以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
本実施形態では、トロイダル式無段変速機を備える車両は、動力発生装置として、内燃機関を備えるものとして説明する。内燃機関は、例えば、ガソリン内燃機関、ディーゼル内燃機関、LPG内燃機関である。但し、動力発生装置は、内燃機関に限定されず、電動機も含まれる。また、動力発生装置は、内燃機関と電動機とが組み合わされたものでもよい。また、車両は、変速機としてトロイダル式無段変速機に変えて、ベルト式無段変速機(CVT)や、オートマチックトランスミッション(AT)や、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)や、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)や、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を備えてもよい。
(実施形態)
図1は、トロイダル式無段変速機を備える車両の構成を示す概略図である。図1に示すように、車両CAは、内燃機関100から取り出された動力を車輪160へ伝えるための装置として、例えば、トルクコンバーター110と、前後進切換機構120と、トロイダル式無段変速機1と、動力伝達機構130と、ディファレンシャルギヤ140と、ドライブシャフト150とを備える。
また、車両CAには、トロイダル式無段変速機の動作を調節するための装置である変速制御装置2が搭載される。変速制御装置2は、例えば、エンジンECU(Electric Control Unit)170と、トランスミッションECU60とを含んで構成される。エンジンECU170は、主に、内燃機関100の動作を制御して内燃機関100から取り出されるトルクを調節する。トランスミッションECU60は、主に、トロイダル式無段変速機1の動作を制御して、トロイダル式無段変速機1の変速比を調節する。
内燃機関100は、車両CAを走行させるための動力や、車両CAに搭載される各種装置を稼動させるための動力を発生させる。内燃機関100は、エンジンECU170と電気的に接続されて、エンジンECU170により動作が制御される。これにより、内燃機関100は、エンジンECU170によって、取り出されるトルクが調節される。内燃機関100から取り出されたトルクは、クランクシャフト101を介してトルクコンバーター110に伝えられる。
トルクコンバーター110は、流体の力学的作用を用いて入力側から出力側に回転を伝えると共に、入力側と出力側の回転差によりトルクを増幅させる装置である。トルクコンバーター110は、ポンプ111と、タービン112と、ロックアップクラッチ113とを含んで構成される。ポンプ111は、クランクシャフト101と連結される。タービン112は、前後進切換機構120に連結される。ポンプ111とタービン112との間には、オイルが介在される。トルクコンバーター110は、クランクシャフト101からポンプ111に伝えられるトルクを、ポンプ111とタービン112との間に介在するオイルを介して、タービン112に伝える。また、トルクコンバーター110は、車輪160側からタービン112に伝えられるトルクを、ポンプ111とタービン112との間に介在するオイルを介して、ポンプ111に伝える。
ロックアップクラッチ113は、タービン112に連結される。また、ロックアップクラッチ113は、ポンプ111に係合できるように設けられる。トルクコンバーター110は、ロックアップクラッチ113がポンプ111に係合することで、ポンプ111とタービン112との間で、オイルを介さず直接トルクを伝達する。
前後進切換機構120は、トルクコンバーター110とトロイダル式無段変速機1の入力ディスク10との間でトルクを伝達する。前後進切換機構120は、例えば、遊星歯車装置121と、フォワードクラッチ122と、リバースブレーキ123とを含んで構成される。フォワードクラッチ122は、油圧制御装置50から供給されたオイルにより、トルクの入力側と、トルクの出力側との係合の動作が制御される。以下、フォワードクラッチ122の入力側と出力側とが係合することを、フォワードクラッチ122が係合するという。
フォワードクラッチ122が係合する場合には、前後進切換機構120は、遊星歯車装置121のリングギヤとサンギヤと各ピニオンとが互いに相対回転することなく、トルクの入力側と、トルクの出力側との間でトルクが直接伝達される。つまり、フォワードクラッチ122が係合する場合には、内燃機関100からのトルクは、サンギヤに直接伝えられる。一方、フォワードクラッチ122が係合しない場合には、内燃機関100からのトルクは、リングギヤに伝えられる。
リバースブレーキ123は、油圧制御装置50からブレーキピストンに供給されるオイルにより、切替用キャリアとの係合の動作が制御される。リバースブレーキ123が切替用キャリアと係合する場合には、遊星歯車装置121の各ピニオンがサンギヤの周囲を公転できなくなる。一方、リバースブレーキ123が切替用キャリアと係合しない場合には、切替用キャリアが解放され、各ピニオンがサンギヤの周囲を公転できる状態となる。前後進切換機構120は、油圧制御装置50と電気的に接続されるトランスミッションECU60によりフォワードクラッチ122と、リバースブレーキ123との動作が制御されることにより、トルクの回転方向を切り替える。
トロイダル式無段変速機1は、変速部(バリエーター)として、入力ディスク10と、出力ディスク20と、パワーローラー30と、トラニオン31と、油圧サーボ機構32と、ローラー押圧機構40とを備える。さらに、トロイダル式無段変速機1は、油圧制御装置50を備える。トロイダル式無段変速機1は、本実施形態では、対向する2つの入力ディスク10と、出力ディスク20との間に、キャビティC1とキャビティC2との2つのキャビティが形成される。トロイダル式無段変速機1は、キャビティC1、キャビティC2に、それぞれ2つのパワーローラー30が配置される。つまり、トロイダル式無段変速機1は、2つの入力ディスク10と、1つの出力ディスク20と、4つのパワーローラー30とを備える。
