つぎに、この発明の実施の形態を説明する。この発明は、車両、運搬機械、工作機械などに用いることが可能である。この発明において、動力源は被駆動部材に伝達する動力を発生する装置である。この動力源としては、単数の駆動力源または、動力の発生原理が異なる複数種類の動力源を用いることが可能である。動力の発生原理が異なる複数種類の動力源としては、例えば、エンジン、電動モータ、油圧モータ、フライホイールシステムなどを用いることが可能である。前記被駆動部材とは、動力源から伝達される動力により、回転運動、往復運動、直線運動などの動作をおこなうものである。この発明を車両に用いる場合、動力源から車輪に至る動力伝達経路に無段変速機が配置される。すなわち、車輪が前記被駆動部材に相当する。また、この発明を車両に用いる場合、動力源の動力が、前輪または後輪の何れか一方に伝達される構成のパワートレーンを有する車両、すなわち、二輪駆動車、または動力源の動力が、前輪および後輪の両方に伝達される構成のパワートレーンを有する車両、すなわち、四輪駆動車のいずれにも適用可能である。
この発明において、無段変速機でトルクを伝達する場合にオイルが必要となるオイル必要部は、前記無段変速機を構成する要素の一部、または、動力源から前記被駆動部材に至る動力伝達経路を構成する要素の一部のいずれに設けられていてもよい。この発明において、無段変速機としてはトロイダル型無段変速機、ベルト式無段変速機が挙げられる。また、動力源から前記被駆動部材に至る動力伝達経路を構成する要素の一部には、ギヤ同士の噛み合い部分、回転要素を支持する軸受、回転要素同士の間における動力伝達状態を制御するクラッチおよびブレーキなどの機構が含まれる。また、オイル必要部としては、オイルのせん断力によりトルク伝達がおこなわれる部位、オイルにより潤滑・冷却される部位、またはオイルを作動油として動作するアクチュエータ、制御機器、油圧機器などが挙げられる。また、この発明におけるオイルポンプを駆動する構成として、被駆動部材に動力を伝達する動力源のトルクで駆動する構成を採用できる。
これ以外の構成としては、被駆動部材に動力を伝達しない動力源、つまり、オイルポンプを駆動するために専用の駆動用動力源を設け、その駆動用動力源のトルクをオイルポンプに伝達して駆動する構成を採用することもできる。駆動用動力源としては、電動モータが挙げられる。この発明における各油路には、油路自体の他に、油路に設けられたバルブのポート(具体的にはドレーンポート)、バルブ自体などの構成が含まれる。すなわち、この発明における油路は、オイルが流通する経路または開口部(ポート)などを構成する機構が含まれる。この発明における供給量制御装置には、オイルの流量を制御するバルブ、そのバルブの動作を制御する信号圧を出力するデューティソレノイドバルブ、そのデューティソレノイドバルブの通電電流を制御する電子制御装置などが含まれる。すなわち、この発明における供給量制御装置は、オイルの流量を直接または間接的に制御するシステム全体を意味する。さらに、この発明を工作機械に用いる場合、工作物を切削する刃物、工作物を保持するチャックなどが、前記被駆動部材に相当する。さらに、この発明において回転要素および回転部材は、トルク伝達をおこなうものであり、コネクティングドラム、ギヤ、シャフト、キャリヤ、メンバなどの機構が含まれる。
つぎに、この発明を、無段変速機を搭載した車両に用いた場合の具体例を、図2に基づいて説明する。この図2は、無段変速機を有する車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統を示す概念図である。この図2に示す車両1においては、動力源としてエンジン2が搭載されており、そのエンジン2から出力されたトルクが、流体伝動装置3および前後進切換装置4および無段変速機5およびデファレンシャル6を経由して、車輪7に伝達されるように構成されている。この図2においては、車両1の前部にエンジン2が搭載され、そのエンジン2のトルクが後輪である車輪7に伝達されように構成されたパワートレーンの車両、いわゆるフロントエンジン・リヤドライブ(FR)型の車両が、一例として示されている。前記エンジン2は、燃料を燃焼させた場合に発生する熱エネルギを、運動エネルギに変換して出力する動力装置であり、そのエンジン2の出力軸であるクランクシャフト8と、前記流体伝動装置3とが動力伝達可能に接続されている。この流体伝動装置3は、流体の運動エネルギにより動力伝達をおこなうことの可能なクラッチであり、図2の構成例では、流体伝動装置3として、トルク増幅機能を有するトルクコンバータが用いられている。以下、「流体伝動装置3」を便宜上、「トルクコンバータ3」と記す。
このトルクコンバータ3は、入力要素としてのポンプインペラ9と、出力要素としてのタービンランナ10とが相対回転可能に、かつ、同軸上に配置されている。また、前記ポンプインペラ9はケーシング11と一体回転するように連結されており、そのケーシング11が前記クランクシャフト8と動力伝達可能に接続されている。さらに、前記タービンランナ10はトルク伝達軸12と一体回転するように連結されている。これらのポンプインペラ9およびタービンランナ10には、多数のブレード(図示せず)が設けられており、前記ポンプインペラ9とタービンランナ10との間にコンバータ油室13が形成されている。そして、コンバータ油室13を経由して作動油が供給されるとともに、前記ポンプインペラ9の回転によって発生する作動油の運動エネルギにより、ポンプインペラ9からタービンランナ10に動力が伝達される。また、ポンプインペラ9およびタービンランナ10の内周側の部分には、前記タービンランナ10から送り出された作動油の流動方向を選択的に変化させて前記ポンプインペラ9に流入させるステータ14が配置されている。このステータ14の働きにより、前記ポンプインペラ9と前記タービンランナ10との間で伝達されるトルクを増幅可能である。
