以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
「実施形態1」
図1,2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の制御装置が用いられるシステム全体構成の概略を示す図であり、図1はベルト式無段変速機及び油圧制御装置の構成の概略を示し、図2は電子制御装置の概略を示す。本実施形態のシステムは、主にベルト式無段変速機14、油圧制御装置40、及び電子制御装置42によって構成され、例えば車両に搭載されるものである。
ベルト式無段変速機14は、入力軸26に連結されたプライマリプーリ30、出力軸36に連結されたセカンダリプーリ32、及びプライマリプーリ30とセカンダリプーリ32とに巻き掛けられた略V字型断面の無端ベルト34を備えている。入力軸26(プライマリプーリ30)には、エンジン10の発生するトルクがトルクコンバータ及び前後進切替装置(ともに図示せず)を介して伝達される。ベルト式無段変速機14は、入力軸26に伝達されたトルクを変速して出力軸36へ伝達する。出力軸36に伝達されたトルクは、駆動負荷(例えば図示しない駆動輪)へ伝達される。
プライマリプーリ30は、入力軸26方向に移動可能なプライマリ可動シーブ30aとプライマリ固定シーブ30bとで構成されている。同様に、セカンダリプーリ32は、出力軸36方向に移動可能なセカンダリ可動シーブ32aとセカンダリ固定シーブ32bとで構成されている。プライマリ可動シーブ30aには、プライマリプーリ油室30cに供給された作動油の圧力Ppによって入力軸26方向の推力が作用する。同様に、セカンダリ可動シーブ32aには、セカンダリプーリ油室32cに供給された作動油の圧力Psによって出力軸36方向の推力が作用する。プライマリ可動シーブ30a及びセカンダリ可動シーブ32aが軸方向に移動することにより、無端ベルト34がプライマリプーリ30及びセカンダリプーリ32に巻き掛かる部分の回転半径が変化する。これによって、ベルト式無段変速機14の変速比γ(=プライマリプーリ30の回転速度Nin/セカンダリプーリ32の回転速度Nout)が連続的に変化する。
なお、本実施形態のベルト式無段変速機14については、プライマリ可動シーブ30aがプライマリプーリ油室30cに供給された油圧Ppを入力軸26方向(推力発生方向)に受ける受圧面積A1が、セカンダリ可動シーブ32aがセカンダリプーリ油室32cに供給された油圧Psを出力軸36方向(推力発生方向)に受ける受圧面積A2と等しくなるように設計されている。
ベルト式無段変速機14のプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cに供給される油圧は、油圧制御装置40によって供給され、それらの油圧は電子制御装置42によって制御される。
「油圧制御装置の構成」
次に、油圧制御装置40の主な構成について説明する。油圧制御装置40は、油圧供給用ポンプ54、変速用ポンプ60、レギュレータ56,58、切替弁64、及び逆止弁72を備えている。
油圧供給用ポンプ54はエンジン10が発生するトルクを利用して回転駆動され、リザーバ52に貯溜された作動油を汲み上げて吐出する。油圧供給用ポンプ54が吐出した作動油は、プライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cに供給される他に、各部の潤滑や前後進切替装置のクラッチC1への供給油圧等にも用いられる。
レギュレータ56は、油圧供給用ポンプ54の出口と圧力ライン66との間に設けられており、油圧供給用ポンプ54の出口における作動油の圧力PLが設定圧力となるように調整する。レギュレータ56が開くと、油圧供給用ポンプ54の出口における作動油が圧力ライン66へ流出する。また、レギュレータ58は、圧力ライン66とリザーバ52との間に設けられており、圧力ライン66における作動油の圧力Pdが設定圧力となるように調整する。レギュレータ58が開くと、圧力ライン66における作動油がリザーバ52へドレインされる。
変速用ポンプ60は、電動式のポンプであり、変速用モータ62によって回転駆動される。そして、本実施形態では、変速用ポンプ60を回転駆動させることで、ベルト式無段変速機14の変速比の変更を行うことができる。すなわち、変速用ポンプ60は、プライマリプーリ油室30cの作動油をセカンダリプーリ油室32cへ移動させることができ、これによって、減速動作(ダウンシフト)を行うことができる。さらに、変速用ポンプ60は、セカンダリプーリ油室32cの作動油をプライマリプーリ油室30cへ移動させることもでき、これによって、増速動作(アップシフト)を行うことができる。このように、本実施形態の変速用ポンプ60は可逆ポンプであり、作動油を変速用ポンプ60によってプライマリプーリ油室30cとセカンダリプーリ油室32cとの間で可逆的に移動させることができる。そして、プーリ油室30c,32c内の作動油をリザーバ52へドレインすることなく変速動作を行うことができるので、油圧制御装置40の駆動効率を向上させることができる。
切替弁64は、プライマリプーリ油室30cを圧力ライン66と連通させるとともにセカンダリプーリ油室32cと圧力ライン66の連通を遮断するプライマリ供給状態(図1の右側の状態)と、セカンダリプーリ油室32cを圧力ライン66と連通させるとともにプライマリプーリ油室30cと圧力ライン66の連通を遮断するセカンダリ供給状態(図1の左側の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでの切替弁64は、パイロット圧切替弁で構成することができる。そして、プライマリプーリ油室30cにおける作動油の圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cにおける作動油の圧力Psが、パイロット圧としてスプール(図示せず)の両端にそれぞれ供給される。ここで、スプールの一端部が圧力Ppを軸方向に受ける受圧面積S1が、スプールの他端部が圧力Psを軸方向に受ける受圧面積S2に等しくなるように設計されている。これによって、S1/S2がA1/A2に等しくなるように設計される。
Pp×S1>Ps×S2、すなわちPp×A1>Ps×A2(本実施形態では、A1=A2、S1=S2のため、Pp>Ps)のときは、切替弁64は、前述のセカンダリ供給状態に切り替わる。一方、Ps×S2>Pp×S1、すなわちPs×A2>Pp×A1(本実施形態では、A1=A2、S1=S2のため、Ps>Pp)のときは、切替弁64は、前述のプライマリ供給状態に切り替わる。また、Ps×S2=Pp×S1、すなわちPs×A2=Pp×A1(本実施形態では、A1=A2、S1=S2のため、Ps=Pp)でありスプールが中立位置にあるときは、スプールによりプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cと低圧ライン66との連通が遮断される(図1の中央の状態)。
このように、本実施形態の切替弁64は、プライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cのうち、供給された作動油の圧力が小さい方のプーリ油室を圧力ライン66と連通させる。これによって、プーリ推力(ベルト挟圧力)が小さいと判断される方のプーリ油室に圧力ライン66における作動油の圧力Pdを供給することができるので、ベルト式無段変速機14の駆動状態に応じて必要なプーリ推力(ベルト挟圧力)を安定して確保することができる。したがって、無端ベルト34の滑りを確実に抑制することができる。ここで、圧力ライン66における作動油の圧力Pdをレギュレータ58によって調整することで、プーリ推力(ベルト挟圧力)を調整することができる。