入力ディスク10は、前後進切換機構120の出力軸である入力軸11と連結される。各入力ディスク10は、回転できるように入力軸11に支持される。各入力ディスク10は、出力ディスク20を挟んで入力軸11の軸方向で対向して配置される。各入力ディスク10の出力ディスク20と対向する面には、各キャビティC1、キャビティC2の各パワーローラー30にそれぞれ接触する接触面12が形成される。ここで、前後進切換機構120側と反対側の入力ディスク10bは、入力軸11に対して軸方向に移動できる。以下、前後進切換機構120側の入力ディスク10を入力ディスク10aとし、前後進切換機構120側と反対側の入力ディスク10を入力ディスク10bとする。
出力ディスク20は、動力伝達機構130と連結される。トロイダル式無段変速機1は、パワーローラー30を介して入力ディスク10と出力ディスク20との間でトルクを伝達する。これにより、出力ディスク20に伝えられるトルクは、動力伝達機構130、ディファレンシャルギヤ140、ドライブシャフト150を介して車輪160に伝えられる。
出力ディスク20は、入力軸11に対して回転できるように入力軸11に支持される。出力ディスク20は、2つの入力ディスク10の間に配置される。出力ディスク20の各入力ディスク10と対向する面には、各キャビティC1、キャビティC2の各パワーローラー30にそれぞれ接触する接触面21が形成される。ここで、出力ディスク20は、入力軸11に対して軸方向に移動できる。
パワーローラー30は、ローラー押圧機構40により、各入力ディスク10と、出力ディスク20とに押圧される。パワーローラー30は、この状態で転動することで、各入力ディスク10と出力ディスク20との間でトルクを伝達する。パワーローラー30は、トロイダル式無段変速機1に供給されるトラクションオイルにより、パワーローラー30と入力ディスク10の接触面12との間、及び、パワーローラー30と出力ディスク20の接触面21との間に油膜が形成される。トロイダル式無段変速機1は、この油膜のせん断力を用いて入力ディスク10と出力ディスク20との間でトルクを伝達する。
トラニオン31は、4つ設けられて、それぞれがパワーローラー30を1つずつ支持する。トラニオン31は、パワーローラー30を回転できるように支持する。また、トラニオン31は、パワーローラー30を入力ディスク10及び出力ディスク20に対して傾転できるように支持する。また、トラニオン31は、パワーローラー30を入力ディスク10及び出力ディスク20に対して入力軸11と直交する方向に移動できるように支持する。
油圧サーボ機構32は、油圧制御装置50からオイルが供給され、前記オイルの圧力によりパワーローラー30を中立位置から移動させる。すなわち、油圧サーボ機構32は、パワーローラー30を中立位置からオフセットさせるものである。油圧サーボ機構32は、回転する入力ディスク10及び出力ディスク20にパワーローラー30が接触した状態で、パワーローラー30を中立位置からオフセットすることで、パワーローラー30に傾転力を作用させる。これにより、パワーローラー30は、入力ディスク10及び出力ディスク20に対して傾転する。
ローラー押圧機構40は、ローラー押圧力を発生する。これにより、ローラー押圧機構40は、入力ディスク10及び出力ディスク20にパワーローラー30を押圧させる。ローラー押圧機構40は、本実施形態では、油圧制御装置50からオイルが供給され、前記オイルの圧力によって、ローラー押圧力を発生させる。ローラー押圧機構40は、ローラー押圧用油圧室構成部材41と、ローラー押圧用油圧室42とを有する。ローラー押圧用油圧室42は、入力ディスク10bと、ローラー押圧用油圧室構成部材41との間に形成される。
ローラー押圧機構40は、入力ディスク10bと対向するように設けられ、ローラー押圧用油圧室42の油圧により前後進切換機構120側に向かって、入力ディスク10bを押圧する。これにより、入力ディスク10bが出力ディスク20側に向かって押圧されると、ローラー押圧機構40は、入力ディスク10bと入力ディスク10aとにより、パワーローラー30及び出力ディスク20を挟み込む。これにより、ローラー押圧機構40は、ローラー押圧力を発生させる。
油圧制御装置50は、制御系50Aと潤滑系50Bとに供給されるオイルの圧力を調節する。本実施形態では、制御系50Aには、「ライン圧」のオイルが供給される。制御系50Aには、例えば、ローラー押圧機構40のローラー押圧用油圧室42や、パワーローラー30の油圧サーボ機構32の油圧室や、前後進切換機構120のフォワードクラッチ122を動作させるための油圧装置が含まれる。
一方、潤滑系50Bには、「セカンダリ圧」のオイルが供給される。潤滑系50Bには、例えば、トロイダル式無段変速機1の各部、特に変速を担うバリエーター部分に潤滑油としてのオイルを供給する装置が含まれる。なお、トルクコンバーター110のロックアップクラッチ113は、動作させるために必要なオイルの圧力が制御系50Aよりも低い。よって、本実施形態では、トルクコンバーター110のロックアップクラッチ113を動作させるための油圧室も潤滑系50Bに含まれる。
次に、トロイダル式無段変速機1が備えるセンサー類を説明する。トロイダル式無段変速機1は、センサー類として、例えば、傾転角センサー201と、ストロークセンサー202と、入力回転速度センサー203と、出力回転速度センサー204と、油温センサー205とを備える。傾転角センサー201は、パワーローラー30の傾転角θを検出する。傾転角センサー201は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、傾転角センサー201により検出された傾転角である検出傾転角θrを傾転角センサー201から取得する。
