JP2011195541A - グループbサポニンの製造法 - Google Patents

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純子 小野
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Abstract

【課題】異風味の低減されたグループBサポニンを、効率よく入手することを課題とする。
【解決手段】50℃を超える加熱処理を受けた大豆原料を用い、疎水的相互作用を有する吸着剤による分画において、エタノール濃度及びpHを制御することにより、課題を解決することができる。
【選択図】なし

Description

グループBサポニンを得る製造法に関する。
大豆には各種の有効成分が含まれており、中でも微量の生理活性成分である、サポニンやイソフラボンについては、それぞれ抽出法が検討されている。たとえば特許文献1は本願出願人による出願であるが、この出願はイソフラボンとサポニンを取得する方法に関する出願である。しかし、グループAサポニンとグループBサポニンを分離する手法については開示されていない。
特許文献2はグループBサポニンの製造方法に関する出願であるが、溶媒中での沈殿分離であり、工業的な効率は悪いものである。
国際公開第2003/075939号パンフレット 国際公開第2005/097815号パンフレット
本発明の目的は、大豆に含まれる各種の有効成分のうち、グループBサポニンを効率よく取得する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、いずれかの段階で50℃を超える加熱処理を受けた大豆由来原料からの抽出液に対し、疎水的相互作用を有する担体を用いた精製法において、グループBサポニンを得ようとする前段階の溶出を、pHおよびエタノール濃度を制御した溶出液で行うことで、異風味の低減されたグループBサポニンを効率よく入手できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は
(1)いずれかの段階で50℃を超える加熱処理を受けた大豆由来原料からの抽出液に対し、以下の工程を順に行うことを特徴とする、グループBサポニンの製造法。
1)大豆由来原料の抽出液を疎水的相互作用を有する吸着剤へ吸着させる工程。
2)エタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0で溶出する工程。
3)エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出し、グループBサポニンを得る工程。
(2)大豆由来原料が大豆胚軸である、(1)記載の製造法。

