JP2009270649A - 無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】無段変速機において、エンジン始動時におけるポンプ駆動トルクを低減して始動性を向上すると共に、潤滑油不足の発生を防止する。
【解決手段】エンジン21により駆動して吸入したオイルを制御系Aに吐出する第1オイルポンプ101と、エンジン21により駆動して吸入したオイルを制御系Aまたは潤滑系Bに吐出する第2オイルポンプ102を設けると共に、第2オイルポンプ102におけるオイルの吸入先をオイルパン105と大気との間で切り替える第1切替弁108と、第2オイルポンプ102におけるオイルの吐出先を制御系Aと潤滑系Bとの間で切り替える第2切替弁113とを設け、ECU60は、エンジン21の運転状態に応じて第1切替弁108と第2切替弁113の切替先を制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、無段変速機に関し、特に、入力ディスクと出力ディスクとの間に配置されたパワーローラの移動により変速比の変更が行われる、所謂、トロイダル式の無段変速機に関するものである。
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力、即ち、出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、このような無段変速機、いわゆるCVT(CVT:Continuously Variable Transmission)には、入力ディスクと出力ディスクとの間に挟み込んだパワーローラを介して各ディスクの間でトルクを伝達すると共に、パワーローラを傾転させて変速比を変化させる、いわゆる、トロイダル式の無段変速機がある。
このトロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクと出力ディスクとの間に、外周面をトロイダル面に対応する曲面としたパワーローラなどの回転手段を挟み込んで構成される。そして、これら入力ディスク、出力ディスク及びパワーローラとの間に形成されるトラクションフルードの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。そして、このパワーローラは、トラニオンにより回転自在に支持されており、このトラニオンは、揺動軸を中心として揺動可能であると共に、例えば、トラニオンに設けられたピストンに対して変速制御油圧室に供給される作動油の油圧により変速制御押圧力を作用させることで、この揺動軸に沿った方向に移動可能に構成されている。
従って、トラニオンに支持されるパワーローラが、このトラニオンと共に入力ディスク及び出力ディスクに対する中立位置から変速位置に移動する。このとき、パワーローラとディスクとの間に接線力が作用しサイドスリップが発生し、このパワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して揺動軸を中心として揺動、即ち、傾転し、この結果、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比が変更される。そして、入力ディスクと出力ディスクとの回転数比である変速比は、パワーローラが入力ディスク及び出力ディスクに対して傾転する角度、即ち、傾転角に基づいて決まり、この傾転角は、パワーローラの中立位置から変速位置側への移動量としてのストローク量(オフセット量)の積分値に基づいて決まる。
このような従来のトロイダル式の無段変速機では、各部材の摩耗や焼き付きなどを防止するために潤滑や冷却が必要となり、潤滑油としてトラクションフルードが供給されている。そして、この場合、入力ディスク、パワーローラ、出力ディスクの間に形成されるトラクションフルードの油膜のせん断力を利用してトルクを伝達することから、このトラクションフルードは、ディスクとローラを分離する油膜生成能力と、生成した油膜が大きな力を伝えることができる性質(大きなトラクション力)が求められている。
ところで、各部材にトラクションフルードを供給するためのオイルポンプは、エンジンに同期して駆動するものとなっている。一方、このトラクションフルードは、低温時には、一般的なトラクションフルードに比べて粘度が高くなる。そのため、エンジンの冷間始動時には、オイルポンプは、高粘度のトラクションフルードを吸入して吐出することになり、過大な駆動トルクが必要となってしまい、エンジンの始動不良や潤滑不足などを招いてしまう。
そこで、例えば、下記特許文献1のオイルポンプ制御装置では、オイルポンプの吸込側にオイルパンとその上部の大気とを選択的に連通する第1の三方電磁弁を設けると共に、オイルポンプの吐出側に油圧回路とオイルパンへの戻し通路とを選択的に連通する第2の三方電磁弁を設け、制御ユニットにより、エンジン始動時にオイルポンプ内のオイルを空気と置換するようにしている。
特開平01−135948号公報
上述した特許文献1に記載されたオイルポンプ制御装置では、エンジンの始動時に、オイルポンプが空気を吸入することから、駆動トルクは低減する。ところが、このときに、オイルパンに貯留されるオイルの循環がないことから、オイルの温度はほとんど上昇せず、オイルの粘度も低いままとなる。そのため、エンジンの始動後に、オイルポンプがオイルを吸入するとき、駆動トルクは大きく、オイルを吸入して必要箇所に供給するまでに長時間を要し、潤滑油不足になるおそれがある。また、エンジンの始動時に、オイルポンプはオイルを吐出しないことから、エンジンが無潤滑で運転することとなり、潤滑油不足になり、焼き付きが発生するおそれがある。
本発明は、このような問題を解決するものであって、エンジン始動時におけるポンプ駆動トルクを低減して始動性を向上すると共に、潤滑油不足の発生を防止する無段変速機を提供することを目的とする。
上述した課題を解決してその目的を達成するために、本発明の無段変速機は、エンジンからの駆動力が伝達される入力ディスクとこの駆動力を車輪に伝達する出力ディスクとに接触するパワーローラが移動することで、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比である変速比を変更するトロイダル式無段変速機において、前記エンジンにより駆動して吸入したオイルを制御系に吐出する第1オイルポンプと、前記エンジンにより駆動して吸入したオイルを前記制御系または潤滑系に吐出する第2オイルポンプと、該第2オイルポンプにおけるオイルの吸入先をオイル貯留部と大気との間で切り替える第1切替弁と、前記第2オイルポンプにおけるオイルの吐出先を前記制御系と前記潤滑系との間で切り替える第2切替弁と、前記エンジンの運転状態に応じて前記第1切替弁と前記第2切替弁の切替先を制御する油圧切替制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
本発明による無段変速機では、前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する前記パワーローラの相対位置を油圧により変化させることで前記パワーローラを傾転させ、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比を変更するシリンダ機構と、前記入力ディスク及び前記出力ディスクと前記パワーローラとを接触させ、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に前記パワーローラを挟み込む挟圧力を作用させる挟圧機構と、油圧により前記シリンダ機構及び前記挟圧機構を制御する油圧制御装置とを設け、前記制御系は、前記シリンダ機構及び前記挟圧機構を有することを特徴としている。
本発明による無段変速機では、前記油圧切替制御手段は、前記エンジンの始動時に、予め設定された第1所定期間にわたって、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を大気に切り替えると共に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記潤滑系に切り替えることを特徴としている。
本発明による無段変速機では、オイルの温度を検出する温度センサを設け、前記油圧切替制御手段は、前記温度センサが検出したオイルの温度が予め設定された所定温度より低いときに、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を大気に切り替えると共に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記潤滑系に切り替えることを特徴としている。
本発明による無段変速機では、前記油圧切替制御手段は、前記温度センサが検出したオイルの温度が所定温度以上のときに、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を前記オイル貯留部に切り替えると共に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記制御系に切り替えることを特徴としている。
本発明による無段変速機では、前記油圧切替制御手段は、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を前記オイル貯留部に切り替えた後、予め設定された第2所定期間の経過後に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記制御系に切り替えることを特徴としている。
本発明による無段変速機では、前記第1オイルポンプの吐出容量は、前記第2オイルポンプの吐出容量より少なく設定されることを特徴としている。
本発明による無段変速機では、前記制御系から前記潤滑系にオイルを供給するオイル供給手段を設け、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先が前記制御系に切り替えられているとき、前記オイル供給手段により前記制御系のオイルを前記潤滑系に供給することを特徴としている。
本発明の無段変速機によれば、オイルを制御系に吐出する第1オイルポンプと、オイルを制御系または潤滑系に吐出する第2オイルポンプと、第2オイルポンプにおけるオイルの吸入先をオイル貯留部と大気との間で切り替える第1切替弁と、第2オイルポンプにおけるオイルの吐出先を制御系と潤滑系との間で切り替える第2切替弁とを設け、油圧切替制御手段は、エンジンの運転状態に応じて第1切替弁と第2切替弁の切替先を制御している。従って、例えば、エンジン始動時に、この制御を実行することで、第2オイルポンプの駆動トルクを低減してエンジンの始動性を向上することができると共に、潤滑油不足の発生を防止することができる。
以下に、本発明に係る無段変速機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは、実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の一実施例に係るトロイダル式無段変速機における油圧制御装置の概略構成図、図2は、本実施例の油圧制御装置によるポンプ切替制御を表すフローチャート、図3は、本実施例のトロイダル式無段変速機の概略断面図、図4は、本実施例のトロイダル式無段変速機の要部の構成図、図5は、本実施例のトロイダル式無段変速機におけるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図、図6は、本実施例のトロイダル式無段変速機におけるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図、図7は、本実施例のトロイダル式無段変速機の同期ワイヤの掛け方を説明する模式的平面図である。
