JP2000179674A - パワートレインの制御装置 - Google Patents

パワートレインの制御装置

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JP2000179674A
JP2000179674A JP36171998A JP36171998A JP2000179674A JP 2000179674 A JP2000179674 A JP 2000179674A JP 36171998 A JP36171998 A JP 36171998A JP 36171998 A JP36171998 A JP 36171998A JP 2000179674 A JP2000179674 A JP 2000179674A
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Japan
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vehicle speed
ratio
speed
continuously variable
control
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JP36171998A
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English (en)
Inventor
Hidetoshi Nobemoto
秀寿 延本
Hiromasa Yoshida
裕将 吉田
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Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トロイダル式無段変速機構を備え、ギヤード
ニュートラル発進方式を採用する車両用パワートレイン
において、停車状態から発進した後のクリープ走行を適
切に行うことを課題とする。 【解決手段】 無段変速機構と、歯車機構と、これらで
構成される動力伝達経路を断接する摩擦要素とを有する
パワートレインにおいて、走行レンジが選択され、かつ
アクセルペダルが踏み込まれていない状態で、ブレーキ
ペダルの解放により発進したときに、クリープ車速が所
定の目標車速となるように、上記無段変速機構の変速比
や摩擦要素の締結力等を制御するように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用パワートレイ
ン、特に無段変速機構を用いたパワートレインの制御装
置に関し、車両の駆動技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両に搭載されるパワートレイン
として無段変速機構を用いたものが実用化されつつあ
り、その一例として特開平9−210191号公報に開
示されているものがある。これは、トロイダル式無段変
速機構と遊星歯車機構とを備えると共に、エンジン側か
ら駆動輪側への動力伝達経路として、無段変速機構と遊
星歯車機構とを経由する第1の経路と、無段変速機構の
みを経由する第2の経路とを設け、摩擦要素の選択的締
結により、第1の経路を動力伝達状態とすれば、低変速
比の前進と後退とが得られるローモードに設定され、ま
た第2の経路を動力伝達状態とすれば、高変速比の前進
が得られるハイモードに設定されるように構成したもの
である。
【0003】また、この形式のパワートレインにおいて
は、所謂ギヤードニュートラルの実現が可能となる。つ
まり、上記の構成の場合、ローモードを選択した状態で
無段変速機構の変速比を所定変速比に制御することによ
り、摩擦要素を締結した状態で出力回転数を0にするこ
とができるのである。その場合に、ブレーキペダルの踏
み込みにより車両の停車状態を維持しながら、無段変速
機構の変速比を上記所定変速比とは異なる変速比に設定
し、かつローモードを実現する摩擦要素を半クラッチ状
態に制御することにより、当該車両を前進させようとす
る力、即ちクリープ力を発生させることができ、この状
態からブレーキペダルを解放すれば、上記クリープ力に
よって当該車両が発進し、所謂クリープ走行に円滑に移
行することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように
してクリープ走行に円滑に移行させることができても、
その後、このクリープ走行状態を良好に維持継続するた
めにはどのように制御するのが最適であるかという課題
がある。つまり、トルクコンバータを備えた多段式の自
動変速機の場合、Dレンジ等の走行レンジでブレーキペ
ダルを解放することにより、自動的に発進してクリープ
走行に移行するのであるが、その場合の車速は任意に設
定することができず、常に最適な車速のクリープ走行が
実現されるとは限らないのが実情である。
【0005】そこで、本発明は、上記のような無段変速
機構を用いた車両用パワートレインにおいて、停車状態
から発進して加速するまでのクリープ走行状態を適切に
制御することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のような手段を用いる。
【0007】まず、本願の特許請求の範囲の請求項1に
記載の発明(以下、「第1発明」という)は、無段変速
機構と歯車機構とを経由する第1の経路と、上記無段変
速機構のみを経由する第2の経路とを有すると共に、こ
れらの経路を選択的に動力伝達状態とする摩擦要素が備
えられ、かつ該摩擦要素により第1の経路を動力伝達状
態とした状態で上記無段変速機構の変速比を所定変速比
に制御することによりニュートラル状態を実現できるよ
うに構成されたパワートレインにおいて、当該車両に設
定されたレンジの選択を検出するレンジ検出手段と、ア
クセルペダルの踏み込み状態を検出するアクセル検出手
段と、ブレーキペダルの踏み込み状態を検出するブレー
キ検出手段と、上記レンジ検出手段により走行レンジの
選択が検出され、かつアクセル検出手段によりアクセル
ペダルの非踏み込みが検出されている状態で、ブレーキ
検出手段によりブレーキペダルの解放が検出されたとき
に、所定の目標車速となるように車速を制御する車速制
御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】また、請求項2に記載の発明(以下、「第
2発明」という)は、上記第1発明において、無段変速
機構の変速比を調整する変速比調整手段を備えると共
に、車速制御手段は、該変速比調整手段を介して無段変
速機構の変速比を制御することにより、車速を目標車速
に制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】また、請求項3に記載の発明(以下、「第
3発明」という)は、上記第2発明において、車速制御
手段は、変速比調整手段を介して無段変速機構の変速比
をフィードバック制御することにより、車速を目標車速
に制御するようにしたことを特徴とする。
【0010】また、請求項4に記載の発明(以下、「第
4発明」という)は、上記第2発明または第3発明にお
いて、摩擦要素の締結力を調整する締結力調整手段を備
えると共に、車速制御手段は、無段変速機構の変速比を
制御することにより車速を目標車速に制御するときに、
上記締結力調整手段により摩擦要素を完全締結状態に保
持するようにしたことを特徴とする。
【0011】また、請求項5に記載の発明(以下、「第
5発明」という)は、上記第4発明において、車速制御
手段は、ブレーキペダルの解放検出前に、締結力調整手
段により摩擦要素を半締結状態に設定し、かつ変速比調
整手段により無段変速機構の変速比をニュートラル状態
が実現される所定変速比と異なる変速比に調整すると共
に、上記ブレーキペダルの解放を検出したときに、上記
締結力調整手段により摩擦要素を完全締結状態とした上
で、変速比調整手段により無段変速機構の変速比を制御
して、車速を目標車速に制御するようにしたことを特徴
とする。
【0012】一方、請求項6に記載の発明(以下、「第
6発明」という)は、上記第1発明において、摩擦要素
の締結力を調整する締結力調整手段を備えると共に、車
速制御手段は、該締結力調整手段を介して摩擦要素の締
結力を制御することにより、車速を目標車速に制御する
ようにしたことを特徴とする。
【0013】また、請求項7に記載の発明(以下、「第
7発明」という)は、上記第6発明において、車速制御
手段は、締結力調整手段を介して摩擦要素の締結力をフ
ィードバック制御することにより、車速を目標車速に制
御するようにしたことを特徴とする。
【0014】さらに、請求項8に記載の発明(以下、
「第8発明」という)は、上記第1発明から第7発明の
いずれかにおいて、走行路の勾配を検出する勾配検出手
段を備えると共に、車速制御手段は、該勾配検出手段に
よって検出される走行路の勾配に応じて目標車速を設定
するようにしたことを特徴とする。
【0015】そして、請求項9に記載の発明(以下、
「第9発明」という)は、同じく第1発明から第7発明
までのいずれかにおいて、ハンドル舵角を検出する舵角
検出手段を備えると共に、車速制御手段は、該ハンドル
舵角検出手段によって検出されるハンドル舵角に応じて
目標車速を設定するようにしたことを特徴とする。
【0016】上記の構成により、本願各発明によれば次
の作用が得られる。
【0017】まず、第1発明によれば、走行レンジが選
択され、かつアクセルペダルが解放されている状態で、
ブレーキペダルが踏み込まれている状態から解放された
ときに、無段変速機構の変速比制御および摩擦要素の締
結力制御等により当該車両が自動的に発進してクリープ
走行状態に移行することになるが、このとき、車速制御
手段により、クリープ車速、即ちクリープ走行での車速
が所定の目標車速に制御されることにななる。
【0018】その場合に、第2発明によれば、上記クリ
ープ車速が無段変速機構の変速比制御によって行われる
ことにより、このクリープ車速の制御が応答性よく行わ
れ、さらに、第3発明によれば、その変速比制御による
クリープ車速の制御がフィードバック制御により、緻密
に行われることになる。
【0019】また、第4発明によれば、摩擦要素の締結
力を調整する締結力調整手段が備えられている場合にお
いて、無段変速機構の変速比制御によりクリープ車速を
制御するときに、上記締結力調整手段により摩擦要素が
完全締結状態に保持され、無段変速機構の変速比制御の
みによってクリープ車速が制御されることになる。
【0020】その場合に、第5発明によれば、ブレーキ
ペダルの解放前に、締結力調整手段により摩擦要素が半
締結状態に調整されると共に、変速比調整手段により無
段変速機構の変速比がニュートラル状態が実現される所
定変速比と異なる変速比に調整されることにより、当該
車両を前進させようとするクリープ力が発生することに
なり、したがって、ブレーキペダルが解放されたとき
に、自動的に車両が発進してクリープ走行状態に円滑に
移行することになるが、このとき、上記締結力調整手段
により摩擦要素が完全締結状態とされ、変速比調整手段
により無段変速機構の変速比を制御することによってク
リープ車速が制御されるので、このクリープ車速が応答
性よく行われることになる。
【0021】一方、第6発明によれば、車速制御手段に
よってクリープ車速を制御するときに、締結力調整手段
により摩擦要素の締結力を調整することによってクリー
プ車速が目標車速に制御されるので、この制御が安定し
て行われると共に、摩擦要素の振動吸収作用が得られ
て、エンジン振動の車体への伝達が抑制されることにな
