JP4546612B2 - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の変速制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車などの移動機械の変速制御に用いて好適なベルト式無段変速機の変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のベルト式無段変速機(CVT)には、駆動側のプライマリ軸に設けられたプーリ溝幅可変のプライマリプーリと、被動側つまり従動側のセカンダリ軸に設けられたプーリ溝幅可変のセカンダリプーリとの間に、金属製のベルトを掛け渡し、油圧によってプライマリプーリとセカンダリプーリのプーリ径を変化させてセカンダリ軸の回転数を無段階に変化させるようにしたものがある。
【0003】
CVTの変速制御は、プライマリプーリに設けられたプライマリシリンダとセカンダリプーリに設けられたセカンダリシリンダとに供給される油圧を制御することにより行われており、それぞれのシリンダに供給される油圧はエンジンにより駆動されるオイルポンプで発生させている。セカンダリシリンダに供給されるライン圧つまりセカンダリ圧はセカンダリ圧調整弁により調圧し、プライマリシリンダに供給されるプライマリ圧はライン圧を元圧としてプライマリ圧調整弁により調圧するようにしている。プライマリ圧を目標変速比、変速速度に応じた値に調圧することにより、プライマリプーリの溝幅を変化させて車速が制御され、ライン圧はベルトに必要な伝達容量に見合った値に調圧される。
【0004】
プライマリ圧はライン圧を減圧することにより調圧されるので、ライン圧を超えることはない。このため、プーリ比が増速となるようにプーリ溝幅を調節するにはプライマリプーリのクランプ力をセカンダリプーリのクランプ力よりも大きくすることが必要となるため、通常プライマリシリンダの受圧面積をセカンダリシリンダの2倍程度に大きくしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、従来のように、ライン圧を元圧としてこれを減圧して得られるプライマリ圧によってプライマリプーリの溝幅を調整するようにした場合には、ダウンシフトを行うときには、プライマリ圧の作動油をリークつまり捨ててプライマリ圧を低下させ、セカンダリシリンダにはオイルポンプからの吐出圧を流入させており、このときプライマリシリンダはプライマリ圧とプーリストロークの積で求められる仕事をするが、これは全て減圧弁であるプライマリ圧調整弁の通路抵抗として消費されることになる。
【0006】
このように、油圧バルブであるプライマリ圧調整弁によってプーリ比の制御を行う場合には、プーリ比制御を少ない力で応答性良く変速制御を行うことができる反面、常に作動油をリークする動作を行うため、動力伝達ロスが発生し、作動油のエネルギー供給源であるオイルポンプの消費動力のうち約1/3〜1/2がCVTの動力伝達ロスとなっている。
【0007】
プライマリプーリの溝幅の調整をねじ機構を介して電動モータにより行うようにした技術が、たとえば、特開平3-213762号公報に示されるように提案されている。この場合にはモータのトルクをプライマリプーリの可動側プーリの軸方向運動に変換し、ベルトを押し付けるようにしているが、この技術はプーリ比制御に油圧シリンダを使用しない場合には有効であるが、油圧制御と組み合わせて、セカンダリプーリのクランプ力を油圧シリンダによって発生させるようにすると、ダウンシフト時には前述した従来技術と同量のシリンダ作動流量が必要となるためにポンプ損失を低減することができない。
【0008】
また、この公報に開示されるようにクランプ力を油圧により発生させない方式では、ゴム製のベルトのようにプーリとベルトの摩擦係数が大きく、ベルトクランプ力が小さくて済む場合には可能であるが、金属製のベルトを用いたCVTでは摩擦係数が小さく、大きなクランプ力が必要なので、このような方式ではねじ部やベアリングの強度が不足するために装置を大型化させなければならず、さらに大型化に伴って摩擦抵抗が増えるために油圧によりクランプ力を発生させる場合に比して不利となる。
【0009】
本発明の目的は、ベルト式無段変速機の変速動作のためにオイルポンプで消費されるエネルギーを低減して動力伝達効率を向上させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、プライマリ軸に装着されるプーリ溝幅可変のプライマリプーリと、セカンダリ軸に装着されるとともに前記プライマリプーリとの間にベルトが掛け渡されるプーリ溝幅可変のセカンダリプーリとを有する無段変速機の変速制御装置であって、前記プライマリプーリに設けられ、プライマリ油室を有するプライマリシリンダと、前記セカンダリプーリに設けられ、セカンダリ油室を有するセカンダリシリンダと、前記セカンダリ油室に油圧源からのライン圧の作動油を供給するライン圧路に連通する第1のポートおよび作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備えた可逆油圧モータと、前記プライマリ油室に接続されたプライマリ圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備え、前記可逆油圧モータに連結される可逆油圧ポンプと、前記可逆油圧モータまたは前記可逆油圧ポンプを流れる作動油の量を変化させる可変容量機構と、前記可変容量機構の作動を制御する変速制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の無段変速機の変速制御装置は、プライマリ軸に装着されるプーリ溝幅可変のプライマリプーリと、セカンダリ軸に装着されるとともに前記プライマリプーリとの間にベルトが掛け渡されるプーリ溝幅可変のセカンダリプーリとを有する無段変速機の変速制御装置であって、前記プライマリプーリに設けられ、プライマリ油室を有するプライマリシリンダと、前記セカンダリプーリに設けられ、セカンダリ油室を有するセカンダリシリンダと、油圧源からのライン圧の作動油を案内するライン圧路に連通する第1のポートおよび作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備えた第1の可逆油圧モータと、前記プライマリ油室に接続されるプライマリ圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備え、前記第1の可逆油圧モータに連結される第1の可逆油圧ポンプと、前記ライン圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続される油路に連通する第2のポートを備えた第2の可逆油圧モータと、前記セカンダリ油室に接続されたセカンダリ圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備え、前記第2の可逆油圧モータに連結された第2の可逆油圧ポンプと、前記第1の可逆油圧モータまたは前記第1の可逆油圧ポンプを流れる作動油の量を変化させる第1の可変容量機構と、前記第2の可逆油圧モータまたは前記第2の可逆油圧ポンプを流れる作動油の量を変化させる第2の可変容量機構と、それぞれの前記可変容量機構の作動を制御する変速制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の無段変速機の変速制御装置においては、可変容量機構を前記可逆油圧モータまたは可逆油圧ポンプに組み込んで可変容量可逆油圧モータまたは可変容量可逆油圧ポンプとしても良く、前記可逆油圧モータまたは可逆油圧ポンプを固定容量とし、これらの間に無段変速機を設けるようにしても良い。
【0013】
油圧源をエンジンにより駆動されるオイルポンプにより構成しても良く、電動モータにより駆動されるオイルポンプと蓄圧アキュムレータとにより構成するようにしても良い。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1はベルト式無段変速機つまりCVTの駆動系の一例を示す概略図であり、図示省略したエンジンにより駆動されるクランク軸1の回転は、発進装置としてのトルクコンバータ2と前後進切換機構3とを介して無段変速機構4に伝達されるようになっている。
【0016】
トルクコンバータ2はロックアップクラッチ5を有しており、ロックアップクラッチ5はタービン軸6に連結されている。ロックアップクラッチ5の一方側はアプライ室7aであり、他方側はリリース室7bであり、リリース室7b内に供給した油圧をアプライ室7aを介して循環させることによりトルクコンバータ2は作動状態となる。一方、アプライ室7aに油圧を供給し、リリース室7b内の油圧を下げることによりロックアップクラッチ5はフロントカバー8と係合してロックアップ状態となる。このリリース室7b内の圧力を調整することによりロックアップクラッチ5を滑らせるようにしたスリップ圧制御が行われる。
【0017】
前後進切換機構3はトルクコンバータ2の出力軸であるタービン軸6の回転を無段変速機構4に正方向に伝達するための前進用クラッチ11と、逆方向に伝達するための後退用ブレーキ12とを有しており、クラッチ油室11aに油圧を供給して前進用クラッチ11を接続状態とすると、タービン軸6の回転は無段変速機構4に正方向に伝達され、ブレーキ油室12aに油圧を供給して後退用ブレーキ12を接続状態とすると逆方向に減速して伝達される。
【0018】
無段変速機構4は前後進切換機構3に連結される入力軸つまりプライマリ軸13と、これと平行となった出力軸つまりセカンダリ軸14とを有している。プライマリ軸13にはプライマリプーリ15が設けられており、プライマリプーリ15はプライマリ軸13に固定された固定プーリ15aと、これに対向してプライマリ軸13にボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ15bとを有し、プーリのコーン面間隔つまりプーリ溝幅が可変となっている。セカンダリ軸14にはセカンダリプーリ16が設けられており、セカンダリプーリ16はセカンダリ軸14に固定された固定プーリ16aと、これに対向してセカンダリ軸14に可動プーリ15bと同様に軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ16bとを有し、プーリの溝幅が可変となっている。
【0019】
プライマリプーリ15とセカンダリプーリ16との間にはベルト17が掛け渡されており、両方のプーリ15,16の溝幅を変化させて、それぞれのプーリ15,16に対する巻付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸13の回転がセカンダリ軸14に無段階に変速されて伝達されることになる。
【0020】
セカンダリ軸14の回転は減速歯車およびディファレンシャル装置18を有する歯車列を介して車輪19a,19bに伝達されるようになっており、前輪駆動車の場合には、車輪19a,19bは前輪となる。このようなCVTの駆動系の基本構造は、たとえば、特開平10-325458 号公報に開示されている。
【0021】
プライマリプーリ15の溝幅を変化させるために、プライマリ軸13には円筒部とディスク部とを有するプランジャ21が固定され、このプランジャ21の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ22が可動プーリ15bに固定されており、プランジャ21と可動プーリ15bとの間にはプライマリ油室23が形成されている。
【0022】
セカンダリプーリ16の溝幅を変化させるために、セカンダリ軸14にはテーパー状の円筒部を有するプランジャ24が固定され、このプランジャ24の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ25が可動プーリ16bに固定されており、プランジャ24と可動プーリ16bとの間にはセカンダリ油室26が形成されている。
【0023】