なお、図4は、トロイダル式無段変速機を構成する各パワーローラのうち任意のパワーローラと、このパワーローラに接触する入力ディスクを示す図である。また、図5、図6は、入力ディスクを出力ディスク側から見た図であり、入力ディスクとパワーローラをそれぞれ1つだけ模式的に図示している。また、以下で説明する実施例では、本発明の無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源としてエンジントルクを発生する内燃機関を用いているが、この内燃機関は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどでよい。
図3に示すように、本実施例の無段変速機としてのトロイダル式無段変速機1は、車両に搭載される駆動源としてのエンジン21からの駆動力、即ち、出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で車輪27に伝達するためのものであり、変速比を無段階(連続的)に制御することができる、所謂、CVT(CVT:Continuously Variable Transmission)である。このトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟み込んだパワーローラ4を介して各入力ディスク2と出力ディスク3の間でトルクを伝達すると共に、パワーローラ4を傾転させて変速比を変化させる、所謂、トロイダル式の無段変速機である。即ち、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル面2a、3aを有する入力ディスク2と出力ディスク3との間に、外周面をトロイダル面2a、3aに対応する曲面としたパワーローラ4を挟み込み、これら入力ディスク2、出力ディスク3及びパワーローラ4との間に形成されるトラクションオイル(トラクションフルード)の油膜のせん断力を利用してトルクを伝達するものである。
具体的には、このトロイダル式無段変速機1は、図3、図4に示すように、入力ディスク2と、出力ディスク3と、パワーローラ4と、シリンダ機構としての変速比変更部5とを備える。変速比変更部5は、トラニオン6と、移動部7を有する。更に、移動部7は、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。また、このトロイダル式無段変速機1は、トロイダル式無段変速機1の各部を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)60を備える。このトロイダル式無段変速機1では、入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられるパワーローラ4が移動部7により入力ディスク2及び出力ディスク3に対して中立位置から変速位置に移動することで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比が変更される。
入力ディスク2は、エンジン21側からの駆動力(トルク)が、例えば、発進機構であり流体伝達装置であるトルクコンバータ22や前後進切換機構23などを介して伝達(入力)されるものである。
エンジン21は、このエンジン21が搭載された車両を前進あるいは後進させるためのエンジントルク、即ち、駆動力を出力するものである。また、エンジン21は、ECU60に電気的に接続されており、このECU60によってその駆動が制御され、出力する駆動力が制御されている。エンジン21からの駆動力は、クランクシャフト21aを介してトルクコンバータ22に伝達される。
トルクコンバータ22は、前後進切換機構23を介してエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1に伝達するものである。トルクコンバータ22は、ポンプ(ポンプインペラ)、タービン(タービンランナ)、ステータ、ロックアップクラッチを備える。ポンプは、フロントカバー等を介してエンジン21のクランクシャフト21aに連結されており、クランクシャフト21a、フロントカバーと共に回転可能に設けられている。タービンは、このポンプと対向するように配置されている。このタービンは、前後進切換機構23を介して入力軸10に連結されており、入力軸10と共にクランクシャフト21aと同一の軸線を中心に回転可能に設けられている。ステータは、そのポンプとタービンとの間に配置されている。ロックアップクラッチは、このタービンとフロントカバーとの間に設けられており、タービンに連結されている。
従って、このトルクコンバータ22は、エンジン21の駆動力(エンジントルク)がクランクシャフト21aからフロントカバーを介してポンプに伝達される。そして、ロックアップクラッチが解放されている場合には、このポンプに伝達された駆動力は、ポンプとタービンとの間に介在する作動流体である作動油を介してタービン、入力軸10に伝達される。このとき、トルクコンバータ22は、ステータにより、ポンプとタービンとの間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。そして、トルクコンバータ22は、タービンに連結されているロックアップクラッチがフロントカバーに係合されている場合、フロントカバーを介してポンプに伝達されたエンジン21からの駆動力は、作動油を介さずに直接的に入力軸10に伝達される。ここで、ロックアップクラッチの係合及び係合の解除、即ち、ON、OFFを行うON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油によって行われる。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。そのため、ロックアップクラッチのON/OFF制御は、ECU60により行われる。
前後進切換機構23は、トルクコンバータ22を介して伝達されたエンジン21からの駆動力をトロイダル式無段変速機1の入力ディスク2に伝達するものである。前後進切換機構23は、例えば、遊星歯車機構、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキなどにより構成され、エンジン21の駆動力を直接、あるいは反転して入力ディスク2に伝達するものである。つまり、前後進切換機構23を介したエンジン21の駆動力は、入力ディスク2を正回転させる方向(車両が前進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する正回転駆動力として、あるいは、入力ディスク2を逆回転させる方向(車両が後進する際に入力ディスク2が回転する方向)に作用する逆回転駆動力として、入力ディスク2に伝達される。この前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御は、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキの係合及び係合の解除、即ち、ON、OFFを行うON/OFF制御を実行することで行われる。前後進切換機構23による駆動力の伝達方向の切換制御、言い換えれば、摩擦クラッチ、摩擦ブレーキのON/OFF制御は、後述する油圧制御装置9から供給される作動油により行われる。従って、前後進切換機構23の切換制御は、ECU60により行われている。
入力ディスク2は、エンジン21の回転に基づいて回転される入力軸10に2つが結合されており、この入力軸10により回転自在に設けられている。更に言えば、各入力ディスク2は、入力軸10と同一の回転をするバリエータ軸11によって回転される。従って、各入力ディスク2は、入力軸10の回転軸線X1を回転中心として回転可能である。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)にフロント側入力ディスク2が設けられ、回転軸線X1に沿った方向にフロント側入力ディスク2に対して所定の間隔をあけてリア側(車輪27側)にリア側入力ディスク2が設けられる。
フロント側入力ディスク2は、ボールスプライン11aを介してバリエータ軸11に支持されている。つまり、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、このバリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に移動可能にバリエータ軸11に支持されている。更に言い換えれば、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しない一方、回転軸線X1に沿った方向には相対的に変位可能である。一方、リア側入力ディスク2は、スプライン嵌合部を介してバリエータ軸11に支持されていると共に、バリエータ軸11のリア側端部に設けられたスナップリング11bにより回転軸線X1に沿った方向への移動が制限されている。つまり、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。更に言い換えれば、リア側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。なお、以下の説明では、フロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2とを特に区別する必要がない場合、単に「入力ディスク2」と略記する。
各々の入力ディスク2は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各入力ディスク2の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各入力ディスク2のトロイダル面2aをなす。2つの入力ディスク2は、トロイダル面2aが互いに対向するように設けられる。
出力ディスク3は、各入力ディスク2に伝達(入力)された駆動力を車輪27側に伝達(出力)するものであり、各入力ディスク2に対応して1つずつ、合計2つ設けられる。このトロイダル式無段変速機1は、バリエータ軸11に対して、フロント側(エンジン21側)に第1出力ディスクとしてのフロント側出力ディスク3が設けられ、リア側(車輪27側)に第2出力ディスクとしてのリア側出力ディスク3が設けられる。フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とは、共に回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2とリア側入力ディスク2との間に設けられ、更に言えば、リア側出力ディスク3は、フロント側出力ディスク3とリア側入力ディスク2との間に設けられている。つまり、このトロイダル式無段変速機1は、回転軸線X1に沿った方向に対して、フロント側からフロント側入力ディスク2、フロント側出力ディスク3、リア側出力ディスク3、リア側入力ディスク2の順で設けられている。なお、以下の説明では、フロント側出力ディスク3とリア側出力ディスク3とを特に区別する必要がない場合、単に「出力ディスク3」と略記する。