る。その場合に、第7発明によれば、摩擦要素の締結力
の制御によるクリープ車速の制御がフィードバック制御
により緻密に行われることになる。
【0022】さらに、第8発明によれば、クリープ走行
時の目標車速が走行路の勾配に応じて設定されるので、
例えば上り坂でクリープ車速が極端に低下したり、或は
下り坂でクリープ車速が著しく速くなるといった状態を
回避することが可能となる。
【0023】また、第9発明によれば、同じくクリープ
走行時の目標車速がハンドル舵角に応じて設定されるの
で、例えばハンドル舵角が大きい旋回時にクリープ車速
を低くして旋回性を向上させるといった制御が可能とな
る。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係る
パワートレインについて説明する。
【0025】図1、図2に示すように、本実施の形態に
係るパワートレイン10は、エンジン1の出力軸2にト
ーショナルダンパ3を介して連結されたインプットシャ
フト11と、該シャフト11の外側に遊嵌合された中空
のプライマリシャフト12と、これらのシャフト11,
12に平行に配置されたセカンダリシャフト13とを有
し、これらのシャフト11〜13が、いずれも当該車両
の横方向に延びるように配置されている。
【0026】また、このパワートレイン10における上
記インプットシャフト11およびプライマリシャフト1
2の軸線上には、トロイダル式の第1、第2無段変速機
構20,30と、これらに軸方向の荷重を付与して動力
伝達を可能とするローディングカム機構40とが配設さ
れていると共に、セカンダリシャフト13の軸線上に
は、遊星歯車機構50と、ロークラッチ60およびハイ
クラッチ70とが配設されている。そして、インプット
シャフト11およびプライマリシャフト12の軸線と、
セカンダリシャフト13の軸線との間に、ローモードギ
ヤ列80と、ハイモードギヤ列90とが介設されてい
る。
【0027】上記第1、第2無段変速機構20,30は
ほぼ同一の構成であり、いずれも、対向面がトロイダル
面とされた入力ディスク21,31と出力ディスク2
2,32とを有し、これらの各対向トロイダル面間に、
両ディスク21,22間および31,32間でそれぞれ
動力を伝達するパワーローラ23,33が2つづつ介設
されている。
【0028】そして、エンジン1から遠い方に配置され
た第1無段変速機構20は、入力ディスク21が反エン
ジン側に、出力ディスク22がエンジン側に配置され、
また、エンジン1に近い方に配置された第2無段変速機
構30は、入力ディスク31がエンジン側に、出力ディ
スク32が反エンジン側に配置されており、かつ、両変
速機構20,30の入力ディスク21,31はプライマ
リシャフト12の両端部にそれぞれ結合され、また、出
力ディスク22,32は一体化されて、該プライマリシ
ャフト12の中間部に回転自在に支持されている。
【0029】また、インプットシャフト11の反エンジ
ン側の端部には上記ローモードギヤ列80を構成する第
1ギヤ81が結合され、該第1ギヤ81と第1無段変速
機構20の入力ディスク21との間に上記ローディング
カム機構40が介設されており、さらに、第1、第2無
段変速機構20,30の一体化された出力ディスク2
2,32の外周に、上記ハイモードギヤ列90を構成す
る第1ギヤ91が設けられている。
【0030】一方、セカンダリシャフト13の反エンジ
ン側の端部には、上記ローモードギヤ列80を構成する
第2ギヤ82が回転自在に支持されて、アイドルギヤ8
3を介して上記第1ギヤ81に連結されていると共に、
該セカンダリシャフト13の中間部には上記遊星歯車機
構50が配設されている。そして、該遊星歯車機構50
のピニオンキャリヤ51と上記ローモードギヤ列80の
第2ギヤ82との間に、これらを連結しもしくは切断す
るロークラッチ60が介設されている。
【0031】また、遊星歯車機構50のエンジン側に
は、ハイモードギヤ列90を構成する第2ギヤ92が回
転自在に支持されて、上記第1、第2無段変速機構2
0,30における出力ディスク22,32の外周に設け
られた第1ギヤ91に噛み合わされていると共に、該第
2ギヤ92と遊星歯車機構50のサンギヤ52とが連結
されており、さらに該遊星歯車機構50のインターナル
ギヤ53がセカンダリシャフト13に結合されている。
そして、該遊星歯車機構50のエンジン側に、上記ハイ
モードギヤ列90の第2ギヤ92とセカンダリシャフト
13とを連結しもしくは切断するハイクラッチ70が介
設されている。
【0032】さらに、上記セカンダリシャフト13のエ
ンジン側の端部に、第1、第2ギヤ4a,4bとアイド
ルギヤ4cとでなる出力ギヤ列4を介してディファレン
シャル装置5が連結されており、このディファレンシャ
ル装置5から左右に延びる駆動軸6a,6bが左右の駆
動輪(図示せず)に連結されている。
【0033】なお、インプットシャフト11の反エンジ
ン側の端部にはオイルポンプ100が配置され、該イン
プットシャフト11により上記ローモードギヤ列80の
第1ギヤ81を介して駆動されるようになっている。
【0034】次に、上記第1、第2無段変速機構20,
30の構成を第1無段変速機構20を例にとってさらに
詳しく説明する。
【0035】図3に示すように、一対のパワーローラ2
3,23は、入、出力ディスク21,22のほぼ半径方
向に延びるシャフト24,24を介してトラニオン2
5,25にそれぞれ支持され、入、出力ディスク21,
22の互いに対向するトロイダル面の円周上の180°
反対側にほぼ水平姿勢で上下に平行に配置されており、
その周面の180°反対側の2箇所で上記両ディスク2
1,22のトロイダル面にそれぞれ対接している。
【0036】また、上記トラニオン25,25は、当該
パワートレイン10のケース101に取り付けられた左
右の支持部材26,26間に支持され、両ディスク2
1,22の接線方向であってパワーローラ23,23の
シャフト24,24に直交する水平方向の軸心X,X回
りの回動および該軸心X,X方向の直線往復運動が可能
とされている。そして、これらのトラニオン25,25
に、上記軸心X,Xに沿って一側方に延びるロッド2
7,27が連設されていると共に、上記ケース101の
側面には、これらのロッド27,27およびトラニオン
25,25を介して上記パワーローラ23,23を傾転
させる変速制御ユニット110が取り付けられている。
【0037】この変速制御ユニット110は、油圧制御
部111とトラニオン駆動部112とを有し、トラニオ
ン駆動部112には、上下のトラニオン25,25のロ
ッド27,27のそれぞれに対向状に取り付けられた増
速用および減速用のピストン113,114が配置さ
れ、各対向するピストン113,114により、増速用
および減速用油圧室115,116がそれぞれ形成され
ている。
【0038】なお、上方に位置するトラニオン25につ
いては、増速用油圧室115がパワーローラ23側に、
減速用油圧室116が反パワーローラ23側にそれぞれ
配置され、また、下方に位置するトラニオン25につい
ては、増速用油圧室115が反パワーローラ23側に、
減速用油圧室116がパワーローラ23側にそれぞれ配
置されている。
【0039】そして、上記油圧制御部111で生成され
た増速用油圧PHが、油路117,118を介して上下
のトラニオン25,25の増速用油圧室115,115
に供給され、また、同じく油圧制御部111で生成され
た減速用油圧PLが、図示しない油路を介して上下のト
ラニオン25,25の減速用油圧室116,116に供
給され、これらの油圧PH,PLの制御により、当該変
速機構20,30の変速比が制御されるようになってい
る。
【0040】ここで、第1無段変速機構20について変
速比制御の具体的動作を説明すると、まず、図3に示す
油圧制御部111により、上下のトラニオン25,25
の増速用油圧室115,115に供給されている増速用
油圧PHが、減速用油圧室116,116に供給されて
いる減速用油圧PLに対して所定の釣り合い状態より相
対的に高くされると、上方のトラニオン25は図面上、
右側に、下方のトラニオン25は左側にそれぞれ水平移
動することになる。
【0041】このとき、図示されている出力ディスク2
2がx方向に回転しているものとすると、上方のパワー
ローラ23は、右側への移動により該出力ディスク22
から下向きの力を受け、図面の手前側にあって反x方向
に回転している入力ディスク21からは上向きの力を受
けることになる。また、下方のパワーローラ23は、左
側への移動により、出力ディスク22から上向きの力を
受け、入力ディスク21からは下向きの力を受けること
になる。
【0042】その結果、上下のパワーローラ23,23
とも、入力ディスク21との接触位置は半径方向の外側
に、出力ディスク22との接触位置は半径方向の内側に
移動するように傾転し、当該変速機構20の変速比が小
さくなる(増速)。
【0043】また、上記とは逆に、上下のトラニオン2
5,25の減速用油圧室116,116に供給されてい
る減速用油圧PLが、増速用油圧室115,115に供
給されている増速用油圧PHに対して所定の釣り合い状
態より相対的に高くされると、上方のトラニオン25は
図面上、左側に、下方のトラニオン25は右側にそれぞ
れ水平移動することにより、上方のパワーローラ23は
出力ディスク22から上向きの力を、入力ディスク21
から下向きの力を受け、また、下方のパワーローラ23
は、出力ディスク22から下向きの力を、入力ディスク
21から上向きの力を受けることになる。その結果、上
下のパワーローラ23,23とも、入力ディスク21と
の接触位置は半径方向の内側に、出力ディスク22との
接触位置は半径方向の外側に移動するように傾転し、当
該変速機構20の変速比が大きくなる(減速)。
【0044】なお、このような油圧制御部111による
増速用および減速用油圧PH,PLの供給制御について
は、後述する油圧制御回路の説明で詳しく述べる。
【0045】以上のような第1無段変速機構20につい
ての構成および作用は、第2無段変速機構30について
も同様である。そして、図1、図2に示すように、イン
プットシャフト11上に遊嵌合された中空のプライマリ
シャフト12の両端部に、第1、第2無段変速機構2
0,30の入力ディスク21,31がそれぞれスプライ
ン嵌合されて、これらの入力ディスク21,31が常に
同一回転するようになっており、また、前述のように、
両変速機構20,30の出力ディスク22,32は一体
化されているので、両変速機構20,30の出力側の回
転速度も常に同一となる。したがって、上記のようなパ
ワーローラ23,33の油圧制御による第1、第2無段
変速機構20,30の変速比制御も、変速比が常に同一
に保持されるように行われることになる。
【0046】次に、上記変速制御ユニット110と、ケ
ース101の下部に取り付けられたクラッチ制御ユニッ
ト120(図3参照)とによって構成される当該パワー
トレイン10の油圧制御回路について説明する。
【0047】図4に示すように、この油圧制御回路20
0には、オイルポンプ100から吐出される作動油の圧
力を所定のライン圧に調整してメインライン201に出
力するレギュレータバルブ202と、該メインライン2
01から供給されるライン圧を元圧として所定のリリー
フ圧を生成し、これをリリーフ圧ライン203に出力す
るリリーフバルブ204と、運転者の切り換え操作によ
ってDレンジ、Rレンジ、NレンジおよびPレンジの選
択を可能とするマニュアルバルブ205とが備えられて
いる。
【0048】これらのバルブのうち、マニュアルバルブ
