JP3078694B2 - ゲニステインの製造法 - Google Patents

ゲニステインの製造法

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JP3078694B2 JP05343304A JP34330493A JP3078694B2 JP 3078694 B2 JP3078694 B2 JP 3078694B2 JP 05343304 A JP05343304 A JP 05343304A JP 34330493 A JP34330493 A JP 34330493A JP 3078694 B2 JP3078694 B2 JP 3078694B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明はイソフラボン混合物か
ら、高純度のゲニステインを簡単な操作で分離して得る
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び課題】マメ科、キク科、アヤメ科等多
くの植物体にはダイゼイン、ゲニステイン、およびその
配糖体であるダイジン、ゲニスチン等のイソフラボン
(イソフラボンアグリコンおよびその配糖体)が含まれ
ており、これらにはエストロゲン作用、抗菌作用、抗酸
化作用、制ガン作用をはじめとして多くの薬理効果があ
ることが確認されている。植物体中のイソフラボンは、
その95%以上が配糖体として存在しているが、制ガン
作用等の薬理効果は、配糖体よりもダイゼイン、ゲニス
テイン等のアグリコンの方が強い。
【0003】従来、植物原料からゲニステインを含有す
るイソフラボン溶液を得る方法は公知であるが(特公平
4-21670、特公平4-34526)、これらは数種類のイソフラ
ボンの混合物を得る方法であってゲニステインを分離す
る方法ではない。
【0004】またイソフラボン混合物よりゲニステイン
を単離する方法も公知であるが(特開昭61-247396)、
これはカラムクロマトグラフィーや薄層クロマトグラフ
ィーを繰り返す大変煩雑な方法であり、時間的、経済的
コストが高いという問題がある。そのため、イソフラボ
ン混合物より、高純度のゲニステインを簡単な操作で分
離する方法の確立が一層期待されている。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような現状を鑑み、
本発明者らはイソフラボン混合物から簡単な操作でゲニ
ステインを分離する方法について検討した結果、イソフ
ラボンのうちゲニステインのみが一般式CHnCl
4-n(n=0,1,2)で表される溶剤に易溶であるこ
とを見出だし本発明を完成した。すなわち本発明はイソ
フラボン混合物を一般式CHnCl4-n(n=0,1,
2)で表される溶剤で抽出処理することを特徴とするゲ
ニステインの製造法である。
【0006】以下に本発明を詳細に説明する。イソフラ
ボン混合物を得るための出発原料は、イソフラボンを含
有する植物の抽出物であればどのようなものでもよい
が、特にイソフラボンを大量に含む大豆を用いることが
好ましい。大豆抽出物としては丸大豆、脱皮大豆、脱脂
大豆、大豆粉、大豆胚芽等を水、有機溶媒または水と有
機溶媒との混合溶媒で抽出したもの、あるいは豆腐、味
噌、醤油、分離大豆蛋白質等を製造する工程で生じる
「煮汁」、「ゆ」、「ホエー」等を挙げることができ
る。また、醤油粕をメタノール、エタノール等のアルコ
ール、あるいは含水アルコールで抽出したものを使用す
ることも可能である。さらには醤油油にカセイソーダ溶
液を加え、加熱して不要な油をケン化し、エチルエーテ
ルで不ケン化物であるイソフラボンアグリコンを抽出し
たものを用いることもできる。
【0007】以下に、大豆の水浸漬液を出発原料として
イソフラボン混合物を得る方法について、具体例を挙げ