ストロークセンサー202は、パワーローラー30の基準中立位置Obからのオフセット量Xを検出する。ストロークセンサー202は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、ストロークセンサー202により検出されたオフセット量である検出オフセット量Xrをストロークセンサー202から取得する。入力回転速度センサー203は、入力ディスク10の回転速度を入力回転速度Ninとして検出する。入力回転速度センサー203は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、入力回転速度センサー203により検出された入力回転速度Ninを入力回転速度センサー203から取得する。
出力回転速度センサー204は、出力ディスク20の回転速度を出力回転速度Noutとして検出する。出力回転速度センサー204は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、出力回転速度センサー204により検出された出力回転速度Noutを出力回転速度センサー204から取得する。油温センサー205は、トランスミッションのオイルの温度である温度Toを検出する。油温センサー205は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、油温センサー205により検出された温度Toを油温センサー205から取得する。
車両CAは、上記のセンサー以外に、例えば、アクセル開度センサー206と、車速センサー207と、機関回転速度センサー208とを備える。アクセル開度センサー206は、ドライバーによって操作されるアクセルペダルの操作量であるアクセル開度PAPを検出する。アクセル開度センサー206は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばエンジンECU170は、アクセル開度センサー206により検出されたアクセル開度PAPをアクセル開度センサー206から取得する。
車速センサー207は、車両CAが走行する速度Vを検出する。車速センサー207は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、車速センサー207により検出された速度Vを車速センサー207から取得する。なお、実際には、車速センサー207は、例えば、車輪160に設けられて車輪160の回転速度を検出する。そして、トロイダル式無段変速機1は、変速制御装置2が車輪160の回転速度に基づいて速度Vを算出する。
機関回転速度センサー208は、内燃機関100のクランクシャフト101の回転速度である機関回転速度Neを検出する。機関回転速度センサー208は、変速制御装置2に電気的に接続される。これにより、例えばトランスミッションECU60は、機関回転速度センサー208により検出された機関回転速度Neを機関回転速度センサー208から取得する。
ここで、エンジンECU170と、トランスミッションECU60とは、互いに電気的に接続される。具体的には、エンジンECU170と、トランスミッションECU60とは、一つの電子基盤に実装されたり、別々の電子基盤に実装されてそれぞれの電子基盤が配線材によって電気的に接続されたりする。よって、エンジンECU170と、トランスミッションECU60とは、それぞれが各センサーから取得した情報を互いに共有して、それぞれの制御対象の制御に前記情報を用いることができる。次に油圧制御装置50の具体的な構成を説明する。
図2は、油圧制御装置の構成を示す概略図である。図2に示すように、油圧制御装置50は、オイルパン51と、オイルポンプ装置52と、ストレーナ53と、共通吸入オイル通路54aと、第1吸入オイル通路54bと、第1吐出オイル通路54cと、第2吸入オイル通路54dと、第2吐出オイル通路54eと、制御系吐出オイル通路54fと、潤滑系吐出通路54gと、リリーフオイル通路54hと、逆止弁55aと、リリーフ弁55bとを備えている。オイルポンプ装置52は、メインオイルポンプ56と、サブオイルポンプ57と、切替弁58とを含んで構成される。
メインオイルポンプ56は、オイルが貯められる容器であるオイルパン51からストレーナ53を介してオイルを吸入すると共に、吸入したオイルを吐出する装置である。メインオイルポンプ56は、共通吸入オイル通路54a及び第1吸入オイル通路54bでオイルパン51と接続される。具体的には、本実施形態の油圧制御装置50は、共通吸入オイル通路54aがオイルパン51に接続され、オイルパン51からオイルポンプ装置52に向かって共通吸入オイル通路54aから第1吸入オイル通路54bと第2吸入オイル通路54dとにオイル通路が分岐する。メインオイルポンプ56は、第1吐出オイル通路54cで制御系50Aと接続される。
サブオイルポンプ57は、オイルが貯められるオイルパン51からストレーナ53を介してオイルを吸入すると共に、吸入したオイルを吐出する装置である。サブオイルポンプ57は、共通吸入オイル通路54a及び第2吸入オイル通路54dでオイルパン51と接続される。また、サブオイルポンプ57は、第2吐出オイル通路54eで切替弁58と接続される。
ここで、メインオイルポンプ56及びサブオイルポンプ57は、内燃機関100のクランクシャフト101から動力を得て稼動する。メインオイルポンプ56及びサブオイルポンプ57は、吸入したオイルを吐出する。メインオイルポンプ56及びサブオイルポンプ57は、それぞれが吐出できるオイルの流量がほぼ同じか、または、メインオイルポンプ56が吐出できるオイルの流量が、サブオイルポンプ57が吐出できるオイルの流量より多く設定されている。以下、吐出できるオイルの流量を、吐出容量という。