205は、上記メインライン201を、Dレンジでは第
1、第2出力ライン206,207に、Rレンジでは第
1、第3出力ライン206,208にそれぞれ連通させ
ると共に、NレンジおよびPレンジではライン圧を遮断
するように動作する。
【0049】また、上記レギュレータバルブ202およ
びリリーフバルブ204には、ライン圧制御用リニアソ
レノイドバルブ209およびリリーフ圧制御用リニアソ
レノイドバルブ210がそれぞれ備えられていると共
に、上記ポンプ100の吐出圧を元圧として一定圧を生
成するレデューシングバルブ211が備えられ、このレ
デューシングバルブ211で生成された一定圧に基づい
て、上記リニアソレノイドバルブ209,210がそれ
ぞれ制御圧を生成するようになっている。
【0050】そして、これらの制御圧が上記レギュレー
タバルブ202およびリリーフバルブ204の制御ポー
ト202a,204aに供給されることにより、ライン
圧およびリリーフ圧が、各リニアソレノイドバルブ20
9,210に出力される制御信号によってそれぞれ調整
されることになる。
【0051】さらに、レデューシングバルブ211で生
成された一定圧は、フェールセーフバルブ212を作動
させるオンオフソレノイドバルブ213にも導かれてい
る。このオンオフソレノイドバルブ213は、通常時は
オンとされて上記一定圧をフェールセーフバルブ212
の制御ポート212aに供給し、これにより該バルブ2
12のスプールを右側に移動させる一方、フェールセー
フ時にはオフとされて、上記一定圧をフェールセーフバ
ルブ212の制御ポート212aからドレンし、これに
より該バルブ212のスプールを左側に移動させるよう
になっている。
【0052】また、この油圧制御回路200には、変速
制御用として、上記ライン圧およびリリーフ圧に基づい
て、前進時および後退時のそれぞれにおいて、増速用油
圧PHおよび減速用油圧PLを生成する前進用三層弁2
20および後退用三層弁230と、これらの三層弁22
0,230を選択的に作動させるシフトバルブ240と
が備えられている。
【0053】このシフトバルブ240は、一端の制御ポ
ート240aに制御圧としてライン圧が供給されるか否
かによりスプールの位置が決定され、ライン圧が供給さ
れていないときは、該スプールが右側に位置して、上記
メインライン201を前進用三層弁220に通じるライ
ン圧供給ライン241に連通させ、また、ライン圧が供
給されたときには、スプールが左側に位置して、メイン
ライン201を後退用三層弁230に通じるライン圧供
給ライン242に連通させるように作動する。
【0054】ここで、シフトバルブ240の制御ポート
240aにライン圧が供給されるのは、通常時において
上記フェールセーフバルブ212のスプールが右側に位
置しており、かつマニュアルバルブ205がRレンジに
位置しているときであり、このとき、マニュアルバルブ
205から第3出力ライン208およびフェースセーフ
バルブ212を介して該シフトバルブ240の制御ポー
ト240aにライン圧が供給される。そして、通常時で
あってフェールセーフバルブ212のスプールが右側に
位置していても、マニュアルバルブ205がDレンジに
位置しているときには、該シフトバルブ240の制御ポ
ート240aにはライン圧は供給されない。また、フェ
ールセーフ制御の実行時には、上記のように、オンオフ
ソレノイドバルブ213がフェールセーフバルブ212
の制御ポート212aから作動圧をドレンすることによ
り該バルブ212のスプーが左側に移動し、シフトバル
ブ240と第3出力ライン208との間が遮断されるか
ら、マニュアルバルブ205がRレンジに位置していて
も、シフトバルブ240の制御ポート240aにはライ
ン圧が供給されるないことになる。
【0055】また、上記前進用および後退用の三層弁2
20,230は同一の構成であって、ボア221,23
1に軸方向に移動可能にスリーブ222,232を嵌合
すると共に、該スリーブ222,232に同じく軸方向
に移動可能にスプール223,233をそれぞれ嵌合し
た構成とされ、いずれも、図3に示す変速制御ユニット
110における油圧制御部111のバルブボディ111
aに収納されている。
【0056】また、これらの三層弁220,230の中
央部には、上記シフトバルブ240から導かれたライン
圧供給ライン241,242が接続されたライン圧ポー
ト224,234が設けられていると共に、両端部に
は、上記リリーフ圧ライン203が分岐されてそれぞれ
接続された第1、第2リリーフ圧ポート225,22
6,235,236が設けられている。さらに、上記ラ
イン圧ポート224,234と第1リリーフ圧ポート2
25,235との間には増速圧ポート227,237
が、同じくライン圧ポート224,234と第2リリー
フ圧ポート226,236との間には減速圧ポート22
8,238が、それぞれ設けられている。
【0057】そして、前進用および後退用三層弁22
0,230の増速圧ポート227,237からそれぞれ
導かれたライン243,244と、同じく前進用および
後退用三層弁220,230の減速圧ポート228,2
38からそれぞれ導かれたライン245,246とが上
記シフトバルブ240に接続されており、該シフトバル
ブ240のスプールが右側に位置するときに、前進用三
層弁220の増速圧ポート227および減速圧ポート2
28から導かれたライン243,245が増速用ライン
247および減速用ライン248にそれぞれ接続され、
上記増速用油圧室115,115および減速用油圧室1
16,116にそれぞれ連通する。
【0058】また、シフトバルブ240のスプールが左
側に位置するときは、後退用三層弁230の増速圧ポー
ト237および減速圧ポート238から導かれたライン
244,246が上記増速用ライン247および減速用
ライン248にそれぞれ接続されて、上記増速用油圧室
115,115および減速用油圧室116,116にそ
れぞれ連通するようになっている。
【0059】ここで、これらの三層弁220,230の
作動を図5を用いて説明する。なお、図5においては、
三層弁220,230の向きが図4とは左右反対になっ
ている。
【0060】図示のように、スリーブ222とスプール
223の位置関係が中立位置にある状態から、例えば前
進用三層弁220のスリーブ222が相対的に図面上、
左側に移動すると、ライン圧ポート224と増速圧ポー
ト227との連通度、および第2リリーフ圧ポート22
6と減速圧ポート228との連通度がそれぞれ増大し、
逆にスリーブ222が相対的に右側に移動すると、上記
ライン圧ポート224と減速圧ポート228との連通
度、および第1リリーフ圧ポート225と増速圧ポート
227との連通度がそれぞれ増大する。したがって、前
者の場合は、増速用油圧PHが上昇して減速用油圧PL
が低下し、後者の場合は、減速用油圧PLが上昇して増
速用油圧PHが低下することになる。
【0061】そして、上記の作用は後退用三層弁230
についても同様であり、これらの三層弁220,230
のスリーブ222,232を上記のように作動させるス
テップモータ251,252が備えられ、それぞれリン
ク部材253,254を介して前進用および後退用三層
弁220,230のスリーブ222,232に連結され
ている。
【0062】また、これらのステップモータ251,2
52によるスリーブ222,232の移動に応じて、ス
プール223,233をスプリング229,239のバ
ネ力に抗して軸方向に移動させるカム機構260が備え
られている。
【0063】このカム機構260は、図5、図6に示す
ように、一方の端面が螺旋面状のカム面261aとされ
て、第2無段変速機構30の上方に位置するトラニオン
35のロッド37の端部に取り付けられたプリセスカム
261と、前進用および後退用三層弁220,230の
スプール223,233の一端側にこれらに直交する方
向に配置されて、油圧制御部111のバルブボディ11
1aに回動自在に支持されたシャフト262と、このシ
ャフト262の一端部に取り付けられて、揺動端が上記
プリセスカム261のカム面261aに当接された従動
レバー263と、同じくシャフト262に取り付けられ
て、揺動端が上記前進用および後退用三層弁220,2
30のスプール223,233の一端に設けられた切り
込み223a,233aに係合された前進用および後退
用の駆動レバー264,265とで構成されている。
【0064】そして、上記増速用油圧PHおよび減速用
油圧PLの制御によって第2無段変速機構30における
上方のパワーローラ33が傾転したときに、これに伴っ
て上方に位置するトラニオン35およびロッド37が軸
心X回りに一体的に回転することにより、上記プリセス
カム261もこれらと一体的に回動し、そのカム面26
1aに揺動端が当接した従動レバー263が所定量揺動
すると共に、シャフト262を介して前進用および後退
用の駆動レバー264,265も同じ角度だけ揺動し、
その結果、その揺動角度に応じた量だけ前進用および後
退用三層弁220,230のスプール223,233が
軸方向に移動することになる。
【0065】したがって、これらのスプール223,2
33の位置は、第2無段変速機構30のパワーローラ3
3(および第1無段変速機構20のパワーローラ23)
の傾転角、換言すればこれらの変速機構20,30の変
速比に常に対応することになる。
【0066】ここで、無段変速機構20,30の変速比
(以下、「トロイダルレシオ」という)の制御動作を、
前進時を例にとって説明する。
【0067】まず、油圧制御回路200におけるライン
圧制御用リニアソレノイドバルブ209およびリリーフ
圧制御用リニアソレノイドバルブ210により、レギュ
レータバルブ202およびリリーフバルブ204の制御
圧が生成されて、その制御圧に応じたライン圧とリリー
フ圧とが生成される。
【0068】これらの油圧のうち、ライン圧は、メイン
ライン201からシフトバルブ240およびライン24
1を介して三層弁220のライン圧ポート224に供給
される。また、リリーフ圧は、ライン203を介して三
層弁220の第1、第2リリーフ圧ポート225,22
6に供給される。そして、このライン圧とリリーフ圧と
に基づき、ステップモータ251による三層弁220の
制御により変速制御ユニット110の増速用油圧室11
5,115および減速用油圧室116,116にそれぞ
れ供給される増速用油圧PHおよび減速用油圧PLの差
圧ΔP(=PH−PL)の制御が行われる。
【0069】この差圧制御は、図6に示すように、無段
変速機構20,30のトラニオン25に作用するトラク
ション力Tに抗して該トラニオン25ないしパワーロー
ラ23を所定の中立位置に保持すると共に、この中立位
置からトラニオン25およびパワーローラ23を軸心X
方向に沿って移動させて該パワーローラ23を傾転させ
ることにより、トロイダルレシオを変化させるために行
われるものである。
【0070】つまり、変速機構20,30において、入
力ディスク21,31のa,a方向の回転によりパワー
ローラ23,33がb,b方向に駆動されるとき、該パ
ワーローラ23,33およびこれを支持するトラニオン
25,35には、これらを入力ディスク21,31の回
転方向b,bと同方向に引きずろうとする力が作用す
る。また、このパワーローラ23,33のa,a方向の
回転により出力ディスク22,32がc方向(図3のx
方向)に駆動されるとき、その反力として、出力ディス
ク22,32の回転方向cと反対方向の力が該パワーロ
ーラ23,33ないしトラニオン25,35に作用す
る。その結果、パワーローラ23,33およびトラニオ
