JP5556807B2 - 無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機に関し、特に、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力を車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達する無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機に関するものである。
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、このような無段変速機、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)には、例えば、いわゆる、トロイダル式の無段変速機やベルト式の無段変速機などがある。トロイダル式の無段変速機は、入力側の回転部材である入力ディスクと出力側の回転部材である出力ディスクとの間に挟み込んだ伝達部材としてのパワーローラを介して各ディスクの間でトルクを伝達すると共に、パワーローラを傾転させて変速比を変化させる。ベルト式の無段変速機は、駆動源からの駆動力が伝達される入力側の回転部材であるプライマリプーリ及びプライマリプーリに伝達された駆動力を変化させて出力する出力側の回転部材であるセカンダリプーリと、このプライマリプーリに伝達された駆動力をセカンダリプーリに伝達する伝達部材としてのベルトとにより構成され、ベルトとプーリとの接触半径を変化させて変速比を変化させる。
例えば、このトロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクと出力ディスクとの間に、外周面をトロイダル面に対応する曲面としたパワーローラなどの回転手段を挟み込み、これら入力ディスク、出力ディスク及びパワーローラとの間に形成されるトラクションオイルの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。そして、このパワーローラは、トラニオンにより回転自在に支持されており、このトラニオンは、回転軸を中心として回転可能であると共に、例えば、トラニオンに設けられたピストンに対して変速制御油圧室(変速制御圧力室)に供給される作動媒体としての作動油の油圧により変速制御押圧力を作用させることで、この回転軸に沿った方向に移動可能に構成されている。
したがって、トラニオンに支持されるパワーローラがこのトラニオンと共に入力ディスク及び出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動することで、パワーローラとディスクとの間に接線力が作用しサイドスリップが発生し、このパワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して回転軸を中心として回転、すなわち、傾転し、この結果、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比が変更される。そして、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比は、パワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して傾転する角度、すなわち、傾転角に基づいて決まり、この傾転角は、当該パワーローラの中立位置から変速位置側への移動量としてのストローク量(オフセット量)の積分値に基づいて決まる。
また、このようなトロイダル式無段変速機は、例えば、挟圧手段により入力ディスクと出力ディスクとの間にパワーローラを挟み込むための所定の挟圧力を作用させることで、入力ディスク、出力ディスクとパワーローラとの接触部分において接触面圧を調節し適正なトラクション状態を維持している。そして、このような挟圧手段は、例えば、挟圧力発生油圧室(接触面圧制御圧力室)に供給される作動媒体としての作動油の圧力を圧力作用面に作用させることで入力ディスクと出力ディスクとの間にパワーローラを挟み込む挟圧力を作用させる。
なお、このような油圧式の挟圧手段は、上述のベルト式無段変速機にも設けられている。すなわち、ベルト式無段変速機は、挟圧力発生油圧室(接触面圧制御圧力室)に供給される作動媒体としての作動油の圧力を圧力作用面に作用させることで可動シーブを固定シーブ側に押圧し、これにより、可動シーブと固定シーブとの間にベルトを挟み込むベルト挟圧力を作用させベルト張力を調節しプーリとベルトとの接触部分において接触面圧を調節する。
このような従来の無段変速機の媒体圧力制御装置として、例えば、特許文献1に記載されている無段変速機の油圧制御装置は、急変速時においてバイパス油路を閉鎖させることで第1及び第2のオイルポンプのそれぞれの吐出油をライン圧供給先(例えば、変速制御圧力室や接触面圧制御圧力室)に供給しライン圧供給先がオイル不足になることを抑制する一方、急変速時以外において第1オイルポンプの吐出口側と第2オイルポンプの吸込口側とをバイパス油路で連通することで、第2オイルポンプが第1オイルポンプにおける高圧の吐出油を利用して効率良く作動油を吸い込みポンプ駆動損失の低減を図り、第1及び第2のオイルポンプを効率的に使用している。
特開2005−221047号公報
ところで、特許文献1に記載されている無段変速機の油圧制御装置では、例えば、第2のオイルポンプの吐出油のみをライン圧供給先(例えば、変速制御圧力室や接触面圧制御圧力室)に供給している状態から第1及び第2のオイルポンプのそれぞれの吐出油をライン圧供給先に供給する状態に切り替えた場合であっても、運転状態によってはライン圧供給先が作動油不足になるおそれがあり、このため、運転状態に応じたより適正なオイルポンプの吐出容量の切り替えが望まれていた。
そこで本発明は、運転状態に応じて作動媒体の吐出容量を適正に切り替えることができる無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明による無段変速機の媒体圧力制御装置は、駆動力を入力側の回転部材から伝達部材を介して出力側の回転部材に伝達可能であると共に、入力側の前記回転部材と出力側の前記回転部材との回転速度比である変速比を無段階に変更可能である無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記回転部材と前記伝達部材との接触面圧及び前記変速比を作動媒体の圧力により制御する制御系への前記作動媒体を吐出する第1ポンプと、前記作動媒体を前記制御系又は前記制御系とは異なる供給系に吐出する第2ポンプと、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先を前記制御系と前記供給系との間で切り替え可能な切替手段とを有するポンプ手段と、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系から前記制御系に切り替わる際に、前記制御系を制御し前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系である場合よりも前記変速を相対的に遅らせる変速比制御手段とを備えることを特徴とする。
また、上記無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記変速比制御手段は、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系から前記制御系に切り替わる際に、前記制御系を制御し前記変速の開始時点を相対的に遅らせることで、前記変速を相対的に遅らせるように構成してもよい。
また、上記無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記変速比制御手段は、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系から前記制御系に切り替わる際に、前記制御系を制御し前記変速の変速速度を相対的に低下させることで、前記変速を相対的に遅らせるように構成してもよい。
また、上記無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記変速比制御手段は、前記ポンプ手段の前記制御系への前記作動媒体の吐出容量の切り替えが開始されてから前記ポンプ手段の実際の吐出容量が前記相対的に大きな容量に切り替わり終わるまでの期間で前記変速を遅らせるように構成してもよい。
また、上記無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記変速比制御手段が前記制御系を制御し前記変速を遅らせる際に、前記ポンプ手段を制御し前記制御系への前記作動媒体の吐出容量の切り替え速度を相対的に増加する切替制御手段を備えるように構成してもよい。
また、上記無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記ポンプ手段は、前記作動媒体を前記制御系に吐出する第1ポンプと、前記作動媒体を前記制御系又は前記制御系とは異なる供給系に吐出する第2ポンプと、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先を前記制御系と前記供給系との間で切り替え可能な切替手段とを有するように構成してもよい。
また、上記無段変速機の媒体圧力制御装置において、前記制御系は、変速制御圧力室に供給される前記作動媒体の圧力により前記変速比を変更する変速比変更手段と、接触面圧制御圧力室に供給される前記作動媒体の圧力により前記接触面圧を変更する接触面圧変更手段とを含んで構成されてもよい。
上記目的を達成するために、本発明による無段変速機は、上記無段変速機の媒体圧力制御装置と、前記伝達部材をなすパワーローラとを備えることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明による無段変速機は、上記無段変速機の媒体圧力制御装置と、前記伝達部材をなすベルトとを備えることを特徴とする。
本発明に係る無段変速機の媒体圧力制御装置によれば、運転状態に応じて作動媒体の吐出容量を適正に切り替えることができる。
本発明に係る無段変速機によれば、運転状態に応じて作動媒体の吐出容量を適正に切り替えることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置の概略構成図である。 図2は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されたトロイダル式無段変速機を搭載した車両の動力伝達系の概略構成図である。 図3は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機の概略断面図である。 図4は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機の要部の模式的構成図である。 図5は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図である。 図6は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図である。 図7は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置における吐出容量の切り替えを説明する線図である。 図8は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置のポンプ装置の吐出容量の切り替え制御を説明するフローチャートである。 図9は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置のポンプ装置の吐出容量の切り替え制御の一例を説明するタイムチャートである。 図10は、本発明の変形例に係る油圧制御装置が適用されるベルト式無段変速機の概略構成図である。
符号の説明
1 トロイダル式無段変速機(無段変速機)
1A 車両
2 入力ディスク(入力側の回転部材)
3 出力ディスク(出力側の回転部材)
4 パワーローラ(伝達部材)
5 変速比変更部(変速比変更手段)
9 油圧制御装置(媒体圧力制御装置)
15 油圧押圧機構(接触面圧変更手段)
15a 挟圧力発生油圧室(接触面圧制御圧力室)
65 変速比制御部(変速比制御手段)
66 切替制御部(切替制御手段)
82 変速制御油圧室(変速制御圧力室)
90A 制御系
90B 潤滑系(供給系)
91 オイルパン
92 ポンプ装置(ポンプ手段)
96 メインポンプ(第1ポンプ)
97 サブポンプ(第2ポンプ)
98 切替弁(切替手段)
101 ベルト式無段変速機(無段変速機)
102 プライマリプーリ(入力側の回転部材、変速比変更手段)
103 セカンダリプーリ(出力側の回転部材、接触面圧変更手段)
104 ベルト(伝達部材)
124 プライマリ油圧室(変速制御圧力室)
134 セカンダリ油圧室(接触面圧制御圧力室)
以下に、本発明に係る無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置の概略構成図、図2は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されたトロイダル式無段変速機を搭載した車両の動力伝達系の概略構成図、図3は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機の概略断面図、図4は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機の要部の模式的構成図、図5は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図、図6は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置が適用されるトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図、図7は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置における吐出容量の切り替えを説明する線図、図8は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置のポンプ装置の吐出容量の切り替え制御を説明するフローチャート、図9は、本発明の実施形態に係る油圧制御装置のポンプ装置の吐出容量の切り替え制御の一例を説明するタイムチャートである。
なお、図4は、無段変速機としてのトロイダル式無段変速機を構成する各パワーローラのうち任意のパワーローラと、このパワーローラに接触する入力ディスクを示す図である。また、図5、図6は、入力ディスクを出力ディスク側から見た図であり、入力ディスクとパワーローラをそれぞれ1つだけ模式的に図示している。
ここで、以下で説明する実施形態では、本発明の無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源として、エンジントルクを発生する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータトルクを発生するモータなどの電動機を駆動源として用いてもよい。また、駆動源として内燃機関及び電動機を併用してもよい。
図2に示すように、本実施形態に係る媒体圧力制御装置が適用される無段変速機としてのトロイダル式無段変速機1は、車両1Aに搭載される駆動源としてのエンジン21からの駆動力、すなわち出力トルクを車両1Aの走行状態に応じた最適の条件で駆動輪27に伝達するためのものであり、変速比を無段階(連続的)に制御することができる、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)である。このトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟み込んだパワーローラ4を介して各入力ディスク2と出力ディスク3の間でトルクを伝達すると共に、パワーローラ4を傾転させて変速比を変化させる、いわゆる、トロイダル式の無段変速機である。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル面2a、3aを有する入力ディスク2と出力ディスク3との間に、外周面をトロイダル面2a、3aに対応する曲面としたパワーローラ4を挟み込み、これら入力ディスク2、出力ディスク3及びパワーローラ4との間に形成されるトラクションオイルの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。トロイダル式無段変速機1は、駆動力が入力される入力ディスク2と駆動力が出力される出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4を傾転させることで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転速度比である変速比を無段階に変更可能である。
具体的には、このトロイダル式無段変速機1は、図2、図3、図4に示すように、入力側の回転部材としての入力ディスク2と、出力側の回転部材としての出力ディスク3と、伝達部材としてのパワーローラ4と、変速比変更手段としての変速比変更部5とを備える。変速比変更部5は、支持手段としてのトラニオン6と、移動部7を有する。さらに、移動部7は、油圧ピストン部8と、媒体圧力制御装置としての油圧制御装置9とを有する。また、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル式無段変速機1の各部を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)60を備える。このトロイダル式無段変速機1では、入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられるパワーローラ4が移動部7により入力ディスク2及び出力ディスク3に対して中立位置から変速位置に移動することで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比が変更される。
なお、本実施形態の入力ディスク2は、入力側の回転部材に相当すると共にパワーローラ4に挟圧力を作用させるための第1挟圧部材にも相当し、出力ディスク3は、出力側の回転部材に相当すると共にパワーローラ4に挟圧力を作用させるための第2挟圧部材にも相当する。
入力ディスク2は、エンジン21側からの駆動力(トルク)が、例えば、発進機構であり流体伝達装置であるトルクコンバータ22や前後進切換機構23などを介して伝達(入力)されるものである。
エンジン21は、このエンジン21が搭載された車両を前進あるいは後進させるためのエンジントルク、すなわち、駆動力を出力するものである。また、エンジン21は、ECU60に電気的に接続されており、このECU60によってその駆動が制御され、出力する駆動力が制御されている。エンジン21からの駆動力は、クランクシャフト21aを介してトルクコンバータ22に伝達される。
トルクコンバータ22は、前後進切換機構23を介してエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1に伝達するものである。トルクコンバータ22は、ポンプ(ポンプインペラ)、タービン(タービンランナ)、ステータ、ロックアップクラッチを備える。ポンプは、フロントカバー等を介してエンジン21のクランクシャフト21aに連結されており、クランクシャフト21a、フロントカバーと共に回転可能に設けられている。タービンは、上記ポンプと対向するように配置されている。このタービンは、入力軸22a、前後進切換機構23を介して入力軸10に連結されており、入力軸10と共にクランクシャフト21aと同一の軸線を中心に回転可能に設けられている。ステータは、そのポンプとタービンとの間に配置されている。ロックアップクラッチは、このタービンとフロントカバーとの間に設けられており、タービンに連結されている。
したがって、このトルクコンバータ22は、エンジン21の駆動力(エンジントルク)がクランクシャフト21aからフロントカバーを介してポンプに伝達される。そして、ロックアップクラッチが解放されている場合には、このポンプに伝達された駆動力は、ポンプとタービンとの間に介在する作動流体である作動油を介してタービン、入力軸22a、入力軸10に伝達される。このとき、トルクコンバータ22は、ステータにより、ポンプとタービンとの間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。そして、トルクコンバータ22は、タービンに連結されているロックアップクラッチがフロントカバーに係合されている場合、フロントカバーを介してポンプに伝達されたエンジン21からの駆動力は、作動油を介さずに直接的に入力軸10に伝達される。ここで、ロックアップクラッチの係合及び係合の解除、すなわち、ON、OFFを行うON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油によって行われる。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。したがって、ロックアップクラッチのON/OFF制御は、ECU60により行われる。
