JP4799808B2 - フェライト組成物、磁心及び電子部品 - Google Patents

フェライト組成物、磁心及び電子部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランス、チョークコイル及びインダクタなどの磁心(コア材)の製造に好適なフェライト組成物と、該組成物を加工して得られる磁心と、該磁心のたとえば周囲に巻き線が巻回してあるコイル部品などの電子部品とに、関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の小型・軽量化が急速に進み、それに対応すべく、各種電子機器の電気回路に用いられる電子部品の小型化・高性能化への要求が急速に高まっている。
【0003】
電子部品の中で、例えば液晶バックライト用トランスなどは、ディスプレーの薄型化に伴い、より小さく、より薄い形状で、従来のものと同等以上の特性を持つことが要求されている。トランスに用いられる磁心に要求される特性としては、使用温度帯域での電力損失が小さいことが必要である。このため、トランスに用いられる磁心材料として、損失の小さいMn−Zn系フェライトが多く使用されてきた。
【0004】
たとえば、特許文献1には、Fe:44.0〜50.0モル%(ただし、50.0モル%は除く)、ZnO:4.0〜26.5モル%、TiOおよびSnOのうち1種または2種:0.1〜8.0モル%、残部MnOからなり、副成分としてCoO、NiOおよびMgOのうち1種または2種以上を0.01〜2.00質量%含有するMn−Zn系フェライトが開示されている。
【0005】
しかし、Mn−Zn系フェライトは、固有抵抗が低く、直巻線ができないことから小型・薄型化への対応が困難であった。
【0006】
これに対し、Ni−Zn系フェライトは、上記Mn−Zn系フェライトに比べて電力損失が大きいものの、固有抵抗が高く、直巻線が可能である。このため、小型化・薄型化・低コスト化を図る上で有利である。
【0007】
最近では、電気回路内の他の電子部品の性能が向上し、回路全体の効率が向上していることから、Ni−Zn系フェライトの中でも、比較的低損失なものをトランス用磁心材料として使用することが可能となり、注目されている。ただし、Ni−Zn系フェライトの損失をさらに低下させることができれば、より一層回路全体の効率を向上させることができる。従って、Ni−Zn系フェライトのさらなる低損失化が望まれている。また、最近のコイル部品へ適用される電流値の大電流化に対応すべく、高飽和磁束密度化も同時に要求されている。
【0008】
そこで、Ni−Zn系フェライトの低損失化を図るための種々の提案がなされている(特許文献2〜6参照)。
【0009】
特許文献2には、Fe:47〜50モル%、NiO:14〜20モル%、ZnO:26〜33モル%、CuO:4〜7モル%、MnO:0〜1.0モル%(ただし0を含まず)、TiO:0〜2.0モル%、MgO:0〜2.0モル%(ただし、TiO、MgOがともに0の場合を除く)の組成範囲からなる高抵抗率低損失フェライトが開示されている。
【0010】
特許文献3には、Fe:45〜50モル%、NiO:5〜14モル%、ZnO:26.5〜29.0モル%、CuO:6.0〜11.0モル%、MnO:0〜2.0モル%、TiO:0〜3.0モル%、MgO:0〜3.0モル%(ただし、TiO、MgOがともに0の場合は除く)の組成範囲からなる高抵抗率低損失フェライトが開示されている。
【0011】
特許文献4には、Fe:50〜58モル%、NiO:0〜15モル%(ただし、0は含まず)、ZnO:0〜20モル%(ただし、0は含まず)であり、残部が実質的にMnOから構成され、添加物としてCa、Ta、Bi、V、Ti、Snの1種以上を含有するフェライトが開示されている。
【0012】
特許文献5には、Fe:53〜57モル%、ZnO:4〜11モル%、NiO:0.5〜4モル%、残部が実質的にMnOからなる基本組成成分中にSiO:0.0050〜0.0500重量%及びCaO:0.0200〜0.2000重量%を含有し、さらにTaO、ZrO、Nb、V、TiO及びHfOのうちから選ばれる何れか1種または2種以上の添加成分を下記範囲で含むことを特徴とする低損失フェライトが開示されている。
【0013】
特許文献6には、Fe:52〜56モル%、ZnO:6〜14モル%、NiO:4モル%以下、およびCoO:0.01〜0.6モル%を含み、残部が実質的にMnOの組成となる基本成分に対して、外枠量でSiO:0.0050〜0.0500重量%およびCaO:0.0200〜0.2000重量%を含有し、さらにTa、ZrO、Nb、V、KO、TiO、SnOおよびHfOのうちから選ばれる少なくとも1種の添加成分を含有するフェライトが開示されている。