さらに、前記ケーシング11と前記トルク伝達軸12とを選択的に連結・解放するロックアップクラッチ15が設けられている。さらに、このロックアップクラッチ15は、前記ケーシング11とトルク伝達軸12との間で、摩擦力により動力伝達をおこなうために設けられた機構である。このロックアップクラッチ15は、前記トルク伝達軸12と共に回転する摩擦材を、前記ケーシング11の内壁面に押し付けることにより、伝達トルクが制御されるように構成されている。このロックアップクラッチ15の伝達トルクを制御するために、係合用油圧室16および解放用油圧室17が設けられており、この係合用油圧室16と解放用油圧室17との圧力差に基づいて、前記ロックアップクラッチ15が係合または解放される。具体的には、前記係合用油圧室16の油圧が前記解放用油圧室17の油圧よりも高くなった場合は、前記摩擦材が前記ケーシング11に押し付けられて摩擦力が高められる。このようにして、ロックアップクラッチ15の伝達トルクが高められる(係合される)。
これに対して、前記係合用油圧室16の油圧が前記解放用油圧室17の油圧よりも低くなった場合は、前記摩擦材が前記ケーシング11から離れて摩擦力が低下する。このようにして、前記ロックアップクラッチ15の伝達トルクが低下する(解放される)。この実施例において、ロックアップクラッチ15が解放された場合は、そのロックアップクラッチ15の摩擦力による動力伝達は不可能である。これに対して、ロックアップクラッチ15が係合されている場合は、そのロックアップクラッチ15の摩擦力による動力伝達が可能である。また、この構成例では、「ロックアップクラッチ15の係合」には「ロックアップクラッチ15のスリップ」が含まれる。なお、前記コンバータ油室13は、前記係合用油圧室16と連通されており、前記コンバータ油室13の油圧が上昇すると、前記係合用油圧室16の油圧が上昇し、前記コンバータ油室13の油圧が低下すると、前記係合用油圧室16の油圧が低下するように構成されている。
一方、前後進切換装置4は、前記トルク伝達軸12の回転方向に対して、無段変速機5の入力軸18の回転方向を正・逆に切り換える装置である。この前後進切換装置4として、図2に示す例では、ダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、前記トルク伝達軸12と一体回転するサンギヤ19と、このサンギヤ19と同軸上に配置されたリングギヤ20とが設けられ、このサンギヤ19に噛合したピニオンギヤ21と、このピニオンギヤ21およびリングギヤ20に噛合されたピニオンギヤ22が設けられており、この2つのピニオンギヤ21,22がキャリヤ23によって、自転かつ公転自在に保持されている。さらに、前後進切換装置4は、前記トルク伝達軸12と、前記キャリヤ23とを選択的に動力伝達可能に連結し、かつ、解放する前進用クラッチ24を有している。また前後進切換装置4は、前記リングギヤ20を選択的に固定することにより、前記トルク伝達軸12の回転方向に対する入力軸18の回転方向を正・逆に切り換える後進用ブレーキ25を有している。この実施例では、前進用クラッチ24および後進用ブレーキ25として、油圧制御式のクラッチおよびブレーキが用いられている。すなわち、前進用クラッチ24の伝達トルクを制御するクラッチ用油圧室(後述)が設けられており、後進用ブレーキ25の制動力もしくはトルク容量を制御するブレーキ用油圧室(後述)が設けられている。
つぎに、前記無段変速機5の構成を説明する。図2においては、無段変速機5としてトロイダル型無段変速機が示されている。この無段変速機5は、入力ディスク26および出力ディスク27を1組の変速部28として、2組の変速部28を有する、いわゆるダブルキャビティ式の無段変速機である。2個の入力ディスク26同士の間には、2個の出力ディスク27が配置されており、入力ディスク26および出力ディスク27は、全て同軸上に配置されている。また、前記2個の入力ディスク26は前記入力軸18と一体回転し、かつ、その入力軸18の軸線に沿って相対移動可能に取り付けられている。そして、前記入力ディスク26同士を、前記入力軸18の軸線に沿った方向で近づける向きの挟圧力を発生させる挟圧力発生機構(図示せず)が設けられている。この挟圧力発生機構としては、例えば油圧シリンダ、空気圧シリンダ、カム機構などのアクチュエータを用いることが可能であり、この構成例では、油圧シリンダを用いているものとする。さらに、前記2個の入力ディスク26には共にトロイダル面29が形成されている。一方、2個の出力ディスク27は、前記入力軸18と相対回転可能に構成され、かつ、2個の出力ディスク27が一体回転するように連結されている。さらに、2個の出力ディスク27には共にトロイダル面30が形成されている。そして、各変速部28には複数のパワーローラ31が設けられており、そのパワーローラ31の外周面が、各変速部28を構成する入力ディスク26のトロイダル面29、および出力ディスク27のトロイダル面30に対して、トラクションオイルを介して接触する。
