JP2009115268A - 無段変速機 - Google Patents

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Toshishige Sano
敏成 佐野
Masami Sugaya
正美 菅谷
Motoki Tabuchi
元樹 田淵
Yoshiaki Mizumoto
善章 水元
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Abstract

【課題】いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラの傾転を規制することができる無段変速機を提供する。
【解決手段】複数のパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持する複数の支持手段6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比を変更可能な変速比変更手段5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な挟圧手段15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な解除手段100とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、無段変速機に関し、特に、入力ディスクと出力ディスクとの間に配置されたパワーローラの移動により変速比の変更が行われる、いわゆるトロイダル式の無段変速機に関するものである。
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、このような無段変速機、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)には、入力ディスクと出力ディスクとの間に挟み込んだパワーローラを介して各ディスクの間でトルクを伝達すると共に、パワーローラを傾転させて変速比を変化させる、いわゆる、トロイダル式の無段変速機がある。
このトロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクと出力ディスクとの間に、外周面をトロイダル面に対応する曲面としたパワーローラなどの回転手段を挟み込み、これら入力ディスク、出力ディスク及びパワーローラとの間に形成されるトラクションオイルの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。そして、このパワーローラは、トラニオンにより回転自在に支持されており、このトラニオンは、揺動軸を中心として揺動可能であると共に、例えば、トラニオンに設けられたピストンに対して油圧室に供給される作動油の油圧により変速制御押圧力を作用させることで、この揺動軸に沿った方向に移動可能に構成されている。したがって、トラニオンに支持されるパワーローラがこのトラニオンと共に入力ディスク及び出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動することで、パワーローラとディスクとの間に接線力が作用しサイドスリップが発生し、このパワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して揺動軸を中心として揺動、すなわち、傾転し、この結果、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比が変更される。そして、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比は、パワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して傾転する角度、すなわち、傾転角に基づいて決まり、この傾転角は、当該パワーローラの中立位置から変速位置側への移動量としてのストローク量(オフセット量)の積分値に基づいて決まる。
ところで、このようなトロイダル式無段変速機は、パワーローラ及びこれを支持するトラニオンが中立位置にある場合、入力トルクに応じて入力ディスク、出力ディスクとパワーローラとの接触点に作用する接線力に抗する大きさの変速制御押圧力をトラニオンのピストンに作用させ、パワーローラに作用する接線力と変速制御押圧力とをつりあわせることで、パワーローラ及びこれを支持するトラニオンの位置を中立位置に固定し、変速比を固定している。
ここで、トラニオンに変速制御押圧力を作用させるために油圧室に供給される作動油の油圧が低下しこのトラニオンに変速制御押圧力が作用しない状態でトロイダル式無段変速機を搭載した車両が動かされた場合に、変速比が減少側(増速側)に変速されアップシフトしてしまうおそれがある。すなわち、例えば、油圧室に供給される作動油を加圧するためのポンプがエンジン等の駆動源の出力軸の回転と連動して駆動するものである場合に、駆動源と共にこのポンプが駆動停止しトラニオンに変速制御押圧力が作用不能な運転状態で、トロイダル式無段変速機を搭載した車両の牽引や惰性走行などにより車輪が回転すると、プロペラシャフト等を介して出力ディスクに回転力が逆入力されこの出力ディスクも回転され、この結果、入力ディスク側のフリクションを反力受けとして出力ディスクからパワーローラに接線力が作用する。そして、パワーローラに接線力が作用すると、トラニオンに変速制御押圧力が作用していないことから、パワーローラがこの接線力に抗することができず、この結果、出力ディスクの前進側回転、後進側回転のいずれの場合でも、パワーローラは、出力ディスクの回転方向に沿う方向にオフセットされてしまう。そして、パワーローラと出力ディスクとの間に接線力が作用しサイドスリップが発生し、変速比が減少側に変速され高速側変速比にアップシフトしてしまう。このため、次に始動、発進する際に、変速比が比較的小さい状態で発進しなければならないおそれがあり、この結果、トルク不足等により発進性が悪化するおそれがある。
このため、従来のトロイダル式の無段変速機として、例えば、特許文献1に記載されているトロイダル型無段変速機は、転動体(パワーローラ)を支持するトラニオンに形成されたロック穴と、当該ロック穴に嵌合可能なロックピンとにより構成されるロック機構を備え、予め定めた所定の条件が成立した場合に、ロックピンをロック穴に嵌合させることでトラニオンと共に転動体の傾転を適正に阻止している。
特開2003−130160号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているトロイダル型無段変速機の変速制御装置では、予め設定された所定の大きさの変速比のときにロックピンがロック穴に嵌合し、転動体(パワーローラ)の傾転を規制することができるものの、例えば、トロイダル型無段変速機の変速規制制御上、いかなる変速比でも転動体の傾転を規制できることがより好ましい。
そこで本発明は、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラの傾転を規制することができる無段変速機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による無段変速機は、駆動力が入力される入力ディスクと、前記駆動力が出力される出力ディスクと、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に設けられるパワーローラと、前記パワーローラを回転自在、かつ、前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対して傾転自在に支持する支持手段を有し、前記パワーローラを傾転させることで前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比である変速比を変更可能な変速比変更手段と、前記入力ディスク及び前記出力ディスクと前記パワーローラとを接触させ前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に前記パワーローラを挟み込む挟圧力を作用可能な挟圧手段と、運転状態に応じて前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触を解除可能な解除手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明による無段変速機では、前記解除手段により前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触が解除されている状態で前記パワーローラを前記入力ディスクに接触させる接触手段を備えることを特徴とする。
請求項3に係る発明による無段変速機では、前記解除手段により前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触が解除されており、かつ、前記接触手段により前記パワーローラと前記入力ディスクとが接触されている状態から前記出力ディスクと前記パワーローラとを接触させる際に、前記変速比変更手段を制御して変速比を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
請求項4に係る発明による無段変速機では、前記補正手段は、前記出力ディスクが回転していない運転状態において、前記変速比変更手段を制御して、前記変速比変更手段により設定される変速比である設定変速比を減速側に設定することを特徴とする。
請求項5に係る発明による無段変速機では、前記入力ディスクの回転速度を検出する入力回転速度検出手段と、前記出力ディスクの回転速度を検出する出力回転速度検出手段と、前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する前記パワーローラの傾転角を検出する傾転角検出手段とを備え、前記補正手段は、前記出力ディスクが回転している運転状態において、前記傾転角検出手段により検出される傾転角である設定傾転角に応じた設定変速比と、前記入力回転速度検出手段及び前記出力回転速度検出手段により検出される前記入力ディスク及び前記出力ディスクの回転速度に基づいて算出される変速比である算出変速比との偏差に基づいて、前記変速比変更手段を制御して前記設定変速比を補正することを特徴とする。
請求項6に係る発明による無段変速機では、前記接触手段は、前記パワーローラを前記支持手段に支持すると共に、前記パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を有し、該偏心部は、前記偏心回転軸線が前記回転軸線より上側に位置すると共に前記入力ディスクと前記出力ディスクとの中間位置より前記入力ディスク側に設定されることを特徴とする。
請求項7に係る発明による無段変速機では、前記接触手段は、前記パワーローラを前記支持手段に支持すると共に、前記パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を有し、該偏心部は、前記偏心回転軸線が前記回転軸線より下側に位置すると共に前記入力ディスクと前記出力ディスクとの中間位置より前記出力ディスク側に設定されることを特徴とする。
請求項8に係る発明による無段変速機では、前記支持手段は、前記パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を介して前記パワーローラを支持し、前記解除手段と前記接触手段とは、前記偏心部に設けられ、前記パワーローラを前記入力ディスク側に付勢し該パワーローラを前記入力ディスクと共に前記出力ディスクから離間する側に移動可能なトーションスプリングにより兼用されることを特徴とする。
請求項9に係る発明による無段変速機では、前記解除手段は、前記入力ディスクを前記出力ディスクから離間する側に付勢し該入力ディスクを移動可能な付勢手段を有することを特徴とする。
請求項10に係る発明による無段変速機では、前記付勢手段は、前記挟圧手段によって前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に前記挟圧力を作用させるための挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、当該付勢力が前記パワーローラ側に作用不能な位置に設けられることを特徴とする。
請求項11に係る発明による無段変速機では、前記入力ディスクは、第1入力ディスクと、前記第1入力ディスクの回転中心である回転軸線に沿った方向に該第1入力ディスクに対して所定の間隔をあけて設けられる第2入力ディスクとを有し、前記出力ディスクは、前記第1入力ディスクと前記第2入力ディスクとの間に前記第1入力ディスクと対向して設けられる第1出力ディスクと、前記第1出力ディスクと前記第2入力ディスクとの間に前記第2入力ディスクと対向して設けられる第2出力ディスクとを有し、前記付勢手段は、前記第1入力ディスク又は前記第2入力ディスクと共に、それぞれ回転可能、かつ、回転軸線に沿った方向に移動可能な回転部同士を付勢力により前記回転軸線に沿った方向に相対的に離間可能であることを特徴とする。
請求項12に係る発明による無段変速機では、前記挟圧手段は、前記入力ディスクの回転軸線に沿った方向に対して前記第1入力ディスク側に設けられる挟圧力発生油圧室に供給される作動油の油圧により前記第1入力ディスクの第1挟圧押圧力作用面及び前記第2入力ディスクの第2挟圧押圧力作用面に挟圧押圧力を作用させ、前記第1入力ディスクを前記第1出力ディスク側に接近させると共に前記第2入力ディスクを前記第2出力ディスク側に接近させることで前記挟圧力を発生させ、前記第1挟圧押圧力作用面は、前記第1入力ディスクの前記パワーローラとの接触面の背面側に設けられ、前記第2挟圧押圧力作用面は、前記第2入力ディスクの前記回転部をなす挟圧押圧力ピストンに前記挟圧力発生油圧室を挟んで前記第1挟圧押圧力作用面と対向するように設けられ、前記付勢手段は、前記挟圧押圧力ピストンの前記第2挟圧押圧力作用面の背面側に設けられる第2付勢力作用面と、前記第1入力ディスクの前記回転部をなすと共に前記付勢手段を支持する付勢手段支持部材に前記第2付勢力作用面と対向するように設けられる第1付勢力作用面との間に設けられることを特徴とする。
請求項13に係る発明による無段変速機では、前記第1付勢力作用面と前記第2付勢力作用面とによって区画され、前記挟圧押圧力ピストンを挟んで前記挟圧力発生油圧室と対向する遠心油圧抗力発生手段を備えることを特徴とする。
請求項14に係る発明による無段変速機では、前記付勢手段支持部材とは別体に設けられ、前記第1入力ディスクの外周側に駆動力を伝達すると共に、該第1入力ディスクに対して相対移動可能な駆動力伝達部材を備えることを特徴とする。
請求項15に係る発明による無段変速機では、前記変速比変更手段は、前記支持手段に変速制御押圧力を作用させ該支持手段と共に前記パワーローラを前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動させ該パワーローラを傾転させることで前記変速比を変更可能であり、前記解除手段は、少なくとも前記支持手段に前記変速制御押圧力が作用不能な運転状態である場合に、前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触を解除することを特徴とする。
請求項16に係る発明による無段変速機では、前記駆動力を発生する駆動源の出力軸の回転と連動して駆動することで、前記変速比変更手段を作動する作動油及び前記挟圧手段を作動する作動油を加圧可能な加圧手段を備えることを特徴とする。
本発明に係る無段変速機によれば、解除手段が運転状態に応じて出力ディスクとパワーローラとの接触を解除するので、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラの傾転を規制することができる。
以下に、本発明に係る無段変速機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の概略断面図、図2は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の要部の構成図、図3は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図、図4は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図、図5は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラ及びトラニオンの分解斜視図、図6は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラと出力ディスクとが接触した状態でのパワーローラの位置を説明する模式図、図7は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラと出力ディスクとの接触が解除された状態でのパワーローラの位置を説明する模式図、図8は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の動作を説明する模式図、図9は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の再接触制御を示すフローチャートである。
なお、図2は、トロイダル式無段変速機を構成する各パワーローラのうち任意のパワーローラと、このパワーローラに接触する入力ディスクを示す図である。また、図3、図4は、入力ディスクを出力ディスク側から見た図であり、入力ディスクとパワーローラをそれぞれ1つだけ模式的に図示している。また、図8は、トロイダル式無段変速機の動作を概念的に示した模式図であり、入力ディスク、出力ディスクとパワーローラとが間隔をあけて図示されているが、実際には、図8上段では、入力ディスク、出力ディスクとパワーローラとは接触しており、図8下段では、入力ディスクとパワーローラとは接触している一方、出力ディスクとパワーローラとは接触していない。
ここで、以下で説明する実施例では、本発明の無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源としてエンジントルクを発生する内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータトルクを発生するモータなどの電動機を駆動源として用いてもよい。また、駆動源として内燃機関及び電動機を併用してもよい。
図1に示すように、本実施例に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機1は、車両に搭載される駆動源としてのエンジン21からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で車輪27に伝達するためのものであり、変速比を無段階(連続的)に制御することができる、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)である。このトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟み込んだパワーローラ4を介して各入力ディスク2と出力ディスク3の間でトルクを伝達すると共に、パワーローラ4を傾転させて変速比を変化させる、いわゆる、トロイダル式の無段変速機である。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル面2a、3aを有する入力ディスク2と出力ディスク3との間に、外周面をトロイダル面2a、3aに対応する曲面としたパワーローラ4を挟み込み、これら入力ディスク2、出力ディスク3及びパワーローラ4との間に形成されるトラクションオイルの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。
具体的には、このトロイダル式無段変速機1は、図1、図2に示すように、入力ディスク2と、出力ディスク3と、パワーローラ4と、変速比変更手段としての変速比変更部5とを備える。変速比変更部5は、支持手段としてのトラニオン6と、移動部7を有する。さらに、移動部7は、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。また、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル式無段変速機1の各部を制御する制御手段としての電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)60を備える。このトロイダル式無段変速機1では、入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられるパワーローラ4が移動部7により入力ディスク2及び出力ディスク3に対して中立位置から変速位置に移動することで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比が変更される。
入力ディスク2は、エンジン21側からの駆動力(トルク)が、例えば、発進機構であり流体伝達装置であるトルクコンバータ22や前後進切換機構23などを介して伝達(入力)されるものである。
エンジン21は、このエンジン21が搭載された車両を前進あるいは後進させるためのエンジントルク、すなわち、駆動力を出力するものである。また、エンジン21は、ECU60に電気的に接続されており、このECU60によってその駆動が制御され、出力する駆動力が制御されている。エンジン21からの駆動力は、クランクシャフト21aを介してトルクコンバータ22に伝達される。
トルクコンバータ22は、前後進切換機構23を介してエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1に伝達するものである。トルクコンバータ22は、ポンプ(ポンプインペラ)、タービン(タービンランナ)、ステータ、ロックアップクラッチを備える。ポンプは、フロントカバー等を介してエンジン21のクランクシャフト21aに連結されており、クランクシャフト21a、フロントカバーと共に回転可能に設けられている。タービンは、上記ポンプと対向するように配置されている。このタービンは、前後進切換機構23を介して入力軸10に連結されており、入力軸10と共にクランクシャフト21aと同一の軸線を中心に回転可能に設けられている。ステータは、そのポンプとタービンとの間に配置されている。ロックアップクラッチは、このタービンとフロントカバーとの間に設けられており、タービンに連結されている。
したがって、このトルクコンバータ22は、エンジン21の駆動力(エンジントルク)がクランクシャフト21aからフロントカバーを介してポンプに伝達される。そして、ロックアップクラッチが解放されている場合には、このポンプに伝達された駆動力は、ポンプとタービンとの間に介在する作動流体である作動油を介してタービン、入力軸10に伝達される。このとき、トルクコンバータ22は、ステータにより、ポンプとタービンとの間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。そして、トルクコンバータ22は、タービンに連結されているロックアップクラッチがフロントカバーに係合されている場合、フロントカバーを介してポンプに伝達されたエンジン21からの駆動力は、作動油を介さずに直接的に入力軸10に伝達される。ここで、ロックアップクラッチの係合及び係合の解除、すなわち、ON、OFFを行うON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油によって行われる。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。したがって、ロックアップクラッチのON/OFF制御は、ECU60により行われる。
前後進切換機構23は、トルクコンバータ22を介して伝達されたエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1の入力ディスク2に伝達するものである。前後進切換機構23は、例えば、遊星歯車機構、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキなどにより構成され、エンジン21の駆動力を直接、あるいは反転して入力ディスク2に伝達するものである。つまり、前後進切換機構23を介したエンジン21の駆動力は、入力ディスク2を正回転させる方向(車両が前進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する正回転駆動力として、あるいは、入力ディスク2を逆回転させる方向(車両が後進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する逆回転駆動力として、入力ディスク2に伝達される。この前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御は、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキの係合及び係合の解除、すなわち、ON、OFFを行うON/OFF制御を実行することで行われる。前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御、言い換えれば、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキのON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油により行われる。したがって、前後進切換機構23の切換制御は、ECU60により行われている。
入力ディスク2は、エンジンの回転に基づいて回転される入力軸10に2つが結合されており、この入力軸10により回転自在に設けられている。さらに言えば、各入力ディスク2は、入力軸10と同一の回転をするバリエータ軸11によって回転される。したがって、各入力ディスク2は、入力軸10の回転軸線X1を回転中心として回転可能である。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)に第1入力ディスクとしてのフロント側入力ディスク2が設けられ、回転軸線X1に沿った方向にフロント側入力ディスク2に対して所定の間隔をあけてリア側(車輪27側)に第2入力ディスクとしてのリア側入力ディスク2が設けられる。
フロント側入力ディスク2は、ボールスプライン11aを介してバリエータ軸11に支持されている。つまり、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、このバリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しない一方、回転軸線X1に沿った方向には相対的に変位可能である。一方、リア側入力ディスク2は、スプライン嵌合部を介してバリエータ軸11に支持されていると共に、バリエータ軸11のリア側端部に設けられたスナップリング11bにより回転軸線X1に沿った方向への移動が制限されている。つまり、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。なお、以下の説明では、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2とを特に区別する必要がない場合、単に「入力ディスク2」と略記する。
各々の入力ディスク2は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各入力ディスク2の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各入力ディスク2のトロイダル面2aをなす。2つの入力ディスク2は、トロイダル面2aが互いに対向するように設けられる。
出力ディスク3は、各入力ディスク2に伝達(入力)された駆動力を車輪27側に伝達(出力)するものであり、各入力ディスク2に対応して1つずつ、合計2つ設けられる。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)に第1出力ディスクとしてのフロント側出力ディスク3が設けられ、リア側(車輪27側)に第2出力ディスクとしてのリア側出力ディスク3が設けられる。フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とは、共に回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2との間に設けられ、さらに言えば、リア側出力ディスク3は、フロント側出力ディスク3とリア側入力ディスク2との間に設けられている。つまり、このトロイダル式無段変速機1は、回転軸線X1に沿った方向に対して、フロント側からフロント側入力ディスク2、フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3、リア側入力ディスク2の順で設けられている。なお、以下の説明では、フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とを特に区別する必要がない場合、単に「出力ディスク3」と略記する。
