JP2009115246A - 無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができる無段変速機を提供する。
【解決手段】パワーローラ4を支持する支持手段6と、支持手段6に設けられるフランジ部84と、フランジ部84によって複数の油圧室OP1、OP2に仕切られる変速制御油圧室82とを有し、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧によりフランジ部84に押圧力を作用させ、支持手段6と共にパワーローラ4を入力ディスク及び出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動させ傾転させることで、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比を変更可能な変速比変更手段5と、複数の油圧室OP1、OP2の相互の作動油の漏洩を防止する封止手段100と、変速制御油圧室82の壁面に設けられ、封止手段100が設置される封止手段設置溝120とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、無段変速機に関し、特に、入力ディスクと出力ディスクとの間に配置されたパワーローラの移動により変速比の変更が行われる、いわゆるトロイダル式の無段変速機に関するものである。
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、このような無段変速機、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)には、入力ディスクと出力ディスクとの間に挟み込んだパワーローラを介して各ディスクの間でトルクを伝達すると共に、パワーローラを傾転させて変速比を変化させる、いわゆる、トロイダル式の無段変速機がある。
このトロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクと出力ディスクとの間に、外周面をトロイダル面に対応する曲面としたパワーローラなどの回転手段を挟み込み、これら入力ディスク、出力ディスク及びパワーローラとの間に形成されるトラクションオイルの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。そして、このパワーローラは、トラニオンにより回転自在に支持されており、このトラニオンは、揺動軸を中心として揺動可能であると共に、例えば、トラニオンに設けられたピストンに対して変速制御油圧室に供給される作動油の油圧により変速制御押圧力を作用させることで、この揺動軸に沿った方向に移動可能に構成されている。したがって、トラニオンに支持されるパワーローラがこのトラニオンと共に入力ディスク及び出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動することで、パワーローラとディスクとの間に接線力が作用しサイドスリップが発生し、このパワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して揺動軸を中心として揺動、すなわち、傾転し、この結果、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比が変更される。そして、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比は、パワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して傾転する角度、すなわち、傾転角に基づいて決まり、この傾転角は、当該パワーローラの中立位置から変速位置側への移動量としてのストローク量(オフセット量)の積分値に基づいて決まる。
ところで、このようなトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室は、変速制御押圧力を受圧するピストンのフランジ部によって、パワーローラ及びトラニオンの移動方向に対して複数の油圧室に仕切られている。そして、トロイダル式無段変速機は、この複数の油圧室内の作動油の油圧を適宜制御することで、パワーローラのストローク量を制御し、変速制御を実行する。このような従来のトロイダル式無段変速機は、例えば、特許文献1に記載されているトロイダル型無段変速機のように、フランジ部の径方向外側の先端部に環状のシール溝が設けられると共にこのシール溝に環状のシール部材が配置されており、したがって、フランジ部によって区画される変速制御油圧室の各油圧室は、このシール部材により互いに作動油が漏れないようにシールされている。
特開2006−46573号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているトロイダル型無段変速機では、例えば、シール性能を確保し十分な変速制御精度を確保するため、合口(カット部)のないシール部材をフランジ部の径方向外側先端部に設ける場合、シール部材の装着時にこのシール部材が塑性変形してしまい、適正なシール性能を確保することができないおそれがあり、結果的に、シール部材の変形を戻す工程が必要となることがあった。
そこで本発明は、複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができる無段変速機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による無段変速機は、駆動力が入力される入力ディスクと、前記駆動力が出力される出力ディスクと、前記入力ディスクと前記出力ディスクとに接触して設けられるパワーローラと、前記パワーローラを回転自在、かつ、前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対して傾転自在に支持する支持手段と、前記支持手段に設けられるフランジ部と、前記フランジ部によって複数の油圧室に仕切られる変速制御油圧室とを有し、前記変速制御油圧室に供給される作動油の油圧により前記フランジ部に押圧力を作用させ、前記支持手段と共に前記パワーローラを前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動させ傾転させることで、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比である変速比を変更可能な変速比変更手段と、前記フランジ部と前記変速制御油圧室の壁面との間に設けられ、前記複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を防止する封止手段と、前記変速制御油圧室の壁面に設けられ、前記封止手段が設置される封止手段設置溝とを備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明による無段変速機では、前記支持手段は、回転軸線を回転中心として回転可能であると共に前記回転軸線に沿って前記中立位置と前記変速位置とに応じた位置に移動自在な揺動軸を有し、該揺動軸が回転することで前記パワーローラを傾転可能に支持し、前記変速制御油圧室は、前記フランジ部によって前記回転軸線に沿った方向に対して第1油圧室と第2油圧室とに仕切られ、前記封止手段及び前記封止手段設置溝は、前記揺動軸周りに環状に形成される前記フランジ部の径方向外側に設けられることを特徴とする。
請求項3に係る発明による無段変速機では、前記変速制御油圧室の壁面をなすと共に、前記回転軸線に沿った方向に対して分割された第1構成部材と第2構成部材とを備え、前記封止手段設置溝は、前記第1構成部材と前記第2構成部材との分割部に設けられることを特徴とする。
請求項4に係る発明による無段変速機では、前記封止手段設置溝は、前記第1構成部材と前記第2構成部材とによって形成され、前記封止手段は、前記第1構成部材と前記第2構成部材とに接触する位置に設けられることを特徴とする。
請求項5に係る発明による無段変速機では、前記封止手段は、少なくとも、前記フランジ部周りに環状に設けられる複数の無端部材を含んで構成されることを特徴とする。
本発明に係る無段変速機によれば、変速制御油圧室の壁面に封止手段設置溝を設け、この封止手段設置溝に封止手段を設置するので、複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができる。
以下に、本発明に係る無段変速機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の概略断面図、図2は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の要部の構成図、図3は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図、図4は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図、図5は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室のシール部材及びシール部材設置溝を示す部分断面図である。
なお、図2は、トロイダル式無段変速機を構成する各パワーローラのうち任意のパワーローラと、このパワーローラに接触する入力ディスクを示す図である。また、図3、図4は、入力ディスクを出力ディスク側から見た図であり、入力ディスクとパワーローラをそれぞれ1つだけ模式的に図示している。なお、以下の説明では、このトロイダル式無段変速機が備える封止手段としてのシール部やフランジ部は、後述する回転軸線X3を中心としてほぼ対称になるように構成されることから、図5には、回転軸線X3を中心として一方側のみを図示し、特に断りのない限り、回転軸線X3を中心として一方側のみを説明し、他方側の説明はできるだけ省略する。また、図5は、図2に示す2つの油圧ピストン部8のうち図中左側の油圧ピストン部8(パワーローラ4側に第1油圧室OP1が位置する油圧ピストン部8)の部分断面図を示しており、図中右側の油圧ピストン部8(パワーローラ4側に第2油圧室OP2が位置する油圧ピストン部8)の説明はできるだけ省略する。
ここで、以下で説明する実施例では、本発明の無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源としてエンジントルクを発生する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータトルクを発生するモータなどの電動機を駆動源として用いてもよい。また、駆動源として内燃機関及び電動機を併用してもよい。
図1に示すように、本実施例に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機1は、車両に搭載される駆動源としてのエンジン21からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で車輪27に伝達するためのものであり、変速比を無段階(連続的)に制御することができる、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)である。このトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟み込んだパワーローラ4を介して各入力ディスク2と出力ディスク3の間でトルクを伝達すると共に、パワーローラ4を傾転させて変速比を変化させる、いわゆる、トロイダル式の無段変速機である。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル面2a、3aを有する入力ディスク2と出力ディスク3との間に、外周面をトロイダル面2a、3aに対応する曲面としたパワーローラ4を挟み込み、これら入力ディスク2、出力ディスク3及びパワーローラ4との間に形成されるトラクションオイルの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。
具体的には、このトロイダル式無段変速機1は、図1、図2に示すように、入力ディスク2と、出力ディスク3と、パワーローラ4と、変速比変更手段としての変速比変更部5とを備える。変速比変更部5は、支持手段としてのトラニオン6と、移動部7を有する。さらに、移動部7は、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。また、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル式無段変速機1の各部を制御する制御手段としての電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)60を備える。このトロイダル式無段変速機1では、入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられるパワーローラ4が移動部7により入力ディスク2及び出力ディスク3に対して中立位置から変速位置に移動することで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比が変更される。
入力ディスク2は、エンジン21側からの駆動力(トルク)が、例えば、発進機構であり流体伝達装置であるトルクコンバータ22や前後進切換機構23などを介して伝達(入力)されるものである。
エンジン21は、このエンジン21が搭載された車両を前進あるいは後進させるためのエンジントルク、すなわち、駆動力を出力するものである。また、エンジン21は、ECU60に電気的に接続されており、このECU60によってその駆動が制御され、出力する駆動力が制御されている。エンジン21からの駆動力は、クランクシャフト21aを介してトルクコンバータ22に伝達される。