各入力ディスク2と各出力ディスク3とは、回転軸線X1に同軸上に入力軸10に対して相対的に回転自在に設けられる。従って、各出力ディスク3は、回転軸線X1を回転中心として回転可能である。そして、各出力ディスク3は、各入力ディスク2とほぼ同一な形状をなし、即ち、各々の出力ディスク3は、中央に開口が形成され、外側から中央側に向け徐々に突出する形状をなす。各出力ディスク3の突出部分の斜面は、回転軸線X1方向に沿った断面がほぼ円弧形状となるように形成され各出力ディスク3のトロイダル面3aをなす。そして、各出力ディスク3は、上述のように回転軸線X1に沿った方向に対して2つの入力ディスク2の間に設けられると共に、各トロイダル面3aが各入力ディスク2のトロイダル面2aにそれぞれ対向するように設けられる。即ち、回転軸線X1に沿った断面内において、一方のフロント側入力ディスク2のトロイダル面2aとフロント側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向してフロント側(エンジン21側)半円キャビティCを形成し、他方のリア側入力ディスク2のトロイダル面2aとリア側出力ディスク3のトロイダル面3aとが対向して別のリア側(車輪27側)半円キャビティCを形成している。
また、各出力ディスク3は、ベアリングを介しバリエータ軸11に回転可能に支持されている。この2つの出力ディスク3の間には、出力ギア12が連結されており、この出力ギア12は、2つの出力ディスク3と共に一体で回転可能である。出力ギア12には、カウンターギア13がかみ合わされており、このカウンターギア13に出力軸14が連結されている。従って、各出力ディスク3の回転に伴い、出力軸14が回転する。そして、この出力軸14は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギア25等を介して車輪27に接続されており、駆動力は、動力伝達機構24、ディファレンシャルギア25等を介して車輪27に伝達(出力)される。
動力伝達機構24は、トロイダル式無段変速機1とディファレンシャルギア25との間で、駆動力の伝達を行うものである。動力伝達機構24は、出力ディスク3とディファレンシャルギア25との間に配置される。ディファレンシャルギア25は、動力伝達機構24と車輪27との間で、駆動力の伝達を行うものである。ディファレンシャルギア25は、動力伝達機構24と車輪27との間に配置されている。ディファレンシャルギア25には、ドライブシャフト26が連結されている。ドライブシャフト26には、車輪27が取り付けられている。
パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間にこの入力ディスク2と出力ディスク3とに接触して設けられ、入力ディスク2からの駆動力を出力ディスク3に伝達するものである。即ち、パワーローラ4は、外周面がトロイダル面2a、3aに対応した曲面状の接触面4aとして形成される。そして、パワーローラ4は、入力ディスク2と出力ディスク3との間に挟持され、接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触可能であり、各パワーローラ4は、それぞれ後述するトラニオン6によってこの接触面4aがトロイダル面2a、3aに接触しながら、回転軸線X2を回転中心として回転自在に支持されている。パワーローラ4は、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルにより入力ディスク2と出力ディスク3のトロイダル面2a、3aとパワーローラ4の接触面4aとの間に形成される油膜のせん断力を用いて駆動力(トルク)を伝達する。
パワーローラ4は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる。即ち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられ、リア側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4が一対で設けられる。
更に具体的には、パワーローラ4は、パワーローラ本体41と、外輪42とにより構成される。パワーローラ本体41は、外周面に入力ディスク2、出力ディスク3のトロイダル面2a、3aと接触する上述の接触面4aが形成されている。パワーローラ本体41は、外輪42に形成された回転軸42aに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。また、パワーローラ本体41は、外輪42のパワーローラ本体41と対向する面に対して、スラストベアリングSBを介して回転自在に支持されている。従って、パワーローラ本体41は、回転軸42aの回転軸線X2を回転中心として回転可能である。
外輪42は、上述の回転軸42aと共に偏心軸42bが形成されている。偏心軸42bは、回転軸線X2’が回転軸42aの回転軸線X2に対してずれた位置となるように形成されている。偏心軸42bは、後述するトラニオン6のローラ支持部6aに凹部として形成される嵌合部6dに対して、ラジアルベアリングRBを介して回転自在に支持されている。従って、外輪42は、偏心軸42bの回転軸線X2’を中心として回転可能である。つまり、パワーローラ4は、トラニオン6に対して、回転軸線X2及び回転軸線X2’を中心として回転可能となり、即ち、回転軸線X2’を中心として公転可能でかつ回転軸線X2を中心として自転可能となる。これにより、パワーローラ4は、回転軸線X1に沿った方向に移動可能な構成となり、例えば、部品変形や部品精度のバラツキを許容することが可能となる。
ここで、入力軸10は、挟圧機構としての油圧押圧(エンドロード)機構15に接続される。油圧押圧機構15は、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、この入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込むための挟圧力を作用させるものである。この油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15aと、挟圧押圧力ピストン15bとを有する。
挟圧力発生油圧室15aは、2つの入力ディスク2に対して回転軸線X1に沿った方向の一方側に設けられる。ここでは、挟圧力発生油圧室15aは、回転軸線X1に沿った方向に対してフロント側入力ディスク2側に設けられ、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間に配置される。挟圧力発生油圧室15aは、運転状態に応じて油圧制御装置9から内部に作動油が供給される。
挟圧押圧力ピストン15bは、円板状に形成され、その中心が回転軸線X1とほぼ一致するようにバリエータ軸11の一端部に設けられる。挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11のリア側入力ディスク2が設けられている端部とは反対側の端部、即ち、フロント側(エンジン21側)に設けられている。挟圧押圧力ピストン15bは、回転軸線X1に沿った方向に対して、入力軸10とフロント側入力ディスク2との間にフロント側入力ディスク2と間隔をあけて配置される。上述の挟圧力発生油圧室15aは、この挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間に設けられている。
また、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対してこのバリエータ軸11と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、回転軸線X1に沿った方向に移動可能に設けられる。つまり、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11の回転に伴って回転可能であると共に、バリエータ軸11の回転軸線X1に沿った方向の移動に伴って移動可能にバリエータ軸11に支持されている。更に言い換えれば、挟圧押圧力ピストン15bは、バリエータ軸11に対して、回転軸線X1周りに相対的に回転変位しないと共に、回転軸線X1に沿った方向にも相対的に変位しない。従って、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、一体となって回転軸線X1を中心として回転可能であり回転軸線X1に沿った方向に移動可能である。また、フロント側入力ディスク2は、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bと共に一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、ボールスプライン11aによって、このリア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bに対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。
更に、挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10にも連結されており、この入力軸10と共に回転軸線X1を中心として回転可能であり、また、回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能に設けられる。つまり、リア側入力ディスク2、バリエータ軸11及び挟圧押圧力ピストン15bは、入力軸10と一体となって回転軸線X1を中心として回転可能である一方で、この入力軸10に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動可能である。入力軸10からの駆動力は、バリエータ軸11に伝達され、バリエータ軸11からフロント側入力ディスク2、リア側入力ディスク2に伝達される。
また、フロント側入力ディスク2は、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28を有する一方、挟圧押圧力ピストン15bは、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29を有する。フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28は、フロント側入力ディスク2にて、パワーローラ4との接触面であるトロイダル面2aの背面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、挟圧押圧力ピストン15bにて、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と回転軸線X1に沿った方向に対向する面に設けられる。リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29は、上述の挟圧力発生油圧室15aを挟んでフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28と対向するように設けられる。挟圧力発生油圧室15aは、挟圧押圧力ピストン15bとフロント側入力ディスク2との間でフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とによって回転軸線X1に沿った方向に対して区画されている。つまり、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28とリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29とは、フロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28がリア側で挟圧力発生油圧室15aに対向し、リア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29がフロント側で挟圧力発生油圧室15aに対向する。
従って、油圧押圧機構15は、挟圧力発生油圧室15a内に供給される作動油(トラクションオイル)の油圧によりフロント側入力ディスク2のフロント側入力ディスク挟圧押圧力作用面28及び挟圧押圧力ピストン15bのリア側入力ディスク挟圧押圧力作用面29に挟圧押圧力を作用させることで、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に離間する方向へ移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にリア側から油圧押圧機構15側に接近する方向へ移動させる。このとき、フロント側入力ディスク2は、バリエータ軸11に対して回転軸線X1に沿った方向に相対的に移動する。そして、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2を油圧押圧機構15側からリア側に移動させ、リア側入力ディスク2をバリエータ軸11と共にフロント側に接近する方向へ移動させることで、フロント側入力ディスク2をフロント側出力ディスク3側に接近させると共にリア側入力ディスク2をリア側出力ディスク3側に接近させ、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させる。これにより、油圧押圧機構15は、フロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間及びリア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟圧力を発生させることから、各パワーローラ4をそれぞれ所定の挟圧力でフロント側入力ディスク2とフロント側出力ディスク3との間、リア側入力ディスク2とリア側出力ディスク3との間に挟み込むことができる。この結果、入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との間のスリップを防ぎ、トラクション状態を維持することができる。
ここで油圧押圧機構15による挟圧押圧力は、後述する油圧制御装置9により、挟圧力発生油圧室15aに供給される作動油の量が制御されることで、トロイダル式無段変速機1への入力トルクに基づいた所定の大きさに制御される。油圧制御装置9は、後述するECU60と接続されている。従って、油圧押圧機構15による挟圧押圧力の大きさの制御は、ECU60により行われる。
変速比変更部5は、上述したように、トラニオン6と、移動部7を有し、移動部7によって、入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して、トラニオン6と共にパワーローラ4を移動し、パワーローラ4をこの入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更するものである。ここで、変速比とは、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比であり、典型的には、[変速比=出力側接触半径(パワーローラ4と出力ディスク3とが接触する接触半径(接触点と回転軸線X1との距離))/入力側接触半径(入力ディスク2とパワーローラ4とが接触する接触半径)]で表すことができる。
具体的には、各トラニオン6は、パワーローラ4をそれぞれ回転自在に支持すると共に、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して移動させ入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在に支持するものである。トラニオン6は、ローラ支持部6aと揺動軸6bとを有する。ローラ支持部6aは、パワーローラ4が配置される空間部6cが形成され、この空間部6cに凹部状の嵌合部6dが形成されている。そして、トラニオン6は、この空間部6cにて、上述のようにパワーローラ4の偏心軸42bが嵌合部6dに挿入されることで、パワーローラ4を回転自在に支持している。また、ローラ支持部6aは、揺動軸6bと一体で移動可能に設けられる。揺動軸6bは、柱状に形成され回転軸線X3を回転中心として回転可能に設けられる。従って、トラニオン6は、ローラ支持部6aが揺動軸6bと共に回転軸線X3を回転中心として回転自在に、ロアリンク16やアッパリンク17等を介してケーシング(不図示)に支持されている。また、トラニオン6は、回転軸線X3に沿った方向に移動自在に、ロアリンク16やアッパリンク17等を介してケーシング(不図示)に支持され、後述する移動部7によって、回転軸線X3に沿った方向に移動可能に構成される。
トラニオン6は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3によって形成される1つのキャビティに対してそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられ、4つのパワーローラ4をそれぞれ1つずつ支持する。即ち、このトロイダル式無段変速機1は、フロント側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられ、リア側半円キャビティCに対して2つのパワーローラ4を各々に支持する2つのトラニオン6が一対で設けられる。
ここで、トラニオン6は、パワーローラ4の回転軸線X2が揺動軸6bの回転軸線X3と垂直な平面と平行になるようにパワーローラ4を支持している。また、トラニオン6は、揺動軸6bの回転軸線X3が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1と垂直な平面と平行になるように配置される。即ち、トラニオン6は、回転軸線X1と垂直な平面内で回転軸線X3に沿って移動することで、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1に対して回転軸線X3に沿って移動させることができる。また、トラニオン6は、回転軸線X3を回転中心として回転揺動することで、パワーローラ4を回転軸線X3と垂直な平面内でこの回転軸線X3を中心として入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転自在とすることができる。なお、言い換えれば、トラニオン6は、パワーローラ4に後述する傾転力が作用することでこのパワーローラ4を傾転可能に支持していることになる。
移動部7は、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った方向に移動させるものであり、上述したように、油圧ピストン部8と、油圧制御装置9とを有する。
油圧ピストン部8は、変速制御ピストン81と、変速制御油圧室82とを含んで構成され、変速制御油圧室82に導入される作動油の油圧を変速制御ピストン81のフランジ部84により受圧することで、トラニオン6を回転軸線X3に沿った2方向(A1方向及びA2方向)に移動させるものである。即ち、油圧ピストン部8は、変速制御油圧室82に供給される作動油の油圧によりトラニオン6に設けられたフランジ部84に変速制御押圧力を作用させる。
具体的には、変速制御ピストン81は、ピストンベース83とフランジ部84とにより構成されている。ピストンベース83は、円筒形状に形成され揺動軸6bの一端部に挿入され、回転軸線X3方向及び回転軸線X3周り方向に対して固定されている。
フランジ部84は、ピストンベース83からピストンベース83の径方向、言い換えれば、揺動軸6bの径方向に突出するように固定的に設けられており、ピストンベース83及びトラニオン6の揺動軸6bと共に回転軸線X3に沿った方向に移動可能である。フランジ部84は、揺動軸6bの回転軸線X3周りに円環板状に形成されている。
変速制御油圧室82は、油圧室構成部材85により構成される。この油圧室構成部材85は、第1構成部材としてのシリンダボデー86及び第2構成部材としてのロアカバー87により構成される。即ち、油圧室構成部材85は、変速制御油圧室82の壁面をなすと共に、トラニオン6の移動方向(ストローク方向)である回転軸線X3に沿った方向に対してシリンダボデー86とロアカバー87とに分割されている。シリンダボデー86は、変速制御油圧室82の空間部となる凹部が形成されている。ロアカバー87は、シリンダボデー86の凹部の開口を塞ぐようにこのシリンダボデー86に固定され、これにより、変速制御油圧室82は、シリンダボデー86とロアカバー87とにより回転軸線X3を中心とした円筒状(シリンダ状)に区画される。このシリンダボデー86及びロアカバー87は、シリンダボデー86のロアカバー87側とは反対側においてケーシング(不図示)に固定されている。
そして、フランジ部84は、作動油が導入される変速制御油圧室82内に収容されると共に、この変速制御油圧室82内を回転軸線X3に沿った方向に2つの油圧室、即ち、第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とに仕切り区画する。第1油圧室OP1は、内部に供給される作動油の油圧により、フランジ部84と共にトラニオン6を回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させる一方、第2油圧室OP2は、内部に供給される作動油の油圧により、フランジ部84と共にトラニオン6を第1方向の逆方向である第2方向A2に移動させる。フランジ部84の径方向外側の先端部には、環状のシール部材Sが設けられており、従って、このフランジ部84によって区画される変速制御油圧室82の第1油圧室OP1と第2油圧室OP2とは、それぞれこのシール部材Sにより互いに作動油が漏れないようにシールされている。
なお、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにパワーローラ4、トラニオン6が2つずつ設けられることから、この第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2は、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとにそれぞれ2つずつ設けられることになる。このとき、この一対のトラニオン6では、第1油圧室OP1及び第2油圧室OP2の位置関係がトラニオン6ごとに入れ替わっている。つまり、一方のトラニオン6の第1油圧室OP1とした油圧室が他方のトラニオン6の第2油圧室OP2となり、一方のトラニオン6の第2油圧室OP2とした油圧室が他方のトラニオン6の第1油圧室OP1となる。従って、図4に示すトロイダル式無段変速機1では、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4は、第1油圧室OP1又は第2油圧室OP2内の油圧により、回転軸線X3に沿って互いに逆方向に移動することになる。
