JP5487947B2 - サポニンの製造法 - Google Patents

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グループBサポニンを得る製造法に関する。
大豆には各種の有効成分が含まれており、それぞれ抽出法が検討されている。たとえば特許文献1は本願出願人による出願であるが、この出願はイソフラボンとサポニンを取得する方法に関する出願である。しかし、グループAサポニンとグループBサポニンを分離する手法についてはなんら開示はされていない。
特許文献2はグループBサポニンの製造方法に関する出願であるが、溶媒中での沈殿分離であり、工業的な効率は悪いものである。
特許文献3はサポニンの抽出液を陰イオン交換樹脂に接触させた後、無極性の合成吸着剤に吸着させることを特徴とする大豆サポニンの製造法についての出願である。ここでも、イソフラボンの取得については開示されていない。
WO2003/075939号公報 WO2005/097815号公報 特開2006−124324号公報
本発明の目的は、大豆に含まれる各種の有効成分のうち、グループBサポニンないし、グループBサポニンと、イソフラボン、グループAサポニンから選ばれる1以上を、ひとつの原料から一連の工程で、効率よく取得する方法を提供することにある。また、イソフラボンはマロニルイソフラボンの多いものを取得することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、疎水的相互作用を有する単体を用いた、大豆由来有効成分の精製において、グループBサポニンを得ようとする前段階の溶出において、pHおよびエタノール濃度を制御した溶出液で溶出することで、グループBサポニンを効率よく入手できることを見出した。更に、実質的に加熱を行わない原料を使用し、溶出工程を追加することで、グループBサポニンの他、イソフラボン及びグループAサポニンから選ばれる1以上を、ひとつの原料から一連の工程で取得する方法を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は
(1)大豆由来原料の抽出液に対して、以下の工程を順に行うことを特徴とする、グループBサポニンの製造法。
1)大豆由来原料の抽出液を疎水的相互作用を有する吸着剤へ吸着させる工程。
2)エタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0の溶出液により、グループAサポニン等を溶出する工程。
3)エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出し、グループBサポニンを得る工程。
(2)大豆由来原料及びその抽出液が、50℃を超える熱履歴を有していない、(1)記載の製造法。
(3)更に、エタノール濃度40〜65容量%,pH2.5〜5.0の溶出液による溶出前に、エタノール濃度17〜35容量%の溶出液により、イソフラボン等を得る、イソフラボンおよびグループAサポニンから選ばれる1以上、並びにグループBサポニンを得る、(2)に記載の製造法。
(4)大豆由来原料が大豆胚軸である、(1)ないし(3)記載の製造法。
(5)(3)においてイソフラボンを溶出する際、溶出された全イソフラボン中のマロニルイソフラボンの量が、全イソフラボン量に対して、20重量%以上である製造法。
に関するものである。
本発明によれば、大豆に含まれる各種の有効成分のうち、グループBサポニンを効率よく取得することができる。また溶出工程を追加することで、グループBサポニンの他、イソフラボン及びグループAサポニンから選ばれる1以上を、ひとつの原料から一連の工程で、効率よく取得することができる。そして、イソフラボンは、マロニルイソフラボンの多いものを得ることができる。
(大豆原料)
本発明に使用する大豆原料は50℃を超える熱履歴を有していないことが好ましく、マロニル体イソフラボンを多く取得する場合には、50℃を超える熱履歴を有していないことが必要である。また、抽出時の加熱も同様である。
加熱を行うと、マロニル体イソフラボンが分解され、その後の分離性が悪くなる場合がある。また、マロニル体イソフラボンが分解され、配糖体またはアセチル配糖体に変化することにより、水への溶解性が極度に低下する場合がある。
ここで50℃を超える熱履歴とは、マロニル体イソフラボンの分解を抑えることができる範囲の加熱のことである。一方、抽出時の温度が低すぎる場合は、抽出効率に影響を与える場合もある。抽出時の温度としては10〜50℃が望ましく、より望ましくは20〜40℃である。