【0014】
しかしながら、特許文献2〜6に開示されたフェライトは、その組成範囲が、FeをFeに、MnをMnに、TiをTiに、それぞれ換算したとき、Feのモル%、(Fe+Mn)のモル%、(Fe+Ti)のモル%、あるいは(Fe+Mn+Ti)のモル%が、何れも50モル%を超えている。このため、空気中で本焼成した場合に、(1)安定した特性を得ることができなかった。安定した特性を得るには、本焼成時に、焼成炉内でのPo酸素濃度等の雰囲気を制御しなければならず、製造コストが高くなることがあった。(2)比抵抗が劣化することもあった。
【0015】
【特許文献1】
特開2001−151565号公報
【特許文献2】
特開昭64−53509号公報
【特許文献3】
特開平1−212234号公報
【特許文献4】
特開平2−83218号公報
【特許文献5】
特開平10−64715号公報
【特許文献6】
特開2000−286119号公報。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電力損失Pcvが小さく、かつ、飽和磁束密度Bsが高く、かつ、空気中で本焼成した場合にでも安定した特性を持ち、安価に製造できるフェライト組成物と、該フェライト組成物で構成してある磁心と、該磁心を有する電子部品とを、提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、空気中で本焼成しても安定した特性を得るためには、フェライト中でのFeのモル%、あるいはFeと価数変動しやすく結晶格子に固溶する元素(たとえばMn、Tiなど)の酸化物との合計のモル%、が少ないことが必要であるとの知見を得た。具体的には、50モル%以下であることが必要であることを見出した。また、Mnを積極的に含有させると、特性が劣化することがあるとの知見も得た。これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0018】
(1)すなわち、本発明の第1の観点によれば、
酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルを含む主成分を有するフェライト組成物であって、
前記主成分100モル%中の各酸化物の含有量が、
酸化鉄:Feに換算して46.0〜50.0モル%、
酸化チタン:Tiに換算して0〜1.0モル%(ただし、0モル%を除く)、
酸化鉄と酸化チタンの合計:(Fe+Ti)に換算して50モル%以下、
酸化亜鉛:ZnOに換算して20.0〜35.0モル%、
酸化銅:CuOに換算して1.0〜6.0モル%(ただし、6.0モル%を除く)、
酸化ニッケル:NiOに換算して9.0〜33.0モル%、であるフェライト組成物が提供される。
【0019】
この発明によると、電力損失Pcvが小さく、かつ飽和磁束密度Bsが高いフェライト組成物を提供することができる。また、主成分100モル%中の、Feに換算した酸化鉄の含有量と、(Fe+Ti)に換算した(酸化鉄+酸化チタン)の含有量とが、いずれも50モル%以下と少ないため、Po酸素濃度等の雰囲気を制御することなしに、空気中で本焼成しても、安定した特性を得ることができる。その結果、フェライト組成物の製造コストを安く抑えることができる。また、比抵抗が劣化することもない。
【0020】
前記主成分には、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルが含まれていればよく、さらにその他の化合物が含有されていてもよい。
【0021】
(2)上記第1の観点では、前記主成分が、酸化マンガンを含まないNi−Cu−Zn系フェライト組成物であることが好ましい。酸化マンガンが含有されていると、比抵抗などの特性が劣化するからである。
【0022】
”酸化マンガンを含まない”とは、不純物レベルとは言えない量を超える酸化マンガンを含まないことを意味し、不純物レベルの量(たとえば含有量が0.03モル%以下)であれば含有されていてもよい趣旨である。マンガンは、鉄の不可避的不純物として極微量程度に含有されることがある。
【0023】
すなわち、第2の観点によれば、
実質的に、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルで構成してある主成分を有するフェライト組成物であって、