油圧制御装置9は、トランスミッションの各部、例えば、油圧押圧機構15、トルクコンバータ22、前後進切換機構23等に作動油を供給するものであり、更に、変速制御油圧室82内の作動油の油圧を制御するものである。油圧制御装置9は、オイルパンに貯留されトランスミッションの各部に供給される作動油をオイルポンプにより吸引、加圧し、吐出する。そして、油圧制御装置9は、オイルポンプにより加圧された作動油がプレッシャーレギュレータバルブを介して、流量制御弁などに供給される。流量制御弁は、スプール弁子、電磁ソレノイドなどを含んで構成され、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2へ作動油の供給、あるいは、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2からの作動油の排出を制御するものである。油圧制御装置9の流量制御弁は、ECU60から入力される制御指令値入力に基づいた駆動電流により駆動する電磁ソレノイドがスプール弁子の位置を変位させることで、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2に供給、排出される作動油の流量を制御するものである。なお、このプレッシャーレギュレータバルブは、プレッシャーレギュレータバルブよりも下流側における油圧が所定油圧以上、即ち、油圧制御装置9の元圧として用いられるライン圧以上になった際に、下流側にある作動油をオイルパンに戻して所定のライン圧に調圧するものである。
例えば、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁を制御し、オイルポンプにより加圧された作動油を第1油圧室OP1に供給し、第2油圧室OP2内の作動油を排出すると、第1油圧室OP1の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧>第2油圧室OP2の油圧]となる。これにより、油圧ピストン部8のフランジ部84は、回転軸線X3に沿った第1方向A1に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動する。同様に、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁を制御し、オイルポンプにより加圧された作動油を第1油圧室OP1から排出し、第2油圧室OP2内に供給すると、第2油圧室OP2の油圧がフランジ部84に作用し[第1油圧室OP1の油圧<第2油圧室OP2の油圧]となる。これにより、油圧ピストン部8のフランジ部84が回転軸線X3に沿った第2方向A2に押圧され、トラニオン6と共にパワーローラ4が回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動する。このとき、流量制御弁のスプール弁子の移動量に応じて、パワーローラ4の第1方向A1、あるいは、第2方向A2への移動が調整される。
従って、この移動部7は、ECU60により油圧制御装置9が駆動され油圧ピストン部8の各変速制御油圧室82内の油圧が制御されることで、変速制御ピストン81のフランジ部84に所定の変速制御押圧力を作用させ、トラニオン6と共にパワーローラ4を回転軸線X3に沿った2方向、即ち、第1方向A1と第2方向A2とに移動させることができる。そして、変速比変更部5は、この移動部7によって、トラニオン6と共にパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置(図5参照)から変速比に応じた変速位置(図6参照)に移動させ、このパワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させることで変速比を変更することができる。
ここで、図5に示すように、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する中立位置は、変速比が固定される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用不能な位置である。即ち、パワーローラ4が中立位置にあり、変速比が固定されている状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の中立位置(変速比固定時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る(直交する)位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4の回転方向(転がる方向)と入力ディスク2の回転方向とが一致しており、この結果、パワーローラ4に傾転力が作用せず、従って、パワーローラ4は、この中立位置にとどまりながら入力ディスク2とともに回転をつづけ、この間の変速比は固定されている。
このとき、入力ディスク2からパワーローラ4に作用する力は駆動力(トルク)だけであるので、移動部7の油圧ピストン部8と油圧制御装置9とは、油圧によりこの駆動力に抗するだけの力をトラニオン6に作用させている。即ち、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6が中立位置にある場合、上述したように、入力トルクに応じて入力ディスク2、出力ディスク3とパワーローラ4との接触点に作用する接線力F1(図5参照)に抗する大きさの変速制御押圧力F2(図5参照)をフランジ部84に作用させ、パワーローラ4に作用する接線力F1と変速制御押圧力F2とをつりあわせることで、パワーローラ4及びこれを支持するトラニオン6の位置を中立位置に固定し、変速比を固定している。
一方、図6に示すように、パワーローラ4の変速位置は、変速比が変更される位置であり、パワーローラ4を入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転させる傾転力がこのパワーローラ4に作用する位置である。即ち、パワーローラ4が変速位置にあり、変速比が変更される状態では、パワーローラ4の回転軸線X2は、回転軸線X1を含む平面で、かつ、回転軸線X3と垂直な平面内から回転軸線X3に沿った第1方向A1あるいは第2方向A2に移動した位置に設定される。言い換えれば、パワーローラ4の変速位置(変速時)では、パワーローラ4の回転軸線X3に沿った方向の位置は、このパワーローラ4の回転軸線X2が回転軸線X1を通る位置、即ち、中立位置からオフセットされた位置に設定される。このとき、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4の回転方向と入力ディスク2の回転方向とがずれ、これにより、パワーローラ4に傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4に作用する傾転力によりパワーローラ4と入力ディスク2及び出力ディスク3との間にサイドスリップが発生し、パワーローラ4は、入力ディスク2及び出力ディスク3に対して傾転し、パワーローラ4と入力ディスク2との入力側接触半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との出力側接触半径とが変更され、従って、変速比が変更される。
例えば、図6に示すように、入力ディスク2が図6中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第2方向A2(パワーローラ4と入力ディスク2との接触点における入力ディスク2の移動方向とは反対方向、即ち、入力ディスク2の回転方向に逆らう方向(出力ディスク3の回転方向に沿う方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の周辺側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1から離間させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向外方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向内方側に移動するように傾転し、変速比が減少側に変更され、アップシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
逆に、ダウンシフトする場合は、パワーローラ4を回転軸線X3に沿った第1方向A1(パワーローラ4と入力ディスク2との接触点における入力ディスク2の移動方向、即ち、入力ディスク2の回転方向に沿う方向(出力ディスク3の回転方向に逆らう方向))にオフセットする。すると、パワーローラ4と入力ディスク2との接触点において、パワーローラ4に入力ディスク2の円周方向の力が作用し、パワーローラ4を入力ディスク2の中心側に移動させる方向(パワーローラ4を入力ディスク2の回転軸線X1に近接させる方向)の傾転力が作用する。この結果、パワーローラ4は、入力ディスク2との接触点が入力ディスク2の径方向内方側に移動すると共に出力ディスク3との接触点が出力ディスク3の径方向外方側に移動するように傾転し、変速比が増加側に変更され、ダウンシフトする。そして、パワーローラ4が再び中立位置に戻ることで変更された変速比が固定される。
ここで、このパワーローラ4の位置は、中立位置からのストローク量と入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角により決定される。パワーローラ4のストローク量は、パワーローラ4の回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転軸線X1を通る中立位置を基準位置として、この中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2への移動量(中立位置からのオフセット量)である。パワーローラ4の傾転角は、パワーローラ4の回転中心である回転軸線X2が入力ディスク2及び出力ディスク3の回転中心である回転軸線X1と直交する位置を基準位置として、この基準位置から入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾斜角度(鋭角側の傾斜角度)であり、言い換えれば、回転軸線X3周りの回転角度である。そして、このトロイダル式無段変速機1の変速比は、パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角によって定まり、この傾転角は、パワーローラ4の中立位置からのストローク量の積分値により定まる。
ここで、ECU60は、トロイダル式無段変速機1の運転状態に応じてトロイダル式無段変速機1の各部の駆動を制御しトロイダル式無段変速機1の実際の変速比である実変速比を制御するものである。即ち、ECU60は、例えば、種々のセンサが検出するエンジン回転数、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、入力ディスク回転数、出力軸回転数、シフトポジションなどの運転状態や傾転角、ストローク量などに基づいて、目標の変速比である目標変速比を決定すると共に変速比変更部5を駆動してパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて、所定の傾転角まで傾転させることで変速比の変更を実行する。更に言えば、ECU60は、油圧制御装置9の流量制御弁に供給する駆動電流を制御指令値に基づいてデューティ制御することで、油圧ピストン部8の第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御して、トラニオン6と共にパワーローラ4を中立位置から変速位置側に所定のストローク量まで移動させて所定の傾転角まで傾転させることで、実変速比が目標変速比となるように制御する。