使用する大豆原料としては、丸大豆、脱皮大豆、脱皮脱胚軸大豆、脱脂大豆、大豆胚軸をあげることができるが、特にサポニン等の有効成分を比較的多く含む胚軸を利用することが、効率の点からも好ましい。
(抽出液)
大豆原料からサポニン等を抽出する溶媒としては、水または含水極性有機溶媒、すなわち水との混和が可能な有機溶媒であって、所望の割合の水を含有させたものを用いるのが好ましい。親水性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールや、アセトンが挙げられる。特にエタノールを用いることが好ましい。エーテル、クロロホルム、ヘキサン等の非極性有機溶媒は抽出効率が悪くなる場合がある。
該含水極性有機溶媒の含水率は、極性有機溶媒の種類にもよるが、サポニン等の抽出が高純度かつ高収率に行えるような比率にすればよく、その濃度は20〜85容量%が好ましく、より好ましくは25〜70容量%、さらに好ましくは25〜60容量%である。また、抽出時のpHは4〜9であることが好ましく、より好ましくはpH5〜8である。抽出液の含水率が低すぎると、サポニン等の抽出率が低下する場合がある。また高すぎると大豆胚軸中に存在するβグルコシダーゼが作用するためか、イソフラボン配糖体やそのマロニル体、アセチル体が分解し、イソフラボンアグリコンの比率が高くなるため、イソフラボンとの分離がし難く、サポニン等の純度が低下する場合がある。
また抽出時のpHが低すぎると、含水極性有機溶媒の含水率によっては、沈殿が生じやすくなり、その後の分画工程に手間がかかる場合がある。またpHが高すぎると夾雑物が抽出され、その後の分画に影響をきたす場合がある。
該含水極性有機溶媒の大豆原料に対する1回あたりの使用量は特に限定されず、溶媒の種類にもよるが、コストを考えると原料1kg当り3〜10Lとすることが好ましい。
抽出方式としては、例えば少なくとも2段階以上の抽出を行う多段式抽出法を採用することが好ましい。また、向流式の連続抽出法等を使用することも可能である。抽出回数が1 回のみの場合では、大豆原料からのサポニン等の抽出率が上がりにくく、収率が低下する場合がある。
(吸着操作)
抽出液は適宜濃縮することもできる。濃縮操作により、吸着させる際の有効成分の濃度を一定に制御することができ、好ましい。
次に、サポニン等を含む抽出液を吸着剤へ吸着させる。使用する吸着剤は公知のものを使用することができるが、疎水的相互作用を有するものを用いる。具体的には、三菱化学製ダイヤイオンHPシリーズ、ロームアンドハース社製 アンバーライトXADシリーズなどをあげることができる。
吸着操作は、サポニン等を含む含水極性溶媒抽出液の入ったタンクに該吸着剤を投入してバッチ式で行っても良いし、カラムに吸着剤を充填して行うことも可能であるが、その後の溶出等も含め、カラムに充填して行う方が、より純度の高い製品が得られ好ましい。
(溶出操作)
吸着操作の後は溶出操作を行う。溶出操作においては、グループBサポニンを得るために、エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出を行うが、その前に、エタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0の溶出液により溶出する工程をとることが必要であり、より望ましくはpH3〜4.5である。通常、疎水的相互作用を有する吸着剤による分離においておいては、溶出液の疎水度、すなわちエタノール等の濃度のみ制御して分離を行う。しかし、本発明においてはこれにpHを組み合わせることにより、より純度が高く、歩留まりも高い製品が得られるようにしたものである。
本発明では更に、一つの抽出液から一連の工程でイソフラボン、グループAサポニン、グループBサポニンの3つを得ることもできる。この場合は、50℃を超える熱履歴を有していない大豆由来原料を用い、50℃を超える加熱を行わずに抽出した抽出液を疎水的相互作用を有する吸着剤へ吸着させ、その後1)エタノール濃度17〜35容量%の溶出液により溶出する工程、2)エタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0の溶出液により溶出する工程、3)エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出し、グループBサポニンを得る工程、により行われる。ここで、1)の工程においてはイソフラボンを得ることができ、2)の工程ではグループAサポニンを得ることができる。そして、3)の工程でグループBサポニンを得ることができる。この場合においても、3)の工程においてpHを2.5〜5.0に制御することにより、グループAサポニンを高純度、高収率に得ることができ、結果として、その後の工程4)において得られるグループBサポニンの純度が高くなる効果が得られる。