トルクコンバータ22は、前後進切換機構23を介してエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1に伝達するものである。トルクコンバータ22は、ポンプ(ポンプインペラ)、タービン(タービンランナ)、ステータ、ロックアップクラッチを備える。ポンプは、フロントカバー等を介してエンジン21のクランクシャフト21aに連結されており、クランクシャフト21a、フロントカバーと共に回転可能に設けられている。タービンは、上記ポンプと対向するように配置されている。このタービンは、前後進切換機構23を介して上述の入力軸10に連結されており、入力軸10と共にクランクシャフト21aと同一の軸線を中心に回転可能に設けられている。ステータは、そのポンプとタービンとの間に配置されている。ロックアップクラッチは、このタービンとフロントカバーとの間に設けられており、タービンに連結されている。
したがって、このトルクコンバータ22は、エンジン21の駆動力(エンジントルク)がクランクシャフト21aからフロントカバーを介してポンプに伝達される。そして、ロックアップクラッチが解放されている場合には、このポンプに伝達された駆動力は、ポンプとタービンとの間に介在する作動流体である作動油を介してタービン、入力軸10に伝達される。このとき、トルクコンバータ22は、ステータにより、ポンプとタービンとの間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。そして、トルクコンバータ22は、タービンに連結されているロックアップクラッチがフロントカバーに係合されている場合、フロントカバーを介してポンプに伝達されたエンジン21からの駆動力は、作動油を介さずに直接的に入力軸10に伝達される。ここで、ロックアップクラッチの係合及び係合の解除、すなわち、ON、OFFを行うON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油によって行われる。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。したがって、ロックアップクラッチのON/OFF制御は、ECU60により行われる。
前後進切換機構23は、トルクコンバータ22を介して伝達されたエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1の入力ディスク2に伝達するものである。前後進切換機構23は、例えば、遊星歯車機構、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキなどにより構成され、エンジン21の駆動力を直接、あるいは反転して入力ディスク2に伝達するものである。つまり、前後進切換機構23を介したエンジン21の駆動力は、入力ディスク2を正回転させる方向(車両が前進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する正回転駆動力として、あるいは、入力ディスク2を逆回転させる方向(車両が後進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する逆回転駆動力として、入力ディスク2に伝達される。この前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御は、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキの係合及び係合の解除、すなわち、ON、OFFを行うON/OFF制御を実行することで行われる。前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御、言い換えれば、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキのON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油により行われる。したがって、前後進切換機構23の切換制御は、ECU60により行われている。
入力ディスク2は、エンジン21の回転に基づいて回転される入力軸10に2つが結合されており、この入力軸10により回転自在に設けられている。さらに言えば、各入力ディスク2は、入力軸10と同一の回転をするバリエータ軸11によって回転される。したがって、各入力ディスク2は、入力軸10の回転軸線X1を回転中心として回転可能である。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)にフロント側入力ディスク2が設けられ、回転軸線X1に沿った方向にフロント側入力ディスク2に対して所定の間隔をあけてリア側(車輪27側)にリア側入力ディスク2が設けられる。
フロント側入力ディスク2は、ボールスプライン11aを介してバリエータ軸11に支持されている。つまり、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、このバリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しない一方、回転軸線X1に沿った方向には相対的に変位可能である。一方、リア側入力ディスク2は、スプライン嵌合部を介してバリエータ軸11に支持されていると共に、バリエータ軸11のリア側端部に設けられたスナップリング11bにより回転軸線X1に沿った方向への移動が制限されている。つまり、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。なお、以下の説明では、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2とを特に区別する必要がない場合、単に「入力ディスク2」と略記する。
各々の入力ディスク2は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各入力ディスク2の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各入力ディスク2のトロイダル面2aをなす。2つの入力ディスク2は、トロイダル面2aが互いに対向するように設けられる。
出力ディスク3は、各入力ディスク2に伝達(入力)された駆動力を車輪27側に伝達(出力)するものであり、各入力ディスク2に対応して1つずつ、合計2つ設けられる。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)に第1出力ディスクとしてのフロント側出力ディスク3が設けられ、リア側(車輪27側)に第2出力ディスクとしてのリア側出力ディスク3が設けられる。フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とは、共に回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2との間に設けられ、さらに言えば、リア側出力ディスク3は、フロント側出力ディスク3とリア側入力ディスク2との間に設けられている。つまり、このトロイダル式無段変速機1は、回転軸線X1に沿った方向に対して、フロント側からフロント側入力ディスク2、フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3、リア側入力ディスク2の順で設けられている。なお、以下の説明では、フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とを特に区別する必要がない場合、単に「出力ディスク3」と略記する。
各入力ディスク2と各出力ディスク3とは、回転軸線X1に同軸上に入力軸10に対して相対的に回転自在に設けられる。したがって、各出力ディスク3は、回転軸線X1を回転中心として回転可能である。そして、各出力ディスク3は、各入力ディスク2とほぼ同一な形状をなし、すなわち、各々の出力ディスク3は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各出力ディスク3の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各出力ディスク3のトロイダル面3aをなす。そして、各出力ディスク3は、上述のように回転軸線X1に沿った方向に対して2つの入力ディスク2の間に設けられると共に、各トロイダル面3aが各入力ディスク2のトロイダル面2aにそれぞれ対向するように設けられる。すなわち、回転軸線X1に沿った断面内において、一方のフロント側入力ディスク2のトロイダル面2aとフロント側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向してフロント側(エンジン21側)半円キャビティCを形成し、リア側入力ディスク2のトロイダル面2aとリア側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向して別のリア側(車輪27側)半円キャビティCを形成している。
また、各出力ディスク3は、ベアリングを介しバリエータ軸11に回転可能に支持されている。この2つの出力ディスク3の間には、出力ギア12が連結されており、この出力ギア12は、2つの出力ディスク3と共に一体で回転可能である。出力ギア12には、カウンターギア13がかみ合わされており、このカウンターギア13に出力軸14が連結されている。したがって、各出力ディスク3の回転に伴い、出力軸14が回転する。そして、この出力軸14は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギア25等を介して車輪27に接続されており、駆動力は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギア25等を介して車輪27に伝達(出力)される。
動力伝達機構24は、トロイダル式無段変速機1とディファレンシャルギア25との間で、駆動力の伝達を行うものである。動力伝達機構24は、出力ディスク3とディファレンシャルギア25との間に配置される。ディファレンシャルギア25は、動力伝達機構24と車輪27との間で、駆動力の伝達を行うものである。ディファレンシャルギア25は、動力伝達機構24と車輪27との間に配置されている。ディファレンシャルギア25には、ドライブシャフト26が連結されている。ドライブシャフト26には、車輪27が取り付けられている。
パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間にこの入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられ、入力ディスク2からの駆動力を出力ディスク3に伝達するものである。すなわち、パワーローラ4は、外周面がトロイダル面2a、3aに対応した曲面状の接触面4aとして形成される。そして、パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟持され、接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触可能であり、各パワーローラ4は、それぞれ後述するトラニオン6によってこの接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触しながら、回転軸線X2を回転中心として回転自在に支持されている。パワーローラ4は、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルにより入力ディスク2と出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの間に形成される油膜のせん断力を用いて駆動力(トルク)を伝達する。
パワーローラ4は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられ、リア側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられる。
さらに具体的には、パワーローラ4は、パワーローラ本体41と、外輪42とにより構成される。パワーローラ本体41は、外周面に入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aと接触する上述の接触面4aが形成されている。パワーローラ本体41は、外輪42に形成された回転軸42aに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。また、パワーローラ本体41は、外輪42のパワーローラ本体41と対向する面に対して、スラストベアリングSBを介して回転自在に支持されている。したがって、パワーローラ本体41は、回転軸42aの回転軸線X2を回転中心として回転可能である。
外輪42は、上述の回転軸42aと共に偏心軸42bが形成されている。偏心軸42bは、回転軸線X2’が回転軸42aの回転軸線X2に対してずれた位置となるように形成されている。偏心軸42bは、後述するトラニオン6のローラ支持部6aに凹部として形成される嵌合部6dに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。したがって、外輪42は、偏心軸42bの回転軸線X2’を中心として回転可能である。つまり、パワーローラ4は、トラニオン6に対して、回転軸線X2及び回転軸線X2’を中心として回転可能となり、すなわち、回転軸線X2’を中心として公転可能でかつ回転軸線X2を中心として自転可能となる。これにより、パワーローラ4は、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な構成となり、例えば、部品変形や部品精度のバラツキを許容することが可能となる。
ここで、入力軸10は油圧押圧(エンドロード)機構15に接続される。油圧押圧機構15は、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、この入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込むための挟圧力を作用させるものである。この油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15aと、挟圧押圧力ピストン15bとを有する。