また、メインオイルポンプ56及びサブオイルポンプ57は、内燃機関100のクランクシャフト101の回転速度である機関回転速度が速くなるほど吐出するオイルの流量が多くなり、機関回転速度が低くなるほど吐出するオイルの流量が少なくなる。なお、オイルポンプ装置52は、内燃機関100から動力を得て稼動するものに限定されず、例えば、電動機から動力を得てもよい。また、メインオイルポンプ56及びサブオイルポンプ57は、それぞれ別個の装置から動力を得てもよい。
切替弁58は、サブオイルポンプ57から吐出されたオイルの供給先を切り替えるための装置である。切替弁58は、例えば、ソレノイドに供給される電流値に基づいて、オイルの流路が切り替わるソレノイドバルブである。切替弁58は、トランスミッションECU60に電気的に接続される。これにより、トランスミッションECU60は、切替弁58に供給する電流値を調節することで切替弁58の動作を制御する。
切替弁58は、制御系吐出オイル通路54fで制御系50Aと接続される。具体的には、制御系吐出オイル通路54fは、一方の端部が切替弁58に接続され、他方の端部が第1吐出オイル通路54cに開口する。これにより、制御系吐出オイル通路54fを流れるオイルは、第1吐出オイル通路54cと合流して切替弁58に供給される。また、切替弁58は、潤滑系吐出通路54gで潤滑系50Bと接続される。
油圧制御装置50は、リリーフオイル通路54hで潤滑系50Bとオイルパン51とが接続される。本実施形態では、リリーフオイル通路54hは、一方の端部が潤滑系吐出通路54gに接続され、他方の端部が共通吸入オイル通路54aに開口する。逆止弁55aは、入口側が第2吐出オイル通路54eに連通し、出口側が第1吐出オイル通路54cに連通する。逆止弁55aは、第2吐出オイル通路54e側のオイルの圧力が所定の圧力になると、第2吐出オイル通路54e側から第1吐出オイル通路54c側へのオイルの通過を許容する一方、第1吐出オイル通路54c側から第2吐出オイル通路54e側へのオイルの通過を禁止する。
リリーフ弁55bは、リリーフオイル通路54hに設けられる。リリーフ弁55bは、サブオイルポンプ57から第2吐出オイル通路54eを介して潤滑系吐出通路54gに吐出されたオイルの圧力があらかじめ設定される所定の圧力以上となると、サブオイルポンプ57から吐出されたオイルの少なくとも一部をサブオイルポンプ57よりもオイルの流れの上流側、具体的には共通吸入オイル通路54aに戻す。
以上のように、オイルが流れる回路が構成されることにより、油圧制御装置50は以下に説明するように動作する。油圧制御装置50は、サブオイルポンプ57が吸入したオイルを制御系50Aのみに供給する場合と、吸入したオイルを潤滑系50Bにも供給する場合とがある。具体的には、切替弁58が切り替えられて、第2吐出オイル通路54eと制御系吐出オイル通路54fとが連通する場合に、サブオイルポンプ57は、制御系50Aのみにオイルを供給する。一方、切替弁58が切り替えられて、第2吐出オイル通路54eと潤滑系吐出通路54gとが連通する場合には、サブオイルポンプ57は、主に潤滑系50Bにオイルを供給する。但し、第2吐出オイル通路54e側のオイルの圧力が所定の圧力になると、第2吐出オイル通路54eのオイルの一部は、逆止弁55aを介してを制御系50Aにも供給される。
ここで、切替弁58が切り替えられて、第2吐出オイル通路54eと制御系吐出オイル通路54fとが連通する場合、油圧制御装置50は、メインオイルポンプ56及びサブオイルポンプ57の2つのオイルポンプから吐出されたオイルがすべて制御系50Aに供給されることになる。よって、第2吐出オイル通路54eと制御系吐出オイル通路54fとが連通する場合の方が、第2吐出オイル通路54eと潤滑系吐出通路54gとが連通する場合よりも、オイルポンプ装置52は、制御系50Aへの吐出容量が大きくなる。
以上により、オイルポンプ装置52は、トランスミッションECU60によって切替弁58の動作が制御されることにより、制御系50Aへの吐出容量が小容量と大容量との2段階で切り替えられる。ここで、以下の説明では、第2吐出オイル通路54eと制御系吐出オイル通路54fとが連通し、サブオイルポンプ57から吐出されたオイルがすべて制御系50Aに供給されている状態を、制御系50Aに2吐出状態という。2吐出状態の時、オイルポンプ装置52は、吐出容量が大容量となる。また、第2吐出オイル通路54eと潤滑系吐出通路54gとが連通し、サブオイルポンプ57から吐出されたオイルが主に潤滑系50Bに供給されている状態を、制御系50Aに1吐出状態という。1吐出状態の時、オイルポンプ装置52は、吐出容量が小容量となる。次に、変速制御装置2が実行する方法であって、制御系50Aへの吐出容量を切り替えるための吐出容量切替方法を説明する。
図3は、オイルポンプ装置の制御系への吐出容量を切り替えるための吐出容量切替方法を示すフローチャートである。図4は、オイルポンプ装置の制御系への吐出容量を切り替える際の、アクセル開度の変化と、入力ディスクに入力される回転の目標回転速度である目標入力回転速度の変化と、制御系へ供給されるオイルの流量の変化との一例を示すタイミングチャートである。
図3に示すように、トランスミッションECU60は、ステップST101で、油温センサー205から現在のオイルの温度Toを取得し、現在のオイルの温度Toがあらかじめ設定される所定範囲内であるか否かを判定する。油圧制御装置50は、オイルの温度Toがあらかじめ設定される所定温度より低い場合、オイルの粘度が高くオイルが流動しにくくなる。これにより、油圧制御装置50は、制御系50Aへのオイルの流量が不足しやすくなる。
また、油圧制御装置50は、オイルの温度Toがあらかじめ設定される所定温度より高い場合、オイルの粘度が低くオイルが流動しやすくなる一方で、その分油圧室に形成される隙間からオイルが漏れやすくなる。これにより、油圧制御装置50は、オイルの漏れ量が増加して制御系50Aへのオイルの流量が不足しやすくなる。このため、トランスミッションECU60は、オイルの温度Toがあらかじめ設定される所定範囲外であると判定した場合(ステップST101、No)、後述するように、切替弁58の動作を制御して、オイルポンプ装置52を2吐出状態に切り替える。
