JP2009275718A - 無段変速機 - Google Patents

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秀明 高原
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Abstract

【課題】被牽引時における入力軸上の構成部品の耐久性を向上できるとともに、被牽引からの停止時にベルトを減速側へ十分戻すことができる、無段変速機を提供する。
【解決手段】プライマリプーリ250は、可動シーブ270とハウジング部292との間に介在する、密封構造のシール部材299を含む。セカンダリプーリは、可動シーブ370とハウジング部392との間に介在する、合口構造を有するシール部材399を含む。プライマリプーリ250には、可動シーブ270が無段変速機の最増速比時に配置される位置よりも固定シーブ260に接近したときに、油圧室291の内部と外部とを連通する、連通孔294が形成されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、無段変速機に関し、特に、変速プーリのプーリ幅を変化させて変速を行なう無段変速機に関する。
従来の一般的な無段変速機は、油圧により自在に溝幅を変化させることが可能な一対の変速プーリと、変速プーリに巻き掛けられた伝動ベルトとを備える。従来の変速プーリに関する技術は、たとえば特許文献1および2に開示されている。特許文献1および2では、駆動側プーリの可動プーリ片の背部に、シリンダ内圧が所定圧以上となったときに開口する弁構造を設けた構成が開示されている。
無段変速機を採用した車両においては、被牽引時に前後進の切換部のプラネタリギヤなどが苛酷な状態に置かれることがあるという問題がある。すなわち、エンジンが停止しているときは、一般に(次の発進を円滑にするために)無段変速部のギヤ比はロー側に固定される。そのため、被牽引時において、車輪を接地させた状態で牽引されて動力伝達系が車輪側から駆動されると、無段変速機の下流側(エンジンからみると無段変速機の上流側)にある前後進の切換部は非常に速い速度で回転する。
一方、前後進の切換部は発進クラッチやトルクコンバータの上流側(エンジン側からみると発進クラッチやトルクコンバータの下流側)にあるためそのまま駆動されるが、オイルポンプは該発進クラッチやトルクコンバータの下流側(エンジン側からみると発進クラッチやトルクコンバータの上流側)にあるため駆動されないという事情がある。その結果、潤滑油が流れない状態で前後進の切換部のプラネタリギヤなどが回転させられるため、被牽引速度が速かったり、被牽引時間が長くなったりすると焼き付きなどの不具合が発生する虞れがある。
このような被牽引時における入力軸上のプラネタリギヤの焼き付きなどの不具合を防止する技術は、たとえば特許文献3に開示されている。特許文献3では、ベルト式無段変速機の油路に切換弁を設け、ライン圧が零でない通常走行時には油路を閉じ、被牽引時などライン圧が零のときは油路を開くようにして入力側シーブをドレンと連通し、入力側シーブの回転による遠心油圧を利用して入力側シーブに油を導き、増速変速を達成して入力軸回転数を下げる、油圧制御装置が開示されている。
特開平5−332412号公報 特開平5−340454号公報 特開平11−182667号公報
被牽引時に入力側のプーリ油圧室と出力側のプーリ油圧室との残油の遠心油圧の差を利用してベルトを増速側へ変速させ、入力軸上の構成部品の耐久性を向上させるためには、入力側のプーリ油圧室の残油量を多く、出力側のプーリ油圧室の残油量を少なくする必要がある。エンジン停止時に入力側プーリ油圧室の残油量を多く保ち出力側プーリ油圧室の残油量を少なくするためには、入力側プーリ油圧室の油圧シールを合口を持たない環状構造とし、出力側プーリ油圧室の油圧シールを合口のある構造とすることが考えられる。
しかしながら、それぞれのプーリ油圧室の残油量は、そのときの油温、物のバラツキ、エンジン停止後から被牽引を開始する時間などによってばらつくため、残油量を最適な状
態に保つことは非常に困難である。入力側プーリ油圧室の遠心油圧力が出力側プーリ油圧室の遠心油圧力よりも大きすぎると、ベルトが増速側へ変速しすぎる場合がある。ベルトが増速側へ変速しすぎると、被牽引からの停止時にベルトを減速側へ十分戻すことができず、再発進時の動力性能が低下する場合がある。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、被牽引時における入力軸上の構成部品の耐久性を向上できるとともに、被牽引からの停止時にベルトを減速側へ十分戻すことができる、無段変速機を提供することである。