圧力ライン66とセカンダリプーリ油室32cを接続するためのバイパス路74が切替弁64をバイパスして設けられており、バイパス路74には逆止弁72及び絞り(オリフィス)80が設けられている。逆止弁72は、圧力ライン66からセカンダリプーリ油室32cへの作動油の流れを許容するとともに、セカンダリプーリ油室32cから圧力ライン66への作動油の流れを遮断する。前述したように、切替弁64のスプールが中立位置にあるときは、スプールによりプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cと圧力ライン66との連通が遮断される。ただし、圧力ライン66から逆止弁72を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給してセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを増大させることができるので、切替弁64を前述のプライマリ供給状態に切り替えることができる。このとき、圧力ライン66から絞り(オリフィス)80を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油が供給されることで、セカンダリプーリ油室32cの圧力Psの急変が抑止される。
「電子制御装置の構成」
本実施形態においては、圧力ライン66からプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力Pdを供給することでベルト挟圧力を作用させる挟圧力制御系44と、プライマリプーリ油室30cとセカンダリプーリ油室32cの間で作動油を変速用ポンプ60により可逆的に移動させることで変速比γを変更する変速制御系46と、が構成される。そして、本実施形態の電子制御装置42は、挟圧力制御系44の制御と、変速制御系46の制御と、を行う。以下、電子制御装置42の主な構成について説明する。図2に示すように、電子制御装置42は、ベルト挟圧力制御部81と、変速制御部83と、を備えている。
ベルト挟圧力制御部81は、挟圧力制御指令値u1によりレギュレータ58の駆動状態を制御して圧力ライン66の圧力Pdを制御する。これによって、ベルト挟圧力(プライマリプーリ油室30cの圧力Ppとセカンダリプーリ油室32cの圧力Psの低い方の圧力min{Pp,Ps})をベルト挟圧力目標値Pdrに追従させるための挟圧力制御が行われ、挟圧力制御系44の制御が行われる。そして、ベルト挟圧力制御部81は、ベルト挟圧力目標値算出部94及び挟圧力制御指令値算出部95を備えている。
ベルト挟圧力目標値算出部94は、プライマリプーリ30への入力トルクTin及び変速比γに基づいて挟圧力制御系44の目標値であるベルト挟圧力目標値Pdrを設定して挟圧力制御指令値算出部95へ出力する。ここで、入力トルクTinについては、例えばスロットル開度A、エンジン回転速度Ne、及びプライマリプーリ30の回転速度Nin(いずれも図示しないセンサにより検出)に基づいて推定することができる。また、変速比γについては、例えば図示しないセンサにより検出したプライマリプーリ30の回転速度Nin及びセカンダリプーリ32の回転速度Noutから算出することができる。
挟圧力制御指令値算出部95は、ベルト挟圧力目標値Pdr及び検出したベルト挟圧力(圧力ライン66の圧力)Pdに基づいて挟圧力制御指令値u1を算出して出力する。ここでの挟圧力制御指令値u1は、例えばベルト挟圧力目標値Pdrに基づくフィードフォワード制御指令値u1ffと、ベルト挟圧力目標値Pdrと検出したベルト挟圧力(圧力ライン66の圧力)Pdの偏差に基づくフィードバック制御指令値u1fbと、の重ね合わせにより算出することができる。この場合は、ベルト挟圧力制御部81は、フィードフォワード制御とフィードバック制御の両方を行う。ただし、挟圧力制御指令値算出部95は、挟圧力制御指令値u1をベルト挟圧力目標値Pdrに基づくフィードフォワード制御指令値u1ffにより算出し、フィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行うことも可能である。あるいは、挟圧力制御指令値算出部95は、挟圧力制御指令値u1をベルト挟圧力目標値Pdrと検出したベルト挟圧力(圧力ライン66の圧力)Pdの偏差に基づくフィードバック制御指令値u1fbにより算出し、フィードフォワード制御を行わずにフィードバック制御を行うことも可能である。
変速制御部83は、変速制御指令値u2により変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動トルクの制御を行う。これによって、ベルト式無段変速機14の変速比γを目標変速比γrefに追従させるための変速制御が行われ、変速制御系46の制御が行われる。そして、変速制御部83は、目標変速比算出部84及び変速制御指令値算出部85を備えている。
目標変速比算出部84は、スロットル開度A、エンジン回転速度Ne、及び車速V(いずれも図示しないセンサにより検出)に基づいて、変速制御系46の目標値である目標変速比γrefを設定して変速制御指令値算出部85へ出力する。
変速制御指令値算出部85は、目標変速比γref及び検出した変速比γに基づいて、変速制御指令値u2を算出して出力する。ここでの変速制御指令値u2は、例えば目標変速比γref及に基づくフィードフォワード制御指令値u2ffと、目標変速比γrefと検出した変速比γの偏差に基づくフィードバック制御指令値u2fbと、の重ね合わせにより算出することができる。この場合は、変速制御部83は、フィードフォワード制御とフィードバック制御の両方を行う。ただし、変速制御指令値算出部85は、変速制御指令値u2を目標変速比γref及に基づくフィードフォワード制御指令値u2ffにより算出し、フィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行うことも可能である。あるいは、変速制御指令値算出部85は、変速制御指令値u2を目標変速比γrefと検出した変速比γの偏差に基づくフィードバック制御指令値u2fbにより算出し、フィードフォワード制御を行わずにフィードバック制御を行うことも可能である。
そして、本実施形態では、ベルト挟圧力目標値算出部94は、入力トルクTin及び変速比γの他に、変速制御部83による変速制御系46の制御状態にも基づいてベルト挟圧力目標値Pdrを設定する。これによって、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の変化分を補償する。ここでの変速制御部83による変速制御系46の制御状態としては、例えば変速制御系46の観測値や変速制御指令値u2(変速制御系46への制御指令値)や目標変速比γref(変速制御系46の目標値)を用いることができ、さらに、これらのうちの複数を用いることもできる。そして、変速制御系46の観測値としては、例えば変速用ポンプ60(変速用モータ62)の回転速度ωmと、変速用モータ62の電流Imと、のいずれか1つ以上を用いることができる。図2は、変速制御部83による変速制御系46の制御状態の一例として、変速用ポンプ60の回転速度ωmと、変速制御指令値u2と、を用いてベルト挟圧力目標値Pdrを設定する場合を示している。
また、変速用ポンプ60(変速用モータ62)の回転速度ωmについては、図示しない回転速度センサにより直接検出することもできるが、回転速度センサを用いずに推定することもできる。図3は、その一例として、回転速度推定部96が変速制御指令値u2及び変速比γに基づいて変速用ポンプ60の回転速度ωmを推定する場合を示している。この場合は、ベルト挟圧力目標値算出部94は、回転速度推定部96により推定された変速用ポンプ60の回転速度ωmを用いてベルト挟圧力目標値Pdrを設定する。ここでの回転速度推定部96は、例えば、変速制御指令値u2(変速制御系46への制御入力)及び変速比γ(変速制御系46の制御出力)から変速用ポンプ60の回転速度ωmを推定する変速制御系46に対するオブザーバにより構成することができる。
「電子制御装置による処理」
次に、電子制御装置42のベルト挟圧力目標値算出部94がベルト挟圧力目標値Pdrを設定する処理の一例について、図4のフローチャートを用いて説明する。この処理は、所定時間おきに繰り返して実行される。