各入力ディスク2と各出力ディスク3とは、回転軸線X1に同軸上に入力軸10に対して相対的に回転自在に設けられる。したがって、各出力ディスク3は、回転軸線X1を回転中心として回転可能である。そして、各出力ディスク3は、各入力ディスク2とほぼ同一な形状をなし、すなわち、各々の出力ディスク3は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各出力ディスク3の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各出力ディスク3のトロイダル面3aをなす。そして、各出力ディスク3は、上述のように回転軸線X1に沿った方向に対して2つの入力ディスク2の間に設けられると共に、各トロイダル面3aが各入力ディスク2のトロイダル面2aにそれぞれ対向するように設けられる。すなわち、回転軸線X1に沿った断面内において、一方のフロント側入力ディスク2のトロイダル面2aとフロント側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向してフロント側(エンジン21側)半円キャビティCを形成し、リア側入力ディスク2のトロイダル面2aとリア側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向して別のリア側(車輪27側)半円キャビティCを形成している。
また、各出力ディスク3は、ベアリングを介しバリエータ軸11に回転可能に支持されている。この2つの出力ディスク3の間には、出力ギア12が連結されており、この出力ギア12は、2つの出力ディスク3と共に一体で回転可能である。出力ギア12には、カウンターギア13がかみ合わされており、このカウンターギア13に出力軸14が連結されている。したがって、各出力ディスク3の回転に伴い、出力軸14が回転する。そして、この出力軸14は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギア25等を介して車輪27に接続されており、駆動力は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギア25等を介して車輪27に伝達(出力)される。
動力伝達機構24は、トロイダル式無段変速機1とディファレンシャルギア25との間で、駆動力の伝達を行うものである。動力伝達機構24は、出力ディスク3とディファレンシャルギア25との間に配置される。ディファレンシャルギア25は、動力伝達機構24と車輪27との間で、駆動力の伝達を行うものである。ディファレンシャルギア25は、動力伝達機構24と車輪27との間に配置されている。ディファレンシャルギア25には、ドライブシャフト26が連結されている。ドライブシャフト26には、車輪27が取り付けられている。
パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間にこの入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられ、入力ディスク2からの駆動力を出力ディスク3に伝達するものである。すなわち、パワーローラ4は、外周面がトロイダル面2a、3aに対応した曲面状の接触面4aとして形成される。そして、パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟持され、接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触可能であり、各パワーローラ4は、それぞれ後述するトラニオン6によってこの接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触しながら、回転軸線X2を回転中心として回転自在に支持されている。パワーローラ4は、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルにより入力ディスク2と出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの間に形成される油膜のせん断力を用いて駆動力(トルク)を伝達する。
パワーローラ4は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられ、リア側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられる。
さらに具体的には、パワーローラ4は、パワーローラ本体41と、外輪42とにより構成される。パワーローラ本体41は、外周面に入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aと接触する上述の接触面4aが形成されている。パワーローラ本体41は、外輪42に形成された回転軸42aに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。また、パワーローラ本体41は、外輪42のパワーローラ本体41と対向する面に対して、スラストベアリングSBを介して回転自在に支持されている。したがって、パワーローラ本体41は、回転軸42aの回転軸線X2を回転中心として回転可能である。
外輪42は、上述の回転軸42aと共に偏心軸42bが形成されている。偏心軸42bは、回転軸線X2’が回転軸42aの回転軸線X2に対してずれた位置となるように形成されている。偏心軸42bは、後述するトラニオン6のローラ支持部6aに凹部として形成される嵌合部6dに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。したがって、外輪42は、偏心軸42bの回転軸線X2’を中心として回転可能である。つまり、パワーローラ4は、トラニオン6に対して、回転軸線X2及び回転軸線X2’を中心として回転可能となり、すなわち、回転軸線X2’を中心として公転可能でかつ回転軸線X2を中心として自転可能となる。これにより、パワーローラ4は、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な構成となり、例えば、部品変形や部品精度のバラツキを許容することが可能となる。
ここで、入力軸10は、挟圧手段としての油圧押圧(エンドロード)機構15に接続される。油圧押圧機構15は、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、この入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込むための挟圧力を作用させるものである。この油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15aと、挟圧押圧力ピストン15bとを有する。
挟圧力発生油圧室15aは、2つの入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿った方向の一方側に設けられる。ここでは、挟圧力発生油圧室15aは、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2側に設けられ、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間に配置される。挟圧力発生油圧室15aは、運転状態に応じて内部に作動油が供給される。この挟圧力発生油圧室15aには、後述の作動油供給通路99(図2参照)が開口している。
挟圧押圧力ピストン15bは、円板状に形成され、その中心が回転軸線X1とほぼ一致するようにバリエータ軸11の一端部に設けられる。挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11のリア側入力ディスク2が設けられている端部とは反対側の端部、すなわち、フロント側(エンジン21側)に設けられている。挟圧押圧力ピストン15bは、回転軸線X1に沿った方向に対して、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間にフロント側入力ディスク2と間隔をあけて配置される。上述の挟圧力発生油圧室15aは、この挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間に設けられている。
また、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。つまり、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。さらに言い換えれば、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。したがって、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、一体となって回転軸線X1を中心として回転可能であり回転軸線X1に沿った方向に移動可能である。また、フロント側入力ディスク2は、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bと共に一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、ボールスプライン11aによって、このリア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bに対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。
さらに、挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10にも連結されており、この入力軸10と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、また、回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能に設けられる。つまり、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10と一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、この入力軸10に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。入力軸10からの駆動力は、バリエータ軸11に伝達され、バリエータ軸11からフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に伝達される。
また、フロント側入力ディスク2は、第1挟圧押圧力作用面としてのフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28を有する一方、挟圧押圧力ピストン15bは、第2挟圧押圧力作用面としてのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29を有する。フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。つまり、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とは、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28がリア側で挟圧力発生油圧室15aに対向し、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29がフロント側で挟圧力発生油圧室15aに対向する。
したがって、油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15a内に供給される作動油の油圧によりフロント側入力ディスク2のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク2のリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を作用させることで、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に離間する方向へ移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にリア側から油圧押圧機構15側に接近する方向へ移動させる。このとき、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動する。そして、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にフロント側に接近する方向へ移動させることで、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側に接近させると共にリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3側に接近させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させる。これにより、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させることから、各パワーローラ4をそれぞれ所定の挟圧力でフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟み込むことができる。この結果、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との間のスリップを防ぎ、トラクション状態を維持することができる。
ここで油圧押圧機構15による挟圧押圧力は、後述する油圧制御装置9により、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の量が制御されることで、トロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の大きさに制御される。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。したがって、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の大きさの制御は、ECU60により行われる。
変速比変更部5は、上述したように、トラニオン6と、移動部7を有し、移動部7によって、入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して、トラニオン6と共にパワーローラ4を移動し、パワーローラ4をこの入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更するものである。ここで、変速比とは、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比であり、典型的には、[変速比=出力側接触半径(パワーローラ4と出力ディスク3とが接触する接触半径(接触点と回転軸線X1との距離))/入力側接触半径(入力ディスク2とパワーローラ4とが接触する接触半径)]で表すことができる。
具体的には、各トラニオン6は、パワーローラ4をそれぞれ回転自在に支持すると共に、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して移動させ入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するものである。トラニオン6は、ローラ支持部6aと揺動軸6bとを有する。ローラ支持部6aは、パワーローラ4が配置される空間部6cが形成され、この空間部6cに凹部状の嵌合部6dが形成されている。そして、トラニオン6は、この空間部6cにて、上述のようにパワーローラ4の偏心軸42bが嵌合部6dに挿入されることで、パワーローラ4を回転自在に支持している。また、ローラ支持部6aは、揺動軸6bと一体で移動可能に設けられる。揺動軸6bは、柱状に形成され回転軸線X3を回転中心として回転可能に設けられる。したがって、トラニオン6は、ローラ支持部6aが揺動軸6bと共に回転軸線X3を回転中心として回転自在にケーシング(不図示)に支持されている。また、トラニオン6は、回転軸線X3に沿った方向に移動自在にケーシング(不図示)に支持され、後述する移動部7によって、回転軸線X3に沿った方向に移動可能に構成される。
トラニオン6は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられ、4つのパワーローラ4をそれぞれ支持する。すなわち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられ、リア側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられる。
ここで、トラニオン6は、パワーローラ4の回転軸線X2が揺動軸6bの回転軸線X3と垂直な平面と平行になるようにパワーローラ4を支持している。また、トラニオン6は、揺動軸6bの回転軸線X3が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1と垂直な平面と平行になるように配置される。すなわち、トラニオン6は、回転軸線X1と垂直な平面内で回転軸線X3に沿って移動することで、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して回転軸線X3に沿って移動させることができる。また、トラニオン6は、回転軸線X3を回転中心として回転揺動することで、パワーローラ4を回転軸線X3と垂直な平面内でこの回転軸線X3を中心として入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在とすることできる。なお、言い換えれば、トラニオン6は、パワーローラ4に後述する傾転力が作用することでこのパワーローラ4を傾転可能に支持していることになる。
移動部7は、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った方向に移動させるものであり、上述したように、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。
油圧ピストン部8は、変速制御ピストン81と、変速制御油圧室82とを含んで構成され、変速制御油圧室82に導入される作動油の油圧を変速制御ピストン81のフランジ部84により受圧することで、トラニオン6を回転軸線X3に沿った2方向(A1方向及びA2方向)に移動させるものである。すなわち、油圧ピストン部8は、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧によりトラニオン6に設けられたフランジ部84に変速制御押圧力を作用させる。
具体的には、変速制御ピストン81は、ピストンベース83とフランジ部84とにより構成されている。ピストンベース83は、円筒形状に形成され揺動軸6bの一端部に挿入され、回転軸線X3方向及び回転軸線X3周り方向に対して固定されている。
フランジ部84は、ピストンベース83からピストンベース83の径方向、言い換えれば、揺動軸6bの径方向に突出するように固定的に設けられており、ピストンベース83及びトラニオン6の揺動軸6bと共に回転軸線X3に沿った方向に移動可能である。フランジ部84は、揺動軸6bの回転軸線X3周りに円環板状に形成されている。
変速制御油圧室82は、油圧室構成部材85であるシリンダボデー86及びロアカバー87により構成される。シリンダボデー86は、変速制御油圧室82の空間部となる凹部が形成されている。ロアカバー87は、シリンダボデー86の凹部の開口を塞ぐようにこのシリンダボデー86に固定され、これにより、変速制御油圧室82は、シリンダボデー86とロアカバー87とにより回転軸線X3を中心とした円筒状(シリンダ状)に区画される。このシリンダボデー86及びロアカバー87は、シリンダボデー86のロアカバー87側とは反対側においてケーシング(不図示)に固定されている。
そして、フランジ部84は、作動油が導入される変速制御油圧室82内に収容されると共に、この変速制御油圧室82内を回転軸線X3に沿った方向に2つの油圧室、すなわち、第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに区画する。フランジ部84の径方向外側の先端部には、環状のシール部材Sが設けられており、したがって、このフランジ部84によって区画される変速制御油圧室82の第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれこのシール部材Sにより互いに作動油が漏れないようにシールされている。
なお、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにパワーローラ4、トラニオン6が2つずつ設けられることから、この第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにそれぞれ2つずつ設けられることになる。このとき、この一対のトラニオン6では、第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2の位置関係がトラニオン6ごとに入れ替わっている。つまり、一方のトラニオン6の第1油圧室OP1とした油圧室が他方のトラニオン6の第2油圧室OP2となり、一方のトラニオン6の第2油圧室OP2とした油圧室が他方のトラニオン6の第1油圧室OP1となる。したがって、図2に示すトロイダル式無段変速機1では、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4は、第1油圧室OP1又は第2油圧室OP2内の油圧により、回転軸線X3に沿って互いに逆方向に移動することになる。
油圧制御装置9は、トランスミッションの各部、例えば、油圧押圧機構15、トルクコンバータ22、前後進切換機構23等に作動油を供給するものであり、さらに、変速制御油圧室82内の作動油の油圧を制御するものである。油圧制御装置9は、オイルタンク91と、加圧手段としてのオイルポンプ92と、流量制御弁としての第1流量制御弁93と、第2流量制御弁94と、作動油通路としての第1通路95と、第2通路96と、供給通路97と、排出通路98と、作動油供給通路99とを含んで構成される。
オイルタンク91は、トランスミッションの各部に供給する作動油を貯留している。オイルポンプ92は、例えば、エンジンの出力軸であるクランクシャフト21aの回転に連動して作動し、オイルタンク91に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。この加圧された作動油は、プレッシャーレギュレータバルブ(不図示)を介して、第1流量制御弁93及び第2流量制御弁94や他の流量制御弁などに供給される。なお、このプレッシャーレギュレータバルブは、プレッシャーレギュレータバルブよりも下流側における油圧が所定油圧以上、すなわち、油圧制御装置9の元圧として用いられるライン圧以上になった際に、下流側にある作動油をオイルタンク91に戻して所定のライン圧に調圧するものである。
第1流量制御弁93は、第1油圧室OP1に作動油を供給し、第2油圧室OP2から作動油を排出するものである一方、第2流量制御弁94は、第2油圧室OP2に作動油を供給し、第1油圧室OP1から作動油を排出するものである。第1流量制御弁93は、油路構成本体部93aと、スプール弁子93bと、作動油供給ポート93cと、作動油排出ポート93dと、第1油圧室連通ポート93eと、第2油圧室連通ポート93fと、第1弾性部材93gと、第1ソレノイド93hとにより構成される。一方、第2流量制御弁94は、油路構成本体部94aと、スプール弁子94bと、作動油供給ポート94cと、作動油排出ポート94dと、第2油圧室連通ポート94eと、第1油圧室連通ポート94fと、第2弾性部材94gと、第2ソレノイド94hとにより構成される。この第1流量制御弁93と、第2流量制御弁94は、ECU60から入力される制御指令値入力に基づいた駆動電流により駆動する駆動手段としての第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hがスプール弁子93b、94bの位置を変位させることで、作動油供給ポート93c、94c、作動油排出ポート93d、94dと、第1油圧室連通ポート93e、94f、第2油圧室連通ポート93f、94eから流出入する作動油の流量を制御するものである。
具体的には、油路構成本体部93a、94aは、油路を構成するものであり、それぞれ、構成された油路と連通する作動油供給ポート93c、94c、作動油排出ポート93d、94dと、第1油圧室連通ポート93e、94fと、第2油圧室連通ポート93f、94eが形成される。油路構成本体部93a、94aに構成される油路は、それぞれスプール弁子93b、94bが挿入されている。スプール弁子93b、94bは、各ポートの連通状態を切り替えるものである。
作動油供給ポート93c、94cは、供給通路97を介してオイルポンプ92と接続されており、この作動油供給ポート93c、94cにはオイルポンプ92によりライン圧に加圧された作動油が供給される。作動油排出ポート93d、94dは、排出通路98を介してオイルタンク91と接続されている。第1流量制御弁93の第1油圧室連通ポート93eは、第1通路95を介して第1油圧室OP1と接続されると共に、第2流量制御弁94の第1油圧室連通ポート94fと接続される。また、第1流量制御弁93の第2油圧室連通ポート93fは、第2通路96を介して第2油圧室OP2と接続されると共に、第2流量制御弁94の第2油圧室連通ポート94eと接続される。
そして、第1弾性部材93g、第2弾性部材94gは、それぞれ、スプール弁子93b、94bの一端側に設けられる一方、第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hは、それぞれ、スプール弁子93b、94bの他端側に設けられる。第1弾性部材93g、第2弾性部材94gは、スプール弁子93b、94bを第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94h側(OFF側)に移動させる付勢力を作用させる一方、第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hは、供給される駆動電流に応じて発生する電磁力により、当該付勢力に抵抗してスプール弁子93b、94bを第1弾性部材93g、第2弾性部材94g側(ON側)に移動させる押圧力を作用させる。
また、この第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hは、ECU60と電気的に接続されており、このECU60により駆動制御されている。したがって、スプール弁子93b、94bには、第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hに供給される駆動電流に応じた押圧力が作用する。
例えば、ECU60は、第1流量制御弁93がOFF状態(図2に示すOFFの部分)では、第1ソレノイド93hに供給する駆動電流を0Aとする。したがって、スプール弁子93bには、第1ソレノイド93hによる押圧力が作用しないため第1弾性部材93gによる付勢力のみが作用し、スプール弁子93bは、第1ソレノイド93h側のOFF位置に位置する。このとき、作動油供給ポート93cと第1油圧室連通ポート93eとの連通が遮断され、作動油排出ポート93dと第2油圧室連通ポート93fとの連通が遮断される。つまり、第1流量制御弁93がOFF状態では、オイルポンプ92により加圧された作動油は第1油圧室OP1に供給されず、第2油圧室OP2内の作動油は、排出されない。
一方、ECU60は、第1流量制御弁93がON状態(図2に示すONの部分)では、第1ソレノイド93hに駆動電流を供給する。このとき、ECU60は、トロイダル式無段変速機1の変速比や変速速度などに基づいて駆動電流を設定する。したがって、スプール弁子93bには、第1ソレノイド93hによる押圧力と第1弾性部材93gによる付勢力とが作用する。第1ソレノイド93hによる押圧力が第1弾性部材93gによる付勢力よりも大きくなると、スプール弁子93bは、第1弾性部材93g側に移動し、OFF位置以外のON位置(最大ON位置は図2のONの部分)に位置する。このとき、作動油供給ポート93cと第1油圧室連通ポート93eとが連通され、作動油排出ポート93dと第2油圧室連通ポート93fとが連通される。つまり、第1流量制御弁93がON状態では、オイルポンプ92により加圧された作動油は第1油圧室OP1に供給され、第2油圧室OP2内の作動油は排出される。これにより、第1油圧室OP1の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧>第2油圧室OP2の油圧]となることで、油圧ピストン部8のフランジ部84が回転軸線X3に沿った第1方向A1に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動する。このとき、スプール弁子93bのON側への移動量に応じて、パワーローラ4の第1方向A1への移動が調整される。
同様に、第2流量制御弁94のOFF状態(図2に示すOFFの部分)では、ECU60は、第2ソレノイド94hに供給する駆動電流を0Aとする。このとき、作動油供給ポート94cと第2油圧室連通ポート94eとの連通が遮断され、作動油排出ポート94dと第1油圧室連通ポート94fとの連通が遮断され、オイルポンプ92により加圧された作動油は第2油圧室OP2に供給されず、第1油圧室OP1内の作動油は、排出されない。第2流量制御弁94のON状態(図2に示すONの部分)では、ECU60は、第2ソレノイド94hに駆動電流を供給する。このとき、作動油供給ポート94cと第2油圧室連通ポート94eとが連通され、作動油排出ポート94dと第1油圧室連通ポート94fとが連通され、オイルポンプ92により加圧された作動油は第2油圧室OP2に供給され、第1油圧室OP1内の作動油は排出される。これにより、第2油圧室OP2の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧<第2油圧室OP2の油圧]となることで、油圧ピストン部8のフランジ部84が回転軸線X3に沿った第2方向A2に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動する。