また、前記変速部28毎に、各パワーローラ31を支持するトラニオン(図示せず)が設けられており、略水平な平面内で、各パワーローラ31は、前記入力軸18の軸線と直交する回転中心線を中心として回転可能に構成されている。また、各トラニオンは、略鉛直方向の中心線に沿った方向に往復動可能に構成されているとともに、略水平な平面内で前記中心線を中心として、一定角度範囲内で回転(傾転)可能に構成されている。さらにまた、前記中心線に沿った方向におけるトラニオンの動作および停止位置を制御するアクチュエータ(図示せず)が設けられている。この具体例では、油圧制御式のアクチュエータが用いられており、複数の変速制御用油圧室(後述)の油圧を制御することにより、前記トラニオンの動作および停止位置が制御されるように構成されている。さらに、前記2個の出力ディスク27と一体回転する出力ギヤ32が設けられており、前記入力軸18と平行に中間軸33が設けられている。この中間軸33にはギヤ34,35が形成されており、前記出力ギヤ32とギヤ34とが噛合されている。また、ギヤ36を有する出力軸37が設けられており、前記ギヤ35およびギヤ36に噛合する中間ギヤ38が設けられている。さらに、前記出力軸37が前記デファレンシャル6と動力伝達可能に連結されている。
つぎに、図2に示された車両1の制御系統を説明する。まず、電子制御装置39が設けられており、この電子制御装置39には、エンジン回転数、入力ディスク26の回転数、出力ディスク27の回転数、車速、加速要求、制動要求、シフトポジションなどを示す信号が入力される。この電子制御装置39からは、エンジン2を制御する信号、油圧制御装置40を制御する信号などが出力される。この油圧制御装置40の機能により、前記ロックアップクラッチ15の係合・解放、前後進切換装置4の前進用クラッチ24の係合・解放、後進用ブレーキ25の係合・解放、無段変速機5の変速比、無段変速機5の伝達トルクなどが制御される。
さらに、前記車両1においておこなわれる制御の概略を説明すると、前記エンジン2から出力されたトルクは、前記トルクコンバータ3に伝達される。ここで、前記係合用油圧室16の油圧が高められて、前記ロックアップクラッチ15が係合された場合は、前記クランクシャフト8と前記トルク伝達軸12との間で、摩擦力により動力伝達がおこなわれる。これとは逆に、解放用油圧室17の油圧が高められて、前記ロックアップクラッチ15が解放された場合は、前記ポンプインペラ9と前記タービンランナ10との間で、作動油の運動エネルギにより動力伝達がおこなわれる。このように、前記ロックアップクラッチ15が解放されている場合、前記トルクコンバータ3においては、前記ポンプインペラ9と前記タービンランナ10との速度比が、1.0未満の領域(トルクコンバータレンジ)にある場合、ステータ14の機能によるトルク増幅がおこなわれる。これに対して、前記ポンプインペラ9と前記タービンランナ10との速度比が、前記トルクコンバータレンジよりも1.0に近い領域(流体継手レンジ)にある場合、トルク増幅はおこなわれない。
このようにして、エンジントルクが前記トルク伝達軸12に伝達される。つぎに、前記前後進切換装置4におけるトルク伝達原理および制御について説明する。シフトポジションとして前進ポジション、例えば、D(ドライブ;走行)ポジションが選択された場合は、前記クラッチ用油圧室の油圧が高められて、前記前進用クラッチ24が係合されるとともに、前記ブレーキ用油圧室の油圧が低下されて、前記後進用ブレーキ25が解放される。すると、前記トルク伝達軸12とキャリヤ23とが一体回転し、前記トルク伝達軸12のトルクが前記入力軸18に伝達される。これに対して、後進ポジションが選択された場合は、前記クラッチ用油圧室の油圧が低下されて、前記前進用クラッチ24が解放されるとともに、前記ブレーキ用油圧室の油圧が高められて、前記後進用ブレーキ25が係合される。すなわち、前記リングギヤ20が固定される。そして、エンジントルクがサンギヤ19に伝達されると、前記リングギヤ20が反力要素となって、前記サンギヤ19のトルクがキャリヤ23を経由して前記入力軸18に伝達される。ここで、入力軸18の回転方向は、前進ポジションの場合とは逆になる。
つぎに、前記無段変速機5におけるトルク伝達原理および制御を説明する。前記挟圧力発生機構により、前記入力ディスク26同士を近づける向きの荷重が与えられる。また、前記パワーローラ31がトロイダル面29,30に接触する部位には、トラクションオイルが供給される。前記のように、前記入力軸18にトルクが伝達されると、前記トラクションオイルが前記荷重により加圧されることによりガラス遷移化し、それに伴う大きいせん断力によって入力ディスク26から出力ディスク27にトルクが伝達される。ここで、パワーローラ31と入力ディスク26との接触部S1の半径と、出力ディスク27とパワーローラ31との接触部S1の半径との比に応じて、入力ディスク26の回転数と、出力ディスク27の回転数との比が変化し、その回転数(回転速度)の比率が無段変速機5の変速比となる。
さらに、無段変速機5の変速比の制御について説明すると、変速比制御用油圧室(後述)の油圧を制御して、トラニオンの動作が制御される。前記パワーローラ31の軸線が、前記入力軸18の軸線と直交する状態で、前記トラニオンが停止している場合は、前記変速比は略一定に維持される。このように、「前記パワーローラ31の軸線が、前記入力軸18の軸線と直交する状態で、前記トラニオンが停止している位置」が「中立位置」である。これに対して、前記変速比を変更する場合は、中立位置に停止しているトラニオンを、前記中心線に沿って何れか一方の向きで動作させる。すると、パワーローラ31と各ディスク26,27との接触点で、パワーローラ31を傾転させる力(サイドスリップ力)が生じて、各パワーローラ31が傾転する。ここで、前記変速比の目標変化量に基づいて、前記トラニオンの目標ストローク量もしくは目標ストローク位置が求められており、前記トラニオンの実ストローク量が目標ストローク量に到達するか、または実ストローク位置が目標ストローク位置に到達すると、前記トラニオンが中心線に沿って、前記とは逆向きに動作されて、前記トラニオンが中立位置に復帰させられ、そのパワーローラ31の傾転が止まる。