前後進切換機構23は、トルクコンバータ22を介して伝達されたエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1の入力ディスク2に伝達するものである。前後進切換機構23は、例えば、遊星歯車機構と、フォワードクラッチ(摩擦クラッチ)及びリバースブレーキ(摩擦ブレーキ)などによって構成され、エンジン21の駆動力を直接、あるいは反転して入力ディスク2に伝達するものである。つまり、前後進切換機構23を介したエンジン21の駆動力は、入力ディスク2を正回転させる方向(車両が前進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する正回転駆動力として、あるいは、入力ディスク2を逆回転させる方向(車両が後進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する逆回転駆動力として、入力ディスク2に伝達される。この前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御は、フォワードクラッチ、リバースブレーキの係合及び係合の解除、すなわち、ON、OFFを行うON/OFF制御を実行することで行われる。前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御、言い換えれば、フォワードクラッチ、リバースブレーキのON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油により行われる。したがって、前後進切換機構23の切換制御は、ECU60により行われている。
前後進切換機構23は、例えば、車両の前進走行時には、フォワードクラッチがON、リバースブレーキがOFFにされる。また、車両の後進走行時には、フォワードクラッチがOFF、リバースブレーキがONにされる。これにより、前後進切換機構23は、トルクの回転方向を切り替えることができる。そして、前後進切換機構23は、ニュートラル時には、フォワードクラッチがOFF、リバースブレーキがOFFにされる。
入力ディスク2は、エンジン21の回転に基づいて回転される入力軸10に2つが結合されており、この入力軸10により回転自在に設けられている。さらに言えば、各入力ディスク2は、入力軸10と同一の回転をするバリエータ軸11によって回転される。したがって、各入力ディスク2は、ディスク回転軸線としての入力軸10の回転軸線X1を回転中心として回転可能である。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)にフロント側入力ディスク2が設けられ、回転軸線X1に沿った方向にフロント側入力ディスク2に対して所定の間隔をあけてリア側(駆動輪27側)にリア側入力ディスク2が設けられる。
フロント側入力ディスク2は、ボールスプライン11aを介してバリエータ軸11に支持されている。つまり、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、このバリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しない一方、回転軸線X1に沿った方向には相対的に変位可能である。
一方、リア側入力ディスク2は、スプライン嵌合部を介してバリエータ軸11に支持されていると共に、バリエータ軸11のリア側端部に設けられたローディングナット11bにより回転軸線X1に沿ったリア側への移動が制限されている。ローディングナット11bは、バリエータ軸11のリア側端部に螺合されており、後述する油圧押圧機構15からの押圧力を受け、リア側入力ディスク2のリア側への移動を制限する。つまり、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11に対するリア側への相対移動がローディングナット11bにより所定位置で制限され、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿ったフロント側への移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、ローディングナット11bに後述する油圧押圧機構15からの押圧力が作用する際には、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。なお、以下の説明では、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2とを特に区別する必要がない場合、単に「入力ディスク2」と略記する。
各々の入力ディスク2は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各入力ディスク2の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各入力ディスク2のトロイダル面2aをなす。2つの入力ディスク2は、トロイダル面2aが互いに対向するように設けられる。
出力ディスク3は、各入力ディスク2に伝達(入力)された駆動力を駆動輪27側に伝達(出力)するものであり、各入力ディスク2に対応して1つずつ、合計2つ設けられる。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)にフロント側出力ディスク3が設けられ、リア側(駆動輪27側)にリア側出力ディスク3が設けられる。フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とは、共に回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2との間に設けられ、さらに言えば、リア側出力ディスク3は、フロント側出力ディスク3とリア側入力ディスク2との間に設けられている。つまり、このトロイダル式無段変速機1は、回転軸線X1に沿った方向に対して、フロント側からフロント側入力ディスク2、フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3、リア側入力ディスク2の順で設けられている。なお、以下の説明では、フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とを特に区別する必要がない場合、単に「出力ディスク3」と略記する。
各入力ディスク2と各出力ディスク3とは、回転軸線X1に同軸上に回転自在に設けられる。したがって、各出力ディスク3は、回転軸線X1を回転中心として回転可能である。そして、各出力ディスク3は、各入力ディスク2とほぼ同一な形状をなし、すなわち、各々の出力ディスク3は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各出力ディスク3の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各出力ディスク3のトロイダル面3aをなす。
そして、各出力ディスク3は、上述のように回転軸線X1に沿った方向に対して2つの入力ディスク2の間に設けられると共に、各トロイダル面3aが各入力ディスク2のトロイダル面2aにそれぞれ対向するように設けられる。すなわち、回転軸線X1に沿った断面内において、一方のフロント側入力ディスク2のトロイダル面2aとフロント側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向してフロント側(駆動源側)キャビティCを形成し、他方のリア側入力ディスク2のトロイダル面2aとリア側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向して別のリア側(駆動輪側)キャビティCを形成している。
また、各出力ディスク3は、この2つの出力ディスク3の間に設けられた出力ギヤ12の円筒状のスリーブにスプライン係合部を介して支持されている。つまり、各出力ディスク3と出力ギヤ12とは、一体回転可能に連結されている。出力ギヤ12は、ケーシング1a(図4参照)の内側にこのケーシング1aに固定して設けられた中間壁32(図3参照)に対して、1対の軸受(ベアリング)31(図3参照)により、回転軸線X1に沿った変位が規制された状態で回転自在に支持されている。また、出力ギヤ12は、径方向内側の貫通孔12aにバリエータ軸11が挿入されると共にこのバリエータ軸11に対して相対回転可能に支持されている。したがって、各出力ディスク3は、出力ギヤ12と共にバリエータ軸11に対して相対回転可能に支持される。
つまり、このトロイダル式無段変速機1は、ケーシング1aに中間壁32が位置決めされ、中間壁32に軸受31が位置決めされ、軸受31に出力ギヤ12が位置決めされ、出力ギヤ12に各出力ディスク3が位置決めされることで、ケーシング1aに対して各出力ディスク3が位置決めされる。
また、バリエータ軸11は、回転軸線X1に沿った方向の中央部において、出力ギヤ12、軸受(ベアリング)31、中間壁32などからなる軸線方向中央支持部33を介してケーシング1a(図4参照)に対して相対回転可能に支持されている。つまり、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とがなすフロント側キャビティCと、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とがなすリア側キャビティCとを備えるダブルキャビティ型のトロイダル式無段変速機1であって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2、フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3が設けられるバリエータ軸11が回転軸線X1に沿った方向に対してこのフロント側キャビティCとリア側キャビティCとの間で軸線方向中央支持部33を介してケーシング1a(図4参照)に対して相対回転可能に支持される。
さらに、出力ギヤ12には、カウンターギヤ13が噛み合わされており、このカウンターギヤ13に出力軸14が連結されている。したがって、各出力ディスク3の回転に伴って、出力ギヤ12が回転し、この出力ギヤ12に噛み合わされたカウンターギヤ13が回転することで、出力軸14が回転する。そして、この出力軸14は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギヤ25等を介して駆動輪27に接続されており、駆動力は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギヤ25等を介して駆動輪27に伝達(出力)される。
動力伝達機構24は、トロイダル式無段変速機1とディファレンシャルギヤ25との間で、駆動力の伝達を行うものである。動力伝達機構24は、出力ディスク3とディファレンシャルギヤ25との間に配置される。ディファレンシャルギヤ25は、動力伝達機構24と駆動輪27との間で、駆動力の伝達を行うものである。ディファレンシャルギヤ25は、動力伝達機構24と駆動輪27との間に配置されている。ディファレンシャルギヤ25には、ドライブシャフト26が連結されている。ドライブシャフト26には、駆動輪27が取り付けられている。
パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間にこの入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられ、入力ディスク2からの駆動力を出力ディスク3に伝達するものである。すなわち、パワーローラ4は、外周面がトロイダル面2a、3aに対応した曲面状の接触面4aとして形成される。そして、パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟持され、接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触可能であり、各パワーローラ4は、それぞれ後述するトラニオン6によってこの接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触しながら、パワーローラ回転軸線としての回転軸線X2を回転中心として回転自在に支持されている。パワーローラ4は、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルにより入力ディスク2と出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの間に形成される油膜のせん断力を用いて駆動力(トルク)を伝達する。
パワーローラ4は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられ、リア側キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられる。フロント側キャビティC、リア側キャビティCに対してそれぞれ一対で設けられるパワーローラ4は、回転軸線X1を挟んで互いに対向して設けられる。
さらに具体的には、パワーローラ4は、パワーローラ本体41と、外輪42とにより構成される。パワーローラ本体41は、外周面に入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aと接触する上述の接触面4aが形成されている。パワーローラ本体41は、外輪42に形成された回転軸42aに対して、軸受部(ラジアルベアリング)43aを介して回転自在に支持されている。また、パワーローラ本体41は、外輪42のパワーローラ本体41と対向する面に対して、軸受部(スラストベアリング)43bを介して回転自在に支持されている。したがって、パワーローラ本体41は、回転軸42aの回転軸線X2を回転中心として回転可能である。
外輪42は、上述の回転軸42aと共に偏心軸42bが形成されている。偏心軸42bは、回転軸線X2’が回転軸42aの回転軸線X2に対してずれた位置となるように形成されている。偏心軸42bは、後述するトラニオン6のローラ支持部6aに凹部として形成される嵌合部6dに対して、軸受部(ラジアルベアリング)43cを介して回転自在に支持されている。したがって、外輪42は、偏心軸42bの回転軸線X2’を中心として回転可能である。つまり、パワーローラ4は、トラニオン6に対して、回転軸線X2及び回転軸線X2’を中心として回転可能となり、すなわち、回転軸線X2’を中心として公転可能でかつ回転軸線X2を中心として自転可能となる。これにより、パワーローラ4は、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な構成となり、例えば、部品変形や部品精度のバラツキを許容することが可能となる。
ここで、入力軸10は、接触面圧変更手段としての油圧押圧(エンドロード)機構15に接続される。
油圧押圧機構15は、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、この第1挟圧部材である入力ディスク2と第2挟圧部材である出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込むための挟圧力を作用させる挟圧手段である。油圧押圧機構15は、このパワーローラ4を挟み込むための挟圧力を変更することで、入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触部分に作用する接触面圧を変更するものである。この油圧押圧機構15は、接触面圧制御圧力室としての挟圧力発生油圧室15aに供給される作動媒体としての作動油の圧力、すなわち、作動油の油圧により入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用させると共に、この挟圧力を調節することで、トロイダル面2a、3aと接触面4aとの接触面圧を調節する。
この油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15aと、挟圧押圧力ピストン15bとを有する。油圧押圧機構15は、この挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の油圧を入力ディスク2の回転に伴って回転する圧力作用面としてのフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に作用させることで入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能のものである。
具体的には、挟圧力発生油圧室15aは、2つの入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿った方向の一方側に設けられる。ここでは、挟圧力発生油圧室15aは、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2側に設けられ、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間に配置される。挟圧力発生油圧室15aは、運転状態に応じて油圧制御装置9から内部に作動油が供給される。
挟圧押圧力ピストン15bは、円板状に形成され、その中心が回転軸線X1とほぼ一致するようにバリエータ軸11の一端部に設けられる。挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11のリア側入力ディスク2が設けられている端部とは反対側の端部、すなわち、フロント側(エンジン21側)に設けられている。挟圧押圧力ピストン15bは、回転軸線X1に沿った方向に対して、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間にフロント側入力ディスク2と間隔をあけて配置される。上述の挟圧力発生油圧室15aは、この挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間に設けられている。
また、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。つまり、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。したがって、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、一体となって回転軸線X1を中心として回転可能であり回転軸線X1に沿った方向に移動可能である。また、フロント側入力ディスク2は、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bと共に一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、ボールスプライン11aによって、このリア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bに対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。
さらに、挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10にも連結されており、この入力軸10と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、また、回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能に設けられる。具体的に言えば、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11と一体に形成されており、挟圧押圧力ピストン15bとバリエータ軸11とは、スプライン係合部11cを介して入力軸10と駆動力を伝達可能に連結されている。挟圧押圧力ピストン15b、バリエータ軸11は、円筒部11dの外周面に回転軸線X1に沿って形成されたスプラインと、入力軸10の内周面に回転軸線X1に沿って形成されたスプラインとがスプライン係合するスプライン係合部11cを介して入力軸10に連結される。ここで、円筒部11dは、挟圧押圧力ピストン15bのフロント側の面にフロント側に突出して設けられる部分であり、その中心軸線が回転軸線X1とほぼ一致するように円筒状に形成される部分である。
つまり、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、このスプライン係合部11cを介して入力軸10と一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、この入力軸10に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。入力軸10からの駆動力は、このスプライン係合部11c、挟圧押圧力ピストン15bを介してバリエータ軸11に伝達され、バリエータ軸11からフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に伝達される。
また、フロント側入力ディスク2は、上述のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28を有する一方、挟圧押圧力ピストン15bは、上述のリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29を有する。フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。つまり、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とは、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28がリア側で挟圧力発生油圧室15aに対向し、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29がフロント側で挟圧力発生油圧室15aに対向する。