ン25,35には、図示の方向のトラクション力T,T
が作用することになる。
【0071】そこで、このトラクション力T,Tに抗し
てパワーローラ23を中立位置に保持するために、各ト
ラニオン25,35に設けられた増速用および減速用油
圧室115,116に、差圧ΔPが上記トラクション力
Tと釣り合う大きさとなるように、増速用油圧PHと減
速用油圧PLとをそれぞれ供給するのである。
【0072】そして、今、この状態から例えばトロイダ
ルレシオを小さく(増速)するものとし、ステップモー
タ251により、前進用三層弁220のスリーブ222
を、図5において左側(図4では右側)に移動させれ
ば、該三層弁220のライン圧ポート224と増速圧ポ
ート227との連通度、および第2リリーフ圧ポート2
26と減速圧ポート228との連通度が大きくなること
により、図4に示す増速圧ライン247から上記増速用
油圧室115,115に供給されている増速用油圧PH
は増圧され、減速圧ライン248から上記減速用油圧室
116,116に供給されている減速用油圧PLは減圧
されて、差圧ΔPが大きくなり、その結果、この差圧Δ
Pが上記トラクション力Tに打ち勝って、トラニオン2
5,35ないしパワーローラ23,33が図6に示す
d,d方向に移動することになる。
【0073】そして、この移動により、パワーローラ2
3,33は、入力ディスク21,31との接触位置が半
径方向の外側に、出力ディスク22,32との接触位置
が半径方向の内側にそれぞれ変位する方向に傾転して、
第1、第2無段変速機構20,30が増速され、トロイ
ダルレシオが小さくなるのである。
【0074】また、第2無段変速機構30におけるパワ
ーローラ33の上記のような傾転により、カム機構26
0におけるプリセスカム261が同方向(図5に示すe
方向)に同じ角度だけ回転し、これに伴って該カム機構
260における従動レバー263、シャフト262およ
び駆動レバー264がいずれも図6に示すf方向に回動
する。
【0075】その結果、三層弁220のスプール223
は、スプリング229のバネ力によってg方向、即ち図
5の左方向に移動することになるが、この方向は上記ス
テップモータ251によりスリーブ222を移動させた
方向であり、したがって、上記のように、一旦、増大し
たライン圧ポート224と増速圧ポート227との連通
度、および第2リリーフ圧ポート226と減速圧ポート
228との連通度が当初の中立状態に復帰することにな
る。
【0076】これにより、上記差圧ΔPは再びトラクシ
ョン力Tと釣り合う状態となって上記のような変速動作
が終了し、無段変速機構20,30の変速比、即ちトロ
イダルレシオは所定量変化した上で固定されることにな
る。
【0077】その場合に、この変速動作は、上記スプー
ル223がスリーブ222との位置関係において所定の
中立状態となる位置まで移動した時点で終了することに
なるが、その位置はステップモータ251によりスリー
ブ222を移動させた位置であり、また、カム機構26
0を介してパワーローラ23,33およびトラニオン2
5,35の傾転角に対応付けられた位置であるから、ス
リーブ222の位置がパワーローラ23,33およびト
ラニオン25,35の傾転角に対応することになる。そ
の結果、ステップモーター251の制御量が第1、第2
無段変速機構20,30の変速比に対応することにな
り、該ステップモーター251に対するパルス制御によ
り、トロイダルレシオが制御されることになる。
【0078】なお、以上の動作はステップモータ251
により三層弁220のスリーブ222を反対側に移動さ
せた場合も同様に行われ、この場合、無段変速機構20
の変速比は大きくなる(減速)。
【0079】ここで、ステップモータ251,252に
出力する制御信号のパルス数に対するトロイダルレシオ
の変化の特性は例えば図7に示すようになり、パルス数
の増加に応じて変速比が小さくなる方向(ハイ側)に変
化する。
【0080】一方、図4に示すように、上記油圧制御回
路200には、以上のような変速比制御用の構成に加え
て、ロークラッチ60およびハイクラッチ70の制御用
として、2個のデューティソレノイドバルブ271,2
72が備えられており、上記マニュアルバルブ205か
ら導かれた第1出力ライン206がロークラッチ用デュ
ーティソレノイドバルブ271に、第2出力ライン20
7がハイクラッチ用デューティソレノイドバルブ272
にそれぞれ接続されている。
【0081】そして、ロークラッチ用デューティバルブ
271により、上記第1出力ライン206からのライン
圧が調整されてロークラッチ60の締結圧(以下、「ロ
ークラッチ圧」という)が生成され、これがフェルセー
フバルブ273およびロークラッチライン274を介し
てロークラッチ60の油圧室に供給されることにより、
その大きさに応じた締結力でロークラッチ60が締結さ
れる。また、ハイクラッチ用デューティソレノイドバル
ブ272の作動により、上記第2出力ライン207から
のライン圧が調整されてハイクラッチ70の締結圧(以
下、「ハイクラッチ圧」という)が生成され、これがハ
イクラッチライン275を介してハイクラッチ70の油
圧室に供給されることにより、その大きさに応じた締結
力でハイクラッチ70が締結されるようになっている。
【0082】その場合に、これらのデューティソレノイ
ドバルブ271,272は、その制御信号のデューティ
率が100%のときにはクラッチ圧を出力せず(全
閉)、0%のときに供給されるライン圧をそのままクラ
ッチ圧として出力する(全開)。そして、その中間のデ
ューティ率では、その値に応じたクラッチ圧を生成する
ようになっている。
【0083】ここで、上記ロークラッチライン274お
よびハイクラッチライン275にはそれぞれアキュムレ
ータ276,277が備えられ、ロークラッチ60およ
びハイクラッチ70への締結圧の供給を緩やかに行わせ
ることにより、これらのクラッチ60,70の締結時に
おけるショックの発生を抑制するようになっている。
【0084】また、この油圧制御回路200には、レギ
ュレータバルブ202のドレンポートから導かれた潤滑
ライン281が設けられており、この潤滑ライン281
に、潤滑油圧を所定値に調整するリリーフバルブ282
や、第1、第2開閉バルブ283,284等が配置され
て、第1、第2無段変速機構20,30や遊星歯車機構
50等のパワートレイン各部に対する潤滑油の供給を制
御するようになっている。
【0085】この実施の形態に係るパワートレイン10
は、以上のような機械的構成と油圧制御回路200とを
有すると共に、この油圧制御回路200を用いて第1、
第2無段変速機構20,30の変速比制御およびクラッ
チ60,70の締結制御を行うことにより、パワートレ
イン10の全体としての変速比(以下、「ユニットレシ
オ」という)の制御を行うコントロールユニット300
が備えられている。
【0086】このコントロールユニット300には、図
8に示すように、当該車両の車速を検出する車速センサ
301、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数セ
ンサ302、スロットル開度を検出するスロットル開度
センサ303、運転者によって選択されているレンジを
検出する選択レンジセンサ304、油圧制御回路200
におけるライン圧を検出するライン圧センサ305、作
動油の温度を検出する油温センサ306、第1、第2無
段変速機構20,30の入力回転数および出力回転数を
それぞれ検出する入力回転数センサ307および出力回
転数センサ308、アクセルペダルの非踏み込みを検出
するアイドルスイッチ309、ブレーキペダルの踏み込
みを検出するブレーキスイッチ310、ハンドル舵角を
検出する舵角センサ311、並びに当該車両の路面の勾
配を検出する勾配センサ312等からの信号が入力され
るようになっている。
【0087】そして、これらのセンサやスイッチ301
〜312からの信号が示す当該車両ないしエンジンの運
転状態に応じて、ライン圧制御用およびリリーフ圧制御
用のリニアソレノイドバルブ209,210、フェール
セーフ用オンオフソレノイドバルブ213、ロークラッ
チ60用およびハイクラッチ70用のデューティソレノ
イドバルブ271,272、潤滑制御用の第1、第2開
閉バルブ283,284、並びに前進用三層弁220用
および後退用三層弁230用のステップモータ251,
252等に制御信号を出力するようになっている。
【0088】ここで、このコントロールユニット300
によるユニットレシオの制御を簡単に説明する。
【0089】まず、Nレンジにおいては、ロークラッチ
60及びハイクラッチ70の両者が切断される。そのた
め、インプットシャフト11側からセカンダリシャフト
側に伝達される動力は、遊星歯車機構50や該セカンダ
リシャフト13には伝達されず、したがって、差動装置
5から駆動輪へ動力が出力されることはなない。
【0090】このとき、遊星歯車機構50においては、
ハイモードギヤ列90からの動力によりサンギヤ52が
駆動されるが、ローモードギヤ列80からの動力はロー
クラッチ60の入力側の回転部材60aまで伝達される
だけで、ピニオンキャリヤ51へは伝達されず、また、
セカンダリシャフト13に結合されたインターナルギヤ
53は固定されているから、上記ピニオンキャリヤ51
は、サンギヤの回転に連動して無負荷状態で回転してい
る状態にある。
【0091】そして、この状態で、トロイダルレシオを
所定値に設定することにより、上記ピニオンキャリヤ5
1の回転速度を、ロークラッチ60の入、出力側回転部
材60a,60bの回転速度が等しくなる速度に制御す
ることができ、換言すれば、トロイダルレシオを上記所
定値に制御することにより、ロークラッチ60を接続し
ても、インターナルギヤ53ないしセカンダリシャフト
13の回転を0とすることができ、所謂ギヤードニュー
トラル状態が得られるのである。
【0092】なお、このパワートレイン10において
は、後述するように、ロークラッチ60およびハイクラ
ッチ70を切断したNレンジにおいて、トロイダルレシ
オをこのギヤードニュートラル状態が得られる値(以
下、「GNレシオ」という)には制御せず、これとは異
なる値に制御するようになっている。
【0093】そして、このNレンジから発進に際してD
レンジ等の走行レンジに切り換えたときに、トロイダル
レシオが上記GNレシオに近づくように制御されると共
に、このGNレシオもしくはこれに近い値となった時点
でロークラッチ60が締結される。このとき、ユニット
レシオは、図9に符号ア、イで示すように無限大となる
が、この状態から上記ステップモータ251,252に
対する制御信号のパルス数を減少させれば、トロイダル
レシオが大きくなる方向(ロー側)に変化して、上記サ
ンギヤ52への入力回転速度が低下することにより、遊
星歯車機構50のインターナルギヤ53は前進方向に回
転し始める。これにより、パルス数の減少に従ってユニ
ットレシオが小さくなる前進ローモード特性Lが実現さ
れる。
【0094】また、この前進ローモードで発進時から次
第にユニットレシオが小さくなり、図9に符号ウで示す
ように、所定の切り換えレシオに達すると、上記ローク
ラッチ60が切断されると同時にハイクラッチ70が締
結され、インプットシャフト11からの動力が第1、第
2無段変速機構20,30、ハイモードギヤ列90およ
び該ハイクラッチ70を介してセカンダリシャフト13
に伝達されることになる。この状態では、ハイモードギ
ヤ列90のギヤ比が1であるとすれば、ユニットレシオ
はトロイダルレシオに等しくなり、図7に示すトロイダ
ルレシオの特性と同一のハイモード特性Hが実現される