挟圧力発生油圧室15aは、2つの入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿った方向の一方側に設けられる。ここでは、挟圧力発生油圧室15aは、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2側に設けられ、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間に配置される。挟圧力発生油圧室15aは、運転状態に応じて油圧制御装置9から内部に作動油が供給される。
挟圧押圧力ピストン15bは、円板状に形成され、その中心が回転軸線X1とほぼ一致するようにバリエータ軸11の一端部に設けられる。挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11のリア側入力ディスク2が設けられている端部とは反対側の端部、すなわち、フロント側(エンジン21側)に設けられている。挟圧押圧力ピストン15bは、回転軸線X1に沿った方向に対して、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間にフロント側入力ディスク2と間隔をあけて配置される。上述の挟圧力発生油圧室15aは、この挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間に設けられている。
また、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。つまり、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。したがって、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、一体となって回転軸線X1を中心として回転可能であり回転軸線X1に沿った方向に移動可能である。また、フロント側入力ディスク2は、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bと共に一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、ボールスプライン11aによって、このリア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bに対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。
さらに、挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10にも連結されており、この入力軸10と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、また、回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能に設けられる。つまり、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10と一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、この入力軸10に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。入力軸10からの駆動力は、バリエータ軸11に伝達され、バリエータ軸11からフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に伝達される。
また、フロント側入力ディスク2は、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28を有する一方、挟圧押圧力ピストン15bは、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29を有する。フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。つまり、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とは、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28がリア側で挟圧力発生油圧室15aに対向し、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29がフロント側で挟圧力発生油圧室15aに対向する。
したがって、油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15a内に供給される作動油の油圧によりフロント側入力ディスク2のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク2のリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を作用させることで、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に離間する方向へ移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にリア側から油圧押圧機構15側に接近する方向へ移動させる。このとき、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動する。そして、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にフロント側に接近する方向へ移動させることで、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側に接近させると共にリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3側に接近させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させる。これにより、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させることから、各パワーローラ4をそれぞれ所定の挟圧力でフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟み込むことができる。この結果、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との間のスリップを防ぎ、トラクション状態を維持することができる。
ここで油圧押圧機構15による挟圧押圧力は、後述する油圧制御装置9により、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の量が制御されることで、トロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の大きさに制御される。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。したがって、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の大きさの制御は、ECU60により行われる。
変速比変更部5は、上述したように、トラニオン6と、移動部7を有し、移動部7によって、入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して、トラニオン6と共にパワーローラ4を移動し、パワーローラ4をこの入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更するものである。ここで、変速比とは、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比であり、典型的には、[変速比=出力側接触半径(パワーローラ4と出力ディスク3とが接触する接触半径(接触点と回転軸線X1との距離))/入力側接触半径(入力ディスク2とパワーローラ4とが接触する接触半径)]で表すことができる。
具体的には、各トラニオン6は、パワーローラ4をそれぞれ回転自在に支持すると共に、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して移動させ入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するものである。トラニオン6は、ローラ支持部6aと揺動軸6bとを有する。ローラ支持部6aは、パワーローラ4が配置される空間部6cが形成され、この空間部6cに凹部状の嵌合部6dが形成されている。そして、トラニオン6は、この空間部6cにて、上述のようにパワーローラ4の偏心軸42bが嵌合部6dに挿入されることで、パワーローラ4を回転自在に支持している。また、ローラ支持部6aは、揺動軸6bと一体で移動可能に設けられる。揺動軸6bは、柱状に形成され回転軸線X3を回転中心として回転可能に設けられる。したがって、トラニオン6は、ローラ支持部6aが揺動軸6bと共に回転軸線X3を回転中心として回転自在にケーシング(不図示)に支持されている。また、トラニオン6は、回転軸線X3に沿った方向に移動自在にケーシング(不図示)に支持され、後述する移動部7によって、回転軸線X3に沿った方向に移動可能に構成される。
トラニオン6は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられ、4つのパワーローラ4をそれぞれ支持する。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられ、リア側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられる。
ここで、トラニオン6は、パワーローラ4の回転軸線X2が揺動軸6bの回転軸線X3と垂直な平面と平行になるようにパワーローラ4を支持している。また、トラニオン6は、揺動軸6bの回転軸線X3が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1と垂直な平面と平行になるように配置される。すなわち、トラニオン6は、回転軸線X1と垂直な平面内で回転軸線X3に沿って移動することで、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して回転軸線X3に沿って移動させることができる。また、トラニオン6は、回転軸線X3を回転中心として回転揺動することで、パワーローラ4を回転軸線X3と垂直な平面内でこの回転軸線X3を中心として入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在とすることできる。なお、言い換えれば、トラニオン6は、パワーローラ4に後述する傾転力が作用することでこのパワーローラ4を傾転可能に支持していることになる。
移動部7は、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った方向に移動させるものであり、上述したように、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。
油圧ピストン部8は、変速制御ピストン81と、変速制御油圧室82とを含んで構成され、変速制御油圧室82に導入される作動油の油圧を変速制御ピストン81のフランジ部84により受圧することで、トラニオン6を回転軸線X3に沿った2方向(A1方向及びA2方向)に移動させるものである。すなわち、油圧ピストン部8は、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧によりトラニオン6に設けられたフランジ部84に変速制御押圧力を作用させる。
具体的には、変速制御ピストン81は、ピストンベース83とフランジ部84とにより構成されている。ピストンベース83は、円筒形状に形成され揺動軸6bの一端部に挿入され、回転軸線X3方向及び回転軸線X3周り方向に対して固定されている。
フランジ部84は、ピストンベース83からピストンベース83の径方向、言い換えれば、揺動軸6bの径方向に突出するように固定的に設けられており、ピストンベース83及びトラニオン6の揺動軸6bと共に回転軸線X3に沿った方向に移動可能である。フランジ部84は、揺動軸6bの回転軸線X3周りに円環板状に形成されている。
変速制御油圧室82は、油圧室構成部材85により構成される。この油圧室構成部材85は、第1構成部材としてのシリンダボデー86及び第2構成部材としてのロアカバー87により構成される。すなわち、油圧室構成部材85は、変速制御油圧室82の壁面をなすと共に、トラニオン6の移動方向(ストローク方向)である回転軸線X3に沿った方向に対してシリンダボデー86とロアカバー87とに分割されている。シリンダボデー86は、変速制御油圧室82の空間部となる凹部が形成されている。ロアカバー87は、シリンダボデー86の凹部の開口を塞ぐようにこのシリンダボデー86に固定され、これにより、変速制御油圧室82は、シリンダボデー86とロアカバー87とにより回転軸線X3を中心とした円筒状(シリンダ状)に区画される。このシリンダボデー86及びロアカバー87は、シリンダボデー86のロアカバー87側とは反対側においてケーシング(不図示)に固定されている。なお、シリンダボデー86とロアカバー87との間には、変速制御油圧室82内の作動油の外部への漏洩を防止するガスケット88が設けられている。
そして、フランジ部84は、作動油が導入される変速制御油圧室82内に収容されると共に、この変速制御油圧室82内を回転軸線X3に沿った方向に2つの油圧室、すなわち、第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに仕切り区画する。第1油圧室OP1は、内部に供給される作動油の油圧により、フランジ部84と共にトラニオン6を回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させる一方、第2油圧室OP2は、内部に供給される作動油の油圧により、フランジ部84と共にトラニオン6を第1方向の逆方向である第2方向A2に移動させる。