したがって、油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15a内に供給される作動油の油圧によりフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を作用させることで、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に離間する方向へ移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にリア側から油圧押圧機構15側に接近する方向へ移動させる。つまり、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動する。そして、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にフロント側に接近する方向へ移動させることで、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側に接近させると共にリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3側に接近させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させる。このとき、バリエータ軸11のリア側端部に螺合されたローディングナット11bは、油圧押圧機構15が発生させる挟圧押圧力の反力受け部として作用し、すなわち、挟圧押圧力を受け、バリエータ軸11に対するリア側入力ディスク2のリア側への移動を制限する。これにより、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させることから、各パワーローラ4をそれぞれ所定の挟圧力でフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟み込むことができる。この結果、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との間のスリップを防ぎ、適正なトラクション状態を維持することができる。
ここで油圧押圧機構15による挟圧押圧力、言い換えれば挟圧力は、後述する油圧制御装置9により、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の量あるいは油圧が制御されることで、トロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の大きさに制御される。つまり、入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触部分に作用する接触面圧は、油圧制御装置9により、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の量あるいは油圧が制御されることで、トロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の大きさに制御される。言い換えれば、トロイダル式無段変速機1は、トロイダル面2a、3aと接触面4aとの接触面圧に応じて入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との間で伝達可能な伝達トルク(トルク容量)が制御される。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。したがって、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の大きさの制御、言い換えれば接触面圧の大きさの制御は、ECU60により行われる。
変速比変更部5は、変速制御圧力室としての変速制御油圧室82に供給される作動油の圧力、すなわち、油圧により変速比を変更するものである。変速比変更部5は、上述したように、トラニオン6と、移動部7を有し、移動部7によって、入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して、トラニオン6と共にパワーローラ4を移動し、パワーローラ4をこの入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更する。さらに言えば、変速比変更部5は、パワーローラ4を支持するトラニオン6に変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧により変速制御押圧力を作用させることでこのトラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置から変速位置に移動させこのパワーローラ4を傾転させることで、変速比を変更する。
ここで、変速比とは、入力ディスク2と出力ディスク3との回転速度比、言い換えれば、回転数比であり、典型的には、[変速比=出力側接触半径(パワーローラ4と出力ディスク3とが接触する接触半径(接触点と回転軸線X1との距離))/入力側接触半径(入力ディスク2とパワーローラ4とが接触する接触半径)]で表すことができる。
具体的には、各トラニオン6は、パワーローラ4をそれぞれ回転自在に支持すると共に、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して移動させ入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するものである。トラニオン6は、ローラ支持部6aと、軸部としての回転軸6bとを有する。
ローラ支持部6aは、パワーローラ4が配置される空間部6cが形成され、この空間部6cに凹部状の嵌合部6dが形成されている。そして、トラニオン6は、この空間部6cにて、上述のようにパワーローラ4の偏心軸42bが嵌合部6dに挿入されることで、パワーローラ4を回転自在に支持している。また、ローラ支持部6aは、回転軸6bと一体で移動可能に設けられる。回転軸6bは、ローラ支持部6aの肩部6eから突出するよう形成される。
ここで、ローラ支持部6aの肩部6eは、ローラ支持部6aにおいて嵌合部6dが設けられる壁面部に対して立設するようにして設けられる壁面部である。肩部6eは、ローラ支持部6aにおいて嵌合部6dが設けられる壁面部に対して一対で設けられており、この一対の肩部6eは、互いに対向するように設けられる。そして、ローラ支持部6aは、この一対の肩部6eが互いに対向することで上述の空間部6cが形成される。ここでは、ローラ支持部6aは、嵌合部6dが設けられる壁面部及び一対の肩部6eが一体に形成されている。
そして、回転軸6bは、上述のようにローラ支持部6aの一対の肩部6eからそれぞれ突出するよう形成される。各回転軸6bは、柱状に形成され、互いに同軸の回転軸線X3を回転中心として回転可能に設けられる。トラニオン6は、ローラ支持部6aがこの回転軸6bと共に回転軸線X3を回転中心として回転自在に、後述のロアリンク16aやアッパリンク17a、シリンダボデー86等を介してケーシング1aに支持されている。また、トラニオン6は、ローラ支持部6aがこの回転軸6bと共に回転軸線X3に沿った方向に移動自在に、ロアリンク16aやアッパリンク17a、シリンダボデー86等を介してケーシング1aに支持され、後述する移動部7によって、回転軸線X3に沿った方向に移動可能に構成される。
なお、このロアリンク16a及びアッパリンク17aについては、後で詳細に説明する。
トラニオン6は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられ、4つのパワーローラ4をそれぞれ1つずつ支持する。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられ、リア側キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられる。
ここで、トラニオン6は、パワーローラ4の回転軸線X2が回転軸6bの回転軸線X3と垂直な平面と平行になるようにパワーローラ4を支持している。また、トラニオン6は、回転軸6bの回転軸線X3が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1と垂直な平面と平行になるように配置される。すなわち、トラニオン6は、回転軸線X1と垂直な平面内で回転軸線X3に沿って移動することで、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して回転軸線X3に沿って移動させることができる。また、トラニオン6は、回転軸線X3を回転中心として回転することで、パワーローラ4を回転軸線X3と垂直な平面内でこの回転軸線X3を中心として入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在とすることができる。なお、言い換えれば、トラニオン6は、パワーローラ4に後述する傾転力が作用することでこのパワーローラ4を傾転可能に支持していることになる。
移動部7は、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った方向に移動させるものであり、上述したように、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。
油圧ピストン部8は、ピストンとしての変速制御ピストン81と、変速制御油圧室82とを含んで構成され、変速制御油圧室82に導入される作動油の油圧を変速制御ピストン81のフランジ部84により受圧することで、トラニオン6を回転軸線X3に沿った2方向(A1方向及びA2方向)に移動させるものである。すなわち、油圧ピストン部8は、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧によりトラニオン6に設けられたフランジ部84に変速制御押圧力を作用させる。
具体的には、変速制御ピストン81は、ピストンベース83とフランジ部84とにより構成されている。ピストンベース83は、円筒形状に形成され回転軸6bの一端部が挿入され、回転軸線X3方向及び回転軸線X3周り方向に対して固定されている。
フランジ部84は、ピストンベース83からピストンベース83の径方向、言い換えれば、回転軸6bの径方向に突出するように固定的に設けられており、ピストンベース83及びトラニオン6の回転軸6bと共に回転軸線X3に沿った方向に移動可能である。フランジ部84は、回転軸6bの回転軸線X3周りに円環板状に形成されている。
変速制御油圧室82は、油圧室形成部材85により形成される。この油圧室形成部材85は、第1形成部材としてのシリンダボデー86及び第2形成部材としてのロアカバー87により構成される。すなわち、油圧室形成部材85は、変速制御油圧室82の壁面をなすと共に、トラニオン6の移動方向(ストローク方向)である回転軸線X3に沿った方向に対してシリンダボデー86とロアカバー87とに分割されている。シリンダボデー86は、変速制御油圧室82の空間部となる凹部が形成されている。ロアカバー87は、シリンダボデー86の凹部の開口を塞ぐようにこのシリンダボデー86に固定され、これにより、変速制御油圧室82は、シリンダボデー86とロアカバー87とにより回転軸線X3を中心とした円筒状(シリンダ状)に区画される。このシリンダボデー86及びロアカバー87は、シリンダボデー86のロアカバー87側とは反対側においてケーシング1aに固定されている。なお、シリンダボデー86とロアカバー87との間には、変速制御油圧室82内の作動油の外部への漏洩を防止するガスケット88が設けられている。
そして、フランジ部84は、作動油が導入される変速制御油圧室82内に収容されると共に、この変速制御油圧室82内を回転軸線X3に沿った方向に2つの油圧室、すなわち、第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに仕切り区画する。第1油圧室OP1は、内部に供給される作動油の油圧により、フランジ部84と共にトラニオン6を回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させる一方、第2油圧室OP2は、内部に供給される作動油の油圧により、フランジ部84と共にトラニオン6を第1方向の逆方向である第2方向A2に移動させる。
フランジ部84の径方向外側の先端部には、環状のシール部材S1が設けられており、したがって、このフランジ部84によって区画される変速制御油圧室82の第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれこのシール部材S1により互いに作動油が漏れないようにシールされている。また、ピストンベース83の外周部には、変速制御油圧室82を形成する油圧室形成部材85であるシリンダボデー86、ロアカバー87との間に環状のシール部材S2、S3、S4が設けられており、したがって、ピストンベース83の外周部とシリンダボデー86、ロアカバー87との間は、このシール部材S2、S3、S4により変速制御油圧室82内の作動油が外部に漏れないようにシールされている。
なお、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにパワーローラ4、トラニオン6が2つずつ設けられることから、この第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにそれぞれ2つずつ設けられることになる。ここで、この一対のトラニオン6では、第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2の位置関係がトラニオン6ごとに入れ替わっている。つまり、一方のトラニオン6の第1油圧室OP1とした油圧室が他方のトラニオン6の第2油圧室OP2となり、一方のトラニオン6の第2油圧室OP2とした油圧室が他方のトラニオン6の第1油圧室OP1となる。したがって、図2に示すトロイダル式無段変速機1では、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4は、第1油圧室OP1又は第2油圧室OP2内の油圧により、回転軸線X3に沿って互いに逆方向に移動することになる。
油圧制御装置9は、トランスミッションの各部、例えば、油圧ピストン部8の変速制御油圧室82、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15a、トルクコンバータ22、前後進切換機構23等に作動油を供給するものである。ここでは、油圧制御装置9は、少なくとも挟圧力発生油圧室15a、変速制御油圧室82に供給される作動油の量あるいは油圧を制御するものである。
油圧制御装置9は、オイルパン91(図1参照)に貯留されトランスミッションの各部に供給される作動油を後述するポンプ手段としてのポンプ装置92(図1参照)により吸引、加圧し、吐出する。ここで、ポンプ装置92は、例えば、駆動力を発生するエンジン21の出力軸であるクランクシャフト21aの回転に連動して駆動し、オイルパン91に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。
油圧制御装置9は、ポンプ装置92により加圧された作動油がプレッシャーレギュレータバルブを介して、種々の流量制御弁などに供給される。種々の流量制御弁は、スプール弁子、電磁ソレノイドなどを含んで構成され、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2へ作動油の供給、あるいは、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2からの作動油の排出を制御する流量制御弁、挟圧力発生油圧室15aへの作動油の供給、あるいは、挟圧力発生油圧室15aからの作動油の排出を制御する流量制御弁などが含まれる。油圧制御装置9の流量制御弁は、例えば、ECU60から入力される制御指令値入力に基づいた駆動電流により駆動する電磁ソレノイドがスプール弁子の位置を変位させることで、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2、挟圧力発生油圧室15aに供給、排出される作動油の流量あるいは油圧を制御するものである。なお、プレッシャーレギュレータバルブは、プレッシャーレギュレータバルブよりも下流側における油圧が所定油圧以上、すなわち、油圧制御装置9の元圧として用いられるライン圧以上になった際に、下流側にある作動油をオイルパン91に戻して所定のライン圧に調圧するものである。
なお、この油圧制御装置9については、後で詳細に説明する。
例えば、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁を制御し、ポンプ装置92により加圧された作動油を第1油圧室OP1に供給し、第2油圧室OP2内の作動油を排出すると、第1油圧室OP1の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧>第2油圧室OP2の油圧]となる。これにより、油圧ピストン部8のフランジ部84は、回転軸線X3に沿った第1方向A1に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動する。同様に、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁を制御し、ポンプ装置92により加圧された作動油を第1油圧室OP1から排出し、第2油圧室OP2内に供給すると、第2油圧室OP2の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧<第2油圧室OP2の油圧]となる。これにより、油圧ピストン部8のフランジ部84が回転軸線X3に沿った第2方向A2に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動する。このとき、流量制御弁のスプール弁子の移動量に応じて、パワーローラ4の第1方向A1、あるいは、第2方向A2への移動が調整される。
したがって、この移動部7は、ECU60により油圧制御装置9が駆動され油圧ピストン部8の各変速制御油圧室82内の油圧が制御されることで、変速制御ピストン81のフランジ部84に所定の変速制御押圧力を作用させ、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った2方向、すなわち、第1方向A1と第2方向A2とに移動させることができる。このとき、上述したように、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる一対のトラニオン6及び一対のパワーローラ4は、回転軸線X3に沿って互いに逆方向に移動する。そして、変速比変更部5は、この移動部7によって、一対のトラニオン6と共に一対のパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置(図5参照)から変速比に応じた変速位置(図6参照)に互いに逆方向に移動させ、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更することができる。
ここで、図5に示すように、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置は、変速比が固定される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用不能な位置である。すなわち、パワーローラ4が中立位置にあり、変速比が固定されている状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の中立位置(変速比固定時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る(直交する)位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2、出力ディスク3との接触点において、パワーローラ4の回転方向(転がる方向)と入力ディスク2、出力ディスク3の回転方向とが一致しており、この結果、パワーローラ4に傾転力が作用せず、したがって、パワーローラ4は、この中立位置にとどまりながら入力ディスク2とともに回転をつづけ、この間の変速比は固定されている。
このとき、入力ディスク2からパワーローラ4に作用する力は基本的には駆動力(トルク)だけであるので、移動部7の油圧ピストン部8と油圧制御装置9とは、油圧によりこの駆動力に抗するだけの力をトラニオン6に作用させている。すなわち、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6が中立位置にある場合、上述したように、入力トルクに応じて入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する接線力F1(図5参照)に抗する大きさの変速制御押圧力F2(図5参照)をフランジ部84に作用させ、パワーローラ4に作用する接線力F1と変速制御押圧力F2とをつりあわせることで、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6の位置を中立位置に固定し、変速比を固定している。