ことになる。
【0095】なお、上記のギヤードニュートラルの状態
からステップモータ251,252に対する制御信号の
パルス数を増加させることによりトロイダルレシオを小
さくする方向(ハイ側)に変化させて、上記サンギヤ5
2への入力回転速度を上昇させれば、遊星歯車機構50
のインターナルギヤ51は後退方向に回転し始め、パル
ス数の増加に従ってユニットレシオの絶対値が小さくな
るRレンジでのローモード特性Rが得られる。
【0096】次に、上記のような変速制御のうち、特に
NレンジからDレンジ等の走行レンジに切り換えたの
ち、当該車両が発進するまでの制御の動作を詳しく説明
する。
【0097】この制御は図10、図11のフローチャー
トおよび図12のタイムチャートに従って行われ、ま
ず、ステップS1で、図8に示す各センサやスイッチ3
01〜312からの信号に基づき、現時点におけるトロ
イダルレシオR、エンジンのスロットル開度TVO、運
転者によって選択されているレンジ、油圧制御回路20
0におけるライン圧PL、作動油の油温TMP、路面の
勾配α、ハンドル舵角β、アイドルスイッチ309及び
ブレーキスイッチ310のON,OFF状態等の各種の
状態量を検出する。
【0098】次に、ステップS2で、上記ライン圧PL
が所定値PL1以上か否か、即ちライン圧PLが適性値
に調整されているか否かを判定する。そしてPL≧PL
1であって、以下の制御を正しく行うことができる場合
には、次にステップS3で選択レンジがNレンジか否か
を判定する。なお、ライン圧PLが所定値PL1未満の
ときの制御については後述する。
【0099】そして、選択レンジがNレンジの場合に
は、ステップS4で、トロイダルレシオRの目標値R0
を所定のNレンジ用の目標レシオRaに設定すると共
に、ステップS5で、ロークラッチ60用のデューティ
ソレノイドバルブ271に出力するデューティ率Dを所
定値Da%に設定する。
【0100】ここで、図12および図13等に示すよう
に、上記Nレンジの目標レシオRaは、前述のGNレシ
オRgnより所定量ロー側(低変速比側)であって、1
よりもハイ側(高変速比側)の値に設定されている。ま
た、上記デューティソレノイドバルブ271に出力する
デューティ率Da%は100%であって、該バルブ27
1を全閉状態とするようになっている。
【0101】なお、図13は、ローモードにおけるトロ
イダルレシオRとパワートレイン10の出力トルク(以
下、「ユニットトルク」という)との関係を示すもの
で、トロイダルレシオRがGNレシオRgnからロー側
(前進側)に変化するとき、ユニットトルクは、0から
一旦増大した後、次第に低下するように変化することを
示している。
【0102】次いで、ステップS6で、上記ステップS
1で検出したトロイダルレシオ(以下、「実レシオ」と
いうことがある)Rと、上記ステップS4で設定した目
標レシオR0とを比較し、実レシオRの目標レシオR0
に対する偏差ΔRを算出すると共に、ステップS7で、
当該パワートレイン10への入力トルクと、前進か後退
か或はローモードかハイモードか等の運転モードとに応
じて予め設定されたゲインGを設定し、ステップS8
で、このゲインGと上記偏差ΔRとに基づき、図14に
示すように予め設定されたマップから、ステップモータ
251,252に出力するパルス数Nを求める。
【0103】ここで、上記マップでは、(偏差ΔR×ゲ
インG)の絶対値が大きくなるほど出力するパルス数N
も多くなるように設定されていると共に、偏差ΔRが正
のとき(実レシオRが目標レシオR0よりもロー側の値
のとき)には、出力パルス数Nを増加させて実レシオR
をハイ側に修正し、逆に、偏差ΔRが負のとき(実レシ
オRが目標レシオR0よりもハイ側の値のとき)には、
出力パルス数Nを減少させて実レシオRをロー側に修正
するように設定されている。
【0104】そして、ステップS9で、このようにして
求められたパルス数Nの信号をステップモータ251,
252に出力する。これにより、上記偏差ΔRが解消さ
れるように該ステップモータ251,252ないし三層
弁220,230のスリーブ222,232が駆動され
ると共に、このステップS6〜S9が繰り返し実行され
ることにより、トロイダルレシオRが目標レシオR0、
即ちGNレシオRgnより所定量ロー側に設定されたN
レンジの目標レシオRaに、フィードバック制御によっ
て設定されることになる。
【0105】また、ステップS10で、上記デューティ
ソレノイドバルブ271にデューティ率D=Da(10
0)%の信号が出力されることにより、ロークラッチ圧
が0とされて、ロークラッチ60が解放されることにな
る。
【0106】さらに、ステップS11では、エンジンの
アイドルスピードコントロールバルブ(以下、「ISC
バルブ」という)の制御が行われる。
【0107】このISCバルブ400は、図15に示す
ように、エンジンの吸気通路401に設けられたスロッ
トルバルブ402をバイパスするバイパス通路403の
開度を調整するもので、スロットルバルブ402が全閉
のアイドル状態で吸入空気量を調整することにより、必
要に応じてエンジン出力を制御するものであるが、Nレ
ンジではエンジン負荷等に応じて所定の制御が行われる
ようになっている。
【0108】以上のようにして、Nレンジにおいては、
ロークラッチ60(及びハイクラッチ70)が解放され
ると共に、トロイダルレシオRがGNレシオRgnより
ロー側の所定の目標レシオRaに設定されることになる
が、このトロイダルレシオRの設定により、Nレンジに
おける当該パワートレイン10内での歯打ち音等の騒音
の発生が抑制されることになる。
【0109】ここで、この騒音について説明すると、ロ
ークラッチ60及びハイクラッチ70が解放されたNレ
ンジでは、インプットシャフト11の回転により、ロー
モードギヤ列80の各ギヤ81〜83ないしロークラッ
チ60の入力側の回転部材60a(図1参照)が駆動さ
れ、また、第1、第2無段変速機構20,30の出力回
転により、ハイモードギヤ列90の各ギヤ91,92、
遊星歯車機構50のサンギヤ52およびピニオンキャリ
ヤ51、ロークラッチ60の出力側の回転部材60b
(図1参照)が駆動され、これら両系統からの回転がロ
ークラッチ60で出会うことになる。
【0110】その場合に、トロイダルレシオRがGNレ
シオRgnに設定されていると、上記ロークラッチ60
の入、出力側の回転部材60a,60bが等速度で回転
するため、これらが互いに他方に負荷を及ぼすことがな
く、両回転系統は全く無負荷の状態で回転することにな
る。そのため、両回転系統におけるギヤの噛み合い部や
スプライン係合部等において歯打ち音等のがたつきに起
因する騒音が発生するのである。
【0111】これに対し、上記のように、Nレンジでト
ロイダルレシオRをGNレシオRgnとは異なるレシオ
Raに設定すると、ロークラッチ60の入、出力側の回
転部材60a,60b間で相対回転が生じるため、例え
ば入、出力側摩擦板間の作動油の粘性による抵抗等によ
って、両側からの回転系統が互いに他方に負荷を及ぼし
合うことになる。これにより、両系統の各ギヤの噛み合
い部等におけるがたつきが吸収され、歯打ち音等の騒音
の発生が低減されることになるのである。
【0112】一方、運転者の操作により、選択レンジが
Nレンジから他のレンジンに切り換わった場合には、図
10のフローチャートのステップS3からステップS1
2を実行して、選択レンジがDレンジ等の走行レンジで
あるか否かを判定し、走行レンジが選択されたときに
は、さらにステップS13でアイドルスイッチ309が
ONかOFFかを判定する。そして、アイドルスイッチ
309がOFFのとき、即ちアクセルペダルの踏み込み
によりアイドル状態ではなくなり、当該車両が加速状態
に移行したときには、ステップS14の発進加速制御を
別途設定されたプログラムに従って実行する。
【0113】これに対し、アイドルスイッチ309がO
Nのとき、即ち走行レンジに切り換えられたが、いまだ
アクセルペダルが踏み込まれていないときは、ステップ
S15で、今回の制御サイクルが走行レンジへの切り換
え直後のサイクルであるか否かを判定し、切り換え直後
のサイクルの場合には、ステップS16で、第1タイマ
T1をセットする。そして、ステップS17で、この第
1タイマT1の計測時間t1が第1所定時間Taを超え
たか否かを判定し、超えるまでは、ステップS18でロ
ークラッチ用デューティソレノイドバルブ271のデュ
ーティ率Dを0%に設定し、前述のステップS10で、
このデューティ率0%の信号を上記デューティソレノイ
ドバルブ271に出力する。
【0114】これにより、図12に符号カで示すよう
に、走行レンジに切り換わった直後から第1所定時間T
aが経過するまでの間、ロークラッチ60に対する作動
油のプリチャージが行われる。つまり、デューティソレ
ノイドバルブ271が全開状態とされて、ロークラッチ
60の油圧室に作動油が急速に充満されるのである。こ
れにより、以後のロークラッチ圧の制御が応答性よく行
われることになる。ここで、上記第1所定時間Taが経
過した時点で、デューティ率Dは走行レンジへの切り換
え前のデューティ率Da%(100%)に一旦戻され
る。
【0115】そして、上記第1所定時間Taが経過すれ
ば、ステップS19で、第1タイマT1の計測時間t1
が第2所定時間Tb(>Ta)を超えたか否かを判定
し、超えるまでの間、ステップS20を実行する。つま
り、上記の作動油のプリチャージの終了後、この第2所
定時間Tbに達するまでの時間(Tb−Ta)をかけ
て、デューティソレノイドバルブ271のデューティ率
DをDa%(100%)からDb%にリニアに低減させ
るように設定する(図12の符号キ参照)。そして、上
記ステップS10で、このデューティ率Dの信号をデュ
ーティソレノイドバルブ271に出力する。
【0116】これにより、図12に符号クで示すよう
に、ロークラッチ圧は、走行レンジへの切り換え時から
第2所定時間Tbをかけて、0から所定値Pbまで昇圧
されることになる。その場合に、この所定値Pbは、ロ
ークラッチ60が半クラッチ状態となる油圧に設定され
ている。そして、上記のように、走行レンジへの切り換
え時に作動油のプリチャージを行っているから、ローク
ラッチ圧は上記所定値Pbまで遅滞なく昇圧されること
になる。
【0117】一方、このロークラッチ圧制御と並行して
行われているトロイダルレシオRの制御においては、ス
テップS21で、第1タイマT1をセットした走行レン
ジへの切り換え時から上記第2所定時間Tbをかけて、
目標レシオR0を、Nレンジ用の値RaからGNレシオ
Rgnに等しくもしくはこれに近い値の所定値Rbに変
化させるように設定する。そして、前述のステップS6
〜S9により、実レシオRがこの目標レシオR0(=R
b)となるように、ステップモータ251によるフィー
ドバック制御を実行する。
【0118】これにより、トロイダルレシオRは、図1
2に符号ケで示すように、Nレンジでの値Raから第2
所定時間TbをかけてGNレシオRgnに等しくもしく
はこれに近い値の所定値Rbに変化することになる。そ
して、第2所定時間Tbが経過した時点で、上記のよう
にロークラッチ圧が所定値Pbまで昇圧され、ロークラ
ッチ60が半クラッチ状態に締結されることになる。
【0119】つまり、ロークラッチ60は、当該パワー
トレイン10がギヤードニュートラル状態もしくはこれ
に近い状態となって、インプットシャフト11からロー
モードギヤ列80を介して入力側の回転部材60aに伝
達される回転速度と、無段変速機構20,30、ハイモ
ードギヤ列90及び遊星歯車機構50を介して出力側の