2)におけるpHは高すぎても、低すぎても、目的とする成分を高濃度で取得することが難しくなったり、歩留まりが低下する場合がある。また各エタノール濃度も、高すぎたり、低すぎたりした場合も、目的とする成分を高濃度で取得することが難しくなったり、歩留まりが低下する場合がある。
各溶出に使用する溶出液の量は、吸着剤の量に対して0.2〜5.0容量倍が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0容量倍である。溶出液の量が少なすぎると、各工程における溶出が不十分となり、目的物の歩留まりが低下したり、以降の工程における目的物の純度が低下する場合がある。また、溶出液の量が多すぎる場合は、溶出後の濃縮等により、コスト上昇につながる場合がある。
溶出工程の前後においては、目的物以外の非吸着成分を除去するために、適宜洗浄工程を加えることも可能である。
(定量方法)
本検討において、大豆イソフラボンおよび大豆サポニンの定量には以下の方法を用いた。
大豆イソフラボン分析法
本検討において、大豆イソフラボン含有量は、(財)日本健康栄養食品協会の定める方法(Kudouらの方法)を基にHPLCを用いて以下の方法にて求めた。
大豆イソフラボン含有量の測定
大豆イソフラボンとして1〜10mgに相当する量の試料を定量し、70%エタノールにて100mlに定容した。そして0.45μmPVDFフィルターにて濾過したものを試験溶液とした。標準品は12種類、すなわちダイジン、ゲニスチン、グリシチン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、アセチルダイジン、アセチルゲネスチン、アセチルグリシチン(和光純薬工業株式会社)を用いた。
HPLCの条件についてはKudouらの条件に準拠した。定量にはダイゼイン標準品を用い、各換算値を用いて算出した。
大豆サポニンの定量には以下の方法を用いた。
大豆サポニン分析法
試料を定量し乾燥機にて乾燥後、メタノールを加え1時間加熱還流して抽出液を得た。定容後、一部を分取し濃縮乾固させ、10%塩酸―メタノールを加え一定時間加熱攪拌し、加水分解させた。水と酢酸エチルを加え、内部標準物質を混合した後、酢酸エチル層のみ回収した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を混合、振とうさせ、酢酸エチル層のみを回収後、再度水を加えて酢酸エチル層を回収した。濃縮乾固後、ピリジンとBSTFAを加え、誘導体化させた後GCにて分析を行った。
なお、標準品は小城製薬(株)製のソヤサポゲノールA(純度99%以上)、ソヤサポゲノールB(純度98%以上)を用いた。また、試料中の大豆サポニン量は換算式を用いて、グループAサポニン、グループBサポニンを算出した。
以下に実施例を記載する。
実施例1
a 大豆生胚軸100gを、300mLの70容量%エタノールに浸漬。
b 40℃で攪拌しながら抽出(pH6.4)(1抽)。
c 抽出液から、東洋ろ紙No.3によるろ過により大豆胚軸を分離
d 70容量%エタノール300mLを、同大豆胚軸へ加え同様に抽出(2抽)
e 抽出液(1抽、2抽)の混合
f 抽出液をエバポレーターにより濃縮し、エタノールを除去。
g 濃縮液(イソフラボン含量1.3g(内マロニル配糖体67%) 総サポニン含量2.7g グループAサポニン1.9g グループBサポニン0.8g 含有)を固形分率10%になるように加水して調整。
h ダイヤイオンHP−20(三菱化学(株)製)を充填したカラム(100mL)にSV1で付加
i 水によりカラムの1.0倍量洗浄
j 25容量%のエタノール溶液200mLで溶出:イソフラボン画分(画分1)取得
k pH4.0に調整した50容量%エタノール溶液100mLで溶出:グループAサポニン画分(画分2)取得
l 70容量%エタノール300mLで溶出し、グループBサポニン画分(画分3)取得
実施例2
実施例1「k」において、pH4.0で55容量%エタノール溶液100mL(画分2)を用いる以外は実施例1と同様にした。
実施例3
実施例1「k」において、pH4.0で60容量%エタノール溶液70mL(画分2)を用いる以外は実施例1と同様にした。
実施例4
実施例1「k」において、pH4.5の55容量%エタノール溶液100mL(画分2)を用いる以外は実施例1と同様にした。
比較例1
実施例1「i」の後、70容量%エタノール(pH6.0)300mLで溶出した。
比較例2
実施例1「k」において、pH未調整の45容量%エタノール溶液(pH6.1)を用いる以外は実施例1と同様にした。
比較例3
