JP2912133B2 - 新規イソフラボン誘導体およびその製造方法 - Google Patents

新規イソフラボン誘導体およびその製造方法

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忠夫 寺本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規のイソフラボン誘
導体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来
より、イソフラボン誘導体には、抗酸化作用、抗菌作
用、抗コレステロール作用、チロシンキナーゼ阻害作
用、エストロゲン作用、および骨吸収抑制作用等の生理
活性を呈することが報告されている。
【0003】例えば、抗酸化作用については、Dan E. P
ratt, et al., "Source ofAntioxidant Activity of So
ybeans and Soy Products", J. of Food Science,44,
p.1720 (1979) ;抗菌作用については、Martin Weidenb
orner, et al., "Antifungal Activityof Isoflavonoid
s Against Storage Fungi of The Genus Aspergillu
s",Phytochemistry, 28, pp.3317-3319 (1989) ;抗コ
レステロール作用については、R.D. Sharma, "Isoflavo
nes and Hyper-choresterolemia in Rats", Lipids, 14
(6), p.535 (1978) ;チロシンキナーゼ阻害作用につい
ては、東恭一郎、他、「イソフラボン類の細胞周期にお
ける作用機構」、Cell Science, 8(8), 33 (1992) ;エ
ストロゲン作用については、Bickoff E.M., et al., "R
elative Potenciesof SeveralEstrogen-like Compounds
found in Forages", J. of Agricultureand Food Chem
istry, 10, 410 (1962);および骨吸収抑制作用につい
ては、M. Tsuda, et al., "The Effect of Tpriflavone
(TC-80) on Bone Resorption in Tissue Culture", J.
of Bone and MineralResearch, 1(2), p.207 (1986)、
を参照のこと。
【0004】イソフラボン誘導体、特に、大豆に含まれ
るイソフラボン誘導体は、基本骨格の異なる三種類のア
グリコンと、各誘導体の糖鎖部分の構造の異なる三種類
の配糖体の合計12種類の存在がこれまでに報告されてお
る(例えば、Shigemitsu, etal., "Malonyl Isoflavone
Glucosides in Soybean Seeds", Agric. Biol.Chem, 5
5(9), pp.2227-2233 (1991)を参照)にもかかわらず、
大豆に含まれているイソフラボン誘導体の大豆の発酵過
程に生ずる作用機序については、ほとんど解明されてい
なかったのが現状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上述した当該技
術分野における課題に鑑みて、本発明者らが、様々な大
豆発酵食品中のイソフラボン誘導体について長年研究を
重ねた結果、糸引き納豆中に発酵前の大豆中には存在し
ない全く新規な構造を有するイソフラボン誘導体を知見
するに至って発明されたものである。
【0006】すなわち、本発明によれば、下記構造式の
化合物が提供される。
【0007】
【化2】
【0008】前記式中のR1は水素あるいはメトキシル基
であり、R2は水素あるいは水酸基である。
【0009】この化合物について、国内で市販されてい
る代表的な10種の納豆について高速液体クロマトグラム
法により分析したところ、すべての納豆について検出さ
れた。 しかしながら、この化合物は、他の大豆発酵食
品(味噌・醤油・テンペ等)には全く検出されなかった
ことから、納豆に特有の成分と思料される。
【0010】また、本発明の新規イソフラボン誘導体
は、大豆に含まれる従来公知のイソフラボン誘導体と比
較して、水やアルコール類、例えば、メタノールあるい
は希メタノール、に対する高い溶解性が認められ、この
ことは、生理活性物質である本発明のイソフラボン誘導
体を摂取した場合の体内への吸収率の良さ、ひいては医
薬品や健康食品などへの本発明の化合物の応用が期待さ
れるものである。
【0011】さらに、本発明の新規イソフラボン誘導体
野製造方法についても、本発明者らは検討を加え、以下
の二種類の方法を構築するに至った。 すなわち、 (1) 納豆菌(通称名:ミウラ、タカハシ、ヤヨイなど)
で発酵させた大豆のアルコール抽出物を、吸着カラムク
ロマトグラフィー、ゲルカラムクロマトグラフィーの順
で精製して、新規イソフラボン誘導体を含む混合物を得
る。
【0012】そして、この混合物をさらに、逆相系のカ
ラムクロマトグラフィーで精製して、本発明の三種の新
規イソフラボン誘導体を得る。
【0013】(2) 2〜10倍に濃縮した大豆の熱水抽出
液、あるいは該熱水抽出液に2〜10倍量のイソフラボン