トランスミッションECU60は、現在のオイルの温度Toがあらかじめ設定される所定範囲内であると判定した場合(ステップST101、Yes)、ステップST102へ進む。トランスミッションECU60は、ステップST102で、機関回転速度センサー208から現在の機関回転速度Neを取得し、現在の機関回転速度Neがあらかじめ設定される所定機関回転速度Ne1以上であるか否かを判定する。所定機関回転速度Ne1は、例えば、2000rpmである。
トランスミッションECU60は、現在の機関回転速度Neが所定機関回転速度Ne1未満であると判定した場合(ステップST102、No)、ステップST103へ進む。ステップST103で、トランスミッションECU60は、車速センサー207から現在の車両CAの速度Vを取得し、現在の車両CAの速度Vがあらかじめ設定される所定速度以上であるか否かを判定する。
トランスミッションECU60は、現在の機関回転速度Neが所定機関回転速度Ne1以上であると判定した場合(ステップST102、Yes)、または、現在の車両CAの速度Vが所定速度以上であると判定した場合(ステップST103、Yes)、ステップST111へ進み、ステップST111の手順と、ステップST112の手順と、ステップST113の手順とを実行する。なお、ステップST111の手順と、ステップST112の手順と、ステップST113の手順は、後述する。
トランスミッションECU60は、現在の車両CAの速度Vが所定速度未満であると判定した場合(ステップST103、No)、ステップST104へ進む。ステップST104で、トランスミッションECU60は、車両CAのドライバーによる急変速要求が無いか否かを判定する。具体的には、トランスミッションECU60は、アクセル開度センサー206からアクセル開度PAPを取得し、アクセル開度PAPの変化率が所定の変化率よりも小さい場合に、車両CAのドライバーからの急変速要求が無いと判定する。また、トロイダル式無段変速機1がマニュアルシフト操作を受け付ける変速機の場合、トランスミッションECU60は、車両CAのドライバーによるマニュアルシフト操作が無い場合に、車両CAのドライバーからの急変速要求が無いと判定する。
トランスミッションECU60は、車両CAのドライバーによる急変速要求が無いと判定した場合(ステップST104、Yes)、ステップST105へ進む。ステップST105で、トランスミッションECU60は、押圧力アップ制御が非作動であるか否かを判定する。トランスミッションECU60は、例えば、各種センサーの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両CAの各部への制御信号などに基づいて、押圧力アップ制御が非作動であるか否かを判定する。
トランスミッションECU60による押圧力アップ制御は、例えば、タイヤがスリップした時や、ABS(Antilock Brake System)が作動した時などの非定常状態に実行される制御である。具体的には、トランスミッションECU60による押圧力アップ制御は、トランスミッションECU60によりローラー押圧機構40を制御し、ローラー押圧機構40が発生させるローラー押圧力を通常の運転状態よりも増加させる制御である。
油圧制御装置50は、トランスミッションECU60が押圧力アップ制御を実行中である場合、制御系50Aの1つであるローラー押圧用油圧室42へのオイルの必要流量が、定常状態よりも大きくなる。このため、トランスミッションECU60は、押圧力アップ制御が作動中であると判定した場合(ステップST105、No)、すなわち、非定常運転状態であると判定した場合、後述するように、切替弁58の動作を制御して、オイルポンプ装置52を2吐出状態に切り替える。ここで、非定常運転状態とは、押圧力アップ制御が作動中のように、車両CAが定常走行している場合以外の状態をいう。
トランスミッションECU60は、押圧力アップ制御が非作動であると判定した場合(ステップST105、Yes)、ステップST106へ進む。ステップST106で、トランスミッションECU60は、指令押圧力があらかじめ設定される所定値以下であるか否かを判定する。トランスミッションECU60は、例えば、各種センサーの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両CAの各部への制御信号などに基づいて、指令押圧力があらかじめ設定される所定値以下であるか否かを判定する。
指令押圧力は、ローラー押圧力を発生させるローラー押圧機構40に対してトランスミッションECU60から出力されるローラー押圧力の指令値(要求ローラー押圧力)である。油圧制御装置50は、指令押圧力があらかじめ設定される所定値より大きい値に設定されると、制御系50Aの1つであるローラー押圧機構40のローラー押圧用油圧室42へのオイルの必要流量が定常状態よりも大きくなる。このため、トランスミッションECU60は、指令押圧力があらかじめ設定される所定値より大きいと判定した場合(ステップST106、No)、すなわち、非定常運転状態であると判定した場合、後述するように、切替弁58の動作を制御して、オイルポンプ装置52を2吐出状態に切り替える。
トランスミッションECU60は、指令押圧力があらかじめ設定される所定値以下であると判定された場合(ステップST106、Yes)、ステップST107へ進む。ステップST107で、トランスミッションECU60は、指令押圧力変化量があらかじめ設定される所定量以下であるか否かを判定する。トランスミッションECU60は、例えば、各種センサーの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両CAの各部への制御信号などに基づいて、指令押圧力変化量があらかじめ設定される所定量以下であるか否かを判定する。