プライマリシリンダ22内のプライマリ油室23内に作動油を供給してその容積を大きくすると、可動プーリ15bはシリンダ22とともに固定プーリ15a側に移動してプーリ溝幅が狭くなり、容積を小さくするとプーリ溝幅が広くなる。また、セカンダリシリンダ25内のセカンダリ油室26内に作動油を供給してその容積を大きくする、可動プーリ16bはシリンダ25とともに固定プーリ16a側に移動してプーリ溝幅が狭くなり、容積を小さくするとプーリ溝幅が広くなる。
【0024】
図2はプライマリシリンダ22およびセカンダリシリンダ25に作動油を供給して変速操作を行うための油圧回路図であり、エンジンにより駆動される主油圧ポンプつまりオイルポンプ27の吐出口はライン圧路28を介してライン圧調整弁29の調圧ポートに接続され、このライン圧調整弁29によってライン圧(セカンダリ圧)が調整されるようになっている。ライン圧路28はセカンダリシリンダ25内のセカンダリ油室26に連通されており、ライン圧はセカンダリプーリ16のベルトクランプ力を発生させる。
【0025】
ライン圧路28は可変容量可逆油圧モータ30の第1のポート31aに接続されており、ライン圧は油圧モータ30にトルクを発生させることができる。油圧モータ30は連結軸32により可逆油圧ポンプ33に連結されており、油圧モータ30の発生トルクにより可逆油圧ポンプ33を駆動することができる。油圧ポンプ33の第1のポート34aはプライマリ圧路35によりプライマリシリンダ22内のプライマリ油室23に連通されており、油圧ポンプ33から吐出するプライマリ圧によってプライマリプーリ15のクランプ力を発生させることができる。
【0026】
油圧モータ30の第2のポート31bおよび油圧ポンプ33の第2のポート34bは、オイルパン36内の作動油をオイルポンプ27の流入口にストレーナ37を介して供給する流入油路に対して案内油路38により接続されており、この案内油路38の接続端はストレーナ37とオイルポンプ27の流入口との間となっている。
【0027】
油圧モータ30と油圧ポンプ33はいずれも可逆式となっており、プライマリプーリ15の溝幅を狭くする際にプライマリ油室23内に作動油を供給するときには、第1のポート31aから流入するライン圧によって油圧モータ30が駆動され、油圧モータ30によって油圧ポンプ33が駆動されて作動油収容部としてのオイルパン36内の作動油がプライマリ圧に加圧されてプライマリ油室23内に供給される。
【0028】
一方、プライマリプーリ15の溝幅を広くする際にプライマリ油室23内から作動油を排出するときには、油圧ポンプ33は油圧モータとして機能して第1のポート34aから流入する作動油によって油圧ポンプ33が駆動され、油圧ポンプとして機能する油圧モータ30が油圧ポンプ33により駆動されて第1のポート31aからライン圧路28に作動油が吐出される。ライン圧路28内に流入した作動油は、オイルポンプ27からの作動油とともにセカンダリ油室26内に供給される。
【0029】
このように、油圧モータ30と油圧ポンプ33はそれぞれ可逆式つまり油圧モータと油圧ポンプとしての機能を有する油圧モータポンプとなっている。
【0030】
ライン圧調整弁29のドレインポートとオイルポンプ27の流入口との間には潤滑圧調整弁39が設けられ、潤滑圧路41に供給される潤滑圧がライン圧調整弁29のドレイン圧を元圧として調整され、潤滑圧の作動油が前後進切換機構3の潤滑部やベルト17の潤滑部などに供給されるようになっている。また、ライン圧路28にはクラッチ圧調整弁42が接続されており、クラッチ圧調整弁42によりクラッチ圧がライン圧を元圧として調整されるようになっている。このクラッチ圧の作動油はクラッチ圧路42aを介して前後進切換機構3の前進用クラッチ11のクラッチ油室11aと後退用ブレーキ12のブレーキ油室12aとロックアップクラッチ5のアプライ室7aとに供給されるようになっている。
【0031】
クラッチ圧および潤滑圧の作動油を前後進切換機構3などに供給するための油圧回路は、前述した特開平10-325458 号公報に開示されたものと同様である。
【0032】
図3は油圧モータ30とこれに連結軸32により連結された油圧ポンプ33を示す断面図であり、図4は図3におけるIV−IV線に沿う方向の油圧モータ30の断面図であり、図5は図3におけるV−V線に沿う方向の油圧ポンプ33の断面図である。
【0033】
連結軸32を回転自在に収容するケーシング43にはその一端部に固定されるカバー44内に油圧モータ30が組み込まれ、他端部に固定されるカバー45内に油圧ポンプ33が組み込まれている。連結軸32の一端に取り付けられた油圧モータ30のロータ46がケーシング43内に回転自在に収容され、ロータ46には径方向に往復動自在に複数枚のベーン47が装着されている。ロータ46の外側にはカムリング48が配置され、ベーン47はカムリング48の内周面に沿って摺動するようになっており、ロータ46の外周面とカムリング48の内周面との間に形成される油室には、ライン圧路28が接続される第1のポート31aと、案内油路38が接続される第2のポート31bに連通している。
【0034】
これにより、ライン圧路28から第1のポート31aを介して油室内に流入する作動油の流体エネルギーがロータ46の回転運動エネルギーに変換されて、図4において矢印で示す方向にロータ46が回転駆動される。
【0035】
カムリング48はピン51によりケーシング43に回動自在に装着されており、それぞれのベーン47をカムリング48の内周面に押し付けるために、ロータ46の両端面に形成された段部には支持リング52が組み付けられている。したがって、カムリング48をピン51を中心に回動させると、カムリング48のロータ46に対する偏心量が変化し、吐出容量を変化させることができ、油圧モータ30は可変容量式となっている。
【0036】