まずステップ(以下Sとする)1においては、変速制御指令値算出部85からの変速制御指令値u2が所定範囲内−ul≦u2≦ulにあるか否かが判定される。ここで、ulは正の閾値である。また、ここでは、セカンダリプーリ油室32cの圧力Psがプライマリプーリ油室30cの圧力Ppより高くなるように変速用モータ62を駆動するときの変速制御指令値u2を正の値とし、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppがセカンダリプーリ油室32cの圧力Psより高くなるように変速用モータ62を駆動するときの変速制御指令値u2を負の値としている。S1の判定結果がNOの場合は、S2に進む。一方、S1の判定結果がYESの場合は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要がないと判定してS3に進む。
S2においては、変速用ポンプ60の回転速度ωmが所定範囲内−ωl≦ωm≦ωlにあるか否かが判定される。ここで、ωlは正の閾値である。また、ここでは、プライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を移動させる(減速動作を行う)ときの変速用ポンプ60の回転速度ωmを正の値とし、セカンダリプーリ油室32cからプライマリプーリ油室30cへ作動油を移動させる(増速動作を行う)ときの変速用ポンプ60の回転速度ωmを負の値としている。S2の判定結果がYESの場合は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要がないと判定してS3に進む。一方、S2の判定結果がNOの場合は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があると判定してS4に進む。
S3においては、ベルト挟圧力目標値Pdrとして、ベルト挟圧力理論値Pdr0が設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。ここでのベルト挟圧力理論値Pdr0は、以下の(1)式により表され、入力トルクTin及び変速比γに基づいて設定される。
Pdr0=SF×Tin×cos(α)/(2×μ×Rin×A) (1)
(1)式において、SFは安全係数(1以上の係数)、αはプーリの傾き角、μは無端ベルト34とプーリとの間の摩擦係数、Rinは無端ベルト34のプライマリプーリ30への掛かり半径(変速比γから算出)、Aは可動シーブ30a,32aの受圧面積である。
S4においては、ベルト挟圧力目標値Pdrとして、前述のベルト挟圧力理論値Pdr0をベルト挟圧力補正値ΔPdrで補正した値Pdr0+ΔPdrが設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。ここでのベルト挟圧力補正値ΔPdrは、変速制御指令値u2及び変速用ポンプ60の回転速度ωmに基づいて設定される。そして、変速制御指令値u2の絶対値及び変速用ポンプ60の回転速度ωmの絶対値の少なくとも一方の増大に対して、ベルト挟圧力補正値ΔPdrを増大させてベルト挟圧力目標値Pdrを増大させる。
なお、以上の処理においては、変速比γ及びベルト挟圧力min{Pp,Ps}に基づいて閾値ul、ωlを設定し、さらに変速比γ及びベルト挟圧力min{Pp,Ps}の少なくとも一方の変化に対して閾値ul、ωlを変化させてもよい。
また、以上の処理においては、変速制御指令値u2の絶対値が閾値ulより大きい条件と、変速用ポンプ60の回転速度ωm(変速制御系46の観測値)の絶対値が閾値ulより大きい条件と、の両方が成立した場合に、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があると判定している。ただし、これらの変速制御指令値u2に関する条件と変速制御系46の観測値に関する条件のいずれか一方が成立した場合に、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があると判定することもできる。さらに、変速制御指令値u2に関する条件あるいは変速制御系46の観測値に関する条件の代わりに、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が正の閾値Δγlより大きい条件を用いることもできる。このように、本実施形態においては、これらの変速制御指令値u2に関する条件、変速制御系46の観測値に関する条件、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtに関する条件のいずれか1つ以上を用いて、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があるか否かを判定することができる。また、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtに関する条件で用いられる閾値Δγlについては、変速比γ及びベルト挟圧力min{Pp,Ps}の少なくとも一方の変化に対して変化させてもよい。
また、以上の処理においては、変速制御指令値u2の絶対値及び変速用ポンプ60の回転速度ωm(変速制御系46の観測値)の絶対値の少なくとも一方の増大に対して、ベルト挟圧力補正値ΔPdr(ベルト挟圧力目標値Pdr)を増大させている。ただし、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtに基づいてベルト挟圧力補正値ΔPdrを設定し、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値の増大に対して、ベルト挟圧力補正値ΔPdr(ベルト挟圧力目標値Pdr)を増大させることもできる。このように、本実施形態においては、変速制御指令値u2、変速制御系46の観測値、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtのいずれか1つ以上に基づいてベルト挟圧力補正値ΔPdrを設定し、変速制御指令値u2の絶対値、変速制御系46の観測値の絶対値、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値のいずれか1つ以上の増大に対して、ベルト挟圧力補正値ΔPdr(ベルト挟圧力目標値Pdr)を増大させることができる。
ここで、一例として変速制御部83により急減速動作が行われるときを考えると、変速制御指令値u2及び変速用ポンプ60の回転速度ωmが大きく、プライマリプーリ油室30cから流出する作動油の流量が大きいため、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppが大きく低下する。このとき、切替弁64が前述のプライマリ供給状態に切り替わり、圧力ライン66からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力Pdが供給されることで、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp(ベルト挟圧力)の低下分が補償される。ただし、プライマリプーリ油室30cからの作動油の流出流量が大きいときは、圧力ライン66からの圧力Pdの供給によるプライマリプーリ油室30cの圧力Ppの補償に応答遅れが発生し、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp(ベルト挟圧力)が一時的に圧力ライン66の圧力Pdより低くなる。そのため、無端ベルト34に滑りが発生してしまうことになる。
これに対して、本実施形態のベルト挟圧力目標値算出部94は、例えば急減速動作時のように変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があると判定したときは、ベルト挟圧力目標値Pdrを変速制御系46の制御状態に基づくベルト挟圧力補正値ΔPdrにより補正する。これによって、例えば急減速動作が行われてプライマリプーリ油室30cの圧力Ppが圧力ライン66の圧力Pdに追従できずに応答遅れが発生しても、圧力ライン66の圧力Pdを補正値ΔPdr分増大させることができるので、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp(ベルト挟圧力)の低下分を十分に補償することができる。同様に、急増速動作が行われてセカンダリプーリ油室32cの圧力Psが圧力ライン66の圧力Pdに追従できずに応答遅れが発生しても、セカンダリプーリ油室32cの圧力Ps(ベルト挟圧力)の低下分を十分に補償することができ、無端ベルト34の滑りを抑止することができる。