指令押圧力変化量は、ローラー押圧力を発生させるローラー押圧機構40に対してトランスミッションECU60から出力されるローラー押圧力の指令値(要求ローラー押圧力)の単位時間当たりの変化量(変化率)である。油圧制御装置50は、指令押圧力変化量があらかじめ設定される所定量より大きいと、制御系50Aの1つであるローラー押圧機構40のローラー押圧用油圧室42へのオイルの必要流量が定常状態よりも大きくなる。このため、トランスミッションECU60は、指令押圧力変化量があらかじめ設定される所定量より大きいと判定した場合(ステップST107、No)、すなわち、非定常運転状態であると判定した場合、後述するように、切替弁58の動作を制御して、オイルポンプ装置52を2吐出状態に切り替える。
トランスミッションECU60は、指令押圧力変化量があらかじめ設定される所定量以下であると判定した場合(ステップST107、Yes)、ステップST108へ進む。ステップST108で、トランスミッションECU60は、変速指示流量があらかじめ設定される所定流量以下であるか否かを判定する。トランスミッションECU60は、例えば、各種センサーの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両CAの各部への制御信号などに基づいて、変速指示流量があらかじめ設定される所定流量以下であるか否かを判定する。
変速指示流量は、パワーローラー30をストロークさせるための油圧サーボ機構32に対してトランスミッションECU60から出力される変速制御押圧力の指令値(要求変速制御押圧力)に応じた油圧サーボ機構32へのオイルの流量である。なお、パワーローラー30をストロークさせることにより、トランスミッションECU60は、パワーローラー30をさせて変速比を調節する。つまり、トランスミッションECU60は、変速指示流量を調節することで変速比を調節する。
油圧制御装置50は、変速指示流量があらかじめ設定される所定流量より大きいと、制御系50Aの1つである油圧サーボ機構32の変速制御油圧室へのオイルの必要流量が定常状態よりも大きくなる。このため、トランスミッションECU60は、変速指示流量があらかじめ設定される所定流量より大きいと判定した場合(ステップST108、No)、すなわち、非定常運転状態であると判定した場合、後述するように、切替弁58の動作を制御して、オイルポンプ装置52を2吐出状態に切り替える。
トランスミッションECU60は、変速指示流量があらかじめ設定される所定流量以下であると判定した場合(ステップST108、Yes)、ステップST109へ進む。ステップST109で、トランスミッションECU60は、ロックアップクラッチ113の係合過渡制御が実行中であるか否かを判定する。トランスミッションECU60は、例えば、各種センサーの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両CAの各部への制御信号などに基づいて、ロックアップクラッチ113の係合過渡制御が実行中であるか否かを判定する。ロックアップクラッチ113の係合過渡制御は、トルクコンバーター110のロックアップクラッチ113の係合中又は係合の解除中に実行される制御である。
トランスミッションECU60は、ロックアップクラッチ113の係合過渡制御が実行中であると判定した場合(ステップST109、Yes)、1吐出状態には切り替えずに、現在の吐出状態を継続して現在の制御周期を終了し、スタートに戻る。
一方、トランスミッションECU60は、ロックアップクラッチ113の係合過渡制御が実行中でないと判定した場合(ステップST109、No)、ステップST110へ進む。ステップST110で、トランスミッションECU60は、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出状態が1吐出状態である場合のオイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出流量、すなわち、メインオイルポンプ56による制御系50Aへのオイルの吐出流量が現在の制御系50Aでのオイルの必要流量以上であるか否かを判定する。
トランスミッションECU60は、例えば、各種センサーの検出信号やトロイダル式無段変速機1を含む車両CAの各部への制御信号などに基づいて、メインオイルポンプ56による制御系50Aへのオイルの吐出流量と現在の制御系50Aでのオイルの必要流量とを取得して比較し、メインオイルポンプ56による制御系50Aへのオイルの吐出流量が現在の制御系50Aでのオイルの必要流量以上であるか否かを判定する。ここで、制御系50Aでのオイルの必要流量は、トロイダル式無段変速機1の油圧サーボ機構32が必要とするオイルの流量や、ローラー押圧機構40のローラー押圧用油圧室42が必要とするオイルの流量など、制御系50Aの全体で必要とされるオイルの流量である。
トランスミッションECU60は、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出状態が1吐出状態である場合のオイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出流量が、現在の制御系50Aでのオイルの必要流量より少ないと判定した場合(ステップST110、No)、1吐出状態には切り替えずに、現在の吐出状態を継続して現在の制御周期を終了し、スタートに戻る。なお、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出状態が1吐出状態である場合のオイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出流量は、メインオイルポンプ56のみが制御系50Aへ吐出するオイルの流量と等しい。