本発明に係る無段変速機は、プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリと、セカンダリシャフトに設けられたセカンダリプーリとを備える。プライマリプーリは、プライマリシャフトに固定された第一固定シーブと、プライマリシャフトの軸方向に移動可能であってプライマリシャフトとともに回転する第一可動シーブと、第一可動シーブをプライマリシャフトの軸方向に移動させる第一油圧駆動部とを含む。セカンダリプーリは、セカンダリシャフトに固定された第二固定シーブと、セカンダリシャフトの軸方向に移動可能であってセカンダリシャフトとともに回転する第二可動シーブと、第二可動シーブをセカンダリシャフトの軸方向に移動させる第二油圧駆動部とを含む。第一油圧駆動部は、第一ハウジング部と、第一ハウジング部および第一可動シーブによって囲まれた第一油圧室とを有する。第一油圧駆動部は、第一油圧室内の油圧を増減させて第一可動シーブをプライマリシャフトの軸方向に移動させる。第二油圧駆動部は、第二ハウジング部と、第二ハウジング部および第二可動シーブによって囲まれた第二油圧室とを有する。第二油圧駆動部は、第二油圧室内の油圧を増減させて第二可動シーブをセカンダリシャフトの軸方向に移動させる。プライマリプーリは、第一可動シーブと第一ハウジング部との間に介在する、密封構造の第一シール部材をさらに含む。セカンダリプーリは、第二可動シーブと第二ハウジング部との間に介在する、合口構造を有する第二シール部材をさらに含む。プライマリプーリには、第一可動シーブが無段変速機の最増速比時に配置される位置よりも第一固定シーブに接近したときに、第一油圧室の内部と外部とを連通する、連通孔が形成されている。
連通孔は、第一ハウジング部に形成されており、無段変速機の最増速比時に第一油圧室の内壁を形成している部分よりも第一固定シーブに近接する位置において、第一ハウジング部を貫通するように形成されていてもよい。
本発明の無段変速機によると、第一可動シーブと第一ハウジング部との間が密封されているために、エンジン停止時に第一油圧室からは油が漏出しない。一方、第二可動シーブと第二ハウジング部との間には合口構造が形成されており、エンジン停止時に第二油圧室から油が漏出する。そのため、エンジン停止時に第一油圧室の残油量を多く、第二油圧室の残油量を少なくすることができるので、被牽引時に第一油圧室と第二油圧室との残油の遠心油圧の差を利用して無段変速機を増速側へ変速させ、入力軸上の構成部品の耐久性を向上させることができる。
また、被牽引時に、第一可動シーブが無段変速機の最増速比時に配置される位置よりも第一固定シーブに接近したとき、第一油圧室内の油を連通孔から流出させて、第一油圧室内の油圧の上昇を抑制できる。そのため、ベルトが増速側へ変速しすぎることを抑制できるので、被牽引からの停止時にベルトを減速側へ十分戻すことが可能となる。
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、
同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
図1は、実施の形態1の無断変速機の構成を示す断面模式図である。図1に示すベルト式の無段変速機100は、自動車などの車両に搭載される。無段変速機100は、変速機構部130を備える。
変速機構部130は、エンジンから回転力が入力される駆動側(入力側)のプライマリシャフト200と、回転力を出力する従動側(出力側)のセカンダリシャフト300と、プライマリシャフト200に設けられたプライマリプーリ250と、セカンダリシャフト300に設けられたセカンダリプーリ350とを含む。プライマリシャフト200とセカンダリシャフト300とは、互いに間隔を隔てて平行に配置されている。
無段変速機100は、ディファレンシャル部150を含む。ディファレンシャル部150は、変速機構部130と動力伝達可能に設けられている。ディファレンシャル部150は、リングギヤ153を含み、リングギヤ153は、ギヤ151,152を介在させてセカンダリシャフト300に連結されている。変速機構部130から動力伝達を受けたディファレンシャル部150は、車両旋回時の左右車輪の回転速度を変えながら、両輪に均等な駆動力を伝達する。
無段変速機100は、ケース体175を含む。ケース体175は、変速機構部130およびディファレンシャル部150を収容し、無段変速機100の外形をなす。ケース体175は、トランスアクスルハウジング171と、トランスアクスルケース170と、トランスアクスルリヤカバー172とを含む。トランスアクスルケース170に対してエンジン側にトランスアクスルハウジング171が配置され、その反対側にトランスアクスルリヤカバー172が配置されている。