になるように大豆イソフラボン配糖体を添加した培地
に、納豆菌を培養し、本発明の新規イソフラボン誘導体
の濃度が最高になった時に培養を終了する。
【0014】次に、菌体を除去した培養液を、吸着カラ
ムクロマトグラフィー、ゲルカラムクロマトグラフィー
の順で精製して、新規イソフラボン誘導体を含む混合物
を得る。
【0015】そして、この混合物をさらに、逆相系のカ
ラムクロマトグラフィーで精製して、本発明の三種の新
規イソフラボン誘導体を得る。
【0016】
【実施例】以下に本発明の新規イソフラボン誘導体の好
適な調製法を述べるが、下記実施例は、例示的な目的の
ものであり、本発明を限定する旨に解釈すべきでない。
【0017】実施例1 市販納豆 3.5Kg(「こんぶミネラル納豆」(商品名):
フジッコ株式会社製)を凍結乾燥し、粉砕し、室温下に
てクロロホルムで脱脂した後、メタノールで抽出した。
【0018】メタノール抽出物 135gを蒸留水に溶解
し、ダイヤイオン HP-20((商品名):三菱化成株式会社
製)を充填したカラムに吸着させ、30%メタノール、70
%メタノールで順次溶出した。
【0019】70%メタノール溶出物を、溶出溶媒として
メタノールを用いたセフアデックスLH-20カラムクロマ
トグラフィー((商品名):ファルマシア株式会社製)で
分離し、新規イソフラボン誘導体を多く含む分画 555mg
得られた(原料納豆からの収率: 0.016%)。
【0020】この分画をさらに、高速液体クロマトグラ
フィーを用いて、 ODS系のカラムで分離し、三種の新規
イソフラボン誘導体(純度:99%以上)が得られた。
なお、イソフラボン誘導体の純度は、液体クロマトグラ
フィーと薄層クロマトグラフィーによる結果に基づいて
決定した。
【0021】そして、各イソフラボン誘導体の理化学的
分析を行った。
【0022】なお、分析手段に関して、NMR分析は J
NM-GSX 270(日本電子株式会社製)、質量分析(FAB-M
S) は JMS-SX 102(日本電子株式会社製)、および赤外
吸収分析(IR)はIR-700(「KBr 錠剤法」:日本分光株式
会社製)の各機器を用いた。
【0023】また、NMRデータに関する記載は、大豆
イソフラボン配糖体(ゲニスチン)のNMRスペクトル
データ(下記表1)と各イソフラボン誘導体のNMRス
ペクトルデータ(表2〜表4)との比較に基づいてい
る。
【0024】
【表1】
【0025】 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシ
ル)-3-(4- ヒドロキシフェニル)- 4H-1- ベンゾピラン-4
- オン
【0026】
【表2】
【0027】上記表2の結果から、ゲニスチンのNMR
スペクトルデータとの相違点は以下の通りであった。
【0028】1H−NMR:(CD3OD、270MHz) ppm 表示
の 'δ' 値。
【0029】8.11 (1H,d,J=8.9Hz,5-H)、7.16 (1H,dd,J
=8.9 と2.4Hz,6-H)において新しい信号の出現。
【0030】13C−NMR:(CD3OD、270MHz) ppm 表示
の 'δ' 値。
【0031】128.3 (C-5)、120.2 (C-10)、117.1 (C-6)
において新しい信号の出現。
【0032】また、本化合物の融点、質量分析、および
赤外吸収分析(最大吸収波長)に関しては、下記の数値
が得られた。
【0033】 融点: 231℃ FAB mass (m/z) : 517 (C25H24O12+H)+ IR ν (cm-1) : 3370, 2360, 2318, 1730, 1621, 1524, 1445, 1247, 1070, 885, 830. 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-5-ヒドロ
キシ-3-(4-ヒドロキシ フェニル)-4H-1- ベンゾピラン-4
- オン
【0034】
【表3】
【0035】上記表3の結果から、ゲニスチンのNMR
スペクトルデータとの相違点は以下の通りであった。
【0036】1H−NMR:(CD3OD、270MHz) ppm 表示
の 'δ' 値。
【0037】6.48 (1H,d,J=1.2Hz,6-H)において新しい
信号の出現。
【0038】13C−NMR:(CD3OD、270MHz) ppm 表示
の 'δ' 値。
【0039】163.3(C-5) 、107.9(C-10) 、101.0(C-6)
において新しい信号の出現。
【0040】また、本化合物の融点、質量分析、および
赤外吸収分析(最大吸収波長)に関しては、下記の数値
が得られた。
【0041】 融点: 228℃ FAB mass (m/z) : 533 (C25H24O13+H)+ IR ν (cm-1) : 3432, 1714, 1648, 1612, 1515, 1441, 1251, 1175, 1074, 837. 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-3-(4- ヒ
ドロキシフェニル)- 6-メトキシ-4H-1-ベンゾピラン-4-
オン
【0042】
【表4】
【0043】上記表4の結果から、ゲニスチンのNMR
スペクトルデータとの相違点は以下の通りであった。
【0044】1H−NMR:(CD3OD、270MHz) ppm 表示
の 'δ' 値。
【0045】3.86 (3H,s,OMe-H)において新しい信号の
出現。