回転部材60bに伝達される回転速度がほぼ等しくなっ
た状態で締結されることになる。これにより、ロークラ
ッチ60の締結時のショックの発生が抑制されることに
なる。
【0120】また、上記ステップS19で、第1タイマ
T1の計測時間t1が第2所定時間Tbを超えたと判定
されると、次は図11のフローチャートのステップS2
2を実行し、上記第1タイマT1のタイムアップ直後か
否かを判定し、直後であれば、ステップS23で第2タ
イマT2をセットする。
【0121】そして、ステップS24で、この第2タイ
マT2の計測時間t2が第3所定時間Tcを超えたか否
かを判定し、超えるまでの間、ステップS25で、その
時間Tcをかけて、目標レシオR0を前述のGNレシオ
Rgnに等しくもしくはこれに近い値の所定値Rbから
ロー側の所定値Rcに変化するように設定する。また、
ステップS26でデューティソレノイドバルブ271の
デューティ率Dを上記所定値Db%に設定する。
【0122】したがって、前述のステップS6〜S9に
よるフィードバック制御により、図12に符号コで示す
ように、トロイダルレシオRが第3所定時間Tcをかけ
て上記所定値Rbからそのロー側の所定値Rcまで変化
すると共に、その間、ロークラッチ圧Pは上記のローク
ラッチ60を半クラッチ状態とする所定圧Pbに保持さ
れることになる。
【0123】さらに、上記第2タイマT2の計測時間t
2が第3所定時間Tcを超えれば、上記ステップS24
からステップS27を実行し、ブレーキスイッチ310
がONかOFFかを判定する。そして、このスイッチ3
10がONであって、当該車両がいまだ停車状態にある
ときには、ステップS28以下の停車中のクリープ力制
御を実行する。
【0124】つまり、まずステップS28で、目標レシ
オR0を前述のようにして設定した値Rcに保持すると
共に、ステップS29で、エンジントルクをスロットル
開度TVO等に基づいて推定し、この目標レシオR0
(Rc)と推定エンジントルクとに基づき、図16に示
すように予め設定されたマップからロークラッチ圧Pの
目標値Pcを求める。そして、ステップS31で、ロー
クラッチ圧Pとデューティソレノイドバルブ271のデ
ューティ率Dとの間の既定の相関関数[D=f(P)]
を用い、上記目標ロークラッチ圧Pcが得られるデュー
ティ率Dを設定する。
【0125】ここで、図16に示すマップは、一定のク
リープ力を実現するためのトロイダルレシオRとローク
ラッチ圧Pの関係を示すもので、トロイダルレシオR
は、前述のように、GNレシオRgnから前進側(ロー
側)に離れるほど前進方向のユニットトルクを小さくす
る方向に作用するのに対し(図13参照)、ロークラッ
チ圧Pは、高くなるほどロークラッチ60の締結力が増
大してユニットトルクを大きくする方向に作用する。し
たがって、クリープ力を一定に保持する図16のマップ
においては、トロイダルレシオRがロー側になるほどロ
ークラッチ圧Pが高くなるように設定されている。ま
た、このマップにおいては、ステップS29で推定した
エンジントルクと、ステップS1で検出した路面の勾配
αとに応じて目標とするクリープ力を補正するようにな
っている。
【0126】そして、矢印X,Xで示すように、ステッ
プS28で設定した目標レシオRcを基準とし、この値
に応じたロークラッチ圧Pを、クリープ力を一定に保持
する基準特性(1)またはエンジントルクや勾配αに応
じて一定クリープ力を補正する補正特性(2),(3)
からロークラッチ圧Pを求めるようになっている。
【0127】その後、図10のステップS6〜S9に従
い、上記目標レシオR0(=Rc)が得られるようにス
テップモータ251のフィードバック制御を行うと共
に、ステップS10で、上記のようにしてマップおよび
関数を用いて求めたデューティ率Dの信号をデューティ
ソレノイドバルブ271に出力することにより、ローク
ラッチ60に一定クリープ力を得るための上記目標クラ
ッチ圧Pcに制御されたロークラッチ圧Pを供給する。
これにより、図12に示す期間、クリープ力が最適な値
に保持されることになる。
【0128】なお、このとき、ロークラッチ圧P(P
c)は、ロークラッチ60が半クラッチ状態となる範囲
で設定されているので、トロイダルレシオRが上記のよ
うにGNレシオRgnとは異なるレシオRcに設定され
ることにより発生する前進方向の駆動力、即ちクリープ
力がロークラッチ60の滑りによって吸収されることに
なり、上記駆動力の発生に拘らず、一定のクリープ力で
無理なく停車状態を保持することが可能となる。
【0129】そして、その場合におけるロークラッチ圧
Pcないしロークラッチ60の締結力を適切に制御する
ことにより、停車状態を保持するためのブレーキペダル
の踏み込み力の強さとして運転者に伝達されるクリープ
力の大きさを適正に設定することができ、良好な停車フ
ィーリングが得られると共に、特にトロイダルレシオR
を一定に制御して、ロークラッチ60の締結力によりク
リープ力を調整するので、このクリープ力の調整を円滑
に、かつ安定して行うことができるのである。
【0130】ここで、前述のように、クリープ力を一定
に保持するためのトロイダルレシオRとロークラッチ圧
Pとの関係を示す図16のマップにおいては、路面の勾
配αとエンジントルクとに応じて、一定に保持するクリ
ープ力の強さを補正するようになっている。つまり、ク
リープ力を常に一定に保持しようとして、トロイダルレ
シオRとロークラッチ圧Pとの関係を一義的に設定する
と、冷間時におけるアイドルアップ等によりエンジント
ルクが大きくなっているときにクリープ力が強くなりす
ぎ、また、路面の勾配αにより、上り坂ではクリープ力
が不足し、下り坂では過大となることになるのである。
【0131】そこで、エンジントルクが大きくなってい
るときや下り坂では、図16の補正特性(2)を用いる
ことにより、目標とする一定クリープ力を低下させるよ
うに補正し、また、エンジントルクが小さくなっている
ときや上り坂では、図16の補正特性(3)を用いるこ
とにより、目標とする一定クリープ力を増大させるよう
に補正するのである。これにより、クリープ力が運転者
の要求や感覚に適合するように、常に適切に設定される
ことになる。
【0132】次に、上記のように、走行レンジへの切り
換え後、ブレーキペダルの踏み込みによる停車状態を経
由したのち、発進に際してブレーキペダルを解放するこ
とにより、ブレーキスイッチ310がOFFになると、
図11のフローチャートのステップS27からステップ
S32,S33を実行し、上記ブレーキスイッチ310
がOFFになった直後の制御サイクルで、第3タイマT
3をセットする。
【0133】そして、ステップS34で、このタイマT
3の計測時間t3が第4所定時間Tdを超えたか否かを
判定し、超えるまでの間は、ステップS35でロークラ
ッチ用デューティソレノイドバルブ271のデューティ
率Dを、上記のクリープ力制御中の値D[=f(P
c)]より小さな所定値Ddに設定すると共に、ステッ
プS36で、ステップモータ251に出力するパルス数
Nを0とし、三層弁220におけるスリーブ222の位
置、即ちトロイダルレシオRを、ブレーキスイッチ31
0がOFFになる前のクリープ力制御中の値Rcに保持
する。
【0134】つまり、この所定時間Tdの間は、図12
に符号サで示すように、トロイダルレシオRのフィード
バック制御を中止して、該レシオRをブレーキペダル解
放直前の値Rcに固定すると共に、符号シで示すよう
に、ロークラッチ圧Pを所定量高めて、ロークラッチ6
0の締結力を強める。そして、ステップS37で、IS
Cバルブ400に出力するデューティ率Discを所定
量ΔD1だけ大きくし、該ISCバルブ400の開度を
増大させる。
【0135】このISCバルブ400は、前述のよう
に、エンジンの吸気通路401に設けられたスロットル
バルブ402をバイパスするバイパス通路403の開度
を調整することにより、スロットルバルブ402が全閉
のアイドル状態でのエンジントルクを調整するもので、
入力されるデューティ率Discが大きくなるほど開度
が増大し、アイドル時のエンジントルクが上昇する。
【0136】このようにして、ロークラッチ60の締結
力の増大とエンジントルクの増大とが相俟って、発進時
に所要の加速力が得られると共に、その間、トロイダル
レシオRのフィードバック制御が禁止されるので、スム
ーズで、しかも力強い発進加速性が得られることにな
る。
【0137】その後、上記第3タイマT3の計測時間t
3が第4所定時間Tdを超えると、次にステップS38
で、その計測時間t3が第5所定時間Te(Te>T
d)を超えたか否かを判定する。そして、この第5所定
時間Teを超えるまでの間は、ステップS39で、図1
2に符号スで示すように、その間の時間(Te−Td)
をかけて、上記デューティ率Dを所定値Ddから、さら
に小さな値の所定値Deにリニアに変化させる。
【0138】これにより、ロークラッチ圧がさらに上昇
し、ロークラッチ60がほぼ完全締結状態とされるが、
その場合に、このロークラッチ60を完全締結状態にす
る際のショックを低減するため、ブレーキスイッチ31
0のOFF後、該クラッチ60を完全締結状態に移行さ
せるまでの上記第4所定時間Tdを次のように設定して
いるのである。
【0139】つまり、上記のように、発進時に目標トロ
イダルレシオR0を所定値Rcに固定した状態でローク
ラッチ60の締結力を高めたとき、無段変速機構20,
30の内部における伝達トルクが増大することに伴う各
部のたわみ等により、図12に符号セで示すように、ト
ロイダルレシオRがGNレシオRgn側に変化するとい
う現象があり、そのため、ロークラッチ60の入、出力
側回転部材60a,60bの回転速度が近づき、相対回
転が小さくなるのである。
【0140】そこで、上記第4所定時間Tdを、ブレー
キスイッチ310のOFF時から、ロークラッチ圧Pの
上昇に伴う上記現象によってトロイダルレシオRが最も
GNレシオRgnに近くなるまでの時間に設定し、その
時間の経過時にロークラッチ60を完全締結状態に移行
させるようにしているのである。これにより、該クラッ
チ60は入、出力側回転部材60a,60bの相対回転
が小さい状態で完全に締結され、締結ショックが低減さ
れることになる。
【0141】ここで、伝達トルクの増大に伴ってトロイ
ダルレシオRがGNレシオRgn側に変化する現象につ
いて、第1無段変速機構20を例にとって説明する。
【0142】ローモードにおいては、エンジンからのト
ルクがインプットシャフト11及びローモードギヤ列8
0を介してセカンダリシャフト13側へ伝達される一方
で、該セカンダリシャフト13上の遊星歯車機構50で
発生する反力としてのトルクがハイモードギヤ列90を
介して無段変速機構20,30の出力ディスク22,3
2に図6の矢印cで示す方向に還流されて所謂循環トル
クが発生し、これがトラニオン25,35に、前述した
トラクション力Tとは逆の矢印dで示す方向のトラクシ
ョン力として作用することになる。
【0143】このとき、トラニオン25,35に連設さ
れた各油圧室115,116には、このようなトラクシ
ョン力に対抗し得るように油圧が供給され、ピストン1
13,114を所定位置に保持しているのであるが、該
ピストン113,114よりパワーローラー23,33
側の部分におけるロッド27,37、トラニオン25,
35、ローラ支持シャフト24,34等のたわみや変
形、或はこれらの連結部等におけるがたつき等により、
パワーローラ23,33が上記矢印d方向のトラクショ
ン力に引きずられて変位するのであり、そのため、トロ