トロイダル式無段変速機1は、封止手段としてのシール部材100を備える。シール部材100は、フランジ部84と変速制御油圧室82の壁面との間に設けられる。シール部材100は、変速制御油圧室82内にて、フランジ部84によって仕切られ区画される複数の油圧室、すなわち、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を防止するものである。したがって、このフランジ部84によって区画される変速制御油圧室82の第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれこのシール部材100により互いに作動油が漏れないようにシールされている。
なお、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにパワーローラ4、トラニオン6が2つずつ設けられることから、この第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにそれぞれ2つずつ設けられることになる。このとき、この一対のトラニオン6では、第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2の位置関係がトラニオン6ごとに入れ替わっている。つまり、一方のトラニオン6の第1油圧室OP1とした油圧室が他方のトラニオン6の第2油圧室OP2となり、一方のトラニオン6の第2油圧室OP2とした油圧室が他方のトラニオン6の第1油圧室OP1となる。したがって、図2に示すトロイダル式無段変速機1では、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4は、第1油圧室OP1又は第2油圧室OP2内の油圧により、回転軸線X3に沿って互いに逆方向に移動することになる。
油圧制御装置9は、トランスミッションの各部、例えば、油圧押圧機構15、トルクコンバータ22、前後進切換機構23等に作動油を供給するものであり、さらに、変速制御油圧室82内の作動油の油圧を制御するものである。油圧制御装置9は、オイルタンクに貯留されトランスミッションの各部に供給される作動油をオイルポンプにより吸引、加圧し、吐出する。そして、油圧制御装置9は、オイルポンプにより加圧された作動油がプレッシャーレギュレータバルブ(不図示)を介して、流量制御弁などに供給される。流量制御弁は、スプール弁子、電磁ソレノイドなどを含んで構成され、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2へ作動油の供給、あるいは、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2からの作動油の排出を制御するものである。油圧制御装置9の流量制御弁は、ECU60から入力される制御指令値入力に基づいた駆動電流により駆動する電磁ソレノイドがスプール弁子の位置を変位させることで、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2に供給、排出される作動油の流量を制御するものである。なお、このプレッシャーレギュレータバルブは、プレッシャーレギュレータバルブよりも下流側における油圧が所定油圧以上、すなわち、油圧制御装置9の元圧として用いられるライン圧以上になった際に、下流側にある作動油をオイルタンクに戻して所定のライン圧に調圧するものである。
例えば、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁を制御し、オイルポンプにより加圧された作動油を第1油圧室OP1に供給し、第2油圧室OP2内の作動油を排出すると、第1油圧室OP1の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧>第2油圧室OP2の油圧]となる。これにより、油圧ピストン部8のフランジ部84は、回転軸線X3に沿った第1方向A1に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動する。同様に、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁を制御し、オイルポンプにより加圧された作動油を第1油圧室OP1から排出し、第2油圧室OP2内に供給すると、第2油圧室OP2の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧<第2油圧室OP2の油圧]となる。これにより、油圧ピストン部8のフランジ部84が回転軸線X3に沿った第2方向A2に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動する。このとき、流量制御弁のスプール弁子の移動量に応じて、パワーローラ4の第1方向A1、あるいは、第2方向A2のへの移動が調整される。
したがって、この移動部7は、ECU60により油圧制御装置9が駆動され油圧ピストン部8の各変速制御油圧室82内の油圧が制御されることで、変速制御ピストン81のフランジ部84に所定の変速制御押圧力を作用させ、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った2方向、すなわち、第1方向A1と第2方向A2とに移動させることができる。そして、変速比変更部5は、この移動部7によって、トラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置(図3参照)から変速比に応じた変速位置(図4参照)に移動させ、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更することができる。
ここで、図3に示すように、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置は、変速比が固定される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用不能な位置である。すなわち、パワーローラ4が中立位置にあり、変速比が固定されている状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の中立位置(変速比固定時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る(直交する)位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4の回転方向(転がる方向)と入力ディスク2の回転方向とが一致しており、この結果、パワーローラ4に傾転力が作用せず、したがって、パワーローラ4は、この中立位置にとどまりながら入力ディスク2とともに回転をつづけ、この間の変速比は固定されている。
このとき、入力ディスク2からパワーローラ4に作用する力は駆動力(トルク)だけであるので、移動部7の油圧ピストン部8と油圧制御装置9とは、油圧によりこの駆動力に抗するだけの力をトラニオン6に作用させている。すなわち、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6が中立位置にある場合、上述したように、入力トルクに応じて入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する接線力F1(図3参照)に抗する大きさの変速制御押圧力F2(図3参照)をフランジ部84に作用させ、パワーローラ4に作用する接線力F1と変速制御押圧力F2とをつりあわせることで、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6の位置を中立位置に固定し、変速比を固定している。
一方、図4に示すように、パワーローラ4の変速位置は、変速比が変更される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用する位置である。すなわち、パワーローラ4が変速位置にあり、変速比が変更される状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内から回転軸線X3に沿った第1方向A1あるいは第2方向A2に移動した位置に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の変速位置(変速時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る位置、すなわち、中立位置からオフセットされた位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4の回転方向と入力ディスク2の回転方向とがずれ、これにより、パワーローラ4に傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4に作用する傾転力によりパワーローラ4と入力ディスク2及び出力ディスク3との間にサイドスリップが発生し、パワーローラ4は、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転し、パワーローラ4と入力ディスク2との入力側接触半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との出力側接触半径とが変更され、したがって、変速比が変更される。
例えば、本図4に示すように、入力ディスク2が図4中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第2方向A2(パワーローラ4と入力ディスク2と接触点における入力ディスク2の移動方向とは反対方向、すなわち、入力ディスク2の回転方向に逆らう方向(出力ディスク3の回転方向に沿う方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の周辺側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1から離間させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向外方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向内方側に移動するように傾転し、変速比が減少側に変更され、アップシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
逆に、ダウンシフトする場合は、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第1方向A1(パワーローラ4と入力ディスク2と接触点における入力ディスク2の移動方向、すなわち、入力ディスク2の回転方向に沿う方向(出力ディスク3の回転方向に逆らう方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の中心側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1に近接させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向内方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向外方側に移動するように傾転し、変速比が増加側に変更され、ダウンシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
ここで、このパワーローラ4の位置は、中立位置からのストローク量と入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角により決定される。パワーローラ4のストローク量は、パワーローラ4の回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1を通る中立位置を基準位置として、この中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2への移動量(中立位置からのオフセット量)である。パワーローラ4の傾転角は、パワーローラ4の回転中心である回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転中心である回転軸線X1と直交する位置を基準位置として、この基準位置から入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾斜角度(鋭角側の傾斜角度)であり、言い換えれば、回転軸線X3周りの回転角度である。そして、このトロイダル式無段変速機1の変速比は、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角によって定まり、この傾転角は、パワーローラ4の中立位置からのストローク量の積分値により定まる。
ここで、ECU60は、トロイダル式無段変速機1の運転状態に応じてトロイダル式無段変速機1の各部の駆動を制御しトロイダル式無段変速機1の実際の変速比である実変速比を制御するものである。すなわち、ECU60は、例えば、種々のセンサが検出するエンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、入力ディスク回転数、出力軸回転数、シフトポジションなどの運転状態や傾転角、ストローク量などに基づいて、目標の変速比である目標変速比を決定すると共に変速比変更部5を駆動してパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて、所定の傾転角まで傾転させることで変速比の変更を実行する。さらに言えば、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁に供給する駆動電流を制御指令値に基づいてデューティ制御することで、油圧ピストン部8の第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御して、トラニオン6と共にパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて所定の傾転角まで傾転させることで、実変速比が目標変速比となるように制御する。