一方、図6に示すように、パワーローラ4の変速位置は、変速比が変更される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用する位置である。すなわち、パワーローラ4が変速位置にあり、変速比が変更される状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内から回転軸線X3に沿った第1方向A1あるいは第2方向A2に移動した位置に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の変速位置(変速時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る位置、すなわち、中立位置からオフセットされた位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2、出力ディスク3との接触点において、パワーローラ4の回転方向と入力ディスク2、出力ディスク3の回転方向とがずれ、これにより、パワーローラ4に傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4に作用する傾転力によりパワーローラ4と入力ディスク2及び出力ディスク3との間にサイドスリップが発生し、パワーローラ4は、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転し、パワーローラ4と入力ディスク2との入力側接触半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との出力側接触半径とが変更され、したがって、変速比が変更される。
例えば、本図6に示すように、入力ディスク2が図6中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第2方向A2(パワーローラ4と入力ディスク2との接触点における入力ディスク2の移動方向とは反対方向、すなわち、入力ディスク2の回転方向に逆らう方向(出力ディスク3の回転方向に沿う方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の周辺側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1から離間させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向外方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向内方側に移動するように傾転し、変速比が減少側に変更され、アップシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
逆に、ダウンシフトする場合は、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第1方向A1(パワーローラ4と入力ディスク2との接触点における入力ディスク2の移動方向、すなわち、入力ディスク2の回転方向に沿う方向(出力ディスク3の回転方向に逆らう方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の中心側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1に近接させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向内方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向外方側に移動するように傾転し、変速比が増加側に変更され、ダウンシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
ここで、このパワーローラ4の位置は、ストローク量と入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角により決定される。パワーローラ4のストローク量は、パワーローラ4の回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1を通る中立位置を基準位置として、この中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2への移動量としてのストローク量、さらに言えば、中立位置からのストローク量(オフセット量)に応じた量である。パワーローラ4の傾転角は、パワーローラ4の回転中心である回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転中心である回転軸線X1と直交する位置を基準位置として、この基準位置からの入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾斜角度(鋭角側の傾斜角度)であり、言い換えれば、回転軸線X3周りの回転角度である。そして、このトロイダル式無段変速機1の変速比は、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角によって定まり、この傾転角は、パワーローラ4の中立位置からのストローク量(オフセット量)の積分値により定まる。
また、このトロイダル式無段変速機1は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる一対のパワーローラ4及びトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させるための機構として、ロアリンク機構16及びアッパリンク機構17を備えている。
ロアリンク機構16は、リンク部材としてのロアリンク16aを有する一方、アッパリンク機構17は、リンク部材としてのアッパリンク17aを有する。ロアリンク16aは、トラニオン6の回転軸6bにおいて変速制御ピストン81が設けられている一端部側(シリンダボデー86とローラ支持部6aの一方の肩部6eとの間)にて球面軸受である軸受部(ラジアルベアリング)6fを介して一対のトラニオン6を連結する。アッパリンク17aは、トラニオン6の回転軸6bにおいて他端部側(ローラ支持部6aの他方の肩部6e側)にて球面軸受である軸受部(ラジアルベアリング)6fを介して一対のトラニオン6を連結する。
そして、ロアリンク16a、アッパリンク17aは、それぞれシリンダボデー86を介してケーシング1aに固定されるロアポスト16bのロア支持軸16c、ケーシング1aに固定されるアッパポスト17bのアッパ支持軸17cに支持されている。ロア支持軸16c、アッパ支持軸17cは、ともに円柱状に形成され、その中心軸線が回転軸線X1と平行な方向となるようにケーシング1aに対して相対移動しないように固定的に設けられる。そして、ロアリンク16a、アッパリンク17aは、それぞれこのロア支持軸16c、アッパ支持軸17cに支持されることで、このロア支持軸16c、アッパ支持軸17cを支点として、すなわち、ロア支持軸16c、アッパ支持軸17cの中心軸線を揺動軸線X4として、シーソー状に揺動可能に構成されている。
したがって、ロアリンク機構16、アッパリンク機構17は、ロアリンク16a、アッパリンク17aがロア支持軸16c、アッパ支持軸17cの中心軸線である揺動軸線X4を中心として揺動することで一対のトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向への移動を同期させることができる。なお、アッパポスト17bにはノズル17dが取り付けられており、そのノズル17dには噴射孔17eが設けられており、この噴射孔17eから上述のトラクションオイルとして作動油が噴射される。
また、トロイダル式無段変速機1は、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進する機構として、同期機構18を備える。同期機構18は、同期ワイヤ19と、複数の固定プーリ20とを有する。同期機構18は、各トラニオン6の回転軸6bに固定して設けられる固定プーリ20と、回転軸線X1方向又は回転軸線X2方向に隣り合う固定プーリ20間で一回交差するように反転して張架される同期ワイヤ19との摩擦力により、一方のトラニオン6の回転トルクを他方のトラニオン6に伝達することで、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進することができる。
この結果、各パワーローラ4、各トラニオン6の傾転動作(変速動作)において、複数のパワーローラ4の支持構造であるトラニオン6の部材精度や組付精度のバラツキ等により複数のパワーローラ4に油圧押圧機構15の挟圧力が均等に作用しない場合や油圧制御装置9の油路抵抗の差などに起因して変速応答性に微小なずれが発生しそうになった場合でも、この同期機構18が複数のトラニオン6の回転を相互に連動させ同期させ複数のパワーローラ4の傾転動作を相互に同期させることができるので、トロイダル式無段変速機1の変速制御精度を向上することができる。
ECU60は、トロイダル式無段変速機1の駆動を制御、特に変速比γを制御するものであり、ここでは、エンジン21が搭載された車両1Aの各所に取り付けられたセンサから入力された各種入力信号や各種マップとに基づいてエンジン21の運転制御、例えば図示しない燃料噴射弁の噴射制御、エンジン21の吸入空気量を制御する図示しないスロットルバルブのスロットル開度制御、点火プラグの点火制御なども行うものである。そして、ECU60は、トロイダル式無段変速機1の運転状態に応じてトロイダル式無段変速機1の各部の駆動を制御しトロイダル式無段変速機1の実際の変速比である実変速比を制御する。すなわち、ECU60は、例えば、種々のセンサが検出するエンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、入力回転数、出力回転数、シフトポジションなどの運転状態や傾転角、ストローク量などに基づいて、目標の変速比である目標変速比を決定すると共に変速比変更部5を駆動してパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて、所定の傾転角まで傾転させることで変速比の変更を実行する。さらに言えば、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁に供給する駆動電流を制御指令値に基づいてデューティ制御することで、油圧ピストン部8の第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御して、トラニオン6と共にパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて所定の傾転角まで傾転させることで、実変速比が目標変速比となるように制御する。
具体的には、このECU60は、傾転角センサ50と、ストロークセンサ51と、エンジン回転数センサ52と、入力回転数センサ53と、出力回転数センサ54と、アクセル開度センサ55と、車速センサ56と、スロットル開度センサ57と、作動油温度センサ58と、ライン圧センサ59などの種々のセンサが電気的に接続されている。また、ECU60は、機能概念的に、トルクコンバータ制御部61と、前後進切換制御部62と、挟圧力制御部63と、エンジン制御部64と、変速比制御部65とが設けられている。
ここで、ECU60は、マイクロコンピュータを中心として構成され処理部60a、記憶部60b及び入出力部60cを有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部60cにはトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部60cは、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部60bには、トロイダル式無段変速機1の各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部60bは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部60aは、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも上述のトルクコンバータ制御部61、前後進切換制御部62、挟圧力制御部63、エンジン制御部64、変速比制御部65を有している。ECU60による各種制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部60aが前記コンピュータプログラムを当該処理部60aに組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部60aは、適宜記憶部60bへ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このトロイダル式無段変速機1の各部を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU60とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
傾転角センサ50は、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角を検出し、検出した傾転角をECU60に送信する。また、傾転角センサ50は、複数のパワーローラ4に対応して複数設けられており、各パワーローラ4の傾転角をそれぞれ検出している。ここで、傾転角センサ50が検出する傾転角は、パワーローラ4と共に回転軸線X3周りに回転するトラニオン6の回転軸線X3周りの回転角度として検出している。
ストロークセンサ51は、パワーローラ4のストローク量を検出し、検出したストローク量をECU60に送信する。また、ストロークセンサ51は、複数のパワーローラ4に対応して複数設けられており、各パワーローラ4のストローク量をそれぞれ検出している。ここで、ストロークセンサ51が検出するパワーローラ4のストローク量は、このパワーローラ4と共に回転軸線X3に沿った方向に移動するトラニオン6のストローク量として検出している。
また、エンジン回転数センサ52は、駆動源であるエンジン21の回転速度としてエンジン回転数を検出し、検出したエンジン回転数をECU60に送信する。ここで、エンジン回転数センサ52は、例えば、エンジンのクランク角度を検出するクランク角センサを用いることができ、ECU60は、検出されたクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジンの回転速度としてエンジン回転数(rpm)を算出する。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト21aの回転速度に対応し、このクランクシャフト21aの回転速度が高くなれば、クランクシャフト21aの回転数、エンジン回転数も高くなる。以下、特に断りの無い限り、回転速度は、回転数として説明する。
入力回転数センサ53は、入力ディスク2の回転数である入力回転数及び回転方向を検出し、検出した入力回転数及び回転方向をECU60に送信する。出力回転数センサ54は、出力ディスク3の回転数である出力回転数及び回転方向を検出し、検出した出力回転数及び回転方向をECU60に送信する。なお、入力回転数センサ53、出力回転数センサ54は、それぞれ、入力ディスク2、出力ディスク3の回転数(回転速度)に比例した回転数(回転速度)で回転する部材の回転数に基づいて検出してもよい。また、入力回転数、出力回転数は、言い換えれば、入力ディスク2、出力ディスク3の回転速度に対応する。
アクセル開度センサ55は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両1Aのアクセル開度を検出し、検出したアクセル開度をECU60に送信する。車速センサ56は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両1Aの車速を検出し、検出した車速をECU60に送信する。スロットル開度センサ57は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両1Aのスロットル開度を検出し、検出したスロットル開度をECU60に送信する。
作動油温度センサ58は、このトロイダル式無段変速機1に適用される作動油の温度を検出し、検出した作動油温度をECU60に送信する。ライン圧センサ59は、油圧制御装置9の元圧として用いられるライン圧を検出し、検出したライン圧をECU60に送信する。
トルクコンバータ制御部61は、トルクコンバータ22のロックアップクラッチを制御するものである。トルクコンバータ制御部61は、油圧制御装置9を制御してトルクコンバータ22のロックアップクラッチの係合及び係合の解除、すなわち、ON/OFF制御を行う。
前後進切換制御部62は、前後進切換機構23を制御するものである。前後進切換制御部62は、油圧制御装置9を制御して前後進切換機構23のフォワードクラッチ及びリバースブレーキの係合及び係合の解除、すなわち、ON/OFF制御を行うことで、前後進切換機構23の切換制御を行う。
挟圧力制御部63は、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用させる油圧押圧機構15を制御するものである。言い換えれば、挟圧力制御部63は、入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触部分に作用する接触面圧を制御するものである。挟圧力制御部63は、油圧制御装置9を制御して挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の量を制御することで、油圧押圧機構15による挟圧力をトロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の目標挟圧力に制御し、入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触部分に作用する接触面圧をトロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の面圧となるように制御する。
エンジン制御部64は、エンジン21を運転制御するものである。エンジン制御部64は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御してエンジン21から取り出される出力を制御し、エンジン21の出力トルクとしてのエンジントルクとエンジン回転数との制御を行うものである。
変速比制御部65は、実際の変速比である実変速比が目標の変速比である目標変速比になるように変速比変更部5を制御するものである。言い換えれば、変速比制御部65は、変速比変更部5を制御して入力ディスク2への実際の入力回転数が目標変速比に応じた目標入力回転数となるように実変速比を制御するものである。すなわち、変速比制御部65は、上述のように、エンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、入力回転数、出力回転数、シフトポジションなどの運転状態や傾転角、ストローク量などに基づいて、目標の変速比である目標変速比を決定すると共に変速比変更部5を駆動してパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて、所定の傾転角まで傾転させることで変速比の変更を実行する。
上記のようなトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2に駆動力(トルク)が入力されると、その入力ディスク2にトラクションオイルを介して接触しているパワーローラ4に駆動力が伝達され、さらにそのパワーローラ4から出力ディスク3にトラクションオイルを介して駆動力が伝達される。この間、トラクションオイルは加圧されることによりガラス転移化し、それに伴う大きいせん断力によって駆動力を伝達するので、各入力ディスク2、出力ディスク3は、入力トルクに応じた挟圧力がパワーローラ4との間に生じるように、油圧押圧機構15により押圧される。また、パワーローラ4の周速と各入力ディスク2、出力ディスク3のトルク伝達点(パワーローラ4がトラクションオイルを介して接触している接触点)の周速とが実質的に同じであるから、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の回転軸線X1からの半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との接触点の回転軸線X1からの半径とに応じて、各入力ディスク2、出力ディスク3の回転数(回転速度)が異なることとなり、その回転数(回転速度)の比率が変速比となる。
そして、ECU60の変速比制御部65は、変速比を設定した目標変速比に変更する場合、すなわち、変速比の変速の場合は、入力ディスク2(あるいは出力ディスク3)の回転方向に基づいて、油圧制御装置9の流量制御弁に駆動電流を供給し、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御することで、パワーローラ4が目標変速比に応じた傾転角になるまで、トラニオン6を中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。例えば、入力ディスク2が図4中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第1油圧室OP1の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させると、上述したように変速比が増加しダウンシフトが行われる。一方、入力ディスク2が図4中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第2油圧室OP2の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動させると、上述したように変速比が減少しアップシフトが行われる。また、設定された変速比を固定する場合は、パワーローラ4が再び中立位置となるまで、トラニオン6を第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。