偏心量を変化させるために、変速用の電動モータ53により回転駆動される雄ねじ軸54が連結軸32に対して直角方向となってケーシング43に設けられ、この雄ねじ軸54にねじ結合されてこれの軸方向に移動するスライダ55は、カムリング48に係合している。スライダ55にはカムリング48に設けられた突起部56が入り込む係合溝57が形成され、スライダ55に固定された係合ピン58は突起部56に形成された溝に係合している。
【0037】
このように、変速用の電動モータ53、雄ねじ軸54およびスライダ55からなるタンジェントスクリュー機構によりカムリング48のロータ46に対する偏心量が調整される。スライダ55を雄ねじ軸54にねじ結合するようにしたタンジェントスクリュー機構は、電動モータ53の回転をスライダ55に伝達し、スライダ55の軸方向の負荷によって雄ねじ軸54が回転しないような不可逆機構となっている。
【0038】
連結軸32の他端部に固定された油圧ポンプ33のロータ61がケーシング43内に回転自在に収容され、ロータ61には径方向に往復動自在に複数枚のベーン62が装着されている。ロータ61の外側にはカムリング63が配置され、ベーン62はカムリング63の内周面に沿って摺動するようになっており、カムリング63は固定ピン64によりケーシング43に固定されて回転が規制されている。それぞれのベーン62をカムリング63の内周面に押し付けるために、ロータ61の両端面に形成された段部には支持リング65が組み付けられている。これにより、油圧ポンプ33は固定容量式のベーンポンプとなっている。
【0039】
ロータ61の外周面とカムリング63の内周面との間に形成される油室には、プライマリ圧路35が接続される第1のポート34aと、案内油路38が接続される第2のポート34bとが連通している。
【0040】
したがって、連結軸32によりロータ46が図4において矢印で示す方向に回転駆動されると、回転運動エネルギーが流体エネルギーに変換されて、プライマリ圧路35が接続された第1のポート34aからプライマリ圧の作動流体を吐出する。
【0041】
一方、第1のポート34aから流入するプライマリ圧によって油圧ポンプ33のロータ61が図5における矢印の方向とは逆の方向に回転駆動されると、油圧モータとして機能して図4に示す油圧モータ30を矢印とは逆の方向に回転駆動する。このときには、ライン圧路28には作動油が吐出される。
【0042】
したがって、コントロールユニットからの制御信号によって、ライン圧調整弁29のソレノイドに制御信号を送ってライン圧を調整するとともに、変速用の電動モータ53に制御信号を送ってプライマリ圧を調整することにより、走行状況に応じた変速制御を行うことができる。
【0043】
それぞれの支持リング52,65は、吐出圧に抗してベーン47,62をカムリング48,63の内周面に押し付けてベーンの先端からの作動油の漏れを防止する機能を有しているが、適用によっては作動油が高油圧となり、支持リング52,65の弾性力だけではベーンとカムリングの接触を維持できない場合がある。そのような場合には、ベーンの内径側に油圧を導くことによってその油圧によりベーンを外径方向に押し出すことができる。
【0044】
図6は上述のように油圧によってベーン47,62を押し出すようにしたタイプの油圧モータ30および油圧ポンプ33の変形例を示す断面図であり、油圧モータ30についてはカバー44に形成された油路66によりライン圧をベーン47の内径側に導くようにし、油圧ポンプ33についてはカバー45に形成された油路67によりプライマリ圧をベーン62の内径側に導くようにしている。
【0045】
図7は変速用の電動モータ53に指示値を入力してCVTを変速制御するためのコントロールユニット70を示すブロック図であり、エンジン回転数信号71、スロットル開度信号72、プライマリ回転数信号73、セカンダリ回転数信号74、レンジスイッチ信号75、ブレーキスイッチ信号76、油温センサ信号77、ライン圧センサ信号78に基づいて変速用の電動モータ53に制御信号が送られるようになっている。
【0046】
入力トルク計算部81は、エンジン回転数信号71、スロットル開度信号72およびプライマリ回転数信号73によりエンジントルクを演算しており、エンジン回転数とプライマリ回転数の比によりトルクコンバータなどの発進装置の影響を考慮している。
【0047】
目標プーリ比設定部82は、スロットル開度信号72、レンジスイッチ信号75およびブレーキスイッチ信号76などの運転者の操作信号と、プライマリ回転数信号73、セカンダリ回転数信号74および油温センサ信号77などの状態信号から目標とするプーリ比を演算して出力する。
【0048】
実プーリ比計算部83は、プライマリ回転数信号73およびセカンダリ回転数信号74により実際のプーリ比を演算する。
【0049】
目標油圧比設定部84は、入力トルク計算部81により求められた入力トルク信号と、ライン圧センサ信号78と、目標プーリ比設定部82により演算された目標プーリ比信号と、実プーリ比計算部83により求められる実プーリ比信号とに基づいて、目標プーリ比を実現するための油圧比(プライマリ油室23とセカンダリ油室26の油圧比)を出力する。
【0050】
モータ制御部85は目標油圧比から算出される油圧モータ30の偏心量を実現するように変速用の電動モータ53を制御するとともに、実プーリ比と目標プーリ比との偏差によるPID演算部86からの出力により変速用の電動モータ53を補正制御して目標プーリ比を達成する。
【0051】
可変容量可逆油圧モータ30に作用するライン圧をPs とし、油圧モータ30の1回転当たりの吐出体積をDm (可変)とすると、この油圧モータ30の発生トルクTg は(1) 式で表される。
【0052】
発生トルクTg =Ps ×Dm /2/π …(1)
一方、可逆油圧ポンプ33がプライマリ圧Pp を発生するために必要なトルクTn は、油圧ポンプ33の1回転当たりの吐出体積をDp とする、次の(2) 式で表される。
【0053】
必要トルクTn =Pp ×Dp /2/π …(2)
上記可変容量可逆油圧モータ30と可逆油圧ポンプ33は、連結軸32により連結されているので、トルクの釣り合いより次の(3) 式が導かれる。
【0054】
Ps ×Dm =Pp ×Dp …(3)