上記のようなトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2に駆動力(トルク)が入力されると、その入力ディスク2にトラクションオイルを介して接触しているパワーローラ4に駆動力が伝達され、さらにそのパワーローラ4から出力ディスク3にトラクションオイルを介して駆動力が伝達される。この間、トラクションオイルは加圧されることによりガラス転移化し、それに伴う大きいせん断力によって駆動力を伝達するので、各入力ディスク2、出力ディスク3は、入力トルクに応じた挟圧力がパワーローラ4との間に生じるように、油圧押圧機構15により押圧される。また、パワーローラ4の周速と各入力ディスク2、出力ディスク3のトルク伝達点(パワーローラ4がトラクションオイルを介して接触している接触点)の周速とが実質的に同じであるから、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の回転軸線X1からの半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との接触点の回転軸線X1からの半径とに応じて、各入力ディスク2、出力ディスク3の回転数(回転速度)が異なることとなり、その回転数(回転速度)の比率が変速比となる。
そして、ECU60は、変速比を設定した目標変速比に変更する場合、すなわち、変速比の変速の場合は、入力ディスク2の回転方向に基づいて、油圧制御装置9の流量制御弁に駆動電流を供給し、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御することで、パワーローラ4が目標変速比に応じた傾転角になるまで、トラニオン6を中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。例えば、入力ディスク2が図2中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第1油圧室OP1の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させると、上述したように変速比が増加しダウンシフトが行われる。一方、入力ディスク2が図2中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第2油圧室OP2の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動させると、上述したように変速比が減少しアップシフトが行われる。また、設定された変速比を固定する場合は、パワーローラ4が再び中立位置となるまで、トラニオン6を第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。
なお、このECU60は、傾転角センサ(不図示)によって検出されるパワーローラ4の傾転角とストロークセンサ(不図示)によって検出されるストローク量に基づいて、実変速比(実際の変速比)が目標変速比(変速後の目標の変速比)となるようにカスケード式のフィードバック制御を行っている。すなわち、このECU60は、アクセル開度及び車速に基づいて目標変速比に対応した目標の傾転角である目標傾転角を決定し、この目標傾転角と傾転角センサによって検出した実際の傾転角である実傾転角との偏差に基づいて、目標変速比、目標傾転角に対応した目標のストローク量である目標ストローク量を決定し、ストロークセンサが検出したストローク量がこの目標ストローク量となるように移動部7の油圧制御装置9を制御している。このようなトロイダル式無段変速機1の変速制御では、基本的には、傾転角センサによって検出される傾転角(言い換えれば、変速比)のみをフィードバック制御すればよいが、ストローク量が傾転角の微分に相当することから、ストロークセンサによって検出されるストローク量のフィードバック制御もあわせて行うことで、傾転制御における振動を抑制するダンピング効果を得ることができる。また、このECU60は、変速比の応答性を向上するために、このフィードバック制御と共にフィードフォワード制御をあわせて行ってもよい。
ここで、トロイダル式無段変速機1は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4及びトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させるための機構として、ロアリンク16やアッパリンク17などにより構成されるリンク機構を備えている。ロアリンク16は、揺動軸6bにおいて変速制御ピストン81が設けられている一端部側(シリンダボデー86とローラ支持部6aとの間)にてラジアルベアリングRBを介して一対のトラニオン6を連結する一方、アッパリンク17は、揺動軸6bにおいて他端部側にてラジアルベアリングRBを介して一対のトラニオン6を連結する。そして、ロアリンク16、アッパリンク17は、それぞれケーシング(不図示)に固定されるロアポスト、アッパポストの支持軸16a、17aに支持されている。この支持軸16a、17aは、回転軸線X1と平行な方向に延設されており、ロアリンク16、アッパリンク17は、この支持軸16a、17aを支点としてシーソー状に揺動可能に構成されている。したがって、ロアリンク16、アッパリンク17は、一対のトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させることができる。
また、トロイダル式無段変速機1は、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進する機構として、同期機構18を備える。同期機構18は、同期ワイヤ19と、複数の固定プーリ20とを有する。同期機構18は、各トラニオン6の揺動軸6bに固定して設けられる固定プーリ20と、回転軸線X1方向又は回転軸線X2方向に隣り合う固定プーリ20間で一回交差するように反転して張架される同期ワイヤ19との摩擦力により、一方のトラニオン6の回転トルクを他方のトラニオン6に伝達することで、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進することができる。
ところで、このようなトロイダル式無段変速機1の変速制御油圧室82は、上述したように、変速制御押圧力を受圧する変速制御ピストン81のフランジ部84によって、パワーローラ4及びトラニオン6の移動方向に対して複数の油圧室、すなわち、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2に仕切られ区画されている。そして、フランジ部84と変速制御油圧室82の壁面との間に設けられるシール部材100によって、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩が防止されている。つまり、このフランジ部84によって区画される変速制御油圧室82の第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれこのシール部材100により互いに作動油が漏れないようにシールされることで、複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を防止し、適正な変速制御の精度を確保している。
しかしながら、例えば、シール性能を確保し十分な変速制御精度を確保するため、シール部材100として合口(カット部)のないシール部材をフランジ部84の径方向外側の先端部に設ける場合、シール部材100の装着時にこのシール部材100が変形してしまい、適正なシール性能を確保することができないおそれがあり、結果的に、シール部材の変形を戻す工程が必要となることがあった。すなわち、例えば、フランジ部84の外径よりも小径の環状のシール部材100を径方向外側に引っ張り広げて、シール部材100の内側にフランジ部84の最大外径部分を挿入した後、シール部材100をシール溝に押し込んで装着すると、シール部材100をフランジ部84の最大外径以上に引っ張り広げる際に、このシール部材100が塑性変形してしまい、適正なシール性能を確保できず、十分な変速制御精度を確保できなくなるおそれがあり、このため、シール部材100の塑性変形を元に戻すための工程が必要となり、適正なシール性能を発揮させるためのシール部材の装着工程を複雑にすることがあった。
そこで、本実施例のトロイダル式無段変速機1は、図2、図5に示すように、変速制御油圧室82の壁面に封止手段設置溝としてのシール部材設置溝120を設け、このシール部材設置溝120に封止手段としてのシール部材100を設置することで、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止している。
シール部材100及びシール部材設置溝120は、揺動軸6b周りに円環板状に形成されるフランジ部84の径方向外側に設けられる。さらに具体的には、このフランジ部84は、フランジ本体部84aと、フランジ先端部84bとを有する。フランジ本体部84aは、円環板状に形成され、回転軸線X3上の中心部分にてピストンベース83に固定されている。フランジ先端部84bは、円環板状に形成され、フランジ本体部84aの径方向外側にこのフランジ本体部84aと一体で設けられる。フランジ先端部84bは、回転軸線X3に沿った方向に対する肉厚がフランジ本体部84aの肉厚よりも厚く設定されている。そして、シール部材100及びシール部材設置溝120は、このフランジ先端部84bの径方向外側端面84cに対向するように、回転軸線X3を中心とした円環状に設けられる。
シール部材設置溝120は、変速制御油圧室82の壁面をなす油圧室構成部材85に設けられる。具体的には、シール部材設置溝120は、油圧室構成部材85をなすと共に、回転軸線X3に沿った方向に対して分割されたシリンダボデー86とロアカバー87とのうち、一方の油圧室構成部材85であるシリンダボデー86の側壁面に凹部として形成されている。
ここで、変速制御油圧室82は、上述したように、全体として、シリンダボデー86とロアカバー87とにより回転軸線X3を中心とした円筒状(シリンダ状)に形成され、フランジ部84によって第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに仕切られ区画される。
シリンダボデー86は、ボデー側軸挿入部壁面86a、ボデー側油圧室軸方向壁面86b、ボデー側油圧室周方向壁面86c、86g、ボデー側溝部側壁面86d、86f、ボデー側溝部底壁面86e、ボデー側設置壁面86hを有する。
ボデー側軸挿入部壁面86aは、回転軸線X3を中心とした円筒状の中空空洞部を形成するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側油圧室軸方向壁面86bは、円筒状(シリンダ状)の変速制御油圧室82の回転軸線X3に沿った方向に対する一方側(第1油圧室OP1側)の端面をなし、ボデー側軸挿入部壁面86aと連続するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側油圧室周方向壁面86cは、円筒状(シリンダ状)に形成され変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面をなし、ボデー側油圧室軸方向壁面86bと連続するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側溝部側壁面86dは、シール部材設置溝120の回転軸線X3に沿った方向に対する一方側(第1油圧室OP1側)の側壁面をなし、ボデー側油圧室周方向壁面86cと連続するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側溝部底壁面86eは、シール部材設置溝120の凹部開口と対向する底面をなし、ボデー側溝部側壁面86dと連続するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側溝部側壁面86fは、シール部材設置溝120の回転軸線X3に沿った方向に対する他方側(第2油圧室OP2側)の側壁面をなし、ボデー側溝部底壁面86eと連続するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側油圧室周方向壁面86gは、円筒状(シリンダ状)に形成され変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面をなし、ボデー側溝部側壁面86fと連続するようにシリンダボデー86に形成される。ボデー側設置壁面86hは、シリンダボデー86とロアカバー87との間に設けられるガスケット88と対向して接触する接触面をなし、ボデー側油圧室周方向壁面86gと連続するようにシリンダボデー86に形成される。
なお、ボデー側溝部側壁面86dとボデー側溝部側壁面86fとは、ボデー側溝部側壁面86dの外径とボデー側溝部側壁面86fの外径とがほぼ同じ大きさに設定されている一方、ボデー側溝部側壁面86fの内径がボデー側溝部側壁面86dの内径より大きく設定されている。このため、ボデー側油圧室周方向壁面86gは、その内径がボデー側油圧室周方向壁面86cの内径より大きく設定されることとなる。
一方、ロアカバー87は、カバー側軸挿入部壁面87a、カバー側油圧室軸方向壁面87bを有する。
カバー側軸挿入部壁面87aは、回転軸線X3を中心とした円筒状の中空空洞部を形成するようにロアカバー87に形成される。カバー側油圧室軸方向壁面87bは、円筒状(シリンダ状)の変速制御油圧室82の回転軸線X3に沿った方向に対する他方側(第2油圧室OP2側)の端面をなし、カバー側軸挿入部壁面87aと連続するようにロアカバー87に形成される。