このように、本実施形態においては、挟圧力制御系44の制御及び変速制御系46の制御を協調させて行うことで、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を適切に補償することができる。したがって、挟圧力制御系44の制御及び変速制御系46の制御を、両制御間の相互干渉が発生することなく適切に行うことができる。例えば、変速速度を上昇させても、無端ベルト34の滑りを抑止することができる。
また、挟圧力制御指令値算出部95がフィードバック制御指令値u1fbを用いて挟圧力制御指令値u1を算出する、すなわちフィードバック制御を行う構成のときに、挟圧力制御指令値算出部95が変速制御部83による変速制御系46の制御状態に基づいて挟圧力制御指令値u1を算出する場合を考える。その場合は、変速制御系46の制御状態に応じて挟圧力制御指令値u1をフィードフォワード補償しても、圧力ライン66の圧力Pdがベルト挟圧力目標値Pdrに一致するようにフィードバック制御が行われることで、圧力ライン66の圧力Pdのフィードフォワード補償分が打ち消されることになる。そのため、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を十分に補償することが困難となり、無端ベルト34の滑りを十分に抑止することが困難となる。
これに対して、本実施形態においては、挟圧力制御指令値u1ではなくベルト挟圧力目標値Pdrの方を変速制御系46の制御状態に応じて補正している。そのため、圧力ライン66の圧力Pdがベルト挟圧力目標値Pdrに一致するようにフィードバック制御を行っても、圧力ライン66の圧力Pdの補償分がフィードバック制御により打ち消されることはない。したがって、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を十分に補償することができ、無端ベルト34の滑りを確実に抑止することができる。
また、変速制御系46の観測値によって、変速制御部83による変速制御系46の制御状態を精度よく把握することができる。したがって、変速制御系46の観測値を用いてベルト挟圧力目標値Pdrを補正することで、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を精度よく補償することができる。
また、変速制御指令値u2(変速制御系46への制御指令値)によって、変速制御部83による変速制御系46の制御状態を変速制御系46の観測用のセンサを用いることなく把握することができる。したがって、変速制御指令値u2を用いてベルト挟圧力目標値Pdrを補正することで、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を変速制御系46の観測用のセンサを用いることなく適切に補償することができる。
また、目標変速比γref(変速制御系46の目標値)の時間変化率dγref/dtによっても、変速制御部83による変速制御系46の制御状態を変速制御系46の観測用のセンサを用いることなく把握することができる。したがって、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtを用いてベルト挟圧力目標値Pdrを補正することで、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を変速制御系46の観測用のセンサを用いることなく適切に補償することができる。さらに、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の補償の応答遅れを減らすことができる。
また、変速制御系46の観測値、変速制御指令値u2、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtのいずれか2つ以上によって、変速制御部83による変速制御系46の制御状態をより精度よく把握することができる。したがって、変速制御系46の観測値、変速制御指令値u2、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtのいずれか2つ以上を用いてベルト挟圧力目標値Pdrを補正することで、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分をより精度よく補償することができる。
「電子制御装置の他の構成及びその処理」
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
図5に示す構成においては、ベルト挟圧力目標値算出部94は、プライマリプーリ30への入力トルクTin及び変速比γに基づいてベルト挟圧力目標値Pdrを設定して挟圧力制御指令値算出部95へ出力する。そして、挟圧力制御指令値算出部95は、ベルト挟圧力目標値Pdrの他に、変速制御部83による変速制御系46の制御状態にも基づいて挟圧力制御指令値u1を算出して出力する。これによって、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の変化分を補償する。図5は、変速制御部83による変速制御系46の制御状態の一例として、変速用ポンプ60の回転速度ωmと、目標変速比γref(変速制御系46の目標値)と、を用いて挟圧力制御指令値u1を算出する場合を示している。ここでの変速用ポンプ60の回転速度ωmについては、回転速度センサにより直接検出してもよいし、図3に示す構成のように回転速度推定部96により推定してもよい。
さらに、挟圧力制御指令値算出部95は、挟圧力制御指令値u1を、ベルト挟圧力目標値Pdrと検出したベルト挟圧力(圧力ライン66の圧力)Pdの偏差に基づくフィードバック制御指令値を用いずに、ベルト挟圧力目標値Pdr及び変速制御系46の制御状態に基づくフィードフォワード制御指令値により算出する。したがって、ベルト挟圧力制御部81は、フィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行う。なお、他の構成については図2に示す構成と同様であるため説明を省略する。
次に、電子制御装置42の挟圧力制御指令値算出部95が挟圧力制御指令値u1を算出する処理の一例について、図6のフローチャートを用いて説明する。この処理は、所定時間おきに繰り返して実行される。
まずS101においては、目標変速比算出部84からの目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtが所定範囲内−Δγl≦dγref/dt≦Δγlにあるか否かが判定される。ここで、Δγlは正の閾値である。S101の判定結果がNOの場合は、S102に進む。一方、S101の判定結果がYESの場合は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要がないと判定してS103に進む。
S102においては、S2と同様に、変速用ポンプ60の回転速度ωmが所定範囲内−ωl≦ωm≦ωlにあるか否かが判定される。S102の判定結果がYESの場合は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要がないと判定してS103に進む。一方、S102の判定結果がNOの場合は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があると判定してS104に進む。
S103においては、挟圧力制御指令値u1として、ベルト挟圧力目標値Pdrに基づくフィードフォワード制御指令値u1ffが設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。
S104においては、挟圧力制御指令値u1として、前述のフィードフォワード制御指令値u1ffを挟圧力制御補正値Δu1で補正した値u1ff+Δu1が設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。ここでの挟圧力制御補正値Δu1は、目標変速比γref及び変速用ポンプ60の回転速度ωmに基づいて設定される。そして、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値及び変速用ポンプ60の回転速度ωmの絶対値の少なくとも一方の増大に対して、挟圧力制御補正値Δu1を増大させて挟圧力制御補正値Δu1を増大させる。ここでは、挟圧力制御指令値u1が増大するときに、ベルト挟圧力Pd(圧力ライン66の圧力)が増大するものとしている。