【0046】
【発明の効果】本発明により、発酵後の大豆(納豆)か
ら得られた新規イソフラボン誘導体が提供されたことに
より、従来のイソフラボン誘導体が呈する公知の生理学
的作用は勿論のこと、全く新規の生理学的作用も期待で
き、さらには、イソフラボン誘導体の大豆の発酵過程に
生ずる作用機序の解明の一助になり得るなど、産業的、
学術的に貢献し得るなど、種々の効果を奏するものであ
る。
フロントページの続き (72)発明者 奥平 武則 兵庫県神戸市北区惣山町4−6−8 (72)発明者 石田 均司 静岡県静岡市瀬名3107−2 (72)発明者 辻 邦郎 静岡県静岡市池田1375−11 (56)参考文献 日本食品工業学会誌 37(6)平成2 年6月15日発行 社団法人日本食品工業 学会 474〜477頁 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07H 17/07 C12P 19/60 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記構造式の化合物であって、 【化1】 前記式中のR1は水素あるいはメトキシル基であり、R2
    水素あるいは水酸基であるイソフラボン誘導体。
  2. 【請求項2】 前記イソフラボン誘導体が、 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-3-(4- ヒド
    ロキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4- オン; 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-5-ヒドロキ
    シ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-1- ベンゾピラン-4-
    オン;あるいは 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-3-(4- ヒド
    ロキシフェニル)-6-メトキシ-4H-1-ベンゾピラン-4- オ
    ン、である請求項1に記載のイソフラボン誘導体。
  3. 【請求項3】 イソフラボン誘導体の製造方法であっ
    て、下記工程を含む、すなわち、 (a) 大豆を、納豆菌(Bacillus subtilis)で発酵させ、
    (b) 前記納豆菌で発酵させた大豆を、アルコール抽出
    し、 (c) 前記工程(b) で得られたアルコール抽出物を、吸着
    カラムクロマトグラフィーで精製し、および (d) 前記工程(c) で得られた精製物を、ゲルカラムクロ
    マトグラフィーで精製する工程を含み、該イソフラボン
    誘導体が請求項1に記載のイソフラボン誘導体であるこ
    とを特徴とする製造方法。
  4. 【請求項4】 イソフラボン誘導体の製造方法であっ
    て、下記工程を含む、すなわち、 (a) 濃縮した大豆の熱水抽出液あるいは該熱水抽出液に
    大豆イソフラボン配糖体を添加した培地にて、納豆菌
    (Bacillus subtilis)を培養し、 (b) 前記工程(a) で得られた培養液から菌体を除去し、 (c) 前記工程(b) で得られた培養液を、吸着カラムクロ
    マトグラフィーで精製し、および (d) 前記工程(c) で得られた精製物を、ゲルカラムクロ
    マトグラフィーで精製する工程を含み、該イソフラボン
    誘導体が請求項1に記載のイソフラボン誘導体であるこ
    とを特徴とする製造方法。
  5. 【請求項5】 前記製造方法が、 (e) 前記ゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた
    精製物を、逆相系のカラムクロマトグラフィーで精製す
    る工程をさらに含む、ことを特徴とする請求項3もしく
    は4に記載のイソフラボン誘導体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記イソフラボン誘導体が、 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-3-(4- ヒド
    ロキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4- オン; 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-5-ヒドロキ
    シ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-1- ベンゾピラン-4-
    オン;あるいは 7-(6-サクシニル- β- グルコピラノシル)-3-(4- ヒド
    ロキシフェニル)-6-メトキシ-4H-1-ベンゾピラン-4- オ
    ン、である請求項3ないし5のいずれかに記載のイソフ
    ラボン誘導体の製造方法。
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KR102365212B1 (ko) * 2018-11-30 2022-02-18 (주)휴온스 바실러스 서브틸리스 균주를 이용한 대두발효물의 제조방법 및 대두발효물의 이취 저감방법

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