シリンダボデー86とロアカバー87は、ボデー側軸挿入部壁面86a、カバー側軸挿入部壁面87aにシール部材Sを介してピストンベース83が挿入され、ボデー側油圧室軸方向壁面86bとカバー側油圧室軸方向壁面87bとが回転軸線X3に沿った方向に互いに対向するように配置される。シリンダボデー86とロアカバー87は、ボデー側設置壁面86hがガスケット88の一方の面に接触し、カバー側油圧室軸方向壁面87bの一部(ボデー側設置壁面86hと対向する部分)がガスケット88の他方の面に接触するように締結される。したがって、このトロイダル式無段変速機1は、シリンダボデー86とロアカバー87とによって、変速制御油圧室82を区画することができると共に、シリンダボデー86とロアカバー87との間に設けられるガスケット88によって、変速制御油圧室82内の作動油の外部への漏洩を防止することができる。
ボデー側溝部側壁面86d、ボデー側溝部底壁面86e及びボデー側溝部側壁面86fは、シール部材設置溝120をなす。すなわち、ボデー側溝部側壁面86d、ボデー側溝部底壁面86e及びボデー側溝部側壁面86fは、変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面に回転軸線X3を中心とした円環状凹部として形成される。そして、このシール部材設置溝120は、シール部材100が設けられる。
シール部材100は、上述したように、フランジ部84と変速制御油圧室82の壁面との間に設けられ、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を防止するものである。シール部材100は、フランジ部84周りに環状に設けられる無端部材を含んで構成され、本実施例のシール部材100は、O(オー)リング101と、合口無しシールリング102とにより構成される。Oリング101は、断面形状がO型をなすと共にカット部のない無端円環状に形成される。合口無しシールリング102は、断面形状が半円型、あるいは、面取りされた台形型をなすと共にカット部のない無端円環状に形成される。シール部材100をなすOリング101と、合口無しシールリング102とは、共にシール部材設置溝120内に設置される。Oリング101と、合口無しシールリング102とは、合口無しシールリング102がOリング101の内側に設けられる。
そして、Oリング101と、合口無しシールリング102とは、共にシール部材設置溝120内に設置された状態で、Oリング101がボデー側溝部底壁面86eと合口無しシールリング102とに接触する一方、合口無しシールリング102がOリング101とフランジ先端部84bの径方向外側端面84cに接触する。
上記のように構成されるトロイダル式無段変速機1は、Oリング101とボデー側溝部底壁面86e、合口無しシールリング102とが接触し、合口無しシールリング102とOリング101、フランジ先端部84bの径方向外側端面84cとが接触してボデー側溝部底壁面86eと径方向外側端面84cとの間を封止することで、Oリング101と合口無しシールリング102とにより、一方の油圧室と他方の油圧室との連通を防止することができる。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、Oリング101と合口無しシールリング102とにより、第1油圧室OP1から第2油圧室OP2への作動油の漏洩、第2油圧室OP2から第1油圧室OP1への作動油の漏洩を防止することができる。
そして、シール部材100としてOリング101と合口無しシールリング102とを組み合わせることで、例えば、カット部のある合口有りシールリングを用いた場合と比較して、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の作動油の相互の漏洩をより確実に防止することができる。すなわち、例えば、シール部材100としてカット部のある合口有りシールリングを単独で用いた場合、第1油圧室OP1が第2油圧室OP2より高圧になっているときには、この合口有りシールリングとシール溝の一方の側壁面(例えば、ボデー側溝部側壁面86f)とが接触して第1油圧室OP1と第2油圧室OP2との連通を防止する。そして、第2油圧室OP2が第1油圧室OP1より高圧になると、合口有りシールリングがシール溝の他方の側壁面(例えば、ボデー側溝部側壁面86d)まで移動し、この合口有りシールリングとシール溝の他方の側壁面とが接触して第1油圧室OP1と第2油圧室OP2との連通を防止する。このとき、第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とにおいて、高圧室と低圧室とが入れ替わり、合口有りシールリングがシール溝の一方の側壁面との接触位置から他方の側壁面との接触位置に移動する間、合口有りシールリングによる第1油圧室OP1と第2油圧室OP2との封止が一時的に解消されてしまう。つまり、第1油圧室OP1内の圧力と第2油圧室OP2内の圧力との高低が入れ替わる際に、一時的に第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とが連通する期間があり、この結果、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の作動油が相互に漏洩し、変速制御の精度が悪化するおそれがある。
しかしながら、本実施例のトロイダル式無段変速機1は、シール部材100としてOリング101と合口無しシールリング102とを組み合わせることから、Oリング101とボデー側溝部底壁面86e、合口無しシールリング102とが接触し、合口無しシールリング102とOリング101、フランジ先端部84bの径方向外側端面84cとが接触してボデー側溝部底壁面86eと径方向外側端面84cとの間を封止することで、第1油圧室OP1内の圧力と第2油圧室OP2内の圧力との高低が入れ替わる際でも第1油圧室OP1と第2油圧室OP2が連通することを抑制することができる。この結果、Oリング101と合口無しシールリング102とにより、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の作動油の相互の漏洩をより適正に防止することができ、適正な変速制御精度を確保することができる。
そして、シール部材100をなすOリング101、合口無しシールリング102は、変速制御油圧室82の壁面をなすシリンダボデー86の側壁面に凹部として形成されるシール部材設置溝120に設置されることから、Oリング101、合口無しシールリング102を塑性変形させることなく、弾性変形によってフランジ部84の径方向外側端面84cと変速制御油圧室82の壁面との間に適正に設けることができる。すなわち、シール部材100のシール部材設置溝120への装着工程として、無端環状のシール部材100を無理やり径方向外側に引っ張って広げる必要がなく、径方向内側に軽くたわませてシール部材設置溝120へ装着することができる。よって、シール部材100による適正なシール性能を発揮させるために、このシール部材100の塑性変形を元に戻す工程を必要とせず、この結果、シール部材100のシール部材設置溝120への装着工程を複雑にすることなく第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができ、適正な変速制御の精度を確保することができる。
さらに、本実施例では、ボデー側油圧室周方向壁面86gの内径がボデー側油圧室周方向壁面86cの内径より大きく設定されることから、シール部材100を装着した後にスリーブ140を設置することで、シール部材100を径方向内側にたわませることもなく、このシール部材100をシール部材設置溝120に設置することもできる。スリーブ140は、回転軸線X3を中心として円筒状に形成される。スリーブ140は、外径がボデー側油圧室周方向壁面86gの内径とほぼ等しく設定され、内径がボデー側油圧室周方向壁面86cの内径とほぼ等しく設定される。
この場合、シール部材100のシール部材設置溝120への装着工程として、まず、ボデー側軸挿入部壁面86aにピストンベース83が挿入されるようにシリンダボデー86を配置すると共に、ボデー側溝部側壁面86f側からシール部材100をなすOリング101、合口無しシールリング102をシール部材設置溝120内に設置する。そして、スリーブ140を外周面がボデー側油圧室周方向壁面86gと接触するように設ける。その後、カバー側軸挿入部壁面87aにピストンベース83が挿入されるようにロアカバー87を配置すると共に、シリンダボデー86とロアカバー87の間にガスケット88を挟んで、このロアカバー87をシリンダボデー86に締結する。これにより、シール部材100を径方向内側にたわませることもなく、シール部材設置溝120に設置することができる。
なお、シール部材100及びシール部材設置溝120は、変速制御ピストン81がトラニオン6と共に第1方向A1、あるいは、第2方向A2に最大限移動した位置においても、合口無しシールリング102がフランジ部84におけるフランジ先端部84bの径方向外側端面84cに接触可能な位置及び大きさに形成されている。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6と、トラニオン6に設けられるフランジ部84と、フランジ部84によって第1油圧室OP1、第2油圧室OP2に仕切られる変速制御油圧室82とを有し、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧によりフランジ部84に押圧力を作用させ、トラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置から変速位置に移動させ傾転させることで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、フランジ部84と変速制御油圧室82の壁面との間に設けられ、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を防止するシール部材100と、変速制御油圧室82の壁面に設けられ、シール部材100が設置されるシール部材設置溝120とを備える。
したがって、変速制御油圧室82の壁面にシール部材設置溝120を設け、このシール部材設置溝120にシール部材100を設置することで、シール部材100を塑性変形させることなくこのシール部材設置溝120に設置することができるので、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、トラニオン6は、回転軸線X3を回転中心として回転可能であると共に回転軸線X3に沿って中立位置と変速位置とに応じた位置に移動自在な揺動軸6bを有し、この揺動軸6bが回転することでパワーローラ4を傾転可能に支持し、変速制御油圧室82は、フランジ部84によって回転軸線X3に沿った方向に対して第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに仕切られ、シール部材100及びシール部材設置溝120は、揺動軸6b周りに環状に形成されるフランジ部84の径方向外側に設けられる。したがって、フランジ部84によって変速制御に用いられる変速制御油圧室82を第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに仕切ることができると共に、シール部材100及びシール部材設置溝120がフランジ部84の径方向外側にて、フランジ部84と変速制御油圧室82の壁面との間に設けられることから、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができ、十分な変速制御精度を確保することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、シール部材100は、少なくとも、フランジ部84周りに環状に設けられる複数の無端部材として、Oリング101と合口無しシールリング102とを含んで構成される。したがって、シール部材100としてOリング101と合口無しシールリング102とを組み合わせることから、Oリング101とボデー側溝部底壁面86e、合口無しシールリング102とが接触し、合口無しシールリング102とOリング101、フランジ先端部84bの径方向外側端面84cとが接触してボデー側溝部底壁面86eと径方向外側端面84cとの間を封止することで、第1油圧室OP1内の圧力と第2油圧室OP2内の圧力との高低が入れ替わる際でも第1油圧室OP1と第2油圧室OP2が連通することを抑制することができる。この結果、Oリング101と合口無しシールリング102とにより、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の作動油の相互の漏洩をより適正に防止することができる。
図6は、本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室のシール部材及びシール部材設置溝を示す部分断面図である。実施例2に係る無段変速機は、実施例1に係る無段変速機と略同様の構成であるが、封止手段設置溝の位置が実施例1に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
本実施例の無段変速機としてのトロイダル式無段変速機201は、図6に示すように、変速制御油圧室82の壁面に封止手段設置溝としてのシール部材設置溝220を設け、このシール部材設置溝220に封止手段としてのシール部材100を設置することで、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止している。
シール部材設置溝220は、変速制御油圧室82の壁面をなす油圧室構成部材85に設けられる。具体的には、シール部材設置溝220は、油圧室構成部材85をなすと共に、回転軸線X3に沿った方向に対して分割された第1構成部材としてのシリンダボデー286と第2構成部材としてのロアカバー287との分割部としてのボデー側設置壁面286f及びカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dに設けられる。より具体的には、シール部材設置溝220は、変速制御油圧室82に開口した凹部としてボデー側設置壁面286fに形成される。そして、ロアカバー287のカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dがこの凹部のボデー側設置壁面286fにおける開口を塞ぐように設けられることで、このカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dがシール部材設置溝220の側壁面をなす。