なお、以上の処理においては、変速比γ及びベルト挟圧力min{Pp,Ps}の少なくとも一方の変化に対して閾値Δγl、ωlを変化させてもよい。
また、以上の処理においては、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が閾値Δγlより大きい条件と、変速用ポンプ60の回転速度ωm(変速制御系46の観測値)の絶対値が閾値ulより大きい条件と、の両方が成立した場合に、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があると判定している。ただし、図6のフローチャートに示す処理においても、図4のフローチャートに示す処理と同様に、前述の変速制御指令値u2に関する条件、変速制御系46の観測値に関する条件、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtに関する条件のいずれか1つ以上を用いて、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要があるか否かを判定することができる。
また、以上の処理においては、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値及び変速用ポンプ60の回転速度ωm(変速制御系46の観測値)の絶対値の少なくとも一方の増大に対して、挟圧力制御補正値Δu1(挟圧力制御指令値u1)を増大させている。ただし、変速制御指令値u2に基づいて挟圧力制御補正値Δu1を設定し、変速制御指令値u2の絶対値の増大に対して、挟圧力制御補正値Δu1(挟圧力制御指令値u1)を増大させることもできる。このように、図6のフローチャートに示す処理においても、変速制御指令値u2、変速制御系46の観測値、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtのいずれか1つ以上に基づいて挟圧力制御補正値Δu1を設定し、変速制御指令値u2の絶対値、変速制御系46の観測値の絶対値、及び目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値のいずれか1つ以上の増大に対して、挟圧力制御補正値Δu1(挟圧力制御指令値u1)を増大させることができる。
ここで、挟圧力制御指令値算出部95がフィードバック制御指令値を用いて挟圧力制御指令値u1を算出する、すなわちフィードバック制御を行う場合を考える。その場合は、挟圧力制御補正値Δu1により挟圧力制御指令値u1を補正しても、圧力ライン66の圧力Pdがベルト挟圧力目標値Pdrに一致するようにフィードバック制御が行われることで、圧力ライン66の圧力Pdの補正分Δu1が打ち消されることになる。そのため、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を十分に補償することが困難となる。
これに対して、本実施形態の挟圧力制御指令値算出部95は、フィードバック制御指令値を用いずにフィードフォワード制御指令値により挟圧力制御指令値u1を算出する、すなわちフィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行う。そのため、圧力ライン66の圧力Pdの補正分Δu1が、フィードバック制御が行われることで打ち消されることはない。したがって、図5に示す構成においても、変速制御部83による急変速動作が行われてベルト挟圧力min{Pp,Ps}が圧力ライン66の圧力Pdに追従できずに応答遅れが発生しても、圧力ライン66の圧力Pdを補正値Δu1分増大させることができるので、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を十分に補償することができる。したがって、変速速度を上昇させても、無端ベルト34の滑りを確実に抑止することができる。
ここで、本願発明者が行った実験の結果を図7,8に示す。図7は、挟圧力制御系44の制御及び変速制御系46の制御を独立して行う(変速制御系46の制御状態に応じてベルト挟圧力目標値Pdr及び挟圧力制御指令値u1を補正しない)従来における制御の実験結果である。一方、図8は、変速制御系46の制御状態として変速制御指令値u2及び変速用ポンプ60の回転速度ωmを用いてベルト挟圧力目標値Pdrを算出する本実施形態における制御の実験結果である。図7の実験結果では、変速用モータ62(変速用ポンプ60)による変速動作に伴い、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が大きく低下してベルト挟圧力目標値Pdrの最小値である0.2MPaを下回っている。これに対して図8の実験結果では、変速用モータ62(変速用ポンプ60)による変速動作が行われても、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}がベルト挟圧力目標値Pdrの最小値である0.2MPaを下回ることはなく、変速動作により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を十分に補償できている。したがって、本実施形態における制御の有効性が理解される。
なお、特許文献2,3には、変速用の電動オイルポンプを駆動制御する第2制御器からの制御信号によるフィードフォワード補償を加えて、ベルト挟圧力供給用の電動オイルポンプを駆動制御する第1制御器が示されている。しかし、特許文献2,3の第1制御器は、フィードフォワード補償とともにフィードバック制御も行っている。そのため、特許文献2,3においては、前述したように、ベルト挟圧力のフィードフォワード補償分がフィードバック制御により打ち消されることで、ベルト挟圧力の低下分を十分に補償することが困難となる。これに対して、本実施形態の図2,3に示す構成においては、挟圧力制御指令値算出部95から出力される挟圧力制御指令値u1ではなく挟圧力制御指令値算出部95に入力されるベルト挟圧力目標値Pdrの方を補償しているため、挟圧力制御指令値算出部95がフィードバック制御を行っても、ベルト挟圧力の補償分がフィードバック制御により打ち消されることはない。そして、本実施形態の図5に示す構成においては、挟圧力制御指令値算出部95がフィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行うため、ベルト挟圧力の補償分がフィードバック制御により打ち消されることはない。
また、特許文献2,3には、第1制御器が変速制御系の観測値や変速制御系の目標値によるフィードフォワード補償を加えてベルト挟圧力供給用の電動オイルポンプを駆動制御することについては示されていない。本実施形態のように、変速制御系の観測値を用いる方が、変速制御系の制御状態をより正確に反映させてベルト挟圧力の補償を行うことができる。そして、変速制御系の目標値の時間変化を捉えてベルト挟圧力の補償に反映させた方が、ベルト挟圧力の補償の応答遅れを減らすことができる。
なお、図5に示す構成において、挟圧力制御指令値算出部95は、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の低下分を補償する必要がないと判定した場合は、挟圧力制御指令値u1を、ベルト挟圧力目標値Pdrと検出したベルト挟圧力(圧力ライン66の圧力)Pdの偏差に基づくフィードバック制御指令値u1fbを用いて算出し、フィードバック制御を行うこともできる。その場合は、図6のフローチャートのS103において、挟圧力制御指令値u1として、ベルト挟圧力目標値Pdrに基づくフィードフォワード制御指令値u1ffとフィードバック制御指令値u1fbとを重ね合わせた制御指令値u1ff+u1fbを設定する。あるいはS103において、挟圧力制御指令値u1として、フィードバック制御指令値u1fbを設定する。