(3) 式を変形して、プライマリ圧Pp を表示すると、(3a)式となる。
【0055】
Pp =(Dm /Dp )×Ps …(3a)
(3a)式よりDm を制御することによりプライマリ圧Pp を可変制御できることが分かる。
【0056】
外的要因により入力トルクに変動が発生すると、制御回路はベルトクランプ力を最適に維持するためにライン圧Ps を加減し、変速比を安定させるためにプライマリ圧Pp も油圧比Pp /Ps が一定となるように追従させなければならないが、(3a)式で示されるように、油圧モータ/油圧ポンプの容量比が油圧比を規定しており、ライン圧Ps が変動しても自動的にプライマリ圧Pp が追従するので変速比の安定性を向上させることができる。
【0057】
また、タンジェンシャルスクリュー機構はロータの不可逆機構であり、走行中に変速用のモータ53の断線などによりトルクを失ってもカムリング48はその位置を維持するので急変速が発生せず安全である。
【0058】
次に、変速過程の動的挙動を説明する。
【0059】
アップシフトはプライマリ圧Pp を上昇させることで行われ、カムリング48を図4に矢印U方向に変位させることで達成できる。この際、油圧モータ30はライン圧を消費しながら油圧ポンプ33を駆動し、油圧ポンプ33がプライマリシリンダ22内にプライマリ圧Pp を送り込むことでプライマリプーリ15のプーリ溝幅を変位させる。そして、プライマリ圧Pp とライン圧Ps の関係が(3a)式を満たしたときに油圧モータ30の作動が止まり平衡に達する。
【0060】
一方、ダウンシフトの際には、カムリング48を図4において矢印Dで示す方向に変位させると、油圧モータ30のトルクが減少してトルクの平衡が崩れる。すなわち、プライマリ圧Pp によって油圧ポンプ33の反力が大きくなるために可逆油圧ポンプ33はプライマリ圧Pp により逆転トルクを発生し、油圧モータ30を逆転駆動することになり、油圧モータ30からライン圧路28に作動油を戻すことになる。つまり、ダウンシフトの際には油圧ポンプ33は油圧モータとして機能し、油圧モータ30は油圧ポンプとして機能することになる。
【0061】
従来では急ブレーキ時などには急激なダウンシフトが要求されるためにオイルポンプ27はセカンダリシリンダ25のストローク速度に対応できるだけの容量に設定する必要があるが、本発明によれば、ダウンシフトの場合には油圧モータ30の逆転作用(ポンプとしての作用)により供給流量がアシストされるので、オイルポンプ27の容量を小さく設定してもダウンシフトの速度不足が発生することはない。オイルポンプ27は常時駆動されるためにこのポンプを小さくすることは、CVTのロストルクを減少させて燃費を改善する効果がある。
【0062】
次に、ダウンシフトの際の作動流量のアシスト作用を図8および図9を参照して具体的に説明する。
【0063】
図8はあるベルト式CVTのプーリ比に対するプライマリプーリ15とセカンダリプーリ16のプーリ溝幅の変位量つまりそれぞれの可動プーリ15b,16bの変位量を示す。図8においては、オーバードライブODのときにおけるプーリの位置を0として、プライマリプーリ15の変位であるプライマリストローク15Sと、セカンダリプーリ16の変位であるセカンダリストローク16Sの変化を示しており、ODからLOWへ変速する際のプライマリストロークとセカンダリストロークは一致しておらず、単純な対向ピストンとは異なる性質を持っていることが示される。このため、変速時の作動油の流量を数式により検証することは困難であり、諸元を仮定した数値計算により作動油の流量変化を示すと、図9のように示すことができる。
【0064】
図9は一定の減速度でダウンシフトする際における作動油の流量をシミュレーションして示す特性線図であり、一点鎖線iはエンジン回転数が必要最低限の値を維持する減速度でダウンシフトさせたときのプーリ比iの変化を示しており、プーリ比iの変化i(t) はセカンダリ回転数の初期値をNS0、減速度をg、プライマリ回転数をNP0(一定値) とすると、以下の(4) 式で表されるような双曲線となる。
【0065】
i(t) =NP0/(NS0−g・t) …(4)
このような減速度でプーリ比iを変化させるには、プライマリシリンダ22内のプライマリ油室23からは細線Qpで示すように作動油を排出させる必要があり、セカンダリシリンダ25内のセカンダリ油室26内には破線Qsで示すように作動油を供給する必要がある。
【0066】
前述した従来技術では、セカンダリシリンダ25内に破線Qsで示す必要供給油量をオイルポンプ27から直接供給しなければならず、オイルポンプ27はその必要供給油量を持つ容量としなければならない。
【0067】
これに対して、本発明にあっては、ダウンシフトの時にはプライマリシリンダ22から排出される油圧によって油圧ポンプ33を油圧モータとして駆動することにより、油圧ポンプとして機能する油圧モータ30からライン圧路28に戻された作動油をセカンダリシリンダ25内に供給することができ、オイルポンプ27からは太線Qinv で示す少ないポンプ容量をセカンダリシリンダ25内に供給するだけで、急激なダウンシフトを達成することができる。
【0068】
この変速操作時には、変速用の電動モータ53は直接油圧を発生させることなく、かつタンジェントスクリュー機構による倍力効果と、雄ねじと雌ねじとのねじ結合による不可逆性によりロータ反力でスライダー55の位置が変わらないことによる姿勢保持効果とが得られるため、小型の電動モータ53で変速操作を行うことができる。
【0069】
本発明の供給油量Qinv は次のように求められる。つまり、ダウンシフトの際の油圧ポンプ33の逆転回転数N(t) はプライマリシリンダ22からの吐出流量QpをQp(t)として、以下の(5) 式で表される。
【0070】
N(t) =Qp(t)/Dp …(5)
油圧モータ30が逆転駆動されてライン圧路28に供給する流量Q(t) は、可変容量可逆油圧モータ30の容量をDm(t)として以下の(6) 式で表される。
【0071】