ケース体175は、変速機構室135を形成する。変速機構室135には、変速機構部130が収容されている。変速機構室135は、トランスアクスルケース170およびトランスアクスルリヤカバー172により、形成されている。
プライマリプーリ250は、無段変速機100の入力側の回転シャフトであるプライマリシャフト200に設けられる、入力側の変速プーリである。プライマリプーリ250は、プライマリシャフト200とともに、仮想軸であるプライマリシャフト200の中心軸を中心に回転する。プライマリプーリ250は、第一固定シーブとしての固定シーブ260と、第一可動シーブとしての可動シーブ270と、可動シーブ270を駆動する第一油圧駆動部としての油圧アクチュエータ290とを備えている。
固定シーブ260は、プライマリシャフト200に固定されており、プライマリシャフト200に対して周方向および軸方向に移動しないように固定されている。固定シーブ260は、プライマリシャフト200の外周面から径方向外方側に向けて延びており、円板状に形成されている。
可動シーブ270は、固定シーブ260に対して、プライマリシャフト200の仮想の中心軸方向に間隔を隔てて、プライマリシャフト200に設けられている。可動シーブ270は、プライマリシャフト200に対して軸方向に移動可能に設けられている。可動シ
ーブ270は、プライマリシャフト200に対して周方向に移動しないように設けられており、プライマリシャフト200とともに回転する。
固定シーブ260の動力伝達面265と、可動シーブ270の動力伝達面275とによって、金属ベルト400がはめ込まれるプーリ溝280が規定されている。
セカンダリプーリ350は、無段変速機100の出力側の回転シャフトであるセカンダリシャフト300に設けられる、出力側の変速プーリである。セカンダリプーリ350は、セカンダリシャフト300とともに、仮想軸であるセカンダリシャフト300の中心軸を中心に回転する。セカンダリプーリ350は、第二固定シーブとしての固定シーブ360と、第二可動シーブとしての可動シーブ370と、可動シーブ370を固定シーブ360に対して進退可能に駆動する第二油圧駆動部としての油圧アクチュエータ390とを備えている。
固定シーブ360は、セカンダリシャフト300に一体成形されており、セカンダリシャフト300に対して周方向および軸方向に移動しないように固定されている。固定シーブ360は、セカンダリシャフト300の外周面から径方向外方側に向けて延びており、円板状に形成されている。
固定シーブ360の表面のうち、可動シーブ370と対向する部分は、金属ベルト400と接触する動力伝達面365とされている。動力伝達面365は、セカンダリシャフト300の径方向外方に向かうにしたがって、可動シーブ370から離れるように傾斜している。
可動シーブ370は、固定シーブ360に対して、セカンダリシャフト300の仮想の中心軸方向に間隔を隔てて、セカンダリシャフト300に設けられている。可動シーブ370は、セカンダリシャフト300に対して軸方向に移動可能に設けられている。可動シーブ370は、セカンダリシャフト300に対して周方向に移動しないように設けられており、セカンダリシャフト300とともに回転する。
可動シーブ370は、内部にセカンダリシャフト300が挿入される筒状の筒部と、この筒部のうち、固定シーブ360側の端部に連設された円板状の鍔部とを備えている。可動シーブ370の鍔部は、円環状に形成されている。
可動シーブ370の筒部は、円筒状に形成されており、セカンダリシャフト300の中心軸方向に向けて延びている。可動シーブ370は、セカンダリシャフト300の中心軸方向に移動可能に設けられている一方で、セカンダリシャフト300の周方向に回転できないようになっている。
可動シーブ370の鍔部の表面のうち、固定シーブ360と対向する部分は、金属ベルト400と接触する動力伝達面375とされている。動力伝達面375は、セカンダリシャフト300の径方向外方に向かうにしたがって、固定シーブ360から離れるように傾斜している。
固定シーブ360の動力伝達面365と可動シーブ370の動力伝達面375とによって、金属ベルト400がはめ込まれるプーリ溝380が規定されている。
この無段変速機100においては、金属ベルト400が、プライマリシャフト200に取付けられたプライマリプーリ250およびセカンダリシャフト300に取付けられたセカンダリプーリ350に、巻きかけられて使用される。金属ベルト400は、たとえば、
