ0.06質量部以下のBiを含み、
    100℃における測定磁界1200A/mでの最大磁束密度が480mT以上、かつ周波数100kHz、印加磁束密度200mTの条件で測定したコアロスが最小となるボトム温度が80℃以上であり、前記ボトム温度におけるコアロスが970kW/m 以下である請求項1に記載のMn−Znフェライト。
  3. 請求項1又は2に記載のMn−Znフェライトと、前記Mn−Znフェライト焼結体の周囲に巻装されたコイルとを備えることを特徴とするコイル部品。
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