に関するものである。
本発明によれば、異風味の低減されたグループBサポニンを効率よく取得することができる。
(大豆原料)
本発明に使用する大豆原料は50℃を超える加熱処理を受けていることが望ましく、大豆原料の段階でそのような加熱処理を受けていない場合は、以下に示すように、その抽出液の段階で50℃を超える加熱処理を受けていることが必要である。もちろん、大豆原料の段階およびその抽出液の段階の両方で、そのような加熱処理を受けてもよい。なお、50℃を超える加熱処理は、大豆原料の段階で受けている方が、異風味を低減する効果はより大きくて好ましい。
50℃を超える加熱処理とは、より具体的には50〜150℃の加熱処理が好ましく、より好ましくは、65〜120℃の加熱処理である。加熱処理が50℃よりも低いと、充分な異風味低減効果や分離性改善効果が得られない場合がある。なお、加熱による効果は、温度の他に、時間や湿度などの周辺環境も影響を及ぼすが、本発明においては、いずれの環境下においても、50℃以上であれば達温で効果が認められる。
使用する大豆原料としては、丸大豆、脱皮大豆、脱皮脱胚軸大豆、脱脂大豆、大豆胚軸をあげることができるが、特にグループBサポニンを比較的多く含む大豆胚軸を利用することが、効率の点からも好ましい。
(抽出液)
大豆原料からサポニンを抽出する溶媒としては、水または含水極性有機溶媒、すなわち水との混和が可能な有機溶媒であって、所望の割合の水を含有させたものを用いるのが好ましい。極性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールや、アセトンが挙げられる。特にエタノールを用いることが好ましい。エーテル、クロロホルム、ヘキサン等の非極性有機溶媒は抽出効率が悪くなる場合がある。
該含水極性有機溶媒の含水率は、極性有機溶媒の種類にもよるが、サポニンの抽出が高純度かつ高収率に行えるような比率にすればよく、その濃度は20〜85容量%が好ましく、より好ましくは25〜70容量%、さらに好ましくは25〜60容量%である。また、抽出時のpHは4〜9であることが好ましく、より好ましくはpH5〜8である。抽出液の含水率が低すぎると、サポニンの抽出率が低下する場合がある。また高すぎると、サポニン以外の各種成分が抽出されることにより、最終的なサポニンの純度が低下する場合がある。
抽出時のpHが低すぎると、含水極性有機溶媒の含水率によっては、沈殿が生じやすくなり、その後の分画工程に手間がかかる場合がある。またpHが高すぎると夾雑物が抽出され、その後の分画に影響をきたす場合がある。
該含水極性有機溶媒の大豆原料に対する1回あたりの使用量は特に限定されず、溶媒の種類にもよるが、コストを考えると原料1kg当り3〜10Lとすることが好ましい。
抽出方式としては、例えば少なくとも2段階以上の抽出を行う多段式抽出法を採用することが好ましい。また、向流式の連続抽出法等を使用することも可能である。抽出回数が1回のみの場合では、大豆原料からのサポニンの抽出率が上がりにくく、収率が低下する場合がある。
抽出液は適宜濃縮することもできる。濃縮操作により、吸着させる際の有効成分の濃度を一定に制御することができ、好ましい。
(吸着操作)
次に、サポニンを含む抽出液を吸着剤へ吸着させる。使用する吸着剤は公知のものを使用することができるが、疎水的相互作用を有するものを用いる。具体的には、三菱化学製ダイヤイオンHPシリーズ、ロームアンドハース社製 アンバーライトXADシリーズなどをあげることができる。
吸着操作は、サポニンを含む含水極性溶媒抽出液の入ったタンクに該吸着剤を投入してバッチ式で行っても良いし、カラムに吸着剤を充填して行うことも可能であるが、その後の溶出等も含め、カラムに充填して行う方が、より純度の高い製品が得られ好ましい。
(溶出操作)
吸着操作の後は溶出操作を行う。溶出操作においては、グループBサポニンを得るために、エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出を行うが、その前に、前処理としてエタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0の溶出液により溶出する工程をとり、グループBサポニン以外の成分をできるだけ溶出することが必要である。このときのpHは、より望ましくはpH3〜4.5である。通常、疎水的相互作用を有する吸着剤による分離においておいては、溶出液の疎水度、すなわちエタノール等の濃度のみ制御して分離を行うし、目的物以外の物質を事前溶出する場合も同様である。しかし本発明においては、疎水度の他にpHを組み合わせることにより、最終的に、より純度が高く、歩留まりも高いグループBサポニンが得られるようにしたものである。
pHは高すぎても、低すぎても、最終的にグループBサポニンを高濃度で取得することが難しくなったり、歩留まりが低下する場合がある。また各エタノール濃度も、高すぎたり、低すぎたりした場合も最終的にグループBサポニンを高濃度で取得することが難しくなったり、歩留まりが低下する場合がある。
各溶出に使用する溶出液の量は、吸着剤の量に対して0.2〜5.0容量倍が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0容量倍である。溶出液の量が少なすぎると、各工程における溶出が不十分となり、目的物の歩留まりが低下したり、以降の工程における目的物の純度が低下する場合がある。また、溶出液の量が多すぎる場合は、溶出後の濃縮等により、コスト上昇につながる場合がある。
溶出工程の前後においては、目的物以外の非吸着成分を除去するために、適宜洗浄工程を加えることも可能である。
(定量方法)
本検討において、大豆サポニンの定量には以下の方法を用いた。
大豆サポニン分析法
試料を定量し乾燥機にて乾燥後、メタノールを加え1時間加熱還流して抽出液を得た。定容後、一部を分取し濃縮乾固させ、10%塩酸―メタノールを加え一定時間加熱攪拌し、加水分解させた。水と酢酸エチルを加え、内部標準物質を混合した後、酢酸エチル層のみ回収した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を混合、振とうさせ、酢酸エチル層のみを回収後、再度水を加えて酢酸エチル層を回収した。濃縮乾固後、ピリジンとBSTFAを加え、誘導体化させた後GCにて分析を行った。
なお、標準品は小城製薬(株)製のソヤサポゲノールA(純度99%以上)、ソヤサポゲノールB(純度98%以上)を用いた。また、試料中の大豆サポニン量は換算式を用いて、グループAサポニン、グループBサポニンを算出した。
以下に実施例を記載する。
実施例1
以下の方法でグループBサポニンを調製した。
a 大豆生胚軸を120℃熱風で60分間加熱処理した後、40℃、4.0重量倍の含水エタノール(含水率30%)に浸漬し、抽出した。
b 抽出液を遠心分離し、沈殿物を除去し上清を取得(総サポニン含量2.5g グループAサポニン1.8g グループBサポニン0.7 含有)脱溶剤し、濃縮液を得た。
c ダイヤイオンHP−20(三菱化学(株)製)を充填したカラム(100mL)にSV10で付加
d 水によりカラムの1.0倍量洗浄
e pH4.0に調整した50容量%エタノール溶液100mLで溶出(画分1)
g 70容量%エタノール300mLで溶出(画分2:主サンプル)
比較例1
以下の方法でグループBサポニンを調製した。
a 大豆生胚軸を、加熱処理を行わず、40℃、4.0重量倍の含水エタノール(含水率30%)に浸漬し、抽出した。
b 抽出液を遠心分離し、沈殿物を除去し上清を取得(総サポニン含量2.5g、グループAサポニン1.8g、グループBサポニン0.7g 含有)脱溶剤し、濃縮液を得た。
c ダイヤイオンHP−20(三菱化学(株)製)を充填したカラム(100mL)にSV10で付加
d 水によりカラムの1.0倍量洗浄
e pH4.0に調整した50容量%エタノール溶液100mLで溶出(画分1)
g 70容量%エタノール300mLで溶出(画分2:主サンプル)