なお、このECU60の変速比制御部65は、例えば、傾転角センサ50によって検出されるパワーローラ4の傾転角とストロークセンサ51によって検出されるストローク量に基づいて、実変速比(実際の変速比)が目標変速比(変速後の目標の変速比)となるようにカスケード式のフィードバック制御を行っている。すなわち、このECU60は、アクセル開度及び車速に基づいて目標変速比に対応した目標の傾転角である目標傾転角を決定し、この目標傾転角と傾転角センサによって検出した実際の傾転角である実傾転角との偏差に基づいて、目標変速比、目標傾転角に対応した目標のストローク量である目標ストローク量を決定し、ストロークセンサが検出したストローク量がこの目標ストローク量となるように移動部7の油圧制御装置9を制御している。
すなわち、ECU60の変速比制御部65は、アクセル開度と車速などから目標の変速比である目標変速比を決定する。ここで、例えば、アクセル開度などで表される要求駆動量と車速とに基づいて要求駆動力が算出され、その要求駆動力と車速とから目標出力が求められ、その目標出力を最小の燃費で達成するエンジンの回転数が求められ、トロイダル式無段変速機1への入力回転数がそのエンジンの回転数に相当する目標の回転数、すなわち目標入力回転数となるように目標変速比が求められる。そして、パワーローラ4と入力ディスク2及び出力ディスク3との接触点がわかれば、変速比と傾転角との関係は幾何学形状だけで定まるため、目標変速比から目標傾転角を求めることができる。
なお、このようなトロイダル式無段変速機1の変速制御では、基本的には、傾転角センサによって検出される傾転角(言い換えれば、変速比)のみをフィードバック制御すればよいが、ストローク量が傾転角の微分に相当することから、ストロークセンサによって検出されるストローク量のフィードバック制御もあわせて行うことで、傾転制御における振動を抑制するダンピング効果を得ることができる。また、このECU60の変速比制御部65は、変速比の応答性を向上するために、このフィードバック制御と共にフィードフォワード制御をあわせて行ってもよい。
ところで、本実施形態のトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、上述したように、ポンプ装置92を備える。この本実施形態のポンプ装置92は、図1に示すように、制御系90Aへの作動油の吐出容量を複数段階に切り替え可能ないわゆる吐出容量可変型のポンプ装置である。
ここで、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9における制御系90Aは、少なくとも入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触面圧及び入力ディスク2と出力ディスク3との回転速度比である変速比を作動油の圧力により制御するものである。つまり、本実施形態の制御系90Aは、少なくとも変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧により変速比を変更する上述の変速比変更部5と、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の油圧によりトロイダル面2a、3aと接触面4aとの接触面圧を変更する上述の油圧押圧機構15とを含んで構成される。
具体的には、本実施形態の油圧制御装置9は、オイルパン91と、ポンプ装置92と、ストレーナ93と、複数の油路94a、94b、94c、94d、94e、94f、94g、94h、94iと、開閉弁95aと、逆止弁95bと、リリーフ弁95cとを備えている。
オイルパン91は、貯留手段であり、作動油としてのトラクションオイルを貯留するものである。
本実施形態のポンプ装置92は、制御系90Aへの作動油の吐出容量を複数段階、ここでは2段階に切り替え可能なものである。ポンプ装置92は、第1ポンプとしてのメインポンプ96と、第2ポンプとしてのサブポンプ97と、切替手段としての切替弁98とを有する。
メインポンプ96とサブポンプ97とは、エンジン21のクランクシャフト21aの回転に同期して駆動し、吸入した作動油を昇圧後に吐出することができる。すなわち、メインポンプ96とサブポンプ97とは、駆動力を発生するエンジン21のクランクシャフト21aの回転と連動して駆動することで、作動油を加圧可能である。メインポンプ96とサブポンプ97とは、その吐出容量がほぼ同等、あるいはメインポンプ96の吐出容量がサブポンプ97の吐出容量より多く設定されている。また、メインポンプ96、サブポンプ97は、このメインポンプ96、サブポンプ97を駆動させるエンジン21のクランクシャフト21aの回転数、すなわちエンジン回転数が高くなるほど吐出流量が多くなり、エンジン回転数が低くなるほど吐出流量が少なくなる傾向にある。
なお、本実施形態のポンプ装置92は、駆動源としてエンジン21を用いるものとして説明するが、これに限らず、駆動源としてこのポンプ装置92専用の電動機等を用いてもよく、また、メインポンプ96とサブポンプ97とに対してそれぞれ別個の駆動源を設けてもよい。
メインポンプ96は、吸入した作動油を制御系90Aに吐出するものである。メインポンプ96は、作動油の吸入口に第1吸入油路94aが連結され、この第1吸入油路94aは、後述する第2吸入油路94cに連結されこの第2吸入油路94c及びストレーナ93を介してオイルパン91内に連通している。また、メインポンプ96は、作動油の吐出口に第1吐出油路94bが連結され、この第1吐出油路94bは、高圧系である制御系90Aに連通している。メインポンプ96は、ストレーナ93、第2吸入油路94c及び第1吸入油路94aを介してオイルパン91内の作動油を吸入し、吸入した作動油を昇圧後に第1吐出油路94bに吐出する。
ここで、ストレーナ93は、ポンプ装置92のメインポンプ96、後述のサブポンプ97が第1吸入油路94a、後述の第2吸入油路94cを介してオイルパン91内の作動油を吸入する際に、第1吸入油路94a、第2吸入油路94cに吸入される作動油から異物を取り除くものである。
サブポンプ97は、吸入した作動油を制御系90A又は制御系90Aとは異なる供給系としての潤滑系90Bに吐出するものである。サブポンプ97は、作動油の吸入口に第2吸入油路94cが連結され、この第2吸入油路94cは、ストレーナ93を介してオイルパン91内に連通している。また、サブポンプ97は、作動油の吐出口に第2吐出油路94dが連結され、この第2吐出油路94dは、切替弁98を介して制御系吐出油路94e及び潤滑系吐出通路94fに連結されている。制御系吐出油路94eは、第1吐出油路94bに連結されこの第1吐出油路94bを介して高圧系である制御系90Aに連通している。潤滑系吐出通路94fは、低圧系である潤滑系90Bに連通している。サブポンプ97は、ストレーナ93及び第2吸入油路94cを介してオイルパン91内の作動油を吸入し、吸入した作動油を昇圧後に第2吐出油路94dを介して制御系吐出油路94e又は潤滑系吐出通路94fに吐出する。
切替弁98は、例えば、電磁弁などを含んで構成され、第2吐出油路94dの接続先を制御系吐出油路94eと潤滑系吐出通路94fとの間で切り替えることができる。すなわち、切替弁98は、サブポンプ97における作動油の吐出先を制御系90Aと潤滑系90Bとの間で切り替え可能である。
ここで、切替弁98は、ECU60に接続されており、このECU60により駆動が制御さている。切替弁98は、例えば、ソレノイド98aの通電時(ON制御時)に第2吐出油路94dと制御系吐出油路94eとを接続する状態となる一方、ソレノイド98aの非通電時(OFF制御時)に第2吐出油路94dと潤滑系吐出通路94fとを接続する状態となる電磁弁により構成される。切替弁98は、例えば、ソレノイド98aと共に弾性部材98bを含んで構成されている。切替弁98は、ソレノイド98aに供給される駆動電流が所定量に設定されると、不図示のスプール弁子に作用するソレノイド98aによる押圧力がこのスプール弁子に作用する弾性部材98bによる付勢力より大きくなりスプール弁子がON位置に移動することで、ON状態(図1に示すON部分の状態)、すなわち、第2吐出油路94dと制御系吐出油路94eとが接続された状態となる。切替弁98は、例えば、ソレノイド98aに供給される駆動電流が0Aに設定されると、不図示のスプール弁子に作用するソレノイド98aによる押圧力がこのスプール弁子に作用する弾性部材98bによる付勢力より小さくなりスプール弁子がOFF位置に移動することで、OFF状態(図1に示すOFF部分の状態)、すなわち、第2吐出油路94dと潤滑系吐出通路94fとが接続された状態となる。なお、切替弁98は、この形式に限らず、例えば、ライン圧に基づいてスプール弁子にON位置側への制御油圧を作用させ、この制御油圧による押圧力がこのスプール弁子に作用する弾性部材98bによる付勢力より大きくなることでスプール弁子がON位置に移動し、第2吐出油路94dと制御系吐出油路94eとが接続された状態となるような構成であってもよい。
ここで、制御系90Aは、いわゆるライン圧の供給先であって、上述したように変速比変更部5と油圧押圧機構15とを含んで構成される。つまり、油圧制御装置9は、この制御系90Aへのライン圧供給系に、変速比変更部5における変速制御油圧室82への作動油の流量を調整する流量制御弁(不図示)や油圧押圧機構15における挟圧力発生油圧室15aへの作動油の流量を調整する流量制御弁(不図示)などが設けられている。また、潤滑系90Bは、いわゆる潤滑油の供給先であって、例えば、バリエータ軸11やトロイダル面2a、3aと接触面4aとの接触部などのトロイダル式無段変速機1の摺動部を含んで構成される。つまり、油圧制御装置9は、この潤滑系90Bへの潤滑油供給系に、バリエータ軸11やトロイダル面2a、3aと接触面4aとの接触部などに作動油を潤滑油として供給する上述のノズル17d(図4参照)などが設けられている。この制御系90Aと潤滑系90Bとは、制御系90Aが相対的に高圧系であり、潤滑系90Bが相対的に低圧系である。すなわち、制御系90Aと潤滑系90Bとは、基本的には制御系90Aへのライン圧供給系の作動油の圧力が潤滑系90Bへの潤滑油供給系の作動油の圧力より相対的に大きな圧力に設定される。
なお、この油圧制御装置9は、運転状態に応じて制御系90Aから潤滑系90Bに作動油を供給する供給油路94gが設けられ、この供給油路94gに開閉弁95aが設けられている。この開閉弁95aは、電磁弁であり、ECU60に接続されており、このECU60により駆動が制御さている。開閉弁95aは、閉弁状態で供給油路94gを閉鎖し作動油の流通を遮断する一方、開弁状態で供給油路94gを開放し作動油の流通を可能とする。
また、第1吐出油路94bと第2吐出油路94dとは、連結油路94hにより連結されており、この連結油路94hに逆止弁95bが設けられている。この逆止弁95bは、連結油路94hにおいて、第2吐出油路94d側が所定の油圧となることで第2吐出油路94d側から第1吐出油路94b側への作動油の流通を可能とする一方、第1吐出油路94b側から第2吐出油路94d側への作動油の流通を禁止するものである。
また、潤滑系吐出通路94fと第2吸入油路94cとは、リリーフ油路94iにより連結されており、リリーフ油路94iにリリーフ弁95cが設けられている。リリーフ弁95cは、サブポンプ97から第2吐出油路94dを介して潤滑系吐出通路94fに吐出された作動油の圧力が予め設定される所定圧力以上となると、このサブポンプ97から吐出された余剰の作動油をサブポンプ97の下流側から上流側に、すなわち、潤滑系吐出通路94f側から第2吸入油路94c側に戻すものである。したがって、この油圧制御装置9は、潤滑系90B、ここでは潤滑系吐出通路94fが所定圧以下の圧力に維持され、基本的にはこの潤滑系90Bが制御系90Aと比較して相対的に低圧系に維持される。
上記のように構成されるポンプ装置92は、切替弁98がサブポンプ97における作動油の吐出先を潤滑系90Bから制御系90Aに切り替えることで、制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替えることができる。すなわち、ポンプ装置92は、切替弁98がサブポンプ97における作動油の吐出先を潤滑系90Bから制御系90Aに切り替えることで、ポンプ装置92全体での制御系90Aへの作動油の吐出容量をメインポンプ96、サブポンプ97のうちのメインポンプ96のみによる吐出容量(相対的に小さな容量)からメインポンプ96とサブポンプ97とによる吐出容量(相対的に大きな容量)の2段階に切り替えることができる。
ここで、本実施形態のECU60は、処理部60aに機能概念的に切替制御部66が設けられている。この切替制御部66は、トロイダル式無段変速機1やエンジン21を搭載した車両1Aの運転状態に応じて切替弁98の駆動(例えば、ソレノイド98aに供給する駆動電流)を制御することで、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量の切り替え制御を行うものである。切替制御部66は、トロイダル式無段変速機1やエンジン21を搭載した車両1Aに応じて、切替弁98の切替先、すなわち、第2吐出油路94dの接続先を制御可能である。なおここでは、切替制御部66は、開閉弁95aの開閉制御も可能となっている。
切替制御部66は、例えば、メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量が制御系90Aで必要とされる作動油の必要流量以上である場合に、切替弁98の駆動を制御し、第2吐出油路94dと潤滑系吐出通路94fとを接続した状態とし、サブポンプ97の吐出先を相対的に低圧系である潤滑系90Bに切り替える。言い換えれば、切替制御部66は、メインポンプ96による吐出流量で制御系90Aへの作動油の必要流量を全てまかなえる場合に、切替弁98の駆動を制御し、第2吐出油路94dと潤滑系吐出通路94fとを接続した状態とし、サブポンプ97の吐出先を相対的に低圧系である潤滑系90Bに切り替える。 すなわち、メインポンプ96は、オイルパン91の作動油を吸入油路94aから吸入し、加圧した後、第1吐出油路94bに吐出する。また、サブポンプ97は、オイルパン91のオイルを吸入油路94cから吸入し、加圧した後、第2吐出油路94dを介して潤滑系吐出通路94fに吐出する。このため、この油圧制御装置9は、メインポンプ96が吐出した作動油が高圧系である制御系90Aに供給される一方、サブポンプ97が吐出した作動油が低圧系である潤滑系90Bに供給される。
これにより、この油圧制御装置9は、サブポンプ97の吐出先を低圧系の潤滑系90Bに設定することで、例えば、サブポンプ97の吐出先を高圧系である制御系90Aに設定された状態を継続する場合と比較して、サブポンプ97の仕事量を抑制しサブポンプ97の駆動トルクを抑制することができ、つまり、サブポンプ97におけるポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減することができ、この結果、例えば燃費を向上することができる。なお、切替制御部66は、このように切替弁98によりサブポンプ97の吐出先が潤滑系90Bに切り替えられているときには、開閉弁95aを閉弁状態とし供給油路94gを閉鎖し、供給油路94gを介した作動油の流通を遮断するようにしている。
また、切替制御部66は、例えば、制御系90Aにおいて多量の作動油が必要とされ、メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量のみで制御系90Aで必要とされる作動油の必要流量を満たせない場合に、切替弁98の駆動を制御し、第2吐出油路94dと制御系吐出油路94eとを接続した状態とし、サブポンプ97の吐出先を相対的に制御系90Aに切り替える。すなわち、メインポンプ96は、オイルパン91の作動油を吸入油路94aから吸入し、加圧した後、第1吐出油路94bに吐出する。また、サブポンプ97は、オイルパン91のオイルを吸入油路94cから吸入し、加圧した後、第2吐出油路94dに吐出し、制御系吐出油路94eを通して第1吐出油路94bに吐出する。このため、メインポンプ96、サブポンプ97が吐出した作動油が全て高圧系である制御系90Aに供給される。
これにより、この油圧制御装置9は、制御系90Aへの作動油の供給をメインポンプ96とサブポンプ97とにより行うことができることから、制御系90Aでの作動油の必要流量に対して、制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができる。なお、切替制御部66は、このように切替弁98によりサブポンプ97の吐出先が制御系90Aに切り替えられているときには、開閉弁95aを開弁状態とし、供給油路94gを開放し作動油の流通を可能とすることで、制御系90Aの作動油を供給油路94gを介して潤滑系90Bに供給するようにしている。これにより、トロイダル式無段変速機1は、油圧制御装置9において潤滑系90Bへの作動油の供給不足を防止することができる。
ここで、このような吐出容量可変型のポンプ装置92を含んで構成される油圧制御装置9は、例えば図7に例示すように、基本的には、エンジン21のエンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1以上である領域T1ではメインポンプ96の吐出流量が相対的に多くなることから、サブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに切り替えるようにしている。ここで、図7中、横軸はトロイダル式無段変速機1を搭載した車両1Aの車速V(Km/h)、縦軸はトロイダル式無段変速機1を搭載した車両1Aのエンジン21のエンジン回転数NE(rpm)を示し、γmaxはトロイダル式無段変速機1の最大変速比に応じた変速線、γminはトロイダル式無段変速機1の最小変速比に応じた変速線を示す。所定のエンジン回転数NE1は、例えば、エンジン21により駆動されるメインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量が制御系90Aで必要とされる作動油の必要流量以上に確保できるエンジン回転数である。
すなわち、この場合、切替制御部66は、例えば、メインポンプ96を駆動するエンジン21のエンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1以上である場合(現在の運転状態においてエンジン回転数NEと車速Vとの関係が領域T1内にある場合)に切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに切り替えることで、サブポンプ97におけるポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減し燃費の向上を図る。一方、切替制御部66は、例えば、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満である場合(現在の運転状態においてエンジン回転数NEと車速Vとの関係が領域T2内にある場合)に、基本的には、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を高圧系である制御系90Aに切り替えることで、制御系90Aでの作動油の必要流量に対して、制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制する。なお、領域T2における低エンジン回転数側の境界である基準エンジン回転数NE0は、メインポンプ96、サブポンプ97の駆動の基準となるエンジン回転数であり、エンジン21の通常の運転状態での最低のエンジン回転数、例えばアイドル回転数近傍の回転数である。
ところで、このような吐出容量可変型のポンプ装置92を含んで構成される油圧制御装置9では、例えば、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満である場合であっても、ポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減しさらなる燃費の向上が望まれている。すなわち、このような油圧制御装置9では、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに切り替えることでポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減し燃費を向上することができる運転領域を拡大することが望まれている。また一方で、このような油圧制御装置9では、例えば、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であり、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を高圧系である制御系90Aに設定することで、制御系90Aでの作動油の必要流量に対して、制御系90Aへの作動油の吐出流量不足の抑制を図った場合であっても、例えば、トロイダル式無段変速機1の急変速時などに制御系90Aへの作動油の吐出流量の不足が生じるおそれがある。つまり、このような吐出容量可変型のポンプ装置92を含んで構成される油圧制御装置9では、運転状態に応じたより適正な吐出容量の切り替えが望まれていた。