このようにして、無段変速機5で目標とする変速比に維持される。上記したトラニオンの動作の制御において、前記中立位置で停止しているトラニオンを、前記入力ディスク26の回転方向と同方向に動作させると、前記サイドスリップ力により前記パワーローラ31が傾転し、前記入力ディスク26における接触半径が小さくなり、かつ、前記出力ディスク27における接触半径が大きくなる変速、すなわち、変速比が大きくなるダウンシフトがおこなわれる。これに対して、前記中立位置で停止しているトラニオンを、前記入力ディスク26の回転方向とは逆方向に動作させると、前記サイドスリップ力により前記パワーローラ31が傾転し、前記入力ディスク26における接触半径が大きくなり、かつ、前記出力ディスク27における接触半径が小さくなる変速、すなわち、変速比が小さくなるアップシフトがおこなわれる。そして、前記入力ディスク26から前記出力ディスク27にトルクが伝達されると、そのトルクは出力ギヤ32を経由して中間軸33に伝達される。中間軸33のトルクは、前記中間ギヤ38を経由して出力軸37に伝達される。この出力軸37のトルクが、前記デファレンシャル6を経由して車輪7に伝達されて、駆動力が発生する。
上記のように、前記無段変速機5では、トラクションオイルのせん断力により動力伝達がおこなわれるため、そのトラクションオイルの温度を低く保つことにより、トラクション係数を高くすることができ、前記パワーローラ31の接触部S1における摩擦係数が高くなり、かつ、前記パワーローラ31がスリップすることを抑制できる。その結果、前記無段変速機5における動力伝達効率の低下を抑制でき、かつ、部品の耐久性が向上する。この実施例では、前記無段変速機5に供給されるトラクションオイルを冷却するための機構を有しており、その冷却装置の一例を、図1に基づいて説明する。この図1は、前述した油圧制御装置40の具体的な構成例である。まず、エンジントルクにより駆動されるメインオイルポンプ41およびサブオイルポンプ42が設けられており、そのメインオイルポンプ41の吸入口43およびサブオイルポンプ42の吸入口44には、油路45を介してストレーナ46が取り付けられている。このストレーナ46はオイルパン47内に設けられている。前記メインオイルポンプ41の吐出口48には油路49が接続され、その油路49は、変速制御弁(図示せず)を経由して変速制御用油圧室50A,50Bに接続されている。この変速制御用油圧室50A,50Bの油圧に基づいて、1本のトラニオンを中心線方向に動作させる力が発生する。また、油路49には、前記挟圧力発生機構の油圧室51が接続されている。さらに油路49には、クラッチ用油圧室52およびブレーキ用油圧室53が接続されている。
さらに、前記油路49はプライマリレギュレータバルブ54の入力ポート55に接続され、そのプライマリレギュレータバルブ54の出力ポート56には油路57が接続されている。このプライマリレギュレータバルブ54は、油路49のオイルを前記油路57に排出することにより、前記油路49の油圧を制御する圧力制御弁である。また、前記油路57は、油路118を介して、ロックアップリレーバルブ58の第1入力ポート59に接続されている。このロックアップリレーバルブ58は、第1入力ポート59の他に、第2入力ポート60および第1出力ポート61および第2出力ポート62およびドレーンポート63および信号圧ポート120を有している。このロックアップリレーバルブ58は、信号圧ポート120に入力される信号圧により、オン・オフの2段階の動作態様に切り替え可能である。具体的には、信号圧ポート120に入力される信号圧が所定圧以下である場合は、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様はオフとなる。このロックアップリレーバルブ58の動作態様がオフである場合は、前記第2出力ポート62と前記ドレーンポート63とが接続され、かつ、前記第1入力ポート59と前記第1出力ポート61とが接続され、かつ、前記第2入力ポート60が閉じられる。そして、信号圧ポート120に入力される信号圧が上昇して、その信号圧が所定圧を越えた場合は、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様はオンとなる。このロックアップリレーバルブ58の動作態様がオンになった場合は、前記第1入力ポート59と前記第2出力ポート62とが接続され、かつ、前記第2入力ポート60と前記第1出力ポート61とが接続され、かつ、前記ドレーンポート63が閉じられる。
また、前記油路118から分岐する油路119が設けられており、その油路119がロックアップコントロールバルブ65を介して前記第2入力ポート60に接続されている。このロックアップコントロールバルブ65は信号圧ポート66に入力される信号圧に基づいて、第2入力ポート60に供給されるオイルの油圧をリニアに制御するものである。具体的には、前記信号圧ポート66に入力される信号圧が上昇することに比例して、前記第2入力ポート60に供給される油圧を上昇させる制御特性を有している。そして、前記第1出力ポート61は前記解放用油圧室17に接続され、第2出力ポート62は前記コンバータ油室13に接続されている。また、前記ドレーンポート63には油路64が接続され、その油路64からオイルパン47に至る経路にはウォーマー67が設けられている。このウォーマー67は、エンジン1を冷却する冷却装置(図示せず)の冷却水と、前記油路64を流れるオイルとの間で熱交換をおこなわせることにより、前記オイルを温める熱交換器である。なお、前記油路64におけるドレーンポート63とウォーマー67との間には、リリーフバルブ68が設けられている。