したがって、この移動部7は、ECU60により油圧制御装置9が駆動され油圧ピストン部8の各変速制御油圧室82内の油圧が制御されることで、変速制御ピストン81のフランジ部84に所定の変速制御押圧力を作用させ、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った2方向、すなわち、第1方向A1と第2方向A2とに移動させることができる。そして、変速比変更部5は、この移動部7によって、トラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置(図3参照)から変速比に応じた変速位置(図4参照)に移動させ、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更することができる。
作動油供給通路99は、供給通路97におけるオイルポンプ92の下流側、第1流量制御弁93、第2流量制御弁94の上流側と油圧押圧機構15、トルクコンバータ22、前後進切換機構23等とを接続しオイルポンプ92によりライン圧に加圧された作動油を油圧押圧機構15、トルクコンバータ22、前後進切換機構23等に供給する。
ここで、図3に示すように、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置は、変速比が固定される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用不能な位置である。すなわち、パワーローラ4が中立位置にあり、変速比が固定されている状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の中立位置(変速比固定時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る(直交する)位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4の回転方向(転がる方向)と入力ディスク2の回転方向とが一致しており、この結果、パワーローラ4に傾転力が作用せず、したがって、パワーローラ4は、この中立位置にとどまりながら入力ディスク2とともに回転をつづけ、この間の変速比は固定されている。
このとき、入力ディスク2からパワーローラ4に作用する力は駆動力(トルク)だけであるので、移動部7の油圧ピストン部8と油圧制御装置9とは、油圧によりこの駆動力に抗するだけの力をトラニオン6に作用させている。すなわち、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6が中立位置にある場合、上述したように、入力トルクに応じて入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する接線力F1(図3参照)に抗する大きさの変速制御押圧力F2(図3参照)をフランジ部84に作用させ、パワーローラ4に作用する接線力F1と変速制御押圧力F2とをつりあわせることで、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6の位置を中立位置に固定し、変速比を固定している。
一方、図4に示すように、パワーローラ4の変速位置は、変速比が変更される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用する位置である。すなわち、パワーローラ4が変速位置にあり、変速比が変更される状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内から回転軸線X3に沿った第1方向A1あるいは第2方向A2に移動した位置に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の変速位置(変速時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る位置、すなわち、中立位置からオフセットされた位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4の回転方向と入力ディスク2の回転方向とがずれ、これにより、パワーローラ4に傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4に作用する傾転力によりパワーローラ4と入力ディスク2及び出力ディスク3との間にサイドスリップが発生し、パワーローラ4は、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転し、パワーローラ4と入力ディスク2との入力側接触半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との出力側接触半径とが変更され、したがって、変速比が変更される。
例えば、本図4に示すように、入力ディスク2が図4中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第2方向A2(パワーローラ4と入力ディスク2と接触点における入力ディスク2の移動方向とは反対方向、すなわち、入力ディスク2の回転方向に逆らう方向(出力ディスク3の回転方向に沿う方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の周辺側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1から離間させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向外方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向内方側に移動するように傾転し、変速比が減少側に変更され、アップシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
逆に、ダウンシフトする場合は、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第1方向A1(パワーローラ4と入力ディスク2と接触点における入力ディスク2の移動方向、すなわち、入力ディスク2の回転方向に沿う方向(出力ディスク3の回転方向に逆らう方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の中心側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1に近接させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向内方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向外方側に移動するように傾転し、変速比が増加側に変更され、ダウンシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
ここで、このパワーローラ4の位置は、中立位置からのストローク量と入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角により決定される。パワーローラ4のストローク量は、パワーローラ4の回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1を通る中立位置を基準位置として、この中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2への移動量(中立位置からのオフセット量)である。パワーローラ4の傾転角は、パワーローラ4の回転中心である回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転中心である回転軸線X1と直交する位置を基準位置として、この基準位置から入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾斜角度(鋭角側の傾斜角度)であり、言い換えれば、回転軸線X3周りの回転角度である。そして、このトロイダル式無段変速機1の変速比は、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角によって定まり、この傾転角は、パワーローラ4の中立位置からのストローク量の積分値により定まる。
ここで、ECU60は、トロイダル式無段変速機1の運転状態に応じてトロイダル式無段変速機1の各部の駆動を制御しトロイダル式無段変速機1の実際の変速比である実変速比を制御するものである。すなわち、ECU60は、例えば、種々のセンサが検出するエンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、入力ディスク回転数、出力軸回転数、シフトポジションなどの運転状態や傾転角、ストローク量などに基づいて、目標の変速比である目標変速比を決定すると共に変速比変更部5を駆動してパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて、所定の傾転角まで傾転させることで変速比の変更を実行する。さらに言えば、ECU60は、第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hに供給する駆動電流を制御指令値に基づいて制御することで、第1流量制御弁93又は第2流量制御弁94のON/OFF状態を制御し、これにより、油圧ピストン部8の第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御して、トラニオン6と共にパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて所定の傾転角まで傾転させることで、実変速比が目標変速比となるように制御する。
具体的には、図2示すように、ECU60は、上述したように、第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hに電気的に接続されており、第1ソレノイド93h、第2ソレノイド94hをデューティ制御している。さらに、ECU60は、傾転角検出手段としての傾転角センサ50と、ストロークセンサ51とが電気的に接続されている。また、ECU60は、さらに、エンジン回転数センサ52と、入力回転速度検出手段としての入力回転数センサ53と、出力回転速度検出手段としての出力回転数センサ54と、アクセル開度センサ55と、車速センサ56と、スロットル開度センサ57と、シフトポジションセンサ58などの種々のセンサが電気的に接続されている。
傾転角センサ50は、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角を検出し、検出した傾転角をECU60に送信する。ここで、傾転角センサ50が検出する傾転角は、パワーローラ4と共に回転軸線X3周りに回転するトラニオン6の回転軸線X3周りの回転角度として検出している。ストロークセンサ51は、パワーローラ4の中立位置からのストローク量を検出し、検出したストローク量をECU60に送信する。ここで、ストロークセンサ51が検出するパワーローラ4のストローク量は、このパワーローラ4と共に回転軸線X3に沿った方向に移動するトラニオン6のストローク量として検出している。
また、エンジン回転数センサ52は、駆動源であるエンジン21の回転速度としてエンジン回転数を検出し、検出したエンジン回転数をECU60に送信する。ここで、エンジン回転数センサ52は、例えば、エンジンのクランク角度を検出するクランク角センサを用いることができ、ECU60は、検出されたクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジンの回転速度としてエンジン回転数(rpm)を算出する。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト21aの回転速度に対応し、このクランクシャフト21aの回転速度が高くなれば、クランクシャフト21aの回転数、エンジン回転数も高くなる。
入力回転数センサ53は、入力ディスク2の回転数である入力回転数及び回転方向を検出し、検出した入力回転数及び回転方向をECU60に送信する。出力回転数センサ54は、出力ディスク3の回転数である出力回転数及び回転方向を検出し、検出した出力回転数及び回転方向をECU60に送信する。なお、入力回転数センサ53、出力回転数センサ54は、それぞれ、入力ディスク2、出力ディスク3の回転数(回転速度)に比例した回転数(回転速度)で回転する部材の回転数に基づいて検出してもよい。また、入力回転数、出力回転数は、言い換えれば、入力ディスク2、出力ディスク3の回転速度に対応する。
アクセル開度センサ55は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両のアクセル開度を検出し、検出したアクセル開度をECU60に送信する。車速センサ56は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両の車速を検出し、検出した車速をECU60に送信する。スロットル開度センサ57は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両のスロットル開度を検出し、検出したスロットル開度をECU60に送信する。シフトポジションセンサ58は、このトロイダル式無段変速機1が搭載される車両のシフトポジションを検出し、検出したシフトポジションをECU60に送信する。
上記のようなトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2に駆動力(トルク)が入力されると、その入力ディスク2にトラクションオイルを介して接触しているパワーローラ4に駆動力が伝達され、さらにそのパワーローラ4から出力ディスク3にトラクションオイルを介して駆動力が伝達される。この間、トラクションオイルは加圧されることによりガラス転移化し、それに伴う大きいせん断力によって駆動力を伝達するので、各入力ディスク2、出力ディスク3は、入力トルクに応じた挟圧力がパワーローラ4との間に生じるように、油圧押圧機構15により押圧される。また、パワーローラ4の周速と各入力ディスク2、出力ディスク3のトルク伝達点(パワーローラ4がトラクションオイルを介して接触している接触点)の周速とが実質的に同じであるから、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の回転軸線X1からの半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との接触点の回転軸線X1からの半径とに応じて、各入力ディスク2、出力ディスク3の回転数(回転速度)が異なることとなり、その回転数(回転速度)の比率が変速比となる。
そして、ECU60は、変速比を設定した目標変速比に変更する場合、すなわち、変速比の変速の場合は、入力ディスク2の回転方向に基づいて、第1ソレノイド93hあるいは第2ソレノイド94hに駆動電流を供給し、第1流量制御弁93あるいは第2流量制御弁94をON状態とすることで、パワーローラ4が目標変速比に応じた傾転角になるまで、トラニオン6を中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。例えば、入力ディスク2が図2中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第1流量制御弁93をON状態、第2流量制御弁94をOFF状態として、第1油圧室OP1の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させると、上述したように変速比が増加しダウンシフトが行われる。一方、入力ディスク2が図2中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第1流量制御弁93をOFF状態、第2流量制御弁94をON状態として、第2油圧室OP2の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動させると、上述したように変速比が減少しアップシフトが行われる。また、設定された変速比を固定する場合は、第1ソレノイド93hあるいは第2ソレノイド94hに駆動電流を供給し、第1流量制御弁93あるいは第2流量制御弁94をON状態とすることでパワーローラ4が中立位置となるまで、トラニオン6を第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。
なお、このECU60は、傾転角センサ50によって検出されるパワーローラ4の傾転角とストロークセンサ51によって検出されるストローク量に基づいて、実変速比(実際の変速比)が目標変速比(変速後の目標の変速比)となるようにカスケード式のフィードバック制御を行っている。すなわち、このECU60は、アクセル開度及び車速に基づいて目標変速比に対応した目標の傾転角である目標傾転角を決定し、この目標傾転角と傾転角センサ50によって検出した実際の傾転角である実傾転角との偏差に基づいて、目標変速比、目標傾転角に対応した目標のストローク量である目標ストローク量を決定し、ストロークセンサ51が検出したストローク量がこの目標ストローク量となるように移動部7の第1流量制御弁93、第2流量制御弁94を制御している。このようなトロイダル式無段変速機1の変速制御では、基本的には、傾転角センサ50によって検出される傾転角(言い換えれば、変速比)のみをフィードバック制御すればよいが、ストローク量が傾転角の微分に相当することから、ストロークセンサ51によって検出されるストローク量のフィードバック制御もあわせて行うことで、傾転制御における振動を抑制するダンピング効果を得ることができる。また、このECU60は、変速比の応答性を向上するために、このフィードバック制御と共にフィードフォワード制御をあわせて行ってもよい。
ここで、トロイダル式無段変速機1は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4及びトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させるための機構として、ロアリンク16やアッパリンク17などにより構成されるリンク機構を備えている。ロアリンク16は、揺動軸6bにおいて変速制御ピストン81が設けられている一端部側(シリンダボデー86とローラ支持部6aとの間)にてラジアルベアリングRBを介して一対のトラニオン6を連結する一方、アッパリンク17は、揺動軸6bにおいて他端部側にてラジアルベアリングRBを介して一対のトラニオン6を連結する。そして、ロアリンク16、アッパリンク17は、それぞれケーシング(不図示)に固定されるロアポスト、アッパポストの支持軸16a、17aに支持されている。この支持軸16a、17aは、回転軸線X1と平行な方向に延設されており、ロアリンク16、アッパリンク17は、この支持軸16a、17aを支点としてシーソー状に揺動可能に構成されている。したがって、ロアリンク16、アッパリンク17は、一対のトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させることができる。
また、トロイダル式無段変速機1は、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進する機構として、同期機構18を備える。同期機構18は、同期ワイヤ19と、複数の固定プーリ20とを有する。同期機構18は、各トラニオン6の揺動軸6bに固定して設けられる固定プーリ20と、回転軸線X1方向又は回転軸線X2方向に隣り合う固定プーリ20間で一回交差するように反転して張架される同期ワイヤ19との摩擦力により、一方のトラニオン6の回転トルクを他方のトラニオン6に伝達することで、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進することができる。
ところで、トラニオン6に変速制御押圧力を作用させるために変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧が低下しこのトラニオン6に変速制御押圧力が作用しない状態でトロイダル式無段変速機1を搭載した車両が動かされた場合に、変速比が減少側(増速側)に変速されアップシフトしてしまうおそれがある。すなわち、上記のように、変速制御油圧室82に供給される作動油を加圧するためのオイルポンプ92がエンジン21などの駆動源のクランクシャフト21aの回転と連動して駆動するものである場合に、例えば、エンジン21と共にこのオイルポンプ92が駆動停止しトラニオン6に設けられたフランジ部84に変速制御押圧力が作用不能な運転状態で、トロイダル式無段変速機1を搭載した車両の牽引や惰性走行などにより車輪27が回転すると、プロペラシャフト等を介して出力ディスク3に回転力が逆入力されこの出力ディスク3も回転され、この結果、入力ディスク2側のフリクションを反力受けとして出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用する。そして、パワーローラ4に接線力が作用すると、トラニオン6に変速制御押圧力が作用していないことから、パワーローラ4がこの接線力に抗することができず、この結果、出力ディスク3の前進側回転、後進側回転のいずれの場合でも、パワーローラ4は、出力ディスク3の回転方向に沿う方向にオフセットされてしまうおそれがある。そして、パワーローラ4と出力ディスク3との間に接線力が作用しサイドスリップが発生し、パワーローラ4が傾転し変速比が減少側に変速され高速側変速比にアップシフトしてしまうおそれがある。このため、次に始動、発進する際に、変速比が比較的小さい状態で発進しなければならないおそれがあり、この結果、トルク不足等により発進性が悪化するおそれがある。
そこで、本実施例のトロイダル式無段変速機1は、図1、図8に示すように、解除手段としての接触解除部100を備え、この接触解除部100が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができるようにしている。
具体的には、接触解除部100は、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能なものであり、付勢手段としてのフロント側入力ディスク離間バネ110及びリア側入力ディスク離間バネ120を有する。
フロント側入力ディスク離間バネ110は、円筒コイル状の圧縮バネにより構成され、中空部分にバリエータ軸11が挿入されるようにして、このバリエータ軸11に設けられる。このバリエータ軸11は、回転軸線X1に沿った方向に対して、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間にバネ取付部としてのスナップリング130が設けられている。
ここで、スナップリング130は、円環状に形成され、その中心が回転軸線X1とほぼ一致するようにバリエータ軸11に固定して設けられる。つまり、スナップリング130は、バリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられ、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。
そして、フロント側入力ディスク離間バネ110は、一端がスナップリング130に当接する一方、他端がフロント側入力ディスク2の第1付勢力作用面としてのフロント側入力ディスク付勢力作用面111に当接する。フロント側入力ディスク付勢力作用面111は、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側から離間させるための付勢力が作用する面であり、フロント側入力ディスク2の中心部の突出部端面に設けられる。すなわち、フロント側入力ディスク離間バネ110は、フロント側入力ディスク付勢力作用面111とスナップリング130との間に配置される。
したがって、フロント側入力ディスク離間バネ110は、フロント側入力ディスク付勢力作用面111を介してフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間する側、すなわち、フロント側に付勢し、運転状態に応じてこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることができる。フロント側入力ディスク離間バネ110は、フロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3との接触を解除することができる。
リア側入力ディスク離間バネ120は、円筒コイル状の圧縮バネにより構成され、回転軸線X1に沿った方向に対して入力軸10と挟圧押圧力ピストン15bとの間に設けられる。リア側入力ディスク離間バネ120は、一端が入力軸10に当接する一方、他端が挟圧押圧力ピストン15bの第2付勢力作用面としてのリア側入力ディスク付勢力作用面121に当接する。リア側入力ディスク付勢力作用面121は、リア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3側から離間させるための付勢力が作用する面であり、挟圧押圧力ピストン15bにおけるリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面側の面に設けられる。
したがって、リア側入力ディスク離間バネ120は、リア側入力ディスク付勢力作用面121、挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11を介してリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間する側、すなわち、リア側に付勢し、運転状態に応じてこのリア側入力ディスク2をバリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bと共にリア側に移動させることができる。リア側入力ディスク離間バネ120は、リア側入力ディスク2をリア側に移動させることで、このリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間させ、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とリア側出力ディスク3との接触を解除することができる。
そして、この接触解除部100は、トロイダル式無段変速機1の運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除する。ここでは、接触解除部100は、トロイダル式無段変速機1の運転状態が駆動力伝達不要状態である場合、例えば、イグニッションがOFFとされトロイダル式無段変速機1を搭載した車両のエンジン21が停止状態の場合、エンジンストール状態の場合、あるいは、油圧制御装置9における各部のシール部材が破損した場合に出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除する。さらに言えば、接触解除部100は、トラニオン6に設けられた変速制御ピストン81のフランジ部84を介してトラニオン6に変速制御押圧力が作用不能であり、すなわち、作動油の油圧により変速制御ができない状態で、トロイダル式無段変速機1を搭載した車両の牽引や惰性走行などにより車輪が回転することで出力ディスク3も回転しパワーローラ4に接線力が作用し得るような運転状態である場合に、出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除する。
ここで、加圧手段としてのオイルポンプ92(図2参照)は、トロイダル式無段変速機1が搭載された車両のエンジン21の出力軸であるクランクシャフト21aの回転に連動して作動している。そして、オイルポンプ92によりライン圧に加圧された作動油は、上述したように、変速比変更部5の変速制御油圧室82(第1油圧室OP1、第2油圧室OP2)に供給されフランジ部84を介してトラニオン6に変速制御押圧力を作用させることで変速制御に用いられている。また、オイルポンプ92によりライン圧に加圧された作動油は、上述したように、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15aに供給され挟圧押圧力ピストン15bを介して入力ディスク2に挟圧押圧力を作用させることで、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み付けるための挟圧力を作用させることにも用いられている。
つまり、このオイルポンプ92は、駆動力を発生するエンジン21のクランクシャフト21aの回転と連動して駆動することで、変速比変更部5の油圧ピストン部8を作動する作動油及び油圧押圧機構15を作動する作動油を加圧しており、すなわち、変速比変更部5の油圧ピストン部8を作動する作動油と油圧押圧機構15の挟圧押圧力ピストン15bを作動する作動油とは、共通のオイルポンプ92によりライン圧に加圧され、変速比変更部5の油圧ピストン部8を作動する作動油の元圧と油圧押圧機構15の挟圧押圧力ピストン15bを作動する作動油の元圧とが共通の元圧となる。したがって、このトロイダル式無段変速機1は、変速制御ピストン81のフランジ部84に変速制御押圧力が作用不能な運転状態であれば、油圧押圧機構15の挟圧押圧力ピストン15bにも挟圧押圧力が作用不能となる。