上記のようなトロイダル式無段変速機1は、入力ディスク2に駆動力(トルク)が入力されると、その入力ディスク2にトラクションオイルを介して接触しているパワーローラ4に駆動力が伝達され、更にそのパワーローラ4から出力ディスク3にトラクションオイルを介して駆動力が伝達される。この間、トラクションオイルは加圧されることによりガラス転移化し、それに伴う大きいせん断力によって駆動力を伝達するので、各入力ディスク2、出力ディスク3は、入力トルクに応じた挟圧力がパワーローラ4との間に生じるように、油圧押圧機構15により押圧される。また、パワーローラ4の周速と各入力ディスク2、出力ディスク3のトルク伝達点(パワーローラ4がトラクションオイルを介して接触している接触点)の周速とが実質的に同じであるから、入力ディスク2とパワーローラ4との接触点の回転軸線X1からの半径と、パワーローラ4と出力ディスク3との接触点の回転軸線X1からの半径とに応じて、各入力ディスク2、出力ディスク3の回転数(回転速度)が異なることとなり、その回転数(回転速度)の比率が変速比となる。
そして、ECU60は、変速比を設定した目標変速比に変更する場合、即ち、変速比の変速の場合は、入力ディスク2の回転方向に基づいて、油圧制御装置9の流量制御弁に駆動電流を供給し、第1油圧室OP1、第2油圧室OP2の油圧を制御することで、パワーローラ4が目標変速比に応じた傾転角になるまで、トラニオン6を中立位置から第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。例えば、入力ディスク2が図4中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第1油圧室OP1の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第1方向A1に移動させると、上述したように変速比が増加しダウンシフトが行われる。一方、入力ディスク2が図4中の矢印B方向(反時計回り)に回転している状態において、第2油圧室OP2の油圧によりパワーローラ4を中立位置から回転軸線X3に沿った第2方向A2に移動させると、上述したように変速比が減少しアップシフトが行われる。また、設定された変速比を固定する場合は、パワーローラ4が再び中立位置となるまで、トラニオン6を第1方向A1あるいは第2方向A2に移動させる。
なお、このECU60は、傾転角センサ(不図示)によって検出されるパワーローラ4の傾転角とストロークセンサ(不図示)によって検出されるストローク量に基づいて、実変速比(実際の変速比)が目標変速比(変速後の目標の変速比)となるようにカスケード式のフィードバック制御を行っている。即ち、このECU60は、アクセル開度及び車速に基づいて目標変速比に対応した目標の傾転角である目標傾転角を決定し、この目標傾転角と傾転角センサによって検出した実際の傾転角である実傾転角との偏差に基づいて、目標変速比、目標傾転角に対応した目標のストローク量である目標ストローク量を決定し、ストロークセンサが検出したストローク量がこの目標ストローク量となるように移動部7の油圧制御装置9を制御している。このようなトロイダル式無段変速機1の変速制御では、基本的には、傾転角センサによって検出される傾転角(言い換えれば、変速比)のみをフィードバック制御すればよいが、ストローク量が傾転角の微分に相当することから、ストロークセンサによって検出されるストローク量のフィードバック制御もあわせて行うことで、傾転制御における振動を抑制するダンピング効果を得ることができる。また、このECU60は、変速比の応答性を向上するために、このフィードバック制御と共にフィードフォワード制御をあわせて行ってもよい。
ここで、トロイダル式無段変速機1は、図4に示すように、一対の入力ディスク2及び出力ディスク3ごとに設けられる2つのパワーローラ4及びトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させるための機構として、ロアリンク16やアッパリンク17などにより構成されるリンク機構を備えている。ロアリンク16は、揺動軸6bにおいて変速制御ピストン81が設けられている一端部側(シリンダボデー86とローラ支持部6aとの間)にてラジアルベアリングRBを介して一対のトラニオン6を連結する一方、アッパリンク17は、揺動軸6bにおいて他端部側にてラジアルベアリングRBを介して一対のトラニオン6を連結する。そして、ロアリンク16、アッパリンク17は、それぞれケーシング(不図示)に固定されるロアポスト、アッパポストの支持軸16a、17aに支持されている。この支持軸16a、17aは、回転軸線X1と平行な方向に延設されており、ロアリンク16、アッパリンク17は、この支持軸16a、17aを支点としてシーソー状に揺動可能に構成されている。従って、ロアリンク16、アッパリンク17は、一対のトラニオン6の回転軸線X3に沿った逆方向の移動を同期させることができる。
また、トロイダル式無段変速機1は、図4、図7に示すように、複数のトラニオン6の回転軸線X3を回転中心とした回転の同期を促進する機構として、同期手段としての同期機構18を備える。同期機構18は、回転力伝達材としての同期ワイヤ19と、巻掛部としての固定プーリ20とを有する。
固定プーリ20は、各トラニオン6の各揺動軸6bにそれぞれ固定して設けられる。複数の固定プーリ20は、各揺動軸6bにおいて、ピストンベース83の図4中下側(パワーローラ4が配置される側とは反対側)に設けられる。固定プーリ20は、円柱状に形成され、中心軸線が回転軸線X3とほぼ一致するように揺動軸6bに固定して設けられる。
固定プーリ20は、揺動軸6bに対して回転軸線X3周りに回転不能、且つ、回転軸線X3に沿った方向に移動不能に設けられる。つまり、各固定プーリ20は、各トラニオン6の各揺動軸6bに対して回転軸線X3周りに相対的に回転変位しないと共に回転軸線X3に沿った方向にも相対的に変位しない。従って、各固定プーリ20は、各トラニオン6の各揺動軸6bの回転軸線X3周りの回転に伴って回転可能であると共に、回転軸線X3に沿った移動に伴って移動可能である。そして、各固定プーリ20は、止め具としてのかしめ部材31を介して同期ワイヤ19が巻き掛けられる。
同期ワイヤ19は、1つのトラニオン6を回転軸線X3周りに回転させる回転力(回転トルク)を他のトラニオン6に伝達するものである。即ち、同期ワイヤ19は、パワーローラ4の傾転によって1つのトラニオン6に作用する回転軸線X3周りの回転力を他のトラニオン6に伝達する。このトロイダル式無段変速機1は、4つのトラニオン6にそれぞれ設けられる4つの固定プーリ20に対して、変速比変更部5により変速比を変更する際に回転軸線X3周りの回転方向が相互に逆方向である一対のトラニオン6同士の間にそれぞれ1つずつ、合計4つの同期ワイヤ19が設けられている。各同期ワイヤ19は、各固定プーリ20間で1回交差するように反転して張架される。各同期ワイヤ19は、平面形状が8の字無端ループ状となるように、別部材の金属製で円弧チューブ状のかしめ部材31がその端部などでかしめられている。ここで、「かしめ」とは、例えば、加圧力を加えて塑性変形させることによって締め付け固定する処理全般をいう。
そして、このトロイダル式無段変速機1では、パワーローラ4を傾転させ変速比が変更される際、各トラニオン6の回転軸線X3周りの回転方向は、フロント側の一方のトラニオン6(例えば、図3中下側のトラニオン)とリア側の他方のトラニオン6(例えば、図3中上側のトラニオン)の回転方向が同方向となり、フロント側の他方のトラニオン6(例えば、図3中上側のトラニオン)とリア側の一方のトラニオン6(例えば、図3中下側のトラニオン)の回転方向が同方向となる。
従って、同期機構18は、各固定プーリ20と各同期ワイヤ19との摩擦力により、変速比を変更する際に回転軸線X3周りの回転方向が相互に逆方向である一方のトラニオン6の回転力(回転トルク)を他方のトラニオン6に伝達し、各同期ワイヤ19を介して4つのトラニオン6の回転を相互に連動させ同期させることができる。これにより、4つのパワーローラ4の傾転動作が相互に連動して同期され、各パワーローラ4の入力ディスク2及び出力ディスク3に対する傾転角を複数のパワーローラ4の間で同じ傾転角とすることができる。
この結果、各パワーローラ4、各トラニオン6の傾転動作(変速動作)において、複数のパワーローラ4の支持構造であるトラニオン6の部材精度や組付精度のバラツキ等により複数のパワーローラ4に油圧押圧機構15の挟圧力が均等に作用しない場合や油圧制御装置9の油路抵抗の差などに起因して変速応答性に微小なずれが発生しそうになった場合でも、この同期機構18が複数のトラニオン6の回転を相互に連動させ同期させ複数のパワーローラ4の傾転動作が相互に同期させることができるので、トロイダル式無段変速機1の変速制御精度を向上することができる。
なお、以上の説明では、同期ワイヤ19は、変速比変更部5により変速比を変更する際に、回転軸線X3周りの回転方向が相互に逆方向であるトラニオン6同士の間で1回交差させて各固定プーリ20に巻き掛けるものとして説明したが、これに限らず、奇数回交差(例えば3回交差)させていれば、この同期ワイヤ19を介して複数のトラニオン6の回転を相互に同期させることができる。また、この同期ワイヤ19は、変速比変更部5により変速比を変更する際に、回転軸線X3周りの回転方向が相互に同方向であるトラニオン6同士の間で交差せずに各固定プーリ20に巻き掛けたり、偶数回交差(例えば2回交差)させて各固定プーリ20に巻き掛けたりすることでも同様に複数のトラニオン6の回転を相互に同期させることができる。
ところで、このようなトロイダル式無段変速機1では、油圧制御装置9にて、トルクコンバータ22、前後進切換機構23、変速比変更部5、油圧押圧機構15などにトラクションオイルを供給するためのオイルポンプは、エンジンに同期して駆動するものとなっている。また、このトラクションオイルは、高粘度であり、且つ、低温時には、更に粘度が高くなる性質を有している。そのため、エンジン21の冷間始動時に、オイルポンプは、高粘度のトラクションオイルを吸入して吐出することになり、ここで、過大な駆動トルクが必要となり、エンジン21の始動不良や潤滑不足などを招いてしまうおそれがある。
そこで、本実施例のトロイダル式無段変速機1では、図1に示すように、オイルポンプを第1オイルポンプ101と、第2オイルポンプ102とで構成している。そして、エンジン21の始動時には、第2オイルポンプ102におけるオイルの吸入先を大気とし、オイルの吐出先を潤滑系とし、オイルポンプの駆動トルクを低減することで、エンジン21の始動不良を防止すると共に、トロイダル式無段変速機1などの潤滑不足を防止している。
即ち、油圧制御装置9にて、オイルパン(オイル貯留部)105には、作動油としてのトラクションオイルが貯留されている。第1オイルポンプ101と第2オイルポンプ102は、エンジン21のクランクシャフト21aの回転に同期して駆動し、吸入したオイルを昇圧後に吐出することができる。この場合、第1オイルポンプ101の吐出容量は、第2オイルポンプ102の吐出容量より少なく設定されている。
そして、第1オイルポンプ101は、吸入口に第1吸入通路103が連結され、この第1吸入通路103は、フィルタ104を介してオイルパン105内に連通している。また、第1オイルポンプ101は、吐出口に第1吐出通路106が連結され、この第1吐出通路106は、制御系Aに連通している。
第2オイルポンプ102は、吸入口に連結通路107が連結され、この連結通路107は、第1切替弁108を介して第2吸入通路109及び第3吸入通路110に連結されている。この第1切替弁108は電磁弁であって、連結通路107の切替先を第2吸入通路109と第3吸入通路110との間で切り替えることができる。第2吸入通路109は、フィルタ111を介してオイルパン105内に連通し、第3吸入通路110は、大気に連通している。また、第2オイルポンプ102は、吐出口に第2吐出通路112が連結され、この第2吐出通路112は、第2切替弁113を介して第3吐出通路114及び第4吐出通路115に連結されている。この第2切替弁113は電磁弁であって、第2吐出通路112の切替先を第3吐出通路114と第4吐出通路115との間で切り替えることができる。そして、第3吐出通路114は第1吐出通路106を介して制御系Aに連通し、第4吐出通路115は潤滑系Bに連結されている。