シリンダボデー286は、ボデー側軸挿入部壁面286a、ボデー側油圧室軸方向壁面286b、ボデー側油圧室周方向壁面286c、ボデー側溝部側壁面286d、ボデー側溝部底壁面286e、ボデー側設置壁面286fを有する。
ボデー側軸挿入部壁面286aは、回転軸線X3を中心とした円筒状の中空空洞部を形成するようにシリンダボデー286に形成される。ボデー側油圧室軸方向壁面286bは、円筒状(シリンダ状)の変速制御油圧室82の回転軸線X3に沿った方向に対する一方側(第1油圧室OP1側)の端面をなし、ボデー側軸挿入部壁面286aと連続するようにシリンダボデー286に形成される。ボデー側油圧室周方向壁面286cは、円筒状(シリンダ状)に形成され変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面をなし、ボデー側油圧室軸方向壁面286bと連続するようにシリンダボデー286に形成される。ボデー側油圧室周方向壁面286cは、第1油圧室OP1側にて、変速制御油圧室82の円筒状側面をなす。ボデー側溝部側壁面286dは、シール部材設置溝220の回転軸線X3に沿った方向に対する一方側(第1油圧室OP1側)の側壁面をなし、ボデー側油圧室周方向壁面286cと連続するようにシリンダボデー286に形成される。ボデー側溝部底壁面286eは、シール部材設置溝220の凹部開口と対向する底面をなし、ボデー側溝部側壁面286dと連続するようにシリンダボデー286に形成される。ボデー側設置壁面286fは、シリンダボデー286とロアカバー287との間に設けられるガスケット88と対向して接触する接触面をなし、ボデー側溝部底壁面286eと連続するようにシリンダボデー286に形成される。
一方、ロアカバー287は、カバー側軸挿入部壁面287a、カバー側油圧室軸方向壁面287b、カバー側油圧室周方向壁面287c、カバー側溝部側壁面兼設置壁面287dを有する。
カバー側軸挿入部壁面287aは、回転軸線X3を中心とした円筒状の中空空洞部を形成するようにロアカバー287に形成される。カバー側油圧室軸方向壁面287bは、円筒状(シリンダ状)の変速制御油圧室82の回転軸線X3に沿った方向に対する他方側(第2油圧室OP2側)の端面をなし、カバー側軸挿入部壁面287aと連続するようにロアカバー287に形成される。カバー側油圧室周方向壁面287cは、円筒状(シリンダ状)に形成され変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面をなし、カバー側油圧室軸方向壁面287bと連続するようにロアカバー287に形成される。カバー側油圧室周方向壁面287cは、第2油圧室OP2側にて、変速制御油圧室82の円筒状側面をなす。カバー側溝部側壁面兼設置壁面287dは、シール部材設置溝220の回転軸線X3に沿った方向に対する他方側(第2油圧室OP2側)の側壁面をなすと共に、シリンダボデー286とロアカバー287との間に設けられるガスケット88と対向して接触する接触面をなす。カバー側溝部側壁面兼設置壁面287dは、カバー側油圧室周方向壁面287cと連続するようにロアカバー287に形成される。
シリンダボデー286とロアカバー287は、ボデー側軸挿入部壁面286a、カバー側軸挿入部壁面287aにシール部材Sを介してピストンベース83が挿入され、ボデー側油圧室軸方向壁面286bとカバー側油圧室軸方向壁面287bとが回転軸線X3に沿った方向に互いに対向するように配置される。シリンダボデー286とロアカバー287は、ボデー側設置壁面286fがガスケット88の一方の面に接触し、カバー側溝部側壁面兼設置壁面287dの一部(ボデー側設置壁面286fと対向する部分)がガスケット88の他方の面に接触するように締結される。したがって、このトロイダル式無段変速機201は、シリンダボデー286とロアカバー287とによって、変速制御油圧室82を区画することができると共に、シリンダボデー286とロアカバー287との間に設けられるガスケット88によって、変速制御油圧室82内の作動油の外部への漏洩を防止することができる。
ボデー側溝部側壁面286d、ボデー側溝部底壁面286e及びカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dの一部(ボデー側設置壁面286fと対向しない部分、言い換えれば、ボデー側溝部側壁面286dと対向する部分)は、シール部材設置溝220をなす。すなわち、ボデー側溝部側壁面286d、ボデー側溝部底壁面286e及びカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dの一部は、変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面に回転軸線X3を中心とした円環状凹部として形成される。そして、このシール部材設置溝220は、シール部材100が設けられる。シール部材100は、実施例1と同様に、O(オー)リング101と、合口無しシールリング102とにより構成される。
上記のように構成されるトロイダル式無段変速機201は、Oリング101とボデー側溝部底壁面286e、合口無しシールリング102とが接触し、合口無しシールリング102とOリング101、フランジ先端部84bの径方向外側端面84cとが接触してボデー側溝部底壁面286eと径方向外側端面84cとの間を封止することで、Oリング101と合口無しシールリング102とにより、第1油圧室OP1から第2油圧室OP2への作動油の漏洩、第2油圧室OP2から第1油圧室OP1への作動油の漏洩を防止することができる。また、シール部材100としてOリング101と合口無しシールリング102とを組み合わせることで、例えば、カット部のある合口有りシールリングを用いた場合と比較して、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の作動油の相互の漏洩をより確実に防止することができる。
そして、シール部材100をなすOリング101、合口無しシールリング102は、変速制御油圧室82の壁面をなすシリンダボデー286の側壁面に凹部として形成されるシール部材設置溝220に設置されることから、Oリング101、合口無しシールリング102を塑性変形させることなく、フランジ部84の径方向外側端面84cと変速制御油圧室82の壁面との間に適正に設けることができる。
さらに、本実施例のトロイダル式無段変速機201は、シール部材設置溝220がシリンダボデー286とロアカバー287との分割部としてのボデー側設置壁面286f及びカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dに設けられることから、シール部材100をなすO(オー)リング101と合口無しシールリング102とを径方向内側にたわませることもなく、シール部材設置溝220に設置することができる。
すなわち、この場合、シール部材100のシール部材設置溝220への装着工程として、まず、ボデー側軸挿入部壁面286aにピストンベース83が挿入されるようにシリンダボデー286を配置すると共に、ボデー側設置壁面286f側からシール部材100をなすOリング101、合口無しシールリング102をシール部材設置溝220内に設置する。この時点では、まだ、ロアカバー287は、シリンダボデー286に組み付けられておらず、したがって、シール部材設置溝220のボデー側設置壁面286fにおける開口は、まだ、カバー側溝部側壁面兼設置壁面287dによって塞がれていない。このため、このシール部材設置溝220のボデー側設置壁面286fにおける開口を介して、Oリング101、合口無しシールリング102を変形させることなく、シール部材設置溝220内に設置することができる。その後、カバー側軸挿入部壁面287aにピストンベース83が挿入されるようにロアカバー287を配置すると共に、シリンダボデー286とロアカバー287の間にガスケット88を挟んで、このロアカバー287をシリンダボデー286に締結する。これにより、シール部材100を径方向外側にも径方向内側にも変形させることなく、このシール部材100をシール部材設置溝220に設置することができる。
また、変速制御ピストン81のフランジ部84を変速制御油圧室82内に収容するために従来から一般的に分割されているシリンダボデー286とロアカバー287との分割部としてのボデー側設置壁面286f及びカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dにシール部材100及びシール部材設置溝220を設けることから、部品点数が増加することを防止することもできる。さらに、実施例2のスリーブ140のような補助部材も必要ないことから、この点においても部品点数が増加することを防止することもできる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機201によれば、変速制御油圧室82の壁面にシール部材設置溝220を設け、このシール部材設置溝220にシール部材100を設置することで、シール部材100を塑性変形させることなくこのシール部材設置溝220に設置することができるので、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機201によれば、変速制御油圧室82の壁面をなすと共に、回転軸線X3に沿った方向に対して分割されたシリンダボデー286とロアカバー287とを備え、シール部材設置溝220は、シリンダボデー286とロアカバー287との分割部としてのボデー側設置壁面286f及びカバー側溝部側壁面兼設置壁面287dに設けられる。したがって、ロアカバー287とシリンダボデー286とが締結される前に、シール部材設置溝220のボデー側設置壁面286fにおける開口を介して、シール部材100をなすOリング101、合口無しシールリング102を径方向外側にも径方向内側にも変形させることなく、シール部材設置溝220内に設置することができる。
図7は、本発明の実施例3に係るトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室のシール部材及びシール部材設置溝を示す部分断面図である。実施例3に係る無段変速機は、実施例2に係る無段変速機と略同様の構成であるが、封止手段が第1構成部材と第2構成部材とに接触する位置に設けられる点で実施例2に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
本実施例の無段変速機としてのトロイダル式無段変速機301は、図7に示すように、変速制御油圧室82の壁面に封止手段設置溝としてのシール部材設置溝320を設け、このシール部材設置溝320に封止手段としてのシール部材100を設置することで、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止している。
シール部材設置溝320は、変速制御油圧室82の壁面をなす油圧室構成部材85に設けられる。具体的には、シール部材設置溝320は、油圧室構成部材85をなすと共に、回転軸線X3に沿った方向に対して分割された第1構成部材としてのシリンダボデー386と第2構成部材としてのロアカバー387との分割部としてのボデー側設置壁面386f及びカバー側設置壁面387fに設けられる。より具体的には、シール部材設置溝320は、変速制御油圧室82に開口してボデー側設置壁面386fに形成される凹部と、変速制御油圧室82に開口してカバー側設置壁面387fに形成される凹部とが互いに対向して隣接することで形成される。言い換えれば、シール部材設置溝320は、ボデー側設置壁面386fに形成される凹部のこのボデー側設置壁面386fにおける開口と、カバー側設置壁面387fに形成される凹部のこのカバー側設置壁面387fにおける開口とが向かい合って合わさることで形成される。
シリンダボデー386は、ボデー側軸挿入部壁面386a、ボデー側油圧室軸方向壁面386b、ボデー側油圧室周方向壁面386c、ボデー側溝部側壁面386d、ボデー側溝部傾斜底壁面386e、ボデー側設置壁面386fを有する。
ボデー側軸挿入部壁面386aは、回転軸線X3を中心とした円筒状の中空空洞部を形成するようにシリンダボデー386に形成される。ボデー側油圧室軸方向壁面386bは、円筒状(シリンダ状)の変速制御油圧室82の回転軸線X3に沿った方向に対する一方側(第1油圧室OP1側)の端面をなし、ボデー側軸挿入部壁面386aと連続するようにシリンダボデー386に形成される。ボデー側油圧室周方向壁面386cは、円筒状(シリンダ状)に形成され変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面をなし、ボデー側油圧室軸方向壁面386bと連続するようにシリンダボデー386に形成される。ボデー側油圧室周方向壁面386cは、第1油圧室OP1側にて、変速制御油圧室82の円筒状側面をなす。ボデー側溝部側壁面386dは、シール部材設置溝320の回転軸線X3に沿った方向に対する一方側(第1油圧室OP1側)の側壁面をなし、ボデー側油圧室周方向壁面386cと連続するようにシリンダボデー386に形成される。ボデー側溝部傾斜底壁面386eは、シール部材設置溝320の凹部開口と対向する底面をなし、ボデー側溝部側壁面386dと連続するようにシリンダボデー386に形成される。さらに、本実施例のトロイダル式無段変速機301では、ボデー側溝部傾斜底壁面386eは、ボデー側溝部側壁面386dに対して傾斜を有するように設定される。ボデー側溝部傾斜底壁面386eは、ボデー側溝部側壁面386dに対する凹部側の角度が鈍角となるように傾斜して設けられる。ボデー側設置壁面386fは、後述するロアカバー387のカバー側設置壁面387fと対向して接触する接触面をなし、ボデー側溝部傾斜底壁面386eと連続するようにシリンダボデー386に形成される。