一方、前記サブオイルポンプ42の吐出口69には油路70が接続されており、その油路70と前記油路49とを接続する油路71には逆止弁72が設けられている。この逆止弁72は、油路70の油圧が油路49の油圧よりも所定値以上高圧になると開放されて、油路70のオイルを油路49に供給する構成を有している。また逆止弁72は、油路49のオイルが油路70に流れ込むことを防止する。さらに、前記油路49,70に接続されたポートを有するオイルポンプ切替バルブ73が設けられている。このオイルポンプ切替バルブ73は、入力ポート74と、第1出力ポート75と、第2出力ポート76と、信号圧ポート77とを有しており、前記入力ポート74は前記油路70に接続され、第1出力ポート75は前記油路49に接続され、第2出力ポート76には油路78が接続されている。このオイルポンプ切替バルブ73は、信号圧ポート77に入力される信号圧の高低に応じて、オン・オフ2種類の動作態様で切り替えられる。具体的には、信号圧ポート77に入力される信号圧が高圧である場合は、前記オイルポンプ切替バルブ73の動作態様がオンとなる。このオイルポンプ切替バルブ73の動作態様がオンとなった場合は、第1出力ポート75が閉じられ、かつ、前記入力ポート74と第2出力ポート76とが接続される。これに対して、前記信号圧ポート77に入力される信号圧が低圧である場合は、前記オイルポンプ切替バルブ73の動作態様がオフとなる。このオイルポンプ切替バルブ73の動作態様がオフとなった場合は、第2出力ポート76が閉じられ、かつ、前記入力ポート74と第1出力ポート75とが接続される。
さらに、前記油路78は冷却装置79の入口80に接続されている。この冷却装置79は、入口80から流れ込んだオイルを冷却して出口81から排出する装置であり、空冷式または水冷式のいずれでもよい。そして、前記出口81には、第1オイル必要部82にオイルを供給する油路83が接続されている。この第1オイル必要部82は、前記無段変速機5でトルク伝達をおこなう場合に、オイルを必要とする部位である。言い換えれば、第1オイル必要部82には、オイルを無段変速機5におけるトルク伝達の媒介として用いる部位、無段変速機5でトルク伝達をおこなう場合に、オイルにより冷却・潤滑される部位が含まれる。この第1オイル必要部82としては、例えば、前記パワーローラ31とトロイダル面29,30との接触部分S1、パワーローラ31を支持する軸受の摺動部分、前記トラニオンを支持する軸受の摺動部分などが挙げられる。なお、前記油路83にはリリーフ弁115が設けられている。
前記油路78には絞り部84が設けられており、その油路78に接続されかつ、前記絞り部84を迂回する油路85が設けられている。絞り部84はオリフィスまたはチョークのいずれでもよい。この油路85には冷却流量制御弁86が設けられている。この冷却流量制御弁86には信号圧ポート87が設けられている。この冷却流量制御弁86は、前記信号圧ポート87に入力される信号圧に基づいて、前記油路85を経由して前記冷却装置79に供給されるオイル量を制御する(増加・減少)機構である。具体的には、冷却流量制御弁87は図3に示すように、前記信号圧ポート87に入力される信号圧が上昇することに比例して、オイルの流通するポート(図示せず)の断面積が拡大されて、オイルの流量Qがリニアに増加する特性を有している。前記油路78と前記油路57とを接続する経路にはセカンダリレギュレータバルブ88が設けられている。このセカンダリレギュレータバルブ88は、入力ポート89および第1ドレーンポート90および第2ドレーンポート91を有している。そして、前記油路56が入力ポート89に接続され、第1ドレーンポート90には、油路92を介して前記油路78が接続されている。具体的には、前記油路78における前記第2出力ポート76と前記絞り部84との間の箇所に、前記油路92が接続されている。
そして、油路92には逆止弁93が設けられている。この逆止弁93は、第1出力ポート90から排出されたオイルが油路92を経由して油路78に供給される場合に開放され、油路78のオイルが第1出力ポート90に流れることを防止する構成を有している。さらに、第2出力ポート91は、油路94を介して前記油路45に接続されている。上記のように構成されたセカンダリレギュレータバルブ88は、前記油路57のオイルを前記油路92,94に排出する量を制御することにより、前記油路57の油圧を制御する機能を有する圧力制御弁である。また、セカンダリレギュレータバルブ88は、前記油路57の油圧が上昇した場合に、先に油路57のオイルを油路92に排出して油路57の油圧を制御し、さらに、油路57の油圧が上昇した場合に、油路57のオイルを油路94にも排出するように構成されている。すなわち、第1ドレーンポート90が開放されることとなる油路57の油圧は、第2ドレーンポート91が開放されることとなる油路57の油圧よりも低圧である。