可撓性を有する帯状のスチールリングと、スチールリングの長手方向に配列され、スチールリングに嵌め合わされる複数のエレメントとから構成されている。
金属ベルト400は、プライマリプーリ250の内周面であるプーリ溝280に面する動力伝達面265,275と、セカンダリプーリ350の内周面であるプーリ溝380に面する動力伝達面365,375とに摩擦接触する、動力伝達部材として機能する。これにより、金属ベルト400は、プライマリプーリ250と、セカンダリプーリ350との間で、動力を伝達する。
車両の走行状態に応じて油圧アクチュエータ290,390を制御して、溝幅を無段階に変えられるプーリ溝280,380の溝幅を変えることで、金属ベルト400のプライマリプーリ250およびセカンダリプーリ350に対する巻付け半径が変わる。これにより、変速機構部130は、プライマリシャフト200の回転数とセカンダリシャフト300の回転数との比率、すなわち変速比を無段階に(連続的に)変化させる。
図2は、図1中の無段変速機の最減速比時の状態を示す模式図である。図3は、図1中の無段変速機の最増速比時の状態を示す図である。ここで、最減速比時とは、駆動力源であるエンジンから入力された動力によって車両の動輪を回転させる通常制御状態において、プライマリシャフト200の回転数に対するセカンダリシャフト300の回転数の比が最も小さくなるときである。また最増速比時とは、上記通常制御状態において、プライマリシャフト200の回転数に対するセカンダリシャフト300の回転数の比が最も大きくなるときである。
図2および図3に示すように、油圧アクチュエータ290,390の作動に伴って、プーリ溝280および380の溝幅が可変制御される。これにより、プライマリプーリ250およびセカンダリプーリ350に対する金属ベルト400の巻き掛け半径(有効係り径)が大小に変化し、変速が実行される。つまり、プライマリプーリ250およびセカンダリプーリ350は、金属ベルト400のプーリへの有効係り径を変化させることが可能である、可変径プーリである。
図2に示すように、セカンダリプーリ350およびセカンダリシャフト300の単位時間内における回転数は、最減速比時において最も小さくなる。可動シーブ370は、最減速比時において、固定シーブ360に最も近接する。図3に示すように、セカンダリプーリ350およびセカンダリシャフト300の単位時間内における回転数は、最増速比時において最も大きくなる。可動シーブ270は、最増速比時において、固定シーブ260に最も近接する。
図4は、図1に示す領域IV付近を拡大してプライマリプーリの構成を示す断面模式図である。図4において、プライマリシャフト200の仮想の中心軸201より上側は、最減速比の時のプライマリプーリ250を示し、中心軸201より下側は、最増速比の時のプライマリプーリ250を示す。図1および図4に示すように、プライマリシャフト200の一方の端部202は、軸受210によって、トランスアクスルリヤカバー172に回転可能に支持されている。そして、プライマリシャフト200の他方の端部203は、軸受211によって、トランスアクスルハウジング171に回転可能に支持されている。
プライマリシャフト200は、他方の端部203から一方の端部202に向けて延びる大径部204と、この大径部204より小径とされ、大径部204に対して端部202側に隣り合う中径部205と、この中径部205よりも小径に形成され、中径部205に対して端部202側に隣り合う小径部206とを備えている。大径部204と中径部205との境界位置には、段差部207が形成されており、中径部205と小径部206との境
界位置には、段差部208が形成されている。
中径部205の外表面には、中心軸201方向に向けて延び、中径部205の周方向に間隔を隔てて形成された複数のスプライン(係合部)209が形成されている。プライマリシャフト200の端部202には、ナット240が螺着されている。プライマリシャフト200のうち、ナット240に対して端部203側に隣り合う部分に、軸受210が圧入されている。
プライマリシャフト200の内部には、中心軸201方向に延びる油路220と、中心軸201方向に間隔を隔てて径方向に延びる油路221,223が形成されている。油路221は、油路220と、後述する油圧アクチュエータ290の油圧室291とを連通する。油路220と油圧室291とはまた、可動シーブ270の内部に形成された油路222、可動シーブ270とプライマリシャフト200の外周面との隙間の空間224、および油路223を経由する油の経路によっても連通されている。