て説明する。 1 脱皮大豆を10倍量の50℃の温水(アルカリでp
H9に調整)に2時間浸漬し、浸漬液を分離する。 2 この浸漬液を合成樹脂(例えばダイヤイオンHP-2
0、YMC-GEL ODS-Aタイプ60-01)に接触させ、浸漬液中
のイソフラボンを合成樹脂に吸着させる。浸漬液と合成
樹脂との接触には、バッチ法またはカラム法のいずれの
方法を使用しても良い。 3 合成樹脂に吸着したイソフラボンをアルカリ性水溶
液、アルコール、あるいは含水アルコールを用いて脱着
・溶出し、樹脂吸着物として回収する。 4 得られた樹脂吸着物を減圧濃縮し、シロップ状の濃
縮物を得る。この濃縮物にはイソフラボン配糖体の他に
クロロフィル、カロチノイド、リン脂質等複数の脂溶性
成分が混在しているので、この濃縮物に有機溶剤(例え
ばヘキサン等)を加え、脂溶性成分を抽出除去した後、
抽出残渣を回収する。抽出残渣の主成分はイソフラボン
配糖体、具体的にはダイジンおよびゲニスチンであり、
ゲニスチンは本発明の目的とするゲニステインの配糖体
である。
【0008】本発明は、この抽出残渣を用いて行なうこ
とも可能であるが、ゲニステインの収率を上げるため、
加水分解処理により抽出残渣中の配糖体成分をイソフラ
ボンアグリコンとしたものを用いることが好ましい。 5 上記の方法により得られた抽出残渣に塩酸酸性アル
コールを加え、還流させながら100℃、6時間加水分
解を行う。本処理によりイソフラボン配糖体の主成分で
あるダイジンおよびゲニスチンは、ゲニステインおよび
ダイゼインに加水分解される。
【0009】尚、加水分解処理は酵素(β−グルコシダ
ーゼ)を用いて行なうことも可能である。 6 加水分解物を減圧濃縮した後、蒸留水で充分に洗浄
し、中性領域(pH5−7)に調整する。洗浄後、残渣
を回収し乾燥させる。この残渣(イソフラボン混合物)
の主成分はイソフラボンアグリコン、具体的にはダイゼ
インおよびゲニステインである。
【0010】本発明では、上記のように調製したイソフ
ラボン混合物を一般式CHnCl4-n(n=0,1,2)
で表される溶剤、具体的にはクロロホルム、ジクロロメ
タン、四塩化炭素で抽出処理してゲニステインを分離す
る。上記の方法により得られたイソフラボン混合物の主
成分はイソフラボンアグリコン、具体的にはゲニステイ
ンおよびダイゼインであり、このうちゲニステインのみ
が上記の溶剤に易溶である。そのため、イソフラボン混
合物をこれらの溶剤に接触させると、ゲニステインのみ
が溶剤層に抽出される。本発明で使用する溶剤のうち、
特にクロロホルムは、ゲニステインを特異的に抽出する
効果が優れている。
【0011】イソフラボン混合物と上記の溶剤との接触
には、還流抽出法を用いることが好ましい。また溶剤の
量はイソフラボン混合物の30〜500倍量、抽出時間
は3時間前後とし、これを数回繰り返すことが好まし
い。イソフラボン混合物を溶剤で抽出処理した後、溶剤
層を、例えば減圧濃縮することにより目的とするゲニス
テインを分離することができる。本発明の方法により得
られるゲニステインは、必要に応じてアルミナ、シリカ
ゲル等を用いてさらに精製しても良い。
【0012】以下実験例により、本発明の効果を説明す
る。 実験例1 (イソフラボン混合物の調製法)脱皮大豆を、10倍量
の50℃の温水(アルカリでpH9に調整)に2時間浸
漬し、浸漬液を分離する。次いでバッチ法により浸漬液
に合成樹脂(ダイヤイオンHP-20)を加え、1時間攪拌
する。合成樹脂を水で充分に洗浄した後、1N−アンモ
ニア水を加え、樹脂吸着物を溶出させる。同様の溶出操
作を2回行なった後、溶出液を合わせて減圧濃縮し、シ
ロップ状の濃縮物を得る。この濃縮物にクロロホルムを
加えて3時間の還流抽出を3回行なった後、抽出残渣を
回収し、この抽出残渣に4%塩酸メタノール溶液を加