なお、前記油路92における逆止弁93と第1出力ポート90との間には油路116が接続され、その油路116から第2オイル必要部117にオイルが供給される構成となっている。第2オイル必要部117は、オイルにより潤滑・冷却される部位であり、例えば、前後進切換装置4を構成するギヤ同士の噛み合い部分、無段変速機5から出力軸37に至る経路に設けられたギヤ同士の噛み合い部分などが、第2のオイル必要部117に相当する。そして、前述した第1オイル必要部82と第2のオイル必要部117とを比較すると、必要とするオイルの温度が異なる。具体的には、第1オイル必要部82に供給するオイルの温度の方が低いことが望ましい。これは、前記パワーローラ31の接触部S1にトラクションオイルを供給する場合に、その粘度が高い方が、トラクション係数が高く、動力伝達効率および耐久性が優れているからである。
さらに、前記油路78と油路94とを接続する経路に冷却油圧制御弁95が設けられている。この冷却油圧制御弁95は、入力ポート96およびドレーンポート97および信号圧ポート98およびフィードバックポート99を有している。そして、前記入力ポート96および前記フィードバックポート99が前記油路78に接続され、前記ドレーンポート97が前記油路94に接続され、前記信号圧ポート98には油路100が接続されている。この冷却油圧制御弁95は、前記油路78を経由して前記冷却装置79に供給されるオイルの油圧を制御する機構であり、前記信号圧ポート98に入力される信号圧に基づいて、前記油路78から前記油路94に排出するオイル量を制御して、前記油路78の油圧を制御する構成を有している。この冷却油圧制御弁95による油圧制御特性を図4に示す。すなわち、冷却油圧制御弁95は、前記信号圧ポート98に入力される信号圧が上昇することに比例して、前記油路78の油圧(冷却油圧)が上昇する特性を有している。
前記油路49にはモジュレータバルブ101を介して油路102が接続されている。このモジュレータバルブ101は油路102の油圧を制御するものであり、前記油路102から、前記オイルポンプ切替バルブ73の信号圧ポート77に至る経路にソレノイドバルブ103が設けられている。このソレノイドバルブ103は入力ポート104および出力ポート105およびドレーンポート106を有している。そして、前記入力ポート104が前記油路102に接続され、前記出力ポート105が前記信号圧ポート77に接続され、前記ドレーンポート106が前記オイルパン47に接続されている。このソレノイドバルブ103に通電(オン)された場合は、前記入力ポート104と前記出力ポート105とが接続され、かつ、前記ドレーンポート106が閉じられる。したがって、前記油路102から前記信号圧ポート77に入力される信号圧が高圧となる。これに対して、前記ソレノイドバルブ103が非通電(オフ)となった場合は、前記入力ポート104が閉じられ、前記出力ポート105と前記ドレーンポート106とが接続される。したがって、前記信号圧ポート77のオイルがドレーンポート106を経由して排出され、前記信号圧ポート77に入力される信号圧が低圧となる。
さらに前記油路102は、2個のデューティソレノイドバルブ107,108に接続されている。まず、第1のデューティソレノイドバルブ107は、入力ポート109および出力ポート110およびドレーンポート111を有している。そして、前記入力ポート109が前記油路102に接続され、前記出力ポート110が油路112に接続され、前記ドレーンポート111が前記オイルパン47に接続されている。また、前記油路112には、前記信号圧ポート120,66が並列に接続されている。そして、上記第1のデューティソレノイドバルブ107は、通電量を制御することにより、前記出力ポート110から出力される信号圧を制御する機構である。具体的には、第1のデューティソレノイドバルブ107は、通電量が増加することに比例して、前記出力ポート110から出力される信号圧がリニアに上昇する特性を有している。
一方、前記第2のデューティソレノイドバルブ108は、入力ポート113および出力ポート114およびドレーンポート115を有している。そして、前記入力ポート113が前記油路102に接続され、前記出力ポート114が油路110に接続され、前記ドレーンポート115が前記オイルパン47に接続されている。また、前記油路100には、前記冷却流量制御弁86の信号圧ポート87が接続されている。つまり、前記信号圧ポート87と前記信号圧ポート98とが並列に接続されている。そして、上記第2のデューティソレノイドバルブ108は、通電量を制御することにより、前記出力ポート114から出力される信号圧を制御する機構である。具体的には、第2のデューティソレノイドバルブ108は、通電量が増加することに比例して、前記出力ポート114から出力される信号圧がリニアに上昇する特性を有している。なお、上記各ソレノイドバルブは、車速、要求駆動力、無段変速機5の変速比、エンジントルク、ロックアップクラッチ制御マップなどに基づいて、電子制御装置39により制御される。例えば、要求駆動力が高い場合、または、無段変速機5の変速比を変更する場合、エンジントルクが高い場合などにおいては、前記ソレノイドバルブ103の動作態様としてオンを選択可能である。これに対して、要求駆動力が低い場合、または、無段変速機5の変速比をほぼ一定に維持する場合、エンジントルクが低い場合などにおいては、前記ソレノイドバルブ103の動作態様としてオフを選択可能である。また、ロックアップクラッチ15の係合圧を高める場合は、前記第1デューティソレノイドバルブ107の信号圧が高められる。これに対して、ロックアップクラッチ15の係合圧を低下させる場合は、前記第1デューティソレノイドバルブ107の信号圧が低下される。さらに、無段変速機5における伝達トルクが高い場合は、前記第2デューティソレノイドバルブ108の信号圧が高められ、無段変速機5における伝達トルクが低い場合は、前記第2デューティソレノイドバルブ108の信号圧が低下される。