ここで、挟圧力発生油圧室15a内に供給される作動油の挟圧押圧力と接触解除部100のフロント側入力ディスク離間バネ110、リア側入力ディスク離間バネ120による付勢力とは、図8上段に示す入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4とが接触する接触位置において、挟圧押圧力がフロント側入力ディスク離間バネ110、リア側入力ディスク離間バネ120による付勢力より十分に大きくなるように設定されている。
したがって、上記のように構成されるトロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ92が駆動し変速制御ピストン81のフランジ部84に変速制御押圧力が作用可能な運転状態では、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15a内部に作動油が供給されることで、油圧押圧機構15の作動油の挟圧押圧力により、各入力ディスク2を各出力ディスク3に接近させ、図8上段に示す入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4とが接触する接触位置に移動することができる。そして、油圧押圧機構15は、入力ディスク2を接触位置に移動させることで、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み付けるための挟圧力を作用させることができる。この結果、このトロイダル式無段変速機1は、変速比変更部5による変速制御によって、このトラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させ、変速比を変更することができる。
一方、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ92の駆動が停止し変速制御ピストン81のフランジ部84に変速制御押圧力が作用不能な運転状態では、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15a内部の作動油が排出されることで、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が低下しフロント側入力ディスク離間バネ110、リア側入力ディスク離間バネ120による付勢力より小さくなり、接触解除部100のフロント側入力ディスク離間バネ110、リア側入力ディスク離間バネ120の付勢力により、各入力ディスク2を各出力ディスク3から離間させ、図8下段に示す出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除される接触解除位置に移動することができる。そして、接触解除部100は、入力ディスク2を接触解除位置に移動させることで、入力ディスク2と出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4と出力ディスク3との接触を解除することができる。
したがって、接触解除部100は、少なくともトラニオン6に変速制御押圧力が作用不能な運転状態である場合に、出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することができる。この結果、接触解除部100が出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができ、変速比を固定することができる。例えば、所定の大きさの変速比のときにロックピンがロック穴に嵌合することでパワーローラ4の傾転を規制する場合のように予め設定された所定の大きさの変速比のみでしかパワーローラ4の傾転を規制することができない場合と比較して、変速規制の制御性をさらに向上することができる。また、例えば、ロックピンのように高い剛性を要する部材も必要としない。また、例えば、車輪27が回転された場合に出力ディスク3からパワーローラ4に作用する接線力に抗するための押圧力をトラニオン6に作用させるために、通常の運転時では不要なポンプを出力軸系などに別途設ける必要がないことから、装置の大型化やコストアップ等も防止することができる。
そして、接触解除部100によっていずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができることから、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧が低下しこのトラニオン6に変速制御押圧力が作用しない状態で、例えば、トロイダル式無段変速機1を搭載した車両が牽引や惰性走行などにより動かされ車輪が回転された場合などに、出力ディスク3の前進側回転、後進側回転のいずれの場合でも、変速比が減少側(増速側)に変速されアップシフトしてしまうことを防止することができる。このため、次に始動、発進する際に、変速比が比較的小さい状態で発進されることを防止することができ、この結果、トルク不足等により発進性が悪化することを防止することができる。
ところで、このトロイダル式無段変速機1では、例えば、車両が極低速又は停止状態(出力ディスク3の回転停止)である際に、変速比が減少側(増速側)である状態で接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、そのままの変速比で油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触させると、発進性が低下するおそれがある。また、このトロイダル式無段変速機1では、例えば、車両の走行中にエンジンストールなどが発生し接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、入力ディスク2及び出力ディスク3の回転数から算出される変速比である算出変速比と、変速比変更部5によって実際に設定されている変速比である設定変速比とが大幅に異なるまま、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触させると、急激な変速や大きなトルク変動が発生するおそれがある。
そこで、本実施例のトロイダル式無段変速機1は、図2、図5乃至図8に示すように、このトロイダル式無段変速機1は、接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再び接触状態に戻す際に、パワーローラ4の傾転角を適正な角度に補正し、変速比を適正に設定した後に、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触することで、発進性の低下や再接触の際の急激な変速や大きなトルク変動を防止している。
具体的には、トロイダル式無段変速機1は、接触手段としての接触部140を備ると共に、ECU60に補正手段としての補正部61を有する。
接触部140は、接触解除部100によりフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とが離間しフロント側出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除され、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とが離間しリア側出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、各パワーローラ4をフロント側入力ディスク2又はリア側入力ディスク2に接触させるものである。
接触部140は、図5に示すように、偏心部としての偏心軸42b及び嵌合部6dを含んで構成される。偏心軸42bは、上述したようにパワーローラ4の外輪42に設けられ、パワーローラ4の回転軸線X2からずれた位置に偏心回転軸線としての回転軸線X2’が設けられる。嵌合部6dは、トラニオン6のローラ支持部6aにおける空間部6cに円柱状の凹部として形成される。したがって、偏心軸42bと嵌合部6dとは、パワーローラ4をトラニオン6に対して回転軸線X2’を中心として公転可能に支持することができる。
なお、この図5は、4組のパワーローラ4及びトラニオン6のうち、図中向かって左側に入力ディスク2が位置し、右側に出力ディスク3が位置するパワーローラ4及びトラニオン6を図示しているが、向かって右側に入力ディスク2が位置し、左側に出力ディスク3が位置する場合、パワーローラ4、トラニオン6と偏心軸42b、嵌合部6dとの位置関係は、図5のパワーローラ4、トラニオン6と偏心軸42b、嵌合部6dとの位置関係の左右対称形となる。
そして、この偏心軸42b及び嵌合部6dは、回転軸線X2’がパワーローラ4の回転軸線X2より鉛直方向上側に位置すると共に回転軸線X1に沿った方向に対する入力ディスク2と出力ディスク3との中間位置Aより入力ディスク2側に設定される。つまり、嵌合部6dの中心位置がローラ支持部6aの空間部6cにおいて中間位置Aより入力ディスク2側に設定されることで、パワーローラ4の公転中心である回転軸線X2’は、中間位置Aより入力ディスク2側に設定される。なお、ここでは、この入力ディスク2と出力ディスク3との中間位置Aは、回転軸線X1に沿った方向に対する回転軸線X3の位置とほぼ一致している。
そして、パワーローラ4は、図8上段に示す入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4とが接触する接触位置において入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟み付けられている状態では、図6に示すように、回転軸線X2がこの中間位置Aとほぼ一致する。パワーローラ4は、入力ディスク2が出力ディスク3から離間し図8下段に示す出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除される接触解除位置になると、図7に示すように、パワーローラ4自体の自重により、回転軸線X2’を公転中心として入力ディスク2側に公転する。したがって、接触部140は、接触解除部100により入力ディスク2と出力ディスク3とが離間し出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、各パワーローラ4をフロント側入力ディスク2又はリア側入力ディスク2に接触させることができる。また、これにより、確実にパワーローラ4を出力ディスク3から離間させることもできる。
ECU60は、図2に示すように、補正手段としての補正部61を有し、さらに、設定変速比算出部62と、算出変速比算出部63と、変速比判定部64とを有している。
ここで、このECU60は、マイクロコンピュータを中心として構成され処理部、記憶部及び入出力部を有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部にはトロイダル式無段変速機1の各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部は、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部には、トロイダル式無段変速機1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部は、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、上述の補正部61、設定変速比算出部62、算出変速比算出部63、変速比判定部64を有している。図9で説明するトロイダル式無段変速機1におけるパワーローラ4と出力ディスク3との再接触制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部が前記コンピュータプログラムを当該処理部に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部は、適宜記憶部へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このトロイダル式無段変速機1を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU60とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
設定変速比算出部62は、変速比変更部5によって設定される実際の変速比である設定変速比を算出するものである。設定変速比算出部62は、傾転角センサ50により検出されるパワーローラ4の傾転角である設定傾転角に基づいて設定変速比を算出する。パワーローラ4と入力ディスク2及び出力ディスク3との接触点がわかれば、変速比と傾転角との関係は幾何学形状だけで定まるため、設定変速比算出部62は、傾転角センサ50により検出される設定傾転角から設定変速比を求めることができる。
算出変速比算出部63は、入力回転数センサ53により検出される入力ディスク2の回転数と、出力回転数センサ54により検出される出力ディスク3の回転数とに基づいて、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である算出変速比を算出する。
変速比判定部64は、変速比変更部5により設定される設定変速比が運転状態に応じた適正な変速比であるか否かを判定するものである。ここでは、変速比判定部64は、出力ディスク3が回転していない運転状態において、設定変速比算出部62が算出した設定変速比が減速側に設定されているか否かを判定する一方、出力ディスク3が回転している運転状態において、設定変速比算出部62が算出した設定変速比と、算出変速比算出部63が算出した算出変速比とがほぼ等しいか否かを判定する。
補正部61は、接触解除部100により出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されており、かつ、接触部140によりパワーローラ4と入力ディスク2とが接触されている状態から出力ディスク3とパワーローラ4とを再接触させる際に、変速比変更部5を制御して設定変速比を補正するものである。補正部61は、パワーローラ4の傾転角を補正することで設置変速比を補正する。補正部61は、出力ディスク3が回転していない運転状態において、変速比判定部64により設定変速比が減速側に設定されていないと判定されて際に変速比変更部5を制御して、設定変速比を減速側に設定する。一方、補正部61は、出力ディスク3が回転している運転状態において、変速比判定部64により設定変速比と算出変速比とが著しく異なると判定された際に、変速比変更部5を制御して設定変速比を算出変速比に近づけるように補正する。
次に図9を参照してトロイダル式無段変速機1の再接触制御について説明する。以下で説明する再接触制御は、主としてECU60により実行される。
ECU60は、エンジン21やオイルポンプ92が停止し、接触解除部100により出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されており、かつ、接触部140によりパワーローラ4と入力ディスク2とが接触されている状態から、例えば、エンジン21が再始動した際に、イグニッションスイッチ(不図示)などからのイグニッション信号に基づいて、出力ディスク3とパワーローラ4とを再接触させる再接触指令を受けると(S100)、まず、車速センサ56によって検出される車速や出力回転数センサ54によって検出される出力ディスク3の回転数に基づいて、車両が現在停止中か否かを判定する(S102)。
ECU60により車速が停止中であると判定された場合(S102:Yes)、傾転角センサ50によってパワーローラ4の現在の設定傾転角を検出し、設定変速比算出部62は、この設定傾転角から設定変速比を算出する(S104)。そして、変速比判定部64は、設定変速比算出部62が算出した設定変速比が最減速側に設定されているか否か、すなわち、最大変速比であるか否かを判定する(S106)。
変速比判定部64によって現在の設定変速比が最減速側に設定されていないと判定された場合(S106:No)、ECU60は、前後進切換機構23を制御して前進クラッチ(摩擦クラッチ)をONとし(S108)、前後進切換機構23は、エンジン21の駆動力を正回転駆動力として入力ディスク2に伝達する。そして、補正部61は、最大変速比を目標変速比に設定し、この目標変速比と設定変速比との偏差に基づいて、設定変速比が目標変速比となるように変速比変更部5を制御する。補正部61は、変速比変更部5を制御して、パワーローラ4を中立位置から変速位置側に目標変速比と設定変速比との偏差に基づいた所定のストローク量(目標ストローク量)まで移動させ、パワーローラ4と入力ディスク2との間に接線力を作用させサイドスリップにより、パワーローラ4を目標変速比と設定変速比との偏差に基づいた所定の傾転角(目標傾転角)まで傾転させることで設定変速比の補正を実行し、設定変速比を最減速側(最大変速比)に設定する(S110)。その後、S104に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
そして、変速比判定部64によって現在の設定変速比が最減速側に設定されていると判定された場合(S106:Yes)、ECU60は、油圧押圧機構15を制御し、挟圧力発生油圧室15a内に供給される作動油の油圧によりフロント側入力ディスク2のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク2のリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を付加する(S112)。そして、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク2のリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を作用させることで、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させ、各パワーローラ4をそれぞれ所定の挟圧力でフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟み込み、この再接触制御を終了する。
したがって、例えば、車両が極低速又は停止状態(出力ディスク3の回転停止)である際に、設定変速比が減少側(増速側)である状態で接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触させる場合であっても、補正部61によって、車両の停止中でもパワーローラ4の設定傾転角を補正し、設定変速比を最減速側に補正することで、発進性が低下することを防止することができる。
なお、S112にて、油圧押圧機構15によりフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を付加する際、所定の挟圧力に応じた大きさの挟圧押圧力を一度に付加するのではなく、複数段階に分けて徐々に挟圧押圧力を増加させるようにするとよい。これにより、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との間で微小なずれによるすべりが発生することを防止することができ、この結果、急激な変速や大きなトルク変動が発生することを防止することができ、車両の挙動が不安定になることを防止することができる。
一方、ECU60により車速が停止中でない、すなわち、走行中であると判定された場合(S102:No)、傾転角センサ50によってパワーローラ4の現在の設定傾転角を検出し、設定変速比算出部62は、この設定傾転角から設定変速比を算出すると共に、入力回転数センサ53、出力回転数センサ54により入力ディスク2の回転数、出力ディスク3の回転数を検出し、算出変速比算出部63は、この入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である算出変速比を算出する(S114)。
そして、変速比判定部64は、設定変速比算出部62が算出した設定変速比と、算出変速比算出部63が算出した算出変速比とがほぼ等しいか否かを判定する(S116)。変速比判定部64は、例えば、設定変速比と算出変速比との偏差が予め設定される閾値よりも小さいか否かによって、設定変速比と算出変速比とがほぼ等しいか否かを判定すればよい。
変速比判定部64によって現在の設定変速比と算出変速比とが大幅に異なると判定された場合(S116:No)、補正部61は、算出変速比を目標変速比に設定し、この目標変速比と設定変速比との偏差に基づいて、設定変速比が目標変速比となるように変速比変更部5を制御する。補正部61は、変速比変更部5を制御して、パワーローラ4を中立位置から変速位置側に目標変速比と設定変速比との偏差に基づいた所定のストローク量(目標ストローク量)まで移動させ、パワーローラ4と入力ディスク2との間に接線力を作用させサイドスリップにより、パワーローラ4を目標変速比と設定変速比との偏差に基づいた所定の傾転角(目標傾転角)まで傾転させることで設定変速比の補正を実行し、設定変速比を算出変速比に近づけるように補正する。このとき、ECU60は、必要に応じてエンジン21を制御して、エンジン回転数も所定の目標回転数となるように補正制御する(S118)。その後、S114に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
そして、変速比判定部64によって現在の設定変速比と算出変速比とがほぼ等しいと判定された場合(S116:Yes)、ECU60は、油圧押圧機構15を制御し、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を付加し(S112)、各パワーローラ4をそれぞれ所定の挟圧力でフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟み込み、この再接触制御を終了する。
したがって、例えば、車両の走行中にエンジンストールなどが発生し接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触させる場合であっても、補正部61によってパワーローラ4の設定傾転角を補正し、設定変速比が算出変速比とほぼ一致するように補正することで、算出変速比と設定変速比とが大幅に異なるまま再接触されることが防止され、急激な変速や大きなトルク変動が発生することを防止することができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な油圧押圧機構15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な接触解除部100とを備える。
したがって、接触解除部100が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、これにより、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、接触解除部100により出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態でパワーローラ4を入力ディスク2に接触させる接触部140を備える。したがって、出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、接触部140によりパワーローラ4を入力ディスク2に接触させることで、確実にパワーローラ4を出力ディスク3から離間させることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、接触解除部100により出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されており、かつ、接触部140によりパワーローラ4と入力ディスク2とが接触されている状態から出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させる際に、変速比変更部5を制御して変速比を補正する補正部61を備える。したがって、接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再び接触状態に戻す際に、補正部61によってパワーローラ4の傾転角を適正な角度に補正し、変速比を適正に設定した後に、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触することで、発進性の低下や再接触の際の急激な変速や大きなトルク変動を防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、補正部61は、出力ディスク3が回転していない運転状態において、変速比変更部5を制御して、変速比変更部5により設定される変速比である設定変速比を最減速側に設定する。したがって、例えば、車両が極低速又は停止状態である際に、設定変速比が減少側(増速側)である状態で接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触させる場合であっても、補正部61によって、車両の停止中でもパワーローラ4の設定傾転角を補正し、設定変速比を最減速側に補正することで、発進性が低下することを確実に防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、入力ディスク2の回転数を検出する入力回転数センサ53と、出力ディスク3の回転数を検出する出力回転数センサ54と、入力ディスク2及び出力ディスク3に対するパワーローラ4の傾転角を検出する傾転角センサ50とを備え、補正部61は、出力ディスク3が回転している運転状態において、傾転角センサ50により検出される傾転角である設定傾転角に応じた設定変速比と、入力回転数センサ53及び出力回転数センサ54により検出される入力ディスク2及び出力ディスク3の回転数に基づいて算出される変速比である算出変速比との偏差に基づいて、変速比変更部5を制御して設定変速比を補正する。したがって、車両の走行中に接触解除部100によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再接触させる場合であっても、補正部61によって設定変速比が算出変速比とほぼ一致するように補正することで、算出変速比と設定変速比とが大幅に異なるまま再接触されることが防止され、急激な変速や大きなトルク変動が発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、接触部140は、パワーローラ4をトラニオン6に支持すると共に、パワーローラ4の回転軸線X2からずれた位置に回転軸線X2’が設けられる偏心部をなす偏心軸42b及び嵌合部6dを有し、この偏心軸42b及び嵌合部6dは、回転軸線X2’がパワーローラ4の回転軸線X2より上側に位置すると共に入力ディスク2と出力ディスク3との中間位置Aより入力ディスク2側に設定される。したがって、パワーローラ4は、入力ディスク2が出力ディスク3から離間し出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されると、パワーローラ4自体の自重により、回転軸線X2’を公転中心として入力ディスク2側に公転する。この結果、接触部140は、接触解除部100により入力ディスク2と出力ディスク3とが離間し出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、各パワーローラ4を入力ディスク2に接触させることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、接触解除部100は、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2を移動可能なフロント側入力ディスク離間バネ110及びリア側入力ディスク離間バネ120を有する。したがって、接触解除部100は、フロント側入力ディスク離間バネ110及びリア側入力ディスク離間バネ120によって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、運転状態に応じてこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3との接触を確実に解除することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、変速比変更部5は、トラニオン6に変速制御押圧力を作用させこのトラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置から変速位置に移動させこのパワーローラ4を傾転させることで変速比を変更可能であり、接触解除部100は、少なくともトラニオン6に変速制御押圧力が作用不能な運転状態である場合に、出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除する。したがって、トラニオン6に変速制御押圧力が作用不能な運転状態で、例えば、トロイダル式無段変速機1を搭載した車両の牽引や惰性走行などにより車輪が回転することで出力ディスク3も回転しパワーローラ4に接線力が作用しても、少なくともトラニオン6に変速制御押圧力が作用不能な運転状態である場合に、接触解除部100がパワーローラ4と出力ディスク3との接触状態を解除することから、出力ディスク3の前進側回転、後進側回転のいずれの場合でも、変速比が減少側(増速側)に変速されアップシフトしてしまうことを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機1によれば、駆動力を発生するエンジン21のクランクシャフト21aの回転と連動して駆動することで、変速比変更部5を作動する作動油及び油圧押圧機構15を作動する作動油を加圧可能なオイルポンプ92を備える。したがって、エンジン21が停止しオイルポンプ92が停止した状態で、変速比変更部5において変速制御押圧力が作用不能になると、油圧押圧機構15による挟圧押圧力も作用不能になり、挟圧押圧力がフロント側入力ディスク離間バネ110、リア側入力ディスク離間バネ120の付勢力よりも小さくなることから、変速比変更部5において変速制御押圧力が作用不能になるのに伴って、接触解除部100によって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間することができる。