Q(t) =N(t) ×Dm(t)=Qp(t)×Dm(t)/Dp …(6)
ここで、可変容量可逆油圧モータ30の容量Dm(t)は所定の変速速度が得られるような時間変化を与えてある。本発明の特性線Qinv は特性線Qsで示されるセカンダリストロークに必要な流量をQs(t)として、Q(t) −Qs(t)をプロットして得られる。
【0072】
前述した油圧モータ30および油圧ポンプ33としては、図示した形式に限定されることなく、たとえば、固定容量可逆油圧ポンプとしてはベーン式の他に、内接あるいは外接ギヤ式、アキシャルピストン式、ラジアルピストン式などを用いることができる。また、可変容量可逆油圧モータとしては、ベーン式に加えてアキシャルピストン式やラジアルピストン式を用いることができる。
【0073】
(実施の形態2)
図10は本発明の他の実施の形態である変速制御装置における油圧回路図であり、図10は実施の形態1における図2に対応した部分が示されている。
【0074】
この場合には油圧モータ30は、実施の形態1では可変容量可逆油圧モータであるのに対して、固定容量の可逆油圧モータとなっており、油圧ポンプ33に連結された連結軸32aと油圧モータ30に連結された連結軸32bとの間には、無段変速機91が設けられ、この無段変速機91はコントロールユニット70からの信号により変速比が制御される。
【0075】
図11は無段変速機91を示す断面図であり、ケーシング92には油圧モータ30のロータに連結された連結軸32bが回転自在に装着されるとともに、油圧ポンプ33のロータに連結された連結軸32aが回転自在に装着されており、一方の連結軸32bには円錐体93が固定され、他方の連結軸32aには円錐体94が軸方向に摺動自在に装着されている。それぞれの円錐体93,94の外周面により形成された母線は平行となっており、一方の円錐体94には連結軸32aの先端に向けて圧縮コイルばね95によりばね力が加えられ、予圧が与えられている。
【0076】
両方の円錐体93,94の間には母線のなす平行線と平行に送りねじ軸96が配置され、この送りねじ軸96はケーシング92に回転自在に取り付けられ、電動モータ97により回転駆動されるようになっている。送りねじ軸96にはスリーブ98がねじ結合され、このスリーブ98は電動モータ97によって軸方向に往復動自在となっている。スリーブ98にはボール99a,99bが回転可能に支持されており、ボール99aは円錐体94の外周面に接触し、ボール99bは円錐体93の外周面に接触している。
【0077】
したがって、電動モータ97によって送りねじ軸96を回転駆動すると、スリーブ98が軸方向に移動してボール99a,99bと円錐体93,94の接触位置が変化する。それぞれの接触部位はばね95により動力伝達に必要な強さで押し付けられており、接触位置の変化に伴って両方の連結軸32a,32bの間の変速比を変更することができる。
【0078】
連結軸32aの回転数をN1 、連結軸32bの回転数をN2 とし、無段変速機91の変速比をia (=N2 /N1 )とすると、連結軸32aにおける釣り合いにより、前述した(3) 式は以下の(3b)式のようになる。
【0079】
Ps ×Dm =Pp ×Dp ×ia …(3b)
この式を変形すると、プライマリ圧は以下の式(7) で表される。
【0080】
Pp =Ps ×Dm /Dp /ia …(7)
(7) 式から分かるように、油圧モータ30、油圧ポンプ33とも固定容量式にも拘わらず、変速比ia を制御することにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0081】
一般に、固定容量の油圧ポンプおよび油圧モータは容量可変式に比べて効率が良いので、消費流量を少なくすることができ、オイルポンプ27をより小型化するきとができる。また、無段変速機91はトルクを伝達しながら軸が回転していない場合でもスリーブ98に設けられたボール99a,99bの相対回転により変速可能という特徴を持ち、油圧ポンプと油圧モータ相互間の動力伝達に有効に機能する。たとえば、変速比が一定のときには、両方の連結軸32a,32bは停止しており、ベルト式やトロイダル式などの通常の無段変速機では、変速が著しく遅くなるために、プライマリ圧を素早く変化させることができず、油圧応答性を損なうことになる。これに対して、図11に示す無段変速機91を用いることにより、入出力軸の回転数によらない変速応答が得られるため走行性を損なうことはない。
【0082】
(実施の形態3)
図12は本発明の他の実施の形態である変速制御装置における油圧回路図であり、この場合には主油圧ポンプとしてのオイルポンプ27aは電動モータ101により駆動されるようになっており、調圧弁29aにより一定圧に調圧されてライン圧をライン圧路28に吐出する。オイルポンプ27aは電動モータ101により駆動されるので、エンジン駆動の場合に比してライン圧の圧力変動が小さく、調圧弁29aは内臓されたばねにより調圧を行い、前述したライン圧調整弁29のように比例制御を行わない。
【0083】
ライン圧路28には蓄圧アキュムレータ102が接続されており、過剰な作動油を蓄圧して高速動作の際にライン圧路28に作動油を放出する。したがって、オイルポンプ27aを駆動する電動モータ101は必要時のみ作動させることができる。つまり、電動モータ101は、油圧センサ103の検出値が設定値以下となったときに作動し、設定値以上の場合には回転を休止する。
【0084】
ライン圧路28は第1の可逆油圧モータ30bの第1のポート31aに接続され、この可逆油圧モータ30bの第2のポート31bには作動油収容部としてのオイルパン36に接続された案内油路38が接続されている。したがって、ライン圧は可逆油圧モータ30bにトルクを発生させることができる。
【0085】
可逆油圧モータ30bは連結軸32cにより可変容量可逆油圧ポンプ33bに連結されており、油圧モータ30bの発生トルクにより油圧ポンプ33bを駆動することができる。油圧ポンプ33bの第1のポート34aにはプライマリ圧路35が接続されており、油圧ポンプ33bの第2のポート34bには案内油路38が接続されている。したがって、油圧ポンプ33bを油圧モータ30bによって駆動することにより、プライマリ圧を発生させることができる。