実施例1「k」において、pH未調整の50容量%エタノール溶液(pH6.0)を用いる以外は実施例1と同様にした。
比較例4
a 脱皮、脱胚軸加工を行った半割れ大豆を95℃4.0重量倍の熱水に浸漬し、抽出
b 抽出液を遠心分離し、沈殿物を除去し上清を取得(イソフラボン含量1.3g(内マロニル配糖体16.2%) 総サポニン含量0.9g グループAサポニン0.6g グループBサポニン0.4g 含有)
c ダイヤイオンHP−20(三菱化学(株)製)を充填したカラム(100mL)にSV10で付加
d 水によりカラムの1.0倍量洗浄
e 25容量%のエタノール溶液200mLで溶出(画分1)
f pH4.0に調整した50容量%エタノール溶液100mLで溶出(画分2)
g 70容量%エタノール300mLで溶出(画分3)
各画分について、イソフラボン含量、サポニン含量を測定した。画分1についてはイソフラボン含量(%/dry)を、画分2についてはグループAサポニン含量(%/dry)、画分3はグループBサポニン含量(%/dry)を求めた。結果を以下の表1に示す。
また、各画分における成分の収率を求めた。画分1についてはイソフラボン収率(%)を、画分2についてはグループAサポニン収率(%)、画分3についてはグループBサポニン収率(%)を求めた。結果を表2に示す。(収率(%)は、得られた成分の含量/抽出液中の成分の含量×100 として求めた。)
比較例1に関しては、画分1についてイソフラボン含量(%/dry)、A・Bサポニン含量(%/dry)を求めた。
表1 各成分組成(イソフラボン、サポニン含量)
Figure 0005487947
イソフラボンは乾燥重量中55重量%以上を、グループAサポニンは乾燥重量中45重量%以上を、グループBサポニンは乾燥重量中25重量%以上を合格範囲とした。また、全イソフラボン中のマロニルイソフラボンの比率は75重量%以上を合格とした。実施例においては、全て合格範囲の純度を示した。比較例においては、一部の成分で合格範囲を示すものもあったが、全ての項目が合格となるものはなかった。
表2 各成分収率(%)
Figure 0005487947
収率は、抽出液に含まれる各成分の量をそれぞれ100%とした場合、イソフラボンは80%以上を、グループAサポニンは60%以上を、グループBサポニンは60%以上をそれぞれ合格とした。実施例においては、全ての成分の収率が合格であった。一方比較例においては、一部の成分に関し合格となる収率を示すものもあったが、全ての成分の収率が合格となるものはなかった。
比較例4において得られているイソフラボンは、加熱による加水分解を受けたため、目的とするマロニル体イソフラボンの量は少なかった。
なお実施例は、イソフラボン、グループAサポニン、グループBサポニンの3つを一連の工程で得るための溶出条件をとっているが、グループBサポニンのみの取得を目的とした場合、実施例1の「j」の溶出を省略した後、「k」「l」の溶出を行うことで、目的を達成することができる。
本発明により、マロニル体イソフラボン、グループAサポニン及びグループBサポニンをひとつの原料から一連の工程で取得する方法を提供することができる。これにより、原料を有効に活用することができ、産業界への寄与は大きい。

Claims (5)

  1. 大豆由来原料の抽出液に対して、以下の工程を順に行うことを特徴とする、グループAサポニン及びグループBサポニンの製造法。
    1)大豆由来原料の抽出液を疎水的相互作用を有する吸着剤へ吸着させる工程。
    2)エタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0の溶出液により、グループAサポニン等を溶出する工程。
    3)エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出し、グループBサポニンを得る工程。
  2. 大豆由来原料及びその抽出液が、50℃を超える熱履歴を有していない、請求項1記載の製造法。
  3. 更に、エタノール濃度40〜65容量%,pH2.5〜5.0の溶出液による溶出前に、エタノール濃度17〜35容量%の溶出液により、イソフラボン等を得る、イソフラボンおよびグループAサポニンから選ばれる1以上、並びにグループBサポニンを得る、請求項2に記載の製造法。
  4. 大豆由来原料が大豆胚軸である、請求項1ないし3記載の製造法。
  5. 請求項3においてイソフラボンを溶出する際、溶出された全イソフラボン中のマロニルイソフラボンの量が、全イソフラボン量に対して、20重量%以上である製造法。
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