固定シーブ260は、プライマリシャフト200のうち、軸受211に対して端部202側に隣り合う位置に形成されており、大径部204に一体成形されている。固定シーブ260は、プライマリシャフト200の外周面から径方向外方側に向けて延びており、円板状に形成されている。
固定シーブ260は、プライマリシャフト200の径方向外方側に向けて張り出す円板状の鍔部を含む。固定シーブ260の鍔部の表面のうち、可動シーブ270と対向する部分は、金属ベルト400と接触する動力伝達面265とされている。動力伝達面265は、プライマリシャフト200の径方向外方に向かうにしたがって、可動シーブ270から離れるように傾斜している。
可動シーブ270は、固定シーブ260に対して軸受211と反対側に、プライマリシャフト200の仮想の中心軸201方向に間隔を隔てて、プライマリシャフト200に設けられている。
可動シーブ270は、内部にプライマリシャフト200が挿入される筒状の筒部271と、この筒部271に形成され、プライマリシャフト200の径方向外方側に向けて張り出す円板状の鍔部272とを含む。可動シーブ270の鍔部のうち、固定シーブ260と対向する部分は、金属ベルト400と接触する動力伝達面275とされている。動力伝達面275は、プライマリシャフト200の径方向外方に向かうにしたがって、固定シーブ260から離れるように傾斜している。
鍔部272は、円環状に形成されており、固定シーブ260側の筒部271の端部に連設されている。鍔部272の内径は、筒部271の内径より大きくなるように形成されている。このため、鍔部272の内表面と、筒部271の内表面との境界部分には、段差部273が形成されている。
筒部271は、円筒状に形成されており、中心軸201方向に向けて延びている。筒部271の内表面には、スプライン209に対応するスプライン(係合部)が中心軸201方向に沿って形成されている。このため、可動シーブ270は、中心軸201方向に移動可能に設けられている一方で、プライマリシャフト200の周方向に回転できないようになっている。
可動シーブ270の外周面のうち、鍔部272の筒部271側における外径は、筒部271の鍔部272側の端部の外径よりも大きくなっている。このため、可動シーブ270
の外周面において、筒部271と、鍔部272との境界部分には、段差部274が形成されている。
そして、可動シーブ270の表面のうち、動力伝達面275と反対側に位置する側面には、円筒状のシリンダ部276が形成されている。このシリンダ部276は、中心軸201方向に沿って延びており、端部202側に突出している。
油圧アクチュエータ290は、可動シーブ270に対して、固定シーブ260と反対側に設けられている。油圧アクチュエータ290は、可動シーブ270と協働して、第一油圧室としての油圧室291を規定する、第一ハウジング部としてのハウジング部(油圧室規定部材)292を備える。油圧室291は、ハウジング部292および可動シーブ270によって囲まれている。ハウジング部292の端部202側の端部は、段差部208に係止されている。
油圧アクチュエータ290は、油圧室291内の油圧を増減させて可動シーブ270をプライマリシャフト200の軸方向に移動させ、可動シーブ270を固定シーブ260に対して近接させたり、離間させたりすることで、プーリ溝280の溝幅を変化させる。
油圧室291内には、油路220から油路221,223を経由して油が供給され、油圧室291内の油圧を上昇させる。油路221から排出されるオイルは、筒部271の内周面と、中径部205の外周面との間を通って、油圧室291内に達する。このため、筒部271と中径部205との間の摩擦を低減することができ、可動シーブ270は、良好に中心軸201方向に移動することができる。
ハウジング部292は、プライマリシャフト200の中心軸201方向に延在する、中空円筒形状のスリーブ部293を有する。スリーブ部293は、プライマリシャフト200と中心軸201を共有する、円筒形状に形成されている。スリーブ部293は、ハウジング部292の最もプライマリシャフト200から離れる位置に形成されている。スリーブ部293は、可動シーブ270のシリンダ部276に対して、プライマリシャフト200の径方向外側に形成されている。