そこで、このトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であっても、メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量で制御系90Aにて必要とされる作動油の必要流量をまかなえる状態であってトロイダル式無段変速機1を搭載する車両1Aの運転状態が定常運転状態に近い状態である場合には、実際には制御系90Aで必要とされる作動油の必要流量が少なくてすむことから、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに設定し、これにより、ポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減し燃費を向上することができる運転領域の拡大を図っている。
そしてさらに、本実施形態のトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、少なくとも、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、すなわち、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bから高圧系である制御系90Aに切り替える際に、制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせることで、トロイダル式無段変速機1の急変速時に制御系90Aでの作動油の必要流量に対して、制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制している。
なお、以下の説明では、特に断りのない限り、ポンプ装置92において、サブポンプ97の吐出先が低圧系である潤滑系90Bに設定されている状態、すなわち、制御系90Aへの作動油の吐出元がメインポンプ96、サブポンプ97のうちのメインポンプ96のみである状態を「1吐出状態」という。一方、ポンプ装置92において、サブポンプ97の吐出先が高圧系である制御系90Aに設定されている状態、すなわち、制御系90Aへの作動油の吐出元がメインポンプ96とサブポンプ97との両方である状態を「2吐出状態」という。
具体的には、本実施形態の切替制御手段としての切替制御部66は、上述したように、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1以上である場合に、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に小さな容量に設定する。すなわち、切替制御部66は、現在のエンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1以上であると判定した場合には、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに設定することで、制御系90Aへの作動油の吐出状態をメインポンプ96による1吐出状態とする。
また、切替制御部66は、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満である場合であって、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両1Aの運転状態が定常運転状態に近い状態である場合に、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に小さな容量に設定する一方、運転状態が非定常運転状態に近い状態である場合に、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に大きな容量に設定する。すなわち、切替制御部66は、現在のエンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であると判定し、車両1Aの運転状態が定常運転状態に近い状態であると判定した場合に、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに設定することで、制御系90Aへの作動油の吐出状態をメインポンプ96による1吐出状態とする一方、現在のエンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であると判定し、車両1Aの運転状態が非定常運転状態に近い状態であると判定した場合に、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を高圧系である制御系90Aに設定することで、制御系90Aへの作動油の吐出状態をメインポンプ96とサブポンプ97とによる2吐出状態とする。ここで、切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、現在の車両1Aの運転状態が定常運転状態であるか非定常状態であるかを判定すればよい。
この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であっても、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両1Aの運転状態が定常運転状態に近い状態である場合に切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに設定し、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に小さな容量に設定することで、サブポンプ97によるポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減することができ、燃費をさらに向上することができる。そして、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であって、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両1Aの運転状態が非定常運転状態に近い状態である場合に切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を低圧系である潤滑系90Bに設定し、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に大きな容量に設定することで、制御系90Aでの作動油の必要流量に対して、制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができる。これにより、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、運転状態に応じて作動油の吐出容量を適正に切り替えることができる。
そして、変速比制御手段としての変速比制御部65は、少なくとも変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、すなわち、切替弁98によりサブポンプ97の吐出先を高圧系である制御系90Aに切り替える際に、制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行する。変速比制御部65は、ポンプ装置92の吐出容量の切り替えが開始されてからポンプ装置92の実際の吐出容量が相対的に大きな容量に切り替わり終わるまでの期間でこの変速遅延制御を実行することが好ましい。なお、本実施形態の変速比制御部65は、急変速時に限らず制御系90Aへの作動油の吐出状態をメインポンプ96による1吐出状態からメインポンプ96とサブポンプ97とによる2吐出状態に切り替える際に、制御系90Aを制御し変速を通常の変速時より相対的に遅らせるようにしている。
ここで、ポンプ装置92の吐出容量の切り替え開始時点は、例えば、切替制御部66からポンプ装置92へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点であり、ポンプ装置92の吐出容量の切り替え終了時点は、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量まで増加し終わった時点である。変速比制御部65は、このポンプ装置92の吐出容量の切り替え終了時点をセンサ(不図示)などによる制御系90Aへの作動油の吐出流量の実測値に基づいて判断してもよいし、切り替え開始時点から予め設定される所定時間経過したか否かに基づいて判断してもよい。つまり、変速比制御部65は、ポンプ装置92の吐出容量の切り替え開始時点からポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量まで増加する時点までの所定時間を予め試験等により把握して記憶部60bに記憶しておき、変速比制御部65は、切り替え開始時点からこの所定時間が経過した時点を切り替え終了時点と推定するようにしてもよい。
この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行することで、トロイダル式無段変速機1の急変速の初期において、ポンプ装置92へ吐出容量の切り替え指令が出力されてからポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量に増加し終わるまでの期間に、制御系90Aに多量の作動油の供給が要求されることを防止することができる。この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、少なくともトロイダル式無段変速機1の急変速時の初期において制御系90Aに多量の作動油の供給が要求されることを防止することができることから、急変速の初期にメインポンプ96とサブポンプ97との実際の合計の吐出流量の立ち上がりが遅れることに起因して、制御系90Aへの作動油の必要流量に対して制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができ、したがって、運転状態に応じて作動油の吐出容量を適正に切り替えることができる。
これにより、このトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、トロイダル式無段変速機1の急変速時に制御系90Aでの作動油の必要流量に対して、制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができることから、例えば、制御系90Aをなす油圧押圧機構の挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油が不足することを防止することができ、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込むための挟圧力が過小になり不足することを防止することができる。よって、このトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、急変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、トロイダル式無段変速機1への入力トルクに対して、入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触部分に作用する接触面圧が低くなりすぎてパワーローラ4がスリップすることを防止することができる。
ここで、変速比制御部65は、制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し変速の変速速度を相対的に低下させることで変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行してもよいし、制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し変速の開始時点を相対的に遅らせることで変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行してもよい。
変速比制御部65は、制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し変速の変速速度(変速比の単位時間あたりの変化量(変化率))を相対的に低下させることで変速遅延制御を実行する場合、例えば、変速の変速速度を通常の変速での変速速度より低下させる。変速比制御部65は、上述したように、通常、アクセル開度や車速などに基づいて要求駆動力を算出し目標出力を算出して目標入力回転数を算出し、変速比変更部5を制御して入力ディスク2への実際の入力回転数が目標入力回転数となるように実変速比を制御する。そして、変速比制御部65は、変速遅延制御を実行する場合、例えば、この通常の目標入力回転数より単位時間あたりの入力回転数の変化量(変化率)が小さい変速遅延制御用目標入力回転数を算出して、変速比変更部5を制御して実際の入力回転数がこの変速遅延制御用目標入力回転数となるように変速比を制御することで、パワーローラ4の傾転の速度を相対的に低くし変速速度を相対的に低下させるようにすればよい。
変速比制御部65は、制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し変速の開始時点を相対的に遅らせることで変速遅延制御を実行する場合、例えば、変速の開始時点がポンプ装置92の吐出容量の切り替え終了時点以降になるように変速比変更部5を制御すればよい。すなわちこの場合、変速比制御部65は、急変速要求が検出された後にすぐに制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し実際の急変速を開始するのではなく、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量まで増加した後に、制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し実際の急変速を開始するようにすればよい。
ここで、本実施形態の切替制御部66は、変速比制御部65が上記のように制御系90Aを制御し変速を遅らせる際に、ポンプ装置92を制御し制御系90Aへの作動油の吐出容量の切り替え速度を相対的に増加する。つまり、切替制御部66は、切替弁98を制御して、サブポンプ97の吐出先を潤滑系90Bから制御系90Aに切り替える速度を相対に増加する。
上述したように切替弁98は、ソレノイド98aに所定量の駆動電流が供給されることで不図示のスプール弁子に作用するソレノイド98aによる押圧力がこのスプール弁子に作用する弾性部材98bによる付勢力より大きくなりスプール弁子がON位置に移動し、第2吐出油路94dと制御系吐出油路94eとが接続された状態となり、サブポンプ97の吐出先が潤滑系90Bから制御系90Aに切り替わる。切替制御部66は、このときのスプール弁子のON位置側への移動速度を通常の切り替えの際の移動速度よりも上昇させることで、切替弁98による切り替えの応答性を向上することができる。つまり、切替制御部66は、切替弁98のスプール弁子に作用するON位置側への押圧力を通常時より大きく設定することで切替弁98による切り替えの応答性を向上することができる。切替制御部66は、例えば、ソレノイド98aに付加する電圧を通常時より増加することでソレノイド98aによるスプール弁子をON位置側へ移動させる押圧力を増加することができる。また、切替弁98は、例えば、ライン圧に基づいてスプール弁子にON位置側への制御油圧を作用させ、この制御油圧による押圧力がこのスプール弁子に作用する弾性部材98bによる付勢力より大きくなることでスプール弁子がON位置に移動させる構成である場合には、例えば、ライン圧を通常時よりも増加しスプール弁子に作用するON位置側への制御油圧による押圧力を増加することで、スプール弁子のON位置側への移動速度を増加し、切替弁98による切り替えの応答性を向上することができる。
これにより、このトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、変速比制御部65が上記のように制御系90Aを制御し変速を遅らせる際に、切替制御部66がポンプ装置92を制御し制御系90Aへの作動油の吐出容量の切り替え速度を相対的に増加することから、制御系90Aへの作動油の吐出状態をメインポンプ96による1吐出状態からメインポンプ96とサブポンプ97とによる2吐出状態に切り替える際の切り替え期間を短縮することができる。したがって、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、制御系90Aへの作動油の吐出容量の切り替え期間を短縮することができることから、制御系90Aを制御し変速を遅らせる期間を短縮することができるので、例えば、運転者による加速要求などに伴うキックダウン変速(変速要求)などに対して実際の変速の応答性が遅れに起因したいわゆるヘジテーション(応答性の悪化)の発生を抑制することができる。
次に、図8のフローチャート及び図9のタイムチャートを参照してトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9のポンプ装置92の吐出容量の切り替え制御について説明する。図9は、縦軸をアクセル開度、ポンプ装置92の吐出容量の切替状態、目標入力回転数(目標変速比に相当)、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量とし、横軸を時間軸としている。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU60の切替制御部66は、作動油温度センサ58の検出信号に基づいて現在の作動油の温度を取得し、現在の作動油の温度が予め設定される所定範囲内であるか否かを判定する(S100)。油圧制御装置9は、作動油の温度が予め設定される所定温度より低い場合、作動油の粘度が高く作動油が流動しにくくなることから、制御系90Aなどへの作動油の吐出流量が相対的に減少してしまう傾向にある。また、油圧制御装置9は、作動油の温度が予め設定される所定温度より高い場合、作動油の粘度が低く作動油が流動しやすくなるが、その分種々の隙間からの作動油の漏れ量が増加することから、制御系90Aなどの作動油の圧力が相対的に減少してしまう傾向にある。このため、切替制御部66は、作動油の温度が予め設定される所定範囲外であると判定した場合(S100:No)、後述するように、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を2吐出状態に切り替える。
切替制御部66は、現在の作動油の温度が予め設定される所定範囲内であると判定した場合(S100:Yes)、エンジン回転数センサ52の検出信号に基づいて現在のエンジン回転数NEを取得し、現在のエンジン回転数NEが予め設定されるエンジン回転数NE1以上であるか否かを判定する(S102)。
切替制御部66は、現在のエンジン回転数NEがエンジン回転数NE1未満であると判定した場合(S102:No)、車速センサ56の検出信号に基づいて現在の車両1Aの車速を取得し、現在の車両1Aの車速が予め設定される所定車速以上であるか否かを判定する(S104)。
切替制御部66は、S102において現在のエンジン回転数NEがエンジン回転数NE1以上であると判定した場合(S102:Yes)、S104において現在の車両1Aの車速が所定車速以上であると判定した場合(S104:Yes)、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を1吐出状態に切り替えて(S120、例えば図9の時刻t1)、変速比制御部65は、変速遅延制御フラグをOFFに設定し(S122)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。この場合、切替制御部66は、S120においてポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態がもともと1吐出状態であればこの1吐出状態を継続し、変速比制御部65は、S122において変速遅延制御フラグがもともとOFFであればこのOFFを継続する。以下の説明でも同様である。この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に小さな容量に設定することで、サブポンプ97によるポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減することができ、燃費を向上することができる。
切替制御部66は、S104において現在の車両1Aの車速が所定車速未満であると判定した場合(S104:No)、運転者による急変速要求が無いか否かを判定する(S106)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、運転者のアクセルペダル操作によるいわゆるキックダウン変速要求の有無やいわゆるマニュアルモードでのシフト操作の有無などを判定し、運転者による急変速要求が無いか否かを判定する。
切替制御部66は、運転者による急変速要求が無いと判定した場合(S106:Yes)、挟圧力制御部63による押圧アップ制御が非作動であるか否かを判定する(S108)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、挟圧力制御部63による押圧アップ制御が非作動であるか否かを判定する。挟圧力制御部63による押圧アップ制御は、例えば、タイヤスリップ時やいわゆるABS作動時などの非定常状態に実行される制御であり、挟圧力制御部63により油圧押圧機構15を制御し、油圧押圧機構15が発生させる挟圧押圧力を通常の運転状態よりも増加させる制御である。油圧制御装置9は、挟圧力制御部63が押圧アップ制御を実行中であると、制御系90Aをなす油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15aへの作動油の必要流量が相対的に多い状態となる。このため、切替制御部66は、挟圧力制御部63による押圧アップ制御が作動中であると判定した場合(S108:No)、すなわち、非定常運状態であると判定した場合、後述するように、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を2吐出状態に切り替える。