トランスミッションECU60は、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出状態が1吐出状態である場合のオイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出流量が、現在の制御系50Aでのオイルの必要流量以上であると判定した場合(ステップST110、Yes)、ステップST111へ進む。トランスミッションECU60は、ステップST111で、図4の時刻t1に示すように、切替弁58の動作を制御してオイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出状態を1吐出状態に切り替える。
次に、トランスミッションECU60は、ステップST112に進む。ステップST112で、トランスミッションECU60は、定常変速速度低下制御フラグをONに設定する。ここで、本実施形態の吐出容量切替方法は、定常変速速度低下制御フラグをON、OFF設定する点に特徴がある。定常変速速度低下制御フラグの説明、及び、定常変速速度低下制御フラグをON、OFF設定することで奏する効果は、他の手順を説明してから説明する。
トランスミッションECU60は、ステップST112を実行すると、ステップST113へ進む。ステップST113で、トランスミッションECU60は、変速遅延制御フラグをOFFに設定する。そして、トランスミッションECU60は、現在の制御周期を終了し、スタートに戻る。
この場合、トランスミッションECU60は、ステップST111を実行する時にオイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出状態がもともと1吐出状態であればこの1吐出状態を継続する。また、トランスミッションECU60は、ステップST113を実行する時に変速遅延制御フラグがもともとOFFであればこのOFFを継続する。
このようにして、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置50は、機関回転速度Neが所定機関回転速度Ne1以上の場合(ステップST102、Yes)、または、車両CAの速度Vが所定速度以上の場合(ステップST103、Yes)に、オイルポンプ装置52を1吐出状態として、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出容量を小容量に設定する。
さらに、トロイダル式無段変速機1の油圧制御装置50は、機関回転速度Neが所定の所定機関回転速度Ne1未満であっても、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両CAの運転状態が定常運転状態に近い状態である場合に、オイルポンプ装置52を1吐出状態として、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出容量を小容量に設定する。以上により、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ装置52が1吐出状態となる領域を従来よりも拡大できる。なお、ここでいう領域とは、以下に説明するT1及びT2のことである。
図5は、本実施形態の油圧制御装置が1吐出状態の領域を示すグラフである。図5の縦軸は機関回転速度Neを示し、横軸は車両CAの速度Vを示す。基準期間回転速度Ne0は、メインオイルポンプ56とサブオイルポンプ57が稼動する際の基準となる機関回転速度である。基準期間回転速度Ne0は、例えば内燃機関100のアイドル回転速度程度である。図5に示すT1は、従来のオイルポンプ装置が1吐出状態に切り替わる領域を示す。T2は本実施形態のオイルポンプ装置52が1吐出状態に切り替わる領域のうち、T1から拡大された領域を示す。つまり、オイルポンプ装置52が1吐出状態に切り替わる領域は、T1とT2とを合わせた領域である。
図5に示すように、従来よりも、オイルポンプ装置52が1吐出状態となる領域を拡大できる。これにより、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ装置52が1吐出状態となる機会が増加する。または、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ装置52が1吐出状態となる期間が増加する。結果として、トロイダル式無段変速機1は、サブオイルポンプ57によるオイルポンプ負荷、すなわちオイルポンプ駆動損失を低減できる。よって、油圧制御装置50は、内燃機関100を搭載する車両CAの燃費を向上できる。
ここで、トランスミッションECU60は、図3に示すステップST101でオイルの温度Toがあらかじめ設定される所定範囲外であると判定した場合(ステップST101、No)、ステップST104で車両CAのドライバーによる急変速要求が有ると判定した場合(ステップST104、No)、ステップST105で押圧力アップ制御が作動中であると判定した場合(ステップST105、No)、ステップST106で指令押圧力があらかじめ設定される所定値より大きいと判定した場合(ステップST106、No)、ステップST107で指令押圧力変化量があらかじめ設定される所定量より大きいと判定した場合(ステップST107、No)、ステップST108で変速指示流量があらかじめ設定される所定流量より大きいと判定した場合(ステップST108、No)、トロイダル式無段変速機1を搭載する車両CAの運転状態が非定常運転状態であると判定し、ステップST114へ進む。ステップST114で、トランスミッションECU60は、切替弁58の動作を制御して、図4の時刻t2に示すように、オイルポンプ装置52を2吐出状態に切り替る。