ハウジング部292は、スリーブ部293の内周側において、シール部材299を介在させて可動シーブ270のシリンダ部276の外周側と近接対向している。可動シーブ270とハウジング部292との間には、シール部材299が介在している。シール部材299は、たとえばOリングのような、弾性変形して可動シーブ270とハウジング部292との隙間を密封できる環状のシール材である。プライマリプーリ250は、可動シーブ270とハウジング部292との間に介在する、密封構造の第一シール部材としてのシール部材299を含む。密封シール材であるシール部材299が介在しているために、可動シーブ270とハウジング部292との間からは、油圧室291内の油が漏出しない構造となっている。
ここで、図4の中心軸201より下側に示す無段変速機100の最増速比時においては、可動シーブ270は固定シーブ260に接近する側へ移動する。この最増速比時においてスリーブ部293にシール部材299が接触している位置(すなわち、可動シーブ270とハウジング部292とが近接対向している位置)よりも固定シーブ260に近接する側にあるスリーブ部293の位置において、スリーブ部293を貫通する連通孔294が形成されている。連通孔294は、ハウジング部292のスリーブ部293に形成されている。連通孔294は、ハウジング部292の、図4の中心軸201より下側に示す最増速比時に油圧室291の内壁を形成する部分よりも固定シーブ260に近接する位置において、ハウジング部292を貫通するように形成されている。
セカンダリプーリ350において、可動シーブ370は、固定シーブ360に対してセカンダリシャフト300の仮想の中心軸方向に間隔を隔てて、セカンダリシャフト300に設けられている。可動シーブ370は、セカンダリシャフト300の径方向外方側に向けて張り出す円板状の鍔部372を含む。可動シーブ370の表面のうち、動力伝達面375と反対側に位置する側面には、円筒状のシリンダ部376が形成されている。このシリンダ部376は、セカンダリシャフト300の仮想の中心軸方向に沿って延びており、固定シーブ360と反対側に突出している。
油圧アクチュエータ390は、可動シーブ370に対して、固定シーブ360と反対側に位置している。油圧アクチュエータ390は、可動シーブ370と協働して第二油圧室を規定する、第二ハウジング部としてのハウジング部392を備える。また油圧アクチュエータ390は、ハウジング部392および可動シーブ370の鍔部372を互いに離間するように付勢する、コイルバネなどの弾性部材を備えている。油圧アクチュエータ390の油圧室である第二油圧室は、ハウジング部392および可動シーブ370によって囲まれている。
油圧アクチュエータ390は、上記第二油圧室内の油圧を増減させて可動シーブ370をセカンダリシャフト300の軸方向に移動させ、可動シーブ370を固定シーブ360に対して近接させたり、離間させたりすることで、プーリ溝380の溝幅を変化させる。
ハウジング部392は、シール部材399を介在させて可動シーブ370のシリンダ部376と近接対向している。可動シーブ370とハウジング部392との間には、シール部材399が介在している。シール部材399は、環状のシール材の一部が切断されて隙間が形成されている、合口構造を有する。セカンダリプーリ350は、可動シーブ370とハウジング部392との間に介在する、合口構造を有する第二シール部材としてのシール部材399を含む。合口構造が形成されているシール部材399が介在しているために、セカンダリシャフト300の回転時には、油圧室内の油に作用する遠心力によって可動シーブ370とハウジング部392との隙間は密封される。一方、セカンダリシャフト300の非回転時には、可動シーブ370とハウジング部392との間に隙間が生じ、その隙間から油が漏出できる構造となっている。
以下、車両の被牽引時における無段変速機100の動作について説明する。車両の被牽引時にはエンジンが停止しており、オイルポンプも停止しているために、セカンダリプーリ350の油圧室(第二油圧室)からは合口構造を有するシール部材399の隙間を通って油が漏出し、第二油圧室内には油が供給されない状態である。一方、プライマリプーリ250では、シール部材299によってハウジング部292と可動シーブ270との隙間が密閉シールされているために、油圧室291からは油が漏出せず、油圧室291内には油が充填されている。つまり、入力側のプライマリプーリ250の油圧室291と出力側のセカンダリプーリ350の油圧室との残油量が異なっており、プライマリプーリ250の油圧室291内の残油量が相対的に多く、セカンダリプーリ350の油圧室の残油量が相対的に少なくされている。