前記主成分100モル%中の各酸化物の含有量が、
酸化鉄:Feに換算して46.0〜50.0モル%、
酸化チタン:Tiに換算して0〜1.0モル%(ただし、0モル%を除く)、
酸化鉄と酸化チタンの合計:(Fe+Ti)に換算して50モル%以下、
酸化亜鉛:ZnOに換算して20.0〜35.0モル%、
酸化銅:CuOに換算して1.0〜6.0モル%(ただし、6.0モル%を除く)、
酸化ニッケル:NiOに換算して9.0〜33.0モル%、であるフェライト組成物が提供される。
【0024】
”実質的に構成”とは、ここに挙げた酸化物以外の化合物が不純物レベルの量を超えて含有されていないことを意味し、不純物レベルの量であれば含有されていてもよい趣旨である。
【0025】
第3の観点によれば、
酸化マンガンを含まず、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルを含む主成分を有するフェライト組成物であって、
前記主成分100モル%中の各酸化物の含有量が、
酸化鉄:Feに換算して46.0〜50.0モル%、
酸化チタン:Tiに換算して0〜1.0モル%(ただし、0モル%を除く)、
酸化鉄と酸化チタンの合計:(Fe+Ti)に換算して50モル%以下、
酸化亜鉛:ZnOに換算して20.0〜35.0モル%、
酸化銅:CuOに換算して1.0〜6.0モル%(ただし、6.0モル%を除く)、
酸化ニッケル:NiOに換算して9.0〜33.0モル%、であるフェライト組成物が提供される。
【0026】
(3)上記第1の観点では、前記主成分が、酸化マンガンを含まず、実質的に、上記各酸化物で構成してあるNi−Cu−Zn系フェライト組成物であることが好ましい。”酸化マンガンを含まない”と、”実質的に構成”の解釈は上述したとおりである。
【0027】
すなわち、第4の観点によれば、
酸化マンガンを含まず、実質的に、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルで構成してある主成分を有するフェライト組成物であって、
前記主成分100モル%中の各酸化物の含有量が、
酸化鉄:Feに換算して46.0〜50.0モル%、
酸化チタン:Tiに換算して0〜1.0モル%(ただし、0モル%を除く)、
酸化鉄と酸化チタンの合計:(Fe+Ti)に換算して50モル%以下、
酸化亜鉛:ZnOに換算して20.0〜35.0モル%、
酸化銅:CuOに換算して1.0〜6.0モル%(ただし、6.0モル%を除く)、
酸化ニッケル:残部、
であるフェライト組成物が提供される。
【0028】
(4)上記各第1〜4の観点のフェライト組成物は、たとえば、ラジオ、テレビ、通信装置、OA機器、スイッチング電源などの電子機器に用いられるインダクタ、トランス、コイルなどのコア材(磁心)、あるいは映像機器または磁気ディスク装置などの電子機器の磁気ヘッドコア(磁心)などとして用いることができる。中でも、トランス用として用いて好ましく、特に液晶バックライト用トランス用に好適である。
【0029】
(5)本発明によれば、上記何れかのフェライト組成物で構成してある磁心が提供される。
【0030】
本発明によれば、該磁心を有する電子部品が提供される。
【0031】
電子部品としては、インダクタ部品、トランス部品、コイル部品、磁気ヘッド部品などが挙げられる。特にコイル部品に適用して好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここにおいて、図1は本発明の一実施形態に係るトランスコイル部品を示す図である。
本実施形態では、電子部品としてのトランスコイル部品を例示して説明する。
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るトランスコイル部品2は、所定形状のコア(本実施形態ではE型コア)4の回りに巻線6を巻回して構成されている。巻線6を巻回後に、必要に応じて樹脂モールド(図示省略)等を施すようにしても良い。
なお、図1中、符号8は平板コア、符号10は端子電極を示す。端子電極10は、逆側も含めて合計で4個形成してある。
【0034】
なお、トランスコイル部品の構成は、図示例に限定されるものではなく、例えば中脚付きポットコアの中脚部に巻線を施した後、ポットコア内に樹脂を流し込み、板状フェライトコアをポットコアの開口部に蓋をするような形で組み合わせて樹脂を封入するような構成としてもよい。
【0035】
コア(磁心)4は、本発明のフェライト組成物で構成してある。
【0036】