また、図9に示す構成のように、挟圧力制御指令値算出部95は、ベルト挟圧力目標値Pdrの他に、変速制御系46の観測値(例えば変速用ポンプ60の回転速度ωm)及び変速制御指令値u2にも基づいて挟圧力制御指令値u1を算出して出力することもできる。図9に示す構成によっても、変速制御系46の制御により生じるベルト挟圧力min{Pp,Ps}の変化分を補償することができる。なお、図9の他の構成については、図5に示す構成と同様であるため説明を省略する。
「実施形態2」
図10は、本発明の実施形態2に係る無段変速機の制御装置の構成の概略を示す図であり、電子制御装置42の構成の概略を示す。挟圧力制御部81のベルト挟圧力目標値算出部94は、プライマリプーリ30への入力トルクTin及び変速比γに基づいてベルト挟圧力目標値Pdrを設定して挟圧力制御指令値算出部95へ出力する。挟圧力制御指令値算出部95は、ベルト挟圧力目標値Pdr及び検出したベルト挟圧力(圧力ライン66の圧力)Pdに基づいて挟圧力制御指令値u1を算出して出力する。ここでの挟圧力制御指令値u1は、例えばフィードフォワード制御指令値u1ffとフィードバック制御指令値u1fbとの重ね合わせにより算出することができる。ただし、挟圧力制御指令値算出部95は、挟圧力制御指令値u1をフィードバック制御指令値u1fbを用いずにフィードフォワード制御指令値u1ffにより算出してもよいし、挟圧力制御指令値u1をフィードフォワード制御指令値u1ffを用いずにフィードバック制御指令値u1fbにより算出してもよい。
変速制御部83の目標変速比算出部84は、スロットル開度A、エンジン回転速度Ne、及び車速Vに基づいて目標変速比γrefを設定して変速制御指令値算出部85へ出力する。変速制御指令値算出部85は、目標変速比γref及び検出した変速比γに基づいて変速制御指令値u2を算出して出力する。ここでの変速制御指令値u2は、例えばフィードフォワード制御指令値u2ffとフィードバック制御指令値u2fbと、の重ね合わせにより算出することができる。ただし、変速制御指令値算出部85は、変速制御指令値u2をフィードバック制御指令値u2fbを用いずにフィードフォワード制御指令値u2ffにより算出してもよいし、変速制御指令値u2をフィードフォワード制御指令値u2ffを用いずにフィードバック制御指令値u2fbにより算出してもよい。
そして、本実施形態では、目標変速比算出部84は、スロットル開度A、エンジン回転速度Ne、及び車速Vの他に、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態にも基づいて目標変速比γrefを設定する。これによって、所定挟圧力Plm以上のベルト挟圧力min{Pp,Ps}が保たれるように変速制御系46の制御を行う。ここでの挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態としては、挟圧力制御系44の観測値や挟圧力制御指令値u1(挟圧力制御系44への制御指令値)やベルト挟圧力目標値Pdr(挟圧力制御系44の目標値)を用いることができ、さらに、これらのうちの複数を用いることもできる。そして、挟圧力制御系44の観測値としては、例えばベルト挟圧力Pd(圧力ライン66の圧力)を用いることができる。図10は、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態の一例として、ベルト挟圧力Pd(圧力ライン66の圧力)と、挟圧力制御指令値u1と、を用いて目標変速比γrefを設定する場合を示している。なお、油圧制御装置40等の他の構成については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
「電子制御装置による処理」
次に、電子制御装置42の目標変速比算出部84が目標変速比γrefを設定する処理の一例について、図11のフローチャートを用いて説明する。この処理は、所定時間おきに繰り返して実行される。
まずS201においては、挟圧力制御指令値u1が閾値uu以上であるか否かが判定される。ここでは、挟圧力制御指令値u1が増大するときに、ベルト挟圧力Pd(圧力ライン66の圧力)が増大するものとしている。S201の判定結果がNOの場合は、S202に進む。一方、S201の判定結果がYESの場合は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下しないと予測してS203に進む。
S202においては、圧力ライン66の圧力Pdが閾値Pu以上であるか否かが判定される。S202の判定結果がYESの場合は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下しないと予測してS203に進む。一方、S202の判定結果がNOの場合は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下すると予測してS204に進む。
S203においては、目標変速比γrefとして、スロットル開度A、エンジン回転速度Ne、及び車速Vに基づく目標値であるγ0が設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。
S204においては、目標変速比γrefとして、前述のγ0を変速比補正値Δγrefで補正した値γref+Δγrefが設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。ここでの変速比補正値Δγrefは、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が正の閾値Δγu以下になるように、挟圧力制御指令値u1及び圧力ライン66の圧力Pdに基づいて設定される。これによって、変速速度が制限される。そして、挟圧力制御指令値u1及び圧力ライン66の圧力Pdの少なくとも一方の減少に対して目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が減少するように、変速比補正値Δγrefが設定される。
なお、以上の処理においては、変速比γ及び入力トルクTinに基づいて閾値uu、Puを設定し、さらに変速比γ及び入力トルクTinの少なくとも一方の変化に対して閾値uu、Puを変化させてもよい。
また、以上の処理においては、挟圧力制御指令値u1が閾値uuより小さい条件と、圧力ライン66の圧力Pd(挟圧力制御系44の観測値)が閾値Puより小さい条件と、の両方が成立した場合に、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下すると予測している。ただし、これらの挟圧力制御指令値u1に関する条件と挟圧力制御系44の観測値に関する条件のいずれか一方が成立した場合に、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下すると予測することもできる。さらに、挟圧力制御指令値u1に関する条件あるいは挟圧力制御系44の観測値に関する条件の代わりに、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrが閾値ΔPdruより大きい条件を用いることもできる。このように、本実施形態においては、これらの挟圧力制御指令値u1に関する条件、挟圧力制御系44の観測値に関する条件、及びベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrに関する条件のいずれか1つ以上を用いて、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下するか否かを予測することができる。また、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrに関する条件で用いられる閾値ΔPdruについては、変速比γ及びベルト挟圧力min{Pp,Ps}の少なくとも一方の変化に対して変化させてもよい。