一方、ロアカバー387は、カバー側軸挿入部壁面387a、カバー側油圧室軸方向壁面387b、カバー側油圧室周方向壁面387c、カバー側溝部側壁面387d、カバー側溝部傾斜底壁面387e、カバー側設置壁面387fを有する。
カバー側軸挿入部壁面387aは、回転軸線X3を中心とした円筒状の中空空洞部を形成するようにロアカバー387に形成される。カバー側油圧室軸方向壁面387bは、円筒状(シリンダ状)の変速制御油圧室82の回転軸線X3に沿った方向に対する他方側(第2油圧室OP2側)の端面をなし、カバー側軸挿入部壁面387aと連続するようにロアカバー387に形成される。カバー側油圧室周方向壁面387cは、円筒状(シリンダ状)に形成され変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面をなし、カバー側油圧室軸方向壁面387bと連続するようにロアカバー387に形成される。カバー側油圧室周方向壁面387cは、第2油圧室OP2側にて、変速制御油圧室82の円筒状側面をなす。カバー側溝部側壁面387dは、シール部材設置溝320の回転軸線X3に沿った方向に対する他方側(第2油圧室OP2側)の側壁面をなし、カバー側油圧室周方向壁面387cと連続するようにロアカバー387に形成される。カバー側溝部傾斜底壁面387eは、シール部材設置溝320の凹部開口と対向する底面をなし、カバー側溝部側壁面387dと連続するようにロアカバー387に形成される。さらに、本実施例のトロイダル式無段変速機301では、カバー側溝部傾斜底壁面387eは、カバー側溝部側壁面387dに対して傾斜を有するように設定される。カバー側溝部傾斜底壁面387eは、カバー側溝部側壁面387dに対する凹部側の角度が鈍角となるように傾斜して設けられる。また、ボデー側溝部傾斜底壁面386eとカバー側溝部傾斜底壁面387eは、上述したように、ボデー側設置壁面386fにおける開口とカバー側設置壁面387fにおける開口とが向かい合った状態において、凹部側の角度が鋭角となるように、それぞれ傾斜して形成される。カバー側設置壁面387fは、シリンダカバー386のボデー側設置壁面386fと対向して接触する接触面をなし、カバー側溝部傾斜底壁面387eと連続するようにロアカバー387に形成される。
シリンダボデー386とロアカバー387は、ボデー側軸挿入部壁面386a、カバー側軸挿入部壁面387aにシール部材Sを介してピストンベース83が挿入され、ボデー側油圧室軸方向壁面386bとカバー側油圧室軸方向壁面387bとが回転軸線X3に沿った方向に互いに対向するように配置される。そして、本実施例のシリンダボデー386とロアカバー387とは、間にガスケット88(図6参照)等を介さずに、ボデー側設置壁面386fとカバー側設置壁面387fとが接触するように締結される。
ボデー側溝部側壁面386d、ボデー側溝部傾斜底壁面386e、カバー側溝部側壁面387d及びカバー側溝部傾斜底壁面387eは、シール部材設置溝320をなす。すなわち、ボデー側溝部側壁面386d、ボデー側溝部傾斜底壁面386e、カバー側溝部側壁面387d及びカバー側溝部傾斜底壁面387eは、変速制御油圧室82の回転軸線X3周りの円筒状側面に回転軸線X3を中心とした円環状凹部として形成される。そして、このシール部材設置溝320は、シール部材100が設けられる。
シール部材100は、実施例1と同様に、O(オー)リング101と、合口無しシールリング102とにより構成される。そして、本実施例のOリング101は、シール部材設置溝320内に設置された状態で、シリンダボデー386のボデー側溝部傾斜底壁面386e、ロアカバー387のカバー側溝部傾斜底壁面387e及び合口無しシールリング102の3箇所に接触する。一方、合口無しシールリング102は、シール部材設置溝320内に設置された状態で、Oリング101とフランジ先端部84bの径方向外側端面84cに接触する。
上記のように構成されるトロイダル式無段変速機301は、Oリング101とボデー側溝部傾斜底壁面386e、カバー側溝部傾斜底壁面387e、合口無しシールリング102とが接触し、合口無しシールリング102とOリング101、フランジ先端部84bの径方向外側端面84cとが接触して、ボデー側溝部傾斜底壁面386e、カバー側溝部傾斜底壁面387eと径方向外側端面84cとの間を封止することで、Oリング101と合口無しシールリング102とにより、第1油圧室OP1から第2油圧室OP2への作動油の漏洩、第2油圧室OP2から第1油圧室OP1への作動油の漏洩を防止することができる。また、シール部材100としてOリング101と合口無しシールリング102とを組み合わせることで、例えば、カット部のある合口有りシールリングを用いた場合と比較して、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の作動油の相互の漏洩をより確実に防止することができる。また、シール部材100をなすOリング101、合口無しシールリング102は、変速制御油圧室82の壁面をなすシリンダボデー386、ロアカバー387の側壁面に凹部として形成されるシール部材設置溝320に設置されることから、Oリング101、合口無しシールリング102を塑性変形させることなく、フランジ部84の径方向外側端面84cと変速制御油圧室82の壁面との間に適正に設けることができる。また、本実施例のトロイダル式無段変速機301は、シール部材設置溝320がシリンダボデー386とロアカバー387との分割部としてのボデー側設置壁面386f及びカバー側設置壁面387fに設けられることから、シール部材100をなすO(オー)リング101と合口無しシールリング102とを径方向内側にたわませることもなく、シール部材設置溝320に設置することができる。
そして、本実施例のトロイダル式無段変速機301は、シール部材100をなすOリング101がシリンダボデー386のボデー側溝部傾斜底壁面386eとロアカバー387のカバー側溝部傾斜底壁面387eとに接触する位置に設けられることから、Oリング101により、ボデー側設置壁面386fとカバー側設置壁面387fとの間を介して変速制御油圧室82内の作動油が外部に漏洩することを防止することができる。すなわち、例えば、ガスケット88(図6参照)等を介さずにボデー側設置壁面386fとカバー側設置壁面387fとが接触するように、シリンダボデー386とロアカバー387とを締結しても、Oリング101がシリンダボデー386のボデー側溝部傾斜底壁面386eとロアカバー387のカバー側溝部傾斜底壁面387eとに接触し、変速制御油圧室82の内部と外部とが連通することを防止し、封止することができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機301によれば、変速制御油圧室82の壁面にシール部材設置溝320を設け、このシール部材設置溝320にシール部材100を設置することで、シール部材100を塑性変形させることなくこのシール部材設置溝320に設置することができるので、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機301によれば、シール部材設置溝320は、シリンダボデー386とロアカバー387とによって形成され、シール部材100は、シリンダボデー386とロアカバー387とに接触する位置に設けられる。したがって、シール部材100がシリンダボデー386とロアカバー387とに接触する位置に設けられることから、シリンダボデー386とロアカバー387との間の境界を介して変速制御油圧室82内の作動油が外部に漏洩することを防止することができる。この結果、トロイダル式無段変速機301は、例えば、実施例1、実施例2のガスケット88(図6参照)等を備えなくても変速制御油圧室82内の作動油が外部に漏洩することを防止することができ、よって、トロイダル式無段変速機301を構成する部品点数を削減することができ、製造コストを削減することができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る無段変速機は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施例に係る無段変速機は、以上で説明した実施例を複数組み合わせることで構成してもよい。また、以上の説明では、無段変速機はダブルキャビティ型のトロイダル式無段変速機であるものとして説明したが、これに限らない。
以上の説明では、封止手段は、フランジ部周りに環状に設けられる複数の無端部材を含んで構成され、O(オー)リングと、合口無しシールリングとにより構成されるものとして説明したが、これに限らず、例えば、1つの無端部材により構成するようにしてもよい。また、以上の実施例1の説明では、トロイダル式無段変速機1は、ボデー側油圧室周方向壁面86gの内径をボデー側油圧室周方向壁面86cの内径より大きく設定し、スリーブ140を備えるものとして説明したが、ボデー側油圧室周方向壁面86gの内径とボデー側油圧室周方向壁面86cの内径とを等しい大きさに設定し、スリーブ140を備えない構成としてもよい。
以上のように、本発明に係る無段変速機は、複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を適正に防止することができるものであり、パワーローラを有する種々のハーフトロイダル式の無段変速機に適用して好適である。
本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の概略断面図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の要部の構成図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室のシール部材及びシール部材設置溝を示す部分断面図である。 本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室のシール部材及びシール部材設置溝を示す部分断面図である。 本発明の実施例3に係るトロイダル式無段変速機の変速制御油圧室のシール部材及びシール部材設置溝を示す部分断面図である。
符号の説明
1、201、301 トロイダル式無段変速機(無段変速機)
2 入力ディスク
3 出力ディスク
4 パワーローラ
5 変速比変更部(変速比変更手段)
6 トラニオン(支持手段)
6b 揺動軸
7 移動部
8 油圧ピストン部
81 変速制御ピストン
82 変速制御油圧室
83 ピストンベース
84 フランジ部
84a フランジ本体部
84b フランジ先端部
84c 径方向外側端面
85 油圧室構成部材
86、286、386 シリンダボデー(第1構成部材)
86h ボデー側設置壁面(分割部)
87、287、387 ロアカバー(第2構成部材)
87b カバー側油圧室軸方向壁面(分割部)
88 ガスケット
100 シール部材(封止手段)
101 Oリング
102 合口無しシールリング
120、220、320 シール部材設置溝(封止手段設置溝)
140 スリーブ
286f、386f ボデー側設置壁面(分割部)
287d カバー側溝部側壁面兼設置壁面(分割部)
387f カバー側設置壁面(分割部)

Claims (5)

  1. 駆動力が入力される入力ディスクと、
    前記駆動力が出力される出力ディスクと、
    前記入力ディスクと前記出力ディスクとに接触して設けられるパワーローラと、
    前記パワーローラを回転自在、かつ、前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対して傾転自在に支持する支持手段と、前記支持手段に設けられるフランジ部と、前記フランジ部によって複数の油圧室に仕切られる変速制御油圧室とを有し、前記変速制御油圧室に供給される作動油の油圧により前記フランジ部に押圧力を作用させ、前記支持手段と共に前記パワーローラを前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動させ傾転させることで、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比である変速比を変更可能な変速比変更手段と、
    前記フランジ部と前記変速制御油圧室の壁面との間に設けられ、前記複数の油圧室の相互の作動油の漏洩を防止する封止手段と、
    前記変速制御油圧室の壁面に設けられ、前記封止手段が設置される封止手段設置溝とを備えることを特徴とする、
    無段変速機。
  2. 前記支持手段は、回転軸線を回転中心として回転可能であると共に前記回転軸線に沿って前記中立位置と前記変速位置とに応じた位置に移動自在な揺動軸を有し、該揺動軸が回転することで前記パワーローラを傾転可能に支持し、
    前記変速制御油圧室は、前記フランジ部によって前記回転軸線に沿った方向に対して第1油圧室と第2油圧室とに仕切られ、
    前記封止手段及び前記封止手段設置溝は、前記揺動軸周りに環状に形成される前記フランジ部の径方向外側に設けられることを特徴とする、
    請求項1に記載の無段変速機。
  3. 前記変速制御油圧室の壁面をなすと共に、前記回転軸線に沿った方向に対して分割された第1構成部材と第2構成部材とを備え、
    前記封止手段設置溝は、前記第1構成部材と前記第2構成部材との分割部に設けられることを特徴とする、
    請求項2に記載の無段変速機。
  4. 前記封止手段設置溝は、前記第1構成部材と前記第2構成部材とによって形成され、
    前記封止手段は、前記第1構成部材と前記第2構成部材とに接触する位置に設けられることを特徴とする、
    請求項3に記載の無段変速機。
  5. 前記封止手段は、少なくとも、前記フランジ部周りに環状に設けられる複数の無端部材を含んで構成されることを特徴とする、
    請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の無段変速機。
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