【0086】
ライン圧路28は第2の可逆油圧モータ30cの第1のポート31aに接続され、この可逆油圧モータ30cの第2のポート31bには案内油路38が接続されている。したがって、ライン圧は可逆油圧モータ30cにトルクを発生させることができる。
【0087】
可逆油圧モータ30cは連結軸32dにより可変容量可逆油圧ポンプ33cに連結されており、油圧モータ30cの発生トルクにより油圧ポンプ33cを駆動することができる。油圧ポンプ33cの第1のポート34aにはセカンダリ油室26に連通されるセカンダリ油路28aが接続されており、油圧ポンプ33cの第2のポート34bには案内油路38が接続されている。したがって、油圧ポンプ33cを油圧モータ30cによって駆動することにより、セカンダリ圧を発生させることができる。
【0088】
図12に示す変速制御装置にあっては、コントロールユニット70からの信号により、それぞれの可変容量可逆油圧ポンプ33b,33cと電動モータ101作動が制御され、油圧センサ103の検出信号はコントロールユニット70に送られるようになっている。
【0089】
図12に示す場合には、前述したそれぞれの実施の形態と相違し、油圧ポンプ33b,33cに可変容量機構を組み込むようにしており、プライマリ圧Pp とセカンダリ圧Ps はライン圧をPL とすると、以下の式(8),(9) で表される。
【0090】
Pp =Dm1/Dp1×PL …(8)
Ps =Dm2/Dp2×PL …(9)
ここでポンプ要素(Dp1、Dp2)を容量可変とすると、容量を減じることにより高圧が得られることが分かる。そのため、主油圧ポンプであるオイルポンプ27aの吐出圧が低圧であってもプーリを作動させるために高圧を作り出すことができる。
【0091】
この場合には、オイルポンプ27aの吐出圧をクラッチやトルクコンバータの作動圧となるように設定すればこれらを作動させるための油圧回路構成を簡略化することができる。つまり、図2に示す場合には、ライン圧調整弁29によってセカンダリ油室26に供給されるライン圧を調圧するようにし、クラッチやブレーキに対して供給されるクラッチ圧をクラッチ圧調整弁42によってライン圧を減圧して調圧する必要があるが、図12に示す場合には、オイルポンプ27aによってクラッチ圧を発生させるようにすれば、オイルポンプ27aを駆動するための損失を低減させることができる。
【0092】
また、ライン圧を一定とすることができるので、ライン圧路28に蓄圧アキュムレータ102を設置することができる。CVTの作動要素であるクラッチシリンダやプーリ駆動用のシリンダなどはいずれも作動油量が受圧面積と作動ストロークの積で決まるため、アキュムレータ102に必要な体積を蓄圧しておけば、オイルポンプ27aの吐出量を増やすことなく、作動速度に必要な油量を供給することができる。
【0093】
図12に示す連結軸32c,32dに図10に示す無段変速機91を設けるようにして、それぞれの可変容量可逆油圧ポンプ33b,33cを容量固定式の可逆油圧ポンプとするようにしても良く、可変容量可逆油圧ポンプ33b,33cを固定容量式とし、可逆油圧モータ30b,30cを可変容量式の可逆モータとしても良い。同様に、図2に示す可変容量可逆油圧モータ30を固定容量式として、可逆油圧ポンプ33を可変容量式としても良い。
【0094】
また、いずれの実施の形態にあっても、主油圧ポンプとしてのオイルポンプ27,27aはエンジンにより駆動するようにしても、電動モータにより駆動するようにしても良い。
【0095】
本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、ベルト式無段変速機の駆動系については、図1に示す場合に限られず、トルクコンバータ2を有しないタイプなど種々のタイプのものに対して本発明を適用することができる。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、プライマリプーリの溝幅を狭くしてシフトアップする際にはライン圧によって可逆油圧モータを駆動し、この可逆モータにより可逆油圧ポンプを駆動することによって作動油がプライマリ油室内に供給される。一方、プライマリプーリの溝幅を広くしてシフトダウンする際にはプライマリ油室から排出される作動油によって駆動される可逆油圧ポンプを介して可逆油圧モータを駆動してここから吐出される作動油をセカンダリ油室内に供給することができる。これにより、オイルポンプで消費されるエネルギーを低減して動力伝達効率を向上させることができるとともに、変速制御のために必要となるエネルギーを少なくすることができる。
【0097】
本発明によれば、シフトアップするためにプライマリ油室に作動油を供給する際には、ライン圧によって駆動される第1の可逆油圧モータを介して第1の可逆油圧ポンプを駆動して作動油をプライマリ油室に供給し、セカンダリ油室内から排出される作動油によって第2の可逆油圧ポンプを介して第2の可逆油圧モータを駆動し、ここから吐出される作動油をライン圧路に戻す。一方、シフトダウンする際には、プライマリ油室から排出される作動油によって駆動される第1の可逆油圧ポンプを介して第1の可逆油圧モータを駆動し、ここから吐出される作動油をライン圧路に吐出する。ライン圧路に吐出された作動油によって第2の可逆モータを介して第2の可逆油圧ポンプが駆動されてセカンダリ油室内に作動油が供給される。これにより、オイルポンプで消費されるエネルギーを低減して動力伝達効率を向上させることができるとともに、変速制御のために必要となるエネルギーを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルト式無段変速機の駆動系の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置における油圧回路図である。