図10は、本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラ及びトラニオンの分解斜視図、図11は、本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の動作を説明する模式図、図12は、本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の必要付勢力を説明する線図、図13は、本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の付勢力とアンバランス荷重との関係を示す模式的平面図、図14は、本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の付勢力とアンバランス荷重との関係を示す模式的平面図、図15は、本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機のアンバランス荷重を説明する線図である。
実施例2に係る無段変速機は、実施例1に係る無段変速機と略同様の構成であるが、解除手段と接触手段とが兼用されている点で実施例1に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
具体的には、図10、図11に示すように、実施例2に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機201は、解除手段としての接触解除部200と、接触手段としての接触部240とを備え、接触解除部200は、フロント側入力ディスク離間バネ110(図1参照)、リア側入力ディスク離間バネ120(図1参照)にかえて、付勢手段としてのトーションスプリング210を有する。そして、この接触解除部200と接触部240とは、付勢手段としてのトーションスプリング210を兼用している。
トーションスプリング210は、パワーローラ4を入力ディスク2(フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2)側に付勢し、このパワーローラ4を入力ディスク2と共に出力ディスク3(フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3)から離間する側に移動可能なものである。トーションスプリング210は、偏心部としての偏心軸42b及び嵌合部206dに設けられる。さらに具体的には、トーションスプリング210は、円筒コイル状に形成され、中空部分に偏心軸42bが挿入されるようにして、この偏心軸42bに設けられる。トーションスプリング210は、偏心軸42b周りに、ねじり荷重(トルク)を受けるものであり、一端部211がローラ支持部6aの空間部6cに設けられた取付穴206eに挿入され固定される一方、他端部212が外輪42の空間部6cと対向する面に設けられた取付穴(不図示)に挿入され固定される。
ここで、実施例1のトロイダル式無段変速機1(図5参照)では、嵌合部6d(図5参照)は、嵌合部6dの中心位置がローラ支持部6aの空間部6cにおいて中間位置Aより入力ディスク2側に設定されることで、偏心軸42b及び嵌合部6dは、回転軸線X2’が回転軸線X1に沿った方向に対する入力ディスク2と出力ディスク3との中間位置Aより入力ディスク2側に設定されるものとして説明したが、本実施例の嵌合部206dは、嵌合部206dの中心位置が、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4が挟み付けられている状態で、中間位置Aとほぼ一致する位置に設定されている。したがって、偏心軸42b及び嵌合部206dは、回転軸線X2’が回転軸線X1に沿った方向に対する入力ディスク2と出力ディスク3との中間位置Aとほぼ一致する位置に設定される。
上記のように構成されるトロイダル式無段変速機201は、オイルポンプ92が駆動し変速制御ピストン81のフランジ部84に変速制御押圧力が作用可能な運転状態では、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15a内部に作動油が供給されることで、油圧押圧機構15の作動油の挟圧押圧力により、各入力ディスク2を各出力ディスク3に接近させ、図11上段に示す入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4とが接触する接触位置に移動することができる。そして、油圧押圧機構15は、入力ディスク2を接触位置に移動させることで、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み付けるための挟圧力を作用させることができる。この結果、このトロイダル式無段変速機201は、変速比変更部5による変速制御によって、このトラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させ、変速比を変更することができる。
一方、トロイダル式無段変速機201は、オイルポンプ92の駆動が停止し変速制御ピストン81のフランジ部84に変速制御押圧力が作用不能な運転状態では、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15a内部の作動油が排出されることで、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が低下する。そして、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が各トーションスプリング210による付勢力より小さくなり、各トーションスプリング210の付勢力により、パワーローラ4を入力ディスク2(フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2)側に付勢し、パワーローラ4を回転軸線X2’を中心として入力ディスク2側に公転させることで、このパワーローラ4を入力ディスク2と共に出力ディスク3(フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3)から離間する側に移動させる。そして、各トーションスプリング210の付勢力により、このパワーローラ4を入力ディスク2と共に出力ディスク3から離間する側に移動させることで、各入力ディスク2を各出力ディスク3から離間させ、図11下段に示す出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除される接触解除位置に移動することができる。そして、接触解除部200は、入力ディスク2を接触解除位置に移動させることで、入力ディスク2と出力ディスク3とによって挟みつけられていたパワーローラ4と出力ディスク3との接触を解除することができる。この結果、接触解除部200が出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができ、変速比を固定することができる。
そして、このとき、接触解除部200及び接触部240として兼用される各トーションスプリング210は、入力ディスク2が出力ディスク3から離間し図11下段に示す出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除される接触解除位置になると、その付勢力により入力ディスク2と出力ディスク3とが離間し出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、各パワーローラ4を入力ディスク2に接触させることができる。また、これにより、確実にパワーローラ4を出力ディスク3から離間させることもできる。
なお、このトロイダル式無段変速機201は、接触解除部200によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再び接触状態に戻す際には、実施例1のトロイダル式無段変速機1と同様に、図9で説明した再接触制御を実行することで、発進性の低下や再接触の際の急激な変速や大きなトルク変動を防止することができる。
また、本実施例のトロイダル式無段変速機201は、パワーローラ4をトラニオン6に支持する偏心軸42b及び嵌合部206dに、接触解除部200をなす付勢手段としての
トーションスプリング210が設けられることから、例えば、実施例1のトロイダル式無段変速機1のように、バリエータ軸11側にフロント側入力ディスク離間バネ110(図1参照)の反力を受けるためのバネ取付部として、例えば、上述のように、スナップリング130(図1参照)等を設ける必要がない。このため、バリエータ軸11にスナップリング130を設けるためのスナップリング溝(不図示)を形成する必要がないことから、例えば、このスナップリング溝にてバリエータ軸11に大きな応力集中が発生することを防止することができる。これにより、本実施例のトロイダル式無段変速機201は、バリエータ軸11の強度を十分に確保するために必要な当該バリエータ軸11の外径を実施例1のトロイダル式無段変速機1と比較して相対的に小さくすることができる。この結果、バリエータ軸11の外径を相対的に小さく設定することができることから、トロイダル式無段変速機201の体格が大きくなってしまうことを防止することができると共に、バリエータ軸11の外径が大きくなることで、トロイダル式無段変速機201の変速比幅が縮小されてしまうことを防止することができる。すなわち、トロイダル式無段変速機201は、バリエータ軸11の外径の拡大による搭載性の悪化や変速比幅の縮小による燃費の悪化等を抑制することができる。
さらに、トロイダル式無段変速機201は、トーションスプリング210を設けるためにローラ支持部6aの空間部6cに形成される取付穴206e及び外輪42の空間部6cと対向する面に形成される取付穴(不図示)を潤滑油穴として兼用することもできるので、効果的に潤滑油の供給通路を設けることができる。
ところで、このトロイダル式無段変速機201及び上述した実施例1のトロイダル式無段変速機1(図1、図8参照)では、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、ともに荷重のアンバランスが生じることがある。
まず、実施例1のトロイダル式無段変速機1における入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との各接触点の荷重のアンバランスについて説明する。トロイダル式無段変速機1におけるフロント側入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の力のつりあいは、下記に示す関係式(1)により表すことができ、リア側入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の力のつりあいは、下記に示す関係式(2)により表すことができる。ここで、関係式(1)、(2)において、「FL」は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力、「Frff」は、フロント側半円キャビティCのパワーローラ4とフロント側入力ディスク2との接触点(フロント側半円キャビティCのパワーローラ4のフロント側接触点)における回転軸線X1に沿った軸方向荷重、「Frrr」は、リア側半円キャビティCのパワーローラ4とリア側入力ディスク2との接触点(リア側半円キャビティCのパワーローラ4のリア側接触点)における回転軸線X1に沿った軸方向荷重、「Fs1」は、フロント側入力ディスク離間バネ110の付勢力、「Fs2」は、リア側入力ディスク離間バネ120の付勢力を示す。なお、「Fs2」は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用しなくなった際にバリエータ軸11をリア側に移動させるための力に相当する。

Frff=FL−Fs1 ・・・ (1)

Frrr=FL−Fs1−Fs2 ・・・ (2)
すなわち、式(1)、式(2)に示すように、実施例1のトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCとリア側半円キャビティCとで、付加される軸方向荷重がFs2だけ異なり、フロント側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、リア側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とに、Fs2だけアンバランスが生じる。
次に、実施例2のトロイダル式無段変速機201における入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との各接触点の荷重のアンバランスについて説明する。トロイダル式無段変速機201におけるバリエータ軸11の力のつりあい、言い換えれば、フロント側入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の力のつりあい、リア側入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の力は、下記に示す関係式(3)により表すことができ、フロント側出力ディスク3とパワーローラ4との接触点の力のつりあいは、下記に示す関係式(4)により表すことができ、リア側出力ディスク3とパワーローラ4との接触点の力のつりあいは、下記に示す関係式(5)により表すことができる。ここで、関係式(3)、(4)、(5)において、「FL」、「Frff」及び「Frrr」は、上述の関係式(1)、(2)の場合と同様である。さらに、「Frfr」は、フロント側半円キャビティCのパワーローラ4とフロント側出力ディスク3との接触点(フロント側半円キャビティCのパワーローラ4のリア側接触点)における回転軸線X1に沿った軸方向荷重、「Frrf」は、リア側半円キャビティCのパワーローラ4とリア側出力ディスク3との接触点(リア側半円キャビティCのパワーローラ4のフロント側接触点)における回転軸線X1に沿った軸方向荷重、「Fs3」は、トーションスプリング210の付勢力を示す。なお、「Fs3」は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用しなくなった際にバリエータ軸11をリア側に移動させるための力に相当する。

FL=Frff=Frrr ・・・ (3)

Frfr=Frff−Fs3 ・・・ (4)

Frrf=Frrr−Fs3 ・・・ (5)
すなわち、式(3)、式(4)、式(5)に示すように、実施例2のトロイダル式無段変速機201は、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティにおいて、それぞれ、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とに、Fs3だけアンバランスが生じる。
ここで、図12乃至図15を参照して、荷重のアンバランス量に関して、本実施例のトロイダル式無段変速機201と実施例1で上述したトロイダル式無段変速機1(図1、図8参照)とを比較する。なお、図12は、横軸をパワーローラの傾転角、縦軸をリア側にバリエータ軸11を移動させるために必要な付勢力とし、図15は、横軸をパワーローラの傾転角、縦軸をアンバランス荷重としている。
まず、バリエータ軸11をリア側に移動させるために必要な付勢力(バネ力)をFkとすると、実施例1のトロイダル式無段変速機1の場合、リア側入力ディスク離間バネ120がバリエータ軸11自体に直接的に付勢力を作用させていることから、必要なリア側入力ディスク離間バネ120の付勢力は、図12に示すように、パワーローラ4の傾転角には影響されず、パワーローラ4の傾転角に対して一定であり、このリア側入力ディスク離間バネ120の付勢力は、1.0×Fkに設定しておけばよい。
一方、実施例2のトロイダル式無段変速機201の場合、トーションスプリング210がパワーローラ4を介してバリエータ軸11に付勢力を作用させていることから、図12に示すように、傾転角=0°であるときには、必要なトーションスプリング210の付勢力は1.0×Fkでよいが、傾転角≠0°であるときには、トーションスプリング210の付勢力の方向が、バリエータ軸11の軸線方向、すなわち、回転軸線X1に沿った方向からずれることから、必要なトーションスプリング210の付勢力が大きくなってしまう。このため、トーションスプリング210の付勢力は、傾転角が最大であるときにバリエータ軸11をリア側に移動させることができる付勢力(1.0×Fkよりも大きい付勢力)に設定しておく必要がある。
そして、上記のように、リア側入力ディスク離間バネ120、トーションスプリング210の付勢力が設定された場合に、通常運転時に生じるアンバランス荷重について説明する。ここで、油圧押圧機構15による挟圧押圧力は、入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの間でのスリップを防ぎ、トラクション状態を維持するために入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に付加されるものである。このため、ここでは、特定の接触点間で生じるアンバランス荷重を比較するために、接触点においてトロイダル面2a、3a及び接触面4aと垂直に作用する荷重について比較することとする。
すなわち、実施例1のトロイダル式無段変速機1の場合、図13、図15に示すように、常時、回転軸線X1に沿った方向にリア側入力ディスク離間バネ120による付勢力が作用しているため、フロント側半円キャビティCとリア側半円キャビティCと関係において、接触点における出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aに垂直な面直のアンバランス荷重は、パワーローラ4の傾転角に応じて変動し、この傾転角に大きく影響を受けることになる。
一方、実施例2のトロイダル式無段変速機201の場合、図14、図15に示すように、トーションスプリング210による付勢力は、トラニオン6からパワーローラ4に作用している。このため、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティの入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重との関係において、接触点における出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aに垂直な面直のアンバランス荷重は、半頂角αによって定まり、したがって、パワーローラ4の傾転角には依存しないことになる。
この結果、図15に示すように、変速比が最増速側(図中右側の最小変速比側)では、実施例2のトロイダル式無段変速機201の方が実施例1のトロイダル式無段変速機1よりアンバランス荷重量が大きくなるものの、変速比が最減速側(図中左側の最大変速比側)では、実施例2のトロイダル式無段変速機201の方が実施例1のトロイダル式無段変速機1よりアンバランス荷重量が小さくなる。そして、トロイダル式無段変速機1、201のトルク容量は、変速比が最減速時(最大変速比時)の各接触点における面圧による制限を受ける。このため、最減速側で荷重のアンバランス量が少ない実施例2のトロイダル式無段変速機201は、油圧押圧機構15によって挟圧押圧力をより適切に付加することができ、したがって、トルク容量をより大きく設定することができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機201によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な油圧押圧機構15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な接触解除部200とを備える。
したがって、接触解除部200が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、これにより、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機201によれば、接触解除部200により出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態でパワーローラ4を入力ディスク2に接触させる接触部240を備える。したがって、出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、接触部240によりパワーローラ4を入力ディスク2に接触させることで、確実にパワーローラ4を出力ディスク3から離間させることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機201によれば、接触解除部200は、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2を移動可能なトーションスプリング210を有する。したがって、接触解除部200は、トーションスプリング210によって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、運転状態に応じてこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3との接触を確実に解除することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機201によれば、トラニオン6は、パワーローラ4の回転軸線X2からずれた位置に回転軸線X2’が設けられる偏心軸42b及び嵌合部206dを介してパワーローラ4を支持し、接触解除部200と接触部240とは、偏心軸42b及び嵌合部206dに設けられ、パワーローラ4を入力ディスク側に付勢しこのパワーローラ4を入力ディスク2と共に出力ディスク3から離間する側に移動可能なトーションスプリング210により兼用される。したがって、接触解除部200、接触部240として兼用されるトーションスプリング210によりパワーローラ4と出力ディスク3と接触状態を解除することができると共に、接触状態の解除に伴ってパワーローラ4を入力ディスク2に接触させることができることから、トロイダル式無段変速機201を構成する部品点数を削減することができ、また、よりコンパクトな構成とすることができる。
さらに、トロイダル式無段変速機201は、パワーローラ4をトラニオン6に支持する偏心軸42b及び嵌合部206dにトーションスプリング210が設けられることから、バリエータ軸11の外径の拡大を抑制することができ、この結果、搭載性の悪化や変速比幅の縮小による燃費の悪化等を抑制することができる。また、トロイダル式無段変速機201は、パワーローラ4をトラニオン6に支持する偏心軸42b及び嵌合部206dにトーションスプリング210が設けられることから、変速比が最減速側で荷重のアンバランス量を抑制することができ、この結果、油圧押圧機構15によって挟圧押圧力をより適切に付加することができ、トルク容量をより大きく設定することができる。
図16は、本発明の実施例3に係るトロイダル式無段変速機の構成及び動作を説明する模式図である。実施例3に係る無段変速機は、実施例1に係る無段変速機と略同様の構成であるが、解除手段の構成の点で実施例1に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
具体的には、図16に示すように、実施例3に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機301は、解除手段としての接触解除部300と、接触手段としての接触部140とを備える。そして、本実施例の接触解除部300は、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能なものである。以上で説明した実施例1のトロイダル式無段変速機1(図1参照)の接触解除部100は、付勢手段としてのフロント側入力ディスク離間バネ110及びリア側入力ディスク離間バネ120を有するものとして説明したのに対して、本実施例のトロイダル式無段変速機301の接触解除部300は付勢手段としての共用離間バネ310を有する。言い換えれば、本実施例の接触解除部300は、実施例1の接触解除部100の一方の付勢手段であるリア側入力ディスク離間バネ120(図1参照)を備えずに構成されている。本実施例の接触部140は、実施例1に係るトロイダル式無段変速機1が備える接触部140と同様の構成である。
共用離間バネ310は、円筒コイル状の圧縮バネにより構成され、中空部分にバリエータ軸11が挿入されるようにして、このバリエータ軸11に設けられる。このバリエータ軸11は、バネ取付部としてのスナップリング130が設けられている。
そして、共用離間バネ310は、一端がスナップリング130のリア側入力ディスク付勢力作用面321に当接する一方、他端がフロント側入力ディスク2の第1付勢力作用面としてのフロント側入力ディスク付勢力作用面311に当接する。つまり、共用離間バネ310は、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク付勢力作用面311とリア側入力ディスク付勢力作用面321との間に、このフロント側入力ディスク付勢力作用面311、リア側入力ディスク付勢力作用面321に当接するように設けられる。フロント側入力ディスク付勢力作用面311は、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側から離間させるための付勢力が作用する面であり、フロント側入力ディスク2の中心部の突出部端面に設けられる。一方、リア側入力ディスク付勢力作用面321は、リア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3側から離間させるための付勢力が作用する面であり、スナップリング130のフロント側入力ディスク付勢力作用面311と対向する面に設けられる。そして、フロント側入力ディスク付勢力作用面311が本発明の第1付勢力作用面をなす一方、リア側入力ディスク付勢力作用面321が本発明の第2付勢力作用面をなす。
ここで、このフロント側入力ディスク2の中心部の突出部は、フロント側入力ディスク2と共に回転する本発明の回転部312をなし、バリエータ軸11に設けられたスナップリング130は、リア側入力ディスク2と共に回転する本発明の回転部322をなす。そして、フロント側入力ディスク2の回転部312をなす中心部の突出部は、フロント側入力ディスク2と共に回転軸線X1に沿った方向に移動可能であり、リア側入力ディスク2の回転部322をなすスナップリング130は、リア側入力ディスク2と共に回転軸線X1に沿った方向に移動可能である。
したがって、この共用離間バネ310は、フロント側入力ディスク2の回転部312に設けられたフロント側入力ディスク付勢力作用面311と、リア側入力ディスク2の回転部322に設けられたリア側入力ディスク付勢力作用面321とを付勢力により相対的に離間可能である。言い換えれば、この共用離間バネ310は、フロント側入力ディスク2の回転部312とリア側入力ディスク2の回転部322とを相対的に離間可能である。
すなわち、共用離間バネ310は、フロント側入力ディスク付勢力作用面311を介してフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間する側、すなわち、フロント側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ310による付勢力より小さくなると、回転部312をなす中心部の突出部と共にこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることができる。共用離間バネ310は、フロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3との接触を解除することができる。
さらに、このとき、共用離間バネ310は、リア側入力ディスク付勢力作用面321、スナップリング130及びバリエータ軸11を介してリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間する側、すなわち、リア側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ310による付勢力より小さくなると、回転部322をなすスナップリング130及びバリエータ軸11と共にこのリア側入力ディスク2をリア側に移動させることができる。共用離間バネ310は、リア側入力ディスク2をリア側に移動させることで、このリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間させ、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とリア側出力ディスク3との接触を解除することができる。
この結果、トロイダル式無段変速機301は、接触解除部300が出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができ、変速比を固定することができる。