そのため、被牽引時に動力伝達系が車輪側から駆動されると、プライマリプーリ250の油圧室291とセカンダリプーリ350の油圧室との残油の遠心油圧に差が発生する。つまり、油圧室内の残油量がより大きなプライマリプーリ250に、より大きな遠心油圧が発生する。油圧室291内の油圧が上昇するために可動シーブ270は固定シーブ260へ接近する側へ移動する。このように、車両の被牽引時に遠心油圧の差を利用して、金属ベルト400を増速側へ変速させ、プライマリシャフト200の回転数を下げることにより、前後進の切換部などのプライマリシャフト200上の構成部品の耐久性を向上させ
ることができる。
図5は、図4に示す領域V付近を拡大して、被牽引時の入力側の可動シーブの移動を示す模式図である。油圧室291内に発生する遠心油圧が大きくなると、可動シーブ270は、図4の中心軸201より下側に示す無段変速機100の最増速比時に配置される位置よりも、固定シーブ260に接近する側へ移動する。
このとき、ハウジング部292のスリーブ部293に連通孔294が形成されているために、油圧室291の内部は、連通孔294を通じて外部と連通する。そのため、油圧室291内に充填されている油は、連通孔294を通って流出する。連通孔294より余剰な油が排出されるので、油圧室291内の残油量が低下する。したがって、油圧室291内の油圧の上昇を抑制することができ、可動シーブ270がさらに固定シーブ260側へ移動して金属ベルト400が増速側へ変速しすぎることを抑制することができる。
油圧室291内の油圧が過大となることを抑制できるので、車両の牽引が終了したときに、油圧アクチュエータ390に設けられた弾性部材の弾性力が可動シーブ370および金属ベルト400を介して伝達されることによって、可動シーブ270は固定シーブ260から離れる側へ移動する。つまり無段変速機100が減速比側へ変速するように、可動シーブ270は移動する。車両のエンジンを始動させるためには、ギヤ比が減速比側へ変速されている必要があり、典型的には最減速比の状態である必要がある。したがって、油圧室291内の油圧上昇を抑制できる無段変速機100を備える車両では、被牽引からの停止時に金属ベルト400を減速側へ十分戻すことが可能となるために、牽引終了後にエンジンの始動が可能となるまでに要する時間をより短縮することができ、車両の再発進時の動力性能を向上させることができる。
以上説明したように、本実施の形態の無段変速機100は、プライマリシャフト200に設けられたプライマリプーリ250と、セカンダリシャフト300に設けられたセカンダリプーリ350とを備える。プライマリプーリ250は、プライマリシャフト200に固定された固定シーブ260と、プライマリシャフト200の軸方向に移動可能であってプライマリシャフト200とともに回転する可動シーブ270と、可動シーブ270をプライマリシャフト200の軸方向に移動させる油圧アクチュエータ290とを含む。セカンダリプーリ350は、セカンダリシャフト300に固定された固定シーブ360と、セカンダリシャフト300の軸方向に移動可能であってセカンダリシャフト300とともに回転する可動シーブ370と、可動シーブ370をセカンダリシャフト300の軸方向に移動させる油圧アクチュエータ390とを含む。
油圧アクチュエータ290は、ハウジング部292と、ハウジング部292および可動シーブ270によって囲まれた油圧室291とを有する。油圧アクチュエータ290は、油圧室291内の油圧を増減させて可動シーブ270をプライマリシャフト200の軸方向に移動させる。油圧アクチュエータ390は、ハウジング部392と、ハウジング部392および可動シーブ370によって囲まれた第二油圧室とを有する。油圧アクチュエータ390は、第二油圧室内の油圧を増減させて可動シーブ370をセカンダリシャフト300の軸方向に移動させる。
プライマリプーリ250は、可動シーブ270とハウジング部292との間に介在する、密封構造のシール部材299をさらに含む。セカンダリプーリ350は、可動シーブ370とハウジング部392との間に介在する、合口構造を有するシール部材399をさらに含む。
このようにすれば、可動シーブ270とハウジング部292との間が密封されているた
めに、エンジン停止時に油圧室291からは油が漏出しない。一方、可動シーブ370とハウジング部392との間には合口構造が形成されており、エンジン停止時に油圧アクチュエータ390の油圧室(第二油圧室)から油が漏出する。そのため、エンジン停止時に油圧室291の残油量を多く、第二油圧室の残油量を少なくすることができるので、被牽引時に油圧室291と第二油圧室との残油の遠心油圧の差を利用して無段変速機100を増速側へ変速させ、入力軸上の構成部品の耐久性を向上させることができる。