え、還流しながら100℃、6時間加水分解する。加水
分解物を減圧濃縮した後、蒸留水で充分に洗浄し、洗浄
後の残渣を乾燥させて褐色の固形物を得た。この固形物
を、HPLC(Waters社 209D型)で分析したところ、
この固形物はダイゼインとゲニステインを主成分とする
イソフラボン混合物であった。また、ダイゼインとゲニ
ステインの量比は約1:1であった。
【0013】(ゲニステインの抽出)上記の方法により
調製したイソフラボン混合物に、表1に示した溶剤を加
え、3時間の還流抽出を3回行なった後、溶剤層をメン
ブランフィルターで濾過し、濾液を上記と同様の条件で
HPLC分析したところ、その成分はゲニステインおよ
びダイゼインであった。結果を表1に示す。
【0014】
【0015】この実験例から明らかなように、イソフラ
ボン混合物を一般式CHnCl4-n(n=0,1,2)で
表される溶剤、すなわちクロロホルム、ジクロロメタ
ン、四塩化炭素で抽出処理することにより、高純度のゲ
ニステインを簡単な操作で分離することができる。特に
クロロホルムはゲニステインを特異的に抽出する効果が
優れていることがわかる。
【0016】
【発明の効果】 本発明により大豆イソフラボン混合物
より、高純度のゲニステインを簡単な操作で分離・精製
することができる。従ってカラムクロマトグラフィーや
薄層クロマトグラフィー等の煩雑な操作が不要となり、
時間的、経済的コストを低減することができる。
【0017】
【実施例】以下に実施例を示す。 実施例1 脱皮大豆2kgを、アルカリでpH9に調整した50℃
の水20lに2時間浸漬し、浸漬液を分離した。次いで
バッチ法により、浸漬液に合成樹脂(ダイヤイオンHP-2
0)500gを加え、1時間攪拌した。合成樹脂を水で
充分に洗浄した後、1N−アンモニア水700mlを加
えて樹脂吸着物を溶出させた。同様の溶出操作を2回行
なった後、溶出液を合わせて減圧濃縮し、シロップ状の
濃縮物1.57gを得た。この濃縮物にヘキサン100
mlを加えて3時間の還流抽出を3回行なった。次いで
抽出残渣を回収し、この抽出残渣に4%塩酸メタノール
溶液150mlを加え、還流しながら3時間加水分解し
た。加水分解物を減圧濃縮した後、この加水分解物を蒸
留水で充分に洗浄し、洗浄後の残渣を乾燥させて褐色の
固形物367mgを得た。この固形物に、クロロホルム
50mlを加えて3時間の還流抽出を3回行なった後、
溶剤層を減圧濃縮して高純度のゲニステイン152mg
を得た。
【0018】実施例2 脱脂大豆を原料として製造された醤油の副産物である醤
油粕50gに、1500mlのメタノールを加えて3時
間の還流抽出を3回繰り返した後、抽出液を合わせ、こ
れを減圧濃縮しシロップ状の濃縮物4.0gを得た。こ
の濃縮物にヘキサン200mlを加えて3時間の還流抽
出を3回行なった。次いで、抽出残渣を回収し、蒸留水
で充分に洗浄した後、残渣を乾燥させて褐色の固形物1
450mgを得た。この固形物の主成分はイソフラボン
アグリコン、具体的にはダイゼインおよびゲニステイン
であった。
【0019】尚、醤油粕中のイソフラボン配糖体は、醤
油製造工程中にβ−グルコシダーゼによる加水分解を受
けてアグリコンとなっているため、加水分解操作を行な
う必要はない。上記残渣にクロロホルム500mlを加
え、実施例1と同様にして還流抽出を行ない、溶剤層を
減圧濃縮して高純度のゲニステイン769mgを得た。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イソフラボン混合物を一般式CHnCl
    4-n(n=0,1,2)で表される溶剤で抽出処理する
    ことを特徴とするゲニステインの製造法。
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