本発明のフェライト組成物は上述したとおりであるが、本実施形態では、Ni−Cu−Zn系フェライト組成物を例示して説明する。
【0037】
Ni−Cu−Zn系フェライト
本発明の一実施形態に係るNi−Cu−Zn系フェライト組成物は、主成分を有する。
【0038】
主成分は、酸化マンガンを含まず、実質的に、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルで構成してある。
【0039】
主成分100モル%中の各酸化物の含有量は、以下の通りである。
酸化鉄:Feに換算して46.0〜50.0モル%、好ましくは48.0〜49.8モル%、
酸化チタン:Tiに換算して0〜1.0モル%(ただし、0モル%を除く)、好ましくは0.05〜1.0モル%、
酸化鉄と酸化チタンの合計:(Fe+Ti)に換算して50モル%以下、好ましくは48.1〜49.8モル%、
酸化亜鉛:ZnOに換算して20.0〜35.0モル%、好ましくは25.0〜33.0モル%、
酸化銅:CuOに換算して1.0〜6.0モル%(ただし、6.0モル%を除く)、好ましくは2.0〜5.0モル%、
酸化ニッケル:残部。
【0040】
次に、数値範囲の限定理由について説明する。
【0041】
上記主成分100モル%中で、
【0042】
(1)酸化鉄がFeに換算して46.0モル未満であると、焼結体密度が低下する。そして、Feが化学量論組成を超えた範囲から、空気中の焼成ではFeの析出により、焼結体密度の低下と、コアとしての比抵抗の低下が始まる。この析出が顕著に見られるのはFeが51.0モル%を超える範囲である。
【0043】
(2)酸化チタンがTiに換算して0モル%であると、損失改善の効果がなく、1.0モル%を超えると飽和磁束密度が低下する。
【0044】
(3)酸化鉄と酸化チタンの合計が(Fe+Ti)に換算して50モル%を超えると、空気中の焼成では安定した特性が得られず、比抵抗が劣化する。
【0045】
(4)酸化亜鉛がZnOに換算して20.0モル%未満であると、初透磁率が低下し、35.0モル%を超えるとキュリー点が低くなり実用上問題となる。
【0046】
(5)酸化銅がCuOに換算して1.0モル%未満であると、磁性材料の焼結性が劣化し、焼結体密度が低下するためコアの物理的強度が低下する。一方、6.0モル%以上であるとコアの比抵抗が低下する。酸化銅は焼結助剤としての役割を果たしている。
【0047】
本実施形態では、主成分の残部として、NiOを含有するが、これは諸特性をその他の成分により調整し、残部とするものである。NiOを含有していなければコアの比抵抗が低下する。
【0048】
なお、本実施形態に係るNi−Cu−Zn系フェライト組成物には、上記主成分の他に、不可避的不純物元素の酸化物が含まれ得る。
【0049】
次に、本実施形態に係るNi−Cu−Zn系フェライト組成物の製造方法の一例を説明する。
【0050】
まず、出発原料を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。秤量は、通常1/1000の精度で行う。混合法としては、たとえば、ボールミルを用いる湿式混合と、乾式ミキサーを用いる乾式混合とが挙げられる。
なお、平均粒径が0.1〜3μmの出発原料を用いることが好ましい。
【0051】
原料混合物は、酸化鉄(α−Fe )、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(Ti)、酸化ニッケル(NiO)、あるいは焼成により上記酸化物となる金属で、好ましくは上記例示金属の酸化物からなる主成分原料を含有する。焼成により上記酸化物になるものとしては、金属単体、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物などが含まれる。各原料は、フェライトの最終組成として前記した量比になるように混合される。
【0052】
なお、原料混合物中には、原料中の不可避的不純物元素が含まれ得る。このような元素としては、B、Al、Si、P、Ca、Cr、Co、Na、K、S、Clなどが挙げられる。電力損失や磁気特性への影響を抑えるためには、これら各元素の組成物全体に対する重量比率が200ppm以下であることが好ましいが、特にPおよびBは、電力損失や磁気特性への影響が大きいため、組成物全体に対するPの重量比率は、好ましくは0〜30ppmとし、また組成物全体に対するBの重量比率は、好ましくは0〜50ppmとする。
【0053】