また、以上の処理においては、挟圧力制御指令値u1及び圧力ライン66の圧力Pd(挟圧力制御系44の観測値)の少なくとも一方の減少に対して目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が減少するように、変速比補正値Δγrefを設定している。ただし、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrの増大に対して目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が減少するように、変速比補正値Δγrefを設定することもできる。このように、本実施形態においては、挟圧力制御指令値u1の減少、圧力ライン66の圧力Pdの減少、及びベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrの増大のいずれか1つ以上に対して、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が減少するように、変速比補正値Δγrefを設定することができる。
ここで、変速用ポンプ60の回転速度ωmが速く変速速度が速いときは、圧力ライン66からの圧力Pdの供給によるプーリ油室の圧力補償に応答遅れが発生し、作動油が流出する側のプーリ油室の圧力が一時的に低下する。挟圧力制御系44の制御状態によっては、このプーリ油室の圧力低下により無端ベルト34の滑りを抑止するのに必要なベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保することが困難となり、無端ベルト34に滑りが発生してしまうことになる。
これに対して、本実施形態の目標変速比算出部84は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下すると予測したときは、目標変速比γrefを挟圧力制御系44の制御状態に基づく変速比補正値Δγrefにより補正する。これによって、所定挟圧力Plm以上のベルト挟圧力min{Pp,Ps}が保たれるように、変速速度が制御される。このように、本実施形態においては、挟圧力制御系44の制御及び変速制御系46の制御を協調させて行うことで、無端ベルト34の滑りを抑止するのに必要なベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保しながら変速制御を行うことができる。したがって、挟圧力制御系44の制御及び変速制御系46の制御を、両制御間の相互干渉が発生することなく適切に行うことができる。
また、変速制御指令値算出部85がフィードバック制御指令値u2fbを用いて変速制御指令値u2を算出する、すなわちフィードバック制御を行う構成のときに、変速制御指令値算出部85が挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態に基づいて変速制御指令値u2を算出する場合を考える。その場合は、挟圧力制御系44の制御状態に応じて変速制御指令値u2をフィードフォワード補償しても、変速比γが目標変速比γrefに一致するようにフィードバック制御が行われることで、変速比γのフィードフォワード補償分が打ち消されることになる。そのため、変速速度が十分に制限されずに、無端ベルト34の滑りを十分に抑止することが困難となる。
これに対して、本実施形態においては、変速制御指令値u2ではなく目標変速比γrefの方を挟圧力制御系44の制御状態に応じて補正している。そのため、変速比γが目標変速比γrefに一致するようにフィードバック制御を行っても、変速比γの補償分がフィードバック制御により打ち消されることはない。したがって、変速速度を十分に制限することができ、無端ベルト34の滑りを確実に抑止することができる。
また、挟圧力制御系44の観測値によって、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態を精度よく把握することができる。したがって、挟圧力制御系44の観測値を用いて目標変速比γrefを補正することで、所望のベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保するための変速制御を精度よく行うことができる。
また、挟圧力制御指令値u1(挟圧力制御系44への制御指令値)によって、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態を挟圧力制御系44の観測用のセンサを用いることなく把握することができる。したがって、挟圧力制御指令値u1を用いて目標変速比γrefを補正することで、所望のベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保するための変速制御を、挟圧力制御系44の観測用のセンサを用いることなく適切に行うことができる。
また、ベルト挟圧力目標値Pdr(挟圧力制御系44の目標値)の時間履歴によっても、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態を挟圧力制御系44の観測用のセンサを用いることなく把握することができる。したがって、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrを用いて目標変速比γrefを補正することで、所望のベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保するための変速制御を、挟圧力制御系44の観測用のセンサを用いることなく適切に行うことができる。さらに、所望のベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保するための変速制御の応答遅れを減らすことができる。
また、挟圧力制御系44の観測値、挟圧力制御指令値u1、及びベルト挟圧力目標値Pdrの時間履歴のいずれか2つ以上によって、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態をより精度よく把握することができる。したがって、挟圧力制御系44の観測値、挟圧力制御指令値u1、及びベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrのいずれか2つ以上を用いて目標変速比γrefを補正することで、所望のベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保するための変速制御をより精度よく行うことができる。
「電子制御装置の他の構成及びその処理」
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
図12に示す構成においては、目標変速比算出部84は、スロットル開度A、エンジン回転速度Ne、及び車速Vに基づいて目標変速比γrefを設定して変速制御指令値算出部85へ出力する。そして、変速制御指令値算出部85は、目標変速比γrefの他に、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態にも基づいて変速制御指令値u2を算出して出力する。これによって、所定挟圧力Plm以上のベルト挟圧力min{Pp,Ps}が保たれるように変速制御系46の制御を行う。図12は、挟圧力制御部81による挟圧力制御系44の制御状態の一例として、ベルト挟圧力Pd(圧力ライン66の圧力)と、ベルト挟圧力目標値Pdrと、を用いて変速制御指令値u2を算出する場合を示している。
さらに、変速制御指令値算出部85は、変速制御指令値u2をフィードバック制御指令値を用いずに目標変速比γref及び挟圧力制御系44の制御状態に基づくフィードフォワード制御指令値により算出し、フィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行う。なお、他の構成については図10に示す構成と同様であるため説明を省略する。
次に、電子制御装置42の変速制御指令値算出部85が変速制御指令値u2を算出する処理の一例について、図13のフローチャートを用いて説明する。この処理は、所定時間おきに繰り返して実行される。
まずS301においては、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrが閾値ΔPdru以下であるか否かが判定される。S301の判定結果がNOの場合は、S302に進む。一方、S301の判定結果がYESの場合は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下しないと予測してS303に進む。