つぎに、図1に示された油圧制御装置40の作用および制御について説明する。前記エンジン2のトルクにより前記メインオイルポンプ41が駆動されると、オイルパン47に貯溜されているオイルが、メインオイルポンプ41に吸入され、かつ、前記油路49に吐出される。前記プライマリレギュレータバルブ54により、この油路49から油路57に排出されるオイル量が制御されて、前記油路49の油圧(ライン圧)が制御される。また、前記油路49のオイルは、前記変速制御用油圧室50A,50Bに供給されており、変速制御弁(図示せず)により、前記変速制御用油圧室50A,50Bの油圧が制御されて、前記無段変速機5の変速比が制御される。さらに、前記油路49から、前記クラッチ用油圧室52およびブレーキ用油圧室53に供給されるオイルの油圧が制御されて、前記前進用クラッチ24および後進用ブレーキ25の係合・解放が制御される。
一方、前記油路57のオイルは、前記ロックアップリレーバルブ58の第1入力ポート59および第2入力ポート60にも供給される。ここで、第2入力ポート60に供給されるオイルの油圧は、前記ロックアップコントロールバルブ65により制御される。これは、前記油路49のオイルが前記油路102に供給されており、前記第1のデューティソレノイドバルブ107は、前記油路102の油圧を調圧して出力ポート110から信号圧を出力し、その信号圧が前記ロックアップコントロールバルブ65の信号圧ポート66に入力されて、ロックアップコントロールバルブ65の調圧特性が制御される。具体的には、前記信号圧ポート66に入力される信号圧が上昇することに比例して、前記第2入力ポート60に入力されるオイルの油圧が上昇する。
また、前記第1デューティソレノイドバルブ107の信号圧ポート110から出力された信号圧は、前記ロックアップリレーバルブ58の信号圧ポート120にも入力されており、その信号圧ポート120に入力される信号圧に基づいて、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様が切り替えられる。前記信号圧ポート120に入力される信号圧が所定値以下である場合は、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様はオフとなり、前記油路57のオイルが前記解放用油圧室17に供給され、その解放用油圧室17の油圧が上昇するとともに、前記係合用油圧室16のオイルが前記油路64から排出されて、その係合用油圧室16の油圧が低下する。このようにして、前記ロックアップクラッチ15の伝達トルクが低下し、前記ロックアップクラッチ15が解放もしくはスリップされる。なお、前記油路64から排出されたオイルは、前記ウォーマー67により温められてから前記オイルパン47に戻される。
これに対して、前記信号圧ポート120に入力される信号圧が所定値を越えた場合は、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様はオンとなり、前記油路57のオイルの一部が、前記第2出力ポート62を経由して前記係合用油圧室16に供給され、その係合用油圧室16の油圧が上昇する。また、前記油路57のオイルの一部が、前記第1出力ポート61を経由して、前記解放用油圧室17に供給される。ここで、前記係合用油圧室16の油圧の方が前記解放用油圧室17の油圧よりも高い場合は、前記ロックアップクラッチ15の伝達トルクが高まり、前記ロックアップクラッチ15が係合される。
このように、図1の油圧制御装置40においては、前記トルクコンバータ3から油路64に排出されたオイルをウォーマー67で温めることができる。したがって、オイルの粘度が高まることを抑制でき、前記オイルパン47に戻されたオイルを、再度前記トルクコンバータ3のケーシング11内に供給する場合において、前記ポンプインペラ9と前記タービンランナ10との相対回転により発生する引き摺りトルクの上昇を抑制できる。また、車両1が高速走行する場合、あるいは高負荷走行する場合においては、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様がオンとなり、かつ、前記ロックアップクラッチ15が係合されるとともに、前記トルクコンバータ3から前記油路64にはオイルが排出されなくなる。
一方、前記サブオイルポンプ42がエンジントルクにより駆動された場合は、前記オイルパン47のオイルがサブオイルポンプ42に吸入され、かつ、油路70に吐出される。そして、前記オイルポンプ切替バルブ73の信号圧ポート77に入力される信号圧が低圧である場合は、前記オイルポンプ切替バルブ73の動作態様がオフとなる。すると、前記油路70のオイルは前記油路49に供給される。これに対して、前記オイルポンプ切替バルブ73の信号圧ポート77に入力される信号圧が高圧である場合は、前記オイルポンプ切替バルブ73の動作態様がオンとなる。すると、前記油路70のオイルは前記油路78に供給される。なお、前記油路70の油圧の方が、油路49の油圧よりも所定値以上高い場合は、前記リリーフ弁72が開放され、油路70のオイルが油路49に供給される。前記油路78に供給されたオイルは、前記絞り部84を通過して前記冷却装置79に供給される。この冷却装置79で冷却されたオイルは、前記油路83を経由して前記第1オイル必要部82に供給される。