この場合、制御系Aは、所謂、ライン圧系であって、上述した変速比変更部5及び油圧押圧機構15を有している。つまり、このライン圧系に、変速比変更部5における変速制御油圧室82への油圧を調整する流量制御弁が設けられると共に、油圧押圧機構15における挟圧力発生油圧室15aへの油圧を調整する押圧制御弁が設けられている。また、潤滑系Bは、少なくともトロイダル式無段変速機1の摺動部を有している。そして、制御系Aから潤滑系Bにオイルを供給するオイル供給通路(オイル供給手段)116が設けられ、このオイル供給通路116に開閉弁117が設けられている。この開閉弁117は、電磁弁である。
油圧切替制御手段としてのECU60は、エンジン21の運転状態に応じて、上述した第1切替弁108と第2切替弁113の切替先を制御可能であると共に、開閉弁117を開閉制御可能となっている。即ち、ECU60は、エンジン21の冷間始動時に、予め設定された第1所定期間にわたって、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先を大気に切り替えると共に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を潤滑系Bに切り替える。
具体的には、オイルパン105に、貯留されているオイルの温度を検出する温度センサ118を設け、検出結果をECU60に出力している。ECU60は、温度センサ118が検出したオイルの温度が予め設定された所定温度より低いときに、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先を大気に切り替えると共に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を潤滑系Bに切り替えるようにしている。
また、ECU60は、温度センサ118が検出したオイルの温度が所定温度以上のときに、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先をオイルパン105に切り替えると共に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を制御系Aに切り替えるようにしている。この場合、ECU60は、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先をオイルパン105に切り替えた後、予め設定された第2所定期間の経過後に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を制御系Aに切り替えるようにしている。
そして、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先が制御系Aに切り替えられているとき、開閉弁117を開放し、制御系Aのオイルをオイル供給通路116を通して潤滑系Bに供給するようにしている。
ここで、本実施例の油圧制御装置9によるポンプ切替制御を、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
本実施例の油圧制御装置9によるポンプ切替制御において、図2に示すように、ステップS11にて、イグニッションキースイッチ(IG)がONされると、ステップS12にて、ECU60は、温度センサ118が検出したオイルの温度が予め設定された所定温度(規定値)より低いかどうかを判定する。この場合、所定温度(規定値)とは、エンジン21が始動された後に昇温されたオイルの温度より若干低い温度である。ここで、オイルの温度が所定温度より低いと判定されたら、ステップS13にて、第1切替弁108により連結通路107と第2吸入通路109とを遮断する一方、連結通路107と第3吸入通路110を連通することで、第2オイルポンプ102の吸入ポートを大気と連通する。続いて、ステップS14にて、第2切替弁113により第2吐出通路112と第3吐出通路114とを遮断する一方、第2吐出通路112と第4吐出通路115とを連通することで、第2オイルポンプ102の吐出ポートを潤滑系Bと連通する。そして、ステップS15にて、図示しないスタータモータを起動してエンジン21を始動する。
従って、第1オイルポンプ101は、オイルパン105のオイルを第1吸入通路103から吸入し、加圧した後、第1吐出通路106に吐出するため、この吐出されたオイルが制御系Aに供給される。一方、第2オイルポンプ102は、空気を第3吸入通路110及び連結通路107から吸入し、第2吐出通路112に吐出するため、この吐出された空気が第4吐出通路115を通して潤滑系Bに供給される。この第1オイルポンプ101は、高粘度のオイルを吸入して吐出することで、所定の駆動トルクを必要とするものの、第2オイルポンプ102は空気を吸入して吐出することで、ほとんど駆動トルクを必要としない。そのため、エンジン21の始動時におけるポンプ駆動トルクが低減される。また、エンジン21の始動時に、トロイダル式無段変速機1の制御系Aは、多量のオイルを必要としていないことから、第1オイルポンプ101が吐出するオイル量だけで十分となる。なお、このとき、制御系Aに供給されたオイルが、オイル供給通路116を通して潤滑系Bに供給されることから、この潤滑系Bが潤滑油不足になることはない。
そして、エンジン21の始動後に、オイルの温度が上昇すると、上述したステップS12にて、ECU60は、温度センサ118が検出したオイルの温度が所定温度より低くないと判定する。すると、ステップS16にて、第1切替弁108により連結通路107と第2吸入通路109とを連通する一方、連結通路107と第3吸入通路110を遮断することで、第2オイルポンプ102の吸入ポートをオイルパン105と連通する。ステップS17では、第1切替弁108を作動してから予め設定された所定時間(第2所定期間)が経過したかどうかを判定する。この所定時間(第2所定期間)とは、第2オイルポンプ102の吸入ポートが大気からオイルパン105に切り替わってから、連結通路107及び第2吐出通路112に残留している空気が全て潤滑系Bに吐出されるまでの時間である。
ステップS17にて、第1切替弁108を作動してから所定時間が経過したと判定されたら、ステップS18にて、第2切替弁113により第2吐出通路112と第3吐出通路114とを連通する一方、第2吐出通路112と第4吐出通路115とを遮断することで、第2オイルポンプ102の吐出ポートを制御系Aと連通する。
従って、第1オイルポンプ101は、オイルパン105のオイルを第1吸入通路103から吸入し、加圧した後、第1吐出通路106に吐出する。また、第2オイルポンプ102は、オイルパン105のオイルを第2吸入通路109及び連結通路107から吸入し、第2吐出通路112に吐出し、第3吐出通路114を通して第1吐出通路106に吐出する。そのため、各オイルポンプ101,102が吐出したオイルが全て制御系Aに供給される。
このとき、既に第1オイルポンプ101により制御系Aにオイルが循環していることから、オイルの温度が上昇して粘度が低くなっているため、エンジン21による第1オイルポンプ101及び第2オイルポンプ102の駆動トルクが低減される。なお、図2のフローチャートには図示しないが、その後、ECU60は、第1切替弁108を切り替えることはないが、エンジン21の運転状態に応じて第2切替弁113を切り替えることで、制御系Aと潤滑系Bとのおけるオイルの供給量を制御する。即ち、エンジン21の高回転時や高負荷時には、制御系Aに多量のオイルを供給する。この場合、ステップS18にて、第2切替弁113により第2吐出通路112を第4吐出通路115から第3吐出通路114に切り替えるとき、エンジン21の運転状態に応じて切り替えるようにしてもよい。
また、図2のフローチャートには図示しないが、エンジン21の低温始動でない場合は、ステップS17の処理は不要となる。つまり、イグニッションキースイッチ(IG)がONされたとき、オイルの温度が所定温度(規定値)より低くないと判定された場合、既にエンジンが始動されているときは、前述のように、ステップS16,S17,S18を実行する。一方、イグニッションキースイッチ(IG)がONされたとき、オイルの温度が所定温度(規定値)より低くないと判定された場合、またエンジンが始動されていないときは、ステップS16,S18,S15を実行する。
このように本実施例の無段変速機にあっては、エンジン21からの駆動力が伝達される入力ディスク2とこの駆動力を車輪27に伝達する出力ディスク3とに接触するパワーローラ4が移動することで、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比である変速比を変更するトロイダル式無段変速機を構成し、エンジン21により駆動して吸入したオイルを制御系Aに吐出する第1オイルポンプ101と、エンジン21により駆動して吸入したオイルを制御系Aまたは潤滑系Bに吐出する第2オイルポンプ102を設けると共に、第2オイルポンプ102におけるオイルの吸入先をオイルパン105と大気との間で切り替える第1切替弁108と、第2オイルポンプ102におけるオイルの吐出先を制御系Aと潤滑系Bとの間で切り替える第2切替弁113とを設け、ECU60は、エンジン21の運転状態に応じて第1切替弁108と第2切替弁113の切替先を制御している。
従って、エンジン21の始動時に応じて第1切替弁108と第2切替弁113により、第2オイルポンプ102の吸入先と吐出先を切り替えることで、エンジン21の始動時における第2オイルポンプ102の駆動トルクを低減し、エンジン21の始動性を向上することができると共に、潤滑油不足の発生を防止することができる。
また、本実施例の無段変速機では、入力ディスク2及び出力ディスク3に対するパワーローラ4の相対位置を油圧により変化させることでパワーローラ4を傾転させ、入力ディスク2と出力ディスク3との回転数比を変更する変速比変更部5と、入力ディスク2及び出力ディスク3とパワーローラ4とを接触させ、入力ディスク2と出力ディスク3との間にパワーローラ4を挟み込む挟圧力を作用させる油圧押圧機構15と、油圧により変速比変更部5及び油圧押圧機構15を制御する油圧制御装置9とを設け、制御系Aが変速比変更部5及び油圧押圧機構15を有している。従って、エンジン21の始動時に、オイルを少なくとも変速比変更部5と油圧押圧機構15に供給することができ、トロイダル式無段変速機の制御を適正に行うことができる。
また、本実施例の無段変速機では、ECU60は、エンジン21の始動時に、第1所定期間にわたって、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先を大気に切り替えると共に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を潤滑系Bに切り替える。従って、第1オイルポンプ101は、高粘度のオイルを吸入して吐出することで、所定の駆動トルクを必要とするものの、第2オイルポンプ102は空気を吸入して吐出することで、ほとんど駆動トルクを必要としないため、エンジン21におけるポンプ駆動トルクを低減することができる。
具体的には、オイルの温度を検出する温度センサ118を設け、ECU60は、温度センサ118が検出したオイルの温度が所定温度より低いときに、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先を大気に切り替え、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を潤滑系Bに切り替える。従って、簡単な構成並びに制御により、第2オイルポンプ102の切替先を容易に変更することができ、構造の簡素化並びに低コスト化を可能とすることができる。