比較例2
実施例1のeにおいて、pH未調整(実測pH6.0)にて行う以外、比較例1と同様に操作した。
実施例1、比較例1,2の各画分のグループAサポニン、グループBサポニンをそれぞれ定量した。また、各グループBサポニンの風味の評価を行った。

「グループBサポニンの風味評価法」
グループBサポニンの各主サンプルを、0.1重量%の水溶液とした上、パネラー5名により風味評価を行った。
評価は5点満点中、異味、異臭が殆どないものを5点とし、異味、異臭の強いものを1点とし、異風味の強弱によりその間の点数付けを行った。各パネラーの点数を平均し、4点以上を合格とした。

表1に各サポニンの含有量、収率、風味評価の結果を示す。
表1
Figure 2011195541
注:画分2が比較検討対象である。

グループBサポニンの収率に関しては、70%以上を合格と判断すると、合格レベルにあるのは実施例1のみであった。
グループBサポニンの含有量に関しては、27%以上を合格と判断すると、合格レベルにあるのは、実施例1と比較例2であった。
すべての項目において合格であったものは、実施例1のみであった。
以上のように、実施例1においては、画分2においてグループBサポニンを28%という高い含有率で示すサンプルが得られた。また、収率も78%と高かった。更に、得られたグループBサポニンは異風味が低減されたものであり、比較例に比べ際立って優れていた。
本発明により、異風味の低減されたグループBサポニンを高い含有率で示すサンプルを、収率よく取得することができる。

Claims (2)

  1. いずれかの段階で50℃を超える加熱処理を受けた大豆由来原料からの抽出液に対し、以下の工程を順に行うことを特徴とする、グループBサポニンの製造法。
    1)大豆由来原料の抽出液を疎水的相互作用を有する吸着剤へ吸着させる工程。
    2)エタノール濃度40〜65容量%pH2.5〜5.0で溶出する工程。
    3)エタノール濃度68〜95容量%の溶出液により溶出し、グループBサポニンを得る工程。
  2. 大豆由来原料が大豆胚軸である、請求項1記載の製造法。
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