次に、原料混合物の仮焼きを行い、仮焼き材料を得る。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を起こさせ、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。こうした仮焼きは、好ましくは800〜1100℃の温度で、通常1〜3時間程度行う。仮焼きは、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気や純酸素雰囲気で行っても良い。なお、フェライト中に副成分を含める場合には、主成分原料と副成分原料との混合は、仮焼きの前に行なってもよく、仮焼後に行なってもよい。
【0054】
次に、仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体を製造するために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。湿式粉砕は、仮焼き材料の平均粒径が、好ましくは1〜2μm程度となるまで行う。
【0055】
次に、粉砕材料の造粒(顆粒)を行い、造粒物を得る。造粒は、粉砕材料を適度な大きさの凝集粒子とし、成形に適した形態に変換するために行われる。こうした造粒法としては、たとえば、加圧造粒法やスプレードライ法などが挙げられる。スプレードライ法は、粉砕材料に、ポリビニルアルコールなどの通常用いられる結合剤を加えた後、スプレードライヤー中で霧化し、低温乾燥する方法である。
【0056】
次に、造粒物を所定形状に成形し、成形体を得る。造粒物の成形としては、たとえば、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。乾式成形法は、造粒物を、金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより行う成形法である。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよい。
【0057】
次に、成形体の本焼成を行い、焼結体(本実施形態のフェライト組成物)を得る。本焼成は、多くの空隙を含んでいる成形体の粉体粒子間に、融点以下の温度で粉体が凝着する焼結を起こさせ、緻密な焼結体を得るために行われる。こうした本焼成は、好ましくは900〜1300℃の温度で、通常2〜5時間程度行う。本焼成は、大気(空気)中で行ってもよく、大気中よりも酸素分圧が高い雰囲気で行っても良い。本実施形態では、製造コストを抑えるために、空気中で本焼成を行っても、安定した特性を持つ焼結体を得ることができ、しかも比抵抗が劣化することもない。
【0058】
このような工程を経て、本実施形態に係るNi−Cu−Zn系フェライト組成物は製造される。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0060】
たとえば、上述した実施形態では、コア4を所定形状とするために、本焼成前の所定形状に成形する方法を用いているが、本焼成後に所定形状に成形する方法を用いてもよい。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
まず、出発原料として、Fe、NiO、CuO、ZnO、TiOを用意した。また、参考のために、Mnも用意した。
【0063】
次に、用意された各出発原料の粉末を、表1に示す組成となるように秤量した後、ボールミルで5時間湿式混合して原料混合物を得た。
【0064】
次に、得られた原料混合物を、空気中において900℃で2時間仮焼して仮焼き材料とした後、ボールミルで20時間湿式粉砕して粉砕材料を得た。
【0065】
次に、この粉砕材料乾燥した後、該粉砕材料100重量%に、バインダーとしてのポリビニルアルコールを1.0重量%添加して造粒して造粒物とし、これを、100kPaの圧力で加圧成形して、トロイダル形状(寸法=外径20mm×内径10mm×高さ5mm)の成形体と、ディスク形状(寸法=直径20mm×厚さ5mm)の成形体を得た。
【0066】
次に、これら各成形体を、空気中において、表1に示す温度で2時間焼成して、焼結体としてのトロイダルコアサンプル及びディスクコアサンプルを得た。
【0067】
得られたトロイダルコアサンプルに、1次巻線及び2次巻線を5回ずつ巻回し、50kHz、150mT、100℃(損失極小温度)での電力損失Pcvを測定した(単位:kW/m)。測定は、IWATSU社製 SY−8217 B−H アナライザー、 NF ELECTRONIC INSTRUMENTS社製 HIGH SPEED POWER AMPLIFIER IE−1125にて行った。Pcvは、300kW/m以下が良好とした。