そして、上記のように構成されるトロイダル式無段変速機301は、共用離間バネ310がフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部312と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部322とを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
すなわち、このトロイダル式無段変速機301は、共用離間バネ310がフロント側入力ディスク2の回転部312と、リア側入力ディスク2の回転部322との間に設けられ、この回転部312と回転部322とに相互に逆方向の付勢力を作用させている。このため、トロイダル式無段変速機301は、共用離間バネ310により回転部312と回転部322とに等しい大きさの付勢力を作用させることができると共に、共用離間バネ310による回転部312への付勢力の反力と、共用離間バネ310による回転部322への付勢力の反力とを互いに打ち消しあわせることができ、この結果、回転部312に作用する付勢力と回転部322に作用する付勢力とをバランスさせることができる。
言い換えれば、トロイダル式無段変速機301は、回転部312、回転部322に共用離間バネ310以外の付勢力が作用しておらず、したがって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に共用離間バネ310以外の付勢力が作用していないため、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2とにそれぞれ作用する付勢力の大きさの関係において、アンバランスが発生することを防止することができる。この結果、例えば、実施例1のトロイダル式無段変速機1(図1参照)のように、フロント側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、リア側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができる。
さらに、このトロイダル式無段変速機301は、共用離間バネ310がフロント側入力ディスク2の回転部312と、リア側入力ディスク2の回転部322との間に設けられ、この回転部312と回転部322とに相互に逆方向の付勢力を作用させていることから、パワーローラ4側から入力ディスク2、出力ディスク3側に付勢力が作用することも防止することができる。この結果、例えば、実施例2のトロイダル式無段変速機201(図11、図12参照)のように、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティにおいて、それぞれ、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができる。
そして、このトロイダル式無段変速機301は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力伝達経路内に複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、接触解除部300の共用離間バネ310に起因した荷重のアンバランスが発生することが防止されることから、油圧押圧機構15によって各入力ディスク2に挟圧押圧力をより適切に付加することができ、グロススリップを適正に抑制することができ、したがって、トルク容量の低下を防止することができる。
なお、接触解除部300の共用離間バネ310は、言い換えれば、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられている。このため、フロント側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、リア側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができ、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティにおいて、それぞれ、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができるということもできる。
なお、ここで、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の押圧力作用部分とは、油圧押圧機構15の挟圧力発生油圧室15a内の作動油による挟圧押圧力が各入力ディスク2などを介してパワーローラ4を挟み付ける挟圧力として作用するまでに挟圧押圧力が作用する部分であり、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29から挟圧押圧力ピストン15b、バリエータ軸11などを介してフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に挟圧押圧力が作用するまでに、この挟圧押圧力が伝達される部分である。ここでは、共用離間バネ310は、フロント側入力ディスク付勢力作用面311、リア側入力ディスク付勢力作用面321を介して、押圧力作用部分としてのフロント側入力ディスク2の中心部の突出部(回転部312)及びバリエータ軸11に設けられたスナップリング130(回転部322)同士を互い離間させるような付勢力を作用可能な位置に設けられる。
また、このトロイダル式無段変速機301は、バリエータ軸11をリア側に移動させるために必要な付勢力(バネ力)をFkとした場合、必要な共用離間バネ310の付勢力は、パワーローラ4の傾転角には影響されず、パワーローラ4の傾転角に対して一定であり、よって、この共用離間バネ310の付勢力は、1.0×Fkに設定しておけばよい。
また、このトロイダル式無段変速機301は、接触解除部300によってパワーローラ4と出力ディスク3との接触が一旦解除された後、油圧押圧機構15によってパワーローラ4と出力ディスク3とを再び接触状態に戻す際には、実施例1のトロイダル式無段変速機1と同様に、図9で説明した再接触制御を実行することで、発進性の低下や再接触の際の急激な変速や大きなトルク変動を防止することができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機301によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な油圧押圧機構15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な接触解除部300とを備える。
したがって、接触解除部300が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、これにより、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機301によれば、接触解除部300は、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2を移動可能な共用離間バネ310を有する。したがって、接触解除部300は、共用離間バネ310によって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、運転状態に応じてこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3との接触を確実に解除することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機301によれば、共用離間バネ310は、油圧押圧機構15によって各入力ディスク2と各出力ディスク3との間に挟圧力を作用させるための挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられる。したがって、共用離間バネ310を挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置に設けることから、フロント側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、リア側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができる。さらに、共用離間バネ310をその付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けることから、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティにおいて、それぞれ、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができるということができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機301によれば、入力ディスク2は、フロント側入力ディスク2と、フロント側入力ディスク2の回転中心である回転軸線X1に沿った方向にこのフロント側入力ディスク2に対して所定の間隔をあけて設けられるリア側入力ディスク2とを有し、出力ディスク3は、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2との間にフロント側入力ディスク2と対向して設けられるフロント側出力ディスク3と、フロント側出力ディスク3とリア側入力ディスク2との間にリア側入力ディスク2と対向して設けられるリア側出力ディスク3とを有し、共用離間バネ310は、フロント側入力ディスク2又はリア側入力ディスク2と共に、それぞれ回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部312、322同士を付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能である。
したがって、共用離間バネ310が回転部312、322同士に相互に逆方向で等しい大きさの付勢力を作用させることで、回転部312を介しフロント側入力ディスク2に作用する付勢力と、回転部322を介してリア側入力ディスク2に作用する付勢力とをバランスさせることができると共に、パワーローラ4側から入力ディスク2、出力ディスク3側に付勢力を作用させることなく、共用離間バネ310によって各入力ディスク2に付勢力を作用させることで、各入力ディスク2と各出力ディスク3と相対的に離間させることができる。この結果、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力伝達経路内に複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、共用離間バネ310の付勢力に起因して、相互に荷重のアンバランスが発生することが防止さすることができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る無段変速機は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、解除手段は、フロント側入力ディスク2の回転部とリア側入力ディスク2の回転部とを付勢力により相対的に離間可能な付勢手段を有するものとして説明したが、これに限らない。解除手段は、入力ディスク2又は出力ディスク3と共にそれぞれ回転可能な回転部同士を付勢力により相対的に離間可能な付勢手段を有して構成されてもよい。すなわち、解除手段は、フロント側入力ディスク2の回転部312(例えば、フロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な中心部の突出部端面)とフロント側出力ディスク3の回転部(例えば、フロント側出力ディスク3と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動不能な中心部の突出部端面)とを相対的に離間可能な付勢手段と、リア側入力ディスク2の回転部322(例えば、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な中心部の突出部端面)とリア側出力ディスク3の回転部(例えば、リア側出力ディスク3と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動不能な中心部の突出部端面)とを相対的に離間可能な付勢手段とを有するように構成してもよい。この場合でも、挟圧手段による挟圧押圧力が作用する押圧力伝達経路内に複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、付勢手段の付勢力に起因して、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
図17は、本発明の実施例4に係るトロイダル式無段変速機の構成を説明する部分断面図、図18は、本発明の実施例4に係るトロイダル式無段変速機の構成及び動作を説明する模式図である。実施例4に係る無段変速機は、実施例3に係る無段変速機と略同様の構成であるが、解除手段の付勢手段の位置が実施例3に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
具体的には、図17、図18に示すように、実施例4に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機401は、解除手段としての接触解除部400と、接触手段としての接触部140とを備える。そして、本実施例の接触解除部400は、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能なものである。本実施例のトロイダル式無段変速機401の接触解除部400は、付勢手段としての共用離間バネ410を有する。本実施例の接触部140は、実施例1に係るトロイダル式無段変速機1が備える接触部140と同様の構成である。
共用離間バネ410は、中心が回転軸線X1とほぼ一致する円環状の2枚の皿バネにより構成される。共用離間バネ410は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられている。
ここで、本実施例のトロイダル式無段変速機401では、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の押圧力作用部分は、第1挟圧押圧力作用面としてのフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28、第2挟圧押圧力作用面としてのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29から挟圧押圧力ピストン15b、バリエータ軸11などを介してフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に挟圧押圧力が作用するまでに、この挟圧押圧力が伝達される部分である。ここでは、共用離間バネ410は、後述する第1付勢力作用面としてのフロント側入力ディスク付勢力作用面411、第2付勢力作用面としてのリア側入力ディスク付勢力作用面421を介して、押圧力作用部分である付勢手段支持部材としてのバネ支持部材413(回転部412)及び挟圧押圧力ピストン15b(回転部422)同士を互い離間させるような付勢力を作用可能な位置に設けられる。
具体的には、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。すなわち、挟圧押圧力ピストン15bは、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能なリア側入力ディスク2の回転部422をなす。
フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。
なお、この挟圧力発生油圧室15aは、実施例1のトロイダル式無段変速機1(図1参照)でも説明したように、この挟圧力発生油圧室15aの内部に作動油を供給、あるいは、挟圧力発生油圧室15aの内部の作動油を排出する作動油供給通路99が接続されている。作動油供給通路99は、入力軸10、バリエータ軸11の内方に貫通するように形成される通路及びシール部材Sによってバリエータ軸11の内周面と入力軸10の外周面との間に区画される空間部などにより構成され、挟圧力発生油圧室15aに開口している。
バネ支持部材413は、フロント側入力ディスク2の回転部412をなすと共に共用離間バネ410を支持するものである。バネ支持部材413は、回転軸線X1を中心とした円筒状(シリンダ状)に形成される。さらに具体的にいえば、バネ支持部材413は、本体部413aと、小径部413bと、大径部413cとを有する。すなわち、バネ支持部材413は、相対的に径が小さい小径部413bと、この小径部413bより径が大きく設定される大径部413cとを有する。小径部413bと大径部413cとは、共に円筒状に形成される。そして、バネ支持部材413は、小径部413bと大径部413cとが円環板状の本体部413aを介して連結されている。
バネ支持部材413は、挟圧押圧力ピストン15bのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面側、すなわち、挟圧押圧力ピストン15bのフロント側に設けられる。バネ支持部材413は、回転軸線X1に沿った方向に対して本体部413aが挟圧押圧力ピストン15bと対向するように配置される。バネ支持部材413は、本体部413aを挟んで大径部413cがリア側に位置し、小径部413bがフロント側に位置するように配置される。
そして、上述の挟圧押圧力ピストン15bは、このバネ支持部材413の大径部413cの内側に収容されるように位置し、この挟圧押圧力ピストン15bの径方向外側の先端部及び大径部413cのリア側の先端部には、環状のシール部材Sが設けられており、したがって、挟圧力発生油圧室15aの内部に供給される作動油がこのシール部材Sにより外部に漏れないようにシールされている。
また、バネ支持部材413は、小径部413bの内周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部413dが設けられている。一方、バリエータ軸11は、外周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部11cが設けられている。
そして、バネ支持部材413は、スプライン部413dがスプライン部11cにスプライン嵌合されることで、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に移動可能で、かつ、相対回転不能、つまり、バリエータ軸11の回転軸線X1周りの回転に伴って回転可能に設けられる。
また、バネ支持部材413は、大径部413cの外周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部413eが設けられている。一方、フロント側入力ディスク2は、突出部分2bの基端部が回転軸線X1を中心とした円筒状(シリンダ状)の円筒部2cとして形成される。この円筒部2cは、内周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部2dが設けられている。
そして、バネ支持部材413は、スプライン部413eがスプライン部2dにスプライン嵌合されることで、フロント側入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能で、かつ、相対回転不能、つまり、フロント側入力ディスク2の回転軸線X1周りの回転に伴って回転可能に設けられる。ただし、ここでは、バネ支持部材413は、大径部413cの基端部側で本体部413aに接するようにしてスナップリング413fが設けられていることから、回転軸線X1に沿った方向に対してもフロント側入力ディスク2と相対的に変位しないように固定されている。したがって、バネ支持部材413は、フロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部412をなす。入力軸10からの駆動力は、バリエータ軸11、バネ支持部材413を介して円筒部2cの内周面側に伝達されフロント側入力ディスク2に入力される。
そして、リア側入力ディスク付勢力作用面421は、挟圧押圧力ピストン15bにおけるリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面に設けられる。一方、フロント側入力ディスク付勢力作用面411は、バネ支持部材413の本体部413aにおけるリア側入力ディスク付勢力作用面421と対向する面に設けられる。
共用離間バネ410を構成する2枚の皿バネは、一方の皿バネの内径側縁部がフロント側入力ディスク付勢力作用面411の突起部411aと当接し他方の皿バネの内径側縁部がリア側入力ディスク付勢力作用面421の突起部421aと当接すると共に、外径側縁部が互いに当接するようにして設けられる。つまり、共用離間バネ410は、フロント側入力ディスク付勢力作用面411とリア側入力ディスク付勢力作用面421とに当接するように、回転軸線X1に沿った方向に対してこのフロント側入力ディスク付勢力作用面411とリア側入力ディスク付勢力作用面421との間に設けられる。したがって、共用離間バネ410は、フロント側入力ディスク付勢力作用面411及びリア側入力ディスク付勢力作用面421に付勢力を作用させることにより、フロント側入力ディスク2と、リア側入力ディスク2とを回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能である。言い換えれば、この共用離間バネ410は、フロント側入力ディスク2の回転部412とリア側入力ディスク2の回転部422とを相対的に離間可能である。
すなわち、共用離間バネ410は、フロント側入力ディスク付勢力作用面411、バネ支持部材413及びスナップリング413f等を介してフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間する側、すなわち、フロント側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ410による付勢力より小さくなると、回転部412をなすバネ支持部材413と共にこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることができる。共用離間バネ410は、フロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3との接触を解除することができる。
さらに、このとき、共用離間バネ410は、リア側入力ディスク付勢力作用面421、挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11を介してリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間する側、すなわち、リア側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ410による付勢力より小さくなると、回転部422をなす挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11と共にこのリア側入力ディスク2をリア側に移動させることができる。共用離間バネ410は、リア側入力ディスク2をリア側に移動させることで、このリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間させ、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とリア側出力ディスク3との接触を解除することができる。
この結果、トロイダル式無段変速機401は、接触解除部400が出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができ、変速比を固定することができる。
ここで、このトロイダル式無段変速機401は、遠心油圧抗力発生手段としての遠心キャンセル室415を備える。この遠心キャンセル室415は、バリエータ軸11、挟圧押圧力ピストン15bやフロント側入力ディスク2が回転軸線X1を中心として回転することで、挟圧力発生油圧室15a内に発生する遠心油圧を相殺するものである。遠心キャンセル室415は、大径部413cの内側において、フロント側入力ディスク付勢力作用面411とリア側入力ディスク付勢力作用面421とによって区画される。言い換えれば、バネ支持部材413は、遠心キャンセル室415を構成するキャンセル室構成部材として兼用され、共用離間バネ410は、遠心キャンセル室415内に収容されこの遠心キャンセル室415内でバネ支持部材413に支持されている。そして、この遠心キャンセル室415は、挟圧押圧力ピストン15bを挟んで挟圧力発生油圧室15aと対向する。この遠心キャンセル室415には、作動油供給通路99が接続されており、挟圧力発生油圧室15aと同様に、この作動油供給通路99により内部に作動油が供給される。
そして、上記のように構成されるトロイダル式無段変速機401は、共用離間バネ410によってフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部412をなすバネ支持部材413と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部422をなす挟圧押圧力ピストン15bとを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
すなわち、このトロイダル式無段変速機401は、共用離間バネ410がフロント側入力ディスク2の回転部412と、リア側入力ディスク2の回転部422との間に設けられ、この回転部412と回転部422とに相互に逆方向の付勢力を作用させている。このため、トロイダル式無段変速機401は、共用離間バネ410により回転部412と回転部422とに等しい大きさの付勢力を作用させることができると共に、共用離間バネ410による回転部412への付勢力の反力と、共用離間バネ410による回転部422への付勢力の反力とを互いに打ち消しあうことができ、この結果、回転部412に作用する付勢力と回転部422に作用する付勢力とをバランスさせることができる。したがって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に共用離間バネ410以外の付勢力が作用していないため、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2とにそれぞれ作用する付勢力の大きさの関係において、アンバランスが発生することを防止することができる。この結果、フロント側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、リア側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができる。
さらに、このトロイダル式無段変速機401は、共用離間バネ410がフロント側入力ディスク2の回転部412と、リア側入力ディスク2の回転部422との間に設けられ、この回転部412と回転部422とに相互に逆方向の付勢力を作用させていることから、パワーローラ4側から入力ディスク2、出力ディスク3側に付勢力が作用することも防止することができる。この結果、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティにおいて、それぞれ、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができる。
また、このトロイダル式無段変速機401は、バリエータ軸11、挟圧押圧力ピストン15bやフロント側入力ディスク2が回転軸線X1を中心として回転することで、遠心キャンセル室415内の作動油に発生する遠心油圧により、挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧を相殺することができる。すなわち、このトロイダル式無段変速機401は、遠心キャンセル室415内の作動油に発生する遠心油圧が挟圧押圧力ピストン15bをリア側に押し出す力としてリア側入力ディスク付勢力作用面421に作用し、挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧に起因した挟圧押圧力ピストン15bをフロント側に押し出す力を打ち消すことができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機401によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な油圧押圧機構15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な接触解除部400とを備える。