次に、トランスミッションECU60は、ステップST115へ進む。ステップST115で、トランスミッションECU60は、定常変速速度低下制御フラグをOFFに設定する。次に、トランスミッションECU60は、ステップST116へ進む。ステップST116で、トランスミッションECU60は、オイルポンプ装置52の吐出容量の切り替え開始時点、すなわち、トランスミッションECU60からオイルポンプ装置52へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点、例えば図4の時刻t2からあらかじめ設定された所定時間経過していないか否かを判定する。
トランスミッションECU60は、トランスミッションECU60からオイルポンプ装置52へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点からあらかじめ設定された所定時間経過していないと判定した場合(ステップST116、Yes)、すなわち、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出流量が実際にメインオイルポンプ56とサブオイルポンプ57との合計の吐出流量まで増加していないと判定した場合、ステップST117へ進む。ステップST117で、トランスミッションECU60は、変速遅延制御フラグをONに設定する。
ここで、トランスミッションECU60は、変速遅延制御フラグがONの状態で変速を実行すると、変速遅延制御を実行することになる。具体的には、トランスミッションECU60は、変速遅延制御を実行することで、変速遅延制御を実行しない場合よりも変速の開始時期を遅らせて変速する。または、トランスミッションECU60は、変速遅延制御を実行しない場合よりも変速速度を小さくして変速する。なお、変速速度とは、変速比の時間変化率のことである。
ここで、油圧制御装置50は、メインオイルポンプ56とサブオイルポンプ57との2吐出に切り替えられても、制御系50Aに供給されるオイルの流量が急増するまでに遅れを要する。この遅れに起因して、制御系50Aへのオイルの必要流量に対して制御系50Aへの実際のオイルの吐出流量が不足するおそれがある。しかしながら、本実施形態の油圧制御装置50は、ステップST118で変速遅延制御を実行する。これにより、油圧制御装置50は、制御系50Aへのオイルの必要流量に対して制御系50Aへの実際のオイルの吐出流量が不足するおそれを抑制できる。
ステップST117を実行すると、トランスミッションECU60は、ステップST118に進む。ステップST118で、トランスミッションECU60は、制御系50Aに供給するオイルの圧力であるライン圧を現在よりも上昇させる。そして、ステップST118を実行すると、トランスミッションECU60は、現在の制御周期を終了し、スタートに戻る。
また、トランスミッションECU60は、ステップST116でトランスミッションECU60からオイルポンプ装置52へ吐出容量の切り替え指令が出力された時点からあらかじめ設定された所定時間経過したと判定した場合(ステップST116、No)、すなわち、図4の時刻t3に示すように、オイルポンプ装置52による制御系50Aへのオイルの吐出流量が、実際にメインオイルポンプ56とサブオイルポンプ57との合計の吐出流量まで増加した場合、ステップST119に進む。ステップST119で、トランスミッションECU60は、変速遅延制御フラグをOFFに設定し、現在の制御周期を終了し、スタートに戻る。
ここで、本実施形態の吐出容量切替方法の特徴部分である定常変速速度低下制御フラグについて説明する。定常変速速度低下制御フラグがONに設定されていると、トランスミッションECU60は、急変速以外、つまり定常変速の際に、定常変速速度低下制御フラグがOFFに設定されている場合よりも、変速速度を遅く設定する。
ここで、トロイダル式無段変速機は、オイルポンプ装置52を1吐出状態に切り替えると、オイルポンプ装置52の吐出容量が低下する。これにより、トロイダル式無段変速機は、オイルポンプ装置52を1吐出状態に切り替えると、変速指示流量が所定流量よりも大きくなりやすくなる(ステップST108、No)。これに起因して、トロイダル式無段変速機は、オイルポンプ装置52が1吐出状態から2吐出状態になりやすくなる。この場合、トロイダル式無段変速機は、オイルポンプ装置52が1吐出状態の期間が短くなる。また、切替弁58の動作回数も増加する。
しかしながら、本実施形態の吐出容量切替方法は、ステップST112で定常変速速度低下制御フラグがONに設定する手順を含む。よって、トロイダル式無段変速機1は、定常変速速度低下制御フラグがONに設定されている間、定常変速速度低下制御フラグがONに設定されている場合よりも、変速速度が低下する。変速速度が低下すると、変速に必要なオイルの流量が低下するため、変速指示流量が減少する。
これにより、本実施形態の吐出容量切替方法をトランスミッションECU60が実行することにより、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ装置52を1吐出状態に切り替えた際に、変速指示流量が所定流量よりも大きくなりにくくなる。よって、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ装置52が1吐出状態から2吐出状態に頻繁に切り替わるおそれを抑制できる。
これにより、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ装置52が1吐出状態の期間をより長く確保できる。よって、トロイダル式無段変速機1は、オイルポンプ駆動損失をより好適に低減できる。結果として、トロイダル式無段変速機1は、内燃機関100を搭載する車両CAの燃費をより好適に向上できる。さらに、トロイダル式無段変速機1は、切替弁58の動作回数も低減できる。
ここで、変速制御装置2は、トランスミッションECU60が上記の吐出容量切替方法を実行するものとして説明したが、例えば、変速制御装置2は、エンジンECU170が上記の吐出容量切替方法を実行してもよい。また、エンジンECU170及びトランスミッションECU60以外の第3のECUを備える場合、前記第3のECUが吐出容量切替方法を実行してもよい。