また、プライマリプーリ250には、可動シーブ270が無段変速機100の最増速比時に配置される位置よりも固定シーブ260に接近したときに、油圧室291の内部と外部とを連通する、連通孔294が形成されている。連通孔294は、ハウジング部292に形成されている。連通孔294は、無段変速機100の最増速比時に油圧室291の内壁を形成しているハウジング部292の一部分よりも固定シーブ260に近接する位置において、ハウジング部292を貫通するように形成されている。
このようにすれば、被牽引時に、可動シーブ270が無段変速機100の最増速比時に配置される位置よりも固定シーブ260に接近したとき、油圧室291内の油を連通孔294から流出させて、油圧室291内の油圧の上昇を抑制できる。そのため、金属ベルト400が増速側へ変速しすぎることを抑制できるので、被牽引からの停止時に金属ベルト400を減速側へ十分戻すことが可能となる。したがって、牽引終了後にエンジンの始動が可能となるまでに要する時間を短縮することができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
実施の形態1の無断変速機の構成を示す断面模式図である。 図1中の無段変速機の最減速比時の状態を示す模式図である。 図1中の無段変速機の最増速比時の状態を示す模式図である。 図1に示す領域IV付近を拡大してプライマリプーリの構成を示す断面模式図である。 図4に示す領域V付近を拡大して被牽引時の入力側の可動シーブの移動を示す模式図である。
符号の説明
100 無段変速機、200 プライマリシャフト、201 中心軸、202,203
端部、204 大径部、205 中径部、206 小径部、207,208 段差部、209 スプライン、210,211 軸受、220,221,222,223 油路、224 空間、240 ナット、250 プライマリプーリ、260,360 固定シーブ、265,275,365,375 動力伝達面、270,370 可動シーブ、271 筒部、272,372 鍔部、273,274 段差部、276,376 シリンダ部、280,380 プーリ溝、290,390 油圧アクチュエータ、291 油圧室、292,392 ハウジング部、293 スリーブ部、294 連通孔、299,399 シール部材、300 セカンダリシャフト、350 セカンダリプーリ、400 金属ベルト。

Claims (2)

  1. プライマリシャフトに設けられたプライマリプーリと、セカンダリシャフトに設けられたセカンダリプーリとを備える、無段変速機であって、
    前記プライマリプーリは、前記プライマリシャフトに固定された第一固定シーブと、前記プライマリシャフトの軸方向に移動可能であって前記プライマリシャフトとともに回転する第一可動シーブと、前記第一可動シーブを前記プライマリシャフトの軸方向に移動させる第一油圧駆動部とを含み、
    前記セカンダリプーリは、前記セカンダリシャフトに固定された第二固定シーブと、前記セカンダリシャフトの軸方向に移動可能であって前記セカンダリシャフトとともに回転する第二可動シーブと、前記第二可動シーブを前記セカンダリシャフトの軸方向に移動させる第二油圧駆動部とを含み、
    前記第一油圧駆動部は、第一ハウジング部と、前記第一ハウジング部および前記第一可動シーブによって囲まれた第一油圧室とを有し、前記第一油圧室内の油圧を増減させて前記第一可動シーブを前記プライマリシャフトの軸方向に移動させ、
    前記第二油圧駆動部は、第二ハウジング部と、前記第二ハウジング部および前記第二可動シーブによって囲まれた第二油圧室とを有し、前記第二油圧室内の油圧を増減させて前記第二可動シーブを前記セカンダリシャフトの軸方向に移動させ、
    前記プライマリプーリは、前記第一可動シーブと前記第一ハウジング部との間に介在する、密封構造の第一シール部材をさらに含み、
    前記セカンダリプーリは、前記第二可動シーブと前記第二ハウジング部との間に介在する、合口構造を有する第二シール部材をさらに含み、
    前記プライマリプーリには、前記第一可動シーブが前記無段変速機の最増速比時に配置される位置よりも前記第一固定シーブに接近したときに、前記第一油圧室の内部と外部とを連通する、連通孔が形成されている、無段変速機。
  2. 前記連通孔は、前記第一ハウジング部に形成されており、前記無段変速機の最増速比時に前記第一油圧室の内壁を形成している部分よりも前記第一固定シーブに近接する位置において、前記第一ハウジング部を貫通するように形成されている、請求項1に記載の無段変速機。
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