イダルレシオRがハイ側に、即ちGNレシオRgnに近
づく方向に変化するのである。
【0144】そして、このようにしてトロイダルレシオ
RがGNレシオに近づいた状態でロークラッチ60を完
全締結状態に移行させることにより、上記のように締結
ショックの発生が抑制されることになるのである。
【0145】以上のようにして、ブレーキスイッチ31
0のOFF後における第4所定時間Tdの経過時から第
5所定時間Teの経過時までの間に、デューティ率Dを
所定値Ddから所定値Deに減少させて、ロークラッチ
圧を上昇させることにより、ロークラッチ60を完全に
締結するように制御するのであるが、このとき、トロイ
ダルレシオRについては、図12に符号ソで示すよう
に、上記時間(Te−Td)をかけて、クリープ制御中
のレシオRcから該レシオRcより大きな(ロー側の)
所定レシオReに変化させるように、ステップS40
で、ステップモータ251に対し一定周波数でパルス信
号を出力する。また、ステップS41では、上記のIS
Cバルブ400に出力する信号のデューティ率Disc
をさらに所定量ΔD2だけ増大する。
【0146】これにより、ロークラッチ60が完全締結
状態とされて大きな駆動力が発生すると共に、ユニット
レシオが速やかにハイ側に変化して行き、さらに、その
間にエンジントルクがさらに増大されることになって、
当該車両は発進状態からクリープ走行状態へ、円滑かつ
速やかに移行することになる。その場合に、この間(T
e−Td)におけるトロイダルレシオRの制御は、上記
のように、一定周波数でパルス信号を出力するフィード
フォワード制御によって行われるので、トロイダルレシ
オRの変化量が比較的大きいにも拘らず、遅滞なく所定
値Reに移行することになる。
【0147】なお、上記ISCバルブ400に対するデ
ューティ率Discの増量分ΔD2は、時間(Te−T
d)の間におけるトロイダルレシオRのロー側への変化
量(Re−Rc)に対応して設定される。したがって、
例えばトロイダルレシオRの変化量(Re−Rc)が大
きく、ユニットレシオが比較的急速にハイ側に変化する
ときに、エンジントルクが不足して、所要の加速力が得
られなかったり、逆にトロイダルレシオRの変化量(R
e−Rc)に対しエンジントルクの増大量が過剰となっ
て、必要以上に大きな加速力が発生したりすることな
く、常に円滑にクリープ走行状態へ移行することにな
る。
【0148】また、ロークラッチ60を半クラッチ状態
から完全締結状態に移行させる際の上記時間Tdおよび
(Te−Td)におけるロークラッチ圧Pの制御を緻密
に行うため、この間にデューティソレノイドバルブ27
1に出力する上記デューティ率DdないしDeが作動油
の油温TMPによって補正される。
【0149】この補正は図17に示すマップに従って行
われ、作動油の油温TMPが低くなるほど、デューティ
率Dを大きくするように行われる。これは、油温TMP
が低いときは、高いときに比べて同一のデューティ率D
に対して実際に生成される作動圧(ロークラッチ圧)が
高くなる傾向に対処するものであり、この補正により、
油温TMPの高低に拘らず、同一の条件では常にほぼ同
一のロークラッチ圧Pが得られることになる。
【0150】以上のようにして、ブレーキペダルの解放
により当該車両が発進すれば、運転者がアクセルペダル
を踏み込むまでの間、クリープ走行が行われることにな
るが、このとき、クリープ車速Vの制御が行われる。次
に、このクリープ車速の制御について説明する。
【0151】この制御は、上記ステップS38で、第3
タイマT3の計測時間t3がブレーキスイッチ310が
OFFになってからの第5所定時間Teが経過したこと
を判定した時点から開始され、まず、ステップS42
で、デューティソレノイドバルブ271のデューティ率
Dを0%に設定することにより、ロークラッチ圧Pを最
大値に設定すると共に、ステップS43で、目標クリー
プ車速V0を設定する。
【0152】この目標クリープ車速V0は、路面の勾配
αとハンドル舵角βとに応じて設定されるようになって
おり、まず、勾配αに対しては図18のマップに示す特
性に基づいて設定される。
【0153】このマップでは、路面の勾配αがプラス、
即ち上り坂の場合は、その勾配αに応じて目標クリープ
車速V0を低くし、また勾配αがマイナス、即ち下り坂
の場合は、その勾配αに応じて目標クリープ車速V0を
高くするよに設定されている。したがって、上り坂の場
合は平坦路の場合より車速が低下し、下り坂の場合は平
坦路より車速が早くなると共に、その度合いは勾配αの
大きさに対応することになり、これにより、勾配路での
クリープ走行時に運転者の感覚に適合したクリープ車速
Vが得られることになる。
【0154】そして、特にこのマップに設定された特性
は、鎖線で示す従来のトルクコンバータ付き自動変速機
を搭載した車両(以下、「AT車」という)の勾配路で
のクリープ車速の特性より、勾配に対する車速Vの変化
量を抑制するようになっており、これによって、急な下
り坂で必要以上にクリープ車速が上昇したり、急な上り
坂で著しくクリープ車速が低下したりすることが防止さ
れ、勾配αに応じて適度なクリープ車速Vが得られるこ
とになる。
【0155】また、ハンドル舵角βに対する目標クリー
プ車速V0の設定は図19のマップに示す特性に基づい
て行われる。
【0156】このマップでは、プラス側及びマイナス
側、即ち左右のいずれの方向のハンドル舵角βに対して
も、その絶対値が大きくなるほど、目標クリープ車速V
0が低くなるように設定されている。したがって、クリ
ープ走行中での旋回時に、急旋回時ほど車速が低くな
り、良好な旋回走行性が得られることになる。
【0157】その場合に、このハンドル舵角βに対する
目標クリープ車速V0の特性については、鎖線で示すA
T車の特性よりクリープ車速Vを低く抑制するように設
定されており、これにより、旋回時におけるブレーキ操
作の負担が軽減され、クリープ走行時の良好な旋回性が
実現されることになる。
【0158】そして、上記のようにして目標クリープ車
速V0が設定されると、ステップS44で、その目標ク
リープ車速V0を実現するためのトロイダルレシオRの
目標値が所定の関数を用いて設定される。具体的には、
目標クリープ車速V0と、そのときの入力回転数(エン
ジン回転数)Revと、差動装置5のギヤ比(ファイナ
ルギヤレシオ)やタイヤ有効半径等の車両諸元とから目
標レシオR0が求められ、この目標レシオR0が実現さ
れるように、ステップS6〜S9でフィードバック制御
が行われる。
【0159】なお、以上のクリープ車速Vの制御におい
ては、目標クリープ車速V0を実現するため、必要に応
じて前述のISCバルブ400によるるエンジントルク
の制御が行われる。
【0160】以上のようにして、Nレンジから走行レン
ジへの切り換えを経由してアクセルペダルの踏み込みま
での制御が行われることになるが、この制御は、図10
のステップS2で、ライン圧PLが所定値PL1以上と
判定されたときに行われるものである。これに対して、
PL<PL1のとき、即ちエンジンの始動直後等におい
て作動油の粘性が高い等の理由により、所要のライン圧
PLが得られていないときには、ステップS45で、三
層弁制御用のパルスモータ251,252に出力するパ
ルス数Nを0とし、これらのモータ251,252の作
動を禁止する。
【0161】つまり、ライン圧PLが不足する状態でス
テップモータ251,252ないし三層弁220,23
0によるトロイダルレシオRのフィードバック制御を行
うと、実レシオRを目標レシオR0に収束させるため
に、三層弁220,230のスリーブ222,232を
可動範囲を超えてストロークさせようとする信号が出力
されるおそれがあり、該スリーブ222,232等を損
傷させる等の不具合が発生することになるのである。
【0162】そこで、このような場合には、三層弁22
0,230の制御を禁止し、トロイダルレシオをその時
点の値に固定するのである。そして、この場合、デュー
ティ率Dの制御も中止され、ロークラッチ60の締結状
態もその時点の状態で固定されることになる。なお、こ
の制御中止動作は、エンジンの始動直後に限らず、アク
セルペダル踏み込みまでの何れの段階においても、何ら
かの原因でPL<PL1となったときに行われるもので
ある。
【0163】また、以上の制御においては、図11のス
テップS28からステップS31までの、走行レンジへ
の切り換え後からブレーキスイッチOFFまでの停車中
におけるクリープ力の制御において、まず、トロイダル
レシオRの目標値R0を所定値Rcに設定し、そのトロ
イダルレシオRcのもとで目標クリープ力が得られるロ
ークラッチ60の締結力を制御するようにしたが、これ
に代え、まず、ロークラッチ60の締結力を所要の半ク
ラッチ状態が得られる値に設定し、その締結力のもとで
目標クリープ力が得られるようにトロイダルレシオRを
制御するようにしてもよい。
【0164】この場合、フローチャートの上記ステップ
S28〜S31は、図20に示すように変更される。
【0165】つまり、ステップS24で第2タイマT2
の計測時間t2が第3所定時間Tcを超え、かつ、ステ
ップS27で、ブレーキスイッチ310がONであるこ
とが判定されたときに、まずステップS28′で、ロー
クラッチ圧Pの目標値P0を半クラッチ状態が得られる
所定値Pcに設定すると共に、ステップS29′で、ロ
ークラッチ圧Pとデューティソレノイドバルブ271の
デューティ率Dとの間の既定の相関関数[D=f
(P)]を用い、上記目標ロークラッチ圧Pcが得られ
るデューティ率Dを設定する。
【0166】次に、ステップS30′で、エンジントル
クをスロットル開度TVO等に基づいて推定し、ステッ
プS31′で、この推定エンジントルクと上記目標ロー
クラッチ圧Pcとに基づき、図21に示すように予め設
定されたマップからトロイダルレシオRの目標値R0を
求める。そして、図10のフローチャートのステップS
6〜S9で、上記目標レシオR0となるようにトロイダ
ルレシオRのフィードバック制御を行うと共に、ステッ
プS10で上記デューティ率Dの信号をデューティソレ
ノイドバルブ271に出力する。
【0167】これにより、図11に示す場合と同様に、
停車中のクリープ力が適正に制御されることになるが、
この図20の制御のように、ロークラッチ圧Pを固定し
て、トロイダルレシオRを制御するようにすれば、クリ
ープ力制御の応答性が向上することになる。
【0168】その場合に、特にエンジンのトルク変動が
大きいときに、その大きさに応じてロークラッチ圧Pの
目標値P0を、例えば図21に示す値Pc′のように低
く設定すれば、ロークラッチ60の負担が軽減されて、
大きなトルク変動を吸収することによる該クラッチ60
の耐久性の低下が防止されると共に、このトルク変動が
該クラッチ60によって効果的に吸収されて、エンジン
振動の車体への伝達が抑制されることになる。
【0169】なお、このロークラッチ圧Pを固定する制
御で用いる図21のマップは、前述のトロイダルレシオ
Rを固定する制御で用いた図16のマップと同じもので
あり、矢印Y,Yで示すように、ロークラッチ圧Pを基
準にしてトロイダルレシオPを求める点で異なるだけで
ある。そして、エンジントルクと勾配αによる目標クリ
ープ力の補正も同様に行われる。
【0170】また、上記のように、トルク変動が大きい
場合等においてロークラッチ圧Pを通常より低い値P
c′に設定したときは、無段変速機構20,30から発
生する駆動力を増大させるために、矢印Y′,Y′で示
すように、同一クリープ力を得るために、トロイダルレ
シオRの目標値R0′がGNレシオRgn側に制御され