このように、前記油路78のオイルを前記冷却装置79に供給する場合、前記冷却油圧制御弁95により、その油圧を制御可能である。すなわち、前記油路78のオイルは、前記冷却油圧制御弁95を経由して前記油路94に排出される。ここで、図4に示すように、前記信号圧ポート98に入力される信号圧が最低値である場合も、前記油路78の油圧は所定圧P1が確保される。そして、前記信号圧ポート98に入力される信号圧が高まることにともない、前記油路78から前記油路94に排出されるオイル量が減少し、前記油路78の油圧が上昇する特性となる。また、前記油路78を経由して前記冷却装置79に供給されるオイル量を制御することが可能である。前記冷却流量制御弁86の信号圧ポート87に入力される信号圧が最低値である場合は、前記冷却流量制御弁86は閉じられているが、前記油路78のオイルは前記絞り部84を経由して前記冷却装置79に供給される。このように、前記絞り部84を通過して冷却装置79に供給されるオイル量が、最低流量Q1として図3に示されている。そして、前記冷却流量制御弁86の信号圧ポート87に入力される信号圧が上昇すると、前記冷却流量制御弁86を経由して前記冷却装置79に供給されるオイル量が増加し、図3に示すような流量特性となる。このように、前記第2デューティソレノイドバルブ108は、前記油路78の油圧を制御する機能と、前記油路78から前記冷却装置79に供給されるオイルの流量を制御する機能とを兼備している。
一方、図1の油圧制御装置40においては、前記油路57の油圧が上昇すると、前記第1ドレーンポート90が開放される。この時点では、第2ドレーンポート91は閉じられている。そして、前記油路57から前記油路92に排出されたオイルは、前記油路78を経由して前記冷却装置79に供給される。このように、図1の油圧制御装置40においては、前記油路78を経由させて前記冷却装置79にオイルを供給するとともに、前記油路78に対して並列に設けられた油路49,92を経由して前記冷却装置79に供給することができる。したがって、前記冷却装置79により冷却されて前記第1オイル必要部82に供給されるオイル量をなるべく増加することができ、前記無段変速機5に供給するトラクションオイルの冷却効率が向上する。なお、前記第1ドレーンポート90が開放された後、さらに油路57の油圧が上昇すると、前記第2ドレーンポート91が開放されて、油路57のオイルの一部は、前記油路94を経由して油路45に戻される。また、車両1が高速走行する場合、あるいは高負荷走行する場合においては、前記ロックアップリレーバルブ58の動作態様がオンとなり、かつ、前記トルクコンバータ3から前記油路64にはオイルが排出されなくなるため、前記冷却装置79で冷却されるオイルの流量を制御することにより、前記油圧制御装置40全体におけるオイルの油温を制御することができる。図5にはオイルの油温の経時変化が示されており、実施例において油温が略一定となる時刻t1は、比較例において油温が略一定となる時刻t2よりも早い。また、実施例において略一定となったオイルの油温は、比較例の油温よりも低温(約−20℃)である。なお、比較例とは、例えば特許文献1に記載されているように、メインオイルポンプから吐出されたオイルが冷却装置を経由し、サブオイルポンプから吐出されたオイルは、冷却装置を経由しない構成の油圧制御装置を意味する。
ここで、図1および図2に基づいて説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン1が、この発明の動力源に相当し、入力ディスク26および入力軸18が、この発明の入力要素に相当し、出力ディスク27および出力ギヤ32が、この発明の出力要素に相当し、吐出口48,69が、この発明における吐出口に相当し、第1オイル必要部82が、この発明のオイル必要部に相当し、油路49が、この発明における第1の油路に相当し、油路57が、この発明における第2の油路に相当し、プライマリレギュレータバルブ54が、この発明におけ圧力制御弁に相当し、油路78が、この発明における第3の油路に相当し、油路83が、この発明における第4の油路に相当し、油路92が、この発明における第5の油路に相当し、トルクコンバータ3が、この発明における流体伝動装置に相当し、油路118,119およびロックアップコントロールバルブ65およびロックアップリレーバルブ58が、この発明における第6の油路に相当し、油路64が、この発明における第7の油路に相当し、ウォーマー67が、この発明における熱交換器に相当し、ケーシング11およびポンプインペラ9が、この発明の第1回転部材に相当し、ポンプインペラ10およびトルク伝達軸12が、この発明の第2回転部材に相当し、前記ロックアップリレーバルブ58および第1のデューティソレノイドバルブ107および電子制御装置39が、この発明における供給量制御装置に相当し、接触部分S1が、この発明におけるオイル必要部に含まれる。なお、トルクコンバータに代えて、トルク増幅機能を有しないフルードカップリングを用いることも可能である。また、前後進切換装置4としては、遊星歯車機構を用いるものに代えて、平行軸歯車式のものを用いることも可能である。
2…動力源、 3…トルクコンバータ、 5…無段変速機(トロイダル型無段変速機)、 9…ポンプインペラ、 10…タービンランナ、 11…ケーシング、 12…トルク伝達軸、 15…ロックアップクラッチ、 18…入力軸、 26…入力ディスク、 27…出力ディスク、 31…パワーローラ、 32…出力ギヤ、 39…電子制御装置、 40…油圧制御装置、 41…メインオイルポンプ、 42…サブオイルポンプ、 48,69…吐出口、 49,57,64,78,83,92,118,119…油路、 54…プライマリレギュレータバルブ、 58…ロックアップリレーバルブ、 65…ロックアップコントロールバルブ、 67…ウォーマー、 82…第1オイル必要部、 107…第1デューティソレノイドバルブ、 S1…接触部。