【0068】
得られたトロイダルコアサンプルに、銅製ワイヤー(線径0.35mm)を20回巻回した後、ヒューレットパッカード社製プレシジョンLCRメータ4284Aによりインダクタンス値を測定し、100kHz、0.4A/mにおける初透磁率μiを求めた(単位:なし)。μiは、1000以上を良好とした。
【0069】
上記μiの測定に用いたトロイダルコアサンプルに、さらに巻線を40回巻回した後、理研電子社製 B−Hカーブトレーサーにて4kA/mの磁場を印加したときの飽和磁束密度Bsを測定した(単位:mT)。Bsは、350以上を良好とした。
【0070】
得られたトロイダルコアサンプルの寸法と質量を測定して、質量W/体積Vにより焼結密度dを算出した(単位:g/cm)。
【0071】
得られたディスクコアサンプルの両面に、インジウム−ガリウム電極を塗り、直流抵抗値を測定し、比抵抗ρを求めた(単位:Ωm)。測定は、TOA Electronics社製のSUPER MEGOHMMETER MODEL SM−5Eにて行った。ρは、10Ωm以上を良好とした。
【0072】
これらの結果を表1に示す。なお、表1中、比抵抗ρの数値において、「mE+n」は「m×10+n」を意味する。
【0073】
【表1】
Figure 0004799808
【0074】
表1に示すように、(1)主成分100モル%中で、Tiが全く添加されていないと電力損失Pcvの改善の効果がなく(サンプル10,11参照)、1.0モル%を超えると飽和磁束密度Bsが低下する(サンプル13〜15参照)ことが確認できた。これに対し、主成分100モル%中で、Tiが0モル%を超え1.0モル%以下であると、電力損失Pcvの改善の効果があり、飽和磁束密度Bsが高くなることが確認できた(サンプル1〜9参照)。
【0075】
(2)主成分100モル%中で、(Fe+Ti)が50モル%を超えると、空気中の焼成では安定した特性が得られず、比抵抗が劣化する(サンプル15〜16参照)ことが確認できた。これに対し、主成分100モル%中で、(Fe+Ti)が50モル%以下であると、空気中の焼成でも安定した特性が得られ、比抵抗が劣化することもない(サンプル1〜9参照)ことが確認できた。
【0076】
(3)主成分100モル%中で、CuOが多いと焼成温度を下げられるが、6.0モル%以上であると、コアの比抵抗が低下する(サンプル12参照)ことが確認できた。これに対して、主成分100モル%中で、CuOが1.0モル%以上6.0モル%未満であると、比較的低温で焼成可能であるとともに、コアの比抵抗が低下することもない。
(4)なお、積極的に、Mnを添加した場合、比抵抗の特性が劣化する傾向にあることが確認された(比較例。サンプル17参照)。
【0077】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、電力損失Pcvが小さく、かつ、飽和磁束密度Bsが高く、かつ、空気中で本焼成した場合にでも安定した特性を持ち、安価に製造できるフェライト組成物と、該フェライト組成物で構成してある磁心と、該磁心を有する電子部品とを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係るトランスコイル部品を示す図である。
【符号の説明】
2…トランスコイル部品
4…コア(E型コア)
6…巻線
8…平板コア
10…端子電極

Claims (3)

  1. 酸化マンガンを含まず、実質的に、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化ニッケルで構成してある主成分を有するフェライト組成物であって、
    前記主成分100モル%中の各酸化物の含有量が、
    酸化鉄:Feに換算して46.0〜50.0モル%、
    酸化チタン:Tiに換算して0〜1.0モル%(ただし、0モル%を除く)、
    酸化鉄と酸化チタンの合計:(Fe+Ti)に換算して50モル%以下、
    酸化亜鉛:ZnOに換算して20.0〜35.0モル%、
    酸化銅:CuOに換算して1.99〜3.00モル%
    酸化ニッケル:残部、
    であるフェライト組成物。
  2. 請求項1に記載のフェライト組成物で構成してある磁心。
  3. 請求項に記載の磁心を有する電子部品。
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