切替制御部66は、挟圧力制御部63による押圧アップ制御が非作動であると判定した場合(S108:Yes)、挟圧力制御部63による指令押圧力が予め設定される所定値以下であるか否かを判定する(S110)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、挟圧力制御部63による指令押圧力が予め設定される所定値以下であるか否かを判定する。挟圧力制御部63による指令押圧力は、挟圧押圧力を発生させる油圧押圧機構15に対して挟圧力制御部63から出力される挟圧押圧力の指令値(要求挟圧押圧力)であり、高負荷運転状態でトロイダル式無段変速機1への入力トルクが比較的に高い非定常状態に予め設定される所定値より高く設定される。油圧制御装置9は、挟圧力制御部63による指令押圧力が予め設定される所定値より大きい値に設定されると、制御系90Aをなす油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15aへの作動油の必要流量が相対的に多い状態となる。このため、切替制御部66は、挟圧力制御部63による指令押圧力が予め設定される所定値より大きいと判定した場合(S110:No)、すなわち、非定常運状態であると判定した場合、後述するように、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を2吐出状態に切り替える。
切替制御部66は、挟圧力制御部63による指令押圧力が予め設定される所定値以下であると判定された場合(S110:Yes)、挟圧力制御部63による指令押圧力変化量が予め設定される所定量以下であるか否かを判定する(S112)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、挟圧力制御部63による指令押圧力変化量が予め設定される所定量以下であるか否かを判定する。挟圧力制御部63による指令押圧力変化量は、挟圧押圧力を発生させる油圧押圧機構15に対して挟圧力制御部63から出力される挟圧押圧力の指令値(要求挟圧押圧力)の単位時間当たりの変化量(変化率)である。油圧制御装置9は、挟圧力制御部63による指令押圧力変化量が予め設定される所定量より大きいと、制御系90Aをなす油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15aへの作動油の必要流量が相対的に多い状態となる。このため、切替制御部66は、挟圧力制御部63による指令押圧力変化量が予め設定される所定量より大きいと判定した場合(S112:No)、すなわち、非定常運状態であると判定した場合、後述するように、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を2吐出状態に切り替える。
切替制御部66は、挟圧力制御部63による指令押圧力変化量が予め設定される所定量以下であると判定した場合(S112:Yes)、変速比制御部65による変速指示流量が予め設定される所定流量以下であるか否かを判定する(S114)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、変速比制御部65による変速指示流量が予め設定される所定流量以下であるか否かを判定する。変速比制御部65による変速指示流量は、変速制御押圧力を発生させる変速比変更部5に対して変速比制御部65から出力される変速制御押圧力の指令値(要求変速制御押圧力)に応じた変速制御油圧室82への作動油の流量である。油圧制御装置9は、変速比制御部65による変速指示流量が予め設定される所定流量より大きいと、制御系90Aをなす変速比変更部5の変速制御油圧室82への作動油の必要流量が相対的に多い状態となる。このため、切替制御部66は、変速比制御部65による変速指示流量が予め設定される所定流量より大きいと判定した場合(S114:No)、すなわち、非定常運状態であると判定した場合、後述するように、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を2吐出状態に切り替える。
切替制御部66は、変速比制御部65による変速指示流量が予め設定される所定流量以下であると判定した場合(S114:Yes)、トルクコンバータ制御部61によるL/U係合過渡制御が実行中であるか否かを判定する(S116)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、トルクコンバータ制御部61によるL/U係合過渡制御が実行中であるか否かを判定する。トルクコンバータ制御部61によるL/U係合過渡制御は、トルクコンバータ22のロックアップクラッチの係合中又は係合の解除中に実行される制御である。
切替制御部66は、トルクコンバータ制御部61によるL/U係合過渡制御が実行中であると判定した場合(S116:Yes)、1吐出状態には切り替えずにはこのまま現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
一方、切替制御部66は、トルクコンバータ制御部61によるL/U係合過渡制御が実行中でないと判定した場合(S116:No)、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態が1吐出状態である場合のポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量、すなわち、メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量が現在の制御系90Aでの作動油の必要流量以上であるか否かを判定する(S118)。切替制御部66は、例えば、各種センサの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両1Aの各部への制御信号などに基づいて、メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量と現在の制御系90Aでの作動油の必要流量とを取得して比較し、メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量が現在の制御系90Aでの作動油の必要流量以上であるか否かを判定する。ここで、制御系90Aでの作動油の必要流量は、上述したように、トロイダル式無段変速機1の変速比に応じた変速制御油圧室82へ作動油の必要流量や入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの接触面圧に応じた挟圧力発生油圧室15aへ作動油の必要流量など制御系90Aの全体で必要とされる作動油の流量である。
切替制御部66は、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態が1吐出状態である場合のポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量(メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量)が現在の制御系90Aでの作動油の必要流量より少ないと判定した場合(S118:No)、1吐出状態には切り替えずにこのまま現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
切替制御部66は、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態が1吐出状態である場合のポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量(メインポンプ96による制御系90Aへの作動油の吐出流量)が現在の制御系90Aでの作動油の必要流量以上であると判定した場合(S118:Yes)、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を1吐出状態に切り替えて(S120、例えば図9の時刻t1)、変速比制御部65は、変速遅延制御フラグをOFFに設定し(S122)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、エンジン回転数NEが所定のエンジン回転数NE1未満であっても、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両1Aの運転状態が定常運転状態に近い状態である場合にポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を相対的に小さな容量に設定することで、サブポンプ97によるポンプ負荷(ポンプ駆動損失)を低減することができ、燃費をさらに向上することができる。
切替制御部66は、S100において作動油の温度が予め設定される所定範囲外であると判定した場合(S100:No)、S106において運転者による急変速要求が有ると判定した場合(S106:No)、S108において挟圧力制御部63による押圧アップ制御が作動中であると判定した場合(S108:No)、S110において挟挟圧力制御部63による指令押圧力が予め設定される所定値より大きいと判定した場合(S110:No)、S112において挟圧力制御部63による指令押圧力変化量が予め設定される所定量より大きいと判定した場合(S112:No)、S114において変速比制御部65による変速指示流量が予め設定される所定流量より大きいと判定した場合(S114:No)、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両1Aの運転状態が非定常運状態であると判定した場合に、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出状態を2吐出状態に切り替る(S124、例えば図9の時刻t2)。
そして、変速比制御部65は、ポンプ装置92の吐出容量の切り替え開始時点、すなわち、切替制御部66からポンプ装置92へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点(例えば図9の時刻t2)から予め設定された所定時間経過していないか否かを判定する(S126)。
変速比制御部65は、切替制御部66からポンプ装置92へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点から予め設定された所定時間経過していないと判定した場合(S126:Yes)、すなわち、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量まで増加していないと判定した場合、変速遅延制御フラグをONに設定し、制御系90Aをなす変速比変更部5を制御し変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行する(S128)。この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、メインポンプ96とサブポンプ97との実際の合計の吐出流量の立ち上がりが遅れることに起因して、制御系90Aへの作動油の必要流量に対して制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができる。
そして切替制御部66は、切替弁98の駆動を制御しポンプ装置92による制御系90Aへの吐出容量の切り替え速度を相対的に増加して(S130)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。この結果、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9は、変速を遅らせる変速遅延制御の実行期間を短縮することができヘジテーション(応答性の悪化)の発生を抑制することができる。
変速比制御部65は、S126において切替制御部66からポンプ装置92へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点から予め設定された所定時間経過したと判定した場合(S126:No)、すなわち、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量まで増加した場合(例えば図9の時刻t3)、変速遅延制御フラグをOFFに設定し(S132)、通常の変速制御に移行し現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9によれば、駆動力を入力側の入力ディスク2から伝達部材としてのパワーローラ4を介して出力側の出力ディスク3に伝達可能であると共に、入力ディスク2と出力ディスク3との回転速度比である変速比を無段階に変更可能であるトロイダル式無段変速機1の油圧制御装置9において、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触面圧及び変速比を作動油の圧力により制御する制御系90Aへの作動油の吐出容量を複数段階に切り替え可能なポンプ装置92と、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせる変速比制御部65とを備える。
また、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1によれば、上記の油圧制御装置9と、伝達部材をなすパワーローラ4とを備える。
したがって、このトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行することで、メインポンプ96とサブポンプ97との実際の合計の吐出流量の立ち上がりが遅れることに起因して、制御系90Aへの作動油の必要流量に対して制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができ、この結果、運転状態に応じて作動油の吐出容量を適正に切り替えることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9によれば、変速比制御部65は、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、制御系90Aを制御し変速の変速速度を相対的に低下させるようにしてもよい。この場合、トロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、変速比制御部65が制御系90Aを制御し変速の変速速度を相対的に低下させることで変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9によれば、変速比制御部65は、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、制御系90Aを制御し変速の開始時点を相対的に遅らせるようにしてもよい。この場合、トロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、変速比制御部65が制御系90Aを制御し変速の開始時点を相対的に遅らせることで変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9によれば、変速比制御部65は、ポンプ装置92の吐出容量の切り替えが開始されてからポンプ装置92の実際の吐出容量が相対的に大きな容量に切り替わり終わるまでの期間で変速を遅らせる。したがって、トロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、ポンプ装置92へ吐出容量の切り替え指令が出力されてからポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出流量が実際にメインポンプ96とサブポンプ97との合計の吐出流量に増加し終わるまでの期間に、制御系90Aに多量の作動油の供給が要求されることを防止することができるので、制御系90Aへの作動油の必要流量に対して制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを確実に抑制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9によれば、変速比制御部65が制御系90Aを制御し変速を遅らせる際に、ポンプ装置92を制御し制御系90Aへの作動油の吐出容量の切り替え速度を相対的に増加する切替制御部66を備える。したがって、トロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、制御系90Aへの作動油の吐出容量の切り替え期間を短縮することができることから、制御系90Aを制御し変速を遅らせる期間を短縮することができるので、ヘジテーション(応答性の悪化)の発生を抑制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9によれば、ポンプ装置92は、作動油を制御系90Aに吐出するメインポンプ96と、作動油を制御系90A又は制御系90Aとは異なる潤滑系90Bに吐出するサブポンプ97と、サブポンプ97における作動油の吐出先を制御系90Aと潤滑系90Bとの間で切り替え可能な切替弁98とを有する。したがって、トロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、切替弁98がサブポンプ97における作動油の吐出先を制御系90Aと潤滑系90Bとのいずれかに切り替えることで、ポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量を複数段階、ここでは2段階に切り替えることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るトロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9によれば、制御系90Aは、変速制御油圧室82に供給される作動油の圧力により変速比を変更する変速比変更部5と、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の圧力により入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触面圧を変更する油圧押圧機構15とを含んで構成される。したがって、トロイダル式無段変速機1、油圧制御装置9は、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行することで、少なくとも制御系90Aをなす変速比変更部5の変速制御油圧室82及び油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15aへの作動油の必要流量に対して制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る無段変速機は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、無段変速機はダブルキャビティ型のトロイダル式無段変速機であるものとして説明したが、これに限らず、シングルキャビティ型のトロイダル式無段変速機であってもよい。
また、以上の説明では、本発明の無段変速機は、トロイダル式無段変速機1であるものとして説明したがこれに限らない。
図10は、本発明の変形例に係る油圧制御装置が適用されるベルト式無段変速機の概略構成図である。以上の図1乃至図9の説明では、本発明の媒体圧力制御装置としての油圧制御装置9を無段変速機としてのトロイダル式無段変速機1に適用した場合で説明したが、これに限らず、本発明の無段変速機は、図10に示すような、いわゆるベルト式無段変速機101に適用することもできる。なお、本図では上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
この本発明の変形例に係る無段変速機としてのベルト式無段変速機101は、エンジン21からの駆動力を伝達部材としてのベルト104によって入力側の回転部材から出力側の回転部材に伝達可能であると共に、入力側の回転部材と出力側の回転部材との回転数比である変速比を無段階(連続的)に変更する、いわゆる、ベルト式の無段変速機である。すなわち、このベルト式無段変速機101は、エンジン21からの駆動力が伝達される入力側の回転部材としてのプライマリプーリ102と、プライマリプーリ102に伝達された駆動力を変化させて出力する出力側の回転部材としてのセカンダリプーリ103と、プライマリプーリ102に伝達された駆動力をセカンダリプーリ103に伝達する伝達部材としてのベルト104とを含んで構成されるものである。さらに、このベルト式無段変速機101は、エンジン21の各部やベルト式無段変速機101の各部を制御するECU60と、各部の油圧を制御する媒体圧力制御装置としての油圧制御装置9とを含んで構成される。