したがって、接触解除部400が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、これにより、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機401によれば、接触解除部400は、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2を移動可能な共用離間バネ410を有する。したがって、接触解除部400は、共用離間バネ410によって、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間する側に付勢し、運転状態に応じてこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3との接触を確実に解除することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機401によれば、共用離間バネ410は、油圧押圧機構15によって各入力ディスク2と各出力ディスク3との間に挟圧力を作用させるための挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられる。したがって、共用離間バネ410を挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置に設けることから、フロント側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、リア側半円キャビティCにおける入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができる。さらに、共用離間バネ410をその付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けることから、フロント側半円キャビティC及びリア側半円キャビティCの両キャビティにおいて、それぞれ、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重と、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する軸方向荷重とにアンバランスが生じることを防止することができるということができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機401によれば、入力ディスク2は、フロント側入力ディスク2と、フロント側入力ディスク2の回転中心である回転軸線X1に沿った方向にこのフロント側入力ディスク2に対して所定の間隔をあけて設けられるリア側入力ディスク2とを有し、出力ディスク3は、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2との間にフロント側入力ディスク2と対向して設けられるフロント側出力ディスク3と、フロント側出力ディスク3とリア側入力ディスク2との間にリア側入力ディスク2と対向して設けられるリア側出力ディスク3とを有し、共用離間バネ410は、フロント側入力ディスク2又はリア側入力ディスク2と共に、それぞれ回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部412、422同士を付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能である。
したがって、共用離間バネ410が回転部412、422同士に相互に逆方向で等しい大きさの付勢力を作用させることで、回転部412を介しフロント側入力ディスク2に作用する付勢力と、回転部422を介してリア側入力ディスク2に作用する付勢力とをバランスさせることができると共に、パワーローラ4側から入力ディスク2、出力ディスク3側に付勢力を作用させることなく、共用離間バネ410によって各入力ディスク2に付勢力を作用させることで、各入力ディスク2と各出力ディスク3と相対的に離間させることができる。この結果、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力伝達経路内に複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、共用離間バネ410の付勢力に起因して、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機401によれば、油圧押圧機構15は、入力ディスク2の回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2側に設けられる挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の油圧によりフロント側入力ディスク2のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及びリア側入力ディスク2のリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を作用させ、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側に接近させると共に第2入力ディスクをリア側出力ディスク3側に接近させることで挟圧力を発生させ、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2のパワーローラ4との接触面4aの背面側に設けられ、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、リア側入力ディスク2の回転部422をなす挟圧押圧力ピストン15bに挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられ、共用離間バネ410は、挟圧押圧力ピストン15bのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面側に設けられるリア側入力ディスク付勢力作用面421と、フロント側入力ディスク2の回転部412をなすと共に共用離間バネ410を支持するバネ支持部材413にリア側入力ディスク付勢力作用面421と対向するように設けられるフロント側入力ディスク付勢力作用面411との間に設けられる。
したがって、共用離間バネ410によってフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部412をなすバネ支持部材413と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部422をなす挟圧押圧力ピストン15bとを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。また、他の部位、例えば、バリエータ軸11に応力集中する箇所が形成されることを防止することができ、すなわち、強度低下を招くことなく、共用離間バネ410を適正な位置に設けることができる。この結果、トロイダル式無段変速機401の大型化による搭載性の悪化や変速比幅の縮小による燃費の悪化、トルク容量の低下等を抑制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機401によれば、フロント側入力ディスク付勢力作用面411とリア側入力ディスク付勢力作用面421とによって区画され、挟圧押圧力ピストン15bを挟んで挟圧力発生油圧室15aと対向する遠心キャンセル室415を備える。したがって、遠心キャンセル室415内の作動油に発生する遠心油圧により、挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧を相殺することができることから、油圧押圧機構15の挟圧押圧力の制御を精度よく適正に実行することができ、制御性を向上することができる。また、共用離間バネ410を支持するバネ支持部材413が遠心キャンセル室415を構成するためのキャンセル室構成部材として兼用されることから、部品点数の増加を抑制しつつ、適正に挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧を相殺することができる。
図19は、本発明の実施例5に係るトロイダル式無段変速機の構成を説明する部分断面図である。実施例5に係る無段変速機は、実施例4に係る無段変速機と略同様の構成であるが、駆動力伝達部材を備えている点で実施例4に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
具体的には、図19に示すように、実施例5に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機501は、解除手段としての接触解除部500と、駆動力伝達部材517とを備える。そして、本実施例の接触解除部500は、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能なものである。本実施例のトロイダル式無段変速機501の接触解除部500は、付勢手段としての共用離間バネ510を有する。
共用離間バネ510は、中心が回転軸線X1とほぼ一致する円環状の1枚の皿バネにより構成される。共用離間バネ510は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられている。
ここで、本実施例のトロイダル式無段変速機501では、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の押圧力作用部分は、第1挟圧押圧力作用面としてのフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28、第2挟圧押圧力作用面としてのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29から挟圧押圧力ピストン15b、バリエータ軸11などを介してフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に挟圧押圧力が作用するまでに、この挟圧押圧力が伝達される部分である。ここでは、共用離間バネ510は、後述する第1付勢力作用面としてのフロント側入力ディスク付勢力作用面511、第2付勢力作用面としてのリア側入力ディスク付勢力作用面521を介して、押圧力作用部分である付勢手段支持部材としてのスナップリング513(回転部512)及び挟圧押圧力ピストン15b(回転部522)同士を互い離間させるような付勢力を作用可能な位置に設けられる。
具体的には、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。すなわち、挟圧押圧力ピストン15bは、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能なリア側入力ディスク2の回転部522をなす。
フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。
スナップリング513は、フロント側入力ディスク2の回転部512をなすと共に共用離間バネ510を支持するものである。スナップリング513は、回転軸線X1を中心とした円環板状に形成される。スナップリング513は、フロント側入力ディスク2の円筒部2cの内周面に設けられている。スナップリング513は、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2と相対的に変位しないように固定されている。したがって、スナップリング513は、フロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部512をなす。
上述の挟圧押圧力ピストン15bは、このスナップリング513よりリア側にてフロント側入力ディスク2の円筒部2cの内側に収容されるように位置する。言い換えれば、挟圧押圧力ピストン15bは、回転軸線X1に沿った方向に対して、円筒部2cの内側にて、スナップリング513とフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28との間に位置する。挟圧押圧力ピストン15bは、径方向外側の先端部に環状のシール部材Sが設けられており、したがって、挟圧力発生油圧室15aの内部に供給される作動油がこのシール部材Sにより外部に漏れないようにシールされている。
駆動力伝達部材517は、回転軸線X1を中心とした円筒状(シリンダ状)に形成される。さらに具体的にいえば、駆動力伝達部材517は、本体部517aと、小径部517bと、大径部517cとを有する。すなわち、駆動力伝達部材517は、相対的に径が小さい小径部517bと、この小径部517bより径が大きく設定される大径部517cとを有する。小径部517bと大径部517cとは、共に円筒状に形成される。そして、駆動力伝達部材517は、小径部517bと大径部517cとが円環板状の本体部517aを介して一端側の基端部にて連結されている。
駆動力伝達部材517は、挟圧押圧力ピストン15bのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面側、すなわち、挟圧押圧力ピストン15bのフロント側に設けられる。駆動力伝達部材517は、回転軸線X1に沿った方向に対して本体部517aが挟圧押圧力ピストン15bと対向するように配置される。また、駆動力伝達部材517は、本体部517aがフロント側に位置し、小径部517b、大径部517cの先端部がリア側に位置するように配置される。
また、駆動力伝達部材517は、小径部517bの内周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部517dが設けられている。一方、バリエータ軸11は、外周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部11cが設けられている。
そして、駆動力伝達部材517は、スプライン部517dがスプライン部11cにスプライン嵌合されることで、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に移動可能で、かつ、相対回転不能、つまり、バリエータ軸11の回転軸線X1周りの回転に伴って回転可能に設けられる。ただし、ここでは、駆動力伝達部材517は、小径部517bの基端部側で本体部517aに接するようにしてスナップリング517fが設けられていることから、回転軸線X1に沿った方向に対してもバリエータ軸11と相対的に変位しないように固定されている。
また、駆動力伝達部材517は、大径部517cの内周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部517eが設けられている。一方、フロント側入力ディスク2は、円筒部2cの外周面に回転軸線X1に沿って形成される複数のスプライン溝やスプライン爪からなるスプライン部502dが設けられている。
そして、駆動力伝達部材517は、スプライン部517eがスプライン部502dにスプライン嵌合されることで、フロント側入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿った方向に相対移動可能で、かつ、相対回転不能、つまり、フロント側入力ディスク2の回転軸線X1周りの回転に伴って回転可能に設けられる。したがって、駆動力伝達部材517は、フロント側入力ディスク2の外周側に駆動力を伝達することが可能となる。すなわち、入力軸10からの駆動力は、バリエータ軸11、駆動力伝達部材517を介して円筒部2cの外周面側に伝達されフロント側入力ディスク2に入力される。
そして、リア側入力ディスク付勢力作用面521は、挟圧押圧力ピストン15bにおけるリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面に設けられる。一方、フロント側入力ディスク付勢力作用面511は、スナップリング513におけるリア側入力ディスク付勢力作用面521と対向する面に設けられる。
共用離間バネ510を構成する1枚の皿バネは、内径側縁部がリア側入力ディスク付勢力作用面521の突起部521aと当接する一方、外径側縁部がフロント側入力ディスク付勢力作用面511とフロント側入力ディスク2の円筒部2cの内周面との入隅部と当接するようにして設けられる。つまり、共用離間バネ510は、フロント側入力ディスク付勢力作用面511とリア側入力ディスク付勢力作用面521とに当接するように、回転軸線X1に沿った方向に対してこのフロント側入力ディスク付勢力作用面511とリア側入力ディスク付勢力作用面521との間に設けられる。したがって、共用離間バネ510は、フロント側入力ディスク付勢力作用面511及びリア側入力ディスク付勢力作用面521に付勢力を作用させることにより、フロント側入力ディスク2と、リア側入力ディスク2とを回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能である。言い換えれば、この共用離間バネ510は、フロント側入力ディスク2の回転部512とリア側入力ディスク2の回転部522とを相対的に離間可能である。
すなわち、共用離間バネ510は、フロント側入力ディスク付勢力作用面511、スナップリング513等を介してフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間する側、すなわち、フロント側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ510による付勢力より小さくなると、回転部512をなすスナップリング513と共にこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることができる。共用離間バネ510は、フロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3との接触を解除することができる。
さらに、このとき、共用離間バネ510は、リア側入力ディスク付勢力作用面521、挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11を介してリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間する側、すなわち、リア側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ510による付勢力より小さくなると、回転部522をなす挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11と共にこのリア側入力ディスク2をリア側に移動させることができる。共用離間バネ510は、リア側入力ディスク2をリア側に移動させることで、このリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間させ、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とリア側出力ディスク3との接触を解除することができる。
この結果、トロイダル式無段変速機501は、接触解除部500が出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができ、変速比を固定することができる。
そして、上記のように構成されるトロイダル式無段変速機501は、共用離間バネ510によってフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部512をなすスナップリング513と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部522をなす挟圧押圧力ピストン15bとを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
また、このトロイダル式無段変速機501は、入力軸10からの駆動力が駆動力伝達部材517を介して円筒部2cの外周面側に伝達されフロント側入力ディスク2に入力されると共に、このフロント側入力ディスク2と駆動力伝達部材517とが円筒部2cの外周面側にて、回転軸線X1に沿って相対移動可能であることから、油圧押圧機構15によって挟圧押圧力が付加された際に、半径が相対的に大きな部分で、フロント側入力ディスク2を駆動力伝達部材517に対して回転軸線X1に沿ってスライドさせることができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機501によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な油圧押圧機構15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な接触解除部500とを備える。
したがって、接触解除部500が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、これにより、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機501によれば、共用離間バネ510は、油圧押圧機構15によって各入力ディスク2と各出力ディスク3との間に挟圧力を作用させるための挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられる。したがって、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機501によれば、共用離間バネ510が回転部512、522同士に相互に逆方向で等しい大きさの付勢力を作用させることで、回転部512を介しフロント側入力ディスク2に作用する付勢力と、回転部522を介してリア側入力ディスク2に作用する付勢力とをバランスさせることができると共に、パワーローラ4側から入力ディスク2、出力ディスク3側に付勢力を作用させることなく、共用離間バネ510によって各入力ディスク2に付勢力を作用させることで、各入力ディスク2と各出力ディスク3と相対的に離間させることができる。この結果、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力伝達経路内に複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、共用離間バネ510の付勢力に起因して、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機501によれば、共用離間バネ510によってフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部512をなすスナップリング513と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部522をなす挟圧押圧力ピストン15bとを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。また、他の部位、例えば、バリエータ軸11に応力集中する箇所が形成されることを防止することができ、すなわち、強度低下を招くことなく、共用離間バネ510を適正な位置に設けることができる。この結果、トロイダル式無段変速機501の大型化による搭載性の悪化や変速比幅の縮小による燃費の悪化、トルク容量の低下等を抑制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機501によれば、スナップリング513とは別体に設けられ、フロント側入力ディスク2の外周側に駆動力を伝達すると共に、この外周側にてフロント側入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿って相対移動可能な駆動力伝達部材517を備える。したがって、駆動力が駆動力伝達部材517を介してフロント側入力ディスク2の外周面側に伝達され入力されると共に、このフロント側入力ディスク2と駆動力伝達部材517とがこの外周面側にて、回転軸線X1に沿って相対移動可能であることから、油圧押圧機構15によって挟圧押圧力が付加された際に、半径が相対的に大きな部分で、フロント側入力ディスク2を駆動力伝達部材517に対して回転軸線X1に沿ってスライドさせることができる。このため、フロント側入力ディスク2と駆動力伝達部材517とのスライド部、すなわち、スプライン部517e及びスプライン部502dの接触荷重を小さくすることができ、この結果、スプライン部517e及びスプライン部502dの摩耗量を抑制することができる。
図20は、本発明の実施例6に係るトロイダル式無段変速機の構成を説明する部分断面図である。実施例6に係る無段変速機は、実施例5に係る無段変速機と略同様の構成であるが、遠心油圧抗力発生手段を備えている点で実施例5に係る無段変速機とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1、図2を参照する。
具体的には、図20に示すように、実施例6に係る無段変速機としてのトロイダル式無段変速機601は、解除手段としての接触解除部600と、遠心油圧抗力発生手段としての遠心キャンセル室615と、駆動力伝達部材517とを備える。そして、本実施例の接触解除部600は、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能なものである。本実施例のトロイダル式無段変速機601の接触解除部600は、付勢手段としての共用離間バネ610を有する。本実施例の駆動力伝達部材517は、実施例5に係るトロイダル式無段変速機501が備える駆動力伝達部材517と同様の構成である。
共用離間バネ610は、中心が回転軸線X1とほぼ一致する円環状の2枚の皿バネにより構成される。共用離間バネ610は、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられている。
ここで、本実施例のトロイダル式無段変速機601では、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の押圧力作用部分は、第1挟圧押圧力作用面としてのフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28、第2挟圧押圧力作用面としてのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29から挟圧押圧力ピストン15b、バリエータ軸11などを介してフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に挟圧押圧力が作用するまでに、この挟圧押圧力が伝達される部分である。ここでは、共用離間バネ610は、後述する第1付勢力作用面としてのフロント側入力ディスク付勢力作用面611、第2付勢力作用面としてのリア側入力ディスク付勢力作用面621を介して、押圧力作用部分である付勢手段支持部材としてのバネ支持部材613(回転部612)及び挟圧押圧力ピストン15b(回転部622)同士を互い離間させるような付勢力を作用可能な位置に設けられる。
具体的には、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。すなわち、挟圧押圧力ピストン15bは、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能なリア側入力ディスク2の回転部622をなす。
フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。
バネ支持部材613は、フロント側入力ディスク2の回転部612をなすと共に共用離間バネ510を支持するものである。バネ支持部材613は、回転軸線X1を中心とした円環板状に形成される。バネ支持部材613は、フロント側入力ディスク2の円筒部2cの内周面に設けられている。このバネ支持部材613は、内径側縁部に突起部613aが形成される。一方、バネ支持部材613は、外径側縁部にスナップリング613bが接触するように設けられることで、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2と相対的に変位しないように固定されている。したがって、バネ支持部材613は、フロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部612をなす。
上述の挟圧押圧力ピストン15bは、このバネ支持部材613よりリア側にてフロント側入力ディスク2の円筒部2cの内側に収容されるように位置する。言い換えれば、挟圧押圧力ピストン15bは、回転軸線X1に沿った方向に対して、円筒部2cの内側にて、バネ支持部材613とフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28との間に位置する。挟圧押圧力ピストン15bは、径方向外側の先端部に環状のシール部材Sが設けられており、したがって、挟圧力発生油圧室15aの内部に供給される作動油がこのシール部材Sにより外部に漏れないようにシールされている。
そして、リア側入力ディスク付勢力作用面621は、挟圧押圧力ピストン15bにおけるリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29の背面に設けられる。一方、フロント側入力ディスク付勢力作用面611は、バネ支持部材613におけるリア側入力ディスク付勢力作用面621と対向する面に設けられる。
共用離間バネ610を構成する2枚の皿バネは、一方の皿バネの内径側縁部がフロント側入力ディスク付勢力作用面611の突起部613aと当接し他方の皿バネの内径側縁部がリア側入力ディスク付勢力作用面621の突起部621aと当接すると共に、外径側縁部が互いに当接するようにして設けられる。つまり、共用離間バネ610は、フロント側入力ディスク付勢力作用面611とリア側入力ディスク付勢力作用面621とに当接するように、回転軸線X1に沿った方向に対してこのフロント側入力ディスク付勢力作用面611とリア側入力ディスク付勢力作用面621との間に設けられる。したがって、共用離間バネ610は、フロント側入力ディスク付勢力作用面611及びリア側入力ディスク付勢力作用面621に付勢力を作用させることにより、フロント側入力ディスク2と、リア側入力ディスク2とを回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能である。言い換えれば、この共用離間バネ610は、フロント側入力ディスク2の回転部612とリア側入力ディスク2の回転部622とを相対的に離間可能である。