ることになる。
【0171】さらに、前述のクリープ車速Vの制御にお
いては、ロークラッチ60を完全締結状態に保持した状
態でトロイダルレシオRを目標クリープ車速V0が得ら
れるようにフィードバック制御したが、ロークラッチ6
0をエンジンのトルク変動が伝わらない程度に僅かに滑
らすようにしてもよく、また、トロイダルレシオRを所
定値に固定した状態でロークラッチ60の締結状態を目
標クリープ車速V0が実現されるようにフィードバック
制御することも可能である。
【0172】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、無段変
速機構を用いた車両用パワートレインにおいて、走行レ
ンジが選択され、かつアクセルペダルが解放されている
状態で、ブレーキペダルが踏み込まれている状態から解
放されたときに、無段変速機構の変速比制御および摩擦
要素の締結力制御等により当該車両が自動的に発進して
クリープ走行状態に移行することになるが、このとき、
クリープ車速が所定の目標車速に制御されることによ
り、良好なクリープ走行が実現されることになる。
【0173】その場合に、第2発明によれば、上記クリ
ープ車速が無段変速機構の変速比制御によって行われる
ことにより、このクリープ車速の制御が応答性よく行わ
れ、さらに、第3発明によれば、その変速比制御による
クリープ車速の制御がフィードバック制御により、緻密
に行われることになる。
【0174】また、第4発明によれば、摩擦要素の締結
力を調整する締結力調整手段が備えられている場合にお
いて、無段変速機構の変速比制御によりクリープ車速を
制御するときに、上記締結力調整手段により摩擦要素が
完全締結状態に保持され、無段変速機構の変速比制御の
みによってクリープ車速が制御されるので、このクリー
プ車速の制御が容易に、かつ精度よく行われることにな
る。
【0175】その場合に、第5発明によれば、ブレーキ
ペダルの解放前に、締結力調整手段により摩擦要素が半
締結状態に調整されると共に、変速比調整手段により無
段変速機構の変速比がニュートラル状態が実現される所
定変速比と異なる変速比に調整されることにより、当該
車両を前進させようとするクリープ力が発生することに
なり、したがって、ブレーキペダルが解放されたとき
に、自動的に車両が発進してクリープ走行状態に円滑に
移行することになるが、このとき、上記締結力調整手段
により摩擦要素が完全締結状態とされ、変速比調整手段
により無段変速機構の変速比を制御することによってク
リープ車速が制御されるので、このクリープ車速が応答
性よく行われることになる。
【0176】一方、第6発明によれば、車速制御手段に
よってクリープ車速を制御するときに、締結力調整手段
により摩擦要素の締結力を調整することによってクリー
プ車速が目標車速に制御されるので、この制御が安定し
て行われると共に、摩擦要素の振動吸収作用が得られ
て、エンジン振動の車体への伝達が抑制されることにな
る。その場合に、第7発明によれば、摩擦要素の締結力
の制御によるクリープ車速の制御がフィードバック制御
により緻密に行われることになる。
【0177】さらに、第8発明によれば、クリープ走行
時の目標車速が走行路の勾配に応じて設定されるので、
例えば上り坂でクリープ車速が極端に低下したり、或は
下り坂でクリープ車速が著しく速くなるといった状態が
回避され、勾配に拘らず、常に最適なクリープ車速が得
られることになる。
【0178】また、第9発明によれば、同じくクリープ
走行時の目標車速がハンドル舵角に応じて設定されるの
で、例えばハンドル舵角が大きい旋回時にクリープ車速
を低くすることにより、旋回性を向上させることが可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るトロイダル式無段
変速機の機械的構成を示す骨子図である。
【図2】 同変速機の要部の具体的構造を展開状態で示
す平面図である。
【図3】 図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】 同変速機の油圧制御の回路図である。
【図5】 図3のB方向からみた変速制御用三層弁の周
辺の部分断面図である。
【図6】 図3のC方向からみた変速制御機構周辺のの
部分断面図である。
【図7】 ステップモータのパルス数とトロイダルレシ
オとの関係を示す特性図である。
【図8】 パワートレイン全体の制御システムを示すブ
ロック図である。
【図9】 ステップモーターのパルス数とユニットレシ
オとの関係を示す特性図である。
【図10】 Nレンジでの停車状態から走行レンジへの
切り換えを経由して発進するまでの制御動作の前半部を
示すフローチャートである。
【図11】 同制御動作の後半部を示すフローチャート
である。
【図12】 同制御動作のタイムチャートである。
【図13】 トロイダルレシオとユニットトルクとの関
係を示す特性図である。
【図14】 フィードバック制御のための偏差とステッ
プモータのパルス数との関係を示すマップである。
【図15】 ISCバルブの概略説明図である。
【図16】 一定クリープ力を得るためのトロイダルレ
シオとロークラッチ圧との関係を示すマップである。
【図17】 デューティソレノイドバルブのデューティ
率とロークラッチ圧との関係を示すマップである。
【図18】 走行路の勾配と目標クリープ車速との関係
を示すマップである。
【図19】 ハンドル舵角と目標クリープ車速との関係
を示すマップである。
【図20】 クリープ力制御の他の制御例を示すフロー
チャートである。
【図21】 図21の制御で用いる一定クリープ力を得
るためのトロイダルレシオとロークラッチ圧との関係を
示すマップである。
【符号の説明】
1 エンジン 10 パワートレイン 20,30 無段変速機構 50 歯車機構(遊星歯車機構) 60,70 摩擦要素(ロークラッチ、ハイクラッ
チ) 200 油圧制御回路 251,252 変速比制御手段(ステップモータ) 271,272 摩擦要素制御手段(デューティソレノ
イドバルブ) 300 制御手段(コントロールユニット)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16H 59:54 63:06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無段変速機構と歯車機構とを経由する第
    1の経路と、上記無段変速機構のみを経由する第2の経
    路とを有すると共に、これらの経路を選択的に動力伝達
    状態とする摩擦要素が備えられ、かつ該摩擦要素により
    第1の経路を動力伝達状態とした状態で上記無段変速機
    構の変速比を所定変速比に制御することによりニュート
    ラル状態を実現できるように構成されたパワートレイン
    の制御装置であって、当該車両に設定されたレンジの選
    択を検出するレンジ検出手段と、アクセルペダルの踏み
    込み状態を検出するアクセル検出手段と、ブレーキペダ
    ルの踏み込み状態を検出するブレーキ検出手段と、上記
    レンジ検出手段により走行レンジの選択が検出され、か
    つアクセル検出手段によりアクセルペダルの非踏み込み
    が検出されている状態で、ブレーキ検出手段によりブレ
    ーキペダルの解放が検出されたときに、所定の目標車速
    となるように車速を制御する車速制御手段とが備えられ
    ていることを特徴とするパワートレインの制御装置。
  2. 【請求項2】 無段変速機構の変速比を調整する変速比
    調整手段が備えられ、車速制御手段は、該変速比調整手
    段を介して無段変速機構の変速比を制御することによ
    り、車速を目標車速に制御することを特徴とする請求項
    1に記載のパワートレインの制御装置。
  3. 【請求項3】 車速制御手段は、変速比調整手段を介し
    て無段変速機構の変速比をフィードバック制御すること
    により、車速を目標車速に制御することを特徴とする請
    求項2に記載のパワートレインの制御装置。
  4. 【請求項4】 摩擦要素の締結力を調整する締結力調整
    手段が備えられ、車速制御手段は、無段変速機構の変速
    比を制御することにより車速を目標車速に制御するとき
    に、上記締結力調整手段により摩擦要素を完全締結状態
    に保持することを特徴とする請求項2または請求項3に
    記載のパワートレインの制御装置。
  5. 【請求項5】 車速制御手段は、ブレーキペダルの解放
    検出前に、締結力調整手段により摩擦要素を半締結状態
    に設定し、かつ変速比調整手段により無段変速機構の変
    速比をニュートラル状態が実現される所定変速比と異な
    る変速比に調整すると共に、上記ブレーキペダルの解放
    を検出したときに、上記締結力調整手段により摩擦要素
    を完全締結状態とした上で、変速比調整手段により無段
    変速機構の変速比を制御して、車速を目標車速に制御す
    ることを特徴とする請求項4に記載のパワートレインの
    制御装置。
  6. 【請求項6】 摩擦要素の締結力を調整する締結力調整
    手段が備えられ、車速制御手段は、該締結力調整手段を
    介して摩擦要素の締結力を制御することにより、車速を
    目標車速に制御することを特徴とする請求項1に記載の
    パワートレインの制御装置。
  7. 【請求項7】 車速制御手段は、締結力調整手段を介し
    て摩擦要素の締結力をフィードバック制御することによ
    り、車速を目標車速に制御することを特徴とする請求項
    6に記載のパワートレインの制御装置。
  8. 【請求項8】 走行路の勾配を検出する勾配検出手段が
    備えられ、車速制御手段は、該勾配検出手段によって検
    出される走行路の勾配に応じて目標車速を設定すること
    を特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の
    パワートレインの制御装置。
  9. 【請求項9】 ハンドル舵角を検出する舵角検出手段が
    備えられ、車速制御手段は、該ハンドル舵角検出手段に
    よって検出されるハンドル舵角に応じて目標車速を設定
    することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか
    に記載のパワートレインの制御装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6599220B2 (en) 2001-03-09 2003-07-29 Nissan Motor Co., Ltd. Control of infinitely variable transmission
US6666793B2 (en) 2001-02-22 2003-12-23 Nissan Motor Co., Ltd. Control of infinitely variable transmission
US6918854B2 (en) 2002-03-07 2005-07-19 Hitachi, Ltd. Method and system for controlling creep in automatic transmission
KR101489697B1 (ko) 2013-08-30 2015-02-04 주식회사 포스코 열간 성형용 가열로의 롤러 지지용 슬리브

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