なお、以下の説明では、エンジン21、トルクコンバータ22、前後進切換機構23、動力伝達機構24、ディファレンシャルギヤ25等の構成は、上述のトロイダル式無段変速機1とほぼ同様であるので説明を省略する。また、本変形例のECU60は、実施形態1(図1参照)のECU60と同様に、トルクコンバータ制御部61と、前後進切換制御部62と、挟圧力制御部63と、エンジン制御部64と、変速比制御部65と、切替制御部66とを含んで構成されるがここではその図示を省略している。また、本変形例の油圧制御装置9は、実施形態1(図1参照)の油圧制御装置9と同様に、吐出容量可変型のポンプ装置92(図1参照)を含んで構成されるがここではその図示を省略している。
ベルト式無段変速機101は、所定の間隔を設けて平行に配置した2本のプーリ軸としてのプライマリプーリ軸121、セカンダリプーリ軸131と、プライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132と、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133と、ベルト104とを含んで構成される。プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133は、プライマリプーリ軸121、セカンダリプーリ軸131に各々配置され且つプライマリプーリ軸121、セカンダリプーリ軸131上を軸線方向に摺動し得るものである。プライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132は、このプライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133に各々対向させてプライマリプーリ軸121、セカンダリプーリ軸131上に配置され且つプライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133との間でプライマリ溝127、セカンダリ溝137を形成するものである。ベルト104は、対向配置したそれぞれのプライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133及びプライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132における各プライマリ溝127、セカンダリ溝137に巻き掛けられるものである。
具体的には、ベルト式無段変速機101は、上述したように、一方のプーリとしてのプライマリプーリ102と、他方のプーリとしてのセカンダリプーリ103と、ベルト104と、ECU60と、油圧制御装置9とを備える。
プライマリプーリ102は、一方のプーリであり、前後進切換機構23を介して伝達されたエンジントルクをベルト104により、他方のプーリであるセカンダリプーリ103に伝達するものである。言い換えれば、エンジン21(駆動源)からのエンジントルク(駆動力)が入力されるプライマリプーリ102は、ベルト式無段変速機101が備える2つのプーリのうち、一方のプーリをなす。
プライマリプーリ102は、プライマリプーリ軸121と、プライマリ固定シーブ122と、プライマリ可動シーブ123と、プライマリプーリ102にベルト挟圧力を発生させることでベルト式無段変速機101の変速比を変更する変速制御圧力室としてのプライマリ油圧室124とにより構成されている。
プライマリプーリ軸121は、軸受部材125、126により回転可能に支持されている。また、プライマリプーリ軸121は、内部に図示しない作動油通路を有している。作動油通路は、油圧制御装置9の油圧制御回路に接続されており、油圧制御装置9からプライマリ油圧室124に供給される作動油が流入する。
プライマリ固定シーブ122は、円錐板状に形成され、プライマリ可動シーブ123と対向する位置に、プライマリプーリ軸121と一体回転するように設けられている。ここでは、プライマリ固定シーブ122は、プライマリプーリ軸121の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、プライマリ固定シーブ122は、プライマリプーリ軸121の外周に一体的に設けられている。なお、プライマリ固定シーブ122は、プライマリプーリ軸121と別体であってもよい。
プライマリ可動シーブ123は、円錐板状に形成され、例えば、スプライン嵌合により、プライマリプーリ軸121に対して軸方向に移動可能で、プライマリプーリ軸121と一体回転可能に支持されている。
プライマリ固定シーブ122とプライマリ可動シーブ123とは、プライマリ固定シーブ122のプライマリ可動シーブ123に対向する面と、プライマリ可動シーブ123のプライマリ固定シーブ122と対向する面との間に、V字形状のプライマリ溝127を形成している。プライマリ溝127は、無端であるベルト104が巻き掛けられる。つまり、ベルト104は、プライマリ固定シーブ122とプライマリ可動シーブ123との間に挟み込まれるようにして設けられる。
プライマリ油圧室124は、プライマリ可動シーブ123のプライマリ固定シーブ122と対向する面と反対側の背面の圧力作用面としてのプライマリ可動シーブ挟圧押圧力作用面123aと、プライマリプーリ軸121に固定されたリング形状のプライマリピストン128とにより構成されている。プライマリ可動シーブ123のプライマリ可動シーブ挟圧押圧力作用面123aには、軸方向の一方向に突出、すなわちプライマリ固定シーブ122とは反対側に突出する円筒形状の突出部123bが形成されている。突出部123bとプライマリピストン128との間には、例えばシールリングなどの図示しないプライマリ油圧室用シール部材が設けられている。つまり、プライマリ油圧室124を構成するプライマリ可動シーブ123のプライマリ可動シーブ挟圧押圧力作用面123aとプライマリピストン128とは、シール部材によりシールされている。なお、軸受部材126及びプライマリピストン128は、ロックナット129により、プライマリプーリ軸121に対して固定されている。
プライマリ油圧室124には、プライマリプーリ軸121の図示しない作動油通路に流入した作動油が供給される。つまり、油圧制御装置9は、プライマリ油圧室124に作動油を供給し、プライマリ油圧室124の油圧により、プライマリ可動シーブ123を軸方向に摺動させ、プライマリ可動シーブ123をプライマリ固定シーブ122に対して接近あるいは離隔させるものである。プライマリ油圧室124は、プライマリ油圧室124に供給される作動油により、プライマリ可動シーブ123を軸方向におけるプライマリ固定シーブ122側に押圧する可動シーブ押圧力をプライマリ可動シーブ挟圧押圧力作用面123aに作用させることで、プライマリ溝127に巻き掛けられるベルト104に対するベルト挟圧力を発生させる。つまり、プライマリプーリ102は、プライマリ油圧室124の油圧によりベルト104に対してベルト挟圧力を発生させ、発生したベルト挟圧力により、プライマリ可動シーブ123のプライマリ固定シーブ122に対する軸方向位置を変更するものである。これにより、プライマリ油圧室124は、例えばベルト式無段変速機101の変速比γを変更させる機能を有するものである。
つまり、本実施形態のプライマリプーリ102は、本発明の入力側の回転部材に相当すると共に変速制御圧力室としてのプライマリ油圧室124に供給される作動油の圧力により変速比を変更する本発明の変速比変更手段にも相当する。
なお、セカンダリプーリ103は、他方のプーリであり、ベルト104によりプライマリプーリ102に伝達されたエンジントルクを図示しないリダクションドライブギヤに伝達し、動力伝達機構24、ディファレンシャルギヤ25、ドライブシャフト26を介して駆動輪27に伝達するものである。言い換えれば、プライマリプーリ102からの駆動力が出力されるセカンダリプーリ103は、ベルト式無段変速機101が備える2つのプーリのうち、他方のプーリをなす。
セカンダリプーリ103は、セカンダリプーリ軸131と、セカンダリ固定シーブ132と、セカンダリ可動シーブ133と、セカンダリプーリ103にベルト挟圧力を発生させることで、ベルト104の張力を調整し、入力トルクに応じてプライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133とベルト104との接触面圧を変更する接触面圧制御圧力室としてのセカンダリ油圧室134とにより構成されている。
セカンダリプーリ軸131は、軸受部材135、136により回転可能に支持されている。また、セカンダリプーリ軸131は、内部に図示しない作動油通路を有している。作動油通路は、油圧制御装置9に接続されており、油圧制御装置9からセカンダリ油圧室134に供給される作動油が流入する。
上述のプライマリプーリ軸121とセカンダリプーリ軸131とは、互いにほぼ平行になるように配置されている。
セカンダリ固定シーブ132は、円錐板状に形成され、セカンダリ可動シーブ133と対向する位置に、セカンダリプーリ軸131と一体回転するように設けられている。ここでは、セカンダリ固定シーブ132は、セカンダリプーリ軸131の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、変形例では、セカンダリ固定シーブ132は、セカンダリプーリ軸131の外周に一体的に設けられている。なお、セカンダリ固定シーブ132は、セカンダリプーリ軸131と別体であってもよい。
セカンダリ可動シーブ133は、円錐板状に形成され、例えば、スプライン嵌合により、セカンダリプーリ軸131に対して軸方向に移動可能で、セカンダリプーリ軸131と一体回転可能に支持されている。
セカンダリ固定シーブ132とセカンダリ可動シーブ133とは、セカンダリ固定シーブ132のセカンダリ可動シーブ133に対向する面と、セカンダリ可動シーブ133のセカンダリ固定シーブ132と対向する面との間に、V字形状のセカンダリ溝137を形成している。セカンダリ溝137は、無端であるベルト104が巻き掛けられる。つまり、ベルト104は、セカンダリ固定シーブ132とセカンダリ可動シーブ133との間に挟み込まれるようにして設けられる。
セカンダリ油圧室134は、セカンダリ可動シーブ133のセカンダリ固定シーブ132と対向する面と反対側の背面のセカンダリ可動シーブ挟圧押圧力作用面133aと、セカンダリプーリ軸131に固定されたリング形状のセカンダリピストン138とにより構成されている。セカンダリ可動シーブ133のセカンダリ可動シーブ挟圧押圧力作用面133aには、軸方向の一方向に突出、すなわちセカンダリ固定シーブ132とは反対側に突出する円筒形状の突出部133bが形成されている。突出部133bとセカンダリピストン138との間には、例えばシールリングなどの図示しないセカンダリ油圧室用シール部材が設けられている。つまり、セカンダリ油圧室134を構成するセカンダリ可動シーブ133のセカンダリ可動シーブ挟圧押圧力作用面133aとセカンダリピストン138とは、シール部材によりシールされている。なお、軸受部材135及びセカンダリピストン138は、ロックナット139bにより、セカンダリプーリ軸131に対して固定されている。また、軸受部材136は、ロックナット139aにより、セカンダリプーリ軸131に対して固定されている。なお、この軸受部材136とセカンダリ固定シーブ132との間には、パーキングギヤ108が設けられている。
セカンダリ油圧室134には、セカンダリプーリ軸131の図示しない作動油通路に流入した作動油が供給される。つまり、油圧制御装置9は、セカンダリ油圧室134に作動油を供給し、セカンダリ油圧室134の油圧により、セカンダリ可動シーブ133を軸方向に摺動させ、セカンダリ可動シーブ133をセカンダリ固定シーブ132に対して接近あるいは離隔させるものである。セカンダリ油圧室134は、セカンダリ油圧室134に供給される作動油により、セカンダリ可動シーブ133を軸方向におけるセカンダリ固定シーブ側に押圧する可動シーブ押圧力をセカンダリ可動シーブ挟圧押圧力作用面133aに作用させることで、セカンダリ溝137に巻き掛けられるベルト104に対するベルト挟圧力を発生させる。つまり、セカンダリプーリ103は、セカンダリ油圧室134の油圧によりベルト104に対してベルト挟圧力を発生させ、発生したベルト挟圧力により、セカンダリ可動シーブ133のセカンダリ固定シーブ132に対する軸方向位置を変更するものである。これにより、セカンダリ油圧室134は、例えば、ベルト104の張力を制御することで、ベルト104のプライマリプーリ102及びセカンダリプーリ103に対する接触半径を一定に維持する機能の一部を担うものである。
つまり、本実施形態のセカンダリプーリ103は、本発明の出力側の回転部材に相当すると共に接触面圧制御圧力室としてのセカンダリ油圧室134に供給される作動油の圧力によりプライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133とベルト104との接触面圧を変更する本発明の接触面圧変更手段にも相当する。
ベルト104は、入力側であるエンジン21(駆動源)からプライマリプーリ102に入力された駆動力、すなわちエンジントルクをセカンダリプーリ103に伝達するものである。ベルト104は、プライマリプーリ102のプライマリ溝127とセカンダリプーリ103のセカンダリ溝137との間に巻き掛けられている。また、ベルト104は、多数の金属製のベルトエレメントと複数本のスチールリングで構成された無端ベルトである。
ECU60は、ベルト式無段変速機101が搭載された車両の運転状態(走行状態)に応じてベルト式無段変速機101の各部の駆動を制御しベルト式無段変速機101の実際の変速比である実変速比を制御する。ECU60は、種々のセンサが検出するエンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、入力回転数、出力回転数、シフトポジションなどの運転状態などに基づいて目標の変速比である目標変速比を決定すると共に、油圧制御装置9を駆動して油圧制御を行うことで、プライマリ油圧室124の油圧及びセカンダリ油圧室134の油圧を調整する。つまり、ECU60は、油圧制御装置9の不図示の流量制御弁に供給する駆動電流を制御指令値に基づいてデューティ制御することで、プライマリ油圧室124の油圧及びセカンダリ油圧室134の油圧を調整し、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133をプライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132に対して接近離間させる。そして、ECU60は、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133をプライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132に対して接近離間させることで、プライマリプーリ102におけるベルト挟圧力及びセカンダリプーリ103におけるベルト挟圧力を調整し、プライマリプーリ102の回転数である入力回転数と、セカンダリプーリ103の回転数である出力回転数との比である変速比γを制御することができ、実際の変速比である実変速比が目標の変速比である目標変速比となるように制御することができる。
ここで、本変形例の制御系90Aは、変速制御圧力室としてのプライマリ油圧室124に供給される作動油の圧力により変速比を変更する本発明の変速比変更手段としてのプライマリプーリ102と、接触面圧制御圧力室としてのセカンダリ油圧室134に供給される作動油の圧力によりプライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133とベルト104との接触面圧を変更する本発明の接触面圧変更手段としてのセカンダリプーリ103とを含んで構成される。この場合、セカンダリプーリ103は、例えば、セカンダリ固定シーブ132がベルト104に挟圧力を作用させるための第1挟圧部材に相当し、セカンダリ可動シーブ133がベルト104に挟圧力を作用させるための第2挟圧部材に相当する。なお、変速比変更手段と接触面圧変更手段との関係は逆であってもよく、つまり、プライマリプーリ102を接触面圧変更手段とし、セカンダリプーリ103を変速比変更手段としてもよい。
また、本変形例の制御系90Aとは異なる供給系としての潤滑系90Bは、プライマリプーリ軸121とプライマリ可動シーブ123との摺動部分(スプライン嵌合する部分)、セカンダリプーリ軸131とセカンダリ可動シーブ133との摺動部分(スプライン嵌合する部分)、軸受部材125、126、135、136やこれらに通じる作動油通路などを含んで構成される。
そして、上記のように構成されるベルト式無段変速機101であっても、ベルト式無段変速機101、油圧制御装置9は、変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に制御系90Aを制御し変速を相対的に遅らせる変速遅延制御を実行することで、メインポンプ96とサブポンプ97との実際の合計の吐出流量の立ち上がりが遅れることに起因して、制御系90Aへの作動油の必要流量に対して制御系90Aへの実際の作動油の吐出流量が不足することを抑制することができ、この結果、運転状態に応じて作動油の吐出容量を適正に切り替えることができる。よって、このベルト式無段変速機101、油圧制御装置9は、急変速に伴ってポンプ装置92による制御系90Aへの作動油の吐出容量が相対的に小さな容量から相対的に大きな容量に切り替わる際に、入力トルクに対して、プライマリ固定シーブ122、セカンダリ固定シーブ132、プライマリ可動シーブ123、セカンダリ可動シーブ133とベルト104との接触面圧が低くなりすぎてベルト104がスリップすることを防止することができる。
以上のように、本発明に係る無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機は、運転状態に応じて作動媒体の吐出容量を適正に切り替えることができるものであり、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力を車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達する無段変速機の媒体圧力制御装置及び無段変速機に適用して好適である。

Claims (8)

  1. 駆動力を入力側の回転部材から伝達部材を介して出力側の回転部材に伝達可能であると共に、入力側の前記回転部材と出力側の前記回転部材との回転速度比である変速比を無段階に変更可能である無段変速機の媒体圧力制御装置において、
    前記回転部材と前記伝達部材との接触面圧及び前記変速比を作動媒体の圧力により制御する制御系への前記作動媒体を吐出する第1ポンプと、前記作動媒体を前記制御系又は前記制御系とは異なる供給系に吐出する第2ポンプと、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先を前記制御系と前記供給系との間で切り替え可能な切替手段とを有するポンプ手段と、
    前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系から前記制御系に切り替わる際に、前記制御系を制御し前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系である場合よりも前記変速を相対的に遅らせる変速比制御手段とを備えることを特徴とする、
    無段変速機の媒体圧力制御装置。
  2. 前記変速比制御手段は、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系から前記制御系に切り替わる際に、前記制御系を制御し前記変速の開始時点を相対的に遅らせることで、前記変速を相対的に遅らせる、
    請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置。
  3. 前記変速比制御手段は、前記第2ポンプにおける前記作動媒体の吐出先が前記供給系から前記制御系に切り替わる際に、前記制御系を制御し前記変速の変速速度を相対的に低下させることで、前記変速を相対的に遅らせる、
    請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置。
  4. 前記変速比制御手段は、前記ポンプ手段の前記制御系への前記作動媒体の吐出容量の切り替えが開始されてから前記ポンプ手段の実際の吐出容量が前記相対的に大きな容量に切り替わり終わるまでの期間で前記変速を遅らせる、
    請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置。
  5. 前記変速比制御手段が前記制御系を制御し前記変速を遅らせる際に、前記ポンプ手段を制御し前記制御系への前記作動媒体の吐出容量の切り替え速度を相対的に増加する切替制御手段を備える、
    請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置。
  6. 前記制御系は、変速制御圧力室に供給される前記作動媒体の圧力により前記変速比を変更する変速比変更手段と、接触面圧制御圧力室に供給される前記作動媒体の圧力により前記接触面圧を変更する接触面圧変更手段とを含んで構成される、
    請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置。
  7. 請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置と、
    前記伝達部材をなすパワーローラとを備えることを特徴とする、
    無段変速機。
  8. 請求項1に記載の無段変速機の媒体圧力制御装置と、
    前記伝達部材をなすベルトとを備えることを特徴とする、
    無段変速機。
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