S302においては、S202と同様に、圧力ライン66の圧力Pdが閾値Pu以上であるか否かが判定される。S302の判定結果がYESの場合は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下しないと予測してS303に進む。一方、S302の判定結果がNOの場合は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下すると予測してS304に進む。
S303においては、変速制御指令値u2として、目標変速比γrefに基づくフィードフォワード制御指令値u2ffが設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。
S304においては、変速制御指令値u2として、前述のフィードフォワード制御指令値u2ffを変速制御補正値Δu2で補正した値u2ff+Δu2が設定される。そして、本処理の実行を一旦終了し、所定時間後に本処理の実行が再度繰り返される。ここでの変速制御補正値Δu2は、変速制御指令値u2の時間変化率du2/dtの絶対値が正の閾値Δu2u以下になるように、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdr及び圧力ライン66の圧力Pdに基づいて設定される。これによって、変速速度が制限される。そして、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrの増大及び圧力ライン66の圧力Pdの減少のいずれか1つ以上に対して変速制御指令値u2の時間変化率du2/dtの絶対値が減少するように、変速制御補正値Δu2が設定される。
なお、以上の処理においては、変速比γ及び入力トルクTinの少なくとも一方の変化に対して閾値ΔPdru、Puを変化させてもよい。
また、以上の処理においては、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrが閾値ΔPdruより大きい条件と、圧力ライン66の圧力Pd(挟圧力制御系44の観測値)が閾値Puより小さい条件と、の両方が成立した場合に、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下すると予測している。ただし、図13のフローチャートに示す処理においても、図11のフローチャートに示す処理と同様に、前述の挟圧力制御指令値u1に関する条件、挟圧力制御系44の観測値に関する条件、及びベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrに関する条件のいずれか1つ以上を用いて、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下するか否かを予測することができる。
また、以上の処理においては、ベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrの増大及び圧力ライン66の圧力Pdの減少のいずれか1つ以上に対して変速制御指令値u2の時間変化率du2/dtの絶対値が減少するように、変速制御補正値Δu2を設定している。ただし、挟圧力制御指令値u1の減少に対して変速制御指令値u2の時間変化率du2/dtの絶対値が減少するように、変速制御補正値Δu2を設定することもできる。このように、図13のフローチャートに示す処理においても、挟圧力制御指令値u1の減少、圧力ライン66の圧力Pdの減少、及びベルト挟圧力目標値Pdrの時間低下率ΔPdrの増大のいずれか1つ以上に対して、目標変速比γrefの時間変化率dγref/dtの絶対値が減少するように、変速比補正値Δγrefを設定することができる。
ここで、変速制御指令値算出部85がフィードバック制御指令値を用いて変速制御指令値u2を算出する、すなわちフィードバック制御を行う場合を考える。その場合は、変速制御補正値Δu2により変速制御指令値u2を補正しても、変速比γが目標変速比γrefに一致するようにフィードバック制御が行われることで、変速比γの補正分Δu2が打ち消されることになる。そのため、変速速度を十分に制限することが困難となる。
これに対して、本実施形態の変速制御指令値算出部85は、フィードバック制御指令値を用いずにフィードフォワード制御指令値により変速制御指令値u2を算出する、すなわちフィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行う。そのため、変速比γの補正分Δu2が、フィードバック制御が行われることで打ち消されることはない。したがって、図12に示す構成においても、所望のベルト挟圧力min{Pp,Ps}を確保しながら変速制御を行うことができ、無端ベルト34の滑りを確実に抑止することができる。
なお、特許文献2,3には、実作動圧がベルト容量の保持ができる最低作動圧を下回らないように変速速度を制限して変速用の電動オイルポンプを駆動制御する第2制御器が示されている。しかし、特許文献2,3の第2制御器は、変速制御系の目標値と変速制御系の検出値の偏差から算出されたフィードバック制御指令値の方を実作動圧を用いて制限している。そのため、特許文献2,3には、挟圧力制御系の制御状態を用いて変速制御系の目標値の方を設定することについては示されていない。そして、特許文献2,3には、変速用の電動オイルポンプを駆動制御する制御器がフィードバック制御を行わずにフィードフォワード制御を行うことについても示されていない。
さらに、特許文献2,3には、挟圧力制御系への制御指令値や挟圧力制御系の目標値を用いて変速速度を制限することについても示されていない。本実施形態のように、挟圧力制御系への制御指令値や挟圧力制御系の目標値を用いることで、所望のベルト挟圧力を確保するための変速制御を挟圧力制御系の観測用のセンサを用いることなく適切に行うことができる。さらに、挟圧力制御系の目標値を用いることで、所望のベルト挟圧力を確保するための変速制御の応答遅れを減らすことができる。
なお、図12に示す構成において、変速制御指令値算出部85は、ベルト挟圧力min{Pp,Ps}が所定挟圧力Plmより低下しないと予測した場合は、変速制御指令値u2を、目標変速比γrefと検出した変速比γの偏差に基づくフィードバック制御指令値u2fbを用いて算出し、フィードバック制御を行うこともできる。その場合は、図13のフローチャートのS303において、変速制御指令値u2として、目標変速比γrefに基づくフィードフォワード制御指令値u2ffとフィードバック制御指令値u2fbとを重ね合わせた制御指令値u2ff+u2fbを設定する。あるいはS303において、変速制御指令値u2として、フィードバック制御指令値u2fbを設定する。
以上の説明においては、変速制御系46の目標値として目標変速比γrefを用いた場合について説明した。ただし、各実施形態においては、変速制御系46の目標値としてプライマリプーリ30の目標回転速度Ninrefを用いることもできる。その場合は、以上の説明において、目標変速比γrefをプライマリプーリ30の目標回転速度Ninrefに置き換え、変速比γをプライマリプーリ30の回転速度Ninに置き換えた場合を考えればよい。
また、実施形態1における電子制御装置42の構成と、実施形態2における電子制御装置42の構成と、を組み合わせることもできる。その一例として、図2に示す構成と図10に示す構成とを組み合わせた場合を図14に示す。ただし、例えば図5に示す構成と図10に示す構成とを組み合わせる等、他の組み合わせでもよいことは、当業者にとって明らかであろう。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 エンジン、14 ベルト式無段変速機、30 プライマリプーリ、32 セカンダリプーリ、34 無端ベルト、40 油圧制御装置、42 電子制御装置、44 挟圧力制御系、46 変速制御系、54 油圧供給用ポンプ、56,58 レギュレータ、60 変速用ポンプ、62 変速用モータ、64 切替弁、66 圧力ライン、81 挟圧力制御部、83 変速制御部、84 目標変速比算出部、85 変速制御指令値算出部、94 ベルト挟圧力目標値算出部、95 挟圧力制御指令値算出部、96 回転速度推定部。