【図3】図2に示された可逆油圧モータと可逆油圧ポンプを示す断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿う方向の可逆油圧ポンプを示す断面図である。
【図5】図3におけるV−V線に沿う方向の油圧モータの断面図である。
【図6】可逆油圧ポンプと可逆油圧モータの変形例を示す断面図である。
【図7】変速制御を行うためのコントロールユニットを示すブロック図である。
【図8】変速動作がなされるときにおけるプーリの変位量を示す線図である。
【図9】無段変速機をダウンシフトするときにおける作動油の流量を示す特性線図である。
【図10】本発明の他の実施の形態である変速制御装置における油圧回路図である。
【図11】図10に示された無段変速機を示す断面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態である変速制御装置における油圧回路図である。
【符号の説明】
13 プライマリ軸
14 セカンダリ軸
15 プライマリプーリ
16 セカンダリプーリ
17 ベルト
22 プライマリシリンダ
23 プライマリ油室
24 プランジャ
25 セカンダリシリンダ
26 セカンダリ油室
27,27a オイルポンプ
28 ライン圧路
29 ライン圧調整弁
30 可変容量可逆油圧モータ
31a 第1のポート
31b 第2のポート
32 連結軸
33 可逆油圧ポンプ
34a 第1のポート
34b 第2のポート
35 プライマリ圧路
36 オイルパン(作動油収容部)
38 案内油路
70 コントロールユニット(変速制御手段)

Claims (6)

  1. プライマリ軸に装着されるプーリ溝幅可変のプライマリプーリと、セカンダリ軸に装着されるとともに前記プライマリプーリとの間にベルトが掛け渡されるプーリ溝幅可変のセカンダリプーリとを有する無段変速機の変速制御装置であって、
    前記プライマリプーリに設けられ、プライマリ油室を有するプライマリシリンダと、
    前記セカンダリプーリに設けられ、セカンダリ油室を有するセカンダリシリンダと、
    前記セカンダリ油室に油圧源からのライン圧の作動油を供給するライン圧路に連通する第1のポートおよび作動油収容部に接続される油路に連通する第2のポートを備えた可逆油圧モータと、
    前記プライマリ油室に接続されたプライマリ圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備え、前記可逆油圧モータに連結される可逆油圧ポンプと、
    前記可逆油圧モータまたは前記可逆油圧ポンプを流れる作動油の量を変化させる可変容量機構と、
    前記可変容量機構の作動を制御する変速制御手段とを有することを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  2. プライマリ軸に装着されるプーリ溝幅可変のプライマリプーリと、セカンダリ軸に装着されるとともに前記プライマリプーリとの間にベルトが掛け渡されるプーリ溝幅可変のセカンダリプーリとを有する無段変速機の変速制御装置であって、
    前記プライマリプーリに設けられ、プライマリ油室を有するプライマリシリンダと、
    前記セカンダリプーリに設けられ、セカンダリ油室を有するセカンダリシリンダと、
    油圧源からのライン圧の作動油を案内するライン圧路に連通する第1のポートおよび作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備えた第1の可逆油圧モータと、
    前記プライマリ油室に接続されたプライマリ圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備え、前記第1の可逆油圧モータに連結される第1の可逆油圧ポンプと、
    前記ライン圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備えた第2の可逆油圧モータと、
    前記セカンダリ油室に接続されたセカンダリ圧路に連通する第1のポートおよび前記作動油収容部に接続された油路に連通する第2のポートを備え、前記第2の可逆油圧モータに連結される第2の可逆油圧ポンプと、
    前記第1の可逆油圧モータまたは前記第1の可逆油圧ポンプを流れる作動油の量を変化させる第1の可変容量機構と、
    前記第2の可逆油圧モータまたは前記第2の可逆油圧ポンプを流れる作動油の量を変化させる第2の可変容量機構と、
    それぞれの前記可変容量機構の作動を制御する変速制御手段とを有することを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  3. 請求項1または2記載の無段変速機の変速制御装置において、前記可逆油圧モータまたは前記可逆油圧ポンプは可変容量機構が組み込まれた可変容量可逆油圧モータまたは可変容量可逆油圧ポンプであることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  4. 請求項1または2記載の無段変速機の変速制御装置において、前記可逆油圧モータおよび前記可逆油圧ポンプはそれぞれ固定容量の油圧モータおよび油圧ポンプであり、前記油圧モータと前記油圧ポンプとを無段変速機を介して連結し、前記無段変速機を前記可変容量機構としたことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、前記油圧源はエンジンにより駆動されるオイルポンプであることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、前記油圧源は電動モータにより駆動されるオイルポンプと作動油を収容する蓄圧アキュムレータであることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
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