すなわち、共用離間バネ610は、フロント側入力ディスク付勢力作用面611、バネ支持部材613及びスナップリング613b等を介してフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間する側、すなわち、フロント側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ610による付勢力より小さくなると、回転部612をなすバネ支持部材613と共にこのフロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることができる。共用離間バネ610は、フロント側入力ディスク2をフロント側に移動させることで、このフロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3から離間させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とフロント側出力ディスク3との接触を解除することができる。
さらに、このとき、共用離間バネ610は、リア側入力ディスク付勢力作用面621、挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11を介してリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間する側、すなわち、リア側に付勢し、挟圧力発生油圧室15a内の圧力が共用離間バネ610による付勢力より小さくなると、回転部622をなす挟圧押圧力ピストン15b及びバリエータ軸11と共にこのリア側入力ディスク2をリア側に移動させることができる。共用離間バネ610は、リア側入力ディスク2をリア側に移動させることで、このリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3から離間させ、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3とによって挟み付けられていたパワーローラ4とリア側出力ディスク3との接触を解除することができる。
この結果、トロイダル式無段変速機601は、接触解除部600が出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができ、変速比を固定することができる。
なお、このバネ支持部材613は、内径側縁部が上述の実施例5のトロイダル式無段変速機501(図19参照)のスナップリング513(図19参照)の内径側縁部より、駆動力伝達部材517の小径部517bの外周面に近接した位置に設定されており、すなわち、このバネ支持部材613により遠心キャンセル室615を形成している。
遠心キャンセル室615は、円筒部2cの内側において、フロント側入力ディスク付勢力作用面611とリア側入力ディスク付勢力作用面621とによって区画される。言い換えれば、バネ支持部材613は、遠心キャンセル室615を構成するキャンセル室構成部材として兼用され、共用離間バネ610は、遠心キャンセル室615内に収容されこの遠心キャンセル室615内でバネ支持部材613に支持されている。そして、この遠心キャンセル室615は、挟圧押圧力ピストン15bを挟んで挟圧力発生油圧室15aと対向する。この遠心キャンセル室615には、作動油供給通路が接続されており、挟圧力発生油圧室15aと同様に、この作動油供給通路により内部に作動油が供給される。
そして、上記のように構成されるトロイダル式無段変速機601は、共用離間バネ610によってフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部612をなすバネ支持部材613と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部622をなす挟圧押圧力ピストン15bとを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
また、このトロイダル式無段変速機601は、入力軸10からの駆動力が駆動力伝達部材517を介して円筒部2cの外周面側に伝達されフロント側入力ディスク2に入力されると共に、このフロント側入力ディスク2と駆動力伝達部材517とが円筒部2cの外周面側にて、回転軸線X1に沿って相対移動可能であることから、油圧押圧機構15によって挟圧押圧力が付加された際に、半径が相対的に大きな部分で、フロント側入力ディスク2を駆動力伝達部材517に対して回転軸線X1に沿ってスライドさせることができる。
そして、このトロイダル式無段変速機601は、バリエータ軸11、挟圧押圧力ピストン15bやフロント側入力ディスク2が回転軸線X1を中心として回転することで、遠心キャンセル室615内の作動油に発生する遠心油圧により、挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧を相殺することができる。すなわち、このトロイダル式無段変速機601は、遠心キャンセル室615内の作動油に発生する遠心油圧が挟圧押圧力ピストン15bをリア側に押し出す力としてリア側入力ディスク付勢力作用面621に作用し、挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧に起因した挟圧押圧力ピストン15bをフロント側に押し出す力を打ち消すことができる。
以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機601によれば、駆動力が入力される入力ディスク2と、駆動力が出力される出力ディスク3と、入力ディスク2と出力ディスク3との間に設けられるパワーローラ4と、パワーローラ4を回転自在、かつ、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するトラニオン6を有し、パワーローラ4を傾転させることで入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更可能な変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用可能な油圧押圧機構15と、運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除可能な接触解除部600とを備える。
したがって、接触解除部600が運転状態に応じて出力ディスク3とパワーローラ4との接触を解除することで、出力ディスク3からパワーローラ4に接線力が作用することを防止することができ、これにより、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラ4の傾転を規制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機601によれば、共用離間バネ610は、油圧押圧機構15によって各入力ディスク2と各出力ディスク3との間に挟圧力を作用させるための挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、その付勢力がパワーローラ4側に作用不能な位置に設けられる。したがって、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機601によれば、共用離間バネ610が回転部612、622同士に相互に逆方向で等しい大きさの付勢力を作用させることで、回転部612を介しフロント側入力ディスク2に作用する付勢力と、回転部622を介してリア側入力ディスク2に作用する付勢力とをバランスさせることができると共に、パワーローラ4側から入力ディスク2、出力ディスク3側に付勢力を作用させることなく、共用離間バネ610によって各入力ディスク2に付勢力を作用させることで、各入力ディスク2と各出力ディスク3と相対的に離間させることができる。この結果、油圧押圧機構15による挟圧押圧力が作用する押圧力伝達経路内に複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、共用離間バネ610の付勢力に起因して、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機601によれば、共用離間バネ610によってフロント側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部612をなすバネ支持部材613と、リア側入力ディスク2と共に回転可能、かつ、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な回転部622をなす挟圧押圧力ピストン15bとを付勢力により回転軸線X1に沿った方向に相対的に離間可能であることから、複数存在する入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点において、相互に荷重のアンバランスが発生することを防止することができる。また、他の部位、例えば、バリエータ軸11に応力集中する箇所が形成されることを防止することができ、すなわち、強度低下を招くことなく、共用離間バネ610を適正な位置に設けることができる。この結果、トロイダル式無段変速機601の大型化による搭載性の悪化や変速比幅の縮小による燃費の悪化、トルク容量の低下等を抑制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機601によれば、フロント側入力ディスク付勢力作用面611とリア側入力ディスク付勢力作用面621とによって区画され、挟圧押圧力ピストン15bを挟んで挟圧力発生油圧室15aと対向する遠心キャンセル室615を備える。したがって、遠心キャンセル室615内の作動油に発生する遠心油圧により、挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧を相殺することができることから、油圧押圧機構15の挟圧押圧力の制御を精度よく適正に実行することができ、制御性を向上することができる。また、共用離間バネ610を支持するバネ支持部材613が遠心キャンセル室615を構成するためのキャンセル室構成部材として兼用されることから、部品点数の増加を抑制しつつ、適正に挟圧力発生油圧室15a内の作動油に発生する遠心油圧を相殺することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るトロイダル式無段変速機601によれば、バネ支持部材613とは別体に設けられ、フロント側入力ディスク2の外周側に駆動力を伝達すると共に、この外周側にてフロント側入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿って相対移動可能な駆動力伝達部材517を備える。したがって、駆動力が駆動力伝達部材517を介してフロント側入力ディスク2の外周面側に伝達され入力されると共に、このフロント側入力ディスク2と駆動力伝達部材517とがこの外周面側にて、回転軸線X1に沿って相対移動可能であることから、油圧押圧機構15によって挟圧押圧力が付加された際に、半径が相対的に大きな部分で、フロント側入力ディスク2を駆動力伝達部材517に対して回転軸線X1に沿ってスライドさせることができる。このため、フロント側入力ディスク2と駆動力伝達部材517とのスライド部、すなわち、スプライン部517e及びスプライン部502dの接触荷重を小さくすることができ、この結果、スプライン部517e及びスプライン部502dの摩耗量を抑制することができる。
なお、上述した本発明の実施例に係る無段変速機は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施例に係る無段変速機は、以上で説明した実施例を複数組み合わせることで構成してもよい。また、以上の説明では、無段変速機はダブルキャビティ型のトロイダル式無段変速機であるものとして説明したが、これに限らない。
以上の説明では、補正手段は、設定傾転角に応じた設定変速比と算出変速比との偏差に基づいて設定変速比を補正するものとして説明したが、算出変速比に応じて推定される傾転角である推定傾転角を算出し、この推定傾転角と傾転角検出手段により検出される設定傾転角との偏差に基づいて、設定変速比を補正するようにしてもよい。
さらに、以上の説明では、解除手段は、入力ディスクを出力ディスクから離間させることで、出力ディスクとパワーローラとの接触状態を解除するものとして説明したが、出力ディスクを入力ディスクから離間させることで、出力ディスクとパワーローラとの接触状態を解除するようにしてもよい。
また、以上の説明では、変速比変更手段の油圧ピストン部8を作動する作動油の元圧と挟圧手段を作動する作動油の元圧とを共通の元圧とするものとして説明したが、加圧手段の駆動が停止し油圧ピストン部を作動する作動油の元圧が所定値よりも低下した際、すなわち、支持手段に変速制御押圧力が作用不能な際に、挟圧手段の挟圧力発生油圧室内の作動油を排出する排出手段を備えていれば、必ずしも共通でなくてもよい。また、解除手段に電気駆動アクチュエータや油圧駆動アクチュエータなどを設け、ECU60や油圧制御装置9などの制御手段により無段変速機の運転状態を示す種々のパラメータの検出結果(例えば、車両の牽引を検出する牽引検出手段の検出結果)に基づいて解除手段を制御し、少なくとも支持手段に変速制御押圧力が作用不能な運転状態である場合に、解除手段を制御し、出力ディスクとパワーローラとの接触を解除するようにしてもよい。この場合、オイルポンプ92は、エンジンのクランクシャフトの回転と連動して駆動するポンプではなく、電動のポンプを用いてもよい。牽引検出手段は、例えば、運転者の操作に応じて牽引状態を設定する牽引状態設定スイッチを用いてもよいし、駆動源の回転を検出する回転センサと、車輪の回転を検出する車輪センサとを用いて、駆動源の回転数が0のときに車輪の回転が検出された場合に車両の牽引を検出するようにしてもよい。
また、以上の説明では、接触手段は、パワーローラを支持手段に支持すると共に、パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を有し、該偏心部は、偏心回転軸線が回転軸線より上側に位置すると共に入力ディスクと出力ディスクとの中間位置より入力ディスク側に設定されるものとして説明したがこれに限らない。例えば図21に示す本発明の変形例に係るトロイダル式無段変速機のように、接触手段は、パワーローラ4を支持手段としてのトラニオン6に支持すると共に、パワーローラ4の回転軸線X2からずれた位置に回転軸線X2’が設けられる偏心部をなす偏心軸42b及び嵌合部6dを有し、この偏心軸42b及び嵌合部6dは、回転軸線X2’がパワーローラ4の回転軸線X2より鉛直方向下側に位置すると共に入力ディスク2と出力ディスク3との中間位置Aより出力ディスク3側に設定されてもよい。この場合でも、パワーローラ4は、入力ディスク2が出力ディスク3から離間し出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されると、パワーローラ4自体の自重により、回転軸線X2’を公転中心として入力ディスク2側に公転する。この結果、接触手段は、接触解除部100により入力ディスク2と出力ディスク3とが離間し出力ディスク3とパワーローラ4との接触が解除されている状態で、各パワーローラ4を入力ディスク2に接触させることができる。
以上のように、本発明に係る無段変速機は、いずれの変速比においても運転状態に応じてパワーローラの傾転を規制することができるものであり、パワーローラを有する種々のハーフトロイダル式の無段変速機に適用して好適である。
本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の概略断面図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の要部の構成図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラ及びトラニオンの分解斜視図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラと出力ディスクとが接触した状態でのパワーローラの位置を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラと出力ディスクとの接触が解除された状態でのパワーローラの位置を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の動作を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の再接触制御を示すフローチャートである。 本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機のパワーローラ及びトラニオンの分解斜視図である。 本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の動作を説明する模式図である。 本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の必要付勢力を説明する線図である。 本発明の実施例1に係るトロイダル式無段変速機の付勢力とアンバランス荷重との関係を示す模式的平面図である。 本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機の付勢力とアンバランス荷重との関係を示す模式的平面図である。 本発明の実施例2に係るトロイダル式無段変速機のアンバランス荷重を説明する線図である。 本発明の実施例3に係るトロイダル式無段変速機の構成及び動作を説明する模式図である。 本発明の実施例4に係るトロイダル式無段変速機の構成を説明する部分断面図である。 本発明の実施例4に係るトロイダル式無段変速機の構成及び動作を説明する模式図である。 本発明の実施例5に係るトロイダル式無段変速機の構成を説明する部分断面図である。 本発明の実施例6に係るトロイダル式無段変速機の構成を説明する部分断面図である。 本発明の変形例に係るトロイダル式無段変速機の接触手段を説明する部分断面図である。
符号の説明
1、201、301、401、501、601 トロイダル式無段変速機(無段変速機)
2 入力ディスク
フロント側入力ディスク(第1入力ディスク)
リア側入力ディスク(第2入力ディスク)
3 出力ディスク
フロント側出力ディスク(第1出力ディスク)
リア側出力ディスク(第2出力ディスク)
4 パワーローラ
5 変速比変更部(変速比変更手段)
6 トラニオン(支持手段)
6d、206d 嵌合部(偏心部)
7 移動部
8 油圧ピストン部
9 油圧制御装置
10 入力軸
11 バリエータ軸
15 油圧押圧機構(挟圧手段)
15a 挟圧力発生油圧室
15b 挟圧押圧力ピストン
21 エンジン(駆動源)
28 フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面(第1挟圧押圧力作用面)
29 リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面(第2挟圧押圧力作用面)
42a 回転軸
42b 偏心軸(偏心部)
50 傾転角センサ(傾転角検出手段)
53 入力回転数センサ(入力回転速度検出手段)
54 出力回転数センサ(出力回転速度検出手段)
60 ECU
61 補正部(補正手段)
62 設定変速比算出部
63 算出変速比算出部
64 変速比判定部
81 変速制御ピストン
82 変速制御油圧室
92 オイルポンプ(加圧手段)
99 作動油供給通路
100、200、300、400、500、600 接触解除部(解除手段)
110 フロント側入力ディスク離間バネ(付勢手段)
111、311、411、511、611 フロント側入力ディスク付勢力作用面(第1付勢力作用面)
120 リア側入力ディスク離間バネ(付勢手段)
121、321、421、521、621 リア側入力ディスク付勢力作用面(第2付勢力作用面)
11b、130、413f、517f、613b スナップリング
140、240 接触部(接触手段)
210 トーションスプリング(付勢手段)
310、410、510、610 共用離間バネ(付勢手段)
312、322、412、422、512、522、612、622 回転部
413、613 バネ支持部材(付勢手段支持部材)
415、615 遠心キャンセル室(遠心油圧抗力発生手段)
513 スナップリング(付勢手段支持部材)
517 駆動力伝達部材
フロント側半円キャビティ
リア側半円キャビティ

Claims (16)

  1. 駆動力が入力される入力ディスクと、
    前記駆動力が出力される出力ディスクと、
    前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に設けられるパワーローラと、
    前記パワーローラを回転自在、かつ、前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対して傾転自在に支持する支持手段を有し、前記パワーローラを傾転させることで前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比である変速比を変更可能な変速比変更手段と、
    前記入力ディスク及び前記出力ディスクと前記パワーローラとを接触させ前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に前記パワーローラを挟み込む挟圧力を作用可能な挟圧手段と、
    運転状態に応じて前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触を解除可能な解除手段とを備えることを特徴とする、
    無段変速機。
  2. 前記解除手段により前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触が解除されている状態で前記パワーローラを前記入力ディスクに接触させる接触手段を備えることを特徴とする、
    請求項1に記載の無段変速機。
  3. 前記解除手段により前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触が解除されており、かつ、前記接触手段により前記パワーローラと前記入力ディスクとが接触されている状態から前記出力ディスクと前記パワーローラとを接触させる際に、前記変速比変更手段を制御して変速比を補正する補正手段を備えることを特徴とする、
    請求項2に記載の無段変速機。
  4. 前記補正手段は、前記出力ディスクが回転していない運転状態において、前記変速比変更手段を制御して、前記変速比変更手段により設定される変速比である設定変速比を減速側に設定することを特徴とする、
    請求項3に記載の無段変速機。
  5. 前記入力ディスクの回転速度を検出する入力回転速度検出手段と、
    前記出力ディスクの回転速度を検出する出力回転速度検出手段と、
    前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する前記パワーローラの傾転角を検出する傾転角検出手段とを備え、
    前記補正手段は、前記出力ディスクが回転している運転状態において、前記傾転角検出手段により検出される傾転角である設定傾転角に応じた設定変速比と、前記入力回転速度検出手段及び前記出力回転速度検出手段により検出される前記入力ディスク及び前記出力ディスクの回転速度に基づいて算出される変速比である算出変速比との偏差に基づいて、前記変速比変更手段を制御して前記設定変速比を補正することを特徴とする、
    請求項3又は請求項4に記載の無段変速機。
  6. 前記接触手段は、前記パワーローラを前記支持手段に支持すると共に、前記パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を有し、該偏心部は、前記偏心回転軸線が前記回転軸線より上側に位置すると共に前記入力ディスクと前記出力ディスクとの中間位置より前記入力ディスク側に設定されることを特徴とする、
    請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の無段変速機。
  7. 前記接触手段は、前記パワーローラを前記支持手段に支持すると共に、前記パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を有し、該偏心部は、前記偏心回転軸線が前記回転軸線より下側に位置すると共に前記入力ディスクと前記出力ディスクとの中間位置より前記出力ディスク側に設定されることを特徴とする、
    請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の無段変速機。
  8. 前記支持手段は、前記パワーローラの回転軸線からずれた位置に偏心回転軸線が設けられる偏心部を介して前記パワーローラを支持し、
    前記解除手段と前記接触手段とは、前記偏心部に設けられ、前記パワーローラを前記入力ディスク側に付勢し該パワーローラを前記入力ディスクと共に前記出力ディスクから離間する側に移動可能なトーションスプリングにより兼用されることを特徴とする、
    請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の無段変速機。
  9. 前記解除手段は、前記入力ディスクを前記出力ディスクから離間する側に付勢し該入力ディスクを移動可能な付勢手段を有することを特徴とする、
    請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の無段変速機。
  10. 前記付勢手段は、前記挟圧手段によって前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に前記挟圧力を作用させるための挟圧押圧力が作用する押圧力作用部分同士に付勢力を作用可能な位置であって、当該付勢力が前記パワーローラ側に作用不能な位置に設けられることを特徴とする、
    請求項9に記載の無段変速機。
  11. 前記入力ディスクは、第1入力ディスクと、前記第1入力ディスクの回転中心である回転軸線に沿った方向に該第1入力ディスクに対して所定の間隔をあけて設けられる第2入力ディスクとを有し、
    前記出力ディスクは、前記第1入力ディスクと前記第2入力ディスクとの間に前記第1入力ディスクと対向して設けられる第1出力ディスクと、前記第1出力ディスクと前記第2入力ディスクとの間に前記第2入力ディスクと対向して設けられる第2出力ディスクとを有し、
    前記付勢手段は、前記第1入力ディスク又は前記第2入力ディスクと共に、それぞれ回転可能、かつ、回転軸線に沿った方向に移動可能な回転部同士を付勢力により前記回転軸線に沿った方向に相対的に離間可能であることを特徴とする、
    請求項9又は請求項10に記載の無段変速機。
  12. 前記挟圧手段は、前記入力ディスクの回転軸線に沿った方向に対して前記第1入力ディスク側に設けられる挟圧力発生油圧室に供給される作動油の油圧により前記第1入力ディスクの第1挟圧押圧力作用面及び前記第2入力ディスクの第2挟圧押圧力作用面に挟圧押圧力を作用させ、前記第1入力ディスクを前記第1出力ディスク側に接近させると共に前記第2入力ディスクを前記第2出力ディスク側に接近させることで前記挟圧力を発生させ、
    前記第1挟圧押圧力作用面は、前記第1入力ディスクの前記パワーローラとの接触面の背面側に設けられ、
    前記第2挟圧押圧力作用面は、前記第2入力ディスクの前記回転部をなす挟圧押圧力ピストンに前記挟圧力発生油圧室を挟んで前記第1挟圧押圧力作用面と対向するように設けられ、
    前記付勢手段は、前記挟圧押圧力ピストンの前記第2挟圧押圧力作用面の背面側に設けられる第2付勢力作用面と、前記第1入力ディスクの前記回転部をなすと共に前記付勢手段を支持する付勢手段支持部材に前記第2付勢力作用面と対向するように設けられる第1付勢力作用面との間に設けられることを特徴とする、
    請求項11に記載の無段変速機。
  13. 前記第1付勢力作用面と前記第2付勢力作用面とによって区画され、前記挟圧押圧力ピストンを挟んで前記挟圧力発生油圧室と対向する遠心油圧抗力発生手段を備えることを特徴とする、
    請求項12に記載の無段変速機。
  14. 前記付勢手段支持部材とは別体に設けられ、前記第1入力ディスクの外周側に駆動力を伝達すると共に、該第1入力ディスクに対して相対移動可能な駆動力伝達部材を備えることを特徴とする、
    請求項12又は請求項13に記載の無段変速機。
  15. 前記変速比変更手段は、前記支持手段に変速制御押圧力を作用させ該支持手段と共に前記パワーローラを前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動させ該パワーローラを傾転させることで前記変速比を変更可能であり、
    前記解除手段は、少なくとも前記支持手段に前記変速制御押圧力が作用不能な運転状態である場合に、前記出力ディスクと前記パワーローラとの接触を解除することを特徴とする、
    請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の無段変速機。
  16. 前記駆動力を発生する駆動源の出力軸の回転と連動して駆動することで、前記変速比変更手段を作動する作動油及び前記挟圧手段を作動する作動油を加圧可能な加圧手段を備えることを特徴とする、
    請求項15に記載の無段変速機。
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