また、本実施例の無段変速機では、ECU60は、温度センサ118が検出したオイルの温度が所定温度以上になったら、第1切替弁108により第2オイルポンプ108の吸入先をオイルパン105に切り替えると共に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を制御系Aに切り替える。従って、既に第1オイルポンプ101により制御系Aにオイルが循環していることから、オイルの温度が上昇して粘度が低くなっており、エンジン21における第1オイルポンプ101及び第2オイルポンプ102のポンプ駆動トルクを低減することができる。
また、本実施例の無段変速機では、ECU60は、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先をオイルパン105に切り替えた後、第2所定期間の経過後に、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を制御系Aに切り替える。従って、制御系Aへの空気の混入を防止することができ、変速比変更部5や油圧押圧機構15の作動不良の発生を阻止することができる。
また、本実施例の無段変速機では、第1オイルポンプ101の吐出容量を第2オイルポンプ102の吐出容量より少なく設定している。従って、エンジン21の始動時に、吐出容量の少ない第1オイルポンプ101を駆動することで、エンジン21にかかる負担を軽減することができる。
また、本実施例の無段変速機では、制御系Aから潤滑系Bにオイルを供給するオイル供給通路116を設け、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先が制御系Aに切り替えられているとき、オイル供給通路116により制御系Aのオイルを潤滑系Bに供給する。従って、エンジン21の始動時における潤滑系Bのオイル不足を解消することができる。
なお、上述した実施例では、オイルの温度を検出する温度センサ118を設け、このオイルの温度に応じて第1切替弁108及び第2切替弁113の切替制御を行ったが、この構成に限定されるものではない。例えば、エンジン冷却水の温度や排気ガス温度などを用いてもよい。また、タイマを用いてエンジン21の始動から所定時間の経過後に、第1切替弁108及び第2切替弁113を切り替えるようにしてもよい。
また、上述した実施例では、本発明のオイルポンプを、第1オイルポンプ101と第2オイルポンプ102により構成したが、2つの吸入口と2つの吐出口を有する1つのオイルポンプとしてもよい。また、オイルポンプや吸入口及び吐出口の数は、2つに限るものではなく、3つ以上設けてもよいものである。また、本実施例では、第1オイルポンプ101の吐出容量を第2オイルポンプ102の吐出容量より少なく設定しているが、エンジン21の始動時に必要となるオイル(油圧)に応じて適宜設定すればよいものである。更に、第1切替弁108及び第2切替弁113を電磁弁としたが、ソレノイドに代えて、形状記憶合金や高熱膨張合金などを用い、オイルの温度に応じて変形することで、第1切替弁108及び第2切替弁113が切り替わるようにしてもよい。
また、上述した実施例では、エンジンの始動時に、所定時間にわたって、またはオイルの温度が低いときに、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先を大気に切り替え、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先を潤滑系Bに切り替えるようにしてが、この構成に限定されるものではない。即ち、第1切替弁108を非通電状態で、第2オイルポンプ102の吸入先が大気となるように構成すると共に、第2切替弁113を非通電状態で、第2オイルポンプ102の吐出先が潤滑系Bとなるように構成する。すると、エンジンの停止時に、第1切替弁108により第2オイルポンプ102の吸入先が大気に切り替わり、第2切替弁113により第2オイルポンプ102の吐出先が潤滑系Bに切り替わる。即ち、エンジンの冷間始動時には、オイルの温度が低くて高粘度であるため、各切替弁108,113が作動しにくいために作動遅れが発生するおそれがある。しかし、エンジンの停止時には、オイルの温度が高くて粘度が低いため、各切替弁108,113が適正に作動する。そのため、エンジン21の始動時には、第2オイルポンプ102の吸入先と吐出先が既に切り替わっており、ポンプ駆動トルクを的確に低減することができる。
また、上述した本発明の実施例に係る無段変速機は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施例に係る無段変速機は、以上で説明した実施例を複数組み合わせることで構成してもよい。また、以上の説明では、無段変速機はダブルキャビティ型のトロイダル式無段変速機であるものとして説明したが、これに限らない。また、以上の説明では、回転力伝達材は、ワイヤであるものとして説明したが、これに限らず、ベルト等であってもよい。
以上のように、本発明に係る無段変速機は、オイルポンプを第1、第2オイルポンプにより構成し、エンジンの始動時に、第2オイルポンプの吸入先を大気として吐出先を潤滑系とすることで、ポンプ駆動トルクを低減し、エンジン始動時におけるポンプ駆動トルクを低減して始動性を向上すると共に、潤滑油不足の発生を防止するものであり、複数のパワーローラを有する種々のハーフトロイダル式の無段変速機に適用して好適である。
本発明の一実施例に係るトロイダル式無段変速機における油圧制御装置の概略構成図である。 本実施例の油圧制御装置によるポンプ切替制御を表すフローチャートである。 本実施例のトロイダル式無段変速機の概略断面図である。 本実施例のトロイダル式無段変速機の要部の構成図である。 本実施例のトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する中立位置を説明する模式図である。 本実施例のトロイダル式無段変速機が備えるパワーローラの入力ディスクに対する変速位置を説明する模式図である。 本実施例のトロイダル式無段変速機の同期ワイヤの掛け方を説明する模式的平面図である。
符号の説明
1 トロイダル式無段変速機(無段変速機)
2 入力ディスク
3 出力ディスク
4 パワーローラ
5 変速比変更部(シリンダ機構)
6 トラニオン
7 移動部
8 油圧ピストン部
9 油圧制御装置
10 入力軸
11 バリエータ軸
15 油圧押圧機構(挟圧機構)
18 同期機構
21 エンジン
22 トルクコンバータ
23 前後進切換機構
24 動力伝達機構
60 電子制御ユニット、ECU(油圧切替制御手段)
101 第1オイルポンプ
102 第2オイルポンプ
105 オイルパン(オイル貯留部)
108 第1切替弁
113 第2切替弁
116 オイル供給通路(オイル供給手段)
118 温度センサ
A 制御系
B 潤滑系

Claims (8)

  1. エンジンからの駆動力が伝達される入力ディスクとこの駆動力を車輪に伝達する出力ディスクとに接触するパワーローラが移動することで、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比である変速比を変更するトロイダル式無段変速機において、
    前記エンジンにより駆動して吸入したオイルを制御系に吐出する第1オイルポンプと、
    前記エンジンにより駆動して吸入したオイルを前記制御系または潤滑系に吐出する第2オイルポンプと、
    該第2オイルポンプにおけるオイルの吸入先をオイル貯留部と大気との間で切り替える第1切替弁と、
    前記第2オイルポンプにおけるオイルの吐出先を前記制御系と前記潤滑系との間で切り替える第2切替弁と、
    前記エンジンの運転状態に応じて前記第1切替弁と前記第2切替弁の切替先を制御する油圧切替制御手段と、
    を備えることを特徴とする無段変速機。
  2. 前記入力ディスク及び前記出力ディスクに対する前記パワーローラの相対位置を油圧により変化させることで前記パワーローラを傾転させ、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの回転数比を変更するシリンダ機構と、
    前記入力ディスク及び前記出力ディスクと前記パワーローラとを接触させ、前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に前記パワーローラを挟み込む挟圧力を作用させる挟圧機構と、
    油圧により前記シリンダ機構及び前記挟圧機構を制御する油圧制御装置とを設け、
    前記制御系は、前記シリンダ機構及び前記挟圧機構を有することを特徴とする無段変速機。
  3. 前記油圧切替制御手段は、前記エンジンの始動時に、予め設定された第1所定期間にわたって、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を大気に切り替えると共に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記潤滑系に切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の無段変速機。
  4. オイルの温度を検出する温度センサを設け、前記油圧切替制御手段は、前記温度センサが検出したオイルの温度が予め設定された所定温度より低いときに、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を大気に切り替えると共に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記潤滑系に切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の無段変速機。
  5. 前記油圧切替制御手段は、前記温度センサが検出したオイルの温度が所定温度以上のときに、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を前記オイル貯留部に切り替えると共に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記制御系に切り替えることを特徴とする請求項4に記載の無段変速機。
  6. 前記油圧切替制御手段は、前記第1切替弁により前記第2オイルポンプの吸入先を前記オイル貯留部に切り替えた後、予め設定された第2所定期間の経過後に、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先を前記制御系に切り替えることを特徴する請求項5に記載の無段変速機。
  7. 前記第1オイルポンプの吐出容量は、前記第2オイルポンプの吐出容量より少なく設定されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の無段変速機。
  8. 前記制御系から前記潤滑系にオイルを供給するオイル供給手段を設け、前記第2切替弁により前記第2オイルポンプの吐出先が前記制御系に切り替えられているとき、前記オイル供給手段により前記制御系のオイルを前記潤滑系に供給することを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の無段変速機。
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